弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人本人の上告趣意について。
 所論は、結局私は絶対に放火して居らず放火は事実無根であるというに帰するか
ら、刑訴四〇五条所定の上告理由に当らないし、記録を精査しても同四一一条の職
権発動を為すべきものとも認められない。
 弁護人榮木照昌の上告趣意第一点について。
 本論旨中被告人の司法警察員に対する供述が強制脅迫に依り為された任意のもの
でない旨の主張は、結局事実審の裁量に任かされている同供述調書の取捨判断を非
難するに帰し法令違反の主張とは認め難い。なぜなら、司法警察員作成の実況見分
書の記載が仮りに所論のごとく司法警察員の描いた実体のない虚構の空中楼閣であ
るとしても、被告人の供述がこれと一致符合しているからといつて、それだけの理
由でその供述が司法警察員の強制脅迫によるものとはいえないし、その他右被告人
の供述が強制脅迫によるものであると認むべき証拠がないのに反し、同供述調書に
はその冒頭に司法警察員巡査部長Aは被疑者に対し予め供述を拒むことができる旨
を告げたこと、その末尾に被疑者に録取した供述を読み聞かせたところ誤がない旨
を申し立て署名拇印した等の記載があり且つ現に被疑者の署名拇印がある等法定の
供述調書としての形式を完備しているばかりでなく、被告人は第一審第一回公判で
右調書の署名、拇印は自らしたものに相違ない旨を認め且つ同調書を証拠とするこ
とに異議ない旨を述べ、剰つさえAは第一審公判廷において被告人の取調べに当つ
て強制脅迫をした事実はない旨を供述していることが記録上明白である。そして、
証拠の取捨判断は事実裁判所に一任されているばかりでなく、その証拠の取捨判断
をした理由は特に判決でこれを説明する必要はないのであるから、第一審裁判所が
右調書を証拠の一つとしてその判決に挙示した以上同裁判所は前記資料を考慮して
該調書は強制脅迫によらない任意のもので措信するに足りるものと認めた趣旨であ
るといわなければならないし、また、かく認めたことは正当であつて、実験則に反
するところは少しも認められないからである。されば、この点に関する所論は、結
局事実審が適法にした証拠の採用を非難するに帰し、明らかに刑訴四〇五条に当ら
ない。
 次に、所論検察官に対する被告人の供述が勾留中であり且つ司法警察員に対する
供述に引き続き行われたことは所論のとおりであるがそれだけの理由で強制に基く
ものとはいえないし、同供述調書も前述の司法警察員に対する供述調書と同一の法
定の形式を具備し、しかも、第一審公判廷において被告人はその署名、拇印の真実
性を認め且つ同調書を証拠とすることに同意していることは記録上明白である。さ
れば、この点に関する所論もこれまた事実審の裁量に任かされている証拠の取捨判
断を非難するに帰し、明らかに刑訴四〇五条所定の上告適法の理由ではない。
 更らに第一審公判における被告人の自白に関する所論は、控訴審において主張し
たことを単に繰り返えすに過ぎないものであつて、原審のこの点に関する説示は正
当であつて、何等の違法も認められないから、これまた第二審判決に対する適法な
上告理由を定めた刑訴四〇五条に明らかに該当しない。されば、論旨一点は、採用
できない。
 同二点について。
 第一審判決は、被告人の自白は孰れも一部だけを証拠としているに過ぎないもの
であつて、本件放火の動機、被告人の行動の一部若しくは放火の客観的事実を認め
るに足りる実質内容を有する判示その他の証拠を掲げてこれを綜合して事実認定を
したものであることは判文上明白なところである。されば、第一審判決は被告人の
自白を唯一の証拠としたものでないこと明らかであつて、所論は、その前提を欠き
明らかに刑訴四〇五条に当らない。されば、本論旨も採用できない。
 同三点について。
 論旨は、第一審において証拠調の請求もなく且つ証拠として領置していない写真
を判決の証拠としたのは違法であるというのであるから、第一審判決の訴訟手続上
の違法を主張するに過ぎないものというべく、従つて明らかに刑訴四〇五条所定の
上告理由に当らないし、また、本件第一審第一回公判調書中の証拠調に関する記載
(記録一〇丁以下)就中検察官は被告人及弁護人に対し右物証は之を示し書証はこ
れを朗読し図面及び写真はこれを展示した後裁判所に提出した旨の記載並びに現に
本件記録中の実況見分書の次に写真三葉の存在すること(記録三六丁乃至三八丁)
竿によれば、所論写真については司法警察員作成の実況見分書及び附属図面と共に
適法に証拠調が行われた上押収されたものと認められるから、同四一一条を適用す
べきものとも思われない。
 よつて、同四一四条、三八六条一項三号に従い、裁判官全員一致の意見で主文の
とおり決定する。
  昭和二六年六月七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    眞   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛