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平成22年1月21日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成20年(ワ)第14302号意匠権侵害差止等請求事件(A事件)
平成20年(ワ)第16194号特許権侵害差止等請求事件(B事件)
平成20年(ワ)第16195号意匠権侵害差止等請求事件(C事件)
口頭弁論終結日平成21年10月21日
判決
原告株式会社ライセンス&
プロパティコントロール
同訴訟代理人弁護士村林隆一
同井上裕史
同訴訟復代理人弁護士佐合俊彦
被告株式会社ダイモン
同訴訟代理人弁護士藤田邦彦
同補佐人弁理士高木義輝
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
(A事件)
(1)被告は,別紙物件目録A記載の各製品の製造,販売又は販売の申出をし
てはならない。
,。(2)被告は前項の各製品の半製品及び各製品の製造に用いる型を廃棄せよ
(3)被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成20年11月1
4日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(B事件)
(1)被告は,別紙物件目録B記載の各製品の製造,販売又は販売の申出をし
てはならない。
(2)被告は,前項の各製品及びその半製品並びに各製品の製造に用いる型を
廃棄せよ。
(3)被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成20年12月2
0日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(C事件)
(1)被告は,別紙物件目録C記載の各製品の製造,販売又は販売の申出をし
てはならない。
(2)被告は,前項の各製品及びその半製品並びに各製品の製造に用いる型を
廃棄せよ。
(3)被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成20年12月1
9日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(各事件共通)
(1)訴訟費用は,被告の負担とする。
(2)仮執行宣言
2被告
主文と同旨
第2事案の概要
1前提事実
(1)当事者
ア原告
原告は,知的財産権の保有,運用等を目的とする株式会社である。
イ被告
被告は,鋳造,鉄工業などを目的とする株式会社である。
(2)本件意匠権Aと被告製品A
ア本件意匠権A(甲A2)
原告は,次の意匠権(以下「本件意匠権A」といい,その登録意匠を
「本件登録意匠A」という)を有している。。
登録番号第1215512号
出願日平成15年8月5日(意願2003−022724)
登録日平成16年7月16日
意匠に係る物品マンホール蓋用受枠(部分意匠)
本件登録意匠A別紙本件登録意匠A目録記載のとおり
イ被告製品A
,(「」,(ア)被告は別紙物件目録A記載1の製品以下被告製品Aといい
本件登録意匠Aに相当する部分の意匠を「被告意匠A」という)を。
製造し,販売の申出をしている。
(イ)被告意匠Aと本件登録意匠Aは,意匠に係る物品が同一である。
(3)本件特許権と被告製品B
ア本件特許権(甲B2)
原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件
特許」といい,その請求項1に係る発明を「本件発明」という。また,
「」。)本件特許に係る特許公報に掲載された明細書を本件明細書という
を有している。
特許番号第3886037号
出願日平成14年2月14日(特願2002−036969)
公開日平成15年8月27日(特開2003−239311)
登録日平成18年12月1日
発明の名称地下構造物用丸型蓋
特許請求の範囲
【請求項1】丸型の蓋本体と,この蓋本体を内周面上部で支持する受
枠とからなる地下構造物用丸型蓋において,受枠の内周面上部に
は,受枠の内方に向けて凸となる受枠凸曲面部を形成するととも
に,この受枠凸曲面部の上方に凹状の受枠凹曲面部を連続して形
成し,蓋本体の外周側面には,前記受枠凸曲面部に倣った凹状の
蓋凹曲面部を形成するとともに,この蓋凹曲面部の上方に前記受
枠凹曲面部に倣った凸状の蓋凸曲面部を連続して形成し,また,
前記受枠凹曲面部の上方には,受枠の上方に向けて拡径する受枠
上傾斜面部を連続して形成し,前記蓋凸曲面部の上方には,蓋本
体の上方に向けて拡径する蓋上傾斜面部を連続して形成し,蓋本
体を受枠で支持した閉蓋状態において,受枠上傾斜面部と蓋上傾
斜面部は嵌合し,蓋凸曲面部と受枠凹曲面部および蓋凹曲面部と
受枠凸曲面部は接触しないようにしたことを特徴とする地下構造
物用丸型蓋。
イ構成要件の分説
本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A丸型の蓋本体と,この蓋本体を内周面上部で支持する受枠とからな
る地下構造物用丸型蓋において,
B受枠の内周面上部には,受枠の内方に向けて凸となる受枠凸曲面部
を形成するとともに,この受枠凸曲面部の上方に凹状の受枠凹曲面部
を連続して形成し,
C蓋本体の外周側面には,前記受枠凸曲面部に倣った凹状の蓋凹曲面
部を形成するとともに,この蓋凹曲面部の上方に前記受枠凹曲面部に
倣った凸状の蓋凸曲面部を連続して形成し,
Dまた,前記受枠凹曲面部の上方には,受枠の上方に向けて拡径する
受枠上傾斜面部を連続して形成し,
E前記蓋凸曲面部の上方には,蓋本体の上方に向けて拡径する蓋上傾
斜面部を連続して形成し,
F蓋本体を受枠で支持した閉蓋状態において,受枠上傾斜面部と蓋上
傾斜面部は嵌合し,
G蓋凸曲面部と受枠凹曲面部および蓋凹曲面部と受枠凸曲面部は接触
しないようにしたことを特徴とする
H地下構造物用丸型蓋。
ウ作用効果
本件明細書には,本件発明の効果として,①バールで蓋本体を引き
ずるようにしたり,蓋本体を後方から押し込むだけで蓋本体を受枠内に
(「」。),スムーズに収めることができること以下本件作用効果①という
②蓋本体のガタツキを防止できるとともに,土砂,雨水等の地下構造
物内部への浸入を防止できること(以下「本件作用効果②」という)。
が記載されている。
エ被告製品B
(ア)被告は,別紙物件目録B記載1・2の各製品(以下,それぞれ「イ
号製品B「ロ号製品B」といい,併せて「被告製品B」という。」,
なお,被告製品Bの形状については争いがある)を製造し,販売の。
申出をしている。
(イ)イ号製品Bの受枠は別紙イ号製品受枠詳細図に基づいて,ロ号製品
Bの受枠は別紙ロ号製品受枠詳細図に基づいて製造されたものである
が(以下,両図面を併せて「本件被告受枠詳細図」という,両受。)
枠の構造は,本件特許の対象である受枠内面と蓋本体外周面において
同一である。
(ウ)被告製品Bは,本件発明の構成要件A,F,Hを充足している。
(4)本件意匠権Cと被告製品C
ア本件意匠権C(甲C2)
原告は,次の意匠権(以下「本件意匠権C」といい,その登録意匠を
「本件登録意匠C」という)を有している。。
登録番号第1215509号
出願日平成15年8月5日(意願2003−22720)
登録日平成16年7月16日
意匠に係る物品マンホール蓋用受枠(部分意匠)
本件登録意匠C別紙本件登録意匠C目録記載のとおり
イ被告製品C
(ア)被告は,別紙物件目録C記載1・2の各製品(以下,それぞれ「イ
号製品C「ロ号製品C」といい,併せて「被告製品C」という。」,
なお,被告製品Cの形状については争いがある)を製造し,販売の。
申出をしている。
なお,イ号製品Cはイ号製品Bの受枠と同一であり,ロ号製品Cは
ロ号製品Bの受枠と同一である。また,本件登録意匠の対象である受
枠内周面において,イ号製品Cの意匠とロ号製品Cの意匠は同一であ
る。
(イ)被告意匠Cと本件登録意匠Cは,意匠に係る物品が同一である。
2原告の請求
原告は,被告に対し,本件意匠権A・C及び本件特許権に基づき,被告各
製品の製造・販売・販売の申出の差止め,被告製品B・Cの廃棄,被告各製
品の半製品及び被告各製品の製造に用いる型の廃棄,弁護士費用相当額の損
害賠償(A・C事件につき各100万円,B事件につき200万円)及びこ
れらに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5%の割合による遅
延損害金の支払を,それぞれ求めている。
3争点
(1)本件意匠権Aの侵害について(争点A)
ア被告意匠Aは,本件登録意匠Aと類似するか(争点A−1)
イ本件意匠権Aは,新規性欠如の無効原因を有しており,意匠登録無効
審判により無効にされるべきものか(争点A−2)
(2)本件特許権の侵害について(争点B)
ア被告製品Bは,本件発明の構成要件B,C,D,E,Gを充足するか
(争点B−1)
イ被告製品Bは,本件発明と均等か(争点B−2)
(3)本件意匠権Cの侵害について(争点C)
被告意匠Cは,本件登録意匠Cと類似するか(争点C−1)
第3争点に係る当事者の主張
1争点A−1(被告意匠Aは,本件登録意匠Aと類似するか)について
【原告の主張】
以下のとおり,被告意匠Aは,本件登録意匠Aと類似する。
(1)本件登録意匠Aの構成
本件登録意匠Aは,マンホール蓋用受枠の内周面に関する部分意匠であ
り,別紙本件登録意匠A目録記載のとおり,突設部を形成する意匠である
が,上記突設部は,内周面の全周にわたり配設され,内鍔などを有してい
ない。
(2)被告意匠Aの構成
被告意匠Aは,上記本件登録意匠Aと同様の構成である。
(3)本件登録意匠Aにおける需要者の注意を惹き付ける部分
ア需要者
マンホール蓋用受枠の需要者は,自治体の担当者や工事業者である。
イ観察態様
マンホール蓋用受枠は,その形状や重量からして,持ち上げて任意の
方向から観察することは容易にはできないし,設置作業中も,安全の観
点からして,下に回り込んだり受枠内に入り込んだりして観察すること
は不可能である。
そのため,需要者は,平面上方,僅かに斜め上方,底面などから受枠
を観察することになる。
ウ需要者の注意を惹き付ける部分
本件登録意匠Aの実施品を上方から観察した場合,需要者は,従来品
とは異なって内鍔がない突設部に強い印象を受け,新たな美感を想起す
る。また,底面から観察した場合も,内鍔がある幅広の突設部底面では
なく,突設部先端のシャープな形状を目にすることになり,従来の重々
しい印象とは全く異なる印象を受ける。
このように,本件登録意匠Aは,内周部全周にわたり内鍔のない突設
部を有するという特徴的な態様を有しているため,需要者に対し独自の
美感を生じさせており,内鍔のない突設部内周面と底面が,需要者の注
意を惹き付ける部分である。
エ被告の主張に対する反論
(ア)先行意匠
被告が引用する公知意匠(乙A2∼9)のうち乙A5ないし9は,
本件登録意匠Aと物品が異なる。
被告が引用する公知意匠(乙A2∼9)のうち乙A2ないし4は,
いずれも突設部に内鍔が設けられているが,本件登録意匠Aには,そ
のような内鍔は設けられておらず,異なる印象を与える。
,,また出願前に頒布された意匠公報に記載されただけの公知意匠は
需要者にごく普通に知られた周知意匠とは異なり,需要者の注意を惹
き付ける程度が低いとはいえない。
(イ)突設部の具体的形状(意匠公報の記載)について
被告は,マンホール蓋用受枠に係る意匠においては,断面の態様が
重要視されており,全周にわたり突設部を設けたこと自体は,意匠の
要部とはならないと主張するが(後記【被告の主張】(3),本件登)
録意匠Aの意匠公報に記載されている断面図は,意匠の態様を具体的
に特定し,登録意匠の範囲を定めるためのものに過ぎず,類否判断と
は関係がない。
実際,需要者も,断面形状を観察することはない。
(4)対比
ア対比の対象
本件登録意匠Aは,内鍔のない突設部に新たな美感を見出して出願登
録されたのであり,その対象は,突設部の先端部分に限定される。
したがって,被告意匠Aの対象も突設部の先端部分のみであり,突設
部の接合部分である段部は対比の対象とはならない。
イ類否
被告意匠Aは,前記(3)ウと同様の特徴的な態様を有しており,需要
者の視覚を通じて起こさせる美感は,本件登録意匠Aと同一である。
なお,従来品に存在した内鍔は,突設部の下端から内方へ水平に張り
出した棚状の形であり,底面に幅広の内鍔面を晒しているため,本件登
録意匠Aや被告意匠Aとは全く印象が異なる。
【被告の主張】
以下のとおり,被告意匠Aは,本件登録意匠Aとは類似しない。
(1)本件登録意匠Aの構成
本件登録意匠Aの構成は,マンホール蓋用受枠の開口端内周部分におい
て,蓋を支持するための,内周方向への絞り部分の下端に,垂直方向の短
(「」,「」。)筒部原告主張の突設部に相当し以下突設部と統一表記する
を形成する構成である。
なお,突設部の外周面上端(突設部の付け根外側)からマンホール蓋用
受枠の外周壁との間に水平部分が形成されているが,登録された部分は,
突設部に加え,この水平部分を含む。
(2)被告意匠Aの構成
被告意匠Aの構成は次のとおりである。
マンホール蓋を支持する開口端の内周部分が,開口端から斜め下方に向
けて直線的な第一傾斜面が形成され,同傾斜面の下端部分に短い垂直部分
と内方への水平部分で小さな段部が形成され,小さな段部に続けて,第一
傾斜面よりも緩やかな第二傾斜面が形成され,同傾斜面の下端部はアール
状に形成されている。
すなわち,被告意匠Aの開口端内周部分は,第一傾斜面と第二傾斜面と
の間に小さな段部が形成されているとはいうものの,全体として下方に向
けて内方に傾斜するテーパー状の突設部が形成されており,従来品の内鍔
に近い印象を与える。
(3)本件登録意匠Aの要部
ア需要者
マンホール蓋用受枠の需要者は,自治体の担当者や工事業者である。
イ観察態様
マンホール蓋用受枠の需要者は,ある程度の専門知識を備え,その取
扱いにも習熟しているから,受枠を任意の方向から観察し,突設部の具
体的態様の差異を容易に理解することができる。
また,需要者は,マンホール蓋用受枠を,工事が完成した状態でのみ
観察するものではなく,計画や設計あるいは施工段階といった,あらゆ
る時点で観察し,検討する。
そして,マンホール蓋用受枠は,底面を見ることができないほど重い
ものではないし,小さなサイズのものであれば,容易に持ち上げて任意
の方向から観察することができる。
マンホール蓋用受枠を任意の方向から観察した場合,需要者は,突設
部について,垂直方向であるか,内方へ傾斜しているかなどの具体的態
様を,明確に認識することができる。
ウ意匠公報の記載
本件登録意匠Aの対象は,意匠公報に実線で表された,垂直方向の突
設部と,突設部上端外側の水平部分であるから,突設部の具体的態様が
重要である。
エ公知意匠
本件登録意匠Aの先行意匠として,意匠登録第1019108号(乙
A1:平成10年8月20日発行。以下「引用意匠A」という)が存。
在する。
引用意匠Aは,マンホール蓋用受枠の内周部において,外周壁との間
に隙間を形成し,内方へ傾斜した突設部を形成したものである。
,,()。また引用意匠A以外にも略同様の意匠が存在する乙A2∼9
これらのことからすれば,内周部に突設部を形成すること自体は,本
件登録意匠Aの出願当時,公知であったといえる。
オ要部
以上によると,本件登録意匠Aの要部は,意匠公報に実線で記載され
ている,一定の厚みで垂直方向に形成された,突設部の具体的態様にあ
るといえる。
なお,マンホール蓋用受枠に係る意匠においては,断面の態様が重要
視されており,全周にわたり突設部を設けたこと自体は,意匠の要部と
はならない。
(4)対比
ア対比の対象
本件登録意匠Aに対応する被告意匠Aの態様は,マンホール蓋用受枠
の内周部において,段部に続いて形成された,第二傾斜面を備えた突設
部である。
しかし,部分意匠においても,意匠公報に実線で記載された部分が,
物品全体のどのような部分に位置し,物品全体の意匠にどのように影響
するかは,類否判断の要素であるから,上記段部についても,対比部分
であると同時に,マンホール蓋用受枠全体のどのような部分に位置し,
受枠全体の意匠にどのように影響するかが重要である。
イ類否判断
本件登録意匠Aの突設部は,一定の厚みで垂直方向に形成されている
が,被告意匠Aの突設部は,内方へ傾斜している。
そして,本件登録意匠Aの要部は,一定の厚みで垂直方向に形成され
た突設部であって,被告意匠Aのような,第二傾斜面を有する突設部で
はないし,本件登録意匠Aの突設部からは,内鍔の印象も生じない。
一方,被告意匠Aの突設部は内方へ傾斜しているため,第二傾斜面が
,,内鍔に近い印象を与えるしその上端に段部が形成されていることから
,。角度変化の印象が強調され本件登録意匠Aの突設部とは印象が異なる
しかも,上記被告意匠Aの態様は,公知意匠と共通する態様である。
これらのことからすれば,本件登録意匠Aと被告意匠Aは,需要者に
対し,全く異なる印象を与えるといえる。
2争点A−2(本件意匠権Aは,新規性欠如の無効原因を有しており,意匠
登録無効審判により無効にされるべきものか)について
【被告の主張】
原告主張のように,突設部の態様について,垂直も斜めもほとんど同一で
あるとすれば,本件登録意匠Aは,引用意匠Aなどの先行意匠と同一であっ
て,日本国内において公然知られた意匠となり,本件意匠権Aは,無効審判
により無効となる。
よって,特許法104条の3を準用する意匠法41条により,原告は,被
告に対し,本件意匠権Aを行使することができない。
【原告の主張】
争う。
3争点B−1(被告製品Bは,本件発明の構成要件B,C,D,E,Gを充
足するか)について
【原告の主張】
本件被告受枠詳細図に基づき現実に製造された被告製品Bは,別紙被告製
品B写真説明書記載のとおりであり,厚膜の塗装がされているところ,以下
のとおり,本件発明の構成要件B,C,D,E,Gを充足する。
(1)被告製品Bの構成
被告製品Bの構成要件は,別紙被告製品B写真説明書に基づき,次のと
おり分説することができる。
a丸型の蓋本体10と,この蓋本体10を内周面上部で支持する受枠20とか
らなる地下構造物用丸型蓋において,
b受枠20の内周面上部には,受枠20の内方に向けて受枠アール面21とa
第二傾斜面21を形成するとともに,第二傾斜面21の上方に段部22をbb
連続して形成し,
aac蓋本体10の外周側面には,前記受枠アール面21に倣った蓋A面11
を形成するとともに,この蓋A面11の上方に前記段部22に倣った蓋a
アール面12を連続して形成し,
dまた,前記段部22の上方には,受枠20の上方に向けて拡径する第一傾
斜面23を連続して形成し,
e前記蓋アール面12の上方には,蓋本体10の上方に向けて拡径する蓋上
部傾斜面13を連続して形成し,
f蓋本体10を受枠20で支持した閉蓋状態において,第一傾斜面23と蓋上
部傾斜面13は嵌合し,
g蓋アール面12と段部22および蓋A面11と受枠アール面21は接触しaa
ないようにしたことを特徴とする
h地下構造物用丸型蓋。
(2)構成要件充足性
ア構成要件Bについて
被告製品Bの受枠内周面上部には,受枠アール面21と第二傾斜面21a
が存在するところ,受枠アール面21は,受枠A面24と滑らかに連続ba
し,受枠の内方に向けて凸となる曲面となっているから,本件発明の受
枠凸曲面部に該当する。
また,第二傾斜面21の上方の段部22は,厚膜の塗装と相俟って,滑b
,。らかな凹曲面を形成しているから本件発明の受枠凹曲面部に該当する
よって,被告製品Bの構成bは,本件発明の構成要件Bを充足する。
イ構成要件Cについて
被告製品Bの蓋A面11は,傾きの異なる蓋下部傾斜面11と蓋B面ab
14を,受枠内周方向に凹んだ方向で滑らかに連続させる部分であり,厚
膜の塗装がされているため,凹曲面になっているから,本件発明の蓋凹
曲面部に該当する。
また,蓋A面11の上方には,蓋下部傾斜面11と蓋アール面12が存ab
在するところ,蓋アール面12は,傾きの異なる蓋下部傾斜面11と蓋上b
部傾斜面13とを,受枠20の外周方向に凸な方向に滑らかに連続させる面
,,。であり凸曲面を構成しているから本件発明の蓋凸曲面部に該当する
さらに,蓋本体の上記凸曲面部及び同凹曲面部は,受枠の前記凹曲面
部(前記ア)及び同凸曲面部(前記ア)と対応した位置に設けられ,そ
れぞれの凸曲面部は,凹曲面部により閉蓋時に相手方に接することがな
いように構成されており,それぞれの凸曲面部は,対応する凹曲面部に
倣った形状といえる。
よって,被告製品Bの構成cは,本件発明の構成要件Cを充足する。
ウ構成要件Dについて
被告製品Bの段部22が本件発明の受枠凹曲面部に該当することは,前
記アのとおりであるところ,その上方には,受枠20の上方に向けて拡径
する第一傾斜面23が連続して形成されている。
よって,被告製品Bの構成dは,本件発明の構成要件Dを充足する。
エ構成要件Eについて
被告製品Bの蓋アール面12が本件発明の蓋凸曲面部に該当すること
は,前記イのとおりであるところ,その上方には,蓋本体10の上方に向
けて拡径する蓋上部傾斜面13が連続して形成されている。
よって,被告製品Bの構成eは,本件発明の構成要件Eを充足する。
オ構成要件Gについて
被告製品Bの蓋アール面12及び段部22と蓋A面11及び受枠アール面a
21が,それぞれ,本件発明の蓋凸曲面部及び受枠凹曲面部と蓋凹曲面a
部及び受枠凸曲面部に該当することは,前記ア・イのとおりである。
そして,被告製品Bの蓋アール面12と段部22とは接触せず,蓋A面11
と受枠アール面21とは接触しない。aa
よって,被告製品Bの構成gは,本件発明の構成要件Gを充足する。
【被告の主張】
被告製品Bは,本件被告受枠詳細図に基づき製造され,0.1㎜にも満た
ない薄膜の塗装がされたものであるところ,以下のとおり,本件発明の構成
要件B,C,D,E,Gを充足しない。
(1)被告製品Bの構成
被告製品Bの構成は次のとおりである。
a丸型の蓋本体10と,この蓋本体10を内周面上部で支持する受枠20とか
らなる消火栓用鉄蓋及び受枠であり,
b受枠20の内周面上部には,上方に向けて拡径される直線的な第一傾斜
面23を形成し,
c第一傾斜面23の下端に続けて小さな垂直面と水平面によって段部22を
形成し,
d段部22よりも下方に第一傾斜面23よりも緩やかな第二傾斜面21を形b
成し,
e第二傾斜面21に続けて受枠アール面21を介して受枠垂直面(受枠ba
A面24)を形成し,
f蓋本体の上部外周面は,第一傾斜面23と同じ傾斜角度の蓋上部傾斜面
13を形成し,
g蓋上部傾斜面13に続けて,受枠との間に隙間を維持した状態で第二傾
斜面21と近似の緩やかな傾斜である蓋アール面12及び蓋下部傾斜面11b
並びに蓋垂直面(蓋B面14)を形成し,垂直面の下端に環状凸面を形b
成した,
h消火栓用鉄蓋及び受枠。
(2)構成要件充足性
ア構成要件Bについて
被告製品Bには,受枠20の内方に向けて凸となる受枠凸曲面部は存在
せず,直線状である第二傾斜面21の上部に続けて,水平面と垂直面とb
により構成される段部22が設けられ,段部22の上方に直線的な第一傾斜
面23が形成されている。そして,段部22は直線の組み合わせであって凹
曲面ではない。
すなわち,段部22は凹曲面部に該当せず,被告製品Bは,凸曲面部と
凹曲面部が連続して形成されるものではないから,本件発明の構成要件
Bを具備しない。
イ構成要件Cについて
,()被告製品Bの蓋A面11は蓋下部傾斜面11と蓋垂直面蓋B面14ab
が交わるとともに,蓋垂直面(蓋B面14)に形成した環状凸面に囲まれ
た空間であって,凹曲面部ではないし,受枠20の凸曲面部に倣う形状で
もない。
また,蓋下部傾斜面11と蓋アール面12は,直線である蓋下部傾斜面b
11と蓋上部傾斜面13の境界線をアール面としたものであって,受枠凹b
曲面部に倣った凸状ではない。
したがって,被告製品Bには,蓋本体10や受枠20の凹曲面部も,凹凸
に倣った曲面部も存在せず,本件発明の構成要件Cを具備しない。
ウ構成要件Dについて
被告製品Bでは,第一傾斜面23の下端に続けて垂直面及び水平面で段
部22が形成されており,受枠凹曲面部が存在しない。
また,段部22の垂直面に対して第一傾斜面23が交わっており,傾斜面
が凹曲面部に連続して形成されてもいない。
したがって,被告製品Bは,本件発明の構成要件Dを具備しない。
エ構成要件Eについて
被告製品Bには蓋凸曲面部が存在しないため,本件発明の構成要件E
を具備しない。
オ構成要件Gについて
被告製品Bには蓋本体10や受枠20に凹曲面部が存在しないため,本件
発明の構成要件Gを具備しない。
4争点B−2(被告製品Bは,本件発明と均等か)について
【原告の主張】
仮に,被告製品Bの段部22が本件発明の凹曲面部に該当しないとしても,
以下のとおり,被告製品Bは,本件発明と均等である。
(1)非本質的部分
発明の本質的部分とは,明細書の特許請求の範囲に記載された構成のう
ち,当該発明特有の作用効果を生じさせる技術的思想の中核をなす特徴的
部分である。そして,本件発明特有の作用効果は,本件作用効果①・②で
ある。
ところが,本件発明では,蓋本体と受枠の凸曲面部同士が接触し,ガイ
ドされるのであって,凹曲面部は本件作用効果①とは関連性がない。
また,本件作用効果②についても,蓋本体と受枠の凸曲面部と凹曲面部
は接触せず,蓋本体に形成した蓋上傾斜面部が受枠の受枠上傾斜面部に食
い込むことで,蓋本体が受枠に確実に嵌合支持され,蓋本体のガタツキを
防止するのであるから,凹曲面部でなくとも,蓋凸曲面部と接触しないよ
うに構成すればよい。
したがって,凹曲面部は本件発明の本質的部分ではない。
(2)置換可能性
従来技術では,閉蓋の際,蓋本体の前部が大きく受枠内に落ち込むこと
があり,この状態で蓋本体をさらに押し込むと,蓋本体の前部左右の側面
が受枠の内周面(垂直面)に接触して嵌り込んでしまった。
本件発明の凹曲面部を段部22に置き換えた場合でも,閉蓋の際には,蓋
アール面12と受枠アール面21が先に当接するため,従来技術のように,a
蓋本体の前部が大きく受枠内に落ち込むことはなく,本件作用効果①が生
じる。
また,第一傾斜面23と蓋上部傾斜面13が嵌合し,蓋アール面12と段部22
及び蓋A面11と受枠アール面21は接触しないようにしていることかaa
ら,本件作用効果②が生じる。なお,この構成により過剰な食い込み力を
抑制できることは,被告自身も認めていることである。
したがって,凹曲面部を段部22に置き換えても,本件特許発明の目的を
達成することができ,同一の作用効果を奏する。
(3)置換容易性
本件発明と同様の作用効果を得るためには,蓋凸曲面部と受枠凹曲面部
が接触しないように構成すればよいことは,明細書から明らかである。
そして,面と面が接触しないように構成するために,一方の面を削るこ
とは,当業者であれば,被告製品Bの製造時点において,当然に認識する
ことができる。
したがって,凹曲面部を段部22に置き換えることは,当業者であれば,
被告製品Bの製造時点において,容易に想到することができた。
(4)推考容易性
被告製品Bは,本件発明の特許出願時において公知であった技術ないし
当業者がこれから容易に推考することができた技術ではない。
(5)意識的除外等
原告は,被告製品Bの構成について,本件発明の特許出願手続において
特許請求の範囲から意識的に除外したなど,特許発明の技術的範囲に属し
ないことを承認するか,又は外形的にそのように解されるような行動を
とっていない。
【被告の主張】
被告製品Bは,少なくとも,前記【原告の主張】(1)ないし(3)の要件を
満たさないので,本件発明と均等ではない。
(1)本質的部分
本件発明において,蓋本体や受枠の凸曲面と凹曲面が連続する構成は,
本件作用効果①を発揮するために必須であり,発明の技術的思想の中核を
なす特徴的部分,すなわち本質的部分である。
(2)置換可能性の不存在
本件発明では,閉蓋の際,蓋凸曲面部が受枠凸曲面部によってガイドさ
れながら移動するのであり,凸曲面部と凹曲面部が連続的に形成されるこ
とによって,接触点が円滑に移動するものと考えられる。
一方,被告製品Bのように,平面の組み合わせで段部22を形成したもの
では,この部分を接触点が通過すると,円滑な移動の妨げとなる。
したがって,凹曲面部を曲面から平面にすると,作用効果が異なるので
あり,両者の置き換えは不可能である。
(3)置換容易性の不存在
,,本件明細書には受枠の内周面上部に受枠凸曲面部を形成するとともに
その上方に受枠凹曲面部を連続して形成し,蓋本体の外周側面下部に蓋凹
曲面部を形成するとともに,その上方に蓋凸曲面部を連続して形成したこ
とにより,発明の効果を生じることが明記されており,発明者は,蓋本体
が円滑にガイドされるためには,凸状の曲面と凹状の曲面が連続して形成
されることが必要であると認識していた。
したがって,凹曲面部を段部22に置き換えることは,本件発明の特許出
願時において発明者が認識していた技術的思想の創作の範囲を逸脱する。
5争点C−1(被告意匠Cは本件登録意匠Cと類似するか)について
【原告の主張】
以下のとおり,被告意匠Cは,本件登録意匠Cと類似する。
(1)本件登録意匠Cの構成
本件登録意匠Cは,マンホール蓋用受枠の内周面に関する部分意匠であ
り,別紙本件登録意匠C目録記載のとおりであるが,内周面が二段の傾斜
面で構成されている。
(2)被告意匠Cの構成
被告意匠Cは,上記本件登録意匠Cと同様の構成である。
なお,被告製品Cは,第一傾斜面と段部の垂直面の角度が近似し,段部
の水平面も幅が1.5㎜しかないところ,屋外で厳しい風雨に晒されるた
め,厚膜の塗装がされている。このため,段部のような軽微な凹凸は,ほ
とんど看取できず,第一傾斜面の後,段部を含めて第二傾斜面が形成され
ている印象を受ける。
また,被告製品Cを上方から観察した場合に,その具体的な寸法を認識
することは困難である。
(3)本件登録意匠Cにおける需要者の注意を惹き付ける部分
ア需要者
マンホール蓋用受枠の需要者は,自治体の担当者や工事業者である。
イ観察態様
マンホール蓋用受枠は,極めて重量が重く,容易に移動させることが
,,,,困難であり高さが外径と比べて極めて小さいから当業者は受枠を
上方又は斜め上方から観察する。さらに,一旦設置すれば,その大部分
は地面に埋設されてしまい,上方又は斜め上方から観察することしかで
きない。
ウ需要者の注意を惹き付ける部分
マンホール蓋用受枠の需要者は,十分な知識と経験を有するから,こ
れに接した場合,どのように蓋が保持されるかを容易に理解し,保持さ
れた状態を想像する。
需要者は,本件登録意匠Cに接した場合,二段の傾斜面で蓋を保持す
,,,る態様に従来品にはない独自の美感を想起するのでありこの部分が
需要者の注意を惹き付ける部分である。
エ被告の主張に対する反論
(ア)先行意匠
登録意匠とそれ以外の意匠との類否判断は,需要者の視覚を通じて
起こさせる美感に基づいて行うものであり,周知意匠であればともか
く,公知意匠との一致点が,判断の対象から除外されることはない。
また,需要者の美感には,意匠の部分的な異同のみならず,物品全
体から受ける印象が大きな影響を及ぼすところ,従来品の受枠内周面
は,蓋を保持する傾斜面と,万一の場合に蓋の下端部を支える突起で
構成されており,需要者は,機能の違う両部分を,全く別の構成とし
て認識している。これに対し,本件登録意匠Cでは,第一傾斜面,第
二傾斜面及びそれに続く垂直面で蓋を保持しており,突起が存在しな
い。したがって,需要者は,第一傾斜面,それに連なる第二傾斜面,
さらにその下部に続く垂直面を強く意識し,従来品とは全く異なる美
感を想起する。
(イ)別件登録意匠
原告は,傾斜面とアール面の境界部分に稜線が現れている本件登録
意匠C以外に,これが現れていない意匠を出願しているが,このこと
は,稜線の有無が需要者の美感に決定的な影響を与えることを意味し
ない。稜線以外にも類似の美感を生じさせる構成態様がある場合,こ
れにより生じる美感の影響を,稜線により生じる美感の影響と対比し
て,全体として需要者が類似の美感を有するかどうかを判断すべきで
ある。
(4)対比(類否)
本件登録意匠Cや被告意匠Cは,蓋の保持について,突起に依存しない
独自の構成を有しており,需要者は,両意匠から,第一傾斜面と第二傾斜
面という特徴的な構成を看取し,強い類似の美感を想起する。
仮に,需要者が被告意匠Cの段部を認識し得るとしても,このような軽
微な相違点から生じる美感は,上記の強い類似の美感を減殺するものでは
ない。
【被告の主張】
以下のとおり,被告意匠Cは,本件登録意匠Cとは類似しない。
(1)本件登録意匠Cの構成
本件登録意匠Cの構成は,マンホール蓋用受枠の開口端内周部分におい
て,下方に向けて縮径される直線的な傾斜面と,傾斜面の下端にアール面
を介して形成される垂直面を設けた構成である。
なお,傾斜面とアール面の境界部分に,全周にわたって稜線が現れてい
る。
(2)被告意匠Cの構成
被告意匠Cの構成は次のとおりである。
マンホール蓋を支持する開口端の内周部分が,開口端から斜め下方に向
けて直線的な第一傾斜面が形成され,第一傾斜面の下端部分に短い垂直部
分と内方への水平部分とで小さな段部が形成され,小さな段部に続けて第
一傾斜面よりも緩やかな第二傾斜面が形成され,第二傾斜面の下端部は
アール状に形成されて下方に向けた垂直面に連続している。
,,なお被告製品Cにおいて垂直面と水平面で形成される特徴的な段部は
塗装がされても明確に認識することができる。
(3)本件登録意匠Cの要部
ア需要者
マンホール蓋用受枠の需要者は,自治体の担当者や工事業者である。
イ観察態様
マンホール蓋用受枠の細部の形態は,展示会や取引の際,設置場所へ
の搬入の際などに,あらゆる角度から観察することが可能である。
ウ公知意匠
本件登録意匠Cの先行意匠には,実開昭61−141353号公報の
第5図の意匠がある(乙C1。以下「引用意匠C」という。。)
引用意匠Cは,マンホール蓋用受枠の内周面に,下方に向けて縮径さ
れる直線的な傾斜面と,傾斜面の下端にアール面を介して形成される垂
直面を設けたものであり,本件登録意匠Cと意匠的な特徴が共通する。
エ別件登録意匠
原告は,本件登録意匠Cとは別に,同一部分に係る意匠登録第121
5508号の部分意匠権を有している(乙D7。以下,これに係る意匠
を「別件登録意匠」という。。)
そして,本件登録意匠Cでは,傾斜面とアール面との境界部分に,全
周にわたって明瞭な稜線が現れているのに対し,別件登録意匠には,稜
線が全く現れていないから,原告は,この部分の形態の重要性を十分に
認識しているはずである。
よって,本件登録意匠Cと被告意匠Cの比較においても,同部分の形
態は重要な意味をもつ。
オ要部
本件登録意匠Cと引用意匠Cは,直線的な傾斜面と,傾斜面の下端に
アール面を介して垂直面が形成されるという基本的な構成態様が共通し
ている。
したがって,本件登録意匠Cの要部は,上記共通部分を除いた,傾斜
面とアール面及び垂直面の寸法比率,あるいは傾斜面の上端及び垂直面
の下端に形成された面取りの態様に限定される。
なお,需要者であれば,マンホール蓋用受枠において,外観的にも機
能的にも重要な部分である内周面の形態は,設置状態では見にくいとし
ても,明瞭に認識する。
(4)対比
ア差異点
本件登録意匠Cは,直線的な傾斜面に続けてアール面が形成されてい
るが,被告意匠Cは,第一傾斜面に続けて段部が形成され,段部に続け
て第二傾斜面が形成されている。
さらに,本件登録意匠Cは,傾斜面とそれ以外の部分との寸法比率が
略1対1.3であるが,被告意匠Cは,段部より上方と下方の寸法比率
が,略1対0.6である。
イ類否
これらのことからすれば,両意匠は,需要者に対し,全く異なる印象
を与えるといえる。
第4当裁判所の判断
1争点A−1(被告意匠Aは,本件登録意匠Aと類似するか)について
本件登録意匠A(1)本件登録意匠Aの構成態様(甲A2)
本件登録意匠Aは,右図において実線で表
された円形のマンホール蓋用受枠に係る部分
意匠であり,受枠の内周部の内側下部に,下
向きに設けられた突設部と,突設部と受枠の
,外周壁との隙間に設けられた水平部からなり
突設部は,円形のマンホール蓋用受枠の一部
であるため,受枠の上から見て,突設部が円を描き,底面(円)の半径に
比べ,高さの低い円筒を形成している(基本的構成態様。)
また,突設部の厚みに変化がなく,下向き垂直方向に形成されているた
,()。め突設部により形成された円筒の内側は円柱真円柱状となっている
また,その下端部(底面)は水平であり,内周面(内周側垂直面)との境
界,及び外周面(外周側垂直面)との境界は,いずれも半径の小さいアー
ル状である(具体的構成態様。)
(2)被告意匠Aの構成態様(甲A3,甲D1,弁論の全趣旨)
被告意匠Aは,被告製品Aのうち前記(1)に対応する部分である。
基本的構成態様は本件登録意匠Aと同じであり,受枠内周部の内側下部
に,下向きに設けられた突設部と,突設部と受枠外周壁との隙間に設けら
れた水平部からなっており,突設部は,円形のマンホール蓋用受枠である
ため,受枠の上から見て,突設部が円を描き,底面(円)の半径に比べ,
高さの低い円筒を形成している。
また,その具体的構成態様についてみると,突設部は,受枠内周部の内
側下部から下向きに設けられているが,内周面側においては,突設部上部
から受枠の内方への傾斜面と,そこからアール面を介してほぼ垂直方向に
形成された面とで構成され,受枠外周壁との隙間側においては,内方へ傾
斜した斜面(外周面)のみで形成され,斜面の勾配は内周面よりも急であ
る。そのため,被告意匠Aは,全体として内方に傾斜しており,突設部の
厚みも一定ではない。その結果,円筒の内側上半分はテーパー状に,円筒
の内側下半分は円柱状となっている。また,その下端部(底面)は水平で
あり,内周面(内周側垂直面)との境界,及び外周面(外周側傾斜面)と
の境界は,いずれも半径の小さいアール状である。
(3)本件登録意匠Aの要部
登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚
()。を通じて起こさせる美感に基づいて行うものである意匠法24条2項
したがって,その判断にあたっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用
態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要
者の注意を惹き付ける部分を要部として把握した上で,両意匠が要部にお
いて構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通
にするか否かを判断すべきである。
以下,本件登録意匠Aの要部を検討する。
アマンホール蓋用受枠の性質,用途,使用態様
,,マンホール蓋用受枠はマンホールの蓋を内周面で支える受枠であり
自治体等が購入し,地面に設置するものである。
マンホールは,通常は蓋が閉じられているため,受枠が設置された状
態において,その内周面が人の目に触れることはない。内周面が人の目
に触れるのは,購入検討時,設置工事時,マンホール使用のため蓋を外
したときなどである。
そして,マンホール蓋用受枠は相当の重量を有するが(甲D2,設)
置前であれば,需要者である自治体の担当者や工事業者(需要者につい
ては争いがない)は,これを任意の角度から観察できる。。
引用意匠Aイ公知意匠
マンホール蓋用受枠に係る公知意匠とし
ては,引用意匠Aが存在する(乙A1。)
引用意匠Aは,右図のとおり,内周部にお
いて,内方下方向へ傾斜した突設部を形成
し,さらに突設部と外周壁との隙間に水平
部を設けたものであるが,突設部の下端には内鍔が形成されている。
ウ要部
前記イによれば,本件登録意匠Aの構成態様のうち,内周部に突設部
を設け,突設部と外周壁との隙間に水平部を設けることは,本件登録意
匠Aの出願当時において公知であったと認められる。
そして,前記(1),同アによれば,需要者が本件登録意匠Aの実施品
を観察する場合,上方からは,内方へせり出した(傾斜のある)突設部
や内鍔を目にすることがなく,突設部が真下に落ち込み,突設部内周面
,,,によって形成される内鍔などのない真円柱を目にすることになるし
下方からは,内鍔で形成された幅広の底面を目にすることがなく,細幅
の突設部先端を目にすることになる。そのため,本件登録意匠Aの突設
部の態様は,需要者に対し,全体的にすっきりとした印象を与えるとい
える。
一方,突設部の外周面や,突設部と外周壁との間の水平部分は,受枠
の下側から見ても,目立つ箇所とはいえず,その傾斜角度や突設部の厚
み(厚みは突設部の内周面と外周面との関係によって決せられる)を。
含め,需要者の注意を惹き付けるとは認められない。
したがって,内鍔などがなく,円柱状となっている突設部の内周面及
び下端部(底面)が,本件登録意匠Aの要部であると認められる。
(4)対比
前記(3)ウの要部について,本件登録意匠Aと被告意匠Aとを対比する
と次の共通点,差異点を見出すことができる。
ア共通点
突設部に内鍔がなく,突設部の下端部(底面)は水平であり,下端部
(突設部底面)と内周面との境界,及び下端部(突設部底面)と外周面
との境界はいずれも半径の小さいアール状である。
イ差異点
本件登録意匠Aでは,突設部が垂直方向に形成されているため突設部
の内周側に円柱が形成されるが,被告意匠Aでは,突設部の内周側は,
その上半分がテーパー状であり,その下半分が円柱状である。
(5)類否判断
ア前記(4)アのとおり,本件登録意匠Aと被告意匠Aは,いずれも突設
部内周側に内鍔を有しておらず,下端部と内周面や外周面との境界がい
ずれも半径の小さいアール状である点で共通している。
イしかしながら,本件登録意匠Aは,前記(1),(3)ウのとおり,本件
,,登録意匠Aの実施品を上方から観察した場合突設部が真下に落ち込み
突設部内周面でできる真円柱が見えるのに対し,被告意匠Aでは,前記
(2)のとおり,需要者が,被告製品Aを上方から観察する際,突設部内
周面でできる壁面は,上半分がテーパー状で,下半分が円柱状の二段に
分かれている態様を目にすることになり,需要者に,あたかも突設部全
体が内鍔を構成しているような印象を与える甲A6甲D1乙D4∼(,,
6。)
上記のとおり,差異点により,被告意匠Aは,本件登録意匠Aと異な
る印象を与えるものである。
なお,被告意匠Aは,下方から観察する場合は,本件登録意匠Aと印
,,象が大きく異ならないがマンホール蓋用受枠に関する意匠である以上
上方から観察して得られる印象は,下方から観察して得られる印象と比
べ,看者に与える印象の度合いは大きいし,下端部が水平で,突設部内
周面との境界や,外周面との境界がいずれも小さいアール状であること
は特徴的な形状ともいえず,上述した印象の違いを減殺させるものでは
ない。
(6)結論
以上のとおり,両意匠は,要部である突設部の具体的態様において差異
点を有しているところ,この差異点から受ける印象は,共通点から受ける
印象を凌駕しており,両意匠が視覚を通じて起こさせる全体としての美感
を異にしているということができる。
被告意匠Aは,本件登録意匠Aと類似するとは認められない。
2争点B−1(被告製品Bは,本件発明の構成要件B,C,D,E,Gを充
足するか)について
(1)被告製品Bの構成
被告製品Bの受枠が本件被告受枠詳細図に基づいて製造されたものであ
ることは,当事者間に争いがない。
原告は,被告製品Bは厚膜の塗装がされており,被告作成のカットモデ
ル(乙D5,6)は,現実に製造されている被告製品Bより薄膜になって
いると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
結局,被告製品Bの受枠は,本件被告受枠詳細図に記載されたとおりの
構成を有すると認められるので,以下,この構成を前提に検討する。
(2)段部22について
被告製品Bの受枠において,第二傾斜面の上方に,第一傾斜面の下端に
続いて段部22が形成されていることは,当事者間に争いがない。
原告は,同段部22は,厚膜の塗装がされているため,滑らかな凹曲面を
形成しており,本件発明の受枠凹曲面部に該当すると主張する。
しかしながら,前記(1)のとおり,被告製品Bの受枠は,本件被告受枠
詳細図に記載されたとおりの段部22を有すると認められるところ,この段
部22は,垂直面と水平面とで形成されており,曲面に該当するとは認めら
れない。
なお,原告は,被告製品Bが本件作用効果①・②を有することを主張す
るが,構成要件充足性に係る上記認定を左右するものではない。
(3)結論
前記(2)によれば,被告製品Bは,少なくとも本件発明の構成要件Bを
充足するものではない。
3争点B−2(被告製品Bは,本件発明と均等か)について
原告は,仮に,段部22が凹曲面部に該当しないとしても,曲面であること
は本件発明の非本質的部分であり,段部のように平面で凹部を形成すること
,,,は本件特許出願時に置換可能でありかつ容易に想到するものであるから
被告製品Bは,本件発明と均等であると主張するので,以下検討する。
(1)非本質的部分か否か
発明の本質的部分とは,明細書の特許請求の範囲に記載された構成のう
ち,当該発明特有の作用効果を生じさせる技術的思想の中核をなす特徴的
部分である。
そして,本件発明特有の作用効果が本件作用効果①・②であることは争
いがないので,以下,本件作用効果①・②を生じさせる技術的思想の中核
をなす特徴的部分について検討する。
ア本件明細書の記載(本件作用効果①関係)
本件明細書には,本件作用効果①に関し,次のような記載がある(甲
B2。)
(ア)受枠の内周面上部には,受枠の内方に向けて凸となる受枠凸曲面部
を形成するとともに,この受枠凸曲面部の上方に凹状の受枠凹曲面部
を連続して形成し,蓋本体の外周側面には,前記受枠凸曲面部に倣っ
た凹状の蓋凹曲面部を形成するとともに,この蓋凹曲面部の上方に前
記受枠凹曲面部に倣った凸状の蓋凸曲面部を連続して形成し‥‥段。(
落【0008【課題を解決するための手段)】】
(イ)このような構成にすることで,閉蓋時に蓋本体の後方から蓋本体を
押し込んで受枠内に収める際,蓋本体の蓋凸曲面部の下側が受枠の受
枠凸曲面部の上側に接触し,さらに蓋本体を後方から押すと蓋本体の
蓋凸曲面部と受枠の受枠凸曲面部との接触部が徐々に蓋本体の前部に
移動しながら蓋凸曲面部が受枠凸曲面部によってガイドされる。その
ため,蓋本体を後方から押し込むだけで,蓋本体を受枠にスムーズに
収めることができる(段落【0009)。】
(ウ)本発明では,受枠の内周面上部には,受枠の内方に向けて凸となる
受枠凸曲面部を形成するとともに,この受枠凸曲面部の上方に凹状の
受枠凹曲面部を連続して形成し,蓋本体には,その外周側面下部に凹
状の蓋凹曲面部を形成するとともに,この蓋凹曲面部の上方に凸状の
蓋凸曲面部を連続して形成したので,閉蓋の際,蓋凸曲面部が受枠凸
曲面部によってガイドされながら移動し,バールで蓋本体を引きずる
ようにしたり,蓋本体を後方から押し込むだけで蓋本体を受枠内にス
ムーズに収めることができる(段落【0020【発明の効果)。】】
イ技術的思想の中核をなす特徴的部分
(ア)前記ア(イ)の記載によれば,閉蓋時に接触するのは,蓋本体と受枠
の各凸曲面部同士であるし,本件明細書全体を見ても,蓋凸曲面部が
ガイドされるにあたり,受枠凹曲面部が直接的に果たす役割について
は明示されていない。
しかしながら,前記ア(イ)の記載は,課題を解決するための手段と
して記載された同(ア)の構成,すなわち受枠に凸曲面部と凹曲面部を
連続して形成し,蓋本体にはこれに倣う形で凹曲面部と凸曲面部を連
続して形成することを,本件作用効果①発生の前提として記載されて
いる。
また,発明の効果についての前記ア(ウ)の記載中には,受枠凹曲面
部を含む同(ア)の構成が示された上,同構成によって本件作用効果①
が発生する旨説明されている。
(イ)これらのことからすれば,本件発明は,受枠に凸曲面部と凹曲面部
を連続して形成し,蓋本体にはこれに倣う形で凹曲面部と凸曲面部を
連続して形成することをもって,本件作用効果①を発生させる発明と
いえる。
したがって,受枠凹曲面部の形状は,本件発明の主要な根拠となる
部分であり,凹曲面部の形状が本件発明の技術的思想の中核をなす特
徴的部分ではないということはできない。
(2)結論
以上のとおりであるから,原告の主張は,本件特許発明の本質的部分の
置換を前提とするものであって,均等侵害のその余の要件について検討す
るまでもなく理由がない。
4争点C−1(被告意匠Cは,本件登録意匠Cと類似するか)について
本件登録意匠C(1)本件登録意匠Cの構成態様(甲C2)
本件登録意匠Cは,右図において実線で表
された円形のマンホール蓋用受枠の内周面の
部分意匠であり,受枠内周面が上下に2分さ
れ,下部は内側へ張り出した部分から構成さ
れており,内周面は,底面(円)の半径に比
べ,高さの低い円筒を形成している(基本的
構成態様。)
上記内周面は,受枠の内方下側へ直線的に傾斜した傾斜面,傾斜面の下
端に形成されたアール面(原告の主張する第二傾斜面,アール面に続く)
垂直面からなり,傾斜面上端と垂直面下端は面取りがされ(右図で2本線
となっている部分,傾斜面とアール面との境界部分は,内周面中央より)
やや上に位置している。
,,,また上記傾斜面等は円形のマンホール蓋用受枠の内周面にあるため
受枠の上から見て,輪になった帯状の面(傾斜面及び面取り部分によって
形成される)と,ドーナッツ状面(ドーナッツの内側上半分で,アール。
面によって形成される,その最も内側から,そのまま下に続く円柱(垂。)
。)。,,直面によって形成されるを形成しているまた上記境界部分により
全周にわたって稜線(当事者がいうところの稜線であるが,実際は,切り
込んだ谷の部分である)が現れている(具体的構成態様。。)
(2)被告意匠Cの構成態様(甲C3,甲D1,乙D4∼6,弁論の全趣旨)
被告意匠Cは,被告製品Cのうち前記(1)に対応する部分であり,基本
的構成態様は本件登録意匠Cと同じである。
その具体的構成態様は,本件被告受枠詳細図のとおりであり,内周面上
端(開口端)から内方へ直線的に傾斜した第一傾斜面,第一傾斜面の下端
に形成された,垂直面と内方への水平面からなる段部,段部の水平面端か
ら内方へ向けて形成された,第一傾斜面よりも緩やかな第二傾斜面,第二
傾斜面に続くアール面,アール面に連続して形成された垂直面からなって
いる。垂直面下端は面取りがされている。段部は,内周面下方に位置して
おり,段部角には,全周にわたって稜線が現れている。
(3)本件登録意匠Cの要部
登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断にあたり採用され
るべき手法は,前記1(3)で述べたとおりである。
以下,本件登録意匠Cの要部を検討する。
アマンホール蓋用受枠の性質,用途,使用態様
前記1(3)アで述べたとおりである。
Cイ公知意匠引用意匠
マンホール蓋用受枠に係る公知意
匠としては,引用意匠Cが存在する
(乙C1。引用意匠Cは,右図のと)
おり,内方へ直線的に傾斜した傾斜
面,傾斜面の下端に形成されたアー
ル面アール面に続く垂直面からなっ,
。,。ている傾斜面とアール面との境界部分は内周面下方に位置している
別件登録意匠ウ別件登録意匠
原告は,別件登録意匠について意匠
権を有している(乙D7。別件登録)
意匠は,右図において実線で表され
た部分であり,内方へ直線的に傾斜し
た傾斜面と,傾斜面の下端から続く
アール面,アール面に続く垂直面から
なる,マンホール蓋用受枠の部分意匠
である。
本件登録意匠Cと同様,傾斜面上端と垂直面下端は面取りがされてい
,,,るが傾斜面とアール面との境界部分は内周面上方に位置しているし
傾斜面とアール面は滑らかに連続しており,本件登録意匠Cのような稜
線は現れていない。
エ要部
前記(1)のとおり,本件登録意匠Cは,マンホール蓋用受枠の内周面
の部分意匠であり,前記アに述べたことも併せると,需要者は,受枠の
内周面のうち,マンホールの蓋の開閉にあたり影響のある形状に注意を
向けるものと考えられる。
前記イによれば,本件登録意匠Cの構成態様のうち,内方へ直線的に
傾斜した傾斜面,傾斜面の下端から形成されたアール面,アール面に続
く垂直面で内周面を形成している点は,本件登録意匠Cの出願時におい
て公知であるといえるが,必ずしもありふれた形態とはいえず,その傾
斜面の角度やアール面のアールの長さ,両面の大きさの比率などは,需
要者が注視する部分であり,なかでも受枠の内周面のうち張り出した部
(),。分アール面の形状は受枠の特徴的な形態を構成しているといえる
また,本件登録意匠Cと同日に出願された別件登録意匠の内容は,直
線面(本件登録意匠Cの傾斜面)とアール面との境界が稜線となってい
るか,なだらかな曲面となっているかという点が最も大きな相違点であ
ることを併せ考えると,傾斜面とアール面の位置関係や大きさの比率,
2つの面の境界の形状が,需要者の注意を惹くものと認められ,これら
の形状を本件登録意匠Cの要部と認めることができる。
(4)対比
前記(3)エの要部について,本件登録意匠Cと被告意匠Cとを対比する
と次の共通点,差異点を見出すことができる。
ア共通点
いずれも,マンホール蓋用受枠内周面において,内方に向けて直線的
な傾斜面が形成され,その下方に,アール面を含む張り出し部分が形成
されており,内周面の下端に面取りがされている。
イ差異点
(ア)差異点1
本件登録意匠Cは,傾斜面と張り出し面(アール面)との境界部分
が内周面中央よりやや上にあるが,被告意匠Cは,傾斜面と張り出し
面との境界部分(段部)が内周面中央よりやや下にある。
(イ)差異点2
本件登録意匠Cでは,張り出し部分は,傾斜面に続けて直ちに形成
されているが,被告意匠Cでは,張り出し部分は,傾斜面(第一傾斜
面)に続けて形成された段部を経て形成されている。
(ウ)差異点3
本件登録意匠Cの張り出し部分は,傾斜面との境界部分から直ちに
アール面が形成され,続いて垂直面となっているが(垂直面の長さは
アールとほぼ同じであり,張り出し部分の約半分である,被告意。)
匠Cの張り出し部分は,傾斜面との境界部分である段部から,一旦,
第一傾斜面より緩やかな第二傾斜面があり,その後,アール面が形成
され,続いて垂直面となっている(垂直面の長さは,本件登録意匠C
と同様,張り出し部分の約半分である。。)
(エ)差異点4
,,本件登録意匠Cでは内周面上端と下端とに面取りがされているが
被告意匠Cでは,面取りがされているのは内周面下端のみである。
(5)類否判断
ア前記(4)アのとおり,本件登録意匠Cと被告意匠Cは共通点を有する
ところ,直線的な傾斜面とこれに続きアール面を含む張り出し部分から
なる構成自体は,本件登録意匠Cの要部というべきであるが,それだけ
に,張り出し部分の形状の差異点が与える印象が問題となる。
,,,なお内周面下端の面取り部分は上方からは観察することができず
看者に与える印象の度合いは低く,この共通点から受ける印象は,両意
匠の類否判断に影響を及ぼすとはいえない。
イ一方,前記(1),(3),(4)イのとおり,本件登録意匠Cでは,マン
ホール蓋用受枠の登録意匠部分を観察した場合,マンホール蓋用受枠内
周面の内方下側への傾斜面に続く張り出し部分は(アールの長い)曲,
面から連続して垂直面となっているため,全体として1つの面を構成し
ている印象を受ける。そして,傾斜面との境界部分は,くっきりとした
稜線が形成されることにより,2つの面に分断され,その比率は,やや
張り出し部分の方が大きい。また,張り出し部分は,アールの長い曲面
が張り出し部分の半分を占めるため,斜面でできたテーパー状の円筒に
続き,ドーナッツの内側上半分と,これに続いて短い円柱を連続的につ
なぎ合わせて形成した受枠内周面が観察される。
このため,本件登録意匠Cでは,斜面と張り出し部が一本の稜線で2
,,()つの面を区切って形成し上部は帯状下部はドーナッツ内側上半分
状の印象を与える。
他方,前記(2),(3),(4)イのとおり,被告意匠Cでは,第一傾斜
面と第二傾斜面(張り出し部分の一部)との間に段部があることや,第
二傾斜面と垂直面との間にアール面が介在するため,マンホール蓋用受
枠の内周面は,傾斜面(第一傾斜面の長い面,垂直面(段部垂直部の)
短い面,水平面(段部水平部の短い面,傾斜面(第二傾斜面の少し))
長い面,曲面,垂直面,面取り部分の面が上から順に並び,これらの)
面が円を描いてマンホール蓋用受枠の内周面を形成するため,3つの比
較的太い帯(第一傾斜面,第二傾斜面,垂直面。なお,アール面が介在
するため,第二傾斜面と垂直面は別の面としての印象を受ける)と第。
一傾斜面と第二傾斜面とを分ける2本の細い帯(段部垂直部の面と段部
水平部の面,面取り部分の面からなる細い帯として観察される。)
また,張り出し部分に注目して観察すると,アール面を介して第二傾
斜面と垂直面の2つの帯が観察される。
被告意匠Cから受ける上記印象は,本件登録意匠Cから得られる印象
とは,大きく異なるものであるということができる。
(6)結論
以上のとおり,両意匠は,要部である内周面の具体的態様において差異
点を有しているところ,この差異点から受ける印象は,共通点から受ける
印象を凌駕しており,両意匠が視覚を通じて起こさせる全体としての美感
を異にしているということができる。
被告意匠Cは,本件登録意匠Cと類似するとは認められない。
第5結論
以上のとおりであるから,原告の請求は,その余の争点について判断する
までもなくいずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官山田陽三
裁判官達野ゆき
裁判官北岡裕章

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