弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人莇立明の上告理由について
 上告人がした本件譲渡に係る家屋が租税特別措置法(昭和五七年法律第八号によ
る改正前のもの。以下同じ。)三五条一項にいう「その居住の用に供している家屋」
に当たらないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の
専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判決を正解しない
でこれを論難するものであつて、採用することができない。
 上告代理人野田純生、同上野雅祥の上告理由第一点及び第二点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の
専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定しない事
実を前提として原判決を論難するものであつて、採用することができない。
 同第三点について
 租税特別措置法三五条一項所定の居住用財産の譲渡所得の特別控除は、個人が自
ら居住の用に供している家屋及びその敷地等を譲渡するような場合には、これに代
わる居住用財産を取得するのが通常であるなど、一般の資産の譲渡に比して特殊な
事情があり、担税力も高くない例が多いこと等を考慮して設けられた特例であり、
この趣旨は、同項の現に居住の用に供している家屋等の譲渡に関する部分(以下「
前半部分」という。)と居住の用に供されなくなつた家屋等の譲渡に関する部分(
以下「後半部分」という。)とで何ら変わるものではない。そして、同項の後半部
分の規定は、居住用財産を処分しようとする場合に、社会の実情としては、譲渡時
まで引き続いて当該家屋に居住することの困難な事情があることが少なくないとこ
ろから、当該家屋を居住の用に供しなくなつたのち一定期間内の譲渡についても、
右特別控除を認めることとしたものである。すなわち、右規定は、当該家屋を居住
の用に供しなくなつたのちの所定期間内の譲渡は、依然社会通念上居住用財産の譲
渡といいうるとみて、これにつき右特別控除を認めるものと解される。そうすると、
同条の後半部分の規定は、その前半部分の規定と統一的に理解すべきものであつて、
それと同様に、当該個人が、当該家屋を、譲渡所得の帰属者の立場において、すな
わちその所有者として居住の用に供していたことを右特別控除を認めるための要件
とするものとみなければならない。したがつて、かつて当該家屋を居住の用に供し
ていた個人が、それを居住の用に供しなくなつたのちにその所有権を取得した場合
には、たとえ同項後半部分の所定期間内にそれを譲渡しても、右特別控除を認める
余地はない。このことは、その所有権取得の原因が相続であつても、当該個人自身
が所有者として当該家屋を居住の用に供していたことがない以上、異なるところは
ない。
 原審の適法に確定したところによれば、上告人は、本件家屋に夫亡Dとともに居
住していたが、昭和五三年四月ころ本件家屋から夫とともに転居してそこに居住し
なくなつたのち、昭和五四年五月九日夫が死亡したため相続により本件家屋の所有
権を取得し、それを昭和五五年一二月二七日他に売り渡した、というのであり、結
局、上告人は所有者として本件家屋を居住の用に供していたことがないことになる
から、右譲渡につき、租税特別措置法三五条一項後半部分の場合に当たるものとし
て、同項所定の特別控除を認めることはできないものといわざるをえない。原判決
に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第四点及び第五点について
 本件記録によれば、原審の訴訟手続に所論の違法はなく、論旨は採用することが
できない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
坂上壽夫の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官坂上壽夫の反対意見は、次のとおりである。
 私は、上告代理人野田純生、同上野雅祥の上告理由第三点に対する判断において、
多数意見と見解を異にし、本件については、租税特別措置法三五条一項後半部分の
場合に当たるものとして、同項所定の特別控除を認めるべきであると考えるもので
ある。
 同項後半部分の規定が、右特別控除が認められるには、当該個人が所有者として
当該家屋を居住の用に供していたことを要するとしているのかどうかは、規定の文
言上明確とはいい難いが、この点の解釈については、あえて多数意見に異を唱える
ものではない。しかしながら、当該家屋が居住の用に供されなくなつたのち相続が
介在したときは、所有者として居住の用に供していたという右の要件については、
被相続人と、当該家屋を居住の用に供していた相続人とを同一人格として一体とし
てみるべきであると考えるのである。けだし、仮に、当該家屋が居住の用に供され
なくなつたのち被相続人が引き続き生存していて、居住の用に供されなくなつた日
から三年後の年の年末までに当該家屋を譲渡したものとすれば、特別控除が認めら
れたのに、その間にたまたま被相続人が死亡して相続が介在したばかりに、被相続
人の生存していた場合の同人に対する課税に比し、相続人が課税上不利益を受ける
ことになるのは不合理であるからである(特に、右の場合、相続人である妻等が当
該家屋の取得、維持に実質的に寄与していた事例を想定すれば、特別控除を認めな
い結論は甚だ不当であるといわざるをえないであろう。)。右のような解釈は、決
して政策論ではなく、相続が被相続人の財産的地位の包括的承継であることからし
て、同項の文理にも必ずしも反しないばかりか、むしろ、個人が居住用財産を処分
するような場合には、代替財産を取得するのが通常であるなど特殊な事情があり、
担税力も高くない例が多いこと等から特別控除を認めるという、同項の趣旨にいつ
そう合致するものである。
 そして、私のような見解をとつても、特別控除の適用につき、当該家屋が居住の
用に供されなくなつた日の直前まで当該個人もそれを居住の用に供していたこと、
及び当該個人が当該家屋を相続によつて取得したことの二つの要件を必要とする限
り、適用事例が大きく広がるおそれはない。また、当該家屋の共同相続人中にそれ
を居住の用に供していた者と供していなかつた者とが混在している場合にも、特別
控除の適用関係が煩雑になることはなく、前者の持分の譲渡についてのみ特別控除
を認めれば足りるだけのことである。
 本件においては、上告人は夫とともに本件家屋を居住の用に供していたが、そこ
から転居後夫の死亡によつて本件家屋を相続し、租税特別措置法三五条一項後半部
分の所定期間内にそれを他に売り渡したのであるから、上告人と夫とを一体として
みて同項後半部分の場合に当たるものとして、所定の特別控除が認められるべきも
のである。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    貞   家   克   己

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛