弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決を次のとおり変更する。
第1審判決を次のとおり変更する。
()上告人は,被上告人に対し,69万9720円及びこれに対する平成121
年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
()被上告人のその余の請求を棄却する。2
2訴訟の総費用は,これを5分し,その3を被上告人の負担とし,その余を上告
人の負担とする。
理由
上告代理人桑原昌宏の上告受理申立て理由について
1原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
()被上告人は,埼玉県草加市内にあるマンション「a(以下「本件マンショ1」
ン」という)の管理組合であり,建物の区分所有等に関する法律3条前段所定の。
本件マンションの区分所有者全員を構成員とする団体である。
()上告人は,平成10年3月31日,株式会社Dから本件マンションの502
6号室の区分所有権を買い受け,同年5月1日,その旨の所有権移転登記手続を了
した。
()被上告人が定めた本件マンションの管理規約(以下「本件規約」という)3。
中には,管理費及び特別修繕費(以下,併せて「管理費等」という)に関する定。
めとして,次のような規定がある。
組合員である区分所有者は,敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるた
め,管理費等を被上告人に納入しなければならず,その額については,各区分所有
者の共用部分の共有持分に応じて算出し,毎会計年度の収支予算案により,総会の
承認を受けるものとする(25条。特別修繕費は修繕積立金として積み立てるも)
のとする(28条1項。被上告人は,管理費等について,組合員が各自開設する)
預金口座からの自動振替の方法等により翌月分を毎月末日までに一括して受け入れ
る方法により徴収するものとする(58条1項。管理費等の額,賦課徴収方法等)
については,総会の決議を経なければならない(47条。)
()株式会社Dは,平成4年1月分から平成10年4月分までの管理費等を滞4
,(「」納しておりその合計額は173万9920円である内訳は別紙滞納額の内訳
のとおりである。以下,この管理費等を「本件管理費等」という。。)
()被上告人は,本件管理費等の支払義務は上告人に承継されたとして(建物5
の区分所有等に関する法律8条,平成12年12月4日,上告人に対し,本件管)
理費等の支払を求める旨の支払督促を越谷簡易裁判所に申し立てた。この督促事件
は,上告人が督促異議の申立てをしたことにより本件訴訟に移行した。
()上告人は,本件訴訟において,本件の管理費等の債権は民法169条所定6
の債権に該当し,同条所定の5年間の短期消滅時効により消滅する旨主張して,本
件管理費等のうち支払期限から5年を経過した平成7年12月分までのもの(合計
104万0200円)につき消滅時効を援用した。
2原審は,次のとおり判断し,上告人の上記消滅時効の抗弁を排斥して,被上
告人の請求を認容すべきものとした。
本件の管理費等は,原則的には毎月一定額を支払う形になってはいるものの,共
用部分の管理の必要に応じて,総会の決議によりその額が決定され,毎年要する経
費の変化に応じて年単位でその増額,減額等がされることが予定されているもので
あって,その年額が毎年一定となるものではない。したがって,被上告人が区分所
有者に対して管理費等の納入を求めることができる権利は,基本権たる定期金債権
の性質を有するものではなく,本件の管理費等の債権についても,基本権たる定期
金債権から発生する支分権としての性質を有するものとはいえず,民法169条所
定の定期給付債権には該当しないから,同条所定の短期消滅時効の適用はないと解
すべきである。
3しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
【要旨】本件の管理費等の債権は,前記のとおり,管理規約の規定に基づいて,
区分所有者に対して発生するものであり,その具体的な額は総会の決議によって確
定し,月ごとに所定の方法で支払われるものである。このような本件の管理費等の
債権は,基本権たる定期金債権から派生する支分権として,民法169条所定の債
権に当たるものというべきである。その具体的な額が共用部分等の管理に要する費
用の増減に伴い,総会の決議により増減することがあるとしても,そのことは,上
記の結論を左右するものではない。
そうすると,本件管理費等のうち平成4年1月分から平成7年12月分までのも
の(合計104万0200円)については,消滅時効が完成していることになるか
ら,被上告人の請求は,上記時効完成分を除いた69万9720円及びこれに対す
る支払督促の送達の日の翌日である平成12年12月13日から支払済みまで年5
分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきである。
これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反が
ある。論旨は理由があり,原判決を主文第1項のとおり変更するのが相当である。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官福田博
の補足意見がある。
裁判官福田博の補足意見は,次のとおりである。
論旨は,管理費及び特別修繕費の双方について実体的に一体のものとして民法1
69条に基づく短期消滅時効を主張しており,現行法の解釈としては,法廷意見が
述べるとおり,これを首肯せざるを得ない。
しかし,マンション等の区分所有建物においては,経常的な経費を賄うために徴
収される通常の管理費とは別に,共用部分の経年劣化等に対処するための修繕費用
は必ず必要となるものであって,これを区分所有者全員で負担しなければならない
ことはいうまでもない。そのために要する費用は往々にして多額に上ることから,
これを修繕を行う際に一度に徴収することは実際的とはいい難い。そこで,管理組
合が長期的な収支見通しの下で計画的な積立てを行ってこれに備えるのが修繕積立
金と呼ばれるものであり,将来への備えとして,このような対応が必要となること
は当然のことというべきである。このような修繕積立金は,区分所有建物の資産価
値を維持保全するためのものであり,究極的には個々の区分所有者の利益に還元さ
れるのであり,また,区分所有関係を維持していくために必要不可欠の負担という
こともできる。修繕積立金のこのような性質にかんがみると,短期消滅時効の適用
により,不誠実な一部の滞納者がその納付義務を容易に免れる結果とならないよう
にするための適切な方策が,立法措置を含め十分に検討されるべきものと考える。
(裁判長裁判官北川弘治裁判官福田博裁判官滝井繁男)

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