弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人前田力の上告趣意第一、二点について。
 右は結局原審の量刑の不当を主張し、更に同情ある裁判を求めるに帰するのであ
るから、上告適法の理由とすることはできない。
 弁護人徳岡一男の上告趣意第一点について。
 所論は、控訴趣意書を以て主張せず、従つて原審において判断を経ていない事項
に関して原審の訴訟法違背を主張するに過ぎないものであるから、上告適法の理由
とすることはできない。
 同第二点について。
 本件は、刑訴二八九条一項に該当するいわゆる必要的弁護の事件であるにかかわ
らず原審が弁護人不出頭の儘、公判を開廷し即日結審の上、裁判をしたことは所論
のとおりである。しかして、本件は簡易裁判所に起訴された事件ではあるけれども、
控訴審においては刑訴施行法五条の適用はなく、従つて前記原審の措置は刑訴二八
九条に違反する違法の手続であることも、また、所論のとおりである。
 しかしながら、記録によれば、所論公判期日については被告人選任の弁護人は適
法な期日の呼出を受けたにかかわらず正当の理由なくして出頭しなかつたものであ
ること、同弁護人は、これよりさき適法に控訴趣意書を原審に提出しており、かり
に、右期日に新に弁護人を選任したとしても要するに右趣意書に基いて陳述するに
過ぎないのが控訴審の性格上通例であること、右控訴趣意書の内容も被告人の性格、
本件犯行の動機、被害の僅少なること等を挙げて原判決の量刑の不当を主張するに
過ぎないものであること、及び原判決は、右趣意書について、精細審査の上、判決
していることが判明するのであつて、以上諸般の事情を勘考すれば、前記原審の手
続上の違法は、未だ以て刑訴四一一条にいわゆる原判決を破棄しなければ著しく正
義に反するものとはみとめられない。
 同第三点について。
 右は原判決の量刑の不当を主張するものであつて上告適法の理由とならない。
 その他本件において刑訴四一一条を適用すべきかどうかはみとめられないから同
法四〇八条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
  昭和二六年一一月二八日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    島           保
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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