弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成13年(ワ)第19878号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成14年11月7日
              判       決  
   原      告 株式会社中部機械製作所
訴訟代理人弁護士     赤 尾 直 人
補佐人弁理士       土 井 育 郎
   被      告 凸版印刷株式会社
          (以下「被告凸版印刷」という。)
   被      告 株式会社トッパンエンジニアリング
          (以下「被告トッパン」という。)
  被       告 四国化工機株式会社
          (以下「被告四国化工機」という。)
     上記3名訴訟代理人弁護士竹 田   稔
     同         勝 田 裕 子
    復代理人弁護士     川 田   篤
     補佐人弁理士      鈴 江 武 彦
     同         河 野   哲
     同         中 村   誠
     同         幸 長 保次郎
     同         廣 田 雅 紀     
             主       文  
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
 1 被告凸版印刷は,別紙物件目録1ないし3記載の有底カートンの直進搬送装
置の販売及び貸し渡しをしてはならない。
 2 被告凸版印刷は,原告に対し,金1200万円及びこれに対する平成13年
9月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 被告トッパンは,別紙物件目録1,2記載の有底カートンの直進搬送装置の
製造,販売及び別紙物件目録3記載の有底カートンの直進搬送装置の販売をしては
ならない。
 4 被告トッパンは,原告に対し,金1200万円及びこれに対する平成14年
6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 5 被告四国化工機は,別紙物件目録3記載の有底カートンの直進搬送装置の製
造及び販売をしてはならない。
 6 被告四国化工機は,原告に対し,金1億2000万円及びこれに対する平成
13年10月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
   本件は,原告が被告らに対し,別紙物件目録1ないし3(以下それぞれ「被
告製品1」ないし「被告製品3」といい,これらを総称して「被告各製品」という
場合がある。)各記載の有底カートンの直進搬送装置を製造,販売するなどの被告
らの行為が原告の有する特許権を侵害するとして,製造販売等の差止めと損害賠償
の支払を求めた事案である。
 1前提となる事実(当事者間に争いがない事実及び弁論の全趣旨により認めら
れる事実。なお,証拠により認定した事実については末尾に摘示した。)
(1) 原告の有する特許権
  原告は,次のア,イの各特許権(以下順に「本件特許権1」「本件特許権
2」と,これらを併せて「本件各特許権」といい,その発明を順に「本件発明1」
「本件発明2」と,これらを併せて「本件各発明」という。)を有している。
 ア 本件特許権1
(ア) 発明の名称   有底カートンの直進搬送装置
(イ) 出願日平成8年12月24日
(ウ) 登録日平成13年5月11日
(エ) 特許番号第3187332号
(オ) 特許請求の範囲 別紙「特許公報1」写しの該当欄記載のとおり
(以下同公報掲載の明細書を「本件明細書1」という。)
 イ 本件特許権2
(ア) 発明の名称   有底カートンの直進搬送装置
(イ) 出願日平成8年12月24日
(ウ) 登録日平成13年5月11日
(エ) 特許番号第3187333号
(オ) 特許請求の範囲 別紙「特許公報2」写しの該当欄記載のとおり
(以下同公報掲載の明細書を「本件明細書2」という。)
(2) 本件各発明の構成要件
  本件各発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
 ア 本件発明1
A 一対の無端チェーンコンベアをその同一進行側を同一平面上に対向さ
せて平行に配置し,
B かつ,その無端チェーンコンベア間に搬送レールを設置し,
C 各無端チェーンコンベアに互いに対向させ,定間隔で搬送方向に前後
一組のキャリアを取り付け,キャリアの挟持片で有底カートンの各角部を挟持した
状態で搬送レール上の有底カートンを間欠搬送しながら停止時に,内容液の充填,
上部開口部の折り畳み,融着密封等の各工程を行う装置であって,
D 無端チェーンコンベアの支柱との支持部を巾方向に調節可能とする手
段と,
E 有底カートンが自然状態で捻れて水平面がひし形状に変形して形成さ
れる各角部のうち,鋭角部に対応するキャリアの挟持片を鈍角部に対応するキャリ
アの挟持片が間に存在しない範囲で互いに無端チェーンコンベアを反対方向へ同一
長さ進退させて,有底カートンの前後長に位置決めする手段とを備え,
F 大きさの異なる複数種類の有底カートンに対して装置を搬送駆動した
際に有底カートンの中心位置が搬送中の諸工程を行う機器との関係で移動しないよ
うにした
G ことを特徴とした有底カートンの直進搬送装置。
 イ 本件発明2
  A 一対の無端チェーンコンベアをその同一進行側を同一平面上に対向さ
せて平行に配置し,
  B かつ,その無端チェーンコンベア間に搬送レールを設置し,
  C 各無端チェーンコンベアに定間隔で設けたキャリアの挟持片で搬送レ
ール上の有底カートンを間欠搬送しながら停止時に,内容液の充填,上部開口部の
折り畳み,融着密封等の各工程を行う装置であって,
  D 無端チェーンコンベアの支柱との支持部を巾方向に調節可能とする手
段を有すると共に,
  E 有底カートンが自然状態で捻れて水平面がひし形状に変形して形成さ
れる各角部のうち,鋭角部に対応するキャリアを夫々の無端チェーンコンベアに設
け,この2個のキャリアの挟持片で有底カートンの対向する鋭角部を挟持して搬送
するようにし,無端チェーンコンベアを互いに反対方向へ同一長さだけ進退させる
ことによって,それらの挟持片を有底カートンの前後長に位置決めする手段を有し
ており,
  F 大きさの異なる複数種類の有底カートンに対して装置を搬送駆動した
際に有底カートンの中心位置が搬送中の諸工程を行う機器との関係で移動しないよ
うにした
  G ことを特徴とする有底カートンの直進搬送装置。
(3) 被告らの行為
 ア 被告凸版印刷は,被告製品1,2については,平成10年4月ころから
同12年8月ころまでの間に,被告製品3については,同13年5月11日以降,
被告トッパンから購入して,第三者に販売した。
 イ 被告トッパンは,被告製品1及び2を製造し,被告凸版印刷に対して,
販売した。また,被告トッパンは,被告製品3を被告四国化工機から購入し,被告
凸版印刷に販売した。
 ウ 被告四国化工機は,被告製品3を製造し,被告トッパンに販売した。
(4) 被告らの製品
ア 被告製品1
  被告製品1(商品名「EPU3000M」及び「EPUS3000
M」)は,1時間における有底カートンの処理数が3000個であり,カートンの
搬送路を1列とする有底カートンの直進搬送装置である。
  「EPU3000M」は,口栓の内付けを可能とする機能を有し,「E
PUS3000M」は,口栓の内付け及び外付けの双方を可能とする機能を有して
いる点で異なるが,その他の機能には違いがない。
イ 被告製品2
  被告製品2(商品名「EPU6000M」及び「EPUS6000
M」)は,1時間における有底カートンの処理数が6000個であり,カートンの
搬送路を1列とする有底カートンの直進搬送装置である。
  「EPU6000M」は,口栓の内付けを可能とする機能を有し,「E
PUS6000M」は,口栓の内付け及び外付けの双方を可能とする機能を有する
点で異なるが,その他の機能には違いがない。
ウ 被告製品3
  被告製品3(商品名「SP-60JSF」)は,1時間における有底カ
ートンの処理数を6000個とし,カートンの搬送路を2列とする有底カートンの
直進搬送装置である。
(5) 被告各製品の本件発明1,2の構成要件充足性
  被告各製品はいずれも,本件発明1の構成要件D,F,Gを,本件発明2
の構成要件C,D,F,Gを充足する。
(6) 本件各特許に対する無効審判請求の経緯
  本件各特許権について,被告凸版印刷からされた無効審判請求と審決,平
成14年5月16日付けで原告からされた訂正請求の経緯は,以下のとおりであ
る。
  ア 被告凸版印刷は,平成14年2月20日,本件特許権1,2について,
いずれも進歩性を欠くものであるとして,それぞれ無効審判請求をした。
  イ これに対し,原告は,平成14年5月16日付けで,本件発明1の構成
要件Cを以下のとおりとし,あわせて明細書の記載も訂正する旨などを求める訂正
請求を行った(甲12の1。なお,訂正を求めた部分に下線を付した。)。
   「各無端チェーンコンベアに互いに対向させ,定間隔で搬送方向に前後一
組のキャリアを取り付け,キャリアにおいて各無端チェーンコンベアから離れた状
態にて設けた挟持片で有底カートンの各角部を挟持した状態で搬送レール上の有底
カートンを間欠搬送しながら停止時に,内容液の充填,上部開口部の折り畳み,融
着密封等の各工程を行う装置であって,」
  ウ また,原告は,上記同日付けで,本件発明2の構成要件Cを以下のとお
りとし,あわせて明細書の記載も訂正する旨などを求める訂正請求を行った(甲1
2の2。なお,訂正を求めた部分に下線を付した。)。
   「各無端チェーンコンベアに定間隔で設けたキャリアにおいて各無端チェ
ーンコンベアから離れた状態にて設けた挟持片で搬送レール上の有底カートンを間
欠搬送しながら停止時に,内容液の充填,上部開口部の折り畳み,融着密封等の各
工程を行う装置であって,」
  エ 上記無効審判請求,訂正請求について,特許庁は,平成14年8月20
日,本件各特許権について,いずれも,原告の訂正請求を認めた上で,特許を無効
とする旨の審決を行った(乙15,16)。
2争点及び当事者の主張
(1)被告各製品の構成
(原告の主張)
  被告製品1ないし3の構成は,順に別紙物件目録1ないし3記載のとおり
である。
 別紙被告主張物件目録1ないし3は,以下の点において妥当を欠く。
ア 別紙被告主張物件目録1ないし3は,挟持片(被告主張のキャリア片)
の間隔を調整する手段について,前進移動方式のみを記載し,反対方向移動方式を
記載しない点において,相当でない。
イ 別紙被告主張物件目録1ないし3は,鋭角部用無端チェーンに関する
「第1の無端チェーンコンベア」,鈍角部用無端チェーンに関する「第2の無端チ
ェーンコンベア」としているが,被告各製品では,鋭角部用無端チェーン,鈍角部
用無端チェーンに対応して,それぞれ個別の「無端チェーンコンベア」が存在する
わけではないので,同記載は相当でない。
ウ 鈍角部用キャリアによる挟持片は,内容液を充填した後においても,本
来有底カートンの4個の各角部と接触する訳ではないが,内容液の充填に際し,側
部の膨張に伴い,角部付近と接触する場合がある。
 別紙被告主張物件目録1ないし3は,この点に関する記載がない点で相
当でなく,「角部の近傍を接触し得る」という文言を付加すべきである(なお,別
紙物件目録1ないし3の対応する部分に下線を付した)。
(被告らの認否)
 ア 否認する。
   被告各製品の構成は,いずれも別紙被告主張物件目録1ないし3記載の
とおりである(なお,被告主張物件目録1,2においては,「製品の名称」とし
て,それぞれ「EPU3000-M」,「EPU6000-M」と記載されている
が,「EPUS3000-M」,「EPUS6000-M」も,それぞれ同一構成
である。)。
 イ 被告各製品においては,キャリア片の間隔を調整する手段として,別紙
被告主張物件目録1ないし3各記載のとおり,前進移動方式の作動を行うプログラ
ムのみが内蔵され,反対方向移動方式の作動を行うプログラムは内蔵されていな
い。
   被告各製品は,一対の第2の無端チェーンコンベア(鈍角部用無端チェ
ーン)のみを互いに反対方向へ同一長さだけ進退させ,その後一対の第1と第2の
無端チェーンコンベア(鋭角部用と鈍角部用無端チェーン)の,進行方向に対して
一方の側の第1及び第2の無端チェーンコンベアと,他方の側の第1及び第2の無
端チェーンコンベアとを同一方向へそれぞれ異なる距離前進させて,有底カートン
の前後長に鋭角部用キャリア片及び鈍角部用キャリア片を位置決めするような作動
を行うように,プログラムされている。
(2) 本件発明1の構成要件充足性について
(原告の主張)
ア 構成要件Aの充足性
 本件明細書1の特許請求の範囲の構成要件Aに係る部分(以下「構成要
件A」という。以下同じ)は,「一対の無端チェーンコンベアをその同一進行側を
同一平面上に対向させて平行に配置し」と記載されている。
  「コンベア」とは,「電気で駆動される機械装置であって,搬送物(運
搬物)を受取点から荷降ろし点まで運び,または輸送し,もしくは移し変えるも
の」であるから,コンベアの個数は,搬送物を受け取り,かつ荷を降ろすという,
プロセスを単位として数えるべきである。また,「対」とは,一組を構成する2個
を指す。そうすると,「一対の無端チェーンコンベア」とは,有底カートンを受取
点から荷降ろし点まで搬送する目的で,両側に存在する2個一組の無端チェーンコ
ンベアを指すと解すべきであって,鋭角部用チェーン及び鈍角部用チェーンそれぞ
れに対応した2個一組のチェーンコンベアを指すと解すべきではない。
被告各製品では,一対の鋭角部用無端チェーン及び一対の鈍角部用無端
チェーンが存在するが,これは,上記のとおり,二対の無端チェーンコンベアが存
在するのではなく,一対の無端チェーンコンベアが存在すると解すべきである。
 以上のとおり,被告各製品は,いずれも,一対の鋭角部用無端チェーン
及び一対の鈍角部用無端チェーンを有している無端チェーンコンベアをその同一進
行側を同一平面上に対向させて平行に配置しているから,構成要件Aを充足する。
イ 構成要件Bの充足性
  被告各製品は,無端チェーンコンベアを有するから,無端チェーンコン
ベア間に搬送レールを設置している被告各製品は,構成要件Bを充足する。
ウ 構成要件Cの充足性
構成要件Cは,「各無端チェーンコンベアに互いに対向させ,定間隔で
搬送方向に前後一組のキャリアを取り付け,」と記載されている。同構成要件にお
ける「定間隔」とは,複数個の「前後一組のキャリア」同士の間隔が一定でありさ
えすれば足りると解すべきである。この点,被告らは,「定間隔」とは,複数個の
「前後一組のキャリア」同士の間隔が一定であるのみならず,一個の「前後一組の
キャリア」における間隔が一定であることが必要である旨主張するが,本件明細書
1によるも,このように限定する根拠はない。
     これに対して,被告各製品は,各無端チェーンコンベアに互いに対応さ
せた状態にあり,かつ一定の間隔を以って搬送方向に前後一組をなす鋭角部用キャ
リア及び鈍角部用キャリアを取り付け,鋭角部用キャリア及び鈍角部用キャリアの
挟持片の間において,有底カートンの各角部を支持した状態にて,搬送レール上の
有底カートンを間欠搬送しながら停止時に,内容液の充填,上部開口部の折り畳
み,融着密封等の各工程を行う装置であるから,構成要件Cを充足する。
   エ 構成要件Eの充足性
 構成要件Eは,「・・・鋭角部に対応するキャリアの挟持片を鈍角部に
対応するキャリアの挟持片が間に存在しない範囲で互いに無端チェーンコンベアを
反対方向へ同一長さ進退させて,有底カートンの前後長に位置決めする手段とを備
え」と記載されている。
 被告各製品はいずれも,有底カートンが自然状態で捻れて水平面がひし
形状に変形して形成される各角部のうち,各鋭角部に対応する鋭角部用キャリアを
各鋭角部用無端チェーンと結合し,かつ各鈍角部に対応する鈍角部用キャリアを各
鈍角部用無端チェーンと結合した状態にて設け,鋭角部及び鈍角部に対応する4個
のキャリアの挟持片で有底カートンの対向する各角部を挟持して搬送するようにし
ている。
     さらに,被告各製品は,キャリアの挟持片の位置決め手段として,被告
の主張する前進移動方式のほか,以下のとおり反対方向移動方式を設けている。す
なわち,「2個の鋭角部用キャリアの挟持片を,2個の鈍角部用キャリアの挟持片
が間に存在しない範囲にて,静止した状態の有底カートンの中心位置を基準とし
て,一方の側の鋭角部用無端チェーン及び鈍角部用無端チェーンとを,反対の側の
各チェーンを相互に反対方向へ同一長さ進退させた状態とした後,鈍角部用キャリ
アを相互に反対方向へ同一長さだけ移動させることによって,2個の鈍角部用キャ
リアの挟持片を2個の鋭角部用キャリアの挟持片と前後方向において,それぞれ同
一位置となるように位置決めする手段」を設けている。そして,同方式は,構成要
件Eを充足する。
(被告らの反論)
   ア 構成要件Aの充足性
 構成要件Aは,「一対の無端チェーンコンベアをその同一進行側を同一
平面上に対向させて平行に配置し,」と記載されている。これに対し,被告各製品
は,「同一方向に進行する,上下2本の鋭角部用無端チェーンからなる一対の無端
チェーンコンベア(第1の無端チェーンコンベア)と,上下1本(ただし,被告製
品3では上下2本)の鈍角部用無端チェーンからなる一対の無端チェーンコンベア
(第2の無端チェーンコンベア)」,すなわち,二対の各々を,「その同一進行側
を同一平面上に対向させて平行に位置し」ているものであるから,被告各製品に
は,二対の無端チェーンコンベアが存在する。
     したがって,被告各製品は構成要件Aを充足しない。
   イ 構成要件Bの充足性
     構成要件Bの「かつ,その無端チェーンコンベア間に搬送レールを設置
し,」における「その無端チェーンコンベア間」とは,構成要件Aにおける「一対
の無端チェーンコンベア間」を指す。これに対して,被告各製品において,搬送レ
ールは,上記アのとおり,二対の無端チェーンコンベアの間に設置されているか
ら,本件発明1の構成要件Bを充足しない。
   ウ 構成要件Cの充足性
     構成要件Cの「各無端チェーンコンベアに互いに対向させ,定間隔で搬
送方向に前後一組のキャリアを取り付け,」とは,対向した一対の無端チェーンコ
ンベアに,搬送方向に前後一組のキャリアを,定間隔で互いに対応させて取り付け
ることを指す。すなわち,前後一組のキャリア(鋭角用と鈍角用)の間隔は,無端
チェーンコンベアの搬送方向に沿って何ら変化せず,常に一定であることを指す。
 この点は,本件明細書1の発明の詳細な説明の記載から明らかである。
すなわち,詳細な説明欄には,「【0014】本発明装置においては,4個のキャリ
アの挟持片で構成する有底カートンの挟持空間は,有底カートンの対角線状の関係
にあるキャリアが進退することで,この進退した内側位置にあるキャリアの挟持片
間の搬送方向と同一の前後の長さを有する有底カートンを挟持(鋭角部)できるこ
とになり,他の2角(鈍角部)に対応するキャリアの挟持片は,実際に挟持するキ
ャリアの間の外方にあるため,その間は挟持するカートンより広く遊んだ状態とな
る。【0015】しかし,有底カートンは自然状態ではひし形状への変形力が作用
するため,突出した鋭角部を変形作用に抗して押し戻した状態で挟持片が挟持する
だけで充分な挟持力が得られ,挟持搬送作用に支障は生じないのである。」との記
載から明らかである。
     これに対し,被告各製品においては,第1の無端チェーンコンベアと第
2の無端チェーンコンベアとはそれぞれ別個に構成され,第1の無端チェーンコン
ベアに鋭角部用キャリア片を,第2の無端チェーンコンベアに鈍角部用キャリア片
をそれぞれ取り付け,各第1及び第2の無端チェーンコンベアを互いに対応させ,
搬送方向に鋭角部用キャリア片と鈍角部用キャリア片からなる前後一組のキャリア
片が配備され,第1の無端チェーンコンベアと第2の無端チェーンコンベアは独立
に移動できる構成が採用されているから,鋭角部用キャリア片と鈍角部用キャリア
片からなる前後一組のキャリア片の間隔は,さまざまな間隔に設定することがで
き,定間隔ではない。したがって,被告各製品は,本件発明1の構成要件Cを充足
しない。
エ 構成要件Eの充足性
  構成要件Eは,「・・・鋭角部に対応するキャリアの挟持片を鈍角部に
対応するキャリアの挟持片が間に存在しない範囲で互いに無端チェーンコンベアを
反対方向へ同一長さ進退させて,有底カートンの前後長に位置決めする手段とを備
え」と記載されている。
  これに対し,被告各製品は,「有底カートンが自然状態で捻れて水平面が
ひし形状に変形して形成される各角部のうち,一対の第2の無端チェーンコンベア
(鈍角部用無端チェーン)のみを互いに反対方向へ同一長さだけ進退させ,その後
一対の第1と第2の無端チェーンコンベアのうち,進行方向に対して一方の側の第
1及び第2の無端チェーンコンベアと,他方の側の第1及び第2の無端チェーンコ
ンベアとを同一方向へそれぞれ異なる距離前進させて,有底カートンの前後長に鋭
角部用キャリア片及び鈍角部用キャリア片を位置決めする手段(前進移動方式)と
を備え」ている。すなわち,被告各製品では「鋭角部に対応するキャリアの挟持片
を互いに無端チェーンコンベアを反対方向へ同一長さだけ進退させ」る動作はして
いないので,構成要件Eを充足しない。
(3) 本件発明2の構成要件充足性について
(原告の主張)
ア 構成要件Aの充足性
  本件発明1に関する「構成要件Aの充足性」における原告主張のとお
り,被告各製品は,いずれも,一対の鋭角部用無端チェーン及び一対の鈍角部用無
端チェーンを有している無端チェーンコンベアをその同一進行側を同一平面上に対
向させて平行に配置しているから,構成要件Aを充足する。
イ 構成要件Bの充足性
  被告各製品は,無端チェーンコンベアを有するから,無端チェーンコン
ベア間に搬送レールを設置しているから,構成要件Bを充足する。
ウ 構成要件Eの充足性
 構成要件Eは,「この2個のキャリアの挟持片で有底カートンの対向す
る鋭角部を挟持して搬送するようにし,」と記載されている。
 これに対して,被告各製品は,有底カートンが自然状態で捻れて水平面
がひし形状に変形して形成される各角部のうち,各鋭角部に対応する鋭角部用キャ
リアを各鋭角部用無端チェーンと結合し,かつ各鈍角部に対応する鈍角部用キャリ
アを各鈍角部用無端チェーンと結合した状態にて設け,鋭角部及び鈍角部に対応す
る4個のキャリアの挟持片で有底カートンの対向する各角部を挟持して搬送するよ
うにしている。
 確かに,被告各製品は,4個のキャリア片で保持する構成を採用してい
る。しかし,被告各製品においては,鈍角部に対応するキャリアを,鋭角部に対応
するキャリアに対し,「互いに対応させ」た状態にて「前後一組」となるように鈍
角部用無端チェーンに取り付け,これは付加的な構成と評価することができるか
ら,被告各製品は,本件発明2の構成要件Eを充足する。
  (被告らの反論)
 ア 構成要件Aの充足性
 構成要件Aは,「一対の無端チェーンコンベアをその同一進行側を同一
平面上に対向させて平行に配置し,」と記載されている。
 これに対し,被告各製品は,「同一方向に進行する,上下2本の鋭角部
用無端チェーンからなる一対の無端チェーンコンベア(第1の無端チェーンコンベ
ア)と,上下1本(ただし,被告製品3では上下2本)の鈍角部用無端チェーンか
らなる一対の無端チェーンコンベア(第2の無端チェーンコンベア)」,すなわ
ち,二対の各々を,「その同一進行側を同一平面上に対向させて平行に位置し」て
いるから,二対の無端チェーンコンベアが存在することになる。
     したがって,被告各製品は構成要件Aを充足しない。
   イ 構成要件Bの充足性
     構成要件Bの「その無端チェーンコンベア間に搬送レールを設置し,」
における「その無端チェーンコンベア間」とは,構成要件Aにおける「一対の無端
チェーンコンベア間」を指す。これに対して,被告各製品において,搬送レール
は,上記アのとおり,二対の無端チェーンコンベアの間に設置されているから,本
件発明1の構成要件Bを充足しない。
   ウ 構成要件Eの充足性
 構成要件Eは,「有底カートンが自然状態で捻れて水平面がひし形状に
変形して形成される各角部のうち,鋭角部に対応するキャリアを夫々の無端チェー
ンコンベアに設け,この2個のキャリアの挟持片で有底カートンの対向する鋭角部
を挟持して搬送するようにし,無端チェーンコンベアを互いに反対方向へ同一長さ
だけ進退させることによってそれらの挟持片を有底カートンの前後長に位置決めす
る手段を有しており」と記載されている。また,本件明細書2の「発明の詳細な説
明」欄の「発明が解決しようとする課題」の【0008】には,「従来の有底カー
トンの直進搬送装置における有底カートンの挟持・搬送方法は,有底カートンの各
四つの角部をキャリアの挟持片で全て挟持して行うものであり」と従来例が示され
ており,さらに同【0008】には,「部品を減らして製造コストを低くできる」
と,「発明の効果」欄【0026】には,「従来の装置に比べ,挟持片を有するキ
ャリアの数が半分で済み」,「有底カートンを挟持する挟持片及びキャリアが2個
で済み,各々の無端チェーンコンベアに取り付けられるため,無端チェーンコンベ
アを個々に回動させるのみで,有底カートンの前後長に対応する挟持片の位置決め
が容易にでき」と,それぞれ記載されている。
 以上の記載によれば,構成要件Eは,2個のキャリアの挟持片を有する
無端チェーンコンベアを互いに反対方向へ同一長さ進退させて,2個のキャリアの
挟持片間の間隔を調節することにより,有底カートンの前後長に位置決めする場合
に限定されると解するのが相当である。
 これに対して,被告各製品においては,「一対の第2の無端チェーンコ
ンベアのみを互いに反対方向へ同一長さだけ進退させ,その後一対の第1と第2の
無端チェーンコンベアのうち,進行方向に対して一方の側の第1と第2の無端チェ
ーンコンベアと,他方の側の第1と第2の無端チェーンコンベアとを同一方向へそ
れぞれ異なる距離前進させて,有底カートンの前後長に鋭角部用キャリア片と鈍角
部用キャリア片を位置決めする手段とを備え」るものであり,4個のキャリア片で
保持する構成を採用している。
 したがって,被告各製品は,構成要件Eを充足しない。
(4) 明らかな無効理由の存在
 ア 本件特許1について
 (被告らの主張)
  (ア) 公知技術
   a 特公昭51-14950号公報(乙9)には,「一対の循環鎖をそ
の同一進行側を同一平面上に対向させて平行に位置し,かつ,その循環鎖間にレー
ルを設置し,各循環鎖に互いに対応させ,定間隔で移送方向に前後一組のブロック
を取り付け,ブロックの凹部で容器の各角部を挟持した状態でレール上の容器を間
欠移送しながら停止時に,内容液の充填,上部開口部の折り畳み,融着密封等の各
工程を行う装置であって,循環鎖の働輪軸及び遊輪軸との支持台を巾方向に調節す
る手段と,ブロックの凹部をさらに広狭各複数設けて容器の前後長に位置決めする
手段とを備え,大きさの異なる複数種類の容器に対して装置を移送駆動した際に容
器の中心位置が移送中の諸工程を行う機器との関係で移動しないようにした容器の
直進移送装置」に関する発明が開示されている。
   b 特開昭49-87484号公報(乙10)には,「一対の無端チェ
ーンをその同一進行側を同一平面上に対向させて平行に位置し,かつ,その無端チ
ェーン間に滑り面を設置し,各無端チェーンに定間隔で搬送方向に保持具を取り付
け,保持具で厚紙製箱の角部を挟持した状態で滑り面上の厚紙製箱を搬送する装置
であって,厚紙製箱が自然状態で捻れて水平面がひし形状に変形して形成される各
角部のうち,鋭角部に対応する保持具を,互いに無端チェーンの相対位置を異なら
せることにより,厚紙製箱の前後長に位置決めする手段とを備え,大きさの異なる
複数種類の厚紙製箱を搬送駆動する厚紙製箱の直進搬送装置」に関する発明が開示
されている。
   c 特開平4-317916号公報(乙11)には,「一対の無端チェ
ーンをその同一進行側を同一平面上に対向させて平行に位置し,各無端チェーンに
治具を取り付け,治具で加工物の角部を挟持した状態で搬送を行う装置であって,
治具を,互いに無端チェーンを反対方向へ同一長さ進退させて,加工物の前後長に
位置決めする手段とを備え,大きさの異なる複数種類の加工物に対して装置を搬送
駆動した際に加工物の中心位置が移動しないようにした加工物の直進搬送装置」に
関する発明が開示されている。
  (イ) 周知慣用の技術手段
    以下のaないしcの各記載によれば,有底カートンが自然状態で捻れ
て水平面がひし形状に変形して形成されることが広く知られていることが認められ
る。すなわち,
   a 乙12号証:実公昭59-11841号公報(特に第8,9図及び
関連する明細書の記載)
   b 乙13号証:特開平6-286729号公報(特に図10及び明細
書【0006】の記載)
   c 乙9号証:特公昭51-14590号公報(Fig.22A及び同
公報13頁25欄13~15行の記載)
  (ウ) 進歩性の有無
    本件発明1は,上記(ア)記載の各公知技術及び上記(イ)記載の周知慣
用の技術手段に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許
法(以下「法」という。)第29条第2項の規定により特許を受けることができな
いものである。
    よって,法123条1項2号に該当するから,本件特許1には明らか
な無効事由が存し,同特許権に基づく原告の請求は権利濫用に当たり許されない。
 (原告の反論)
  (ア) 公知技術と本件各発明との相違
   a 乙9記載の「製函機」は,底部を形成した後,有底カートン(容
器)の上部を開いた上で,ひし形変形(菱形)を除去した後に「挟持」を行ってい
る(同号証の公報25欄11ないし15行目)。
     これに対し,本件発明1においては,「自然状態ではひし形状への
変形力が作用」(本件明細書1の4欄41ないし42行目)している有底カートン
を搬送の対象としており,乙9の発明と本件発明とは,搬送の対象である有底カー
トンの状態において,基本的な相違がある。
   b 乙10においては,Fig.3~6に示すように,有底カートン
(箱21)を吸引カップ26の移動に基づいてタブ35から一方側のチェーン11
及び保持具19に当接させた後,両側の保持具19,20及び両側のチェーン1
0,11によって略菱形状断面形状を強制的に略矩形状断面形状に是正した上で,
その後の搬送が行われている(Fig.6参照)。このように乙10は,単に保持
具19,20だけではなく,チェーン10,11もまた,有底カートン(箱21)
に対し,断面を略矩形状とするような是正(矯正)を行いながら保持を行ってお
り,保持具19,20とチェーン10,11とは,有底カートンの保持に関し,明
らかに協働関係にある。
     これに対し,本件発明1においては,無端チェーン,すなわち無端
チェーンコンベアとの協働を伴わずに,前後一組のキャリア及びその挟持片によっ
て有底カートンを挟持することが十分可能である。
     すなわち,乙10の発明は,本件発明1のような,無端チェーンと
の協働を伴わずに,鋭角部用キャリア及びその挟持片によって,有底カートンをひ
し形変形に抗した状態にて挟持することを開示していない点で,基本的な相違があ
る。
   c 乙11の発明は,有底カートンの鋭角部に対し,ひし形変形に抗し
た状態で挟持を行うことを開示していない点において,本件発明と基本的な相違が
ある。
  (イ) 進歩性の有無
    乙9の発明は,ひし形変形が事前に是正(矯正)されている以上,鋭
角部用キャリア及びその挟持片,並びに鈍角部用キャリア及びその挟持片は,本来
存在しない。乙10の発明は,保持の対象を鋭角部に限定していない。したがっ
て,乙9ないし11の発明を組み合わせても,本件発明1による鋭角部用キャリア
の挟持片のように,無端チェーンの協働を伴わずに,しかも,ひし形変形に抗した
状態で,有底カートンを挟持する構成を得ることはできないので,当業者において
本件発明1を容易に想到することはできない。
    なお,本件発明1と,乙9ないし11の発明の相違を明らかにするた
めに,原告は,訂正請求をした(甲12の1)。
   イ 本件特許2
 (被告らの主張)
   本件発明2は,上記ア(被告らの主張)(ア)記載の公知技術,同(イ)記
載の周知慣用の技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもの
であるから,法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
   よって,法123条1項2号に該当するから,本件特許2にも明らかな
無効事由が存在し,同特許権に基づく原告の請求は権利の濫用に当たり許されな
い。
 (原告の反論)
   否認する。本件特許2と,乙9ないし11号証との関係については,前
記ア(原告の反論)記載の事実がそのままあてはまる。したがって,本件特許2
も,明らかに新規性及び進歩性を有している。また,本件特許2についても,訂正
請求を行った(甲12の2)。
(5) 損害額
(原告の主張)
ア 被告製品3の製造,販売
  被告四国化工機は,本件特許権1,2の設定登録が行われた平成13年
5月11日以降,3台の被告製品3を被告トッパンに販売し,被告トッパンは,被
告四国化工機から購入した上記3台の被告製品3を被告凸版印刷に販売し,同被告
は,上記3台の被告製品3を第三者に販売した。
イ 被告らの利益
 (ア) 上記各販売において,被告凸版印刷及び被告トッパンは,少なくと
も,それぞれ1,200万円の利益を得た。
 (イ) 上記各販売において,被告四国化工機は,少なくとも1億2,00
0万円(1台当りの平均利益:金4,000万円)の利益を得た。
 原告は,法102条2項に基づき,上記イの金額をそれぞれ被告らに請求
する。
(被告らの反論)
争う。
第3争点に対する判断
1 争点1(被告各製品の構成)について
 (1) 被告各製品の構成について
 弁論の全趣旨によれば,被告各製品について,以下の事実が認められ,こ
れに反する証拠はない。
ア 全体の構造
 (ア) 装置の上側に1本(被告製品3では上側下部に1本,下側上部に1
本)の鈍角部用無端チェーンを,装置の上側下部,下側にそれぞれ1本,合計2本
の鋭角部用無端チェーンを,上各回転平面が同一高さとなるような状態にする。
 (イ) それぞれ対をなしている各鋭角部用無端チェーン,鈍角部用無端チ
ェーン(被告製品3では,「各鈍角部用無端チェーン」)からなる無端チェーンコ
ンベアを設け,その同一進行側を同一平面上に対向させて平行に配置する(ただ
し,上記無端チェーンコンベアを1対と評価するか2対と評価するかについては争
いがある。)。
 (ウ) 対をなしている無端チェーンコンベアの間に搬送レールを設置す
る。
 (エ) 搬送方向に沿って,カートンの4つの角を押さえることのできるキ
ャリア片を,それぞれカートンの形状に対応するように,鋭角部用キャリア片及び
鈍角部用キャリア片を,それぞれ鋭角部用無端チェーン及び鈍角部用無端チェーン
に互いに対応させた状態で,一定の間隔をもって取り付ける。
 (オ) 各キャリア片の間で,有底カートンの各角部を支持した状態で,搬
送レール上の有底カートンを間欠搬送しながら,カートン搬送停止時に,充填タン
クからの内容液の充填,上部開口部の折り畳み,融着密封等の各工程を行う装置で
ある。
イ キャリア片の巾方向の調整手段
鋭角部用無端チェーン及び鈍角部用無端チェーンの駆動軸に対する支持
部を,手動によるハンドルの回転を各支持部と係合している巾方向調整用回転ネジ
に伝達することによって,巾方向に調節可能とする手段を有する。
ウ キャリア片の間隔調整手段
(ア) 駆動軸の周囲方向に回転自在に設けられている割り部材を,締め付
けネジの締め付けによって,鈍角部用スプロケットを駆動軸と結合した状態とする
ことによって鈍角部用無端チェーンを鋭角部用無端チェーンと共に移動するように
構成した上で,パルス制御が可能である一対の駆動用サーボモーターの回転角度の
量を調節することによって,
(イ) 鈍角部用スプロケットと駆動軸との結合を取り外した上で,基準と
なる有底カートンの中心位置を静止した状態で,2個の鈍角部用キャリア片を相互
に反対方向へ同一長さだけ移動させた後,締め付けネジの締め付けによって,鈍角
部用無端チェーンを鋭角部用無端チェーンと共に移動するように構成した上で,鋭
角部用無端チェーン及び鈍角部用無端チェーンが相互に同一方向へそれぞれ異なる
距離前進させた状態となるように,鋭角部用キャリア片を鈍角部用キャリア片が間
に存在しない範囲で,鋭角部用無端チェーン及び鈍角部用無端チェーンを,当該隣
の中心位置に異なる距離だけ,それぞれ前進させることによって,2個の鋭角部用
キャリア片と,対応する2個の鈍角部用キャリア片とが,前後方向においてそれぞ
れ同一位置となるように位置決めする手段を有しており,
(ウ) 大きさの異なる複数種類の有底カートンに対して装置を搬送駆動し
た際に有底カートンの中心位置が搬送中の諸工程を行う機器との関係で移動しない
ようにしている。
(2) 本件発明1の構成要件Eの充足性
 ア 構成要件E中の「挟持片を有底カートンの前後長に位置決めする手段」
の意義
 構成要件Eは,「有底カートンが自然状態で捻れて水平面がひし形状に
変形して形成される各角部のうち,鋭角部に対応するキャリアの挟持片を・・・互
いに無端チェーンコンベアを反対方向へ同一長さ進退させて,有底カートンの前後
長に位置決めする手段とを備え」と記載されている。同構成要件中の,「挟持片を
有底カートンの前後長に位置決めする」とは,カートンの大きさに合わせるため
に,「鋭角部用のキャリア同士」を移動させることを指すのであって,この場合に
限定され,鋭角部用キャリアと鈍角部用キャリアの両方を移動させる場合を含まな
いと解すべきである。
 その理由は以下のとおりである。すなわち,
  (ア) まず,上記の解釈は,構成要件E中の「有底カートンが自然状態で
捻れて水平面がひし形状に変形して形成される各角部のうち,鋭角部に対応するキ
ャリアの挟持片を・・・互いに無端チェーンコンベアを反対方向へ同一長さ進退さ
せて,有底カートンの前後長に位置決めする手段とを備え」との記載から明らかで
ある。また,「鋭角部に対応するキャリアの挟持片を鈍角部に対応するキャリアの
挟持片が間に存在しない範囲で・・・進退させて」との記載,すなわち,鋭角部用
キャリアの間に鈍角部用キャリアが存在するに至る場合が生じ得るにもかかわら
ず,このような場合を排除している記載部分があることに照らすならば,鈍角部用
のキャリアの挟持片を進退させないことが明らかである。
  (イ) 次に,本件明細書1の「発明の詳細な説明」「発明が解決しようと
する課題」の欄に,「全てのキャリアを個々に調節するのは効率上非現実的であ
り,・・・本発明は迅速,容易に,かつ効率的に複数種類のカートンの大きさに対
応できるようにした有底カートンの直進搬送装置を提供しようとするものであ
る。」との記載(4欄2ないし10行目),「発明の詳細な説明」「課題を解決す
るための手段」の欄に,「本発明装置においては,四個のキャリアの挟持片で構成
する有底カートンの挟持空間は,有底カートンの対角線状の関係にあるキャリアが
進退することで,この進退した内側位置にあるキャリアの挟持片間の搬送方向と同
一の前後の長さを有する有底カートンを挟持(鋭角部)できることになり,他の2
角(鈍角部)に対応するキャリアの挟持片は,実際に挟持するキャリアの間の外方
にあるため,その間は挟持するカートンより広く遊んだ状態となる。」との記載
(4欄32ないし40行目)に照らすならば,本件発明1は,鈍角部用キャリアを
移動することなく,鋭角部用キャリアのみを移動することによって,異なる大きさ
のカートンの搬送を可能にしたものであることが明らかである。
 イ 対比
   被告各製品の位置決め手段は,前記(1)ウ記載のとおり,鋭角部用キャリ
ア片と鈍角部用キャリア片の両方を移動する構成を採用している。したがって,被
告各製品は,いずれも本件発明1の構成要件Eを充足しない。
   これに対して,原告は,被告各製品において,鈍角部用キャリア片を移
動し,間隔を調整することは,付加的なものであり,本件発明1の技術的範囲に属
すると主張する。
 しかし,被告各製品は,鋭角部用キャリア片と鈍角部用キャリア片を別
々の無端チェーンに取り付けて,かつ個別に移動することが可能であるとすること
で,鋭角部用キャリア片と鈍角部用キャリア片の間隔を進行方向で調整可能とした
ものであって,本件発明1の技術思想とおよそ相容れないものであるから,本件発
明1の技術的範囲に属するとの原告の主張は採用できない。
(3) 本件発明2の構成要件Eの充足性
 ア 構成要件E中の「挟持片を有底カートンの前後長に位置決めする手段」
の意義
 構成要件Eは,「有底カートンが自然状態で捻れて水平面がひし形状に
変形して形成される各角部のうち,鋭角部に対応するキャリアを夫々の無端チェー
ンコンベアに設け,この2個のキャリアの挟持片で有底カートンの対向する鋭角部
を挟持して搬送するようにし,無端チェーンコンベアを互いに反対方向へ同一長さ
だけ進退させることによってそれらの挟持片を有底カートンの前後長に位置決めす
る手段を有しており」と記載されている。同構成要件中の「挟持片を有底カートン
の前後長に位置決めする手段」とは,鋭角部用のキャリア同士をカートンの大きさ
に調整することを意味し,鈍角部用キャリアが存在するものを含まないと解すべき
である。
 その理由は以下のとおりである。
  (ア) まず,上記の解釈は,構成要件E中の「有底カートンが自然状態で
捻れて水平面がひし形状に変形して形成される各角部のうち,鋭角部に対応するキ
ャリアを夫々の無端チェーンコンベアに設け,この2個のキャリアの挟持片で有底
カートンの対向する鋭角部を挟持して搬送するようにし,無端チェーンコンベアを
互いに反対方向へ同一長さだけ進退させることによってそれらの挟持片を有底カー
トンの前後長に位置決めする手段を有しており,」との記載から明らかである。
(イ) 次に,本件明細書2の「発明の詳細な説明」「発明が解決しようと
する課題」の欄に,「上記従来の有底カートンの直進搬送装置における有底カート
ンの挟持・搬送方法は,有底カートンの各四つの角部をキャリアの挟持片で全て挟
持して行うものであり,キャリアの数はライン上を搬送している有底カートンの実
に8倍以上の数となり,製造に於ける位置決め及び取り付け作業は大変な手数とな
り,部品数も多量となっている。そこで,本発明は構成を簡略化し,製造における
作業効率を高め,部品を減らして製造コストを低くできる有底カートンの直進搬送
装置を提供せんとするものである。」との記載(3欄37ないし47行目),及
び,「発明の詳細な説明」「発明の効果」の欄に,「本発明装置によれば,巾方向
の調節ができると共に,簡単にカートンを挟持するキャリアの間隔を調節すること
ができ,したがって迅速,容易に,かつ効率的に寸法の異なる複数種類のカートン
に対応することができる。そして,従来の装置に比べ,挟持片を有するキャリアの
数が半分で済み,製造作業が容易となって作業効率の向上が図られ,かつ装置の簡
易化,製造コストの低廉化も図れるものである。又,有底カートンを挟持する挟持
片及びキャリアが2個で済み・・・」との記載(6欄9ないし18行目)に照らす
ならば,本件発明2においては,鋭角部用キャリア以外のキャリアは設けないこと
を前提としたものであることが明らかである。
 イ 対比
   被告各製品には,前記(1)ア記載のとおり,鋭角部用キャリア片のほか,
鈍角部用キャリア片が存在する。したがって,被告各製品は,いずれも本件発明2
の構成要件Eを充足しない。
   これに対して,原告は,被告各製品において,鈍角部用キャリア片を設
けることは付加的なものであり,本件発明2の技術的範囲に属すると主張する。し
かし,上記ア(ア)ないし(イ)のとおり,本件発明2は,鈍角部用キャリア片を設け
ない装置に係る発明であることが明らかであるから,鋭角部用キャリア片のほかに
鈍角部用キャリア片を有する被告各製品は,本件発明の技術思想と相容れないもの
であるから,本件発明2の技術的範囲に属するとの原告の主張は採用できない。
第4結論
 よって,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がな
い。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官    飯  村  敏  明
裁判官今  井  弘  晃
裁判官大  寄  麻  代
物件目録1
第1.図面の説明
一.各図面の趣旨
 第1図の1,2 装置全体の概況を示す側面図及び平面図
 第2図の1   無端チェーンコンベアにおける駆動用サーボモーター,挟持
片,鋭角部用無端チェーン,鈍角部用無端チェーン及び搬送レールの配列状態を示
す前後方向側面図
 第2図の2   無端チェーンコンベアにおける各キャリアの配列,及びその駆
動軸とその支持部を巾方向に移動可能とする機構に関する平面図(尚,当該平面図
では,鋭角部用無端チェーン11と鈍角部用無端チェーン12とを重畳した状態に
て描いている。このために,鋭角部用スプロケット21と鈍角部用スプロケット2
2,及び鋭角部用無端チェーン11と結合しているキャリア4及び当該キャリア4
の挟持片5と鈍角部用無端チェーン12と結合しているキャリア4及び当該キャリ
ア4の挟持片5は,1本の無端チェーンが共に係合した状態にて描かれている。)
 第3図     無端チェーンコンベアの駆動軸及び鋭角部用無端チェーン,鈍
角部用無端チェーンと駆動用サーボモーターによって回転可能である駆動軸との係
合関係を示す前後方向側断面図
 第4図     割り部材の状態を示す平面図(尚,点線部分は,締め付けネジ
の存在位置を示す)
 第5図の1(1),(2),(3),(4) 鋭角部用キャリア,及び鈍角部用
キャリアの前後方向,及び当該方向と直交する巾方向の位置を調節する順序を示す
模式状の平面図(尚,無端チェーン自体の描写は省略されている。)。
 第5図の2①,②,③,④ 同上(尚,無端チェーン自体の描写は省略されてい
る。)
二.符合の説明
 1 無端チェーンコンベア
11 鋭角部用無端チェーン
12 鈍角部用無端チェーン
21 鋭角部用スプロケット
22 鈍角部用スプロケット
25 割り部材
26 締め付けネジ
 3 搬送レール
 4 キャリア
41 鋭角部用キャリア
42 鈍角部用キャリア
 5 挟持片
 6 駆動軸
 6′非駆動軸
61 駆動軸に対する支持部
 7 幅方向調整手段
71 ハンドル
72 巾方向調整用回転ネジ
 8 駆動用サーボモーター
100 充填タンク
第2.構成の説明
   1時間における有底カートンの処理数を3000個とし,下記の構成を有
し,かつ第1図の1,2に示すような概況によって表示され,口栓の内付けを可能
とするタイプ(名称:「EPU3000M」)及び口栓の内付け,及び外付けの双
方を可能とするタイプ(名称:「EPUS3000M」)によるカートンの搬送路
を一列とする有底カートンの直進搬送装置。

   第2図の1,及び第2図の2に示すように,下側の2本の鋭角部用無端チェ
ーン11及び上側の1本の鈍角部用無端チェーン12を,各回転平面が同一高さと
なるような状態にて,それぞれ一対有している無端チェーンコンベア1を1個設
け,その同一進行側を同一平面上に対向させて平行に配置し,
   かつ,当該無端チェーンコンベア1間に搬送レール3を設置し,
   搬送方向に沿って前後一組を形成している鋭角部用キャリア41及び鈍角部
用キャリア42を,それぞれ鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用無端チェーン
12と結合させることによって,各無端チェーンコンベア1に互いに対応させた状
態にて一定の間隔を以って取り付け,
   キャリア4の挟持片5の間において、有底カートンの各角部を支持した状態に
て,搬送レール3上の有底カートンを間欠搬送しながら停止時に,充填タンク10
0からの内容液の充填,上部開口部の折り畳み,融着密封等の各工程を行う装置で
あって,
   第2図の2及び第3図に示すように,鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部
用無端チェーン12を,それぞれ鋭角部用スプロケット21及び鈍角部用スプロケ
ット22を介して支持し,支柱としての機能を発揮している駆動軸6及び同様の支
柱としての機能を発揮し,かつ該駆動軸6に対応して設けられている非駆動軸6′
に対する支持部61を手動によるハンドル71の回転を各支持部と係合している巾
方向調整用回転ネジ72に伝達することによって,第5図の1(1),(2),及
び第5図の2③,④に示すように,巾方向に調節可能とする手段7を有すると共
に,
   第3図及び第4図に示すように,駆動軸6の周囲方向に回転自在に設けられ
ている割り部材25を,締め付けネジ26の締め付けによって,鈍角部用スプロケ
ット22を駆動軸6と結合した状態とすることによって鈍角部用無端チェーン12
を鋭角部用無端チェーン11と共に移動するように構成したうえで,パルス制御が
可能である一対の駆動用サーボモーター8の回転角度の量を調節することによっ
て,
   第5図の1(2),(3)に示すように,静止した状態の有底カートンの中
心位置を基準として,2個の鋭角部用キャリア41の挟持片5を鈍角部用キャリア
42の挟持片5が間に存在しない範囲にて鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用
無端チェーン12を相互に反対方向へ同一長さだけ移動させた後に,
   締め付けネジ26の締め付けを緩めることによって,鈍角部用スプロケット
22と駆動軸6との結合を取り外したうえで,鈍角部用スプロケット22を回転さ
せることによって,鈍角部用無端チェーンを相互に反対方向へ同一長さだけ移動さ
せることによって,2個の鈍角部用キャリア42の挟持片5を,2個の鋭角部用キ
ャリア41の挟持片5と前後方向において夫々同一位置となるように位置決めする
手段,
   及び,
   前記のように,鈍角部用スプロケット22と駆動軸6との結合を取り外した
うえで,第5図の2①,②に示すように,基準となる有底カートンの中心位置を静
止した状態にて,2個の鈍角部用キャリア42の挟持片5を,相互に反対方向へ同
一長さだけ移動させた後,前記のように,締め付けネジ26の締め付けによって,
鈍角部用無端チェーン12を鋭角部用無端チェーン11と共に移動するように構成
したうえで,第5図の2②,③に示すように,一定の間隔だけ離れている隣の位置
の有底カートンの中心位置を基準として,鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用
無端チェーン12が相互に反対方向へ同一長さだけ進退させた状態となるように,
鋭角部用キャリア41の挟持片5を鈍角部用キャリア42の挟持片5が間に存在し
ない範囲にて,鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用無端チェーン12を,当該
隣の中心位置に異なる距離だけ,それぞれ前進させることによって,2個の鋭角部
用キャリア41の挟持片5と,対応する2個の鈍角部用キャリア42の挟持片5と
が,前後方向においてそれぞれ同一位置となるように位置決めする手段を有してお
り,
   大きさの異なる複数種類の有底カートンに対して装置を搬送駆動した際に有
底カートンの中心位置が搬送中の諸工程を行う機器との関係で移動しないように
し,
   4個のキャリア4の挟持片5は,有底カートンの各角部の内,内容液が充填
される前においてひし形断面形状に変形している段階では,鋭角部用キャリア41
が専ら対向する鋭角部と接触している状態にて挟持して搬送し,内容液が充填され
た以後,上部開口部の折り畳み,融着密封に至る段階では,鈍角部用キャリア42
の挟持片5が,対応する角部の近傍を接触し得る状態にて挟持したうえで搬送する
ようにした,
   ことを特徴とする有底カートンの直進搬送装置。
第1図第2図第3図第4図第5図
物件目録2
第1.図面の説明
一.各図面の趣旨
 第1図の1,2 装置全体の概況を示す側面図及び平面図
 第2図の1   無端チェーンコンベアにおける駆動用サーボモーター,挟持
片,鋭角部用無端チェーン,鈍角部用無端チェーン及び搬送レールの配列状態を示
す前後方向側面図
 第2図の2   無端チェーンコンベアにおける各キャリアの配列,及びその駆
動軸とその支持部を巾方向に移動可能とする機構に関する平面図(尚,当該平面図
では,鋭角部用無端チェーン11と鈍角部用無端チェーン12とを重畳した状態に
て描いている。このために,鋭角部用スプロケット21と鈍角部用スプロケット2
2,及び鋭角部用無端チェーン11と結合しているキャリア4及び当該キャリア4
の挟持片5と鈍角部用無端チェーン12と結合しているキャリア4及び当該キャリ
ア4の挟持片5は,1本の無端チェーンが共に係合した状態にて描かれている。)
 第3図     無端チェーンコンベアの駆動軸及び鋭角部用無端チェーン,鈍
角部用無端チェーンと駆動用サーボモーターによって回転可能である駆動軸との係
合関係を示す前後方向側断面図
 第4図     割り部材の状態を示す平面図(尚,点線部分は,締め付けネジ
の存在位置を示す)
 第5図の1(1),(2),(3),(4) 鋭角部用キャリア,及び鈍角部用
キャリアの前後方向,及び当該方向と直交する巾方向の位置を調節する順序を示す
模式状の平面図(尚,無端チェーン自体の描写は省略されている。)。
 第5図の2①,②,③,④ 同上(尚,無端チェーン自体の描写は省略されてい
る。)
二.符合の説明
 1 無端チェーンコンベア
11 鋭角部用無端チェーン
12 鈍角部用無端チェーン
21 鋭角部用スプロケット
22 鈍角部用スプロケット
25 割り部材
26 締め付けネジ
 3 搬送レール
 4 キャリア
41 鋭角部用キャリア
42 鈍角部用キャリア
 5 挟持片
 6 駆動軸
 6′非駆動軸
61 駆動軸に対する支持部
 7 幅方向調整手段
71 ハンドル
72 巾方向調整用回転ネジ
 8 駆動用サーボモーター
100 充填タンク
第2.構成の説明
   1時間における有底カートンの処理数を3000個とし,下記の構成を有
し,かつ第1図の1,2に示すような概況によって表示され,口栓の内付けを可能
とするタイプ(名称:「EPU6000M」)及び口栓の内付け,及び外付けの双
方を可能とするタイプ(名称:「EPUS6000M」)によるカートンの搬送路
を二列とする有底カートンの直進搬送装置。

   第2図の1、及び第2図の2に示すように,下側の2本の鋭角部用無端チェー
ン11及び上側の1本の鈍角部用無端チェーン12を,各回転平面が同一高さとな
るような状態にて,それぞれ一対有している無端チェーンコンベア1を2個の並列
した状態にて設け,その同一進行側を同一平面上に対向させて平行に配置し,
   かつ,当該無端チェーンコンベア1間に搬送レール3を設置し,
   搬送方向に沿って前後一組を形成している鋭角部用キャリア41及び鈍角部
用キャリア42を,それぞれ鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用無端チェーン
12と結合させることによって,各無端チェーンコンベア1に互いに対応させた状
態にて一定の間隔を以って取り付け,
   キャリア4の挟持片5の間において、有底カートンの各角部を支持した状態に
て,搬送レール3上の有底カートンを間欠搬送しながら停止時に,充填タンク10
0からの内容液の充填,上部開口部の折り畳み,融着密封等の各工程を行う装置で
あって,
   第2図の2及び第3図に示すように,鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部
用無端チェーン12を,それぞれ鋭角部用スプロケット21及び鈍角部用スプロケ
ット22を介して支持し,支柱としての機能を発揮している駆動軸6及び同様の支
柱としての機能を発揮し,かつ該駆動軸6に対応して設けられている非駆動軸6′
に対する支持部61を手動によるハンドル71の回転を各支持部と係合している巾
方向調整用回転ネジ72に伝達することによって,第5図の1(1),(2),及
び第5図の2③,④に示すように,巾方向に調節可能とする手段7を有すると共
に,
   第3図及び第4図に示すように,駆動軸6の周囲方向に回転自在に設けられ
ている割り部材25を,締め付けネジ26の締め付けによって,鈍角部用スプロケ
ット22を駆動軸6と結合した状態とすることによって鈍角部用無端チェーン12
を鋭角部用無端チェーン11と共に移動するように構成したうえで,パルス制御が
可能である一対の駆動用サーボモーター8の回転角度の量を調節することによっ
て,第5図の1(2),(3)に示すように,静止した状態の有底カートンの中心
位置を基準として,2個の鋭角部用キャリア41の挟持片5を鈍角部用キャリア4
2の挟持片5が間に存在しない範囲にて,鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用
無端チェーン12を相互に反対方向へ同一長さだけ移動させた後に,
   締め付けネジ26の締め付けを緩めることによって,鈍角部用スプロケット
22と駆動軸6との結合を取り外したうえで,鈍角部用スプロケット22を回転さ
せることによって,鈍角部用無端チェーンを相互に反対方向へ同一長さだけ移動さ
せることによって,2個の鈍角部用キャリア42の挟持片5を,2個の鋭角部用キ
ャリア41の挟持片5と前後方向において夫々同一位置となるように位置決めする
手段,
   及び,
   前記のように,鈍角部用スプロケット22と駆動軸6との結合を取り外した
うえで,第5図の2①,②に示すように,基準となる有底カートンの中心位置を静
止した状態にて,2個の鈍角部用キャリア42の挟持片5を,相互に反対方向へ同
一長さだけ移動させた後,前記のように,締め付けネジ26の締め付けによって,
鈍角部用無端チェーン12を鋭角部用無端チェーン11と共に移動するように構成
したうえで,第5図の2②,③に示すように,一定の間隔だけ離れている隣の位置
の有底カートンの中心位置を基準として,鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用
無端チェーン12が相互に反対方向へ同一長さだけ進退させた状態となるように,
鋭角部用キャリア41の挟持片5を鈍角部用キャリア42の挟持片5が間に存在し
ない範囲にて,鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用無端チェーン12を,当該
隣の中心位置に異なる距離だけ,それぞれ前進させることによって,2個の鋭角部
用キャリア41の挟持片5と,対応する2個の鈍角部用キャリア42の挟持片5と
が,前後方向においてそれぞれ同一位置となるように位置決めする手段を有してお
り,
   大きさの異なる複数種類の有底カートンに対して装置を搬送駆動した際に有
底カートンの中心位置が搬送中の諸工程を行う機器との関係で移動しないように
し,
   4個のキャリア4の挟持片5は,有底カートンの各角部の内,内容液が充填
される前においてひし形断面形状に変形している段階では,鋭角部用キャリア41
が専ら対向する鋭角部と接触している状態にて挟持して搬送し,内容液が充填され
た以後,上部開口部の折り畳み,融着密封に至る段階では,鈍角部用キャリア42
の挟持片5が,対応する角部の近傍を接触し得る状態にて挟持したうえで搬送する
ようにした,
   ことを特徴とする有底カートンの直進搬送装置。
第1図第2図第3図第4図第5図
物 件 目 録 3
第1.図面の説明
一.各図面の趣旨
 第1図の1,2 装置全体の概況を示す側面図及び平面図
 第2図の1   無端チェーンコンベアにおける駆動用サーボモーター,挟持
片,鋭角部用無端チェーン,鈍角部用無端チェーン及び搬送レールの配列状態を示
す前後方向側面図
 第2図の2   無端チェーンコンベアにおける各キャリアの配列,及びその駆
動軸とその支持部を巾方向に移動可能とする機構に関する平面図(尚,当該平面図
では,鋭角部用無端チェーン11と鈍角部用無端チェーン12とを重畳した状態に
て描いている。このために,鋭角部用スプロケット21と鈍角部用スプロケット2
2,及び鋭角部用無端チェーン11と結合しているキャリア4及び当該キャリア4
の挟持片5と鈍角部用無端チェーン12と結合しているキャリア4及び当該キャリ
ア4の挟持片5は,1本の無端チェーンが共に係合した状態にて描かれている。)
 第3図     無端チェーンコンベアの駆動軸及び鋭角部用無端チェーン,鈍
角部用無端チェーンと駆動用サーボモーターによって回転可能である駆動軸との係
合関係を示す前後方向側断面図
 第4図     ウオームギアの状態を示す平面図
 第5図の1(1),(2),(3),(4) 鋭角部用キャリア及び鈍角部用キ
ャリアの巾方向(前後方向と直交する方向)及び前後方向における位置を調節する
順序を示す模式状の平面図(尚,無端チェーン自体の描写は省略されている。)。
 第5図の2①,②,③,④ 同上(尚,無端チェーン自体の描写は省略されてい
る。)
二.符合の説明
 1 無端チェーンコンベア
11 鋭角部用無端チェーン
12 鈍角部用無端チェーン
21 鋭角部用スプロケット
210 隙間用孔
22 鈍角部用スプロケット
28 筒状体
 29 ウオームギア
291 ウオーム
292 ウオームホイル
 3 搬送レール
 4 キャリア
41 鋭角部用キャリア
42 鈍角部用キャリア
 5 挟持片
 6 駆動軸
 6′非駆動軸
61 駆動軸に対する支持部
 7 幅方向調整手段
71 ハンドル
72 巾方向調整用回転ネジ
 8 駆動用サーボモーター
 9 ボルト
10 回転円盤
100 充填タンク
 13 回転位置調整用回転ネジ
第2.構成の説明
   1時間における有底カートンの処理数を6000個とし,下記の構成を有
し,かつ第1図の1,2に示すような概況によって表示され,「SP-60JS
F」の名称を有し,口栓の内付けが可能であるタイプであって,カートンの搬送路
を二列有している有底カートンの直進搬送装置。

   第2図の1,及び第2図の2に示すように,最も上側及び最も下側に位置し
ている2本の鋭角部用無端チェーン11,及び上下方向において該2本の鋭角部用
無端チェーン11の間に位置している2本の鈍角部用無端チェーン12を,一対の
各回転平面が同一高さとなるような状態にて,それぞれ一対有している無端チェー
ンコンベア1を2個の並列した状態にて設け,その同一進行側を同一平面上に対向
させて平行に配置し,
   かつ,当該無端チェーンコンベア1間に搬送レール3を設置し,
   搬送方向に沿って前後一組を形成している鋭角部用キャリア41及び鈍角部
用キャリア42を,それぞれ鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用無端チェーン
12と結合させることによって,各無端チェーンコンベア1に互いに対応させた状
態にて一定の間隔を以って取り付け,
   キャリア4の挟持片5の間において、有底カートンの各角部を支持した状態に
て,搬送レール3上の有底カートンを間欠搬送しながら停止時に,充填タンク10
0からの内容液の充填,上部開口部の折り畳み,融着密封等の各工程を行う装置で
あって,
   第2図の2及び第3図に示すように,鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部
用無端チェーン12を,それぞれ鋭角部用スプロケット21及び鈍角部用スプロケ
ット22を介して支持し,支柱としての機能を発揮している駆動軸6及び同様の支
柱としての機能を発揮し,かつ該駆動軸6に対応して設けられている非駆動軸6′
に対する支持部61を手動によるハンドル71の回転を各支持部と係合している巾
方向調整用回転ネジ72に伝達することによって,第5図の1(1),(2),及
び第5図の2③,④に示すように,巾方向に調節可能とする手段7を有すると共
に,
   第3図及び第4図に示すように,駆動軸6を囲み,当該駆動軸6の周囲方向
に回転可能であると共に,駆動軸6の回転が一体となって回転する筒状体28を,
ウオーム291とウオームホイル292とからなるウオームギア29の保持力によ
り駆動軸6に取り付け,当該筒状体28に取り付けられているボルト9を介して上
下2個の鈍角部用スプロケット22を取り付けることによって,鈍角部用スプロケ
ット22を駆動軸6と結合した状態とし,鈍角部用無端チェーン12を鋭角部用無
端チェーン11と共に移動するように構成したうえで,パルス制御が可能である一
対の駆動用サーボモーター8の回転角度の量を調節することによって,
   第5図の1(2),(3)に示すように,静止した状態の有底カートンの中
心位置を基準として,2個の鋭角部用キャリア41の挟持片5を鈍角部用キャリア
42の挟持片5が間に存在しない範囲にて鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用
無端チェーン12を相互に反対方向へ同一長さだけ移動させた後に,
   前記ボルト9を移動させることによって,鈍角部用スプロケット22を駆動
軸6と結合していない状態としたうえで,駆動軸6の周囲にて鈍角部用スプロケッ
ト22を回転させることによって,2個の鈍角部用キャリア42の挟持片5を,鈍
角部用無端チェーンを相互に反対方向へ同一長さだけ移動させることによって,2
個の鋭角部用キャリア41の挟持片5と前後方向において夫々同一位置となるよう
に位置決めする手段,
   及び,
   前記のように,ボルト9を緩めることによって鈍角部用スプロケット22を
駆動軸6と結合していない状態としたうえで,第5図の2①,②に示すように,基
準となる有底カートンの中心位置を静止した状態にて,2個の鈍角部用キャリア4
2の挟持片5を,相互に反対方向へ同一長さだけ移動させた後,前記のようにボル
ト9を介して鈍角部用スプロケット22を駆動軸6と結合した状態とすることによ
って,鈍角部用無端チェーン12を鋭角部用無端チェーン11と共に移動するよう
に構成したうえで,第5図の2②,③に示すように,一定の間隔だけ離れている隣
の位置の有底カートンの中心位置を基準として,鋭角部用無端チェーン11及び鈍
角部用無端チェーン12が相互に反対方向へ同一長さだけ進退させた状態となるよ
うに,鋭角部用キャリア41の挟持片5を鈍角部用キャリア42の挟持片5が間に
存在しない範囲にて,鋭角部用無端チェーン11及び鈍角部用無端チェーン12
を,当該隣の中心位置に異なる距離だけ,それぞれ前進させることによって,2個
の鋭角部用キャリア41の挟持片5と,対応する2個の鈍角部用キャリア42の挟
持片5とが,前後方向においてそれぞれ同一位置となるように位置決めする手段を
有しており,
   大きさの異なる複数種類の有底カートンに対して装置を搬送駆動した際に有
底カートンの中心位置が搬送中の諸工程を行う機器との関係で移動しないように
し,
   4個のキャリア4の挟持片5は,有底カートンの各角部の内,内容液が充填
される前においてひし形断面形状に変形している段階では,鋭角部用キャリア41
が専ら対向する鋭角部と接触している状態にてを挟持して搬送し,内容液が充填さ
れた以後,上部開口部の折り畳み,融着密封に至る段階では,鋭角部用キャリア4
2の挟持片5が,対応する角部の近傍を接触し得る状態にて挟持したうえで搬送す
るようにした,
   ことを特徴とする有底カートンの直進搬送装置。
第1図第2図第3図第4図第5図
(別紙)
被告主張物件目録1第Ⅰ図第Ⅱ図第Ⅲ図第Ⅳ図
被告主張物件目録2第Ⅰ図第Ⅱ図第Ⅲ図第Ⅳ図
被告主張物件目録3第Ⅰ図第Ⅱ図第Ⅲ図第Ⅳ図

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛