弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

   
主    文   
   1 被告は,原告に対し,7447万8634円及びこれに対する平成16年6月10日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
   2 原告のその余の請求を棄却する。
   3 訴訟費用は,これを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担と
する。
   4 この判決の第1項は仮に執行することができる。
事実及び理由   
第1 請求
  被告は,原告に対し,金8199万3037円及びこれに対する平成16年6月10日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
 1 事案の概要
   本件は,平成14年に被告が実施した亡A(以下「A」という。)の勤務先における定
期健康診断において,Aの胸部レントゲン写真上に異常な所見があったのに,被告
は,コンピュータ入力時,これを別人の検査票に記入した過失により,Aは当時既
に罹患していた肺癌を早期に発見する機会を逸し,平成15年度にAが受診した定
期健康診断で発見されたときには,既に肺癌の末期であり,早期に外科的治療を
すれば根治する高度の蓋然性があったのに,被告の上記の過失により,その機会
を逸して死亡したとして,Aを相続した原告が,被告に対し,不法行為に基づく損害
賠償を求めた事案である。
 2 争いがない事実(争いがないか,明らかに争わない事実については証拠番号を付さない。)
  (1)当事者
    原告はAの子でAの損害賠償請求権を相続した者であり,Aは下記の各定期健康
診断を受診した者である。
    被告は,各種健康診断を実施することを事業目的とする財団法人である。
  (2)Aの定期健康診断の受診
    Aは,勤務していたH保険会社の定期健康診断を,平成13年5月10日,平成14
年5月22日,平成15年5月7日にそれぞれ受診し,胸部レントゲン撮影等をし
た(それぞれを「平成13年,14年,15年の検査」という。)。
  (3)健康診断の結果
    平成13年及び平成14年の検査結果は,異常なしであったが,平成15年の検査
結果では,左側・上肺野・石灰化疑い,両側・全肺野異常陰影疑い,粒状陰影疑
いとされた(下記(5)のとおり,平成14年の検査結果は取り違えにより別人のも
のであった。)。
  (4)Aの入院,加療
    平成15年の検査結果を受けて,Aは同年5月19日にC病院を受診し,胸部レント
ゲン検査,胸部CT検査などを受け,同月21日には,胸部・腹部超音波検査等
の検査を受け,同年6月5日,肺癌であり,手術の適応外であるとの説明を受け
た。
    同月6日,AはD病院を受診して同月10日に入院し,同月13日一旦退院して同
月20日に再入院し,抗癌剤治療などを受けながらD病院への入退院を繰り返し
たが,平成16年6月10日に死亡した(死亡時37歳)(AがC病院で肺癌と診断
されたこと,D病院に入院して肺癌の治療を受けたこと,平成16年6月10日に
死亡したことは争いがなく,その余は弁論の全趣旨。)。
  (5)被告の入力ミス
    被告は,平成14年の検査結果をコンピュータに入力する際,胸部スケッチのフィ
ルムNo.697(A)の所見及び判定を,誤ってNo.687(B)の欄に入力した。した
がって,被告にはレントゲン読影後の検査票への入力ミスという過失がある。
  (6)Aの肺癌の種類
    Aの肺癌は,腹部や頭部への遠隔転移がなく,種類も進行の早い小細胞癌では
なく,腺癌であった。
  (7)肺癌のステージ分類及び生存率
   ア 肺癌の予後を推測するには,外科手術時の症状をステージ別に分類するが,
ステージ分類は,T因子(腫瘍の大きさ),N因子(局所リンパ節への転移状
況),M因子(遠隔臓器への転移状況)の3因子の組み合わせによる。さらに,
これらの因子の検索が手術肺の病理組織や手術所見によったものはp,臨床
的経過の追跡によったもの(本件)であればcを付して区分される。
   イ Aの場合,T因子は,平成14年度の胸部間接レントゲン写真で腫瘍の長径は6
ミリメートルであるから,直接撮影の写真では,その4倍と考えて24ミリメート
ルと推測される。このサイズでT因子は,T1となる。M因子は,平成14年度の
検査時には転移発見されていないので,M0と見られる(N因子については争
いがある。)。
   ウ 上記N因子について,肺門部・縦隔リンパ節転移が認められない場合には,N
0である。この場合,cT1N0M0となり,臨床病期は,IAとなる。他方,N因子
について,肺門部・縦隔リンパ節転移が認められる場合には,cT1N1M0と
なり,臨床病期は,ⅡAとなる。
   エ 臨床病期IAの場合の5年生存率は,1994年の本邦における肺癌登録合同委
員会,肺癌外科切除例の全国集計に関する報告によれば,72パーセントとさ
れている。
     臨床病期ⅡAの5年生存率は,乙B1(米国カリフォルニア大学のC.F.マウン
テン博士の報告)によれば,34パーセントであり,乙B2(肺癌登録合同委員
会,肺癌外科切除例の全国集計に関する報告)によれば,47.8パーセント
である。
 3 争点
   原告に生じた損害(特にAの生存可能性と逸失利益)
 4 争点に対する当事者の主張
  (1)原告の主張
   ア 入院治療費(入院合計日数222日)      302万4070円
     Aは以下のとおり入院した。
    (ア) C病院入院  3万1090円
     平成15年 6月2日,3日(2日間)
    (イ) D病院入院   299万2980円
平成15年 6月10日から13日(4日間) 3万2570円
           6月20日から8月14日(56日間)
                          45万9410円
           8月28日から9月6日(10日間)
                           6万4930円
          12月29日から31日(3日間) 5万7840円
     平成16年 1月16日から6月10日(147日間)
                         237万8230円
   イ 入院雑費                    35万5200円
      1日1600円×222日間=35万5200円
   ウ 通院治療費(通院日数合計43日)        36万0530円
      Aは以下のとおり通院した。
    (ア) C病院(7日)           2万9440円
      平成15年 5月19日  1万3100円
              21日    6850円
              23日    3510円
              26日     330円
              29日    3710円
              30日     930円
             6月5日    1010円
    (イ) D病院(14日)          23万0990円
      平成15年 5月30日    6760円
            6月 6日    5020円
               9日  1万3470円
              19日  2万5110円
              24日  1万8900円
            8月20日    4490円
              25日    7870円
            9月16日  2万7200円
              29日  2万5940円
           10月 2日    3150円
              14日  2万7200円
              31日    2000円
           11月17日  3万8580円
           12月15日  2万5300円
    (ウ) Eクリニック(1日)        4万4220円
      平成15年 6月15日(1回のみ)
    (エ) Fクリニック(薬代を含む。)(21日)
                             5万5880円
      平成15年10月 2日    4070円
               5日    4700円
               6日    3860円
              10日    2000円
              17日    1580円
              21日    6980円
              28日    2210円
           11月 4日    3620円
              10日    5630円
              14日    1750円
              18日    1600円
              21日    1710円
              25日    2780円
              28日    1510円
           12月 2日    1520円
               5日    4660円
               9日    1030円
              12日     380円
              19日    1250円
              22日    1130円
      平成16年 2月 6日    1910円
   エ 入通院慰謝料                300万円
     上記ア,ウで主張したとおり,Aの入院日数は222日,通院実日数は43日であ
り,これを慰謝するためには300万円が相当である。
   オ 逸失利益                 3790万2432円
    (ア) Aは長男と2人暮らしであり,家事に従事する傍ら保険の外交員として稼働
していた。よって,逸失利益の算定は,基本的に家事労働を金銭的に評価
して行うのが相当である。平成14年の賃金センサスによれば,女性労働者
の学歴計平均賃金は352万2400円,生活費控除は主婦であるから30
パーセントとしてライプニッツ係数(30年,15.372)を乗じて中間利息を
控除する。
      352万2400円×(1-0.3)×15.372
                          =3790万2432円
    (イ) 生存可能年数の算定
     a. Aは平成14年の検査当時肺癌に罹患していたが,この検査当時に肺癌を早
期に発見できていれば,外科的手術が可能であり,平均余命まで生存で
きた可能性が高い。
       肺癌の病期及び生存率は上記のとおりであり,Aについては,リンパ節転移
の有無が予後に大きく影響する。
       肺門部・縦隔リンパ節転移の診断は,CTあるいはMRIによって短径1センチ
メートル以上のリンパ節腫大を転移陽性とする基準が用いられている。
本件では,そもそも,平成14年にはCTもMRIも行われておらず,間接レ
ントゲン写真によっても,明らかな短径1センチメートル以上の肺門部・
縦隔リンパ節腫大は認められない。したがって,N因子は0である。
       結局,平成14年の検査当時のAのTNM分類は,cT1N0M0であり,臨床
病期はⅠAである。
       肺癌非小細胞癌の臨床病期IAの5年生存率については,上記(1994年の
本邦の報告)によれば,72パーセントであるから,平成14年5月の時点
でAが異常所見を指摘されていれば,精密検査の上,外科的治療によっ
て根治する高度の蓋然性があったと言うことができ,平均余命(67歳)ま
で生存できたことを前提として逸失利益を算定するべきである。
     b. 被告は,平成14年の検査当時のAの胸部レントゲン写真によってもリンパ
節腫大が伺われるし,1年後には癌が両肺に転移しているから,平成14
年の検査当時にリンパ節転移があったとみるのが合理的で,臨床病期
の分類はⅡAであると主張する。
       しかし,リンパ節腫大の有無は,レントゲン写真ではなく,CTないしMRIで診
断すべきとされているから,本件では,判定できない。
       そもそも,通常のレントゲン画像でリンパ節腫大かどうかの鑑別は難しく,実
際にも,Aの平成15年の検査(甲A1)の読影結果でも,既に肺内に転移
しており,手術不能の状態になってからの画像であるし,当然リンパ節転
移も生じていたはずなのに,部位コード(2)をみると,肺門,縦隔に異常所
見は認められていない。この画像は2人の医師が読影したようである
が,いずれも同じである。平成14年の検査時の読影結果(甲A2,Bのも
のとして記載されたものがAの結果である。)をみても,部位コード(2)に
は,肺門,縦隔に異常所見は認められていない。結局,胸部レントゲン
写真からはリンパ節腫大は認められないというべきである。
       さらに,1年後に両肺に転移しているといっても,信頼できる報告によれば,I
期の非小細胞癌の無治療例(化学療法・放射線療法を受けた者を含
む。)の平均生存月数は17か月から25か月,2年生存率20パーセント
とされる。しかし,Aが死亡したのは平成14年5月から26か月経過した
平成16年6月10日であり,I期の平均的予後以上生存しているのであっ
て,病期Ⅱ期であるという被告の主張は根拠がない。
   カ 葬儀費                 150万円
   キ 健康補助食品,温熱療法費         35万0805円
     Aは治療のために,水溶性メシマコブⅤを購入し,この費用として28万1505
円,また,MI温熱器を購入し,6万9300円を支払った。
   ク 死亡慰謝料              2800万円
     Aは主婦であると同時に母子家庭を支え,一家の主柱の立場にあった。
   ケ 弁護士費用               750万円
     上記アないしクの損害額の1割が相当である。
  (2)被告の主張
   ア 損害は不知。
   イ 逸失利益については,平成14年に外科的治療を受けてもせいぜい3ないし4
年程度しか延命できなかったとみるべきである。
     平成14年のレントゲン写真によれば,間接写真からも肺門部リンパ節腫大が
疑われる。すなわち,平成13年の検査当時のレントゲン写真に比べて,平成
14年度の検査のときの写真では,明らかに両側肺門部の腫大が認められ,
この時点でリンパ節移転があったことが明らかである。
     また,1年後には両肺へ転移を来していることから,平成14年度の時点で,リン
パ節転移があったとみた方が合理的で,N1と判断するべきである。
     甲A1やA2の所見区分コードには,リンパ節腫脹や肺門部腫大にチェックがさ
れていない。しかし,これによって肺門部腫大がなかったということはできな
い。定期健康診断時の読影は,多数の受診者を対象とし,読影者の疲労や経
験によって影響を受け,フィルムサイズが小さいので,直接撮影に比べて読影
が不利であり,正常と異常の境界の設定が困難であらゆる検査につきまとう
特異性と感受性の妥協点を見いだすことが容易でないなどの制約と限界があ
る。そして,本件1件のみを時間をかけて読影した場合に,定期健康診断時の
読影とは異なる結論に至っても不自然ではない。
     上記のとおり,cT1N1M0で臨床病期がⅡAとなる。ⅡAの場合の5年生存率
は34パーセントや47.8パーセントという報告があるから,平成14年に左肺
上葉の原発巣の外科的切除を受けていたとしても,根治した可能性は極めて
低く,せいぜい3ないし4年しか延命できなかったと推測される。
第3 当裁判所の判断
 1 平成14年の検査の当時,肺癌がリンパ節に転移していたかどうか
   本件の最大の争点は,Aの逸失利益の算定に当たり,何年間生存できたかどうか
であるところ,これは,平成14年の検査のときのAの肺癌の病状(ステージ分類)
にかかわる。なお,Aの肺癌の病状については,上記のTNM分類によるところのT
及びM因子については争いがないので,N因子(リンパ節転移の有無)について以
下検討する。
  (1)平成14年の検査当時のレントゲン写真の検討
   ア 平成14年の検査当時のレントゲン写真による検討
     甲B1によれば,肺門部リンパ節転移があったかどうかについての診断は,CT
においてもMRIにおいても,短径が1センチメートル以上のリンパ節腫大を転
移陽性と診断する基準が用いられていることが認められる。また,甲B4によ
れば,肺門部陰影は,左右肺動静脈,左右気管支の壁,リンパ節よりなり,X
線像の主体をなすものは,肺動静脈で一部のみに気管支壁が関与していると
考えて差し支えないこと,たとえ,正常リンパ節がその陰影の一部をなしてい
るとしても,石灰沈着がない限りそれと同定することはできないことが認めら
れる。また,証人Gによれば,レントゲンの間接撮影では,リンパ節は通常の
レントゲン像には写らないことと,平成14年と平成15年のAの胸部レントゲン
写真には,リンパ節そのものは写っておらず,これらによってはリンパ節その
ものが大きくなっていることの判定はできないことが認められる。
     加えて,平成14年,15年のAのレントゲン写真を医師が読影した結果(甲A1,
2)によっても,所見区分にリンパ節腫脹,肺門部腫大という項目があるにも
かかわらず,異常は指摘されていない。
     なお,被告は,定期健康診断時の読影は,多数の受診者を対象とし,読影者の
疲労や経験によって影響を受け,フィルムサイズが小さいので,直接撮影に
比べて読影が不利であり,正常と異常の境界の設定が困難であらゆる検査
につきまとう特異性と感受性の妥協点を見いだすことが容易でないなどの制
約と限界があると主張するが,かかる状況があるとしても,読影結果を記して
いる胸部X線検査チェック表にリンパ節腫脹,肺門部腫大という項目がある以
上,この点も読影の対象となっており,読影時の医師はリンパ節腫大や肺門
部腫大の所見は無かったと読影したことは認められる。
   イ 平成13年,14年,15年の各検査当時のレントゲン写真の比較による検討
     さらに,被告は,平成14年,15年の検査時のレントゲン写真と,平成13年の
検査時のレントゲン写真を比較すれば(乙A2),明らかに肺門部のリンパ節
が腫大していると主張し,証人Gもその旨述べる。
     しかし,同証人が指摘した部分を精査しても,明らかに肥大しているとは認めら
れない。Aに実施された検査は,レントゲンの間接撮影であるから,撮影条件
による写り方の違いも考慮に入れる必要があり,肺門部の見え方に変化が見
られたからといって直ちに肥大していると判断することはできない。
     結局,平成13年,14年,15年の各検査時のレントゲン写真を比較しても,平
成14年の検査当時に,Aの肺癌がリンパ節に転移していたと認めることはで
きない。
  (2)Aの病状の経過からの検討
    Aが平成15年の検査結果を受け,C病院で肺癌と診断されて,D病院で治療を開
始したのは平成15年6月からであるが,この当時の病状から遡って1年前であ
る平成14年の検査時に既に肺癌のリンパ節転移があったことが認められるの
であれば,ステージ分類のN因子に影響するので検討する。
    Aの平成15年の胸部レントゲン写真によれば,左側上肺野の異常陰影,石灰
化,両側全肺野の粒状陰影が認められ,両肺に癌が転移していることが認めら
れる。このような状況になるまでには,原発巣からリンパ節に転移があって拡大
し,血管壁を破って左右平等に血行を通して分布されたという経過を辿ったもの
と推測される(証人G)。しかし,リンパ節に転移してからかかる状況になるまでど
の程度の時間がかかるかについては,何ら立証がなく,被告に所属するIセンタ
ーの所長である証人Gも分からないと述べるにとどまる。
    そうすると,平成15年のAの肺癌の状態から,平成14年の検査のときに,Aの肺
癌がリンパ節に転移していたと認めることはできず,他に平成14年の検査時点
でAの肺癌がリンパ節に転移していたことを認めるに足りる証拠はない。
  (3)上記によれば,Aの平成14年度の肺癌の臨床病期はcT1N0M0であり,ステー
ジIAであると認められる。そうすると,IAの5年生存率は72パーセントであり,A
に外科的治療を妨げるような既往症は存しなかったのであるから,平均余命ま
で生存することができた高度の蓋然性があったと認めることができる。
 2 損害額
  (1)入院治療費 302万4070円
    甲C1の1ないし18,6の8及び9より,原告主張金額の全部が認められる。
  (2)入院雑費   33万3000円
    甲C1の1ないし18,6の8及び9より,入院日数合計222日であり,1日あたり1
500円の雑費を要したと認めることができる。
  (3)通院治療費 36万0530円
    甲C6の1ないし7,10より,AはC病院に原告主張のとおり通院し,治療費として
合計2万9440円を支払ったことが認められる(通院日数7日)。
    甲C1の19ないし37より,AはD病院に原告主張のとおり通院し,治療費として2
3万0990円を支払ったことが認められる(通院日数14日)。
    甲C5の1ないし3より,AはEクリニックに平成15年6月15日に通院し,治療費及
びレントゲン費用として4万4220円を支払ったことが認められる(通院日数1
日)。
    甲C3の1ないし21,4の1ないし10より,AはFクリニックに原告主張のとおり通
院し,治療費及び薬代として5万5880円を支払ったことが認められる(通院日
数21日)。
  (4)入通院慰謝料 300万円
    上記(2)及び(3)で認定したとおり,Aの入院日数は222日,通院日数は43日であ
り,これを慰謝するためには300万円が相当である。
  (5)逸失利益3219万1734円
    上記で検討したとおりAは平均余命まで生存できた高度の蓋然性がある。平成1
6年賃金センサス第1巻第1表女性労働者学歴計,企業規模計における平均年
収は349万0300円で,甲A3によれば,Aは母子家庭で一家の支柱というべき
存在であったから,生活費控除を40パーセントとして,Aの死亡時である37歳
から67歳まで30年の逸失利益をライプニッツ方式(ライプニッツ係数15.372)
で計算すると,下記のとおりである。
     349万0300円×(1-0.4)×15.372
                        =3219万1734円
  (6)葬儀費  150万円
    葬儀費用として150万円が相当である。
  (7)健康補助食品,温熱療法費  6万9300円
    健康補助食品については,甲C2の1ないし4により28万1505円を支払った事
実が認められるが,これについては,肺癌の治療に必要であったことを認めるに
足りる証拠がない。温熱療法については,甲C2の5から,6万9300円の支出
があったことと,医師であるFクリニックの紹介によって機器を購入したことが認
められるので,相当因果関係が認められる。
  (8)死亡慰謝料 2800万円
    Aが母子家庭を支えていたことを考慮すると,死亡慰謝料としては2800万円が
相当である。
  (9)弁護士費用 600万円
    本件の審理経過,上記(1)ないし(8)の損害合計額が6847万8634円であること
等の諸般の事情を考慮し,弁護士費用として600万円を相当と認める。
  (10) 損害額合計 7447万8634円
    上記(1)ないし(9)の損害額の合計は7447万8634円で,原告は,Aの子としてこ
れを相続した。
 3 結論
   以上検討したところによれば,原告の主張は,7447万8634円及びこれに対する
平成16年6月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払の限度で理
由があり,被告の仮執行免脱宣言の申立は相当でないからこれを却下することと
して,主文のとおり判決する。
仙台地方裁判所第3民事部
裁判長裁判官  小   野   洋   一
裁判官  髙   木   勝   己
           裁判官  伊   藤   康   博

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛