弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
       事   実
 原告は「(主位的請求)被告が昭和四三年三月一一日付でなした本吉町立津谷小
学校山田分校廃止処分は存在しないことを確認する。(二次的請求)右処分が無効
であることを確認する。(三次的請求)右処分を取消す。訴訟費用は被告の負担と
する。」との判決を求め、その請求の原因として、
一、原告は学校教育法二二条によりその子女を小学校に就学させる義務を負う保護
者によつて構成され、代表者の定めを有する権利能力のない社団である。
二、被告は、昭和四三年三月一一日本吉町立津谷小学校山田分校(以下本件分校と
いう)を廃止する旨の処分(以下本件処分という)をなした。
三、しかし本件処分は、学校教育法施行令二五条の趣旨から要求される告示がなさ
れなかつたら成立の要件を欠き存在しない。よつて原告はその不存在の確認を求め
る。
四、仮に右請求が認められないとしても、本件処分には次のような重大かつ明白な
瑕疵があるので無効である。
(一)(1) 本件分校は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供する
ために設けられた施設で、地方自治法二四四条二項にいう公の施設であり、その廃
止は同条の趣旨から設置条例の改正を要すると解すべきところ、本件処分は、本件
分校の設置条例である「本吉町立学校の設置に関する条例」の改正なくして行なわ
れたものである。
(2) 仮に右条例が本件分校の設置を定めたものといえないとしても、本件分校
を廃止するについては地方自治法二四四条の二の定める議会の同意を得ていない。
(二) 原告構成員は憲法二六条二項、教育基本法三条、四条、学校教育法二九
条、地方自治法一〇条二項の趣旨に鑑み、保護者としてその子女を小学校に就学さ
せる権利をもつものであるところ、本件処分により原告構成員らの子女は昭和四五
年四月以降津谷小学校本校に通学することになるが、その通学は本件分校への通学
にくらべて著しく困難かつ危険であつて、このような結果となる本件処分は原告構
成員らの前記権利を侵害する違法な処分であることは明らかである。よつて原告は
二次的に本件処分の無効の確認を求める。
五、仮に右いずれの請求も理由がないとしても、本件処分は、児童の教育環境の向
上をはかる見地からなされたものでなく、もつぱら本件分校を廃止して津谷小学校
本校に統合し、一定の規模外観をととのえてモデル校の指定をうけ、校舎を新築す
るため国庫補助と起債許可を受けることを目的としてなされたもので、このような
処分は裁量権の濫用であるから、行政事件訴訟法三〇条により三次的にその取消を
求めるため本訴請求に及んだと述べた。
被告訴訟代理人は、本案前の主張として、
(一) 原告は、目的、名称、事務所、資産に関する事項等を明示する定款その他
これに類する規約のない団体であって権利能力のない社団としての実体を備えない
ものであるから、本件訴について当事者能力を有しない。
(二) 被告は、本件処分後本件処分によつて統合された本校を新築して模範的な
設備を施し、かつ通学児童の通学の安全と便益のため通学バス代を永久に交付する
等の措置をとつたのであつて、本件処分によつて原告構成員ら学区住民の子女の就
学の権利を侵害し、または侵害するおそれもないから、原告は本件処分の無効確認
もしくは坂消を求めるにつき法律上の利益を有しない。
(三) 本件処分が原告の公の施設を利用する権利を侵害するものとすれば、原告
は地方自治法二四四条の四の二、二五六条にもとづき、本吉町長に審査請求をな
し、その決定を経たうえでなければ処分取消の訴を提起することができないのであ
るから、右の手続を経ることなく提起された本件訴は不適法であると述べ、
 本案に対する答弁として「原告の主位的請求および予備的請求をいずれも棄却す
る。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求原因事実に対し、
 第一項は否認する。
 第二項は認める。
 第三項は否認する。被告は、昭和四三年三月七日本吉町教育委員会公告式規則の
定めるところに従つて本件処分を同町役場掲示板に貼付し、もつて被告委員会告示
第四号として告示した。
 第四項のうち本件分校が公の施設に該当することは認め、その余の事実は否認す
る。同項(一)の(1)に関し、原告主張の条例(昭和三九年三月一八日条例第六
号)第二条は、津谷小学校本校の名称と位置を記載するのみであつて、本件分校を
廃止するについて右条例を改正する実益も必要もない。同項(一)の(2)に関
し、本件分校を本校と統合する権限は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律
二三条により被告に専属する。また本件分校は地方自治法二四四条の二の二項に規
定する「条例で定める特に重要なもの」に該当しないので、その廃止について議会
の同意を要しない。同意を必要とするとしても昭和四三年一〇月一三日議会の同意
を得た。
 第五項は否認する。被告は、本件分校に通学する児童数が年々減少の一途をたど
り、教育環境の劣悪化が予想されるとの判断のもとに、本件分校を本校に統合する
ことにより適正規模による学級編成、教育効果の向上、学校経営の合理化等を図る
べく本件処分をなしたもので、裁量権行使に濫用の点はないと答えた。
 証拠(省略)
       理   由
 原告の当事者能力に関し、同委員会が民事訴訟法四六条にいう法人に非ざる社団
に該当するか否かについて判断する。
 法人格のない社団すなわち権利能力のない社団が成立するためには、団体として
の組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体そのも
のが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体として
の主要な点が確定していることを要するものと解されるところ、本件弁論の全趣旨
によれば、原告は本件処分に反対する学区民六名(うち小学校就学児童をもつ者は
一名)より構成され、委員長としてAを選出し、このうち四名が同人に本件訴訟の
遂行を委任しているが、事務所、規約、定款の類はなく、財産は本件訴訟に関し右
構成員らの拠出した金七〇、〇〇〇円があるのみで本件訴訟以外には対外的活動を
なしていないことが認められ、以上の事実によれば、原告は団体としての組織の主
要な点を具備しているとみることはできず、単に本件訴訟遂行上の便宜のためにの
み結束した集団にすぎないことが窺われるのであつて、到底これを法人格のない社
団と認めることはできない。
 よつて原告は当事者能力を欠くので、その請求について判断するまでもなく、本
件訴は不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟
法八九条を適用して主文のとおり判決する。

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