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平成14年(行ケ)第178号 審決取消請求事件(平成14年10月21日口頭
弁論終結)
          判           決
       原      告   大阪ケミカル工業株式会社
       訴訟代理人弁護士   村 林 隆 一
       同          松 本   司
       同          岩 坪   哲
       同          井 上 裕 史
    被      告   ゲス?,インコーポレーテッド
       訴訟代理人弁理士   鈴 江 武 彦
       同          石 川 義 雄
       同          小 出 俊 實
       同          吉 野 日出夫
       同          松 見 厚 子
       同          宮 永   栄
       同          幡   茂 良
          主           文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
   特許庁が無効2000-35552号事件について平成14年3月12日に
した審決を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   被告は,別添審決謄本写し別掲(1)のとおりの構成からなり,指定商品を第2
5類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣
服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」とする商標登録第4231114号商標(平
成9年9月26日登録出願,平成11年1月14日設定登録,以下「本件商標」と
いう。)の商標権者である。
 原告は,平成12年10月11日,被告を被請求人として,本件商標の指定
商品中「履物」についての登録を無効にすることについて審判を請求した。
 特許庁は,同請求を無効2000-35552号事件として審理した上,平
成14年3月12日に「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その
謄本は,同月25日,原告に送達された。
 2 審決の理由
   審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件商標は,別添審決謄本写し別
掲(2)のとおりの構成からなり,指定商品を第25類「履物」とする商標登録第40
60799号商標(平成8年4月16日登録出願,平成9年9月26日設定登録,
以下「引用商標」という。)と外観,称呼及び観念において類似する商標であり,
かつ,指定商品中「履物」について,引用商標の指定商品と同一であるから,本件
商標は,指定商品中「履物」について商標法4条1項11号に違反して登録された
ものであるとの請求人(注,原告)の主張に対し,本件商標は,創作的な特異な図
形として認識されるものであって,引用商標とは外観,称呼及び観念のいずれの点
においても相紛れるおそれのない非類似の商標であり,同号に違反して登録された
ものではないから,同法46条1項の規定により,その登録を無効とすることはで
きないとした。
第3 原告主張の審決取消事由
 1 審決は,本件商標と引用商標の類否の判断を誤った結果(取消事由),本件
商標の商標法4条1項11号該当性の判断を誤ったものであるから,違法として取
り消されるべきである。
2 取消事由(本件商標と引用商標の類否判断の誤り)
(1)本件商標は,特異な図形であるということはできない上,その指定商品中
「履物」について,一般の取引社会では,迅速を尊び,かつ,同一商品を同一場所
で購入するものではなく,異なる場所で購入するものであって,当該商標を厳密に
選択することはないから,取引の実際から離隔的に観察した場合,本件商標に接し
た指定商品中「履物」の取引者,需要者は,本件商標の下部の「▲」と引用商標の
「?」の下部の「●」との相違を注意深く見ることなく,単に「クエスチョンマー
ク」として称呼,観念することは明らかである。また,外観においても,本件商標
全体は,「▲」部分に比し,高さは3倍以上,幅は2倍以上もあるから,下部の
「▲」部分を区別することはなく,他方,引用商標の構成中に,「Questionmark*
」が付記されているものの,同部分は,高さにおいて「?」の部分の8分の1にす
ぎないから,両商標は類似している。したがって,本件商標をその指定商品中「履
物」に使用した場合,引用商標に係る商品と誤認混同を生ずるおそれがある。
(2)商標の類否は,商標の外観,観念及び称呼を抽象的に比較検討するのでは
なく,同一又は類似の商品に使用された商標が,その外観,観念及び称呼等によっ
て取引者,需要者に与える印象,記憶及び連想等を総合して全体的に考察すべきで
あり,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状
況に基づいて判断すべきである。
  原告は,原告の商品である履物(靴)に引用商標を使用している。他方,
被告は,現在,本件商標をその指定商品に使用していないが,これを使用した場合
は,本件商標と引用商標との間に商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがある
ことは明らかである。
第4 被告の反論
1 審決の認定,判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(本件商標と引用商標の類否判断の誤り)について
(1)本件商標は,1981年(昭和56年)にフランスのデザイナーであるマ
ルシアーノ兄弟が創立したゲス社が,主としてアパレル商品に使用した「トライア
ングル(逆三角形)ゲスブランド」中に含まれる図形であり,通常のクエスチョン
マークと比較し,上半部は,同一幅かつ肉太の字形で力強く描かれ,下半部は,塗
りつぶされた正三角形を配置する点において独創性を有する特殊形態図形である。
したがって,本件商標は,その特異性によって図形のみで出所識別機能を十分果た
し得るものである。「クエスチョンマーク(疑問符)」自体は,疑問を意味する符
号であって,独占の対象とされるべきものではないから,一般的活字体,標準書体
又は格別の図案化がされていない「クエスチョンマーク(疑問符)」は,出所識別
機能を果たし得ず,引用商標による保護の客体とはならない。
また,本件商標は,「GUESS」の欧文字と共に使用されていたことから,同
欧文字と一体のものとして把握され,「GUESS(ゲス)のクエスチョンマーク」又は
これを簡略化した「GUESS(ゲス)クエスチョンマーク」の一連の称呼及び「GUESS
(ゲス)社の疑問符」の観念を生じ,単なる「クエスチョンマーク」との称呼及び
観念を生じない。
(2)被告による本件商標の具体的な使用の有無は,審決の取消事由とはならな
い。また,被告は,本件商標を「履物」を含め指定商品に使用している。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由(本件商標と引用商標の類否判断の誤り)について
(1)本件商標及び引用商標の構成態様について
 本件商標は,別添審決謄本写し別掲(1)のとおり,上半部に欧文符号のクエ
スチョンマーク(疑問符)「?」(以下「疑問符」という。)の上部の図形をほぼ
同一幅をもって肉太帯状にデザインして表し,下半部に黒く塗りつぶした正三角形
(同部分は,全体に対し,高さにおいて約3分の1,幅において約2分の1を占め
る。)を配してなるものである。そして,乙1,22(枝番を含む。)及び弁論の
全趣旨によれば,本件商標は,被告が,主としてアパレル商品に使用し,いずれも
引用商標に先立って出願,登録された被告主張に係る「トライアングル(逆三角
形)ゲスブランド」,すなわち,商標登録第2065076号商標(昭和60年4
月3日登録出願,昭和63年7月22日設定登録,乙22-1),商標登録第22
13017号商標(昭和62年9月10日登録出願,平成2年2月23日設定登
録,乙22-2)及び商標登録第2496833号商標(平成元年2月6日登録出
願,平成5年1月29日設定登録,乙22-3)の構成中の下部に表された上記図
形部分を,独立した商標としたものであることが認められる。
 他方,引用商標は,同別掲(2)のとおり,やや扁平にデザインされた疑問符
の下に通常の活字体により「Questionmark*
」の欧文字(同部分は,高さにおいて
全体の約8分の1を占め,幅においては上部の疑問符よりやや幅広である。)を表
してなるものである。
(2)類否判断について
ア 本件商標は,その構成中の上半部が疑問符の上部をデザインしたもので
あることが外観から明らかであり,これに接する指定商品中「履物」の一般的な取
引者,需要者に疑問符を想起させることは否定できないが,通常の疑問符の下部は
黒丸で表されるのに対し,本件商標の構成は,この部分が比較的大きな黒く塗りつ
ぶされた正三角形で表されていることが外観上の顕著な特徴となっており,上記の
一般的な取引者,需要者が通常払う注意力を基準とした場合に,その相違に容易に
気付くことが明らかであるから,本件商標は,疑問符を変形図案化したものと連想
させるところがあるとしても,これとは異なった創作的な特異な図形として認識さ
れるものである。そして,疑問符自体は,ありふれた図形であって,自他商品識別
力がないか希薄というべきであるから,本件商標は,疑問符に類似している部分
は,自他商品識別力がないか希薄な部分であり,疑問符と相違する部分が,自他商
品識別力が強い要部であると認められる。
 なお,乙11-1,3~11(いずれも「GUESS」1999年〔平成11
年〕秋号),乙12-2,3(いずれも同2001年〔平成13年〕秋号),乙1
3-2,3,6~8(いずれも同年春号)には,被告の商品であるジーンズやアク
セサリーに本件商標が付されていること,乙14-2-1(平成9年10月5日
TBSブリタニカ発行の「FIGAROフィガロジャポン」8巻18号),乙15-2-1,
3-1(いずれも同月6日宝島社発行の「Spring」新創刊第2号),乙16-2-
1(マガジンハウス発行の「BRUTUS」同年1月1日・15日号),乙17-2-1
(同平成10年3月1日号),乙18-2-1(婦人画報社発行の「MEN'SCLUB」
平成9年4月号)には,被告の商品を紹介する雑誌記事中に本件商標が掲載されて
いることが認められるが,上記証拠のうち,乙11~13(いずれも枝番を含
む。)は,本件商標の登録査定時である平成10年11月24日(甲2)より後に
頒布されたものであり,その余の上記証拠によっては,上記登録査定時において,
被告主張のように,本件商標が,「GUESS(ゲス)のクエスチョンマーク」又はこれ
を簡略化した「GUESS(ゲス)クエスチョンマーク」の一連の称呼及び「GUESS(ゲ
ス)社の疑問符」の観念を生ずるとまでは推認することができず,他にこれを認め
るに足りる証拠はない。
イ そうすると,本件商標は,疑問符と類似している部分が要部であるとい
うことができず,これに接する指定商品中「履物」の一般的な取引者,需要者に,
疑問符とは異なった創作的な特異な図形として認識されるものであることは上記の
とおりであるから,単なる「クエスチョンマーク」との称呼及び「クエスチョンマ
ーク(疑問符)」の観念を生ずるものということはできない。他方,引用商標の上
記構成からは,上部の疑問符及び下部の欧文字部分の構成文字に相応して,「クエ
スチョンマーク」の称呼が生ずることは明らかであるから,本件商標と引用商標と
は,称呼及び観念において類似するものということはできない。
 また,本件商標と引用商標の上記構成から,両者が共に疑問符に類似す
る点を有することは否定できないが,疑問符と類似している部分は要部であるとい
うことができないことは前示のとおりであり,その余の部分が相違することは,そ
の外観上明らかであり,本件商標と引用商標とは,外観においても類似するものと
いうことはできない。
 したがって,本件商標は,引用商標とは外観,称呼及び観念のいずれの
点においても類似する商標とは認められない。
ウ 原告は,原告の商品である履物(靴)に引用商標を使用しており,他
方,被告は,現在,本件商標をその指定商品に使用していないが,これを使用した
場合は,本件商標と引用商標との間に商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれが
あると主張するところ,被告による本件商標の使用の有無は,両商標の類否判断に
直接影響を及ぼすものではないし,他に,上記のような外観,称呼及び観念上の非
類似性を妨げ,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれをうかがわせるような取
引の実情を認めるに足りる証拠はない。
(3)そうすると,本件商標は,商標法4条1項11号に違反して登録されたも
のではないから,同法46条1項の規定により,その登録を無効とすることはでき
ないとした審決の判断に,誤りはない。
 2 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき
瑕疵は見当たらない。
   よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとお
り判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 岡  本     岳
    裁判官 宮  坂  昌  利

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