弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決中被告人Aに関する部分を破棄する。
     被告人Aを罰金三〇〇〇円に処する。
     右罰金を完納することができないときは金二〇〇円を一日に換算した期
間同被告人を労役場に留置する。
     本件公訴事実中大豆及び小豆に関する食糧管理法違反の点につき同被告
人を免訴する。
     被告人Bの上告はこれを棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人両名の負担とする。
         理    由
 被告人両名の弁護人鵜沢晋の上告趣意及び被告人両名の各上告趣意はいずれも末
尾添付の別紙書面記載のとおりである。
 弁護人鵜沢晋の上告趣意第一点について。
 しかし、憲法第二五条第一項の法意は、国家は国民一般に対し概括的に健康で文
化的な最低限度の生活を営ましめる責務を負担し、これを国政上の任務とすべきで
あるとの趣旨であつて、この規定により直接に個々の国民は国家に対して具体的現
実的にかかる権利を有するものではないこと及び被告人に実刑を科するためその家
族が生活困難に陥るとしても、その判決を以つて憲法第二五条に違反するものとい
うことができないことは、いずれも当裁判所大法廷の判例とするところである(昭
和二三年(れ)第二〇五号同年九月大法廷判決判例集二巻一〇号一二三五頁、昭和
二二年(れ)第一〇五号同二三年四月七日大法廷判決判例集二巻四号二九八頁参照)。
従つて所論憲法違反の主張は採用することができない。又、量刑不当の主張は刑訴
四〇五条の上告理由に当らない。
 同第二点の(二)及び被告人両名の各上告趣意について。
 所論はいずれも量刑不当の主張を出でないものであつて、同四〇五条に当らない。
 しかし、職権で調査すると、弁護人鵜沢晋の上告趣意第二点の(一)も指摘して
いるとおり、被告人Aに対する本件公訴事実中第一審判決判示第二の大豆及び小豆
に関する食糧管理法違反の点は昭和二七年四月二八日政令第一一七号大赦令一条八
六号により大赦があつたので、刑訴四一一条五号により原判決及び第一審判決中同
被告人に関する部分を破棄し、同四一三条但書により当裁判所において更らに判決
をすることとし、同四一四条四〇四条三三七条三号により右被告人に対し前記事実
につき免訴の言渡をする。而して、第一審判決が証拠により確定したその余の事実
を法律に照らすと、第一審判決判示第一の同被告人の所為は食糧管理法九条三一条
罰金等臨時措置法二条一項食糧管理法施行令一一条同法施行規則二九条に該当する
ので、所定刑中罰金刑を選択し、その金額範囲内で同被告人を罰金三〇〇〇円に処
し、右罰金を完納することができないときは刑法一八条により金二〇〇円を一日に
換算した期間同被告人を労役場に留置すべきものとする。
 なお、被告人Bについては、記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認
められない。従つて、同被告人の上告は同四一四条三九六条に則りこれを棄却すべ
きである。
 よつて、訴訟費用の負担につき同一八一条を適用して、裁判官全員一致の意見で
主文のように判決する。
 検察官 大津民蔵出席
  昭和二七年一一月四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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