弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における未決勾留日数中六〇日を原判決の刑に算入する。
     当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人黒沢雅寛が提出した控訴趣意書及び同補充書に、これ
に対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事宮崎徹郎が提出した答弁書にそれぞれ
記載されたとおりであるから、これを引用する。
 一 控訴趣意書一ないし五及び同補充書の主張について
 論旨は、原判示第一の事実に関する訴訟手続の法令違反の主張に帰するのであつ
て、要するに、右事実と被告人を結びつける犯行現場の実況見分調書、押収にかか
るズツク靴一足及びA作成の鑑定書は、違法な手続によつて得られた証拠であり、
これらを証拠として採用した原判決は訴訟手続に違反している、というのである。
 そこで、原審記録を調査し当審における事実取調の結果をも参酌して検討するの
に、まず捜査の経緯をみると、昭和五六年一一月から昭和五七年四月ころまでに警
視庁管内において一〇〇件余りの忍込み窃盗事件が発生し、その手口、態様ことに
醤油等を家具類等に散布するという特異な手口も含まれていたことから同一手口歴
のある被告人がその被疑者とされ、同年五月六日以降被告人の追跡捜査が開始され
たものの尾行を警戒する被告人の巧みな行動のため右捜査が難行し、また指紋、足
跡、目撃者等の有力な証拠も得られないまま推移するうち、捜査に従事していた司
法警察員Bらが、被告人が品川区内の靴店で頻繁に靴を買い換えることを知つて同
靴店の店員からズツク靴五足を借り受けその靴底裏面に切傷をつけて返し、同年二
月一九日ころからこれらの靴が同店内に陳列されていたところ、被告人が同年一二
月二三日ころそのうちの一足を買い、同月二六日ころ再度靴を買いに来た際これを
同店に放置して行つたので、かねて協力を依頼されていた同店員が警察官に提出し
その切痕が手掛りとなつて、原判示第一の犯行現場に残されていた二つの足跡と前
記ズツク靴の足跡との同一性について、それが酷似している旨の鑑定書が作成提出
されているというのである。
 <要旨>所論は、警察官がひそかに切傷をつけた靴を靴店で被疑者に販売してその
行動を監視する捜査方法は、国民の行動の自由を害し、任意捜査としては許
容されないと主張する。しかし、足跡によつて人の行動を観察して証拠とすること
が可能であるとしても、それは、実際問題として、犯罪現場に残された足跡を事後
的に収集する以外は、単に観念上可能であると認められるだけであるから、事後的
な観察を可能とするため特殊な足跡を残すような工作を靴に施したからといつて、
人の居宅に立入るなど通常許されない方法でその行動を直接観察する場合と同視す
るのは相当でない。また、そのような工作による捜査が、直ちに人に対し強制処分
に準じるような身体的又は精神的な負担を課し、行動の自由を奪うものとも認めら
れない。したがつて、捜査の目的を達するため相当と認められる限り、足跡を採取
するため靴に一定の工作を施すことも、任意捜査として許されると解される。本件
についてみると、前記のとおり、多数の窃盗事件の被疑者と目すべき事情があり、
その捜査が困難で他にこれにかわる有効適切な捜査方法が見当らず、しかもその態
様が靴底裏面に切傷をつけたズツク靴を靴店の協力を得て被告人に販売し後に回収
したというだけであるから、右の捜査方法は任意捜査として許容される限度にとど
まるものであるということができる。そうすると、所論指摘の各証拠の証拠能力を
否定すべきいわれはないから、所論は採用できない。論旨は、理由がない。
 二 控訴趣意書六の主張について
 論旨は、量刑不当の主張であつて被告人を懲役五年に処した原判決の量刑は重き
に失する、というのである。
 そこで、原審記録を調査し当審における事実取調の結果をも参酌して検討する
と、本件は、一回の侵入盗未遂及びその際家具等に食用油等を散布するなどした器
物損壊の犯行と一回の侵入盗の事案であるが、犯行態様が悪質で被害の額も少なく
ないこと、被告人は、原判示の累犯前科のほかにも窃盗や住居侵入の非行による二
回の中等少年院在院歴、窃盗罪や器物損壊罪等による懲役実刑前科三犯がありなが
らまたも職業的手口による本件各犯行に及んでいて、この種事犯に関する強固な犯
罪傾向が看取され、法規範無視の態度は顕著であること、被告人は反省の態度を全
く示さず、各被害者に対し何ら慰謝の方法を講じていないことなどの諸点を考慮す
ると、被告人の刑責は重いといわなければならない。そうすると、同種事犯に対す
る量刑の一般的状況や被告人にとり有利と認められる情状を十分酌んでも、被告人
を懲役五年(求刑懲役六年)に処した原判決の量刑はやむをえないものと認められ
る。論旨は、理由がない。
 よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却し、刑法二一条により当審におけ
る未決勾留日数中六〇日を原判決の刑に算入し、当審における訴訟費用は刑訴法一
八一条一項本文を適用してこれを全部被告人に負担させることとし、主文のとおり
判決する。
 (裁判長裁判官 桑田連平 裁判官 香城敏麿 裁判官 植村立郎)

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