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平成21年2月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成20年(ワ)第14859号特許権侵害差止請求事件
口頭弁論終結日平成21年1月23日
判決
コリア〈以下略〉
原告三星電子株式会社
訴訟代理人弁護士大野聖二
同井上義隆
訴訟代理人弁理士片山健一
同津田理
大阪市〈以下略〉
被告シャープ株式会社
訴訟代理人弁護士永島孝明
同安國忠彦
同明石幸二郎
訴訟代理人弁理士深見久郎
同森田俊雄
同吉田昌司
同荒川伸夫
補佐人弁理士磯田志郎
同和田吉樹
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙イ号物件目録記載の製品を生産し,譲渡し,貸し渡し,輸出
若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのた
めの展示を含む。)をしてはならない。
2被告は,その占有にかかる別紙イ号物件目録記載の製品を廃棄せよ。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,発明の名称を「液晶表示装置の製造方法およびTFT基板を有す
る液晶表示装置」とする特許番号第3976770号の特許(以下,この特
許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)の特許権者であ
る原告が,被告が別紙イ号物件目録記載の製品の製造,販売等をする行為
が,本件特許権の侵害に当たる旨主張して,被告に対し,特許法100条1
項,2項に基づき,上記製品の生産,譲渡,輸出等の差止め及び廃棄を求め
た事案である。
2争いのない事実
(1)当事者
ア原告は,半導体,携帯電話,液晶モニター等の製造,販売を業とする
韓国法人である。
イ被告は,液晶テレビ等電気機械器具の製造,販売等を業とする株式会
社である。
(2)原告の特許権
ア原告は,平成8年11月26日にした特許出願(特願平8−3146
20号。以下「本件原出願」という。)の一部を分割して出願した特許
出願(特願2004−532号)の一部を更に分割して,平成17年1
2月1日,発明の名称を「液晶表示装置の製造方法およびTFT基板を
有する液晶表示装置」とする発明につき特許出願(優先権主張平成7年
12月28日・平成8年5月29日,特願2005−347737号。
以下「本件出願」という。)をし,平成19年6月29日,本件特許権
の設定登録(請求項の数30)を受けた。
イ本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲の請求項1,11,2
6の記載は,次のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本件発
明1」,請求項11に係る発明を「本件発明2」,請求項26に係る発
明を「本件発明3」という。)。
「【請求項1】基板のTFT部及びゲート−パッド連結部のそれぞれ
に第1金属膜及び第2金属膜を連続して蒸着し,前記第1金属膜及び
前記第2金属膜を第1フォトリソグラフィー工程によってパターニン
グし,ゲート電極及びゲートパッドを基板上に形成する段階と,前記
ゲート電極及び前記ゲートパッドが形成された基板の全面に絶縁膜を
形成する段階と,第2フォトリソグラフィー工程によって,第1非晶
質シリコン膜パターン及びドーピングされた第2非晶質シリコン膜パ
ターンを前記TFT部の絶縁膜上に形成する段階であって,前記第2
非晶質シリコン膜パターンが前記第1非晶質シリコン膜パターンの全
面に形成されて前記第2非晶質シリコン膜全体の下部表面が前記第1
非晶質シリコン膜の表面と当接するように,前記第1非晶質シリコン
膜パターン及び前記第2非晶質シリコン膜パターンを形成する段階
と,第3フォトリソグラフィー工程によって,第3金属膜よりなるソ
ース電極及びドレイン電極を前記TFT部上に形成すると共に,前記
第3金属膜よりなるパッド電極をパッド部の前記絶縁膜上に形成し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に位置する第2非晶質シリコ
ン膜を除去する段階と,前記ドレイン電極の一部,前記ゲートパッド
の一部及び前記パッド電極の一部が露出されるように保護膜を形成
し,前記ゲートパッドの一部上の絶縁膜を第4フォトリソグラフィー
工程によって除去する段階と,第5フォトリソグラフィー工程によっ
て,ドレイン電極と連結される第1画素電極パターンと,前記ゲート
パッド及び前記パッド電極と連結される第2画素電極パターンとを前
記基板上に形成する段階とを含み,前記第1金属膜はCr,Mo,T
a及びTiを含むグループのうち選択される何れか1つの金属膜であ
り,前記第2金属膜はアルミニウム又はアルミニウム合金膜であるこ
とを特徴とする液晶表示装置の製造方法。」
「【請求項11】基板のTFT部及びゲート−パッド連結部のそれぞ
れに第1金属膜及び第2金属膜を連続して蒸着し,前記第1金属膜及
び前記第2金属膜をパターニングし,ゲート電極及びゲートパッドを
基板上に形成する段階と,前記ゲート電極及び前記ゲートパッドが形
成された基板の表面に絶縁膜を形成する段階と,第1非晶質シリコン
膜パターン及びドーピングされた第2非晶質シリコン膜パターンを前
記TFT部の絶縁膜上に形成する段階であって,前記第2非晶質シリ
コン膜パターンが前記第1非晶質シリコン膜パターンの全面に形成さ
れて前記第2非晶質シリコン膜全体の下部表面が前記第1非晶質シリ
コン膜の表面と当接するように,前記第1非晶質シリコン膜パターン
及び前記第2非晶質シリコン膜パターンを形成する段階と,第3金属
膜よりなるソース電極及びドレイン電極を前記TFT部上に形成する
と共に,前記第3金属膜よりなるパッド電極をパッド部の前記絶縁膜
上に形成し,前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に位置する第2
非晶質シリコン膜を除去する段階と,前記ドレイン電極の端部を露出
させる第1コンタクトホール,前記ゲートパッドの一部を露出させる
第2コンタクトホール及び前記パッド電極の一部を露出させる第3コ
ンタクトホールを有する保護膜パターンであって,前記ソース電極及
び前記ドレイン電極間に位置する第1非晶質シリコンパターンの上面
と接触する保護膜パターンを形成し,同時に前記第2コンタクトホー
ルの下部の前記絶縁膜を前記ゲートパッドの端部が露出されるように
除去する段階と,前記第1コンタクトホールを通じて前記ドレイン電
極と電気的に連結される第1画素電極パターンと,前記第2コンタク
トホール及び前記第3コンタクトホールを通じて前記ゲートパッド及
び前記パッド電極と電気的に連結される第2画素電極パターンとを前
記基板上に形成する段階とを含むことを特徴とする液晶表示装置の製
造方法。」
「【請求項26】基板のTFT部及びゲート−パッド連結部のそれぞ
れに第1金属膜及び第2金属膜を連続して蒸着し,前記第1金属膜及
び前記第2金属膜の側壁が基板に対して傾くようにパターニングし,
基板上にゲート電極及びゲートパッドを形成する段階と,前記ゲート
電極及び前記ゲートパッドが形成された基板の表面に絶縁膜を形成す
る段階と,前記TFT部の絶縁膜上に,第1非晶質シリコン膜パター
ン及びその上部に形成されるドーピングされた第2非晶質シリコン膜
パターンよりなり,前記第2非晶質シリコン膜パターンの一部は前記
第1非晶質シリコン膜パターンと接触する半導体膜パターンを形成す
る段階と,第3金属膜よりなるソース電極及びドレイン電極を前記T
FT部上に形成すると共に,前記第3金属膜よりなるパッド電極をパ
ッド部の前記絶縁膜上に形成し,前記ソース電極及び前記ドレイン電
極間に位置する前記第2非晶質シリコン膜を除去する段階と,前記ド
レイン電極の端部を露出させる第1コンタクトホール,前記ゲートパ
ッドの一部を露出させる第2コンタクトホール及び前記パッド電極の
一部を露出させる第3コンタクトホールを有する保護膜パターンを形
成し,同時に前記第2コンタクトホールの下部の前記絶縁膜を前記ゲ
ートパッドの端部が露出されるように除去する段階と,前記第1コン
タクトホールを通じて前記ドレイン電極と電気的に連結される第1画
素電極パターンと,前記第2コンタクトホール及び前記第3コンタク
トホールを通じて前記ゲートパッド及び前記パッド電極と電気的に連
結される第2画素電極パターンとを形成する段階とを含むことを特徴
とする液晶表示装置の製造方法。」
ウ(ア)本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである。
A基板のTFT部及びゲート−パッド連結部のそれぞれに第1金属
膜及び第2金属膜を連続して蒸着し,前記第1金属膜及び前記第2
金属膜を第1フォトリソグラフィー工程によってパターニングし,
ゲート電極及びゲートパッドを基板上に形成する段階と,
B前記ゲート電極及び前記ゲートパッドが形成された基板の全面に
絶縁膜を形成する段階と,
C第2フォトリソグラフィー工程によって,第1非晶質シリコン膜
パターン及びドーピングされた第2非晶質シリコン膜パターンを前
記TFT部の絶縁膜上に形成する段階であって,前記第2非晶質シ
リコン膜パターンが前記第1非晶質シリコン膜パターンの全面に形
成されて前記第2非晶質シリコン膜全体の下部表面が前記第1非晶
質シリコン膜の表面と当接するように,前記第1非晶質シリコン膜
パターン及び前記第2非晶質シリコン膜パターンを形成する段階
と,
D第3フォトリソグラフィー工程によって,第3金属膜よりなるソ
ース電極及びドレイン電極を前記TFT部上に形成すると共に,前
記第3金属膜よりなるパッド電極をパッド部の前記絶縁膜上に形成
し,前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に位置する第2非晶質
シリコン膜を除去する段階と,
E前記ドレイン電極の一部,前記ゲートパッドの一部及び前記パッ
ド電極の一部が露出されるように保護膜を形成し,前記ゲートパッ
ドの一部上の絶縁膜を第4フォトリソグラフィー工程によって除去
する段階と,
F第5フォトリソグラフィー工程によって,ドレイン電極と連結さ
れる第1画素電極パターンと,前記ゲートパッド及び前記パッド電
極と連結される第2画素電極パターンとを前記基板上に形成する段
階とを含み,
G前記第1金属膜はCr,Mo,Ta及びTiを含むグループのう
ち選択される何れか1つの金属膜であり,
H前記第2金属膜はアルミニウム又はアルミニウム合金膜である
Iことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
(イ)本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである。
J基板のTFT部及びゲート−パッド連結部のそれぞれに第1金属
膜及び第2金属膜を連続して蒸着し,前記第1金属膜及び前記第2
金属膜をパターニングし,ゲート電極及びゲートパッドを基板上に
形成する段階と,
K前記ゲート電極及び前記ゲートパッドが形成された基板の表面に
絶縁膜を形成する段階と,
L第1非晶質シリコン膜パターン及びドーピングされた第2非晶質
シリコン膜パターンを前記TFT部の絶縁膜上に形成する段階であ
って,前記第2非晶質シリコン膜パターンが前記第1非晶質シリコ
ン膜パターンの全面に形成されて前記第2非晶質シリコン膜全体の
下部表面が前記第1非晶質シリコン膜の表面と当接するように,前
記第1非晶質シリコン膜パターン及び前記第2非晶質シリコン膜パ
ターンを形成する段階と,
M第3金属膜よりなるソース電極及びドレイン電極を前記TFT部
上に形成すると共に,前記第3金属膜よりなるパッド電極をパッド
部の前記絶縁膜上に形成し,前記ソース電極及び前記ドレイン電極
間に位置する第2非晶質シリコン膜を除去する段階と,
N前記ドレイン電極の端部を露出させる第1コンタクトホール,前
記ゲートパッドの一部を露出させる第2コンタクトホール及び前記
パッド電極の一部を露出させる第3コンタクトホールを有する保護
膜パターンであって,前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に位
置する第1非晶質シリコンパターンの上面と接触する保護膜パター
ンを形成し,同時に前記第2コンタクトホールの下部の前記絶縁膜
を前記ゲートパッドの端部が露出されるように除去する段階と,
O前記第1コンタクトホールを通じて前記ドレイン電極と電気的に
連結される第1画素電極パターンと,前記第2コンタクトホール及
び前記第3コンタクトホールを通じて前記ゲートパッド及び前記パ
ッド電極と電気的に連結される第2画素電極パターンとを前記基板
上に形成する段階とを含む
Pことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
(ウ)本件発明3を構成要件に分説すると,次のとおりである。
Q基板のTFT部及びゲート−パッド連結部のそれぞれに第1金属
膜及び第2金属膜を連続して蒸着し,前記第1金属膜及び前記第2
金属膜の側壁が基板に対して傾くようにパターニングし,基板上に
ゲート電極及びゲートパッドを形成する段階と,
R前記ゲート電極及び前記ゲートパッドが形成された基板の表面に
絶縁膜を形成する段階と,
S前記TFT部の絶縁膜上に,第1非晶質シリコン膜パターン及び
その上部に形成されるドーピングされた第2非晶質シリコン膜パタ
ーンよりなり,前記第2非晶質シリコン膜パターンの一部は前記第
1非晶質シリコン膜パターンと接触する半導体膜パターンを形成す
る段階と,
T第3金属膜よりなるソース電極及びドレイン電極を前記TFT部
上に形成すると共に,前記第3金属膜よりなるパッド電極をパッド
部の前記絶縁膜上に形成し,前記ソース電極及び前記ドレイン電極
間に位置する前記第2非晶質シリコン膜を除去する段階と,
U前記ドレイン電極の端部を露出させる第1コンタクトホール,前
記ゲートパッドの一部を露出させる第2コンタクトホール及び前記
パッド電極の一部を露出させる第3コンタクトホールを有する保護
膜パターンを形成し,同時に前記第2コンタクトホールの下部の前
記絶縁膜を前記ゲートパッドの端部が露出されるように除去する段
階と,
V前記第1コンタクトホールを通じて前記ドレイン電極と電気的に
連結される第1画素電極パターンと,前記第2コンタクトホール及
び前記第3コンタクトホールを通じて前記ゲートパッド及び前記パ
ッド電極と電気的に連結される第2画素電極パターンとを形成する
段階とを含む
Wことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
(3)被告の行為
被告は,別紙イ号物件目録記載の製品(以下,同製品を「イ号液晶テレ
ビ」といい,同製品に搭載された液晶モジュールを「イ号液晶モジュー
ル」という。)を製造し,販売し,販売の申出をしている。
3争点
本件の争点は,イ号液晶モジュールの製造方法が本件発明1ないし3の構
成要件を充足し,その技術的範囲に属するか否か(争点1),本件特許に無
効理由があり,原告の本件特許権の行使が特許法104条の3第1項により
制限されるかどうか(争点2)である。
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(イ号液晶モジュールの製造方法の本件発明1ないし3の技術的範
囲の属否)
(1)原告の主張
ア本件発明1の「TFT部」,「ゲートパッド」,「ゲート−パッド連
結部」,「パッド電極」及び「パッド部」の意義
(ア)本件発明1の「TFT部」(薄膜トランジスタ部)とは,本件特
許に係る願書に添付した図面(以下,同願書に添付した明細書と併せ
て「本件明細書」という。甲3)の図12に図示されているように(
図中の左側部分の「C」),画素領域に設けられ,ソース,ドレイ
ン,ゲートにより構成される薄膜トランジスタ(TFT),ドレイン
電極の表面を露出させるように保護膜が形成されたコンタクトホール
が形成された領域をいう。
(イ)本件発明1の「ゲートパッド」とは,液晶表示装置の画素領域
外(基板の周辺)の領域において,ゲートラインの末端(一端)に形
成される電極をいい(本件明細書の段落【0021】,図6),ゲー
ト電極を構成する「第1金属膜」,「第2金属膜」により形成され
る。
本件発明1の「ゲート−パッド連結部」は,上記「ゲートパッド」
と「第2画素電極パターン」との接続が行われる領域をいう(本件明
細書の段落【0011】,【0030】,図12の「D」)。この「
ゲート−パッド連結部」において行われる「ゲートパッド」と「第2
画素電極パターン」の接続は,「ゲートパッド」の表面を露出させる
ように保護膜が形成されたコンタクトホールを介して行われる。
(ウ)本件発明1の「パッド電極」は,液晶表示装置の画素領域外(基
板の周辺)の領域において,ソース電極及びドレイン電極を構成す
る「第3金属膜」により形成される電極をいい(本件明細書の図12
の「41c」),その機能は,外部からの電気信号をゲートパッドに
伝達することにある。
本件発明1の「パッド部」は,上記「パッド電極」と「第2画素電
極パターン」との接続が行われる領域をいう(本件明細書の段落【0
030】,図12の「E」)。
イイ号液晶モジュールの構造
イ号液晶モジュールは,次のように,「TFT部」,「ゲート−パッ
ド連結部」及び「パッド部」を有している。
(ア)TFT部
aイ号液晶モジュールの「TFT部」(薄膜トランジスタ部)にお
いては,TFTのドレイン電極は,ゲート電極・ソース電極の交点
付近から右斜上方に向かって伸びるように形成されており,その端
部にはコンタクトホールが形成されている。
bイ号液晶モジュールのTFT部の構造の概要は,別紙1(1)のとお
りである(甲5の写真5−6,甲6の写真5−6,5−12,7−
3等)。
すなわち,基板(a)上に,「チタン」を含む金属膜(b),「
アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及び「チタ
ン」を含む金属膜(d)が基板側から順番に積層されて,その側壁
が基板(a)に対して傾くようにゲート電極が形成され,このゲー
ト電極上に絶縁膜(e)が設けられている。
絶縁膜(e)の上には,第1の非晶質シリコン(a−Si)膜(
f)及び第2の非晶質シリコン(a−Si)膜(g)が順次積層さ
れてパターニングされ,第2の非晶質シリコン膜(g)の上に,「
チタン」を含む金属膜(h)と「アルミニウム合金膜」ないし「ア
ルミニウム膜」(i)を積層してなるソース電極及びドレイン電極
が形成されている。
上記パターニングされた第2の非晶質シリコン膜(g)全体の下
部表面は第1の非晶質シリコン膜(f)の表面と当接しており,第
2の非晶質シリコン膜(g)パターンの一部が第1の非晶質シリコ
ン膜パターン(f)と接触している。
そして,ソース電極,ドレイン電極及びソース−ドレイン電極間
に形成されるチャネル領域(第2の非晶質シリコン膜(g)が除去
されることで露出する第1の非晶質シリコン膜(f)の表面)は,
保護膜(j)により被覆されている。
cイ号液晶モジュールのTFT部のコンタクトホール部の構造の概
要は,別紙1(2)のとおりである(甲5の写真7−5等)。
すなわち,基板(a)上に絶縁膜(e)が設けられており,この
絶縁膜(e)の上には,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の
非晶質シリコン膜(g)が順次積層されてパターニングされてい
る。
第2の非晶質シリコン膜(g)の上には,「チタン」を含む金属
膜(h)と「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(
i)を積層してなるドレイン電極(の端部)が形成されており,当
該ドレイン電極の一部を露出するように保護膜(j)が形成され,
ドレイン電極のうちの「チタン」を含む金属膜(h)の一部が,透
明導電膜(k)に電気的に接続している。
なお,「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)
の上には保護膜(j)が形成されており,透明導電膜(k)とは接
していない。
(イ)「ゲート−パッド連結部」及び「パッド部」
aイ号液晶モジュールには,画素領域外の基板周辺部に「ゲート−
パッド連結部1」及び「ゲート−パッド連結部2」が形成されてお
り(甲5の写真8−1,8−11等),それぞれにおいて「ゲート
パッド」と「第2画素電極パターン」との接続部(「ゲート−パッ
ド連結部」)及び「パッド電極」と「第2画素電極パターン」との
接続部(「パッド部」)が形成されている。
すなわち,イ号液晶モジュールにおいて,ゲートラインのうち,
画素領域外の基板周辺部に形成された部分は,「ゲート電極」の末
端部分であり,「ゲートパッド」に相当する。そして,画素領域外
の基板周辺部に形成されている「ゲート−パッド連結部1」及び「
ゲート−パッド連結部2」において,それぞれ上記「ゲートパッ
ド」と「画素電極」である透明導電膜との接続が行われていること
から,「ゲート−パッド連結部1」及び「ゲート−パッド連結部
2」は,いずれも「ゲート−パッド連結部」に該当する。
b「ゲート−パッド連結部1」の概要は,別紙1(3)のとおりであ
る(甲5の写真8−14等)。
すなわち,基板(a)上に,「チタン」を含む金属膜(b),「
アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及び「チタ
ン」を含む金属膜(d)が基板側から順番に積層されてゲートパッ
ドが形成されている。
このゲートパッド上には,コンタクトホールにより,ゲートパッ
ドの一部が開口されるように絶縁膜(e)が設けられ,当該絶縁
膜(e)の上には,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶
質シリコン膜(g)が順次積層されており,第2の非晶質シリコン
膜(g)の上には,「チタン」を含む金属膜(h),「アルミニウ
ム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)及び保護膜(j)が設
けられている。
なお,保護膜(j)は,「チタン」を含む金属膜(h)及び「ア
ルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)の一部を露出
するように形成されている。また,コンタクトホールの縁の「チタ
ン」を含む金属膜(d)の上には,第1及び第2の非晶質シリコン
膜(f,g)及び「チタン」を含む金属膜(h)が残存している。
そして,当該領域の全面に透明導電膜(k)が形成され,パッド
電極を構成する「チタン」を含む金属膜(h)と透明導電膜(k)
が電気的に接続し,絶縁膜(e)の開口部においてゲートパッドを
構成する第2金属膜としての「チタン」を含む金属膜(d)と透明
導電膜(k)が電気的に接続することで,「ゲート−パッド連結」
がされている。
c「ゲート−パッド連結部2」の概要は,別紙1(4)のとおりであ
る(甲5の写真8−17等)。
すなわち,基板(a)上に,「チタン」を含む金属膜(b),「
アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及び「チタ
ン」を含む金属膜(d)が順番に積層されてゲートパッドが形成さ
れている。
このゲートパッド上には,その一部が開口されるように絶縁膜(
e)が設けられ,当該絶縁膜(e)の上には,第1の非晶質シリコ
ン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)が順次積層されてお
り,第2の非晶質シリコン膜(g)の上には,「チタン」を含む金
属膜(h)が設けられている。
なお,コンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の
上には,第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g)及び「チタ
ン」を含む金属膜(h)が残存している。
そして,当該領域の全面に透明導電膜(k)が形成され,パッド
電極を構成する「チタン」を含む金属膜(h)と透明導電膜(k)
が電気的に接続し,絶縁膜(e)の開口部においてゲートパッドを
構成する「チタン」を含む金属膜(d)と透明導電膜(k)が電気
的に接続することで,「ゲート−パッド連結」がされている。
ウイ号液晶モジュールの製造方法
前記イのイ号液晶モジュールの構造によれば,イ号液晶モジュール
は,次のような工程1ないし12を経て製造されたものである。
(ア)工程1
別紙2①のとおり,基板(a)上に,「チタン」を含む金属膜(
b),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)及
び「チタン」を含む金属膜(d)を順番に積層した後,フォトリソグ
ラフィー工程(1次写真蝕刻)により,TFT部及びパッド部にゲー
ト電極及びゲートパッドをそれぞれ形成する工程。
(イ)工程2
別紙2②のとおり,ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板
の全面に絶縁膜(e)を形成する工程。
(ウ)工程3
別紙2③のとおり,絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン
膜(f)及びドーピングされた第2の非晶質シリコン膜(g)を形成
する工程。
(エ)工程4
別紙2④のとおり,半導体膜(第1の非晶質シリコン膜(f)及び
第2の非晶質シリコン膜(g))を,フォトリソグラフィー工程(2
次写真蝕刻)により,TFT部に半導体膜パターンを形成する工程。
なお,当該工程において,パッド部にも半導体膜パターンが形成さ
れる。パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の「チタン」を含
む金属膜(d)の上に,図中に矢印で示したように第1及び第2の非
晶質シリコン膜(f,g)が残っている。
(オ)工程5
別紙2⑤のとおり,半導体膜パターンの形成された基板(a)の全
面に,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」な
いし「アルミニウム膜」(i)を形成する工程。
(カ)工程6
別紙2⑥のとおり,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニ
ウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を,フォトリソグラフ
ィー工程(3次写真蝕刻)により,TFT部にソース電極及びドレイ
ン電極を形成する工程の前段。
なお,パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の「チタン」を
含む金属膜(d)の上に,図中に矢印で示したように第1及び第2の
非晶質シリコン膜(f,g)及びパッド電極を構成する金属膜(h,
i)が残っている。
(キ)工程7
別紙2⑦のとおり,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニ
ウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)をマスクとして,ソー
ス電極−ドレイン電極間に位置する第2の非晶質シリコン膜(g)を
除去する工程(ソース電極及びドレイン電極を形成する工程の後
段)。
なお,当該工程において,パッド部にも半導体膜パターンが形成さ
れる。パッド部に形成されるコンタクトホールの縁の「チタン」を含
む金属膜(d)の上に,図中に矢印で示したように第1及び第2の非
晶質シリコン膜(f,g)が残っている。
(ク)工程8
別紙2⑧のとおり,ソース電極及びドレイン電極の形成された基
板(a)の全面に保護膜(j)を形成する工程。
(ケ)工程9
別紙2⑨のとおり,保護膜(j)及び絶縁膜(e)をフォトリソグ
ラフィー工程(4次写真蝕刻)により,ドレイン電極(の端部)の表
面と,ゲートパッドの表面を露出させるコンタクトホールを形成し,
ゲートパッドより内側にオープンされるように保護膜(j)及び絶縁
膜(e)を蝕刻する工程。
(コ)工程10
別紙2⑩のとおり,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニ
ウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)のうち,コンタクトホ
ールにより露出されている部分の「アルミニウム合金膜」ないし「ア
ルミニウム膜」(i)を除去する工程。
(サ)工程11
別紙2⑪のとおり,コンタクトホールの形成された基板(a)の全
面に透明導電膜(k)を形成する工程。
(シ)工程12
別紙2⑫のとおり,フォトリソグラフィー工程(5次写真蝕刻)に
より透明導電膜(k)を蝕刻して,ドレイン電極と接続される第1画
素電極パターンと,ゲートパッドとパッド電極と接続される第2画素
電極パターンとを形成する工程。
エ本件発明1の構成要件充足性
イ号液晶モジュールの製造方法は,以下のとおり,本件発明1の構成
要件AないしIをすべて充足するから,本件発明1の技術的範囲に属す
る。
(ア)構成要件A
a工程1において,「チタン」を含む金属膜(b)は「第1金属
膜」に,「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)
は「第2金属膜」に相当し,基板(a)上に「第1金属膜」及び「
第2金属膜」を順番に積層した後,フォトリソグラフィー工程(1
次写真蝕刻)により,TFT部及びパッド部(ゲート−パッド連結
部)にゲート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成するから,イ号
液晶モジュールの製造方法は,構成要件Aを充足する。
この1次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(
1)の「第1マスクパターン」のとおりである。
b被告は,本件発明1の構成要件Aによれば,ゲート電極及びゲー
トパッドは2層の金属膜からなる積層構造のものに限定される旨主
張するが,そのような限定解釈を行う理由はなく,被告の主張は失
当である。
(イ)構成要件B
工程2において,ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板(
a)の全面に絶縁膜(e)を形成するから,イ号液晶モジュールの製
造方法は,構成要件Bを充足する。
(ウ)構成要件C
工程3において,絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン膜(
f)及びドーピングされた第2の非晶質シリコン膜(g)を形成し,
工程4において,半導体膜(第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2
の非晶質シリコン膜(g))を,フォトリソグラフィー工程(2次写
真蝕刻)により,TFT部に半導体膜パターンを形成するから,イ号
液晶モジュールの製造方法は,構成要件Cを充足する。
この2次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(2)
の「第2マスクパターン」のとおりである。
(エ)構成要件D
a工程5において,半導体膜パターンの形成された基板(a)の全
面に「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」な
いし「アルミニウム膜」(i)が形成され,これらの金属膜(h,
i)は,本件発明1の「第3金属膜」に相当する。
工程6において,上記「第3金属膜」を,フォトリソグラフィー
工程(3次写真蝕刻)により,TFT部にソース電極及びドレイン
電極を形成し,工程7において,「チタン」を含む金属膜(h)及
び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)をマス
クとして,ソース電極−ドレイン電極間に位置する第2の非晶質シ
リコン膜(g)を除去している。
そして,工程5ないし7において,上記「第3金属膜」からなる
パッド電極がパッド部の絶縁膜(e)上に形成されるから,イ号液
晶モジュールの製造方法は,構成要件Dを充足する。
この3次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(
3)の「第3マスクパターン」のとおりである。
b被告は,イ号液晶モジュールは,本件発明1の「パッド部」及
び「第3金属膜よりなるパッド電極」を具備していないから,構成
要件Dを充足しない旨主張する。
しかし,本件発明1の「パッド部」とは,液晶表示装置の画素領
域外(基板の周辺)の領域において,ソース電極及びドレイン電極
を構成する第3金属膜により構成される「パッド電極」と「第2画
素電極パターン」との接続が行われる領域をいうところ(前記ア(ウ
)),イ号液晶モジュールにおいては,第3金属膜を構成する「チタ
ン」を含む金属膜(h)が「パッド電極」を形成し,「ゲート−パ
ッド連結部1」及び「ゲート−パッド連結部2」において,「パッ
ド電極」と「画素電極」との接続が行われ,「パッド部」を形成
し,かつ,「ゲートパッド」と「第2画素電極パターン」との接続
が行われ,「ゲート−パッド連結部」を形成している。
すなわち,イ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部1」
は,別紙写真1の青色部分において「ゲートパッド」と「第2画素
電極パターン」(透明導電膜)が連結し,また,同赤色部分におい
て「パッド電極」(第3金属膜を構成する「チタン」を含む金属
膜(h))と「第2画素電極パターン」(透明導電膜)が連結
し,「パッド部」を形成している。
次に,イ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部2」は,別
紙写真2の青色部分において「ゲートパッド」と「第2画素電極パ
ターン」(透明導電膜)が連結し,また,同赤色部分において「パ
ッド電極」(第3金属膜を構成する「チタン」を含む金属膜(h)
と「第2画素電極パターン」(透明導電膜)が連結し,「パッド
部」を形成している。
そして,本件発明1の「パッド電極」の機能は,外部からの電気
信号をゲートパッドに伝達することにあるところ(前記ア(ウ
)),「ゲート−パッド連結部1」及び「ゲート−パッド連結部2」
においては,「チタン」を含む金属膜(h)を介して「ゲートパッ
ド」に外部からの電気信号が伝達されているから,上記「チタン」
を含む金属膜(h)が「パッド電極」に該当することは明らかであ
る。また,「ゲート−パッド連結部1」では,別紙写真1の赤色部
分及び青色部分を覆うように広く透明導電膜が形成されているか
ら(甲4の写真9−2),上記赤色部分及び青色部分における導電
粒子の存在確率を問題とする意味はない。
さらに,仮に被告が主張するように「パッド電極」が外部端子と
直接に連結される部分と解したとしても,「ゲート−パッド連結部
2」の近傍(甲4の写真8−1)には,第3金属膜を構成する「チ
タン」を含む金属膜(h)が,透明導電膜(k)に覆われることな
く最上層に形成され,外部端子と直接に連結している領域があるか
ら,イ号液晶モジュールにおいて,「パッド電極」が形成されてい
ることに変わりはない。
cまた,被告は,本件発明1の第3金属膜の材質にはアルミニウム
が含まれないので,イ号液晶モジュールの「チタン」を含む金属
膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(
i)は,本件発明1の「第3金属膜」に該当しない旨主張するが,
そのような限定解釈を行う理由はなく,被告の主張は失当である。
(オ)構成要件E
工程8において,ソース電極及びドレイン電極の形成された基板(
a)の全面に保護膜(j)を形成し,工程9において,保護膜(j)
及び絶縁膜(e)をフォトリソグラフィー工程(4次写真蝕刻)によ
り,ドレイン電極の(一部の)表面と,ゲートパッドの(一部の)表
面を露出させるコンタクトホールを形成し,ゲートパッドより内側に
オープンされるように保護膜(j)及び絶縁膜(e)を蝕刻し,パッ
ド部ではパッド電極の一部が露出されるように保護膜が形成され,工
程10において,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム
合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)のうち,コンタクトホール
により露出されている部分の「アルミニウム合金膜」ないし「アルミ
ニウム膜」(i)を除去しているから,イ号液晶モジュールの製造方
法は,構成要件Eを充足する。
この4次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(4)
の「第4マスクパターン」のとおりであり,パッド部に形成された保
護膜(j)及び絶縁膜(e)は,同一のマスクパターンにより同一の
蝕刻工程により行われる。絶縁膜(e)の除去は,パッド部に形成さ
れたコンタクトホールの縁に残された半導体膜(f)をマスクとして
おり,絶縁膜(e)の除去に別途のフォトリソグラフィー工程が加え
られているわけではない。
(カ)構成要件F
工程11において,コンタクトホールの形成された基板(a)の全
面に透明導電膜(k)を形成し,工程12において,フォトリソグラ
フィー工程(5次写真蝕刻)により透明導電膜(k)を蝕刻して,ド
レイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドとパ
ッド電極と接続される第2画素電極パターンとを形成するから,イ号
液晶モジュールの製造方法は,構成要件Fを充足する。
この5次写真蝕刻工程時に用いられるマスクパターンは,別紙3(5)
の「第5マスクパターン」のとおりである。
(キ)構成要件G
工程1において積層された「チタン」を含む金属膜(b)は「第1
金属膜」に相当するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要
件Gを充足する。
(ク)構成要件H
工程1において積層された「アルミニウム合金膜」ないし「アルミ
ニウム膜」(c)は「第2金属膜」に相当するから,イ号液晶モジュ
ールの製造方法は,構成要件Hを充足する。
(ケ)構成要件I
イ号液晶モジュールは液晶表示装置であるから,イ号液晶モジュー
ルの製造方法は,構成要件Iを充足する。
オ本件発明2の構成要件充足性
イ号液晶モジュールの製造方法は,以下のとおり,本件発明2の構成
要件JないしPをすべて充足するから,本件発明2の技術的範囲に属す
る。
(ア)構成要件J
工程1において,「チタン」を含む金属膜(b)は「第1金属膜」
に,「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)は「第
2金属膜」に相当し,基板(a)上に「第1金属膜」及び「第2金属
膜」を順番に積層した後,フォトリソグラフィー工程(1次写真蝕
刻)により,TFT部及びパッド部(ゲート−パッド連結部)にゲー
ト電極及びゲートパッドをそれぞれ形成するから,イ号液晶モジュー
ルの製造方法は,構成要件Jを充足する。
(イ)構成要件K
工程2において,ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板(
a)の全面に絶縁膜(e)を形成するから,イ号液晶モジュールの製
造方法は,構成要件Kを充足する。
(ウ)構成要件L
工程3において,絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン膜(
f)及びドーピングされた第2の非晶質シリコン膜(g)を形成し,
工程4において,半導体膜(第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2
の非晶質シリコン膜(g))を,フォトリソグラフィー工程(2次写
真蝕刻)により,TFT部に半導体膜パターンを形成し,第2の非晶
質シリコン膜(g)全体の下部表面は第1の非晶質シリコン膜(f)
の表面と当接するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件
Lを充足する。
(エ)構成要件M
工程5において,半導体膜パターンの形成された基板(a)の全面
に「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ない
し「アルミニウム膜」(i)が形成され,これらの金属膜(h,i)
は本件発明2の「第3金属膜」に相当する。
工程6において,上記「第3金属膜」を,フォトリソグラフィー工
程(3次写真蝕刻)により,TFT部にソース電極及びドレイン電極
を形成し,工程7において,上記「第3金属膜」をマスクとして,ソ
ース電極−ドレイン電極間に位置する第2の非晶質シリコン膜(g)
を除去している。
そして,工程5ないし7において,上記「第3金属膜」からなるパ
ッド電極がパッド部の絶縁膜(e)上に形成されるから,イ号液晶モ
ジュールの製造方法は,構成要件Mを充足する。
(オ)構成要件N
工程8において,ソース電極及びドレイン電極の形成された基板(
a)の全面に保護膜(j)を形成し,工程9において,保護膜(j)
及び絶縁膜(e)をフォトリソグラフィー工程(4次写真蝕刻)によ
り,ドレイン電極の(一部の)表面と,ゲートパッドの(一部の)表
面を露出させるコンタクトホールを形成し,ゲートパッドより内側に
オープンされるように保護膜(j)及び絶縁膜(e)を蝕刻し,パッ
ド部ではパッド電極の一部が露出されるように保護膜(j)が形成さ
れ,工程10において,「第3金属膜」(h,i)のうち,コンタク
トホールにより露出されている部分の「アルミニウム合金膜」ない
し「アルミニウム膜」(i)を除去しているから,イ号液晶モジュー
ルの製造方法は,構成要件Nを充足する。
(カ)構成要件O
工程11において,コンタクトホールの形成された基板(a)の全
面に透明導電膜(k)を形成し,工程12において,フォトリソグラ
フィー工程(5次写真蝕刻)により透明導電膜(k)を蝕刻して,ド
レイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドとパ
ッド電極と接続される第2画素電極パターンとを形成する。
そして,第1画素電極パターンは第1コンタクトホール(TFT部
のコンタクトホール)を通じてドレイン電極と接続され,第2画素電
極パターンは第2及び第3コンタクトホール(パッド部のコンタクト
ホール)を通じてゲートパッド及びパッド電極と接続されるから,イ
号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Oを充足する。
(キ)構成要件P
イ号液晶モジュールは液晶表示装置であるから,イ号液晶モジュー
ルの製造方法は,構成要件Pを充足する。
カ本件発明3の構成要件充足性
イ号液晶モジュールの製造方法は,以下のとおり,本件発明3の構成
要件QないしWをすべて充足するから,本件発明3の技術的範囲に属す
る。
(ア)構成要件Q
工程1において,「チタン」を含む金属膜(b)は「第1金属膜」
に,「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(c)は「第
2金属膜」に相当し,基板(a)上に「第1金属膜」及び「第2金属
膜」を順番に積層した後,フォトリソグラフィー工程(1次写真蝕
刻)により,TFT部及びパッド部(ゲート−パッド連結部)にゲー
ト電極及びゲートパッドを,それぞれその側壁が基板に対して傾くよ
うに形成するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Qを
充足する。
(イ)構成要件R
工程2において,ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板(
a)の全面に絶縁膜(e)を形成するから,イ号液晶モジュールの製
造方法は,構成要件Rを充足する。
(ウ)構成要件S
工程3において,絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン膜(
f)及びドーピングされた第2の非晶質シリコン膜(g)を形成し,
工程4において,半導体膜(第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2
の非晶質シリコン膜(g))を,フォトリソグラフィー工程(2次写
真蝕刻)により,TFT部に半導体膜パターンを形成し,第2の非晶
質シリコン膜(g)パターンの一部は第1の非晶質シリコン膜(f)
パターンと接触するから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要
件Sを充足する。
(エ)構成要件T
工程5において,半導体膜パターンの形成された基板(a)の全面
に「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ない
し「アルミニウム膜」(i)が形成され,これらの金属膜(h,i)
は,本件発明3の「第3金属膜」に相当する。
工程6において,上記「第3金属膜」を,フォトリソグラフィー工
程(3次写真蝕刻)により,薄膜トランジスタ部にソース電極及びド
レイン電極を形成し,工程7において,上記「第3金属膜」をマスク
として,ソース電極−ドレイン電極間に位置する第2の非晶質シリコ
ン膜(g)を除去している。
そして,工程5ないし7において,上記「第3金属膜」からなるパ
ッド電極がパッド部の絶縁膜(e)上に形成されるから,イ号液晶モ
ジュールの製造方法は,構成要件Tを充足する。
(オ)構成要件U
工程8において,ソース電極及びドレイン電極の形成された基板(
a)の全面に保護膜(j)を形成し,工程9において,保護膜(j)
及び絶縁膜(e)をフォトリソグラフィー工程(4次写真蝕刻)によ
り,ドレイン電極の(一部の)表面を露出させるTFT部のコンタク
トホール(第1コンタクトホール)と,ゲートパッドの(一部の)表
面を露出させるパッド部のコンタクトホール(第2コンタクトホー
ル)を形成し,ゲートパッドより内側にオープンされるように保護
膜(j)及び絶縁膜(e)を同時に蝕刻し,パッド部のコンタクトホ
ール(第3コンタクトホール)によりパッド電極の一部が露出される
ように保護膜(j)が形成され,工程10において,「チタン」を含
む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム
膜」(i)のうち,コンタクトホールにより露出されている部分の「
アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を除去してい
るから,イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Uを充足する。
(カ)構成要件V
工程11において,コンタクトホールの形成された基板(a)の全
面に透明導電膜(k)を形成し,工程12において,フォトリソグラ
フィー工程(5次写真蝕刻)により透明導電膜(k)を蝕刻して,ド
レイン電極と接続される第1画素電極パターンと,ゲートパッドとパ
ッド電極と接続される第2画素電極パターンとを形成する。
そして,第1画素電極パターンは第1コンタクトホールを通じてド
レイン電極と接続され,第2画素電極パターンは第2及び第3コンタ
クトホールを通じてゲートパッド及びパッド電極と接続されるから,
イ号液晶モジュールの製造方法は,構成要件Vを充足する。
(キ)構成要件W
イ号液晶モジュールは液晶表示装置であるから,イ号液晶モジュー
ルの製造方法は,構成要件Wを充足する。
キまとめ
以上のとおり,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1ないし
3の技術的範囲に属するから,被告によるイ号液晶モジュールを搭載す
るイ号液晶テレビの製造,販売の申出及び販売は,本件特許権の侵害に
当たる。
(2)被告の反論
ア本件発明1ないし3の構成要件充足性の主張に対し
イ号液晶モジュールが原告主張の構造(前記(1)イ)を有することは,
否認する。したがって,イ号液晶モジュールが原告主張の構造を有する
ことを前提に,イ号液晶モジュールの製造方法が本件発明1ないし3の
構成要件を充足するとの原告の主張は,理由がない。
また,仮にイ号液晶モジュールが原告主張の構造を有するとしても,
イ号液晶モジュールの製造方法は,以下のとおり,少なくとも本件発明
1の構成要件A及びD,本件発明2の構成要件J及びM,本件発明3の
構成要件Q及びTをそれぞれ充足しないので,本件発明1ないし3の技
術的範囲に属さない。
(ア)構成要件A,J,Qの非充足
a(a)本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載中の「基板
のTFT部及びゲート−パッド連結部のそれぞれに第1金属膜及
び第2金属膜を連続して蒸着し,前記第1金属膜及び前記第2金
属膜を・・・パターニングし,ゲート電極及びゲートパッドを基
板上に形成する」との記載(構成要件A)は,ゲート電極及びゲ
ートパッドを形成する工程として,基板の上に最初に第1金属膜
を形成し,続けて第1金属膜の上に第2金属膜を形成して2層の
金属膜からなる積層構造を成膜した後,この2層の積層構造を写
真蝕刻して,ゲート電極及びゲートパッドを形成することを明確
に示すものであり,また,「第3金属膜」との記載(構成要件
D)は,「第3金属膜」が形成される前には,「第1金属膜」及
び「第2金属膜」の2層しか金属膜が形成されないことを明確に
示すものである。
したがって,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載
によれば,本件発明1の「ゲート電極及びゲートパッド」(構成
要件A)は,2層の金属膜からなる積層構造のものに限定される
と解すべきである。そして,本件発明2の特許請求の範囲(請求
項11)及び本件発明3の特許請求の範囲(請求項26)にも,
請求項1と同様の記載があるから,本件発明2の「ゲート電極及
びゲートパッド」(構成要件J)及び本件発明3の「ゲート電極
及びゲートパッド」(構成要件Q)も,2層の金属膜からなる積
層構造のものに限定されると解すべきである。
また,本件明細書(甲3)の「発明の詳細な説明」において
も,「第1金属膜」及び「第2金属膜」は,2層の金属膜からな
る積層構造によって構成されることが記載されている(例え
ば,「本発明の第1実施例」に関する段落【0023】,【00
24】)。
(b)そして,原告の主張によれば,イ号液晶モジュールの製造方
法に係る工程1において,基板(a)上に,「チタン」を含む金
属膜(b),「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム
膜」(c)及び「チタン」を含む金属膜(d)を順番に積層した
後,1次写真蝕刻により,薄膜トランジスタ部及びパッド部にゲ
ート電極及びゲートパッドをそれぞれ形成するというのであるか
ら,イ号液晶モジュールのゲート電極は,上記(b),(
c),(d)の3層構造であって,2層構造のものではない。し
たがって,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1の構成
要件A(本件発明2の構成要件J,本件発明3の構成要件Q)を
充足しない。
加えて,本件明細書には,画素電極とアルミニウム膜との間の
接触抵抗を減らすために,ゲートパッドを構成するアルミニウム
膜又はアルミニウム合金膜(第2金属膜)を蝕刻して第1金属膜
を露出させ,ゲートパッドの第1金属膜と第2画素電極パターン
とを接触させる構成しか開示されていないこと,本件原出願の審
査段階で原告が提出した平成16年9月8日付け意見書(乙5)
によれば,「アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜の蝕刻量を
減らす」ために「パッド電極」を設けていること(1頁31行∼
39行)からすれば,本件発明1ないし3は,ゲート電極及びゲ
ートパッドがアルミニウム膜を最上層に有することを前提として
いると解すべきである。
しかし,イ号液晶モジュールでは,「アルミニウム膜」(c)
の上に「チタン」を含む金属膜(d)が形成されているので,こ
の点においても,本件発明1の構成要件A(本件発明2の構成要
件J,本件発明3の構成要件Q)を充足しない。
b(a)次に,乙10(1995年11月20日発行の「JIS工
業用語大辞典第4版」)によれば,「パッド」とは「表面実装
部品を搭載するためのランド」(1503頁)を意味し,「ラン
ド」とは「部品の取付け及び接続に用いる導体パターン」(19
84頁)を意味するから,結局,「パッド」とは,「表面実装部
品を搭載するための取付け及び接続に用いる導体パターン」を意
味する。したがって,当業者においては,「パッド部」とは液晶
表示装置における「パッド」が設けられる部分を指し,「パッド
電極」とは「パッド」の電極を指すと理解する。
そして,「ゲート−パッド連結部」の用語は,技術用語ではな
いが,通常の日本語の用法として理解すれば,「ゲートとパッド
とを連結する部分」と解釈される。このことは,本件明細書にお
いて,従来の技術に関する「ゲート−パッド連結部B」が,ゲー
トパッド4aとパッド電極14cとを連結する部分であることが
開示されていること(段落【0005】∼【0011】,図1な
いし5)からも明らかである。
また,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「前記
第3金属膜よりなるパッド電極」との記載があり,本件発明2の
特許請求の範囲(請求項11)及び本件発明3の特許請求の範
囲(請求項26)にも,請求項1と同様の記載がある。
そうすると,本件発明1ないし3の「ゲート−パッド連結部」
とは,「ゲートパッド」と「第3金属膜からなるパッド電極」と
を連結する部分を意味するものと解すべきである。
(b)しかるに,後記のとおり,イ号液晶モジュールは,「第3金
属膜からなるパッド電極」を具備しておらず,「ゲートパッド」
と「第3金属膜からなるパッド電極」とを連結する部分を有して
いないから,イ号液晶モジュールには,本件発明1ないし3の「
ゲート−パッド連結部」が存在しない。
したがって,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1の
構成要件A(本件発明2の構成要件J,本件発明3の構成要件
Q)を充足しない。
(イ)構成要件D,M,Tの非充足
a本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,「第3
金属膜よりなるソース電極及びドレイン電極を前記TFT部上に形
成すると共に,前記第3金属膜よりなるパッド電極をパッド部の前
記絶縁膜上に形成し」(構成要件D)との記載があり,また,本件
発明2の特許請求の範囲(請求項11)及び本件発明3の特許請求
の範囲(請求項26)にも,請求項1と同様の記載があるが,イ号
液晶モジュールは,本件発明1の「パッド部」及び「第3金属膜よ
りなるパッド電極」を具備していないから,イ号液晶モジュールの
製造方法は,上記構成要件Dを充足しない。
bこの点について原告は,本件発明1の「パッド部」とは,液晶表
示装置の画素領域外(基板の周辺)の領域において,TFTにおけ
るソース電極及びドレイン電極を構成する「第3金属膜」により形
成される「パッド電極」と「第2画素電極パターン」との接続が行
われる領域をいい,イ号液晶モジュールにおいては,「チタン」を
含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウ
ム膜」(i)よりなる「第3金属膜」が「パッド電極」を形成
し,「ゲート−パッド連結部1」及び「ゲート−パッド連結部2」
において「パッド電極」と「画素電極」との接続が行われているか
ら,「ゲート−パッド連結部1」及び「ゲート−パッド連結部2」
が「パッド部」に該当する旨主張する。
(a)しかし,原告の主張する「ゲート−パッド連結部1」は,極
めて小さく,形式的にも実質的にも外部端子との接続に寄与して
いないから,「表面実装部品を搭載するための取付け及び接続に
用いる導体パターン」である「パッド」(前記(ア)b(a))が設
けられている部分ということはできず,本件発明1の「パッド
部」に該当しない。
すなわち,乙11(「COF出力用高精細対応異方導電フィル
ムアニソルムAC−4713」と題する論文)には,液晶表示
モジュールと外部端子とは,一般的に,異方導電フィルムを利用
して行われ,「異方導電フィルム(アニソルム)は,接着剤中
に,金めっきプラスチック粒子やニッケル粒子などの導電粒子を
均一に分散させたフィルム」であり,「導電粒子」によって液晶
表示モジュールの電極と外部端子との間の電気的接続を行う機能
と,接着剤によって電極間を接着しさらに隣接電極間の絶縁性を
保持する機能とを同時に発現すること(25頁左欄1行∼7
行),異方導電フィルムによる電気的接続は,接着剤中に分散し
た導電粒子によるものであるため,接続面積が小さいと導通不良
が発生すること(26頁の図2),標準的な異方導電フィルムの
導電粒子径は4μm,粒子密度は5,300個/mmであり,こ2
の異方導電フィルムの最小接続面積は15,000μmであるこ2
と(26頁左欄10行∼13行)が開示されている。
しかるに,原告主張の「ゲート−パッド連結部1」は,別紙写
真1に示すように,接続面積は赤色部分で僅か45μm,青色部2
分で143μmと極めて小さく,標準的な異方導電フィルムの最2
小接続面積(15,000μm)に比べて100分の1以下にす2
ぎないから,導電粒子による電気的接続は全く期待できない。
したがって,原告の主張する「ゲート−パッド連結部1」は,
外部端子と接続される部分ではないから,本件発明1の「パッド
部」に該当しない。
(b)また,イ号液晶モジュールでは,原告主張の「ゲート−パッ
ド連結部2」において外部端子と接続されるが,「ゲート−パッ
ド連結部2」には最上層として透明導電膜(k)が形成され,最
上層の透明導電膜(k)が外部端子と接続されており,イ号液晶
モジュールの「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム
合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)は,外部端子と直接に
連結されていないから,本件発明1の「パッド電極」ではない。
加えて,本件発明1の第3金属膜の材質にはアルミニウムが含
まれないので,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウ
ム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)は,本件発明1の「
第3金属膜」に該当しない。
本件発明1の第3金属膜の材質にはアルミニウムが含まれない
とする理由は,①請求項1の記載によれば,TFT部のソース電
極及びドレイン電極及びパッド部のパッド電極は,第3金属膜に
よって形成され,ドレイン電極は第1画素電極パターンと接続さ
れ,パッド電極は第2画素電極パターンと接続されていること,
②本件明細書には,画素電極とアルミニウム膜との間の接触抵抗
を減らすために,ゲートパッドを構成するアルミニウム膜又はア
ルミニウム合金膜(第2金属膜)を蝕刻して第1金属膜を露出さ
せ,ゲートパッドの第1金属膜と第2画素電極パターンとを接触
させている(段落【0029】)との記載があり,アルミニウム
膜又はアルミニウム合金膜と第2画素電極パターンとを直接接触
させると,接触抵抗が増加することが開示されているが,他方
で,第3金属膜として「Crのような耐火性金属」(段落【00
27】)及び「Cr,TiまたはMoのような耐火性金属」(段
落【0034】)と記載されているだけであり,第3金属膜の材
質として他の金属を選択することができる旨の記載はないこと,
③本件発明1では,ゲートパッドではなく,外部接続端子と直接
に連結される「パッド電極」を設けて,第2画素電極パターンに
よってゲートパッドと連結させて,外部接続端子と電気的に接続
させていること,上記①ないし③に照らすと,本件発明1の第3
金属膜は,第3金属膜にアルミニウムが含まれるとすると,アル
ミニウムとITO(第1画素電極パターン,第2画素電極パター
ン)とが直接接触してしまい,本件明細書に記載された問題点が
生じ,「アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜の蝕刻量を減ら
す」ために「パッド電極」を設ける技術的意味もなくなるからで
ある。
したがって,原告主張の「ゲート−パッド連結部2」は,本件
発明1の「第3金属膜からなるパッド電極」を具備しておらず,
本件発明1の「パッド部」に該当しない。
(c)以上のとおり,原告主張のイ号液晶モジュールの「ゲート−
パッド連結部1」及び「ゲート−パッド連結部2」は,本件発明
1の「パッド部」に該当せず,また,イ号液晶モジュールは,本
件発明1の「第3金属膜からなるパッド電極」を具備していない
から,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1の構成要件
Dを充足しない。同様の理由により,イ号液晶モジュールの製造
方法は,本件発明2の構成要件M及び本件発明3の構成要件Tを
充足しない。
イまとめ
以上のとおり,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1ないし
3の技術的範囲に属さないから,被告によるイ号液晶テレビの製造,販
売の申出及び販売が本件特許権の侵害に当たる旨の原告の主張は,理由
がない。
2争点2(本件特許権に基づく権利行使の制限の成否)
(1)被告の主張
本件特許には,以下のとおり無効理由があり,特許無効審判により無効
とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,
原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない。
ア無効理由1(新規性の欠如)
本件発明1ないし3は,以下のとおり,本件原出願の願書に最初に添
付した明細書又は図面(以下,これらを併せて「本件原出願当初明細
書」という。)に記載されたものではなく,本件出願は,平成18年法
律第55号による改正前の特許法44条1項(以下,単に「特許法44
条1項」という。)の規定する分割要件を満たさないから,本件出願の
出願日は,本件原出願の時に遡及せず,現実の出願日である平成17年
12月1日となるところ,本件発明1ないし3は,本件出願の上記出願
日前に頒布された刊行物である乙1(本件原出願の公開特許公報である
特開平9−189924号公報)に記載された発明(以下「乙1記載発
明」という。)と同一の発明を含むものであるから,本件特許には,特
許法29条1項3号に違反する無効理由(同法123条1項2号)があ
る。
(ア)本件発明1ないし3は,いずれも,第1金属膜及び第2金属膜を
パターニングして「ゲートパッド」を形成する工程(本件発明1の構
成要件A,本件発明2の構成要件J及び本件発明3の構成要件
Q),「ゲートパッド」の一部を露出する工程(本件発明1の構成要
件E,本件発明2の構成要件N及び本件発明3の構成要件U),第2
画素電極パターンによってゲートパッドとパッド電極とを連結する工
程(本件発明1の構成要件F,本件発明2の構成要件O及び本件発明
3の構成要件V)を有しているところ,上記露出される「ゲートパッ
ド」の部分及び第2画素電極パターンと接続される「ゲートパッド」
の部分について,何ら限定がないため,本件発明1ないし3には,「
ゲートパッドの第2金属膜を蝕刻しないで,ゲートパッドの上層であ
る第2金属膜と第2画素電極パターンとが接触する構造」が含まれる
ことは明らかである。
(イ)a本件原出願当初明細書(乙1)には,第3金属膜からなる「パ
ッド電極」(41c)を具備する液晶表示装置の製造方法の記載が
ある(請求項1,段落【0012】,【0013】,【0021】
ないし【0024】,【0027】ないし【0029】,【003
6】,【0037】,図6ないし12)。
他方で,本件原出願当初明細書には,「パッド電極」を形成する
目的及び効果についての記載はない。
b本件原出願の審査の過程においては,次のような経過がある。
原告は,本件原出願につき,平成16年3月4日付けで,「パッ
ド電極」そのものの存在意義が不明であって,本件原出願当初明細
書の発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項に規定する要件を
満たしていない旨の拒絶理由通知を受けたため,同年9月8日付け
意見書(乙5)を提出した。
乙5には,先に提出した同年2月6日付け手続補正書(方式)(
乙3)における「パッド電極は第2画素電極パターンを通じて外部
回路に接続されることになります。」との主張を撤回する旨の記載
とともに,「パッド電極は正しくは,例えば図12の右側へさらに
延伸形成されることでACF(AnisotropicConductiveFilm)等の
外部接続端子と直接に連結されるものであり,外部回路からパッド
電極に印加される外部信号は,第2画素電極パターンを経てゲート
パッドに伝達されるのです。このような構成において第2画素電極
パターンは,外部回路と直接に連結されず,ゲートパッドの耐火性
金属からなる第1金属膜に対して小部分でのコンタクトが可能とな
ります。そのため,第2画素電極パターンと第1金属膜とのコンタ
クトを実現するには,第1金属膜上のアルミニウム膜又はアルミニ
ウム合金膜からなる第2金属膜において小部分を蝕刻すればよいこ
ととなり,当該蝕刻量の減少という効果がもたらされるので
す。」(乙5の1頁31行∼39行)との記載がある。
乙5の上記記載によれば,原告は,本件原出願の審査段階で,本
件原出願当初明細書の「パッド電極」が「外部接続端子と直接に連
結されるもの」であり,パッド電極を形成することによって,「ア
ルミニウム膜又はアルミニウム合金膜の蝕刻量を減らす」という技
術的意義を有すると主張していたことは明らかである。
c上記aの本件原出願当初明細書の記載及び上記bの本件原出願の
審査経過によれば,本件原出願当初明細書には,複雑であり,生産
性の減少及び製造コストの上昇の原因となった陽極酸化工程を行う
ことなく,アルミニウムのヒロックを防止して液晶表示装置を製造
するために,アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜(第2金属
膜)の下部に耐火性金属膜(第1金属膜)を形成し,さらに後続工
程で形成される画素電極とアルミニウム膜との間の接触抵抗を減ら
すために,パッド部で画素電極を形成する前に,ゲートパッドのア
ルミニウム膜又はアルミニウム合金膜(第2金属膜)を蝕刻する構
造を前提として,ゲートパッドを構成するアルミニウム膜又はアル
ミニウム合金膜(第2金属膜)の蝕刻量を減らすため,外部接続端
子と直接に連結されるパッド電極を形成し,ゲートパッドとパッド
電極とを第2画素電極パターンで連結する発明が開示されている。
つまり,本件原出願当初明細書記載の液晶表示装置の製造方法にお
いては,ゲートパッドを構成するアルミニウム膜又はアルミニウム
合金膜(第2金属膜)を蝕刻する工程を必要不可欠なものとし,第
2画素電極パターンは必ずゲートパッドの第1金属膜と接触しなけ
ればならない。
一方で,本件原出願当初明細書には,ゲートパッドの第2金属膜
を蝕刻しない構成及びゲートパッドの第2金属膜と第2画素電極パ
ターンとが接触する構成について一切開示がない。
(ウ)前記(ア)のとおり,本件発明1ないし3においては,「ゲートパ
ッドの第2金属膜を蝕刻しないで,ゲートパッドの上層である第2金
属膜と第2画素電極パターンとが接触する構造」が含まれるが,前記(
イ)のとおり,本件原出願当初明細書(乙1)には,ゲートパッドの第
2金属膜を蝕刻しない構成及びゲートパッドの第2金属膜と第2画素
電極パターンとが接触する構成は開示されていないのであるから,本
件発明1ないし3は,本件原出願当初明細書に記載されたものではな
い。
また,本件発明2,3は,「ゲートパッド」を形成する第1金属膜
及び第2金属膜の材質について何ら限定がないため,本件発明2,3
においては,第1金属膜及び第2金属膜として,あらゆる種類の金属
膜の組合せを選択することができることになる。しかし,本件原出願
当初明細書記載の液晶表示装置の製造方法では,ゲートパッドの第2
金属膜は,アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜であることが必須
であるから,アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜以外の金属膜を
第2金属膜とすることは本件原出願当初明細書に記載されたものでは
ない。
したがって,本件発明1ないし3は,本件原出願当初明細書に記載
されたものではなく,本件出願は,本件原出願との関係で,特許法4
4条1項の分割要件を満たさないから,本件出願の出願日は,本件原
出願の時に遡及せず,現実の出願日である平成17年12月1日とな
る。
(エ)前記(イ)のとおり,本件原出願の公開特許公報である特開平9−
189924号公報(乙1)には,本件発明1ないし3の構成要件の
全てに加えて,ゲートパッドを構成する第2金属膜を蝕刻して第1金
属膜を露出させる段階を有する発明が開示されている。
そして,本件発明1ないし3は,前記(ア)のとおり,露出される「
ゲートパッド」の部分及び第2画素電極パターンと接続される「ゲー
トパッド」の部分について,何ら限定がないため,乙1記載のゲート
パッドの第1金属膜と第2画素電極パターンとが接触する構造も含む
ものである。
したがって,本件発明1ないし3は,乙1記載発明と同一の発明を
含むものであるから,特許法29条1項3号に該当し,新規性がな
い。
イ無効理由2(サポート要件違反,実施可能要件違反)
本件発明1ないし3の特許請求の範囲(請求項1,11,26)の記
載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したもの
であること」(平成14年法律第24号による改正前の特許法36条6
項1号(以下,単に「特許法36条6項1号」という。))の要件(い
わゆるサポート要件)に適合せず,また,本件明細書の「発明の詳細な
説明」は,当業者が「その実施をすることができる程度に明確かつ十分
に記載」されていないため,本件明細書は,平成14年法律第24号に
よる改正前の特許法36条4項(以下,単に「特許法36条4項」とい
う。)に規定する要件(いわゆる実施可能要件)を満たしていないか
ら,本件特許は,特許法36条4項,6項1号の要件を満たしていない
特許出願に対してされたとの無効理由(平成14年法律第24号附則2
条1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前
の特許法123条1項4号)がある。
(ア)前記ア(ア)のとおり,本件発明1ないし3の特許請求の範囲(請
求項1,11,26)には,露出される「ゲートパッド」の部分及び
第2画素電極パターンと接続される「ゲートパッド」の部分につい
て,何ら限定がないため,本件発明1ないし3には,「ゲートパッド
の第2金属膜を蝕刻しないで,ゲートパッドの上層である第2金属膜
と第2画素電極パターンとが接触する構造」が含まれる。
しかし,本件明細書(甲3)の発明の詳細な説明には,ゲートパッ
ドの第2金属膜を蝕刻しないで,ゲートパッドの上層である第2金属
膜と第2画素電極パターンとが接触する構成が開示されていないか
ら,本件発明1ないし3の特許請求の範囲(請求項1,11,26)
の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載し
たものであること」の要件(特許法36条6項1号)に適合しない。
また,本件発明2,3の特許請求の範囲(請求項11,26)に
は,第1金属膜及び第2金属膜の材質について,何ら限定がないた
め,本件発明2,3においては,第1金属膜及び第2金属膜として,
あらゆる種類の金属膜の組合せを選択することができる。しかし,本
件明細書の発明の詳細な説明には,第1金属膜として,Cr,Ta,
Mo及びTiよりなるグループから選択された何れか1つを使用し,
第2金属膜として,アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用する
組合せしか開示されていないから(段落【0023】),本件発明
2,3の特許請求の範囲の記載は,「特許を受けようとする発明が発
明の詳細な説明に記載したものであること」の要件(特許法36条6
項1号)に適合しない。
(イ)本件明細書には,本件発明1ないし3の「パッド電極」を形成す
る目的及び効果については何も記載されていないため,当業者は,本
件明細書から「パッド電極」の技術上の意義を理解することができな
い。
したがって,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者がその実施
をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないので,特
許法36条4項の要件に適合しない。
ウ無効理由3(進歩性の欠如)
本件発明1ないし3は,本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行
物である特開平5−165059号公報(乙6)に記載された発明(以
下「乙6記載発明」という。),特開平7−263700号公報(乙
7)に記載された発明,特開昭62−252171号公報(乙8)に記
載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することがで
きたものであるから,本件特許には,特許法29条2項に違反する無効
理由(同法123条1項2号)がある。
(ア)本件発明1の進歩性欠如
a本件発明1と乙6記載発明との対比
特開平5−165059号公報(乙6)の段落【0032】,【
0044】ないし【0050】,【0057】ないし【0060】
及び図面を総合すると,乙6記載の「薄膜トランジスタ部分」,「
ゲートライン端子部GLa」,「ゲート用金属膜11」,「下層膜
11」,「ゲート絶縁膜12」,「i型半導体層13」,「n型半
導体層14」,「ソース,ドレイン用金属膜16」,「保護絶縁膜
17」,「画素電極20」及び「上層膜」,「アクティブマトリッ
クス液晶表示素子に用いるTFTパネル」は,本件発明1の「TF
T部」,「ゲート−パッド連結部」,「第1金属膜及び第2金属
膜」,「ゲートパッド」,「絶縁膜」,「第1非晶質シリコン
膜」,「第2非晶質シリコン膜」,「第3金属膜」,「保護
膜」,「第1画素電極パターン」及び「第2画素電極パター
ン」,「液晶表示装置」にそれぞれ相当するというべきである。
また,乙6の段落【0046】及び【0047】記載のとおり,
乙6では,工程2において,ゲート絶縁膜12と,i型半導体層1
3と,n型半導体層14と,コンタクト層15とを順次成膜し,工
程3において,n型半導体層14とi型半導体層13とをトランジ
スタ素子領域の外形にパターニングするので,パターニングされた
i型半導体層13及びn型半導体層14は,ゲート絶縁膜12の上
に形成されており,i型半導体層13の全面にn型半導体層14が
形成され,n型半導体層14全体の下部表面がi型半導体層13の
表面と当接していることは自明であり,このことは,乙6の図1(
b)からも確認できる。そして,ソース,ドレイン電極S,D間の
n型半導体層14は,酸化処理によって酸化絶縁層14aとなり,
酸化絶縁層14aによって,n型半導体層14をソース側とドレイ
ン側とに電気的に分離するのであるから,ソース,ドレイン電極
S,D間のn型半導体層14は酸化処理により除去されている。
以上によれば,本件発明1と乙6記載発明との間には,次のとお
りの一致点及び相違点がある。
(一致点)
「基板のTFT部(薄膜トランジスタ部分)及びゲート−パッド連
結部(ゲートライン端子部GLa)のそれぞれに金属膜(ゲート用
金属膜11)を形成し,金属膜を第1フォトリソグラフィー工程に
よってパターニングし,ゲート電極及びゲートパッド(下層膜1
1)を基板上に形成する段階と,ゲート電極及びゲートパッドが形
成された基板の全面に絶縁膜を形成する段階と,第2フォトリソグ
ラフィー工程によって,第1非晶質シリコン膜(i型半導体層1
3)パターン及びドーピングされた第2非晶質シリコン膜(n型半
導体層14)パターンをTFT部の絶縁膜上に形成する段階であっ
て,第2非晶質シリコン膜パターンが第1非晶質シリコン膜パター
ンの全面に形成されて第2非晶質シリコン膜全体の下部表面が第1
非晶質シリコン膜の表面と当接するように,第1非晶質シリコン膜
パターン及び第2非晶質シリコン膜パターンを形成する段階と,第
3フォトリソグラフィー工程によって,第3金属膜(ソース,ドレ
イン用金属膜16)よりなるソース電極及びドレイン電極をTFT
部上に形成し,ソース電極及びドレイン電極間に位置する第2非晶
質シリコン膜を除去する段階と,ドレイン電極の一部及びゲートパ
ッドの一部が露出されるように保護膜(保護絶縁膜17)を形成
し,ゲートパッドの一部上の絶縁膜を第4フォトリソグラフィー工
程によって除去する段階と,第5フォトリソグラフィー工程によっ
て,ドレイン電極と連結される第1画素電極パターン(画素電極2
0)と,ゲートパッドと連結される第2画素電極パターン(上層
膜)とを基板上に形成する段階とを含むことを特徴とする液晶表示
装置(アクティブマトリックス液晶表示素子に用いるTFTパネ
ル)の製造方法」である点。
(相違点1)
本件発明1では,Cr,Mo,Ta及びTiを含むグループのう
ち選択される何れか1つの第1金属膜及びアルミニウム又はアルミ
ニウム合金膜の第2金属膜を連続して蒸着し,パターニングしてゲ
ート電極及びゲートパッドを形成するのに対し(構成要件A,G及
びH),乙6では,ゲート用金属膜11の材質として「Alまたは
Al合金等」(段落【0037】)としか記載されていない点。
(相違点2)
本件発明1では,第3金属膜よりなるパッド電極をパッド部の絶
縁膜上に形成し,パッド電極の一部が露出されるように保護膜を形
成して,第2画素電極パターンによってゲートパッド及びパッド電
極とが連結されるのに対し,乙6では,パッド電極を形成すること
が開示されていないため,パッド電極を露出させるように保護絶縁
膜17が形成されず,上層膜がパッド電極と連結されない点。
b相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性
(a)乙9(1994年3月1日発行の書籍「ディスプレイ技術シ
リーズカラー液晶ディスプレイ」)には,「ゲート電極材料に
はCrとTa系金属が使われることが多い。・・・ただTaは比
抵抗が大きいため,LCDが大きくなるほどゲート配線遅延によ
って画質が低下する。これを改善するため,AlやCuなどをT
a配線に積層して形成し低抵抗化する研究が進んでいる。」(1
57頁16行∼21行)との記載がある。
また,特開平7−263700号公報(乙7)には,「ゲート
端子部では,透明基板1上にTiとAl膜の2層の導電膜からな
るゲート端子4・・・が形成されている」(段落【0004
】),「・・・ゲート電極22はTi膜からなり,他はすべてT
i膜及びこのTi膜を被覆するAl膜の2層の導電膜からな
る。」(段落【0020】)との記載があり,また,ソース/ド
レイン電極に関し,「透明導電膜とコンタクト性のよいTi,T
a,Mo等の高融点金属膜をAlの下に形成すること」が開示さ
れている(段落【0044】,【0046】)。
乙7,9の上記記載によれば,液晶表示装置の技術分野におい
て,「ゲート電極材料として,第1の金属及び第2の金属を積層
させて形成すること」及び「配線材料として,Ti等の高融点金
属の上にAl膜又はAl合金を使用すること」は,本件出願の優
先権主張日当時,周知であったというべきである。
(b)また,乙7には,「液晶表示装置の液晶駆動に用いられる薄
膜トランジスタの製造方法において,透明導電膜とアルミニウム
とを直接接触させると接触抵抗がばらつくので,この問題を解決
するために,Ti,Ta,Mo等の高融点金属膜の上にアルミニ
ウムを設け,透明導電膜と接続する前に,最上層のAl膜を除去
し,Al膜の下地の高融点金属膜を露出させ,高融点金属膜と透
明導電膜とを接触させ,接触抵抗のばらつきを抑制し,接触抵抗
を小さく保持すること」が開示されている(段落【0001】,
【0004】,【0008】,【0010】,【0011】,【
0014】,【0020】,【0046】)。
そして,当業者であれば,乙6記載発明において,乙7の上記
開示事項及び前記(a)の周知技術に基づいて,接触抵抗のばらつ
きを抑制し,接触抵抗を小さく保持するために,ゲート用金属膜
11としてTi,Ta,Mo等の高融点金属膜の上にAl膜また
はAl合金の第2の金属を積層させて形成し,それらをフォトリ
ソグラフィー法によりパターニングしてゲート電極G及び下層膜
11をそれぞれ形成すること(相違点1に係る本件発明1の構
成)は容易に想到することができたものである。
c相違点2に係る本件発明1の構成の容易想到性
特開昭62−252171号公報(乙8)には,「液晶表示装置
用TFT基板の製造方法において,ゲート外部取り出し端子113
をゲート絶縁膜5の上に形成し,層間絶縁膜6を堆積後,ゲート外
部取り出し端子113の一部が露出されるように層間絶縁膜6にコ
ンタクト開孔を設け,ゲート電極配線23の一部が露出されるよう
に層間絶縁膜6及びゲート絶縁膜5にコンタクト開孔を設け,透明
導電膜より成る第2導電膜を堆積後,ゲート外部取り出し端子11
3とゲート電極配線23とを連結する第2結合配線133を形成す
ること」が開示されている(3頁左上欄12行∼13行,左下欄1
行∼5行,左下欄15行∼右下欄7行,第2図(d)等)。
そして,乙6及び乙8は,いずれも液晶表示装置の製造方法に関
するものであり,同一の技術分野に属するものであるところ,液晶
表示装置の製造方法において,各膜のパターン形状を変更すること
は,マスクを変更することによって容易に実施できるものであり,
公知のパターンを採用することは当業者が適宜なし得る設計変更に
すぎない。
また,乙6は,データライン端子部DLaにおいて,ソース,ド
レイン用金属膜16(本件発明1の第3金属膜)をパターニングし
て,ゲート絶縁膜12上にデータライン端子の下層膜16を形成し
ており,乙6には,本件発明1の第3金属膜を使用した「パッド電
極」の示唆が存在する。
そうすると,当業者であれば,乙6記載発明において,乙8で開
示された構成を採用することにより,ソース,ドレイン用金属膜1
6をパターニングして,ゲート絶縁膜12上に,ゲート外部取り出
し端子(パッド電極)を形成し,保護絶縁膜17を成膜した後,ゲ
ート外部取り出し端子の一部が露出されるように保護絶縁膜17に
コンタクト開孔を設け,ゲートライン端子部GLaの下層膜11の
一部が露出されるように保護絶縁膜17及びゲート絶縁膜12にコ
ンタクト開孔を設け,透明導電膜18をパターニングして,ゲート
ライン端子部GLaの下層膜11とゲート外部取り出し端子とを連
結させること(相違点2に係る本件発明1の構成)は容易に想到す
ることができたものである。
d小括
以上によれば,本件発明1は,乙6記載発明と周知技術及び乙
7,8に基づいて,当業者が容易に想到することができたから,進
歩性がない。
(イ)本件発明2の進歩性欠如
a本件発明2と乙6記載発明との対比
本件発明2と乙6記載発明との間には,次のとおりの一致点及び
相違点がある。
(一致点)
「基板のTFT部(薄膜トランジスタ部分)及びゲート−パッド連
結部(ゲートライン端子部GLa)のそれぞれに金属膜(ゲート用
金属膜11)を形成し,金属膜をパターニングし,ゲート電極及び
ゲートパッド(下層膜11)を基板上に形成する段階と,ゲート電
極及びゲートパッドが形成された基板の表面に絶縁膜を形成する段
階と,第1非晶質シリコン膜(i型半導体層13)パターン及びド
ーピングされた第2非晶質シリコン膜(n型半導体層14)パター
ンをTFT部の絶縁膜上に形成する段階であって,第2非晶質シリ
コン膜パターンが第1非晶質シリコン膜パターンの全面に形成され
て第2非晶質シリコン膜全体の下部表面が第1非晶質シリコン膜の
表面と当接するように,第1非晶質シリコン膜パターン及び第2非
晶質シリコン膜パターンを形成する段階と,第3金属膜(ソース,
ドレイン用金属膜16)よりなるソース電極及びドレイン電極をT
FT部上に形成し,ソース電極及びドレイン電極間に位置する第2
非晶質シリコン膜を除去する段階と,ドレイン電極の端部を露出さ
せる第1コンタクトホール,ゲートパッドの一部を露出させる第2
コンタクトホールを有する保護膜(保護絶縁膜17)パターンであ
って,ソース電極及びドレイン電極間に位置する第1非晶質シリコ
ンパターンの上面と接触する保護膜パターンを形成し,同時に第2
コンタクトホールの下部の絶縁膜をゲートパッドの端部が露出され
るように除去する段階と,第1コンタクトホールを通じてドレイン
電極と電気的に連結される第1画素電極パターン(画素電極20)
と,第2コンタクトホールを通じてゲートパッドと電気的に連結さ
れる第2画素電極パターン(上層膜)とを基板上に形成する段階と
を含むことを特徴とする液晶表示装置(アクティブマトリックス液
晶表示素子に用いるTFTパネル)の製造方法」である点。
(相違点イ)
本件発明2では,構成要件Jにおいて,第1金属膜及び第2金属
膜を連続して蒸着し,パターニングしてゲート電極及びゲートパッ
ドを形成するのに対し,乙6では,ゲート用金属膜11の材質とし
て「AlまたはAl合金等」(段落【0037】)としか記載され
ていない点。
(相違点ロ)
本件発明2では,第3金属膜よりなるパッド電極をパッド部の絶
縁膜上に形成し,保護膜にパッド電極の一部を露出させる第3コン
タクトホールが形成され,第2画素電極パターンによってゲートパ
ッド及びパッド電極とが連結されるのに対し,乙6では,パッド電
極を形成することが開示されていないため,パッド電極を露出させ
るように保護絶縁膜17が形成されず,第2画素電極パターンがパ
ッド電極と連結されない点。
b相違点イに係る本件発明2の構成の容易想到性
前記(ア)b(a)のとおり,本件出願の優先権主張日当時,液晶表
示装置の技術分野において,ゲート電極材料として,第1金属膜及
び第2金属膜を順番に積層させて形成することは周知であった。
したがって,当業者であれば,乙6記載発明において,上記周知
技術を適用して,ゲート用金属膜11として,第1の金属の上に第
2の金属を積層させて形成し,それらをフォトリソグラフィー法に
よりパターニングしてゲート電極G及び下層膜11をそれぞれ形成
すること(相違点イに係る本件発明2の構成)は容易に想到するこ
とができたものである。
c相違点ロに係る本件発明2の構成の容易想到性
相違点イは,乙6記載発明と本件発明1との相違点2と同じ内容
であるところ,前記(ア)cと同様の理由により,当業者であれば,
相違点ロに係る本件発明2の構成は,乙6及び乙8から容易に想到
することができたものである。
d小括
以上によれば,本件発明2は,乙6記載発明と周知技術及び乙8
に基づいて,当業者が容易に想到することができたから,進歩性が
ない。
(ウ)本件発明3の進歩性欠如
a本件発明3と乙6記載発明との対比
本件発明3と乙6記載発明との間には,次のとおりの一致点及び
相違点がある。
(一致点)
「基板のTFT部(薄膜トランジスタ部分)及びゲート−パッド連
結部(ゲートライン端子部GLa)のそれぞれに金属膜を形成し,
基板上にゲート電極及びゲートパッド(下層膜11)を形成する段
階と,ゲート電極及びゲートパッドが形成された基板の表面に絶縁
膜を形成する段階と,TFT部の絶縁膜上に,第1非晶質シリコン
膜(i型半導体層13)パターン及びその上部に形成されるドーピ
ングされた第2非晶質シリコン膜(n型半導体層14)パターンよ
りなり,第2非晶質シリコン膜パターンの一部は第1非晶質シリコ
ン膜パターンと接触する半導体膜パターンを形成する段階と,第3
金属膜(ソース,ドレイン用金属膜16)よりなるソース電極及び
ドレイン電極をTFT部上に形成し,ソース電極及びドレイン電極
間に位置する第2非晶質シリコン膜を除去する段階と,ドレイン電
極の端部を露出させる第1コンタクトホール及びゲートパッドの一
部を露出させる第2コンタクトホールを有する保護膜(保護絶縁膜
17)パターンを形成し,同時に第2コンタクトホールの下部の絶
縁膜をゲートパッドの端部が露出されるように除去する段階と,第
1コンタクトホールを通じてドレイン電極と電気的に連結される第
1画素電極パターン(画素電極20)と,第2コンタクトホールを
通じてゲートパッドと電気的に連結される第2画素電極パターン(
上層膜)とを形成する段階とを含むことを特徴とする液晶表示装
置(アクティブマトリックス液晶表示素子に用いるTFTパネル)
の製造方法」である点。
(相違点A)
本件発明3では,第1金属膜及び第2金属膜を連続して蒸着し,
金属膜の側壁が基板に対して傾くようにパターニングしてゲート電
極及びゲートパッドを形成するのに対し(構成要件Q),乙6で
は,ゲート用金属膜11の材質として「AlまたはAl合金等」(
段落【0037】)としか記載されていない点。
(相違点B)
本件発明3では,第3金属膜よりなるパッド電極をパッド部の絶
縁膜上に形成し,保護膜にパッド電極の一部を露出させる第3コン
タクトホールが形成され,第2画素電極パターンによってゲートパ
ッド及びパッド電極とが連結されるのに対し,乙6では,パッド電
極を形成することが開示されていないため,パッド電極を露出させ
るように保護絶縁膜17が形成されず,第2画素電極パターンがパ
ッド電極と連結されない点。
b相違点Aに係る本件発明3の構成の容易想到性
前記(ア)b(a)のとおり,本件出願の優先権主張日当時,液晶表
示装置の技術分野において,ゲート電極材料として,第1金属膜及
び第2金属膜を順番に積層させて形成することは周知であった。
また,液晶表示装置の技術分野において,ゲート電極の側壁が基
板に対して傾くようにパターニングすることも周知であった(例え
ば,乙9の図7.11)。
したがって,当業者であれば,乙6記載発明において,上記各周
知技術を適用して,ゲート用金属膜11として,第1の金属の上に
第2の金属を積層させて形成し,それらをフォトリソグラフィー法
により側壁が基板に対して傾くようにパターニングしてゲート電極
G及び下層膜11をそれぞれ形成すること(相違点Aに係る本件発
明3の構成)は容易に想到することができたものである。
c相違点Bに係る本件発明3の構成の容易想到性
相違点Bは,乙6記載発明と本件発明1との相違点2と同じ内容
であるところ,前記(ア)cと同様の理由により,当業者であれば,
相違点Bに係る本件発明3の構成は,乙6及び乙8から容易に想到
することができたものである。
d小括
以上によれば,本件発明3は,乙6記載発明と周知技術及び乙8
に基づいて,当業者が容易に想到することができたから,進歩性が
ない。
(2)原告の反論
ア無効理由1(新規性の欠如)に対し
(ア)本件原出願当初明細書(乙1)には,発明の目的について「・・
写真工程の数を減らして製造費用の減少及び生産性を向上させうる液
晶表示装置の製造方法を提供することにある。」(段落【0013
】),発明の効果について「前述したように,本発明の液晶表示装置
の製造方法は二重ゲート電極を使用すると共に少なくとも5回の写真
蝕刻工程を適用して少なくとも7回の写真蝕刻工程が適用される従来
の技術に比べて製造コストを大幅に低減し,製造収率を向上させう
る。」(段落【0036】),「また,ゲート電極として耐火性金属
膜とその上部に形成されるアルミニウム膜の二重膜で形成することに
より,耐火性金属膜のストレス弛緩作用によりアルミニウム膜のヒロ
ック成長を抑制することができる。また,図16に示されたように,
パッド部で画素電極を形成する前にアルミニウム膜またはアルミニウ
ム合金膜を蝕刻することにより,後続工程で形成される画素電極とア
ルミニウム膜との間の接触抵抗を減らすことができる。」(段落【0
037】)との記載がある。
上記記載によれば,本件原出願当初明細書には,「少なくとも5回
の写真蝕刻工程を適用して少なくとも7回の写真蝕刻工程が適用され
る従来の技術に比べて製造コストを大幅に低減し,製造収率を向上さ
せうる」発明,「耐火性金属膜のストレス弛緩作用によりアルミニウ
ム膜のヒロック成長を抑制することができる」発明,「パッド部で画
素電極を形成する前にアルミニウム膜またはアルミニウム合金膜を蝕
刻することにより,後続工程で形成される画素電極とアルミニウム膜
との間の接触抵抗を減らすことができる」発明の記載がある。
しかも,本件原出願当初明細書には,「本発明は前記実施例に限定
されなく,本発明の技術的思想内で当分野の通常の知識を有する者に
より多くの変形が可能であることは明白である。」(段落【0038
】)との記載があることに照らすならば,特許請求の範囲(請求項
1)において記載されているにすぎない「第2金属膜を蝕刻して」な
る限定を必須の要件として,あるいは,製造費用の減少や生産性の向
上と直接的に結びつくものではない「コンタクト抵抗を減少させう
る」(段落【0028】)ための,第2金属膜を蝕刻し,第1金属膜
を露出させるとの構成を絶対不可避のものとして,本件原出願当初明
細書に記載された発明を観念しなければならない理由はない。
また,被告が指摘する本件原出願の審査経過において原告が主張し
た事項は,本件原出願の特許請求の範囲に記載された発明に関するも
のであり,これに基づいて本件原出願当初明細書に記載された発明を
認定することはできない。
そして,本件原出願当初明細書には,本件発明1の構成要件Aない
しI,本件発明2の構成要件JないしP,本件発明3の構成要件Qな
いしWがすべて記載されている。
したがって,本件出願は,本件原出願との関係で,特許法44条1
項の分割要件を満たしていることは明らかである。
(イ)以上によれば,本件出願が特許法44条1項の分割要件を満たし
ていないことを前提に,本件発明1ないし3が新規性の欠如により無
効であるとの被告の主張は,その前提を欠き,失当である。
イ無効理由2(サポート要件違反,実施可能要件違反)に対し
(ア)本件明細書(甲3)には,「本発明の目的は写真工程の数を減ら
して製造費用の減少及び生産性を向上させうる液晶表示装置の製造方
法を提供することにある。」(段落【0014】),「前述したよう
に,本発明の液晶表示装置の製造方法は二重ゲート電極を使用すると
共に少なくとも5回の写真蝕刻工程を適用して少なくとも7回の写真
蝕刻工程が適用される従来の技術に比べて製造コストを大幅に低減
し,製造収率を向上させうる。」(段落【0037】),「また,ゲ
ート電極として耐火性金属膜とその上部に形成されるアルミニウム膜
の二重膜で形成することにより,耐火性金属膜のストレス弛緩作用に
よりアルミニウム膜のヒロック成長を抑制することができる。また,
図16に示されたように,パッド部で画素電極を形成する前にアルミ
ニウム膜またはアルミニウム合金膜を蝕刻することにより,後続工程
で形成される画素電極とアルミニウム膜との間の接触抵抗を減らすこ
とができる。」(段落【0038】)との記載がある。
上記記載によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,「少なく
とも5回の写真蝕刻工程を適用して少なくとも7回の写真蝕刻工程が
適用される従来の技術に比べて製造コストを大幅に低減し,製造収率
を向上させうる」発明,「耐火性金属膜のストレス弛緩作用によりア
ルミニウム膜のヒロック成長を抑制することができる」発明,「パッ
ド部で画素電極を形成する前にアルミニウム膜またはアルミニウム合
金膜を蝕刻することにより,後続工程で形成される画素電極とアルミ
ニウム膜との間の接触抵抗を減らすことができる」発明が開示されて
いる。
そして,本件明細書には,本件発明1の構成要件AないしI,本件
発明2の構成要件JないしP,本件発明3の構成要件QないしWがす
べて記載されている。
また,被告は,本件発明1ないし3の「パッド電極」を形成する目
的及び効果については何も記載されていないため,当業者は,本件明
細書から本件発明1ないし3の「パッド電極」の技術上の意義を理解
することができない旨主張するが,本件発明1ないし3の「パッド電
極」が「外部接続端子」と接続されるものであることは,被告自らも
認めるところであり,上記主張は失当である。
(イ)以上によれば,本件発明1ないし3の特許請求の範囲(請求項1,
11,26)の記載は,特許法36条6項1号に適合せず,また,本件
明細書の「発明の詳細な説明」の記載は,当業者が発明を実施できる程
度に明確かつ十分に記載したものではないため,本件明細書は,特許法
36条4項に適合しない旨の被告の主張は,失当である。
ウ無効理由3(進歩性の欠如)に対し
(ア)本件発明1の進歩性欠如に対し
a被告が主張する本件発明1と乙6記載発明との一致点及び相違点
は,否認する。
乙6のフォトリソグラフィー工程は,本件発明1の「第3フォト
リソグラフィー工程」(構成要件D)に対応付けられる[工程5
](乙6の段落【0049】)では,「n型半導体層14」は除去
されずに後の酸化工程([工程6])のために残される点,パッド
電極部の形成についての考慮が一切なされていない点において,本
件発明1のものとは著しく相違している。
この点に関し被告は,乙6においては,ソース,ドレイン電極
S,D間のn型半導体層14は,酸化処理によって酸化絶縁層14
aとなり,酸化絶縁層14aによって,n型半導体層14をソース
側とドレイン側とに電気的に分離するのであるから,ソース,ドレ
イン電極S,D間の「n型半導体層14」は酸化処理により除去さ
れている旨主張する。しかし,本件発明1(請求項1)の「第3フ
ォトリソグラフィー工程」によって「前記ソース電極及び前記ドレ
イン電極間に位置する第2非晶質シリコン膜を除去する段階」との
記載からは,第2非晶質シリコン膜は「膜」として物理的に除去さ
れるものであると理解するのが自然であり,「膜」として物理的に
除去されていないものを,酸化処理によって実質的に除去されてい
るということはできない。そもそも乙6記載の薄膜トランジスタの
製造方法は,「i型半導体層の上にブロッキング層を設けることな
く,しかもi型半導体層のチャンネル領域にダメージを与えること
なくn型半導体層を電気的に分離して,層間短絡のない薄膜トラン
ジスタを歩留よく製造することができる薄膜トランジスタの製造方
法を提供すること」(段落【0029】)を目的とし,「本発明薄
膜トランジスタの製造方法は,n型半導体層を,そのソース,ドレ
イン電極間の部分を酸化させて絶縁層とすることによってソース側
とドレイン側とに電気的に分離するものであり,この製造方法は,
n型半導体層をエッチングして切離し分離するものではないため,
i型半導体層の上にブロッキング層を設けておかなくても,i型半
導体層のチャンネル領域にダメージを与えることはない。」(【0
065】)という効果を奏するものであって,当該目的を達成する
ためには,[工程5](第3フォトリソグラフィー工程)におい
て「n型半導体層14」を除去せずに残しておくことが不可欠の要
件となる。換言すれば,本件発明1のように,「第3フォトリソグ
ラフィー工程」([工程5])において「前記ソース電極及び前記
ドレイン電極間に位置する第2非晶質シリコン膜を除去する」こと
としてしまうと,「i型半導体層の上にブロッキング層を設けてお
かなくても,i型半導体層のチャンネル領域にダメージを与えるこ
とはない」という効果を奏し得ない結果となる。このように乙6記
載発明と本件発明1とは,その目的,効果が全く異なり,必然的
に,構成も異ならざるを得ない。
b加えて,本件発明1は,TFT部及びゲート−パッド連結部のみ
ならずパッド電極部をも含む領域を,第1ないし第5のフォトリソ
グラフィー工程(5マスクワーク)で作製可能とする発明でもある
から,TFT部及びゲート−パッド連結部の形成プロセスとパッド
電極部の形成プロセスとは相互に関連し合うものであり,これらを
切り離して独立に取り扱うことはそもそも無意味であるところ,乙
6にはパッド電極部についての言及は一切認められない。
この点に関し被告は,パッド電極に関する構造に係る構成(相違
点2に係る本件発明1の構成)は乙8に開示されている旨主張す
る。しかし,乙8に記載されているTFTはトップゲート型のTF
Tであり,本件発明1のものはボトムゲート型(逆スタガー型)の
ものであって,TFT部の形成プロセスそのものが異なるものであ
る。そして,乙8の図2(a)ないし(d),図3(a)ないし(
d)を比較すれば明らかなように,乙8においては,例えば,ゲー
ト電極配線部23はSi半導体層であるTFT部24と同時に形成
されること(#1マスク工程:3頁右上欄17行∼20行),ゲー
ト外部取り出し端子113はゲート電極13と同時に形成されるこ
と(#2マスク工程:3頁左下欄1行∼5行),第2結合配線13
3はソース電極32と同時に形成されること(#4マスク工程:3
頁右下欄2行∼7行)に照らすならば,被告の主張する開示事項は
単なる「形式的開示事項」にすぎない。
また,被告は,乙7には,液晶表示装置の液晶駆動に用いられる
薄膜トランジスタの製造方法において,透明導電膜とアルミニウム
とを直接接触させると接触抵抗がばらつくので,この問題を解決す
るために,Ti,Ta,Mo等の高融点金属膜の上にアルミニウム
を設け,透明導電膜と接続する前に,最上層のAl膜を除去し,A
l膜の下地の高融点金属膜を露出させ,高融点金属膜と透明導電膜
とを接触させ,接触抵抗のばらつきを抑制し,接触抵抗を小さく保
持することが開示されている旨主張する。しかし,乙7の段落【0
020】に「図1(a)に示すように,透明なガラス基板(透明基
板)21上に,ゲート電極22と,ゲート電極22と接続するゲー
トバスライン23と,ゲートバスライン23と接続するゲート端子
24と,補助容量の下部電極25とを形成する。これらのうちゲー
ト電極22はTi膜からなり,他はすべてTi膜及びこのTi膜を
被覆するAl膜の2層の導電膜からなる。」と記載されているよう
に,乙7のTFTのゲート電極はTi膜からなるものであって「二
重ゲート電極」構造のものではなく,また,乙7には,アルミニウ
ム膜のヒロック成長を抑制するために「二重ゲート電極」構造とす
ることが有効である旨の記載もない。
c以上のとおり,本件発明1と乙6記載発明との一致点及び相違点
に関する被告の主張には誤りがあり,このような誤った前提に基づ
いて本件発明1の進歩性の欠如をいう被告の主張は,理由がない。
(イ)本件発明2,3の進歩性欠如に対し
被告は,本件発明2と乙6記載発明との相違点ロ,本件発明3と乙6
記載発明との相違点Bは,本件発明1と乙6記載発明との相違点2と同
じ内容であり,相違点ロに係る本件発明2の構成及び相違点Bに係る本
件発明3の構成は,当業者が乙6及び乙8から容易に想到することがで
きた旨主張するが,相違点2についての被告の主張が失当であること
は,前記(ア)のとおりであるから,本件発明2,3の進歩性の欠如をい
う被告の主張は,いずれも失当である。
第4当裁判所の判断
1争点1(イ号液晶モジュールの製造方法の本件発明1ないし3の技術的範
囲の属否)について
(1)イ号液晶モジュールの構造及び製造方法
アイ号液晶モジュールの構造
証拠(甲4ないし6)及び弁論の全趣旨を総合すれば,イ号液晶モジ
ュールは,次のような構造を有することが認められ,これに反する証拠
はない。
(ア)イ号液晶テレビに搭載されたイ号液晶モジュールは,液晶パネ
ル(以下「イ号液晶パネル」という。)及びバックライトユニット等
が金属ベゼルによって一体化されて構成されている。イ号液晶パネル
の周辺部(端部)には,半導体チップが搭載されたCOF(ChipOnF
ilm)が複数接続されている(甲4の写真3−3,4−1,4−2)。
イ号液晶パネルの上側に設けられたCOFはプリント基板(PCB)
に接続され,当該PCBはイ号液晶テレビ内に設けられた回路基板に
接続されている。
(イ)イ号液晶モジュールは,基板(a)の画素領域に,別紙1(1),(2
)のような,ソース,ドレイン,ゲートにより構成される薄膜トランジ
スタ(TFT),ドレイン電極の一部と透明導電膜が当接するコンタ
クトホールが形成された領域(原告主張の「TFT部」)と,画素領
域外(基板の周辺)の領域に,別紙1(3)のような構造の領域(原告主
張の「ゲート−パッド連結部1」)及び別紙1(4)のような構造の領
域(原告主張の「ゲート−パッド連結部2」)とを有する。
(ウ)イ号液晶モジュールの「TFT部」(薄膜トランジスタ部)で
は,別紙1(1)のように,基板(a)の上に,「チタン」を含む金属
膜(b),「アルミニウム」を含む金属膜(c),「チタン」を含む
金属膜(d)が基板側からこの順番で積層され,パターニングされて
ゲート電極を形成している。
ゲート電極の上には,絶縁膜(e),第1の非晶質シリコン膜(
f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)がこの順番で積層され,第1
の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)がパタ
ーニングされて半導体膜パターン(f,g)を形成している。
そして,パターニングされた第2の非晶質シリコン膜(g)の上
に,「チタン」を含む金属膜(h)と「アルミニウム合金膜」ない
し「アルミニウム膜」(i)がこの順番で積層され,これらの金属
膜(h,i)がパターニングされてソース電極及びドレイン電極を形
成している。上記パターニングされた第2の非晶質シリコン膜(g)
全体の下部表面は,第1の非晶質シリコン膜(f)の表面と当接して
おり,第2の非晶質シリコン膜(g)パターンの一部が,第1の非晶
質シリコン膜(f)パターンと接触している。また,ソース電極とド
レイン電極との間では,第2の非晶質シリコン膜(g)が除去されて
第1の非晶質シリコン膜(f)の表面が露出するチャネル領域が形成
されている。
ソース電極,ドレイン電極,上記チャネル領域及び絶縁膜(e)(
一部)の上には,保護膜(j)が積層され,パターニングされて保護
膜(j)パターンを形成している。この保護膜(j)パターンは,上
記チャネル領域に位置する第1の非晶質シリコン膜(f)パターンの
上面と接触している。
一方で,保護膜(j)の上記パターニングにより,別紙1(2)のよう
に,ドレイン電極の一部を露出させるコンタクトホールが形成されて
いる。
そして,別紙1(2)のように,上記コンタクトホール,ソース電極,
ドレイン電極及び保護膜(j)パターンの上に,ITO(IndiumTin
Oxide)により組成される透明導電膜(k)が積層され,この透明導電
膜(k)は,パターニングされてドレイン電極のうち「チタン」を含
む金属膜(h)と接する画素電極パターンを形成している。なお,ド
レイン電極のうち,「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム
膜」(i)の上には保護膜(j)パターンが形成されており,透明導
電膜(k)とは接していない。
(エ)aイ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部1」及び「ゲー
ト−パッド連結部2」では,別紙1(3),(4)のように,基板(a)
の上に,「チタン」を含む金属膜(b),「アルミニウム」を含む
金属膜(c),「チタン」を含む金属膜(d)が基板側からこの順
番に積層され,パターニングされてゲートパッドを形成している。
ゲートパッドの上に,絶縁膜(e)が積層され,絶縁膜(e)のパ
ターニングによりゲートパッドの表面を一部露出させるコンタクト
ホールが別紙1(3),(4)のようにそれぞれ形成されている。このパ
ターニングされた絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン膜(
f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)がこの順番で積層され,さ
らに第2の非晶質シリコン膜(g)の上には,「チタン」を含む金
属膜(h)がこの順番に積層され,積層された各膜(f,g,h)
は,いずれもパターニングされている。
bイ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部1」では,別紙1(
3)のように,パターニングされた保護膜(j)が,「チタン」を含
む金属膜(h)の一部を露出するように積層されており,また,前
記aのコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金属膜(d)の上
には,絶縁膜(e),第1及び第2の非晶質シリコン膜(f,
g),「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」
ないし「アルミニウム膜」(i)が残存している。
そして,上記コンタクトホール,上記残存する絶縁膜(e),第
1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g),「チタン」を含む金属
膜(h)及び保護膜(j)パターンの上に,ITOにより組成され
る透明導電膜(k)が積層され,この透明導電膜(k)は,「チタ
ン」を含む金属膜(h)及び絶縁膜(e)の開口部においてゲート
パッドを構成する「チタン」を含む金属膜(d)と接する画素電極
パターンを形成している。なお,「チタン」を含む金属膜(h)の
上に積層された「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム
膜」(i)上には保護膜(j)パターンが形成されており,透明導
電膜(k)とは接していない。
cイ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部2」では,別紙1(
4)のように,前記aのコンタクトホールの縁の「チタン」を含む金
属膜(d)の上には,絶縁膜(e),第1及び第2の非晶質シリコ
ン膜(f,g)及び「チタン」を含む金属膜(h)が残存してい
る。
そして,上記コンタクトホール,上記残存する絶縁膜(e),第
1及び第2の非晶質シリコン膜(f,g),「チタン」を含む金属
膜(h)及び保護膜(j)パターンの上に,ITOにより組成され
る透明導電膜(k)が積層され,この透明導電膜(k)は,「チタ
ン」を含む金属膜(h)及び絶縁膜(e)の開口部においてゲート
パッドを構成する「チタン」を含む金属膜(d)と接する画素電極
パターンを形成している。
さらに,「ゲート−パッド連結部2」近傍には,「チタン」を含
む金属膜(h)が,透明導電膜(k)に被覆されずに,最上層に形
成されている領域があり(甲4の写真8−1,9−3),当該領域
では「チタン」を含む金属膜(h)がCOFと接続している。
イイ号液晶モジュールの製造方法
前記アの認定事実と証拠(甲4ないし6)及び弁論の全趣旨を総合す
れば,イ号液晶モジュールは,次のような工程1ないし12(以下,各
工程を「本件工程1」,「本件工程2」などという。)を順に経て製造
されたことが認められ,これに反する証拠はない。
(ア)本件工程1
別紙2①のように,基板(a)の上に,「チタン」を含む金属膜(
b),「アルミニウム」を含む金属膜(c),「チタン」を含む金属
膜(d)を基板側からこの順番で積層した後,フォトリソグラフィー
工程(1次写真蝕刻)により,ゲート電極及びゲートパッドをそれぞ
れ形成する工程。
(イ)本件工程2
別紙2②のように,ゲート電極及びゲートパッドの形成された基板
の全面に絶縁膜(e)を積層する工程。
(ウ)本件工程3
別紙2③のように,絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン
膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)をこの順番に積層する工
程。
(エ)本件工程4
別紙2④のように,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2の非晶
質シリコン膜(g)を,フォトリソグラフィー工程(2次写真蝕刻)
により半導体膜パターンに形成する工程。
(オ)本件工程5
別紙2⑤のように,半導体膜パターン(f,g)の形成された基
板(a)の全面に,「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウ
ム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)をこの順番に積層する工
程。
(カ)本件工程6
別紙2⑥のように,フォトリソグラフィー工程(3次写真蝕刻)に
より,「チタン」を含む金属膜(h),「アルミニウム合金膜」ない
し「アルミニウム膜」(i)をパターニングし,TFT部にソース電
極及びドレイン電極を形成する工程。
(キ)本件工程7
別紙2⑦のように,「チタン」を含む金属膜(h),「アルミニウ
ム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)をマスクとして,半導体
膜パターン(f,g)を蝕刻し,ソース電極とドレイン電極間に位置
する第2の非晶質シリコン膜(g)を除去する工程。
(ク)本件工程8
別紙2⑧のように,ソース電極及びドレイン電極の形成された基
板(a)の全面に保護膜(j)を積層する工程。
(ケ)本件工程9
別紙2⑨のように,フォトリソグラフィー工程(4次写真蝕刻)に
より,保護膜(j)及び絶縁膜(e)をパターニングし,ドレイン電
極(の端部)の表面と,ゲートパッドの表面を露出させるコンタクト
ホールを形成する工程。
(コ)本件工程10
別紙2⑩のように,保護膜(j)の蝕刻により露出されている部分
の「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)を除去す
る工程。
(サ)本件工程11
別紙2⑪のように,コンタクトホールの形成された基板(a)の全
面に透明導電膜(k)を積層する工程。
(シ)本件工程12
別紙2⑫のように,フォトリソグラフィー工程(5次写真蝕刻)に
より,透明導電膜(k)をパターニングして,TFT部では「チタ
ン」を含む金属膜(h)と接続する画素電極パターンを,「ゲート−
パッド連結部1」及び「ゲート−パッド連結部2」では,ゲートパッ
ドを構成する「チタン」を含む金属膜(d)及び「チタン」を含む金
属膜(h)とそれぞれ接続する画素電極パターンを形成する工程。
(2)イ号液晶モジュールの製造方法の構成要件充足の有無
ア被告は,イ号液晶モジュールの製造方法は,原告の主張する製造方法
を前提としても,少なくとも,本件発明1の構成要件A(本件発明2の
構成要件J,本件発明3の構成要件Q)及び本件発明1の構成要件D(
本件発明2の構成要件M,本件発明3の構成要件T)をいずれも充足し
ない旨主張する。
そこで,まず,イ号液晶モジュールの製造方法が本件発明1の構成要
件Dを充足するかどうかについて,判断することとする。
イ構成要件Dの解釈
(ア)本件発明1の構成要件Dは,「第3フォトリソグラフィー工程に
よって,第3金属膜よりなるソース電極及びドレイン電極を前記TF
T部上に形成すると共に,前記第3金属膜よりなるパッド電極をパッ
ド部の前記絶縁膜上に形成し,前記ソース電極及び前記ドレイン電極
間に位置する第2非晶質シリコン膜を除去する段階」というものであ
る。
そこで,イ号液晶モジュールの製造方法が構成要件Dを充足するか
どうかの判断に当たり,「第3金属膜よりなるパッド電極をパッド部
の前記絶縁膜上に形成し」との意義について検討する。
(イ)a本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)中には,「基板のT
FT部及びゲート−パッド連結部のそれぞれに第1金属膜及び第2
金属膜を連続して蒸着し,前記第1金属膜及び前記第2金属膜を第
1フォトリソグラフィー工程によってパターニングし,ゲート電極
及びゲートパッドを基板上に形成する段階」(構成要件A)と,「
前記ゲート電極及び前記ゲートパッドが形成された基板の全面に絶
縁膜を形成する段階」(構成要件B)と,「第2フォトリソグラフ
ィー工程によって,第1非晶質シリコン膜パターン及びドーピング
された第2非晶質シリコン膜パターンを前記TFT部の絶縁膜上に
形成する段階であって,前記第2非晶質シリコン膜パターンが前記
第1非晶質シリコン膜パターンの全面に形成されて前記第2非晶質
シリコン膜全体の下部表面が前記第1非晶質シリコン膜の表面と当
接するように,前記第1非晶質シリコン膜パターン及び前記第2非
晶質シリコン膜パターンを形成する段階」(構成要件C)と,「第
3フォトリソグラフィー工程によって,第3金属膜よりなるソース
電極及びドレイン電極を前記TFT部上に形成すると共に,前記第
3金属膜よりなるパッド電極をパッド部の前記絶縁膜上に形成し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極間に位置する第2非晶質シリ
コン膜を除去する段階」(構成要件D)とを含むとの記載がある。
上記記載によれば,本件発明1においては,構成要件AないしCの
段階(工程)を順に経た上で,「第3金属膜よりなるソース電極及
びドレイン電極を前記TFT部上に形成すると共に,前記第3金属
膜よりなるパッド電極をパッド部の前記絶縁膜上に形成」(構成要
件D)されるのであるから,本件発明1の「パッド電極」は,ソー
ス電極及びドレイン電極と同じ「第3金属膜」を用いて,フォトリ
ソグラフィー工程によって,ソース電極及びドレイン電極と同時
に,「パッド部」に形成されるものと理解できる。
以上のほかに,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載
中には,「パッド電極」及び「パッド部」の用語の意義を規定する
記載はない。
b次に,本件明細書(甲3)の発明の詳細な説明には,「・・・図
9はソース電極,ドレイン電極及びパッド電極を形成する段階を示
す。・・・半導体膜パターンが形成された基板の全面にCrのよう
な耐火性金属を300Å∼4000Åほど蒸着して第3金属膜を形
成した後,前記第3金属膜を3次写真蝕刻してTFT部にソース電
極41a及びドレイン電極41bを形成し,パッド部にパッド電極
41cを形成する。」(段落【0027】),「図10は保護膜パ
ターンを形成する段階を示す。・・・前記基板30の全面に,例え
ば窒化膜を使用して保護膜を形成した後,前記保護膜を4次写真蝕
刻して保護膜パターン43を形成する。この際,TFT部のドレイ
ン電極41b及びパッド部のパッド電極41cの一部が露出され
る。」(段落【0028】),「図12は画素電極を形成する段階
を示す。・・・保護膜パターンが形成された基板30の全面に透明
導電膜であるITOを蒸着した後,前記ITO膜を5次写真蝕刻し
て第1及び第2の画素電極47を形成する。これによりTFT部で
はドレイン41bと第1の画素電極47が連結され,ゲート−パッ
ド連結部のゲート電極とパッド部のパッド電極41cが第2の画素
電極47を通して連結される。」(段落【0030】)との記載が
ある。
また,本件明細書の図9ないし12(「本発明の第1実施例によ
る液晶表示装置の製造方法を説明するための断面図」)におい
て,「パッド電極」が図中の「41c」として,「パッド部」が図
中の「E」として示されている。そして,図9ないし12のいずれ
においても,パッド電極(41c)の下部表面全体が絶縁膜(3
5)の上部表面に当接されている。
しかし,本件明細書を全体としてみても,「パッド電極」及び「
パッド部」の用語を定義した記載はなく,また,「パッド電極」を
設ける目的やその作用効果について説明した記載もない。
c一方で,乙10(1995年11月20日発行の「JIS工業
用語大辞典第4版」)には,「パッド」とは「表面実装部品を搭
載するためのランド」を(1503頁),「ランド」とは「部品の
取付け及び接続に用いる導体パターン」(1984頁)を意味する
との記載がある。
また,本件明細書には,「本発明は液晶表示装置の製造方法およ
びTFT基板を有する液晶表示装置に係り,特に能動素子として薄
膜トランジスタを具備して写真工程の数が減らすことのできる液晶
表示装置の製造方法およびTFT基板を有する液晶表示装置に関す
る。」(段落【0001】),「情報表示装置は電気的な信号を視
覚映像に変換させ,人間が直接情報を解読可能にする電子システム
の一種であって,電子光学的素子である。このような表示装置とし
ては液晶表示装置・・・が最も広く使用されており,・・・」(段
落【0002】)との記載がある。上記記載によれば,本件発明1
に係る「液晶表示装置」は,「電気的な信号を視覚映像に変換さ
せ」るものであり,外部の駆動回路と接続し,電気信号を得て機能
するものであるから,外部接続のための端子(外部接続端子)を設
けることが必須であることが理解される。
そうすると,本件発明1の「パッド電極」とは,外部接続のため
に「表面実装部品を搭載するための取付け及び接続に用いる導体パ
ターン」である電極,すなわち,外部接続端子と電気的に接続する
電極を意味するものと解される。
(ウ)次に,本件発明1の「パッド電極」を「パッド部の前記絶縁膜上
に形成し」(構成要件D)との意義について検討する。
本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)によれば,本件発明1
は,前記(イ)aのとおり構成要件AないしCの段階(工程)を順に経
た上で,「第3金属膜よりなるソース電極及びドレイン電極を前記T
FT部上に形成すると共に,前記第3金属膜よりなるパッド電極をパ
ッド部の前記絶縁膜上に形成し」(構成要件D),さらに,「前記ド
レイン電極の一部,前記ゲートパッドの一部及び前記パッド電極の一
部が露出されるように保護膜を形成し,前記ゲートパッドの一部上の
絶縁膜を第4フォトリソグラフィー工程によって除去する段階」(構
成要件E),「第5フォトリソグラフィー工程によって,ドレイン電
極と連結される第1画素電極パターンと,前記ゲートパッド及び前記
パッド電極と連結される第2画素電極パターンとを前記基板上に形成
する段階」(構成要件F)を順に経て液晶表示装置を製造するもので
あることが認められる。
このように第3金属膜よりなるパッド電極を形成する段階(構成要
件D)の前の段階に,「基板の全面に絶縁膜を形成」する段階(構成
要件B)及び第1非晶質シリコン膜パターン及びドーピングされた第
2非晶質シリコン膜パターンを「前記TFT部の絶縁膜上に形成」す
る段階(構成要件C)を経ており,基板の全面に形成された絶縁膜の
一部が除去されるのは,第3金属膜よりなるパッド電極が形成された
後の段階(構成要件E)である。そうすると,第3金属膜よりなるパ
ッド電極が形成される段階では,絶縁膜が既に基板の全面に形成され
ており,パッド電極が絶縁膜の「上方に」形成されることは自明であ
り,単にパッド電極が絶縁膜の上方に形成されるというのであれば,
パッド電極を「絶縁膜上に形成し」(構成要件D)との限定をする必
要はないから,パッド電極を「絶縁膜上に形成し」とは,パッド電極
を「絶縁膜の真上」に,すなわちパッド電極の下部表面を絶縁膜の上
部表面に当接するように形成することを意味するものと解するのが自
然である。
そして,前記(イ)bのとおり,本件明細書の図9ないし12(「本
発明の第1実施例による液晶表示装置の製造方法を説明するための断
面図」)においては,いずれもパッド電極(41c)の下部表面全体
が絶縁膜(35)の上部表面に当接していることが示されている。一
方で,本件明細書には,パッド電極(41c)の下部表面が絶縁膜(
35)の上部表面と当接していない構成についての具体的な記載や示
唆はない。また,本件明細書において,「第1金属膜上に形成」,あ
るいは「絶縁膜上に形成」のように「膜上」の用語が用いられている
記載箇所(段落【0015】,【0017】ないし【0019】,【
0023】)では,いずれも「形成」される素材が「膜」の真上に位
置し,「形成」される素材と「膜」の間には,他の素材が介在しない
ものとして表現されている。
以上を総合すると,本件発明1の「第3金属膜よりなるパッド電
極」を「パッド部の前記絶縁膜上に形成し」とは,「第3金属膜より
なるパッド電極」を「絶縁膜の真上」に形成することを意味するもの
と解される。
そこで,以上の解釈を前提に,イ号液晶モジュールの製造方法の構
成要件Dの充足の有無について判断する。
ウ構成要件Dの充足の有無
原告は,イ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部1」及び「ゲ
ート−パッド連結部2」における「チタン」を含む金属膜(h)が「パ
ッド部の前記絶縁膜上に形成」された「第3金属膜よりなるパッド電
極」に該当するので,イ号液晶モジュールの製造方法は,「第3金属膜
よりなるパッド電極をパッド部の前記絶縁膜上に形成し」(構成要件
D)との要件を備えている旨主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
(ア)「ゲート−パッド連結部1」
a(a)イ号液晶モジュールを構成するイ号液晶パネルの周辺部(端
部)にはCOFが複数接続されており(前記(1)ア(ア)),COF
は,イ号液晶モジュールと電気的に接続する外部接続端子に相当
するものと認められる。
ところで,「COF出力用高精細対応異方導電フィルムアニ
ソルムAC−4713」と題する論文(2006年7月発表。乙
11)には,①「異方導電フィルム(アニソルム)は,LCD(L
iquidCrystalDisplay)を中心としたFPD(FlatPanelDispl
ay)の実装材料として広く用いられている。高精細や低コストの
観点から・・・COF(ChipOnFlex)が主流となっており・・
・高精細対応が求められている。」(25頁中央欄),②「異方
導電フィルム(アニソルム)は,熱硬化性樹脂を主体とした接着
剤中に,金めっきプラスチック粒子やニッケル粒子などの導電粒
子を均一に分散させた回路接続用接着フィルムである。その特長
は,導電粒子によって電極間の電気的接続を行う機能と,接着剤
によって電極間を接着しさらに隣接電極間の絶縁性を保持する機
能とを,同時に発現することである。このためアニソルムは高密
度実装回路の接続材料として・・・TCP(COF)出力用(T
CP(COF)とLCDパネルの接続)・・・など,LCDパネ
ルを電気的に接続する用途を中心に広く使用されている。」(2
5頁左欄1行∼12行),③「COFをパネルに実装する際,不
適な位置合わせや圧着時のCOF基材の熱膨張などによりCOF
とパネル配線の間で図2に示すような位置ずれが生じることがあ
る。COF配線がパネル配線から位置ずれした場合,1端子当た
りの接続面積は減少し,同時に隣接回路間の距離も縮まる。位置
ずれが大きい場合,導通不良やショート不良を発生させ,実装工
程の歩留まりを低下させる。・・・そのため,実装材料であるア
ニソルムに対しては,微小接続面積における接続信頼性や,微小
スペースにおける絶縁性といった高精細への対応が求められてい
る。」(25頁左欄21行∼26頁左欄2行),④「接続面積が
小さすぎた場合⇒導通不良」(26頁図2),⑤「現行の標
準的なCOF用アニソルムAC−4251FY−16は,導電粒
子径が4μm,粒子密度は5,300個/m㎡である。この製品
の最小接続面積は15,000μ㎡,最小絶縁スペースは16μ
mに設計されている。」(26頁左欄10行∼13行),⑥「3
μm−5,300個/m㎡の仕様では,10,000μ㎡の接続
面積には対応できない。良好な接続信頼性を得るためには,3μ
m導電粒子の粒子密度を上げる必要がある。」(26頁左欄24
行∼27行),⑦「最小粒子個数が4個と判明したので,捕捉シ
ミュレーションを再度実施した。その結果,8,100μ㎡以上
でAC−4713の接続抵抗が安定化することが予測された。・
・・8,400μ㎡の微小接続面積の評価において,・・・AC
−4713は良好な接続信頼性を示している。」(28頁右欄1
4行∼20行)との記載がある。
上記記載によれば,一般に,液晶表示パネルとCOFとの接続
には,分散された導電粒子により電極間の電気的接続を行う異方
導電フィルムが用いられること,液晶表示パネルがCOFと接続
する部分は,異方導電フィルムの接続抵抗が安定し,導通不良を
起こさないようにするため,接続面積を8,100μ㎡∼15,
000μ㎡確保する必要があり,この接続面積に満たない場合に
は,導通不良が発生するものと認められる。
(b)原告は,イ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部1」
では,別紙写真1の赤色部分において,「パッド電極」を構成す
る「チタン」を含む金属膜(h)と「第2画素電極パターン」(
透明導電膜)とが連結している旨主張する。
そこで検討するに,甲4の写真6−7ないし6−11及び弁論
の全趣旨を総合すれば,「ゲート−パッド連結部1」は,COF
と接続する部分であり,最上層の透明導電膜(k)とCOFとの
間には異方導電フィルムが挟まれていること,「ゲート−パッド
連結部1」の別紙写真1の赤色部分に相当する領域において,「
チタン」を含む金属膜(h)と透明導電膜(k)とが接している
ことが認められる。
しかし,上記赤色部分に相当する領域の面積は約45μ㎡であ
って(弁論の全趣旨),異方導電フィルムの接続抵抗が安定し,
導通不良を起こさないようにするのに必要な接続面積8,100
μ㎡∼15,000μ㎡(前記(a))にはるかに及ばないもので
ある。
そうすると,原告が主張する「ゲート−パッド連結部1」にお
ける「パッド電極」(「チタン」を含む金属膜(h))は,外部
接続端子と電気的に接続する電極に当たるものとはいえないか
ら,構成要件Dの「パッド電極」に該当しないというべきであ
る。
(c)これに対し原告は,本件発明1の「パッド電極」の機能は,
外部からの電気信号をゲートパッドに伝達することにあり,「ゲ
ート−パッド連結部1」においては,「チタン」を含む金属膜(
h)を介して「ゲートパッド」に外部からの電気信号が伝達され
ているから,上記「チタン」を含む金属膜(h)が「パッド電
極」に該当し,また,「ゲート−パッド連結部1」では,別紙写
真1の赤色部分及び青色部分を覆うように広く透明導電膜(k)
が形成されているから,上記赤色部分及び青色部分における導電
粒子の存在確率を問題とする意味はない旨主張する。
しかし,前記イ(イ)cのとおり,本件発明1の「パッド電極」
とは,外部接続のために「表面実装部品を搭載するための取付け
及び接続に用いる導体パターン」である電極,すなわち,外部接
続端子と電気的に接続する電極を意味するものであり,単に外部
から電気信号が伝達されるだけでは外部接続端子と電気的に接続
するとはいえないから,原告の主張は採用することができない。
bまた,前記イ(ウ)のとおり,本件発明1の「第3金属膜よりなる
パッド電極」を「パッド部の前記絶縁膜上に形成し」とは,「第3
金属膜よりなるパッド電極」を「絶縁膜の真上」に形成することを
意味するものと解されるところ,本件全証拠によっても,イ号液晶
モジュールの「ゲート−パッド連結部1」において,原告が主張す
る「第3金属膜よりなるパッド電極」を構成する「チタン」を含む
金属膜(h)が絶縁膜(e)の真上に形成されたことを認めるに足
りない。
かえって,本件工程2ないし6(前記(1)イ)及び別紙1(3)によ
れば,イ号液晶モジュールにおいては,基板(a)の全面に積層さ
れた絶縁膜(e)の上に,第1の非晶質シリコン膜(f)及び第2
の非晶質シリコン膜(g)をこの順番に積層した後,第1の非晶質
シリコン膜(f)及び第2の非晶質シリコン膜(g)を,フォトリ
ソグラフィー工程(2次写真蝕刻)により半導体膜パターンに形成
し,この半導体膜パターン(f,g)の形成された基板(a)の全
面に「チタン」を含む金属膜(h)及び「アルミニウム合金膜」な
いし「アルミニウム膜」(i)をこの順番に積層し,さらに,これ
を3次写真蝕刻して,半導体膜パターン(f,g)の上に,「チタ
ン」を含む金属膜(h)からなる層及び「アルミニウム合金膜」な
いし「アルミニウム膜」(i)からなる層を形成しており,絶縁
膜(e)の真上に,「チタン」を含む金属膜(h)からなる層又
は「アルミニウム合金膜」ないし「アルミニウム膜」(i)からな
る層を設けたものではない。
また,甲4の写真6−7ないし6−11によれば,別紙写真1の
赤色部分に相当する領域(同写真中の青色部分の右側の上記赤色部
分に対応する領域及び下側の「コンタクトホール」と矢印で示され
た部分の両側の上記赤色部分に対応する各領域を含む。)は,絶縁
膜(e)と「チタン」を含む金属膜(h)との間に半導体膜パター
ン(f,g)が介在する構造となっていることが認められる。
cしたがって,イ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部1」
における「チタン」を含む金属膜(h)は,構成要件Dの「パッド
部の前記絶縁膜上に形成」された「第3金属膜よりなるパッド電
極」に該当しない。
(イ)「ゲート−パッド連結部2」
イ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部2」においても,「
ゲート−パッド連結部1」と同様に,原告が主張する「第3金属膜よ
りなるパッド電極」を構成する「チタン」を含む金属膜(h)が絶縁
膜(e)の真上に形成されたことを認めるに足りない。
かえって,前記(ア)bの認定事実及び別紙1(4)によれば,イ号液晶
モジュールの「ゲート−パッド連結部2」においては,半導体膜パタ
ーン(f,g)の上に,「チタン」を含む金属膜(h)からなる層を
形成しており,絶縁膜(e)の真上に,「チタン」を含む金属膜(
h)からなる層を設けたものではない。
また,甲4の写真6−1,8−7ないし8−9,甲5の写真8−
7,8−12及び弁論の全趣旨によれば,「ゲート−パッド連結部
2」においては,別紙写真2の赤色部分に相当する領域において,「
チタン」を含む金属膜(h)と透明導電膜(k)とが接しているこ
と,同領域においては,別紙写真2の赤色部分に相当する部分は,絶
縁膜(e)と「チタン」を含む金属膜(h)との間に半導体膜パター
ン(f,g)が介在する構造となっていることが認められる。
したがって,イ号液晶モジュールの「ゲート−パッド連結部2」に
おける「チタン」を含む金属膜(h)は,構成要件Dの「パッド部の
前記絶縁膜上に形成」された「第3金属膜よりなるパッド電極」に該
当しない。
(ウ)まとめ
以上によれば,イ号液晶モジュールの製造方法は,「第3金属膜よ
りなるパッド電極をパッド部の前記絶縁膜上に形成し」との要件を備
えたものとは認められないから,本件発明1の構成要件Dを充足しな
い。
(3)小括
以上のとおり,イ号液晶モジュールの製造方法は,本件発明1の構成要
件Dを充足せず,同様に本件発明2の構成要件M,本件発明3の構成要件
Tを充足しないから,本件発明1ないし3の技術的範囲にいずれも属する
ものとは認められない。
2結論
以上によれば,原告の請求は,その余の争点について判断するまでもな
く,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官大鷹一郎
裁判官関根澄子
裁判官杉浦正典
(別紙)イ号物件目録
32V型液晶テレビ(製品型番LC−32D10)

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すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
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採用担当宛