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裁判例


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平成23年5月30日判決言渡
平成22年(行ケ)第10295号審決取消請求事件
平成23年4月13日口頭弁論終結
判決
原告メディキット株式会社
原告東郷メディキット株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士田中成志
同平出貴和
同板井典子
同山田徹
同森修一郎
原告ら訴訟代理人弁理士豊岡静男
同櫻井義宏
同高松俊雄
被告フェイズ・メディカル・
インコーポレーテッド
訴訟代理人弁護士片山英二
同本多広和
同中村閑
訴訟代理人弁理士黒川恵
同杉山共永
同日野真美
主文
1原告らの請求を棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2009−800190号事件について平成22年8月3日にした
審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
被告は,平成6年11月15日(パリ条約による優先権主張1993年(平成5
年)11月15日,米国。),発明の名称を「医療器具を挿入しその後保護する安全
装置」とする発明について,特許出願をし(特願平6−280754号),平成8年
12月5日,特許権の設定登録を受けた(特許第2588375号。以下「本件特
許」という。なお,登録時の請求項の数は10である。)。
原告らは,平成21年9月3日,本件特許の特許請求の範囲のうち請求項7及び
8について特許無効審判を請求し(無効2009−800190号),被告は,同年
12月24日付けで,請求項8について訂正請求をした(以下「本件訂正」という。)。
特許庁は,平成22年8月3日,本件訂正を認めた上で,「本件審判の請求は,成り
立たない。」との審決(以下,単に「審決」という。)をし,その審決の謄本は,同
月12日原告らに送達された。
2本件明細書の記載
(1)本件特許に係る明細書(以下,図面と併せて「本件明細書」という。本件明
細書の図1は,別紙図面1のとおりである。)の特許請求の範囲の請求項1及び7(以
下,これらの請求項に係る発明を項番号に対応して,「本件発明1」,「本件発明7」
という。),本件訂正前の請求項8(以下,この請求項に係る発明を「本件訂正前発
明8」という。)は,次のとおりである(甲19)。
【請求項1】カニューレの如き医療器具を患者の体内へ挿入し且つその後患者
の体内にあった該装置の部分に人が接触しないように保護するための安全装置にお
いて,
患者を穿刺し,前記医療器具を患者の体内の適所へ案内して搬送する中空針であっ
て,少なくとも1つの鋭利な端部を有する軸を具備する中空針と,
人の指が届かないように,少なくとも前記針の鋭利な端部を包囲するようになされ
た中空のハンドルと,
前記鋭利な端部を前記ハンドルから突出させた状態で前記軸を前記ハンドルに固定
する固定手段と,
前記固定手段を解除し,前記針の鋭利な端部を人の指が届かないように前記ハンド
ルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも
実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能な解除/後退
手段と,
前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段とを備えることを特
徴とする安全装置。
【請求項7】請求項1の安全装置において,
前記中空針の中からの血液を収容する共に,前記後退によって生ずる力に抗して,
前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記血液を確実に保持するための収容/
保持手段とを更に備えることを特徴とする安全装置。
【請求項8】請求項1の安全装置において,
前記収容/保持手段が,前記後退によって生ずる力から前記室の内部を隔離するた
めの隔離手段を更に備えることを特徴とする安全装置。
(2)本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項8は,次のとおりである
(訂正部分は下線部。以下,「請求項1の安全装置において,」との記載を,「請求項
7の安全装置において,」と訂正する部分を「訂正事項A」と,「前記針と共に運動
するように固定された室を備え」るとの文言を付加する部分を「訂正事項B」とい
い,この請求項に係る発明を「本件発明8」という。)。
【請求項8】請求項7の安全装置において,
前記収容/保持手段が,前記針と共に運動するように固定された室を備え,前記後
退によって生ずる力から前記室の内部を隔離するための隔離手段を更に備えること
を特徴とする安全装置。
3審決の理由
審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,審決は,本件訂正を
認めた上で,①本件訂正前発明8は,特許を受けようとする発明の構成に欠くこと
ができない事項のみを記載したものではなく,平成6年改正前特許法(以下「旧特
許法」という。)36条5項2号に規定する要件を満たしていないとの原告らの主張
は,その前提を欠き理由がない,②本件発明7及び8は,特開平3−15481号
公報(甲1。以下,甲1に記載された発明を「引用発明」という場合がある。甲1
の図1は,別紙図面2のとおりである。)に記載された発明と特表平5−50062
1号公報(甲2)に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明
をすることができたものとはいえないから,本件特許を無効とすることはできない
とするものである。
審決は,上記結論を導くに当たり,引用発明の内容,本件発明1と引用発明との
一致点及び相違点を次のとおり認定した。
(1)引用発明の内容
aカニューレを患者の中に挿入しその後で患者内にあった装置部分との接触か
ら人々を保護するに当たって使用される安全装置であって,
b前記患者に突き刺し前記カニューレを前記患者内の定位置に案内し運ぶため
の針であって,少なくとも1つの鋭い端を備えた軸を有する針と,
c前記人々の指が届かないように前記針の少なくとも鋭い端を封包するように
なされた中空ハンドルと,
d前記鋭い端がハンドルから突出した状態で前記軸をハンドルに固着するため
の手段と,
e前記固着手段を解除し且つ前記人々の指が届かないように前記針の鋭い端を
ハンドル内へ実質的に永久的に後退させるための手段とから成り,前記解除および
後退手段は針の軸よりも実質的に短い振幅の単純な一体運動により手動で作動可能
であり,
f’針を保持するキャリヤブロックの外面とハンドルの内面とは,トリガーが作
動されていない時に流体密封しており,針を保持するキャリヤブロックの後面はデ
ルリン製であり,完全に後退したときにハンドルの内側ストッパ部分に着座する
gことを特徴とする安全装置。
〔判決注本判決における「f’」は,審決の表記に併せた。〕
(2)一致点
カニューレの如き医療器具を患者の体内へ挿入し且つその後患者の体内にあった
該装置の部分に人が接触しないように保護するための安全装置において,
患者を穿刺し,前記医療器具を患者の体内の適所へ案内して搬送する中空針であ
って,少なくとも1つの鋭利な端部を有する軸を具備する中空針と,
人の指が届かないように,少なくとも前記針の鋭利な端部を包囲するようになさ
れた中空のハンドルと,
前記鋭利な端部を前記ハンドルから突出させた状態で前記軸を前記ハンドルに固
定する固定手段と,
前記固定手段を解除し,前記針の鋭利な端部を人の指が届かないように前記ハン
ドルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸より
も実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能な解除/後
退手段と,を備える安全装置。
(3)相違点
ア相違点1
本件発明7では,前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段
を備えるのに対し,引用発明では,そのような構成を備えていない点。
イ相違点2
本件発明7は,前記中空針の中からの血液を収容すると共に,前記後退によって
生ずる力に抗して,前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記血液を確実に保
持するための収容/保持手段とを更に備えるのに対し,引用発明はそのような収容
/保持手段を備えていない点。
第3取消事由に関する原告らの主張
審決には,本件訂正の許否に係る判断の誤り(取消事由1),引用発明の認定の誤
り(取消事由2),本件発明7と引用発明との一致点・相違点の認定の誤り(取消事
由3),本件発明7の容易想到性判断の誤り(取消事由4),本件発明8の容易想到
性判断の誤り(取消事由5)がある。
1取消事由1(本件訂正の許否に係る判断の誤り)
審決には,本件訂正の許否に係る判断に誤りがあり,これを前提とした本件訂正
前発明8の旧特許法36条5項2号該当性の判断にも誤りがある。
すなわち,本件特許の請求項1には,「前記収容/保持手段」や「前記室」に該当
する部材は全く記載されていないから,本件訂正前の請求項8において,「前記収容
/保持手段」,「前記室」が,何を収容保持するものか,どのような室を指している
のかは不明であった。訂正事項Aは,このように内容が不明であった「前記収容/
保持手段」について,「請求項1の安全装置において,」を「請求項7の安全装置にお
いて,」とすることによって,「前記中空針の中からの血液を収容する共に,前記後
退によって生ずる力に抗して,前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記血液
を確実に保持するための収容/保持手段」と訂正し,また,訂正事項Bは,意味不
明の「前記室」を,「前記針と共に運動するように固定された室」と訂正したが,い
ずれも,明りょうでない記載の釈明,特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正には該
当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものである。したがって,
本件訂正は,訂正要件を満たさず却下されるべきである。そうすると,本件訂正前
発明8は,上記のとおり,「前記収容/保持手段」,「前記室」が,何を収容保持する
ものか,どのような室を指しているのかは不明であるから,「特許を受けようとする
発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項」(旧特許法36条5項2
号)との要件を満たさない。
2取消事由2(引用発明の認定の誤り)
審決が,引用発明の構成f’において,流体密封について「トリガーが作動され
ていない時に」と限定して認定したことには誤りがある。
すなわち,審決は,引用発明の構成f’において,「針を保持するキャリヤブロッ
クの外面とハンドルの内面とは,トリガーが作動されていない時に流体密封してお
り」と認定しているが,トリガーが作動されていない時に流体密封されているとい
うことは,針を保持するキャリヤブロックの円錐台状ストッパ部分の直径を増大さ
せた外面とハンドルの内面とが流体密封されるように圧接しているということであ
るから,トリガーを作動させてもトリガーが下に移動するだけでハンドルの内面の
内径及びストッパ部分の外径は変化しない以上,圧接状態が変化することはあり得
ず,流体密封は解除されない。また,審決は,キャリヤブロックの後退時には通常
針は患者の体の外側にあるので流体密封は必要でないとするが,ストッパ部分の前
方にあるばね,内部空洞等の衛生の維持のためには,針が後退する前後にかかわら
ず流体密封は必要であり,審決の認定は誤りである。
3取消事由3(本件発明7と引用発明との一致点・相違点の認定の誤り)
審決には,「前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段を備え
る」ことを,本件発明7と引用発明との相違点とした誤りがある。すなわち,
(1)前記2記載のとおり,引用発明の構成f’は,「トリガーが作動されていな
い時に」と限定せず,「針を保持するキャリヤブロックの外面とハンドルの内面とは
流体密封しており」と認定すべきであり,これによれば,引用発明は,針及びキャ
リヤブロックの後退時にキャリヤブロックの外面とハンドルの内面とが摩擦摺動す
るから,後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段を備えていると
いえる。
(2)当業者であれば,甲1の実施例等に,針を急速に後退させることを防止する
構成が開示されていること,「デルリン」には弾性率が高く,柔軟性を有するものが
存在するのであるから,甲1においては衝撃吸収体としての機能を有するものとし
て記載されていること,甲3から,弾力によって針が注射器中へ突然に引き込む形
式のものでは,針を急速に後退させると様々な危険な状況を生じさせるという課題
が存在し,そのような課題を解決するための何らかの手段を有しているであろうこ
と,を理解することができる。
4取消事由4(本件発明7の容易想到性判断の誤り)
本件発明7は,引用発明に甲2に記載された発明ないし周知技術を適用すること
により,容易に想到することができる。すなわち,
(1)相違点1について
仮に,本件発明7では,後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手
段を備えるのに対し,引用発明では,そのような構成を備えていないとの相違点1
があったとしても,引用発明に甲2に記載された発明ないし周知技術を適用して相
違点1に係る構成を想到することは容易である。その理由は,以下のとおりである。
ア審決は,甲2に記載された発明において,注射器本体とプランジャとの一方
に配置した弾性制動手段は,患者の組織が傷ついたり患者の血液が吸引される恐れ
があることを防止するためであるので,引用発明の課題である医療関係者の安全と
は異なると認定・判断している。
しかし,甲2に記載された発明の本来の目的・課題は,安全な注射器を実現する
ために,使用後の注射針による汚染又は汚染のおそれを防止し,使用後の注射針を
刺して身体が損傷を受けるのを防止すること,更に一度使用した注射器を誤って再
び使用するのを防止することであるから,上記審決の認定・判断には誤りがある。
イ審決は,課題が異なる甲2に記載された発明を,引用発明に適用することに
想到させるような動機付けが存在せず,該適用によって相違点1の構成に想到する
ことが当業者が容易になし得ることとはいえないと判断している。
しかし,甲2には,使用後の注射針による汚染又は汚染の恐れを防止し,使用後
の注射針を刺して身体が損傷を受けるのを防止するとの課題,及び,患者の組織が
傷ついたり患者の血液が吸引される恐れがあることを防止するとの課題が開示され
ている。また,甲3には,弾力によって針が注射器中へ突然に引き込む形式の物は
針に付着していた物質が使用者の手や目にかかるおそれがあり,また,弾力によっ
て針が後退する衝撃が注射器に作用し,その結果注射器を取り落とす事故を引き起
こし,様々な危険な状況を生じさせるという課題が開示されている。そうすると,
甲2,3の記載によれば,注射後に,針を付勢手段により急速に後退させると,患
者の組織が傷ついたり,針に付着していた物質が使用者の手や目にかかったり,衝
撃により注射器を取り落とすなど,様々な危険な状況を生じさせることは周知の課
題であり,引用発明の課題と甲2に記載された発明の課題は共通するものであるか
ら,甲2に記載された発明を引用発明に適用することに想到させるような動機付け
が存在する。
ウ仮に甲2に記載された発明の課題が,患者の組織が傷ついたり患者の血液が
吸引されるおそれがあることを防止するとの課題であるとしても,引用発明におい
ても,注射器が身体の中にあるときに,誤ってトリガーを作動させれば患者を傷つ
けるおそれがあり,患者保護の課題は当然にあるから,同課題を解決するために,
引用発明に甲2の弾性制動手段を適用する動機付けは存在する。
エ甲11ないし13,20,21によれば,ばねとラッチ部材を備え,使用後
にはバネにより針と針ホルダーを注射器本体内に後退させる注射器において,後退
のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段を備えることは,周知技術で
あった。また,甲14ないし17によれば,バネを付勢力として移動部材を移動さ
せると,移動が高速度となり危険が生じることから,摩擦力や粘性グリースの剪断
抵抗によりエネルギの一部を吸収して,速度を落とすことにより危険を防止するこ
とは,バネの付勢力を利用する技術分野においては周知の技術であった。そうする
と,引用発明において,注射後に針を急速に後退させると生じる危険な状況を防止
するため,上記周知のエネルギ吸収手段を適用する動機付けが存在する。
オしたがって,引用発明に甲2に記載された発明ないし周知技術を適用して相
違点1に係る構成を想到することは容易であった。
(2)相違点2について
引用発明に周知技術を適用して相違点2に係る構成を想到することは容易であっ
た。すなわち,
ア本件発明7は,中空針の中からの血液を収容すると共に,後退によって生ず
る力に抗して,針が後退する間及び後退後に,血液を確実に保持するための収容/
保持手段を備える構成を採用したものである。本件明細書によれば,同構成を採用
した目的は,針及びキャリアブロックが後退したときに,収容/保持手段が保持し
ているフラッシュ血液を前方に急激に排出する力が生じても,フラッシュ血液を確
実に保持できるようにするためである。そうすると,収容/保持手段を,針及びキ
ャリアブロックに固定された室とすれば,針及びキャリアブロックとフラッシュ血
液との間に相対的な運動はなく,針及びキャリアブロックの後退によって生じる力
はないから,後退によって生ずる力に抗して血液を確実に保持することとなる。
この点,甲6(米国特許5102394号明細書),甲7(特開平4−29537
3号公報),甲8(特開平4−224768号公報),甲9(特開平3−4875号
公報),甲22,甲23,甲25(米国特許第5205829号明細書),甲26(米
国特許第5135505号明細書)によれば,カテーテルを体内に挿入するための
挿入針を使用後に後退させる方式のカテーテルにおいて,針が血管の中へ挿入され
ていることを確認するため,挿入針の中からの血液を収容保持するフラッシュバッ
ク室を針のハブ内部に設けることが記載されている点にかんがみると,同技術は,
周知であるといえる。
また,請求項7には,機能的な規定がされているのみであり,その具体的な構造
は何ら規定されていないから,上記の機能を実現できる構造でありさえすれば,本
件発明7の収容/保持手段といえる。そうすると,引用発明においても,針が血管
内に適正に穿刺されたことを確認するため,フラッシュバック室を針のハブ内部に
設ければ,針及びキャリアブロックとフラッシュ血液との間に相対的な運動はなく,
針及びキャリアブロックの後退によって生じる力はないから,後退によって生ずる
力に抗して血液を確実に保持することができる。
なお,本件発明7は,固定手段を解除し,針をハンドルの中へ実質的に永続的に
後退させる解除/後退手段を備えるというだけであり,偏倚手段を備えるとは記載
されておらず,針が高速度で後退するものに限定されない。そうでないとしても,
引用発明には偏倚手段が存在するから,引用発明に,周知技術である針ハブに存在
するフラッシュバック室を適用すれば,容易に相違点2に想到し得る。
イ甲1は,針刺事故によるエイズなどの病気に感染することが課題とされてい
る。他方,甲6ないし9には,医療従事者が患者の血液と接触することを防止する
ため,空気は透過するが,血液は透過しない多孔質のプラグを有するフラッシュバ
ック室が開示されている。そうすると,引用発明にフラッシュバック室を設ける場
合にも,フラッシュバック室からの血液の漏洩を防止するため,甲6ないし9に開
示された,空気は透過するが,血液は透過しない多孔質のプラグを有するフラッシ
ュバック室を適用するとの動機付けが存在する。
ウ上記のとおり,引用発明に甲6ないし9に開示された,空気は透過するが,
血液は透過しない多孔質のプラグを有するフラッシュバック室を適用することによ
り,相違点2に係る構成に想到することは容易である。
5取消事由5(本件発明8の容易想到性判断の誤り)
審決は,本件発明7が容易想到とはいえないことを前提として,本件発明7を限
定した本件発明8も,容易想到とはいえないと判断しているが,前提を誤っており,
本件発明8も容易想到といえる。なお,甲6ないし9に開示されたフラッシュバッ
ク室の,空気は透過するが,血液は透過しない多孔質のプラグは,本件発明8の,
「前記後退によって生ずる力から前記室の内部を隔離するための隔離手段」に相当
するから,本件発明7に上記の構成を付加して本件発明8に想到することも,当業
者にとって容易というべきである。
第4被告の反論
1取消事由1(本件訂正の許否に係る判断の誤り)に対し
本件訂正は,特許請求の範囲の減縮ないし不明りょうな記載の釈明を目的とする
ものであり,訂正前にはその技術的範囲に属しなかったものが訂正後に属すること
になるということもないから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでは
ない。すなわち,
(1)訂正事項Aは,その引用する請求項を請求項1から請求項7に変更するもの
であるが,請求項7は請求項1の従属項であって,より限定を加えた構成に変更し
ているので,特許請求の範囲の減縮に当たる。また,訂正事項Bは,「前記収容/保
持手段」が,「前記針と共に運動するように固定された室を備え」ることに限定する
ものであって,特許請求の範囲の減縮に当たるとともに,訂正前の「前記室」に係
る「室」がその従属する請求項1にも,また訂正後に従属することとなる請求項7
にも前出するものではないところ,上記の構成を付加することにより,当該請求項
8中に前出することとなって,不明りょうな記載が明りょうなものとなる。上記の
とおり,訂正事項A,Bは,特許請求の範囲の減縮ないし不明りょうな記載の釈明
を目的とするものである。
(2)本件明細書には,請求項1の安全装置が,請求項7の収容/保持手段を備え,
更に収容/保持手段が,針と共に運動するように固定された室を備えること,後退
によって生ずる力から隔離するための隔離手段を備えることが記載されており,訂
正事項A,Bは,いずれも本件明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであ
る。
(3)したがって,審決が,本件訂正を認めたことに誤りはなく,これを前提とし
た本件訂正前発明8の旧特許法36条5項2号該当性の判断にも誤りはない。
2取消事由2(引用発明の認定の誤り)に対し
審決がした引用発明の構成f’の認定には誤りはない。
すなわち,甲1において,キャリヤブロックの外面とハンドルの内面とが流体密
封しているのは,トリガーが作動されていない時であるが,流体密封が,針の後退
時にも生じているかどうかについての記載はない。むしろ,引用発明にあっては,
キャリヤブロックの後退時には,通常,針は患者の体の外側にあるので流体密封さ
れていることは必要ないと考えられるのであるから,キャリヤブロックの後退時に
おける流体密封を具備していない。また,引用発明では,トリガーが作動されてい
ない時,キャリヤブロックの円錐台状ストッパ部分32の大きな端の直径を僅かに
増大させることによって,キャリヤブロックの外面とハンドルの内面との流体密封
が達成されているが,針の後退速度は,ブロック及びハンドルの寸法公差による変
化,手の圧力によって針の先端に生ずる側方及びねじれ方向への大きな変化が複合
されたものの変動を受けるから,トリガーが作動されて針が後退するときにおいて,
キャリヤブロックの外面とハンドルの内面とが流体密封しているとはいえない。
3取消事由3(本件発明7と引用発明との一致点・相違点の認定の誤り)に対

引用発明は,後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段を備えて
いるとはいえず,審決の相違点の認定に誤りはない。すなわち,
甲1には,針及びキャリヤブロックの後退時にキャリヤブロックの外面とハンド
ルの内面とが摩擦摺動する構成が示されているとはいえない。また,甲1には,実
施例について,ラッチ耳の半径方向外方への付勢はハンドル壁の厚い部分と係合し
てキャリヤブロック及び針の後方への運動を防止すること,後部ストッパと係合し
て後退を停止させることが記載されているだけで,ハンドル壁の内面に摩擦接触し
ながら後退させることを示唆する記載はない。さらに,甲1には,針が停止するま
でにキャリヤブロック・ストッパ部分と内側ストッパ表面とが摩擦摺動していると
の記載もない。なお,デルリンは,性質が多様であり,一概に弾性率が高く,柔軟
性を有するものと断定することはできないから,甲1の実施例において,デルリン
製のキャリヤブロックの後面が衝撃吸収体としての効果を有するとはいえない。
4取消事由4(本件発明7の容易想到性判断の誤り)に対し
本件発明7は,引用発明に甲2に記載された発明ないし周知技術を適用すること
により,容易に想到することができたとはいえない。すなわち,
(1)相違点1について
引用発明に,課題が異なる甲2に記載された発明を適用する動機付けは存在せず,
当業者が相違点1に容易に想到し得たということはできない。
ア原告らが甲2記載の発明の本来的な課題であると主張する「使用後の注射針
による汚染又は汚染の恐れを防止し,使用後の注射針を刺して身体が損傷を受ける
のを防止」すること,及び,「更に1度使用した注射器を誤って再び使用するのを防
止する」ことは,甲2記載の発明の前提となる従来技術として記載された事項にす
ぎない。むしろ原告らが副次的課題であると主張する「患者の組織が傷ついたり患
者の血液が吸引される恐れがあることを防止する」ことが,注射針を注射器の本体
内に自動的に後退させることを前提として,注射針の注射器本体内への後退の少な
くとも最初の段階で,その後退早さを遅らせる制動手段を設けることの中核的な課
題である。そうすると,審決が,甲2に記載された発明の課題は,引用発明の課題
の医療関係者の安全と異なると認定したことに誤りはない。
イ甲2は,プランジヤを押し込んだ状態に保持する手の圧力を除くと,直ちに
プランジヤの復帰が開始する注射器を前提として,注射器が患者の身体から完全に
去るまで,操作者が押し込まれたプランジヤを意識して保持しない限り,患者の組
織が傷つき,希望しないのに不随意に注射器内に患者の血液が吸引される恐れがあ
るといった課題を解決するためになされたものであり,このような課題は,プラン
ジヤを押し込むという動作が必須である注射器に特有の課題である。これに対し,
甲1に記載されたカニューレ挿入装置は,注射器におけるようなプランジヤが存在
せず,針がハンドル内に一方通行で入るだけであって,プランジヤを押し込んだ状
態に保持する手の圧力を除くと,直ちにプランジヤの復帰を開始してしまうような
構成を前提としたものではなく,甲2に記載された発明が解決しようとする課題は
存在しない。また,甲3には,何ら具体的な構成を伴わない単なる注射器の課題が
記載されているにすぎず,引用発明における課題が当然に開示されているとはいえ
ない。そうすると,プランジヤを押し込むという動作が必須である注射器に特有の
課題を解決した甲2に記載された構成を,注射器におけるようなプランジヤが存在
せず,針がハンドル内に一方通行で入るだけの甲1に記載されたカニューレ挿入装
置に適用することは容易に想到できたとはいえない。
ウなお,原告らは,甲11ないし17,20,21は,本件出願時の技術水準
を構成する周知技術を示す証拠にすぎないと主張するが,副引例を追加しようとす
るものであり,本件訴訟における証拠として採用されるべきではない。
(2)相違点2について
本件発明7における「収容/保持手段」は,米国特許第4,747,831号明
細書(甲10)に開示された装置について,後退力を受けた場合におけるフラッシ
ュ漏洩の防止を課題とし,装置がそのような後退力を受けた場合でも,後退によっ
て生ずる力に抗して,血液を確実に保持するものである。本件明細書によれば,米
国特許第4,747,831号にあっては,後退ボタン(トリガ機構)が作動され,
積極的な偏倚手段によって針の鋭利な端部をハンドルの中へほぼ永続的に後退させ
る際に,血液が,針の前方端から外方へ噴出するという問題を,重大な事態であっ
て許容できない結果であるとしている。
これに対し,甲6に記載された発明は,針部材が手動によってゆっくりと後退さ
れるものであるから,漏洩の問題は生じないし,仮に漏洩の問題が生じるとしても,
単に空気抜きフィルタを取り付けただけでは,漏洩の問題は解決しない。また,甲
7,9には,針及び針基が後退移動することが記載されておらず,甲8にはフラッ
シュバック室を針のハブ内部に設けることが記載されていない。そうすると,カテ
ーテルを体内に挿入するための挿入針を使用後に後退させる方式のカテーテルにお
いて,挿入針の中からの血液を収容保持するフラッシュバック室を針のハブ内部に
設けることが周知技術でないばかりでなく,さらに後退によって生ずる力に抗して,
針が後退する間に及び後退の後に,血液を確実に保持するための収容/保持手段が
周知知術であるということもできない。なお,引用発明は,針刺事故防止を目的と
しており,血液漏洩防止という課題は示唆されていないから,甲6ないし9にフラ
ッシュバック室が開示されているからといって,血液漏洩防止を目的として,これ
を引用発明に組み合わせることは容易とはいえない。
原告らが甲6ないし9に基づき周知技術であるとする「カテーテルを体内に挿入
するための挿入針を使用後に後退させる方式のカテーテルにおいて,挿入針の中か
らの血液を収容保持するフラッシュバック室を針のハブ内部に設けること」と,「前
記後退によって生ずる力に抗して,前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記
血液を確実に保持するための収容/保持手段」とは,解決課題において相違する。
甲6ないし9からは,針の後退によるフラッシュ血液の漏洩を防止するといった課
題をうかがうことはできず,むしろ針及び針基を高速で後退させることを忌避する
構成が開示されているところ,引用発明は,偏倚手段により針の鋭利な端部をハン
ドルの中へ速く後退させることを目的としているのであり,引用発明に甲6ないし
9に記載された技術的事項を組み合わせるとの動機付けはなく,むしろこれを阻害
する事由が存在する。
したがって,引用発明に甲6ないし9に記載された周知技術を適用することによ
り,相違点2に容易に想到することができたとはいえない。
(3)以上のとおり,本件発明7は,引用発明に甲2記載の発明及び周知技術を適
用することにより容易に想到することができたとはいえない。
5取消事由5(本件発明8の容易想到性判断の誤り)に対し
前記4のとおり,取消事由4には理由がないから,これを前提とした取消事由5
にも理由がない。
第5当裁判所の判断
当裁判所は,原告らが主張する取消事由1,4,5には理由がないから,その余
の点について検討するまでもなく原告らの請求を棄却すべきものと判断する。以下,
先に,本件発明7に関する取消事由4について検討し,その後,本件発明8に関す
る取消事由1及び5について検討することとする。
1取消事由4(本件発明7の容易想到性判断の誤り)について
本件発明7の引用発明との相違点2に係る構成は,周知技術を適用することによ
って容易に想到することはできないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
(1)争いのない事実及び認定事実
ア本件発明の記載
(ア)本件発明の特許請求の範囲
第2の2(1)記載のとおりである。すなわち,
「【請求項1】カニューレの如き医療器具を患者の体内へ挿入し且つその後患者
の体内にあった該装置の部分に人が接触しないように保護するための安全装置にお
いて,
患者を穿刺し,前記医療器具を患者の体内の適所へ案内して搬送する中空針であっ
て,少なくとも1つの鋭利な端部を有する軸を具備する中空針と,
人の指が届かないように,少なくとも前記針の鋭利な端部を包囲するようになされ
た中空のハンドルと,
前記鋭利な端部を前記ハンドルから突出させた状態で前記軸を前記ハンドルに固定
する固定手段と,
前記固定手段を解除し,前記針の鋭利な端部を人の指が届かないように前記ハンド
ルの中へ実質的に永続的に後退させる解除/後退手段であって,前記針の軸よりも
実質的に短い距離だけ簡単且つ単一の動作によって手操作で作動可能な解除/後退
手段と,
前記後退のエネルギの一部を吸収するためのエネルギ吸収手段とを備えることを特
徴とする安全装置。」
「【請求項7】請求項1の安全装置において,
前記中空針の中からの血液を収容する共に,前記後退によって生ずる力に抗して,
前記針が後退する間に及び該後退の後に,前記血液を確実に保持するための収容/
保持手段とを更に備えることを特徴とする安全装置。」
(イ)本件明細書の記載(甲19)
本件明細書には,以下の記載がある。
「【0002】【従来の技術】クーリ(Kulli)の米国特許第4,747,8
31号は,本発明に関連する技術の状況を説明しており,本明細書においては,上
記米国特許全体を参照する。上記米国特許は,カニューレを患者の中へ挿入するた
めに使用され,その後,患者の中で使用された装置の部分に人々が接触しないよう
にする安全装置を教示している。」
「【0013】次に,医療専門家は常に慎重に,患者自身の血圧によって駆動さ
れる少量の患者の血液を中空針に通し,これにより,少量の血液を針の後部で見る
ことができる。このように針から流れる血液は,カニューレ挿入装置の一部である
ある種の室に入る。この室は通常,該室の内部にある血液を観察することができる
ように,透明材料から形成される。」
「【0014】幾分かの血液を観察室の中へ流す操作は,医療分野の専門用語で『フ
ラッシング(flashing)』として知られており,上記室に入る血液は『フラ
ッシュ(flash)』量と呼ばれることがある。フラッシング段階は,カテーテル
が実際に血管の中へ挿入されていることを確認する目的を有する。」
「【0025】フラッシュ漏洩:クーリー特許の開示に従って構成された装置を
更に研究することにより,例えば,患者からの血液が装置のハンドルから後方又は
前方へ,あるいは,針から前方へ漏洩するように,上記装置が取り扱われることが
あることが判明した。」
「【0029】・・・クーリーの針,あるいは,針及びブロックを中空のハンドル
の中へ後退させると,ある量のフラッシュ血液が押し出されてハンドルの中に溜ま
る傾向があるからである。この押し出しは,何等かの経路を介して血液をケーシン
グの外方へ急激に排除する傾向がある。」
「【0030】1つの漏洩通路は,針及びそのキャリアブロックを通って前方へ向
かう通路である。換言すれば,そのような装置においては,後退ボタンが作動され
ると,血液が,針の前方端から外方へ噴出する。」
「【0038】漏洩に関する基本的な問題,すなわち,針を通る血液の前方への急
激な排出を生ずるのは,上記相対的な運動,特に,血液を通って移動するキャリア
ブロックの運動である。従って,この問題に対する解決策は,運動可能な針に効果
的に固定された点におけるフラッシュ血液を包囲あるいは阻害することとは別の方
法に見い出すことができ(判決注・「包囲あるいは阻害することに見い出すことがで
き」の誤記と認められる。),これにより,血液と運動する針ブロックとの間の効果
的な相対運動を排除することができる。」
「【0039】『効果的に』及び『効果的な』という用語を使用する理由は,フラ
ッシュ血液に後退力が与えられるのを阻止する何等かの構造が,ケーシングをハン
ドルに固定することができる場合でも,血液のケーシングが移動する針と空圧的に
連携するからである。」
「【0040】上記着目点の変更は,フラッシュ血液が針の後部から流れることが
できるようにケーシングから空気を逃し,次に,針の後退時においても,その血液
を完全に包囲した状態で保持するようにするための種々の可能性をもたらす。特に,
そのような構造においては,フィルタ又は通気口を移動する針に関連して設けるこ
とができる。」
「【0049】従って,本発明の一部は,後退が(1)確実に行われると共に,(2)
速度を制御され,更に,これら2つの機能を実質的に2つの異なる機械的な要素に
それぞれ割り当てることにより,非常に経済的な装置の中で行うという認識に基づ
くものである。より詳細には,十分に強いバネあるいは他の偏倚手段を選択するこ
とにより,確実で迅速な後退を行い,緩衝手段又は他のエネルギ吸収手段を設ける
ことにより,過度の後退を阻止又は補償することを可能とする。」
「【0065】本装置は更に,中空針の中から血液を収容し,針が後退する間及び
後退した後に,該後退によって生ずる力に抗して,上記血液を確実に保持するため
の何等かの手段を備えている。」
「【0067】本発明の第1の特徴は,上述の形態においても,上述の問題点を解
決するために必要な改善をもたらす。すなわち,収容/保持手段は,後退力を受け
た場合でも血液を受け入れて保持することができ,クーリー型の装置に選択的なフ
ィルタを取り付けた場合に時々観察されるフラッシュ血液の排出を防止することが
できる。」
「【0069】例えば,収容/保持手段は,針と共に運動するように固定された
室と,収容され且つ保持された血液を本装置のユーザが観察できるようにする何等
かの手段とを備えるのが極めて好ましい。より詳細には,上記室は,中空のハンド
ルの中で針に固定されるのが好ましい。」
「【0070】また,上記収容/保持手段は更に,上記室を上記後退によって生
ずる力から隔離するための何等かの手段を備えるのが好ましい。幾つかのそのよう
な隔離手段が,本発明の範囲に入る。」
「【0086】上記第4の主要な特徴として広い意味で上に説明した本発明は,血
液をハンドルの中に保持するのではなく,後退の間に血液を針と共に搬送し,従って,
血液と針との間に相対的な運動を何等生じないようにすることにより,上述の問題を
解消する。従って,後退の間に生ずる圧縮力を処理し,そのような圧縮力が血液と共
に搬送される針に与えられるのを阻止するだけで良く,そのような力の処理は,本明
細書の随所に述べる種々の手段によって行うことができる。」
イ甲1の記載
甲1の記載には,以下の記載がある。また,甲1の図1は,別紙図面1のとおり
である。
(ア)特許請求の範囲(請求項1)
「1.カニューレを患者の中に挿入しその後で患者内にあった装置部分との接触か
ら人々を保護するに当たって使用される安全装置であって,
前記患者に突き刺し前記カニューレを前記患者内の定位置に案内し運ぶための針
であって,少なくとも1つの鋭い端を備えた軸を有する針と,
前記人々の指が届かないように前記針の少なくとも鋭い端を封包するようになさ
れた中空ハンドルと,
前記鋭い端がハンドルから突出した状態で前記軸をハンドルに固着するための手
段と,前記固着手段を解除し且つ前記人々の指が届かないように前記針の鋭い端をハ
ンドル内へ実質的に永久的に後退させるための手段とから成り,
前記解除および後退手段は針の軸よりも実質的に短い振幅の単純な一体運動によ
り手動で作動可能であることを特徴とする安全装置。」
(イ)発明の詳細な説明
「使用に当たっては,針およびカニューレを共に患者の血管内に−あるいは場合
によっては身体腔内,または膿瘍内,または流体連通を確立すべき個所ならどこへ
でも−挿入する。前述したように,次いで装置を使用する医療者は通常針先端のす
ぐ前方で患者の身体の外部に圧力を加えて血液の流出を防止する。
次いで医療者は針を引抜き,カニューレを身体内の定位置に残す。最後にカニュ
ーレの後端における容器内へ標準直径チューブを挿入することにより流体連通が完
了する。」(甲1・5頁左下11行∼右下2行)
「第1図および第2図に示すように,本発明の好ましい一実施例は成形された中空
ハンドル10を含む。この実施例はまたハンドル10の前端にしっかり固定された鼻
部片20と,ハンドル10内に摺動自在に配置されたキャリャブロック30とを含
む。」(甲1・10頁右上欄8∼13行)
「キャリャブロック30はきわめて狭い中心穴を有し,この穴の中に針50がきっ
ちりと把持されている。同じくデルリン製のブロック30は針上に圧嵌,縮嵌および
/または接合するか,あるいは定位置に成形してよい。
キャリャブロック30の外側は円形的に対称である。それは真円筒形でもよい突出
筒31を有する。この筒31の後端には前端が筒31に対して半径方向に拡大された
円錐台状のストッパ部分32がある。このストッパ部分はブロック30の後端に向け
て内方にテーパしている。
ストッパ部分の円錐台状の後面は針を完全に後退させた時にハンドル10の前述
した内側円錐台状ストッパ部分13に対して着座するようになされている。」(甲1・
11頁左下欄16行∼右下欄11行)
「多分明瞭には図示されていないこの好ましい実施例のもう1つの望ましい特徴
を次に挙げておく。トリガーが作動されていない時にハンドル10の内側孔12に対
して流体密封を与えるように,キャリャブロックの円錐台状ストッパ部分32の大き
な端の直径を僅かに増大させることが好ましい。
この配置は,ストッパ部分32の前方にあるばね,内部空洞等の多くの複雑な表面
における衛生の維持への信頼を最小限に抑えることにより中空針を介しての効果的
な流体連通を容易にする。」(甲1・14頁左下欄9行∼20行)
ウ甲6の記載
甲6には,次の記載がある(以下,翻訳文を示す)。
「カテーテル組立体10は静脈療法のために構成されており,基部14と,前記基
部14から伸び,それにより規定される内部容積と連通する概して細長い管状部16
と,を備えたカテーテル部材12を含む。カテーテル部材5の管状部16の自由ない
し遠位端は,療法のために患者の血管中に位置しうる。
カテーテル組立体10は更に,当初は概してカテーテル部材10の中に位置しうる
針部材20を含む。特に,針部材20は,ハブ部22と,ハブ部から伸びた細長い管
状部24とを含む。例示されるように,針部材の管状部24の自由ないし遠位端は,
針の管状部が望遠鏡式に中に位置するときには,カテーテル部材の管状部16の自由
ないし遠位端を丁度越えている。この取り合わせにより,針の管状部の自由端は,患
者の血管中への外側カテーテル部材の挿入を容易とするように,適切に構成され鋭利
にされている。
典型的には,針部材の細長い筒部24は,ハブ部22により規定される内部容積と
連通している。カテーテル挿入の間,毛管力及び/又は血圧は,血液を管状部24を
通してハブ部22の内部26へと流させうる。ハブ部は,典型的には透明なポリマー
材料より形成され,医療従事者がこの血液の流れないし「フラッシュバック」を観察
できるようになっている。空気抜きフィルタ28は,好適にはハブ部22に固定され
て針部材の中からの空気の抜け出しを許容するが,フィルタを通した液体の流れは防
止する。
患者にカテーテル組立体を挿入した後,針部材22は外側カテーテル部材の中から
引き抜かれる。」(甲6翻訳文・3頁28行∼4頁14行)
「シールド部材34がカテーテル部材上の第2の位置にあるときに針部材20の
操作を可能にするため,シールド部材は細長いアクセス溝40を規定しており,針部
材上に設けられた突起30がそれを通って伸びている。かかる構成によって,シール
ド部材の外部から突起30をアクセス溝40に沿ってその端から端まで動かすこと
により,容易に針部材が操作できる。」(甲6翻訳文・4頁32∼36行)。
エ甲8の記載
甲8には,次の記載がある。
「【0003】【発明が解決しようとする課題】血流がカテーテルが適正に位置決
めされたことを示し,皮膚穿通スタイレットを除去したならば,静脈血管をカテーテ
ルに接続し,静脈内流体を患者に投与することが出来る。」
「【0012】本発明の別の目的は,上述の目的を達成する一方,血液が誤って漏
洩するのを防止しかつ医者等が感染する虞れのある血液に触れるのを防止する閉シ
ステム静脈カテーテルを提供することである。」
「【0026】・・・スタイレット組立体32は,皮膚穿通スタイレット37に加
えて,発火点キャビティ76を画成する観察チャンバ74を備えている。発火点キャ
ビティ76は皮膚穿通スタイレット37の流体流れ穴78と流体連通し,穴78を介
して皮膚貫通スタイレット37を通る血流は,発火点キャビティ76内で観察するこ
とが出来る。通気組立体80が観察チャンバ74に接続されかつ該チャンバにより支
持され,発火点キャビティ76内への血液の流れは該キャビティ内で観察可能である
のみならず,通気組立体80により効果的に制御することも出来る。」
「【0028】・・・血液が観察チャンバ74の発火点キャビティ76内への流動
を許容されるとき,通気スタイレット94,及びフリット部材82を介して観察チャ
ンバ74から空気を排除することが出来る。このように,フリット部材82は,通気
スタイレット94及びエラストマーカバー部材100と協働し,血液は,皮膚穿通ス
タイレット37及びカテーテル22を血管内に適正に位置決めしたとき,皮膚穿通ス
タイレット37を介して観察チャンバ74の発火点キャビティ76内に流動するこ
とが出来る。一方,採血装置24のような補助装置をスタイレット組立体32の雄ね
じ型ポスト部材86に適正に接続するまで,血液が通気スタイレット94を通じて発
火点キャビティ76から流動するのを阻止する。」
「【0034】次に,図8及び図9を参照すると,血管カテーテル10は,スタイ
レット組立体32の観察チャンバ74に接続されかつ該チャンバ74により支持さ
れた退却可能なシース130を更に備えており,皮膚穿通スタイレット37をカテー
テル22の流路28から除去したとき,皮膚穿通スタイレット37の穿刺先端38が
誤って医者等に刺さる虞れを最小にする。退却可能なシース130は,スタイレット
組立体32の皮膚穿通スタイレット37を受け入れ得るようにした長手方向に伸長
する通路130を有する細長い本体部材132を備えている。該退却可能なシース1
30は,退却位置(図8)と伸長位置(図9)との間を選択的に動くことが可能であ
る。」
オ甲9の記載
甲9には,次の記載がある。
「第1図は,針ガードを備えたカテーテル−針アセンブリを示すもので,その構成
は,先に挙げた特許および特許出願に記載したと同様のもので良い。このアセンブリ
は,カテーテルハブ12に接続されるカテーテルカニューレ10を備える。ルアーロ
ック14が,カテーテルハブ12の基端にて形成されている。カニューレは,米国特
許第4,191,185号(Lemieux)に記載されるように,その基端内部の
漏斗形に開いた金属スリーブ16をハブ12内に押し嵌め込むことによって,ハブ1
2に取り付けられる。中空の金属挿入針20は,尖った先端26を有する。針20の
基端は,フラッシュ・チャンバ22の先端開口に接着剤によって取り付けられ,この
チャンバは針のハブ,すなわち,ハウジング30の内部に配置取り付けられている。
このフラッシュ・チャンバのハウジングへの取付手段は,図示されていないけれども,
ハウジングの内面からフラッシュ・チャンバの外面に延びる長手方向のレール状体か
らなっている。フラッシュ・チャンバの基端は,米国特許出願221,579号(1
988年7月20日出願)に記載された多孔質の栓が施されている。チャンバが血液
で満たされつつある時,この多孔質の栓を通して,空気が外部に追い出されるが,こ
の孔のサイズは,血液がそこを通るには不十分なものである。」(甲9・2頁右下欄
9行∼3頁左上欄7行)
「血液は,動脈圧または静脈圧の下に,40aにて指示される中空の針を通って,
40bにて指示されるフラッシュ・チャンバ22内に流入する。・・・ガードのプッ
シュオフ・タブが臨床医により先端方向に押されると,これによって,針ガード34
が延長される。この操作で,針の先端26は,カテーテル10の先端より内部に,す
なわち,第2図に図示する位置に引っ込む。・・・針先端26がフッドされると,血
液は,42aにて指示されるカテーテルの先端部に流入し,そこを満たす。しかし,
第1図に示すような中空針を通る所要の血流に加えて,血液はまた,針の外面とカテ
ーテル・カニューレの内面との間における環状間隙(42bによって指示される)を
通って流入し得る。・・・本発明の目的は,血液の逆流および針ガードのノーズを周
る血液の滞留を防止することである。」(甲9・3頁左上欄22行∼右上欄21行)
(2)判断
本件発明7の引用発明との相違点2に係る構成は,周知技術(甲6ないし9,2
2,23,25,26)を適用することによって,容易に想到することはできない
と判断する。すなわち,
前記(1)アによれば,本件発明7は,カニューレ装置において,挿入針及びそのキ
ャリアブロックについて,十分に強いバネあるいは他の偏倚手段を選択することに
より確実で迅速な後退を行うとともに,エネルギ吸収手段を設けることにより過度
の後退を阻止する装置であるところ,医療専門家のフラッシング(flashin
g)による血液の確認後,後退ボタンが作動されると,挿入針及びそのキャリアブ
ロックを通って前方へ向かう通路を通して血液が針の前方端から外方へ噴出した
り,後退した後に,針及びブロックの周囲で前方へ向かう通路を通して,したたり
が生じることを解決課題として,「前記後退によって生ずる力に抗して,前記針が後
退する間に及び該後退の後に,前記血液を確実に保持するための収容/保持手段と
を備え」た構成を採用することにより,フラッシュ血液が針の後部から流れること
ができるように,ケーシングから空気を逃すとともに,針の後退時においても,そ
の血液を安全に包囲した状態で保持することができるようにした発明である。
他方,前記(1)イによれば,甲1には,針およびカニューレを共に患者の血管内に
挿入し,針先端のすぐ前方で患者の身体の外部に圧力を加えて血液の流出を防止し,
針を引抜き,カニューレを身体内の定位置に残した上で,カニューレの後端における
容器内へ標準直径チューブを挿入することにより流体連通が完了する装置において,
患者内にあった装置部分との接触から人々を保護するため,引き抜いた針の鋭い端
を人々の指が届かないようにハンドル内へ実質的に永久的に後退させるための手段
を有する安全装置が開示されている。
そして,甲6,8,9によれば,本件訴訟において追加された甲22,23,2
5,26の記載を検討するまでもなく,カテーテルないしカニューレを患者の体内
に挿入するための挿入針を使用後に後退させる方式の装置において,挿入針の中か
らの血液を収容保持するフラッシュバック室を針のハブ内部に設けることは,周知
の技術であったと認めることができる(なお,甲7は,針とフラッシュバック室と
の関係が不明確であり,挿入針の中からの血液を収容保持するフラッシュバック室
をどのように設けるかについて具体的な構成が示されていない。)。
しかし,上記周知技術とされた甲6,8,9等に示された「カテーテルないしカ
ニューレを患者の体内に挿入するための挿入針を使用後に後退させる方式の装置」
における「後退」は,いずれも,医療従事者が手で挿入針を引き抜く動作を行う際
における後退を前提としている。そうすると,周知技術においては,相違点2に係
る構成,すなわち,「バネあるいは他の偏倚手段による後退によって生ずる力に抗し
て,挿入針が後退する間に及び該後退の後に,フラッシュ血液を確実に保持するた
めの収容/保持手段」との構成を採用しなければならない動機付け(解決課題に思
い至り,それを解決するためにどのような解決手段があるか)について,何らの示
唆ないし開示がない。そうすると,引用発明に上記周知技術を適用する動機付けを
欠き,本件発明7の引用発明との相違点2に係る構成を,容易に想到できたという
ことはできない。
これに対し,原告らは,①本件明細書には,本件発明7が偏倚手段を備えるとは
記載されていない以上,針が高速度で後退するものに限定されない,②仮に,本件
発明7が偏倚手段を備えていると解することができたとしても,引用発明にも偏倚
手段が存在すると解することができるから,引用発明に,周知技術である針ハブに
存在するフラッシュバック室を適用すれば,相違点2に係る構成に,容易に想到し
得ると主張する。しかし,上記のとおり,本件発明7の相違点2に係る構成は,挿
入針及びそのキャリアブロックが,バネあるいは他の偏倚手段により後退すること
を想定した上で,そのような場合に生じ得る危険を防止するために採用された構成
であると解されることは,本件明細書の記載から明らかである。これに対して,引
用発明に偏倚手段が存在すると解したとしても,その場合に生じ得る危険性につい
ての開示,示唆はないから,本件発明7の相違点2の構成に到達するために,引用
発明に上記フラッシュバック室を針のハブ内部に設けるとの技術を適用する動機付
けはない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(3)以上によれば,取消事由2,3中の相違点1に係る認定,判断の誤りについ
て検討するまでもなく,本件発明7は,引用発明に周知技術を適用することにより,
容易に発明できたということはできないから,本件発明7が容易想到とはいえない
とした審決の判断に誤りはない。
2取消事由1(本件訂正の許否に係る判断の誤り)について
原告らは,本件訂正は,明りょうでない記載の釈明,特許請求の範囲の減縮及び
誤記の訂正を目的とするものには該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は
変更するものであるから,認められるべきではないと主張する。しかし,原告らの
主張は採用することができない。すなわち,
(1)訂正事項Aは,請求項8の「請求項1の安全装置において」との記載を,「請
求項7の安全装置において」と訂正するものである。ところで,請求項7は,請求
項1を引用して,これに限定を加えた従属項であるから,請求項1と対比すると,
その特許請求の範囲は狭い。したがって,「請求項1の安全装置において」を「請求
項7の安全装置において」とした訂正事項Aは,特許請求の範囲の減縮を目的とす
る訂正に該当する。
(2)訂正事項Bは,請求項8の「前記収容/保持手段」について,「前記針と共
に運動するように固定された室を備え」るとの限定を付加するものであり,特許請
求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。また,訂正事項Bにより,「針と共に運
動するように固定された室」が前出することになり,その後に続く「前記室」の記
載が明りょうなものになるから,訂正事項Bは,明りょうでない記載の釈明を目的
とするものにも当たる。
(3)前記1(1)ア(イ)によれば,本件明細書の段落【0065】,【0067】,【0
069】,【0070】,【0086】には,請求項1の安全装置が,請求項7の収容
/保持手段を備え,更に収容/保持手段が,針と共に運動するように固定された室
を備えること,後退によって生ずる力から隔離するための隔離手段を備えることが
記載されており,訂正事項A,Bは,いずれも本件明細書に記載した事項の範囲内
においてなされたものである。
(4)以上によれば,本件訂正はいずれも,明りょうでない記載の釈明,特許請求
の範囲の減縮又は誤記の訂正を目的とするもののいずれかに当たり,実質上特許請
求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,本件訂正を認めた審決の判断
に誤りはない。したがって,本件訂正が認められないことを前提として,本件訂正
前発明8が,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記
載した項」(旧特許法36条5項2号)との要件を満たさないとの原告らの主張も採
用することができない。
3取消事由5(本件発明8の容易想到性判断の誤り)について
前記4のとおり,本件発明7は容易想到とはいえないから,本件発明7を限定し
た本件発明8も容易想到とはいえず,原告らの取消事由4の主張を前提とした取消
事由5の主張にも理由がない。
4結論
以上のとおり,原告らの主張する取消事由には理由がなく,他に本件審決にはこ
れを取り消すべき違法は認められない。その他,原告らは,縷々主張するが,いず
れも,理由がない。よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
八木貴美子
裁判官
知野明
(別紙)
図面1〔本件明細書の図1〕
図面2〔甲1の図1〕

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