弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決を破棄する。
     被告人を懲役八月に処する。
     第一審における未決勾留日数中八〇日を右本刑に算入する。
     訴訟費用中第一審における証人A、同B、同Cに支給した各第一回分及
び、証人Dに支給した分の各二分の一、並びに証人A、同B、同Cに支給した各第
二回分の各三分の一は被告人の負担とする。
     昭和二五年政令第三二五号違反の点については、被告人を免訴する。
         理    由
 弁護人福田力之助の上告趣意は末尾添附のとおりである。
 裁判官真野毅、同小谷勝重、同島保、同藤田八郎、同谷村唯一郎、同入江俊郎の
意見は、昭和二五年政令三二五号「占領目的阻害行為処罰令」は、平和条約発効と
同時に当然失効し、その後に右政令の効力を維持することは、憲法上許されないか
ら、第一審判決判示第二の前記政令三二五号違反の事実については、犯罪後の法令
により刑が廃止された場合にあたるとするものであること、昭和二七年(あ)第二
八六八号同二八年七月二二日言渡大法廷判決記載の右六裁判官の意見のとおりであ
り、又裁判官栗山茂、同岩松三郎、同河村又介、同小林俊三の意見は、右政令三二
五号は、平和条約発効後においては、本件に適用されている昭和二〇年九月一〇日
附連合国最高司令官の「言論及び新聞の自由」と題する覚書第三項の「連合国に対
する虚偽又は破壊的批評及び風説」を「論議すること」を禁止する部分は憲法二一
条に違反するから、右指令を適用するかぎりにおいて、平和条約発効と共に失効し、
従つて、第一審判決判示第二の右政令三二五号違反の事実については、犯罪後の法
令により刑の廃止があつた場合にあたるとすること、昭和二七年(あ)第二〇一一
号同三〇年四月二七言渡大法廷判決記載の栗山、岩松、河村、小林各裁判官の意見
のとおりである。
 以上一〇裁判官の意見によれば、第一審判決判示第二の右政令三二五号違反の事
実は、犯罪後に刑が廃止されたときにあたるので、右政令を適用して被告人を処罰
した第一審判決及びこれを維持した原判決は刑訴四一一条によりこれを破棄し、同
四一三条但書に従い更に判決すべきものである。
 よつて、第一審判決の確定した事実を法律に照らすと、同判示第一の不法監禁の
点は、刑法二二〇条一項後段、六〇条にあたるので所定刑期範囲内で被告人を懲役
八月に処し、同法二一条により第一審における未決勾留日数中八〇日を右本刑に算
入し、訴訟費用中主文掲記の分は刑訴一八一条を適用してこれを被告人の負担とす
る。
 次に第一審判決判示第二の昭和二五年政令三二五号違反の点については前記の如
く犯罪後に刑の廃止があつた場合にあたるので刑訴三三七条二号により、被告人に
対し免訴の言渡をする。よつて主文のとおり判決する。
 裁判官田中耕太郎、同斎藤悠輔、同本村善太郎の昭和二五年政令三二五号違反の
点に関する反対意見は次のとおりである。
 すなわち平和条約発効前に犯した右政令三二五号違反の罪に対する刑罰は平和条
約発効後といえども、廃止されたものといえないことは、前記昭和二七年(あ)第
二〇一一号の大法廷判決記載の意見のとおりである。
 なお、前記政令三二五号違反の点に対する各裁判官の補足意見は前記昭和二七年
(あ)第二〇一一号の大法廷判決に記載乃至引用したとおりである。
 裁判官霜山精一、同井上登は退官につき評議に関与しない。
 検察官 安平政吉、同竹原精太郎、同福原忠男、同神山欣治出席
  昭和三〇年七月二〇日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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