弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 原判決の確定した事実によれば、被上告人B1(旧姓B2)B1は昭和九年三月
三〇日生れの未成年者で、同二〇年一月三一日亡Dの養子となり、養父Dが同年一
二月三〇日死亡したので被上告人のために、後見が開始し、翌二一年三月五日被上
告人の実父Eが親族会の選任によつて後見人となつたが翌二二年五月三日施行され
た「日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律」(以下民法応措法とい
う)によつて右後見は終了し、実父E、実母Fが親権者となつた。然るに新民法八
一八条二項で養子は養親の親権にのみ服することが規定され、養親の死亡により実
父母が親権を行う旨の規定がないので結局被上告人の実父母が行つていた前記親権
は新民法の施行により、昭和二三年一月一日以降消滅し、被上告人のために新に後
見が開始するに至り、次で同二七年六月六日実父Eが後見人に選任され、一方被上
告人B1は同二七年七月一六日附許可の裁判により養父亡Dとの養子縁組が離縁と
なり、同月二三日実父Eの戸籍に復帰した結果G姓となり、実父E、実母Fが親権
者として被上告人の法定代理人となるに至つたのである。そうして、これよりさき
被上告人の実父E実母Fは、被上告人の親権者である法定代理人として昭和二四年
五月一〇日上告人に対し、原判示のごとき事由により本件借地権譲渡契約を取消す
旨の意思表示をしたというのである。
 しかして、原判決は、前段掲記の経緯からも明らかであるように右取消の意思表
示のなされた当時においては、既に新民法の施行により被上告人のために後見が開
始しており被上告人の実父E、実母Fは被上告人の親権者ではなかつたのであるか
ら、右取消の意思表示は、被上告人の無権代理人によつて為されたものであるとの
前提の下に、後になされた追認により、右取消が効力を生ずるに至つた旨の判断を
示したのである。
 よつて、先ず、右被上告人の実父E、実母Fが被上告人の親権者たる法定代理人
としてした前記借地権譲渡契約取消の意思表示が、果して原判決のいうごとく、無
権代理人によつて、なされたものであるかどうかについて判断する。
 昭和二二年五月三日民法応措法が、施行せられた当時、被上告人は亡Dの養子で
あつて、養親の死亡により、後見が開始し被上告人の実父Eがその後見人(親族会
の選定に因る)として就職していたことは、原判決の確定するところである。原判
決は前述のごとく、かかる場合、民法応措法の施行により右後見は終了して、実父
母が親権者となる旨判示するのであるが、同法はその第三条において戸主家族その
他家に関する規定はこれを適用しないと規定し第六条において親権は父母が共同し
てこれを行うと規定しているけれども、後見に関する規定を以て家に関する規定と
解すべきでなく(戸主が戸主として後見人たる場合は、戸主に関する規定が家に関
する規定である結果として、当該戸主が後見人たる地位を失うことは勿論であるけ
れども)又第六条からしても養親死亡の場合に、当然実父母が親権者となるものと
は解することはできないし、その他同法には右の場合に後見の終了を来たすと解す
べき根拠となる法規は存在しないのであるから、同法施行の結果被上告人のための
後見は終了し同人の後見人たるEが、その後見人たる地位を失うものとした原判決
の判断はあやまりである。このことは新民法附則一九条が旧法九〇四条の規定によ
つて選任された後見人があるときは、その後見人は、新法施行のたあ、当然にはそ
の地位を失うことはないと規定していることから推しても是認せられるところであ
る。蓋し民法応措法において、これと結論を異にすべき特段の規定のないことは前
述のとおりであり同法が、これらの点に関し新民法と別異の理念に基くものと解す
べき何等の根拠もないからである。しかして、その後新民法が施行せられたのであ
るけれども、これがためにEが後見人たる地位を失うものでないことは前記のごと
く新民法附則一九条の明定するところである。
 とすれば、昭和二四年五月一〇日本件借地権譲渡契約取消の意思表示のなされた
当時Eは被上告人の後見人たる地位にあつたものであつて、右取消の意思表示は、
被上告人の後見人たるEが、被上告人の法定代理人としてその正当な権限に基いて
なされたものといわなければならない(右取消の意思表示が被上告人の父たる親権
者として、かつ、母たるFと共同に親権を行使するものとして為されたという事実
は何ら右判断の支障となるものではない。けだし、Eの意思表示がその法定代理権
に基くものとしてなされていることはいずれにしてもかわるところがないからであ
る)されば、右取消の意思表示は、その後における原判示のごとき追認を待つまで
もなく当初より有効なのであつて、追認によつて有効となつた旨判示した原判決は
あやまりではあるけれども、これを有効とした点においては結局において正当なも
のといわなければならない。
 上告代理人の上告理由は、いずれも右取消の意思表示は、無権代理人によつてな
された意思表示であることを前提とするものであつてその前提のあやまりであるこ
とは、既に前述するとおりである以上右各論旨の内容について判断するまでもなく、
これを採るを得ないことは明らかである。
 よつて本件上告は理由のないものとし、民訴四〇一条、九五条、八九条に従つて、
全裁判官一致の意見により主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛