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平成15年(ワ)第860号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成16年1月19日
判       決
          原      告   タカラスタンダード株式会社
      訴訟代理人弁護士   牛   田   利   治
          同          粕   谷       誠
          同  森   岡   利   浩
          被      告   サンウエーブ工業株式会社
          訴訟代理人弁護士 飯   田   秀   郷
          同          栗   宇   一   樹
          同          早 稲 本   和   徳
          補佐人弁理士     日   高   一   樹
          同          渡   邉   知   子
主       文
1 被告は、原告に対し、金113万9040円及びこれに対する平成14年9
月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを50分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負
担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
           事       実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告は、原告に対し、金3億9060万円及びこれに対する平成14年9
月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1) 当事者
原告及び被告は、いずれもシステムキッチン等の製造販売を目的とする株
式会社である。
(2) 特許権
ア 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許出願の願書
に添付された明細書を「本件明細書」といい、本件特許権に係る特許公報(甲第1
号証)を「本件公報」という。)を有する。
特許番号   第2961502号
出願年月日  平成6年11月7日(平6-272534号)
登録年月日  平成11年8月6日
発明の名称  点検口の蓋の取付方法とその方法に使用される取付具
イ(ア) 本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりであ
る(以下、請求項1に記載された発明を「本件方法発明」という。)。
板体に形成された点検口を閉じる蓋を、基板の表面側と裏面側にそれ
ぞれ弾性を有する挟持片と該挟持片より短い掛支片が突設された断面ほぼS字形の
取付具を用いて取り付ける方法であり、基板と挟持片との間で点検口の周端縁を挟
持するように、この取付具を点検口の上下に取り付け、蓋の下端縁を下方の取付具
の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具
を下方に押し下げることにより、蓋の上端縁を上方の取付具の基板と掛支片との間
に差し込み、蓋を点検口の前面に保持するようにしたことを特徴とする点検口の蓋
の取付方法。
(イ) 本件明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載は、次のとおりであ
る(以下、請求項2に記載された発明を「本件物発明」といい、本件方法発明と本
件物発明を包括して「本件特許発明」という。)。
基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片が突設
された断面ほぼS字形のもので、挟持片は基板とほぼ同寸であり、掛支片は該挟持
片より短く形成され、点検口の周端縁を挟持片と基板との間に差し込み挟持した状
態で、蓋の端縁を掛支片と基板との間に差し込み掛支することができるようになさ
れたものであることを特徴とする点検口の蓋の取付方法に使用される取付具。
(3) 特許発明の構成要件
ア本件方法発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。
AⅠ 板体に形成された点検口を閉じる蓋を、基板の表面側と裏面側にそ
れぞれ弾性を有する挟持片と該挟持片より短い掛支片が突設された断面ほぼS字形
の取付具を用いて取り付ける方法であり、
BⅠ 基板と挟持片との間で点検口の周端縁を挟持するように、この取付
具を点検口の上下に取り付け、
CⅠ 蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を
点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることにより、蓋の上
端縁を上方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口の前面に保持す
るようにしたことを特徴とする
DⅠ 点検口の蓋の取付方法。
イ 本件物発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。
AⅡ 基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片が突
設された断面ほぼS字形のもので、
BⅡ 挟持片は基板とほぼ同寸であり、
CⅡ 掛支片は該挟持片より短く形成され、
DⅡ 点検口の周端縁を挟持片と基板との間に差し込み挟持した状態で、
蓋の端縁を掛支片と基板との間に差し込み掛支することができるようになされたも
のであることを特徴とする
EⅡ 点検口の蓋の取付方法に使用される取付具。
(4) 特許発明の実施
ア 本件方法発明の実施
(ア) 単純方法の発明と物を生産する方法の発明
単純方法の発明と物を生産する方法の発明を区別する基準は、その方
法を実施する前後で対象物に物理的又は化学的な変化があるか否かである。また、
単純方法の発明とは、生産物を伴わない、時間的要素を必須構成要件とする発明で
あり、その例は、①物の使用方法、②測定方法、③検出方法などである。
特許庁の「特許法第36条の改正に伴う審査の運用指針」中には、
「物を生産する方法の発明には、物の製造方法、物の組立方法、物の加工方法など
があるが、いずれの場合も、ⅰ)原材料、ⅱ)その処理工程、及びⅲ)生産物の三
つから成る。」と記載されている。
(イ) 本件方法発明
前記(ア)記載の見地に立ってみると、本件方法発明は、取付具・蓋・
点検口を組み立てる方法に関する発明であり、「取付具によって蓋を取り付けた点
検口という一種の装置を生産する方法の発明」に他ならない。本件方法発明を実施
する前は、「取付具によって蓋を取り付けられた点検口」は存在しないが、本件方
法発明を実施した後は、「取付具によって蓋を取り付けられた点検口」という物が
存在する。
点検口を備えるシンクキャビネット・ガスキャビネットの製造の過程
においては、本件方法発明の実施によって点検口に蓋を取り付けることにより、シ
ンクキャビネット・ガスキャビネットが完成するし、その設置の過程においても、
本件方法発明の実施によって蓋を取り付けることにより、据付けを終了するから、
本件方法発明の実施は、特許法上の「生産」に他ならない。
したがって、本件方法発明は、物を生産する方法の発明である。
(ウ) 実施
本件方法発明の技術的範囲に属する方法の使用は、本件方法発明の実
施に当たる(特許法2条3項2号)。
また、本件方法発明は物を生産する方法の発明であるから、本件方法
発明の技術的範囲に属する方法により生産した物の販売は、本件方法発明の実施に
当たる(特許法2条3項3号)。
イ 本件物発明の実施
本件物発明の技術的範囲に属する物の販売は、本件物発明の実施に当た
る(特許法2条3項1号)。
(5) 被告の行為
アキッチンシステムの製造販売
被告は、キッチンシステム「セクショナルGSシリーズ」及び「システ
ムキッチン シェルトBM」を製造販売しているが、これらのキッチンシステムの
シンクキャビネット・ガスキャビネットには、点検口が設けられたものがある(以
下、「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」のシ
ンクキャビネット・ガスキャビネットのうち点検口が設けられたものを「被告キャ
ビネット」という。)。被告キャビネットの点検口の蓋は、取付具により点検口に
取り付けられている(以下、この点検口の蓋の取付けに使用されている方法を「被
告方法」といい、この取付具を「被告物件」という。)。
イ 被告方法の使用等
被告は、被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに、被告方
法を使用していた。
被告は、被告方法により、被告キャビネットを製造していた。
ウ 被告物件の販売
被告キャビネットには、被告物件が取り付けられているから、被告キャ
ビネットを販売することは、被告物件を販売することとなる。
(6) 被告方法、被告物件の構成
ア 被告方法の構成
(ア) 被告方法の構成は、別紙1「被告方法目録(原告案)」(以下、別
紙1ないし9の各目録を引用する際には、「別紙(番号)」部分の記載を省略す
る。)記載のとおりである。
(イ) 被告方法目録(原告案)記載の方法の構成を分説すると、次のとお
りである。
(a1) 被告方法は、シンクキャビネット・ガスキャビネットの背板6に
形成された点検口6aを閉じる蓋7を、被告物件目録(原告案)記載の被告物件8
を使用することによって取り付ける。
被告物件8は、被告方法目録(原告案)別紙の第1図面のとおり、
基板8bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片8aと該挟持片8aより
短い掛支片8cが突設されており、断面はほぼS字形である。
(b1) 被告取付方法は、まず、被告物件8を、基板8bと挟持片8aと
の間で点検口6aの周端縁を挟持するように点検口6aの上下に取り付ける。
(c1) 次に、蓋7の下端縁を下方の被告物件8の基板8bと掛支片8c
との間に差し込み、蓋7を点検口6a側に押し付けた状態で上方の被告物件8を下
方に押し下げることにより、蓋7の上端縁を上方の被告物件8の基板8bと掛支片
8cとの間に差し込み、蓋7を点検口6aの前面に保持するようにする。
(d1) 以上が、被告方法による点検口6aの蓋7の取付方法である。
イ 被告物件の構成
(ア) 被告物件の構成は、被告物件目録(原告案)記載のとおりである。
(イ) 被告物件目録(原告案)記載の物件の構成を分説すると、次のとお
りである。
(a2) 被告物件8には、基板8bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有
する挟持片8aと掛支片8cが突設されており、断面はほぼS字形である。
(b2) 被告物件8においては、挟持片8aは基板8bとほぼ同寸であ
る。
(c2) 被告物件8においては、掛支片8cは該挟持片8aより短く形成
されている。
(d2) 被告物件8は、点検口6aの周端縁を挟持片8aと基板8bとの
間に差し込み挟持した状態で、蓋7の端縁を掛支片8cと基板8bとの間に差し込
み掛支することができるようになされている。
(e2) 被告物件8は、点検口6aの蓋7の取付方法に使用される物件で
ある。
(7) 対比
ア 本件方法発明
(ア) 被告方法の構成を本件方法発明の構成要件と対比すると、次のとお
りである。
被告方法の構成(a1)は構成要件AⅠを充足する。
被告方法の構成(b1)は構成要件BⅠを充足する。
被告方法の構成(c1)は構成要件CⅠを充足する。
被告方法の構成(d1)は構成要件DⅠを充足する。
(イ) したがって、被告方法は本件方法発明の技術的範囲に属する。
イ 本件物発明
(ア) 被告物件の構成を本件物発明の構成要件と対比すると、次のとおり
である。
被告物件の構成(a2)は構成要件AⅡを充足する。
被告物件の構成(b2)は構成要件BⅡを充足する。
被告物件の構成(c2)は構成要件CⅡを充足する。
被告物件の構成(d2)は構成要件DⅡを充足する。
被告物件の構成(e2)は構成要件EⅡを充足する。
(イ) したがって、被告物件は本件物発明の技術的範囲に属する。
(8) 特許権の侵害
ア 本件方法発明の侵害
(ア) 前記(7)(対比)ア(本件方法発明)(イ)記載のとおり、被告方法は
本件方法発明の技術的範囲に属する。
したがって、前記(5)(被告の行為)イ(被告方法の使用等)記載のと
おり被告が被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに被告方法を使用す
ることは、本件方法発明の侵害に当たる。
また、前記(5)イ記載のとおり被告が被告方法を使用して被告キャビネ
ットを製造することは、本件方法発明の侵害に当たる。
(イ) 被告が被告キャビネットの設置を下請業者に委託して行う場合は、
その設置は被告の行為とみられる。
また、被告が被告キャビネットを業者に販売し、業者がこれを設置す
る場合、業者は、被告の定めた仕様・設置方法により設置する他ない。被告は、シ
ンクキャビネットについて、「流し台 施工説明書」(甲第17号証)第2面
「5」において、「点検口の取りはずし方」を記載しているが、点検口を閉じる場
合は、必ず被告方法を使用しなければならない。そうすると、これらの業者は、被
告から指示され、被告方法を使用せざるを得ないから、被告は業者に対して被告方
法の使用を教唆している。したがって、被告は、このような販売後の業者による被
告方法の使用についても、民法719条に基づいて損害賠償責任を負う。
イ 本件物発明の侵害
前記(7)イ(本件物発明)(イ)記載のとおり、被告物件は本件物発明の技
術的範囲に属する。
したがって、前記(5)ウ(被告物件の販売)記載のとおり被告が被告キャ
ビネットを販売することは、被告物件を販売することとなり、本件物発明の侵害に
当たる。
(9) 損害
ア 被告が受けた利益
(ア) 算定方法
前記(8)(特許権の侵害)ア(本件方法発明の侵害)(ア)記載のとおり
被告が被告方法を使用して被告キャビネットを製造、設置することは、本件方法発
明の侵害に当たる。また、前記(8)イ(本件物発明の侵害)記載のとおり被告が被告
キャビネットを販売することは、本件物発明の侵害に当たる。
本件方法発明、本件物発明の侵害によって被告が受けた利益は、被告
キャビネットの販売により被告が得た利益の総額に、本件方法発明、本件物発明の
寄与率を乗じることにより求めることができる。
(イ) 利益額
a 被告キャビネットの価格
被告キャビネットのうち「セクショナルGSシリーズ」の点検口付
きシンクキャビネット・ガスキャビネットの平均販売価格は3万5010円、「シ
ステムキッチン シェルトBM」の点検口付きシンクキャビネット・ガスキャビネ
ットの平均販売価格は7万5195円であり、被告キャビネットの価格の平均は5
万5102円である((3万5010円+7万5195円)÷2=5万5102
円)。
b 販売台数
被告キャビネットの平成14年8月22日までの販売総数は、63
万台を下らない。
c 販売総額
被告キャビネットの販売総額は、347億1426万円である(5
万5102円×63万台=347億1426万円)。
d 利益率
被告キャビネットについての利益率は、35%である。
e 利益総額
被告キャビネットの販売により被告が得た利益の総額は、121億
4999万1000円である(347億1426万円×0.35=121億499
9万1000円)。
(ウ) 寄与率
本件方法発明の技術的範囲に属する被告方法を使用し、又は本件物発
明の技術的範囲に属する被告物件を備えた製品を販売することにより、被告は、製
造工程におけるコストダウン、据付工事の利便性・容易性、耐久性・信頼性の向
上、日本住宅性能表示規準による評価の向上等の利益を得ている。また、「セクシ
ョナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」のシリーズ中には
多くの製品があるが、各製品について、点検口付きのシンクキャビネット・ガスキ
ャビネットは、点検口のないものに比べて、定価が1台当たり3500円高く、各
製品のシンクキャビネット・ガスキャビネットの定価中に上記価格差が占める割合
は、4.7%ないし7.8%であり、平均で約6.27%である。これらの事情を
総合すると、上記点検口付きのシンクキャビネット・ガスキャビネットの販売によ
り被告が得た利益に対する本件方法発明、本件物発明の寄与率は、6%とするのが
妥当である。
したがって、被告が本件方法発明、本件物発明の侵害により得た利益
は、7億2899万9460円である(121億4999万1000円×0.06
=7億2899万9460円)。
(エ) 損害額
上記7億2899万9460円は、原告が受けた損害の額と推定され
る(特許法102条2項)。原告は、その内金3億9060万円を請求する。
イ 実施料相当額
(ア) 算定方法
単純方法の発明の実施は、その方法を使用することであって、その方
法を使用した物を製造又は販売することは、実施に当たらないが、単純方法の発明
の実施料相当額は、その発明を使用した物の売上額に実施料率を乗じて算定され
る。したがって、本件方法発明が単純方法の発明であるとしても、実施料相当額
は、被告キャビネットの販売総額に実施料率を乗じることにより求めることができ
る。
(イ) 実施料率
前記ア(ウ)記載のとおり、「セクショナルGSシリーズ」及び「シス
テムキッチン シェルトBM」の各製品について、点検口付きのシンクキャビネッ
ト・ガスキャビネットは、点検口のないものに比べて、定価が1台当たり3500
円高く、各製品のシンクキャビネット・ガスキャビネットの定価中に上記価格差が
占める割合は、平均で約6.27%である。
点検口部分は、蓋、点検口、蓋の取付機構によって構成されている
が、蓋や点検口はありふれた構成であるから、本件方法発明の実施料率は、点検口
部分の約10分の1であり、製品全体に対しては、上記6.27%の約10分の1
に当たる0.6%である。
また、被告キャビネット1台当たりの実施料相当額は、上記価格差の
10分の1に当たる350円であるともいえる。
(ウ) 実施料相当額
前記ア(イ)c記載のとおり、被告キャビネットの販売総額は347億
1426万円であるから、実施料相当額は、2億0828万5560円である(3
47億1426万円×0.006=2億0828万5560円)。
また、前記ア(イ)b記載のとおり、被告キャビネットの販売総数は6
3万台であるから、実施料相当額は、2億2050万円である(350円×63万
台=2億2050万円)。
これらの実施料相当額は、原告が受けた損害の額とされる(特許法1
02条3項)。
(10) 結論
よって、原告は、被告に対し、本件特許権の侵害による不法行為に基づく
損害賠償として3億9060万円、又は本件特許権の侵害による不法行為に基づく
損害賠償若しくは不当利得として実施料相当額2億0828万5560円、及び各
金員に対する不法行為若しくは請求の後である平成14年9月1日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否
(1) 請求原因(1)(当事者)の事実は認める。
(2) 請求原因(2)(特許権)ア、イは認める。
(3) 請求原因(3)(特許発明の構成要件)ア、イは認める。
(4)ア(ア) 請求原因(4)(特許発明の実施)ア(本件方法発明の実施)(ア)
(単純方法の発明と物を生産する方法の発明)のうち、特許庁の「特許法第36条
の改正に伴う審査の運用指針」中に「物を生産する方法の発明には、物の製造方
法、物の組立方法、物の加工方法などがあるが、いずれの場合も、ⅰ)原材料、
ⅱ)その処理工程、及びⅲ)生産物の三つから成る。」と記載されていることは認
め、その余は争う。
(イ) 請求原因(4)ア(イ)(本件方法発明)は争う。
(ウ) 請求原因(4)ア(ウ)(実施)のうち、本件方法発明の技術的範囲に属
する方法の使用が本件方法発明の実施に当たる(特許法2条3項2号)ことは認
め、その余は争う。ただし、被告方法は、本件方法発明の技術的範囲に属さない。
(エ) 物の組立方法は、物を生産する方法の発明である。しかし、被告キ
ャビネットの点検口は、製品の開口部分を指すものであって、部品でも独立した物
でもないから、点検口を組み立てるということ自体、無意味なことである。また、
本件方法発明により蓋の取付方法を実施することによって「点検口」が新たに出現
するのではなく、もともと存在する点検口の蓋が外された状態(これも点検口であ
ることに変わりはない)から取り付けられた状態になるにすぎず、これをもって物
の生産方法の発明であるということはできない。本件方法発明は、シンクキャビネ
ット・ガスキャビネットの生産方法や組立方法に関する発明ではなく、点検口の組
立方法に関する発明でもなく、点検口の蓋の取付方法に関する発明である。本件方
法発明は、その記載の仕方をみても、点検口の蓋の取付方法を時間的要素に従って
規定しているから、単純方法に関する発明である。
イ 請求原因(4)イ(本件物発明の実施)は認める。
(5)ア 請求原因(5)(被告の行為)ア(キッチンシステムの製造販売)の事実
は認める。
イ 請求原因(5)イ(被告方法の使用等)のうち、被告が被告キャビネットを
製造するとき及び設置するときに、被告方法を使用していたことは認め、その余は
否認する。ただし、被告方法の構成は、後記(6)ア記載のように、被告第1方法目録
(被告案)及び被告第2方法目録(被告案)記載のとおりである。
ウ 請求原因(5)ウ(被告物件の販売)は認める。ただし、被告物件(取付
具)の販売という本件物発明の侵害に対する損害賠償は、被告物件の価格を基準に
算定すべきである。
(6)ア 請求原因(6)(被告方法、被告物件の構成)ア(被告方法の構成)
(ア)、(イ)は否認する。
被告方法の構成は、平成8年5月ごろから平成12年9月6日までは、
被告第1方法目録(被告案)記載のとおりであり、同月7日から平成14年8月2
2日までは、被告第2方法目録(被告案)記載のとおりである。
イ 請求原因(6)イ(被告物件の構成)(ア)、(イ)は否認する。
被告物件の構成は、被告物件目録(被告案)記載のとおりである。
(7)ア 請求原因(7)(対比)ア(本件方法発明)(ア)、(イ)は争う。
イ(ア) 請求原因(7)イ(本件物発明)(ア)は争う。ただし、被告物件目録
(被告案)記載の被告物件の構成が本件物発明の構成要件を充足することは認め
る。
(イ) 請求原因(7)イ(イ)は認める。
(8)ア(ア) 請求原因(8)(特許権の侵害)ア(本件方法発明の侵害)(ア)は争
う。
(イ) 請求原因(8)ア(イ)のうち、被告が被告キャビネットの設置を下請業
者に委託して行う場合、その設置が被告の行為とみられることは認め、その余は争
う。
被告の「流し台 施工説明書」(甲第17号証)には「点検口の取り
はずし方」が記載されているが、本件方法発明の手順に従った「点検口の蓋の取付
方法」は記載されておらず、しかも、被告キャビネットの点検口の取付方法には、
被告第1方法目録(被告案)及び被告第2方法目録(被告案)記載の2種類がある
から、上記の「流し台 施工説明書」の記載をもって、被告が業者に対して点検口
の蓋を取り付ける方法を指示したことにはならない。したがって、被告は、販売後
の業者による被告方法の使用について、民法719条に基づいて損害賠償責任を負
うことはない。
被告キャビネットの設置における被告の自社施工率は13%である。
イ 請求原因(8)イ(本件物発明の侵害)は争う。
(9)ア(ア) 請求原因(9)(損害)ア(被告が受けた利益)(ア)ないし(エ)のう
ち、被告キャビネットの平成14年8月22日までの販売総数が63万台を下らな
いこと((イ)b)は認め、その余は争う。
(イ) 本件方法発明は、物を生産する方法の発明ではなく、単純方法の発
明であるから、仮に被告方法が本件方法発明の技術的範囲に属するとしても、本件
方法発明に係る特許権の侵害による損害額を算定するに当たって、被告キャビネッ
トの価格や点検口の価格を基準とすることはできない。
(ウ) 本件物発明は「取付具」に係る発明であるから、その侵害行為は
「取付具」の譲渡であり、これに対する損害賠償の額は、「取付具」の価格を基準
に算定されるべきであり、被告キャビネットの価格に寄与率を乗じて算定するのは
不適当である。
また、「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェ
ルトBM」について、被告物件目録(被告案)記載の取付具を備える前の製品、及
びその備付けを取りやめた後の製品についても、点検口付きの製品の定価は、点検
口の付いていない製品の定価よりも3500円高いから、この価格差を寄与率算定
の根拠とすることはできない。
被告は、被告物件目録(被告案)記載の被告物件(取付具)を訴外会
社から購入しており、その発注単価は1個当たり7.12円であったから、本件物
発明に係る特許権の侵害による損害賠償は、この金額を基準に算定すべきである。
イ(ア) 請求原因(9)イ(ア)ないし(ウ)は争う。
(イ)a 本件方法発明は単純方法の発明であるから、仮に被告方法が本件
方法発明の技術的範囲に属するとしても、実施料相当額を算定するに当たっては、
被告キャビネットの価格や点検口の価格を基準とすることはできず、被告方法の使
用(一種の役務提供と考えられる)の対価を基準としなければならない。
b 被告方法の使用という役務の原価、すなわち点検口の蓋を取り付け
るのに要する費用は、次のように求められる。
(a) 被告キャビネットの場合、点検口の蓋を点検口に取り付けるの
に、ⅰ)4個の取付具を取り付けるのに6秒、ⅱ)点検口の蓋を取付具に挟み込
み、取付具をスライドさせるのに4秒の合計10秒を要する。
(b) 被告の平成14年当時の組立加工賃は1時間当たり4040円で
あり、1秒間当たり1.12円である。
(c) 被告キャビネットは自社生産しているので、被告方法の使用とい
う役務の原価、すなわち点検口の蓋を取り付けるのに要する費用は、1点検口当た
り11.2円(1.12円×10秒=11.2円)となる。
c 被告方法の使用という役務の原価に対する利益率は10%を超える
ことはないから、被告方法の使用という役務についての市場価格は、12.32円
(11.2円×1.1=12.32円)である。
d 被告方法の使用という役務について得られる利益は、市場価格に実
施料率を乗じて算定されるところ、実施料率は10%を超えることはないから、実
施料は1点検口当たり1.23円である(12.32円×0.1=1.23円)。
e なお、原告は、原告の製品について、点検口の蓋を取り付けるのに
要する費用が1点検口当たり16円であるとしているから、その額を基準として
も、実施料率が10%であれば、実施料は1点検口当たり1.6円である。
f 被告方法の使用による本件方法発明の実施料相当額は、次のとおり
求められる。
(a) 製造についての実施料相当額
前記(9)ア(ア)記載のとおり、被告キャビネットの販売総数は63
万台であるから、製造についての実施料相当額は、1点検口当たりの実施料が1.
23円であるとした場合は77万4900円であり、1点検口当たりの実施料が
1.6円であるとした場合は100万8000円である(1.23円×63万個=
77万4900円、1.6円×63万個=100万8000円)。
(b) 設置についての実施料相当額
前記(8)ア(イ)記載のとおり、被告キャビネットの設置における被
告の自社施工率は13%であるから、設置についての実施料相当額は、1点検口当
たりの実施料が1.23円であるとした場合は10万0737円であり、1点検口
当たりの実施料が1.6円であるとした場合は13万1040円である(1.23
円×63万個×0.13=10万0737円、1.6円×63万個×0.13=1
3万1040円)。
(c) 実施料相当額の合計
実施料相当額の合計は、1点検口当たりの実施料が1.23円で
あるとした場合は87万5637円であり、1点検口当たりの実施料が1.6円で
あるとした場合は113万9040円である(77万4900円+10万0737
円=87万5637円、100万8000円+13万1040円=113万904
0円)。
したがって、実施料相当額は、87万5637円であり、多くとも
113万9040円を超えることはない。
3 抗弁
(1) 信義則違反又は時機に後れた攻撃防御方法
原告は、平成15年4月15日の第2回口頭弁論期日で陳述した同日裁判
所受付けの原告第1準備書面において、本件方法発明の侵害に基づく主張は撤回す
る旨主張した。しかし、原告は、同年10月15日の第5回口頭弁論期日で陳述し
た同年8月18日付けの原告第6準備書面において、本件方法発明の侵害に基づく
主張を再度行っている。
近時、知的財産権に関する訴訟の促進が図られ、計画審理が励行されてい
る中で、原告のこのような訴訟態度は到底許容されない。原告のこのような訴訟態
度は、訴訟手続における当事者間の関係を律する信義誠実の原則に反するものであ
り、また、いたずらに審理を複雑にし、その進行を著しく遅延させるものであっ
て、時機に後れた攻撃防御方法の提出に当たる。したがって、原告の本件方法発明
の侵害に関する主張は、却下されるべきである。
(2) 明白な無効理由
ア 本件物発明
(ア) 本件物発明の構成
本件物発明の構成要件EⅡには、「点検口の蓋の取付方法に使用され
る」という用途が記載されている。いわゆる用途発明は、構造等から見出すことが
困難な未知の性質(属性)を発見し、その性質により物を一定の目的に利用したと
ころに特許性(新規性)が認められる。そこで、ある請求項中に、物をその用途に
よって特定しようとする明示の記載(用途限定)がある場合、明細書及び図面の記
載並びにその技術分野の出願時の技術常識を考慮して、その記載が①その用途に特
に適した物、②その用途にのみもっぱら使用される物、又は③その用途に特に適
し、かつその用途にのみもっぱら使用される物のいずれを意味しているかを判断し
(特許庁審査基準参照)、その新規性を判断しなければならない。
本件物発明の構成要件AⅡないしDⅡの構成を備える取付具は、その
構造からして、双方向から板状の物を挟持するという性質(属性)を有しており、
それを点検口の蓋の取付方法という用途に使用することには何らの技術的な工夫も
要らず、困難もない。そうであるとすると、構成要件EⅡに「点検口の蓋の取付方
法に使用される」という用途についての記載があるとしても、本件物発明に係る取
付具は、上記①ないし③の3種類の物に該当することはなく、本件物発明は、用途
発明の実質を備えていない。したがって、本件物発明に係る取付具は、構成要件A
ⅡないしDⅡの構成を備える取付具ということとなる。
(イ) 特許法29条1項3号、2項
a ニフコ社製クリップ
本件方法発明と株式会社ニフコ社が昭和62年に作成したカタログ
(乙第1号証、以下「乙1カタログ」という。)に掲載されたニフコ社製クリップ
目録記載のクリップ(以下「ニフコ社製クリップ」という。)を対比すると、次の
とおりである。
(a) 一致点
ニフコ社製クリップの「クリップ」、「基板73b」、「保持片
73a」、「保持片73c」は、本件物発明の「取付具」、「基板」、「挟持
片」、「掛支片」に相当し、ニフコ社製クリップと本件物発明はいずれも断面がほ
ぼS字形であり、ニフコ社製クリップの構成(a8)ないし(c8)は、本件物発明の構成
要件AⅡないしCⅡをそれぞれ充足し、客観的構成は一致している。
(b) 相違点
本件物発明は、点検口の周端縁を基板と挟持片との間に差し込み
挟持した状態で、蓋の端縁を基板と掛支片との間に差し込み掛支することができる
ようにしたものであることを特徴とする点検口の取付方法に使用される取付具であ
る。これに対し、ニフコ社製クリップは、車のフェンダープロテクターを保持片7
3cと基板73bとの間に差し込み挟持した状態でフェンダーを保持片73aと基
板73bとの間に差し込み保持することができるようになされたものであることを
特徴とする車のフェンダープロテクターの取付に使用されるクリップである。
(c) 相違点に対する検討
本件物発明とニフコ社製クリップは、単に用途が相違するにすぎ
ないところ、前記(ア)記載のとおり、本件物発明は用途発明の実質を備えておら
ず、用途の相違によって新規性、進歩性が基礎づけられることはない。したがっ
て、ニフコ社製クリップは、構成要件AⅡないしDⅡの構成を備える取付具と同一
であり、本件物発明と同一である。
b イートン社製クリップ
本件物発明とイートン社(EatonCorporation)が昭和60年(19
85年)に発行した製品カタログ(乙第5号証、以下「乙5カタログ」という。)
に記載されたイートン社製クリップ目録記載のクリップ(以下「イートン社製クリ
ップ」という。)を対比すると、次のとおりである。
(a) 一致点
イートン社製クリップの「クリップ」、「基板11b」、「挟持
片11a」、「挟持片11c」は、本件物発明の「取付具」、「基板」、「挟持
片」、「掛支片」に相当し、イートン社製クリップと本件物発明はいずれも断面が
ほぼS字形であり、イートン社製クリップの構成(a9)ないし(c9)は、本件物発明の
構成要件AⅡないしCⅡをそれぞれ充足する。
そして、イートン社製クリップを点検口の蓋の取付方法に使用す
ることに何ら不都合はなく、その場合、イートン社製クリップは、点検口の周端縁
を基板11bと挟持片11aとの間に差し込み挟持した状態で点検口の蓋の端縁を
基板11bと挟持片11cとの間に差し込み挟持することができる構造になってい
る。
(b) 相違点
本件物発明の取付具は、点検口の蓋の取付方法に使用される物で
あるのに対し、イートン社製クリップは、パネルの取付に使用されるクリップであ
る。
(c) 相違点に対する判断
本件物発明とイートン社製クリップは、単に用途が相違するにす
ぎず、イートン社製クリップは、構成要件AⅡないしDⅡの構成を備える取付具と
同一であり、本件物発明と同一である。
c その他の公知例
実開昭58-100691号公報(乙第4号証、以下「乙4公報」
という。)の第3図に記載された取付具、乙5カタログの36頁に「゙S″CLIPS」と
して記載された各種クリップ(以下「Sクリップ」という。イートン社製クリップ
もその内に含まれている。)、及び実開平6-30509号公報(乙第6号証、以
下「乙6公報」という。)の第8図に記載された取付具は、本件物発明の構成要件
AⅡないしDⅡの構成を備えており、本件物発明と同一である。
d 新規性、進歩性の有無
以上によれば、本件物発明は、その特許出願前に日本国内又は外国
において頒布された刊行物に記載された発明と同一であるから、新規性がない。
仮に、点検口の蓋の取付方法に使用されるという用途に何らかの意
味があり、本件物発明に新規性があるとしても、それは、当業者が、ニフコ社製ク
リップやイートン社製クリップを始めとする周知技術を蓋の取付方法に適用したも
のにすぎず、そのような用途は当業者が適宜選択することができる事項にすぎない
から、本件物発明は、当業者が、その特許出願前に日本国内又は外国において頒布
された刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであ
って、進歩性がない。
したがって、本件物発明に係る特許は、特許法29条1項3号又は
同法29条2項に違反して特許されたものであり、同法123条1項2号の無効理
由が存在することが明らかである。
(ウ) 特許法29条1項柱書
前記(ア)記載のとおり、本件物発明は、構成要件EⅡに用途が記載さ
れているが、用途発明の実質を備えていない。
したがって、本件物発明は、産業上利用することができる発明に該当
せず、本件物発明に係る特許は、特許法29条1項柱書に違反して特許されたもの
であり、同法123条1項2号の無効理由が存在することが明らかである。
(エ) 特許法29条2項
後記のとおり、被告従来方法目録記載の方法(以下「被告従来方法」
という。)は、本件特許発明の出願前に日本国内において公然実施をされていた。
被告従来方法における取付具を、本件特許発明の出願前に公知であっ
たニフコ社製クリップ、イートン社製クリップ、乙4公報の第3図に記載された取
付具又は乙6公報の第8図に記載された取付具に置き換えることは、当業者にとっ
て容易であった。
したがって、本件物発明は、当業者が、その特許出願前に日本国内に
おいて公然実施をされていた被告従来方法に基づいて容易に発明をすることができ
たものであるから、本件物発明に係る特許は、特許法29条2項に違反して特許さ
れたものであり、同法123条1項2号の無効理由が存在することが明らかであ
る。
イ 本件方法発明
(ア) 被告は、本件特許発明の出願前、点検口の蓋を取り付けるために、
被告従来方法を使用しており、被告従来方法において点検口の前面に取り付けられ
た蓋は、被告従来方法蓋部目録記載の蓋であった。
本件方法発明と被告従来方法を対比すると、次のとおりである。
a 一致点
本件方法発明と被告従来方法は、取付具(蓋上エッヂ部材及び蓋下
エッヂ部材)の基板と挟持片(保持片71a、72a)との間に点検口の周端縁
(背板)を挟み込み、基板と掛支片(保持片71c、72c)との間に蓋(蓋本
体)を挟み込んで、点検口を閉じる蓋を取り付ける、点検口の蓋の取付方法である
点で一致する。
b 相違点
(a) 相違点①
本件方法発明では、基板の表面側と裏面側に、挟持片と、挟持片
より短い掛支片が突設された断面ほぼS字形の取付具が用いられる。これに対し、
被告従来方法では、断面形状が被告従来方法蓋部目録第1図面、第3図のような、
蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72が用いられる。
(b) 相違点②
本件方法発明では、取付具の基板と挟持片との間で点検口の周端
縁を挟持するようにして、取付具を予め点検口の上下に取り付けた後、蓋を取り付
ける。これに対し、被告従来方法では、予め蓋上エッヂ部材71の基板71bと保
持片71cとの間に蓋本体70の上端部を、蓋下エッヂ部材72の基板72bと保
持片72cとの間に蓋本体70の下端部を、それぞれ接着して挟み込み、蓋7と
し、この蓋7を点検口に取り付ける。
(c) 相違点③
本件方法発明は、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との
間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げる
ことにより、蓋の上端縁を上方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点
検口の前面に保持するようにする。これに対し、被告従来方法は、蓋7の蓋上エッ
ヂ部材71の基板71bと保持片71cとの間に背板6の上辺部を挟み込み、蓋7
を点検口開口部6a側に押し付けた状態で下方に押し下げることにより、蓋7の蓋
下エッヂ部材72の基板72bと保持片72aとの間に背板6の下辺部を挟み込
み、蓋7を点検口の前面に保持するようにする。
(d) 相違点④
本件方法発明では、基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有す
る挟持片と掛支片とが突設され、その弾性力で点検口の周端縁及び蓋を挟み込む。
これに対し、被告従来方法では、蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72は、
基板71b、72bと保持片71c、72cとの間にそれぞれ蓋本体70の上端
部、下端部を両面テープで接着して挟み込む。
c 相違点に対する検討
(a) 相違点①について
本件方法発明に用いられる取付具のほぼS字形の断面形状と、被
告従来方法に用いられる蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72の断面形状
は、厳密にみれば相違する。
しかし、本件方法発明に用いられる取付具がほぼS字形の断面形
状に形成されているのは、基板と挟持片との間で点検口の周端縁を挟持し、蓋の端
縁を基板と掛支片との間に差し込むように用いるためであり、そのためには、基板
の表面側と裏面側にそれぞれ保持片が設けられていればよく、その断面形状は、被
告従来方法蓋部目録第1図面、第3図に示されるようなもので足りる。
また、本件方法発明の取付具において、掛支片が挟持片より短く
形成されている理由は、本件明細書の記載(本件公報5欄12行ないし19行)か
らも明らかなように、上方の取付具を下方に押し下げて蓋を保持した際に上方の取
付具が点検口の周端縁から外れないようにするためであるから、下方の取付具の掛
支片が挟持片より短く形成されている必要はない。そうであるとすると、被告従来
方法の蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72は、本件方法発明の上方及び下
方の取付具と同様の構造、機能を備えているといえる。
さらに、被告従来方法に用いられる蓋上エッヂ部材71及び蓋下
エッヂ部材72の形状をニフコ社製クリップの形状にすることは、当業者にとって
容易なことである。
したがって、相違点①は実質的な相違点ではない。
(b)相違点②及び③について
点検口の蓋の取付という観点からみれば、本件方法発明と被告従
来方法は、最初に点検口周端縁に取付具を付けた後に蓋を付けるか(本件方法発
明)、蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72を蓋本体70に取り付けた後に
その蓋を点検口開口部6aの周辺を形成する背板6に付けるか(被告従来方法)と
いう差異はあるものの、いずれの取付方法も、取付具及びエッヂ部材が下方に押し
下げられることにより蓋が保持され、取付具及びエッヂ部材の点検口の周辺に対す
る動きは同一であり、蓋の取付が完了した時点での上下の取付具及びエッヂ部材の
位置も同一である。
また、点検口の蓋の取付方法に限らず、開口部を閉塞する部材を
取り付ける場合、開口部上下に溝を切って鴨居と敷居とし、ふすまを鴨居の上部の
溝にはめ込んでから垂直にして開口部に押し付けるようにしながら下方に落として
設置する方法は周知であり、本件方法発明と被告従来方法は、背板に取付具をはめ
込んで溝を作出するか(本件方法発明)、蓋本体にエッヂ部材を取り付けて蓋自体
に溝を作出するか(被告従来方法)という取付の順序に差異こそあれ、取り付ける
際の工程(上溝にはめ込み下方に下げる工程)は全く同様であり、相違点である取
付の順序は、当業者が適宜選択し得る事項である。
さらに、本件方法発明も被告従来方法も、「取付具の裏面側に形
成された挟持片は、中央の基板との間で点検口を形成した板体の端縁を挟持して取
付具をこの板体に着脱可能に取り付ける。また取付具の表面側に形成された掛支片
は、取付具が蓋の方向に移動されることにより、基板との間で蓋の端縁を掛支し、
蓋を点検口を閉じるように板体に固定する。この蓋は、ビスなどの固定具を用いる
こと無く容易に着脱可能となる。」(本件公報4欄9行ないし16行)という作用
効果を奏する点で同一である。
(c) 相違点④について
板状の物体を取付具の基板と片とによって形成される溝内に保持
する方法として、片の弾性力を利用するかそれとも両面テープ等の接着力を利用す
るかは、当業者が適宜選択し得る事項である。
また、ニフコ社製クリップのように、弾性力を有する保持片と基
板との間に板状の物体を双方向から挟み込んで取り付ける取付具は、本件特許発明
の出願前から周知であり、しかも、このような取付具は、板状の物体を双方向から
挟み込むことによって開口部(ニフコ社製クリップの場合はフェンダーとフェンダ
ープロテクターの間の開口部)を塞ぐという作用を有している。
したがって、被告従来方法の蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ
部材72のように蓋本体70を挟み込んで保持し両面テープで接着することに代え
て、弾性片によって挟み込んで保持することは、当業者であれば容易になし得るこ
とである。
(イ) したがって、本件方法発明は、被告従来方法にニフコ社製クリップ
を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたものであるか
ら、本件特許は、特許法29条2項に違反して特許されたものであり、同法123
条1項2号の無効理由が存在することが明らかである。
4 抗弁に対する認否
(1)ア 抗弁(1)は争う。
イ(ア) 原告が本件方法発明の侵害に基づく主張を撤回する旨主張した第2
回口頭弁論期日の時点では、被告が主張する本件物発明に関する無効理由は、特許
法29条2項違反(進歩性欠如)のみであり、引用資料はニフコ社製クリップが記
載された乙1カタログと被告従来方法だけであった。その後、被告は新たに特許法
29条1項3号違反(刊行物記載による新規性欠如)、同条1項柱書違反(発明の
不成立)による無効理由を追加し、引用資料として、乙4公報、乙5カタログ、乙
6公報を追加し、かつ本件物発明について平成15年6月3日付けで無効審判(無
効2003-35233号)を請求した。そこで、原告は、新たな無効理由や引用
資料に対応するため、平成15年8月18日付けの原告第6準備書面において、本
件方法発明の侵害に基づく損害賠償の主張を予備的主張として追加した(以下「本
件予備的主張」という。)。原告は、前記無効審判について、同月25日付けの審
判事件答弁書を提出するとともに、同日付けで、本件物発明の構成要件EⅡの部分
を「請求項1記載の点検口の蓋の取付方法に使用する取付具」と訂正することを内
容とする訂正請求を行い、同訂正に関連する同年9月3日付けの原告第7準備書面
を提出した。原告第6準備書面及び原告第7準備書面は、同年10月15日の第5
回口頭弁論期日において陳述された。
(イ) このように、原告が原告第6準備書面において本件予備的主張を追
加した時点においては、当事者間に侵害論の主張立証が継続していたから、本件予
備的主張は、被告による無効理由の主張への対応として合理的な範囲内のものであ
る。また、本件予備的主張は、本件方法発明が物を生産する方法の発明であるこ
と、損害額が実施料相当額であることなど、従前の主張に含まれていない内容のも
のであるから、同一の主張を蒸し返しではない。さらに、本件予備的主張は、実体
的真実に合致している。訴訟上の信義則違反とは、訴訟制度の目的や趣旨に照らし
て容認できないような訴訟行為を意味すると解すべきであるところ、上記のような
事情からすると、本件予備的主張は、訴訟上の信義則に違反することはない。
ウ 本件予備的主張が行われた経緯は、前記イ(ア)記載のとおりであり、本
件予備的主張は訴訟の完結を遅延させるものではなく、また計画審理を阻害するも
のでもないから、時機に後れたとはいえない。
(2)ア 抗弁(2)ア(本件物発明)、イ(本件方法発明)は、いずれも争う。
イ 抗弁(2)アについて
(ア) 本件物発明は、構成要件DⅡ及びEⅡによって、取付具の機能や用
途が一義的に特定されており、当業者が明細書及び図面並びにその技術分野の出願
当時の技術常識を考慮すれば、本件物発明に係る取付具は、点検口の蓋の取付のた
め特定の態様で用いられる取付具を意味していると理解される。用途発明の新規性
を判断する上では、その発明と対比される発明も用途発明でなければならないが、
構成要件DⅡ及びEⅡは、本件物発明の出願前に頒布された刊行物に記載されてい
ないから、それらによって本件物発明の新規性が否定されることはない。
(イ)a ニフコ社製クリップは自動車部品であるから、技術分野の異なる
流し台等の点検口に用いる動機付けに乏しい。
ニフコ社製クリップの課題は、フェンダープロテクターとフェンダ
ーを連結することにあり、同クリップが掲載された乙1カタログにも、点検口のよ
うな空間を閉塞するという記載はないのに対し、本件方法発明の課題は、点検口を
閉塞することにあるから、両者に課題の共通性はない。
ニフコ社製クリップは、一方の挟持部にフェンダープロテクターを
差し入れ、他方の挟持部にフェンダーを取り付け、フェンダープロテクターのもう
一方の端を車体にねじ止めするという方法で使用されるものであり、フェンダープ
ロテクターは、点検口の蓋のように着脱することができない。したがって、ニフコ
社製クリップの作用、機能は、本件方法発明のような、「取付具を点検口の上下端
縁に取り付けておき、その後、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に
差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げる」と
いう作用、機能とは相違する。
本件物発明の挟持片と掛支片は、弾性を有するとされているが、弾
性を有するものとする技術的な意味は、点検口の上下端縁を比較的緩やかに挟み込
み、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に
押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることができるようにするという
点にある。しかし、ニフコ社製クリップは、フェンダープロテクターとフェンダー
を挟持部に挟み込むものであり、乙1カタログには、挟持部が狭く剛性のあるクリ
ップが掲載されている。このような挟持部が狭く剛性のあるクリップで、挟持部に
点検口の上下端縁を挟み込み、本件方法発明のように蓋をスムーズに取り付けるこ
とは想定できない。
本件方法発明では、本件公報の図3のように、まず、点検口の下端
縁に取り付けられた取付具の基板8bと掛支片8cの間に蓋7の下端縁を差し込む
が、この際、掛支片8cがあまりに長いと差し込みが困難である。差し込んだ後、
本件公報の図4のように、蓋7を点検口側に押し付ける状態を保つ必要があるが、
この際、上方の取付具の掛支片8cが短くないと、蓋7が同掛支片8cに衝突して
しまい、蓋7を点検口側に押し付けることができなくなってしまう。そこで、本件
方法発明では、上下の取付具の掛支片8cは挟持片8a及び基板8bよりも短くさ
れている。しかし、ニフコ社製クリップは、一方の保持片73cは他方の保持片7
3aよりもやや短くされてはいるものの、本件公報の図4のように蓋7を点検口側
に押し付けることができる程度には短くなっているとはみられず、少なくとも乙1
カタログからは、長さの程度は不明であり、乙1カタログに、本件方法発明の「挟
持片より短い掛支片」が実質的に記載されているとはいえない。
したがって、ニフコ社製クリップを本件物発明及び本件方法発明に
転用することは困難である。
b イートン社製クリップが掲載された乙5カタログには、各種の形状
のファスナーが記載されているが、その説明文には、用途や機能に関する具体的な
説明はなく、本件物発明の構成要件DⅡ及びEⅡは記載されていない。
c 乙4公報にはクリップ状の部材が記載されているが、同部材は、片
方の溝に洗面ボール3の前縁を垂下させたエプロン部4を取り付け、カバーパネル
6の上縁を同部材の差込溝5に嵌め込むものであって、点検口の蓋の取付とは関係
がなく、乙4公報には、本件物発明の構成要件DⅡ及びEⅡは記載されていない。
乙6公報にはクリップが記載されているが、同公報記載の考案は、
自動車部品に関するものであり、その目的は、クリップを被取付物へ取り付ける場
合、被取付物に傷が付かずかつ取り付けた被取付物が容易に外れないようにするこ
とにあり、上部挟持片1bの先端側を折り曲げて係合爪10を設け、上部挟持片1
bに押圧片11を形成するものであって、点検口の蓋の取付とは関係がなく、乙6
公報には、本件物発明の構成要件DⅡ及びEⅡは記載されていない。
また、乙4公報及び乙6公報は、本件特許発明の審査の過程におい
て、刊行物提出によって特許庁に提出され、審査官による審査を経ている。
(ウ) したがって、本件物発明に係る特許には、無効理由は存在しない。
ウ 抗弁(2)イについて
被告従来方法は、蓋体と取付具をあらかじめ一体化させ、その後、一体
化させた部材を点検口開口部に取り付けるものである。したがって、本件方法発明
のように、取付具のみを点検口の上下に取り付けておき、その後、蓋の下端縁を下
方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上
方の取付具を下方に押し下げるだけで簡便に点検口をふさぐという技術的事項は、
被告従来方法には開示又は示唆されていない。
被告従来方法のエッヂ部材は、本件方法発明に使用される取付具と異な
り、弾性体ではない。また、本件方法発明では、上下の取付具の形状が同一である
のに対し、被告従来方法では、被告従来方法目録第4図のように片側(上側)の係
合状態を保ちつつ、他方側(下側)の係脱が行えるようにするため、蓋上エッヂ部
材と蓋下エッヂ部材の形状が異なる。被告従来方法におけるエッヂ部材は、点検口
の周端縁を挟み込む部分と蓋の端縁を挟み込む部分を別々に考えて単にこれを結合
させたため、基板に相当する部分を延出させた複雑な形状となっており、対象物の
端縁を固定するだけの従来技術以上のものではなく、本件方法発明に使用される取
付具のように着脱性を考慮したものではない。さらに、効果の面からみても、本件
方法発明には、着脱容易であることや製造上のコストダウンという点において、被
告従来方法を超えた格段に有利な効果がある。
そうであるとすると、被告従来方法には、本件方法発明を想到する契機
や動機付けが認められず、被告従来方法から本件方法発明を想到することはできな
い。
したがって、本件方法発明に係る特許には無効理由が存在しない。
 理       由
1 請求原因(1)ないし(8)について検討する。
(1) 請求原因(1)(当事者)の事実は当事者間に争いがない。
(2) 請求原因(2)(特許権)ア、イは当事者間に争いがない。
(3) 請求原因(3)(特許発明の構成要件)ア、イは当事者間に争いがない。
(4)ア(ア) 請求原因(4)(特許発明の実施)ア(本件方法発明の実施)(ア)(単
純方法の発明と物を生産する方法の発明)のうち、特許庁の「特許法第36条の改
正に伴う審査の運用指針」中に「物を生産する方法の発明には、物の製造方法、物
の組立方法、物の加工方法などがあるが、いずれの場合も、ⅰ)原材料、ⅱ)その
処理工程、及びⅲ)生産物の三つから成る。」と記載されていること、請求原因(4)
ア(ウ)(実施)のうち、本件方法発明の技術的範囲に属する方法の使用が本件方法
発明の実施に当たる(特許法2条3項2号)ことは、当事者間に争いがない。
(イ) 物を生産する方法の発明には、物の製造方法、物の組立方法、物の加
工方法などがあり得るところ、特許法2条3項3号は、物を生産する方法の発明に
ついて、その方法により生産した物の使用、譲渡若しくは輸入又は譲渡等の申出を
する行為が実施に当たる旨規定している。したがって、物を生産する方法の発明に
おいて、生産される物、すなわち製造、組立、加工などの対象とされる物は、少な
くとも、譲渡又は輸入の対象となり得るような独立性のある物でなければならない
というべきである。
本件方法発明は、点検口の蓋の取付方法に係るものであるが、点検口
は、シンクキャビネット・ガスキャビネットの背面の板部に設けられた開口部であ
り、本件方法発明を使用して点検口に蓋が取り付けられたとしても、蓋の取り付け
られた点検口は、シンクキャビネット・ガスキャビネットの背面の一部分をなすに
すぎず、譲渡又は輸入の対象となり得るような独立性のある物であるとは認められ
ない。したがって、本件方法発明は、物を生産する方法の発明ではないというべき
である。本件方法発明は、その内容からして、単純方法の発明であるというべきで
ある。
(ウ) 原告は、点検口を備えるシンクキャビネット・ガスキャビネットの製
造の過程において、本件方法発明の実施によって点検口に蓋を取り付けることによ
り、シンクキャビネット・ガスキャビネットが完成するし、その設置の過程におい
ても、本件方法発明の実施によって蓋を取り付けることにより、据付けを終了する
から、本件方法発明の実施は、特許法上の「生産」に他ならない旨主張する。
しかし、本件方法発明に係る点検口の蓋の取付方法がシンクキャビネッ
ト・ガスキャビネットの製造、設置の過程に組み込まれていたとしても、本件方法
発明はあくまでも点検口の蓋の取付方法を内容としており、シンクキャビネット・
ガスキャビネットの製造方法、組立方法の発明ではないから、本件方法発明によっ
てシンクキャビネット・ガスキャビネットが製造されるとはいえず、したがって、
原告の主張は、採用することができない。
イ 請求原因(4)イ(本件物発明の実施)は当事者間に争いがない。
(5)ア 請求原因(5)(被告の行為)ア(キッチンシステムの製造販売)の事実は
当事者間に争いがない。
イ 請求原因(5)イ(被告方法の使用等)のうち、被告が被告キャビネットを製
造するとき及び設置するときに、被告方法を使用していたことは、当事者間に争い
がない。
被告方法は、点検口の蓋の取付方法であるから、被告方法が被告キャビネ
ットの製造、設置の過程に組み込まれていたとしても、被告が被告方法によって被
告キャビネットを製造しているものとは認められない。
ウ 請求原因(5)ウ(被告物件の販売)は当事者間に争いがない。
(6)ア(ア) 請求原因(6)(被告方法、被告物件の構成)ア(被告方法の構成)に
ついて検討する。
弁論の全趣旨によれば、被告方法の構成は、平成8年5月ごろから平成
12年9月6日までは、被告第1方法目録(被告案)記載のとおりであり、同月7
日から平成14年8月22日までは、被告第2方法目録(被告案)記載のとおりで
あると認められる。
(イ)a 被告第1方法目録(被告案)記載の方法は、被告キャビネットに設
けられた点検口の前面に蓋を取り付ける方法であり、その構成を分説すると、次の
とおりである。
(a3) 点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上部及び下部の各右
方部分と各左方部分の合計4か所を、それぞれ被告物件目録(被告案)記載の取付
具8の基板8bと弾性片8aで挟み込んで保持する工程
(b3) 蓋7の下端部の右方部分と左方部分を前記下部に保持された各取
付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程
(c3) 蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で、前記上部に保持
された各取付具8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端部を前記上部に保持
された各取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程
b 被告第2方法目録(被告案)記載の方法は、被告キャビネットに設け
られた点検口の前面に蓋を取り付ける方法であり、その構成を分説すると、次のと
おりである。
(a4) 点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上部及び下部の各中
央部付近の合計2か所を、それぞれ被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板
8bと弾性片8aで挟み込んで保持する工程
(b4) 点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の左右各中央部付近の
合計2か所を、被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板8bと弾性片8aで
挟み込む工程
(c4) 蓋7の下端部の中央部分を前記下部に保持された取付具8の基板
8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程
(d4) 蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で、前記上部に保持
された取付具8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端部の中央部分を前記上
部に保持された取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程
(e4) 蓋7を前記左右に保持された取付具8を点検口開口部6a内側に
移動することにより、蓋7の左右端部の中央部分を前記左右に保持された取付具8
の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程
イ(ア) 請求原因(6)イ(被告物件の構成)について検討する。
弁論の全趣旨によれば、被告物件の構成は、被告物件目録(被告案)記
載のとおりであると認められる。
(イ) 被告物件目録(被告案)記載の物件は、被告キャビネットに設けられ
た点検口の蓋の取付方法に使用される取付具であり、その構成を分説すると、次の
とおりである。
(a5) 基板8bの一方表面側及び他方表面側にそれぞれ弾性片8a及び8
cが第3図に示される断面形状を有するように形成されている。
(b5) 弾性片8aは基板8bの一方端から略L字状に基板8bよりやや短
く、先端部が基板外方に湾曲している。
(c5) 弾性片8cは基板8bの他方端部から略L字状に基板8bより約3
分の1の長さを有し、その先端部は基板外方に折曲している。
(d5) シンクキャビネット及びガスキャビネットの背板6に形成された点
検口開口部6aの周辺を形成する背板6を基板8bと弾性片8aとの間に挟み込ん
だ状態で、点検口開口部6aを閉じる蓋7の端部を基板8bと弾性片8cとの間に
挟み込むことができるように一体成形されている。
(7)ア(ア)a 前記(6)ア(イ)a認定の被告第1方法目録(被告案)記載の方法の
構成を本件方法発明の構成要件と対比すると、次のとおりである。
被告第1方法目録(被告案)記載の方法は、被告キャビネットに設け
られた点検口の前面に蓋を取り付ける方法であり、それに使用する被告物件目録
(被告案)記載の取付具8は、基板8の表面側と裏面側に、それぞれ、弾性を有す
る弾性片8aと、弾性片8aより短い弾性片8cが、被告物件目録(被告案)第3
図に示される断面形状を有するように形成されているから、被告第1方法目録(被
告案)記載の方法は、本件方法発明の構成要件AⅠ、DⅠを充足する。
被告第1方法目録(被告案)記載の方法の構成(a3)は、本件方法発明
の構成要件BⅠを充足する。
被告第1方法目録(被告案)記載の方法の構成(b3)、(c3)は、本件方
法発明の構成要件CⅠを充足する。
b 前記(6)ア(イ)b認定の被告第2方法目録(被告案)記載の方法の構成
を本件方法発明の構成要件と対比すると、次のとおりである。
被告第2方法目録(被告案)記載の方法は、被告キャビネットに設け
られた点検口の前面に蓋を取り付ける方法であり、それに使用する被告物件目録
(被告案)記載の取付具8は、基板8の表面側と裏面側に、それぞれ、弾性を有す
る弾性片8aと、弾性片8aより短い弾性片8cが、被告物件目録(被告案)第3
図に示される断面形状を有するように形成されているから、被告第2方法目録(被
告案)記載の方法は、本件方法発明の構成要件AⅠ、DⅠを充足する。
被告第2方法目録(被告案)記載の方法の構成(a4)は、本件方法発明
の構成要件BⅠを充足する。
被告第2方法目録(被告案)記載の方法の構成(c4)、(d4)は、本件方
法発明の構成要件CⅠを充足する。
(イ) したがって、被告方法(前記(6)ア(ア)認定のとおり、平成8年5月ご
ろから平成12年9月6日までは被告第1方法目録(被告案)記載のとおりであ
り、同月7日から平成14年8月22日までは被告第2方法目録(被告案)記載の
とおりである。)は、いずれも本件方法発明の技術的範囲に属するものと認められ
る。
イ(ア) 被告物件目録(被告案)記載の物件の構成を本件物発明の構成要件と
対比すると、次のとおりである。
構成(a5)は構成要件AⅡを充足する。
構成(b5)は構成要件BⅡを充足する。
構成(c5)は構成要件CⅡを充足する。
構成(d5)は構成要件DⅡを充足する。
被告物件目録(被告案)記載の物件は、被告キャビネットに設けられた
点検口の蓋の取付方法に使用される取付具であるから、構成要件EⅡを充足する。
(イ) したがって、被告物件は、本件物発明の技術的範囲に属するものと認
められる。
(8)ア(ア) 前記(7)ア(イ)認定のとおり、被告方法は本件方法発明の技術的範囲
に属する。
したがって、前記(5)イ記載のとおり被告が被告キャビネットを製造する
とき及び設置するときに被告方法を使用することは、本件方法発明の侵害に当た
る。
なお、前記(5)イ記載のとおり、被告方法は、点検口の蓋の取付方法であ
るから、被告方法が被告キャビネットの製造、設置の過程に組み込まれていたとし
ても、被告が被告方法によって被告キャビネットを製造しているものとは認められ
ない。
(イ)a 請求原因(8)ア(イ)のうち、被告が被告キャビネットの設置を下請業
者に委託して行う場合、その設置が被告の行為とみられることは、当事者間に争い
がない。
b 被告が、被告キャビネットを業者に販売した後、業者に対して被告方
法の使用を教唆しているかについて検討する。
甲第17号証によれば、原告作成の「サンウェーブ キッチンセット
 流し台 施工説明書」と題する書面(以下「甲17説明書」という。)の第2面
の「5」の「点検口の取りはずし方」には、「①」として、「点検口枠を上にスラ
イドさせる。」と記載され、本件方法発明の取付具に当たる「点検口枠」を上方に
ずらす図が掲載されていること、また、「②」として、「手前に少し倒し、上に引
き上げる。」と記載され、下方取付具が、蓋に密着した状態で、蓋と共に前方上方
に引き抜かれて倒され、点検口の周囲の縁の上端から引き抜かれる直前の状態の図
が掲載されていること、そして、上記「①」、「②」の下方に、「※取付けは逆の
手順で行なってください。」と記載されていることが認められる。
甲17説明書の「※取付けは逆の手順で行なってください。」という
指示に従って取付を行う場合、「②」の図面からすると、「②」の逆の手順で取付
けを行うとすると、まず蓋に下方取付具を取り付けた後、蓋に取り付けられたその
下方取付具を、点検口開口部の下方の周縁に取り付ける方法を採ると解し得る。
ところで、被告方法をみると、被告第1方法目録(被告案)記載の方
法及び被告第2方法目録(被告案)記載の方法においては、点検口開口部6aの周
辺を形成する背板6に取付具8を保持した後((a3)、(a4))、蓋7の下端部を、点
検口の下部に保持された取付具8の基盤8bと弾性片8cとの間に挟み込むこと
((b3)、(c4))とされている。
そうすると、前記のとおり、甲17説明書は、蓋に下方取付具を取り
付けた後、蓋に取り付けられたその下方取付具を、点検口開口部の下方の周縁に取
り付ける方法を採ることを述べていると解し得るから、それによって、取付具を点
検口の周囲の背板に保持した後に下方の取付具に蓋を取り付けるという被告方法が
教唆されているとはいえない。
したがって、被告が甲17説明書を配布していたとしても、それによ
って被告方法の使用を教唆していたとは認められないというべきであり、被告は、
販売後の業者による被告方法の使用について民法719条に基づいて損害賠償責任
を負うことはないというべきである。
イ 前記(7)イ(イ)認定のとおり、被告物件は、本件物発明の技術的範囲に属す
るものと認められる。
被告キャビネットの点検口の蓋は、被告物件により取り付けられているか
ら、被告キャビネットを販売することは、被告物件を販売することを含むものと認
められる。
2 抗弁(1)(信義則違反又は時機に後れた攻撃防御方法)について検討する。
原告は、本件訴訟提起当初は、訴状で、被告物件は本件物発明の技術的範囲に
属し、被告方法は本件方法発明の技術的範囲に属するとし、本件特許権侵害に基づ
く損害賠償請求をしていたところ、平成15年4月15日の第2回口頭弁論期日で
陳述した同日裁判所受付の原告第1準備書面において、本件方法発明の侵害に基づ
く主張を撤回する旨主張したこと、原告が、同年10月15日の第5回口頭弁論期
日で陳述した同年8月18日付けの原告第6準備書面において、本件方法発明の侵
害に基づく主張を再度行ったことは、訴訟上明らかである。
本件特許発明は、本件方法発明(請求項1)と本件物発明(請求項2)とから
なるところ、被告物件が被告主張の構成を前提としても本件物発明の構成要件をす
べて充足することは、当初から被告の自認するところであったものであり、本件特
許権侵害による損害額を算定するに際しても、被告物件が物の発明である本件物発
明を侵害することが立証されれば、本件方法発明の侵害について立証しなくても目
的を達することができると考えられるから、本件物発明と本件方法発明のうちか
ら、立証がより簡明な本件物発明の侵害だけに争点を絞るということも、その時点
では合理性のある訴訟追行態度であったということができる。その後、被告の主張
立証活動の状況に照らして、本件物発明については特許が無効とされる可能性があ
るとの判断に立って(そのように推測される。)、いったんは撤回した本件方法発
明に基づく主張を再度行うということも、その後の訴訟進行状況に照らすと、やむ
を得ない面がある。原告が第5回口頭弁論期日において、本件方法発明の侵害に基
づく主張を再度行ったことは、それ以前の同発明の侵害に基づく主張を撤回する旨
の主張と相反するものであり、訴訟追行態度として問題があることは確かであり、
訴訟の進行状況によっては、そのような行動が時機に後れたものと判断され、ある
いは信義則に反すると評価されることもあり得ると考えられる。しかし、本件訴訟
に関しては、第5回口頭弁論期日においては、未だ侵害論の審理が終了しておら
ず、訴訟の進行状況に照らして、原告の再度の主張によって訴訟の完結を遅延させ
ることになったとは認められず、また、原告の上記のような訴訟追行態度が信義則
に反するものとまではいえない。
したがって、原告の本件方法発明の侵害に関する主張は、信義則に反し許され
ないとはいえず、また、時機に後れて提出された攻撃又は防御の方法に該当すると
して却下すべきものではなく、抗弁(1)の主張は、採用することができない。
3 抗弁(2)(明白な無効理由)について検討する。
(1) 本件物発明について無効理由が存在することが明らかであるかについて
ア 本件物発明の構成について検討する。
本件物発明は、構成要件AⅡないしCⅡにおいて、客観的な構成を定めて
おり、さらに構成要件DⅡにおいて、「点検口の周端縁を挟持片と基板との間に差
し込み挟持した状態で、蓋の端縁を掛支片と基板との間に差し込み掛支する」とい
う用途に使用されるものとし、構成要件EⅡにおいて、点検口の蓋の取付方法に使
用されるものとしている。
本件物発明は、物の発明であるところ、物の発明においては、原則とし
て、物の構成をもってその内容を把握すべきであり、構成要件の中に、物の客観的
な構成のほかに、特定の用途や使用方法に用いることが記載されていたとしても、
その用途や使用方法に適するようにするために物の構成が特定の構成に限られるこ
とがなければ、それらの用途や使用方法の記載は、発明の構成を更に限定するもの
ではないというべきである。そして、そのような場合、発明の構成は、物の客観的
な構成を記載した部分によって明らかにされているものと解すべきである。
そこで、本件物発明をみると、弁論の全趣旨によれば、構成要件AⅡない
しCⅡに定められた形状であれば、基板と挟持片の間に点検口の周端縁を差し込
み、掛支片と基板との間に蓋の端縁を差し込むことができるから、点検口と蓋の寸
法を適宜選択することによって、構成要件DⅡ所定の用途に使用することができ、
そして、そのような用途に使用することができるのであれば、それは、構成要件E
Ⅱ所定の点検口の蓋の取付方法に使用され得るものと認められる。また、本件公報
(甲第1号証)によれば、本件明細書には、構成要件DⅡ及びEⅡ所定の用途及び
使用方法に適するようにするために、構成要件AⅡないしCⅡに定められた以上に
取付具の大きさ、形状、強度、構造等を限定することが記載されているとは認めら
れない。そうであるとすると、構成要件DⅡ及びEⅡには、上記のように用途及び
使用方法が記載されているが、その用途及び使用方法は、本件物発明に係る取付具
の物としての構成を、構成要件AⅡないしCⅡにおいて定められた客観的な構成以
上に限定するものではないというべきである。本件物発明は、構成要件AⅡないし
CⅡにおいて、取付具の客観的な構成を定めているから、本件物発明の構成は、構
成要件AⅡないしCⅡによって明らかにされているものというべきである。
イ イートン社製クリップと本件物発明の対比について検討する。
イートン社製クリップは、本件特許発明の特許出願前の昭和60年(19
85年)にイートン社が発行した乙5カタログに掲載されている取付具である。
イートン社製クリップと本件物発明を対比すると、イートン社製クリップ
の挟持片11aが本件物発明の挟持片に当たり、イートン社製クリップの挟持片1
1cが本件物発明の掛支片に当たり、その構成(a9)ないし(c9)は、本件物発明の構
成要件AⅡないしCⅡと同一であるものと認められる。そして、弁論の全趣旨によ
れば、イートン社製クリップは、点検口と蓋の寸法を適宜選択することによって、
構成要件DⅡ所定の用途に使用することができ、構成要件EⅡ所定の点検口の蓋の
取付方法に使用され得るものと認められる。そうであるとすると、本件物発明は、
イートン社製クリップと同一であるものと認められる。
したがって、本件物発明は、特許出願前に日本国内又は外国において頒布
された刊行物に記載された発明と同一であり、本件物発明に係る特許は、特許法2
9条1項3号に違反して特許されたものであり、同法123条1項2号の無効理由
が存在することが明らかであるというべきである。
原告は、イートン社製クリップが掲載された乙5カタログの説明文に、用
途や機能に関する具体的な説明がなく、本件物発明の構成要件DⅡ及びEⅡは記載
されていない旨主張する。しかし、前記ア認定のとおり、本件物発明の構成は、取
付具の客観的構成を定めた構成要件AⅡないしCⅡによって明らかにされており、
取付具の用途及び使用方法を定めた構成要件DⅡ及びEⅡは、発明の構成を、構成
要件AⅡないしCⅡにおいて定められた客観的な構成以上に限定するものではない
というべきであるから、乙5カタログの説明文に、用途や機能に関する具体的な説
明がなく、本件物発明の構成要件DⅡ又はEⅡが記載されていないとしても、それ
により、イートン社製クリップが本件物発明と同一であるという認定が妨げられる
ことはないというべきである。
ウ 本件物発明の訂正請求について検討する。
乙第16号証の1ないし14及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件物
発明に係る特許について、平成15年6月3日付けの審判請求書により、無効審判
を請求したことが認められ(無効2003-35233号)、甲第15号証の1な
いし3、乙第17号証によれば、原告は、同年8月25日付けの訂正請求書によ
り、本件物発明の構成要件EⅡを「請求項1記載の点検口の蓋の取付方法に使用さ
れる取付具」とし、明細書の発明の詳細な説明の段落【0021】の「また本実施
例では、・・(中略)・・蓋の上端縁のみをこの取付具で掛支することとしても良
い。」という記載を削除することを内容とする訂正を請求したことが認められる。
仮に上記訂正請求のとおり訂正が認められたとしても、訂正後の構成要件
EⅡの「請求項1記載の点検口の蓋の取付方法に使用される」という使用方法の記
載は、その使用方法に適するようにするために、構成要件AⅡないしCⅡに定めら
れた以上に取付具の物としての構成を限定するものではないから、訂正前の構成要
件EⅡについて前記アに記載したのと同様の理由により、訂正後の構成要件EⅡの
上記使用方法の記載は、本件物発明の発明の構成を定めるものではないというべき
である。
したがって、仮に訂正が認められたとしても、訂正前について前記イに記
載したのと同様の理由により、本件物発明に係る特許は、無効理由が存在すること
が明らかであるというべきである。
(2) 本件方法発明について無効理由が存在することが明らかであるかについて
ア 被告従来方法について検討する。
(ア) 弁論の全趣旨によれば、被告は、本件特許発明の特許出願前、点検口
の蓋を取り付けるために、被告従来方法を使用しており、被告従来方法において点
検口の前面に取り付けられた蓋は、被告従来方法蓋部目録記載の蓋であったこと、
被告従来方法の構成は、被告従来方法目録の「方法の説明」の(a6)、(b6)記載のと
おりであったことが認められる。
(イ) 本件方法発明と被告従来方法は、取付具(蓋上エッヂ部材及び蓋下エ
ッヂ部材)の基板と挟持片(保持片71a、72a)との間に点検口の周端縁(背
板)を挟み込み、基板と掛支片(保持片71c、72c)との間に蓋(蓋本体)を
挟み込んで、点検口を閉じる蓋を取り付ける、点検口の蓋の取付方法である点で一
致する。
(ウ) しかし、本件方法発明と被告従来方法は、次の点で異なる。
a 本件方法発明は、取付具を点検口の上下に取り付け(構成要件BⅠ参
照)、蓋を下方の取付具に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付
具を下方に押し下げることにより、蓋を点検口の前面に保持する(構成要件CⅠ参
照)方法であるのに対し、被告従来方法は、点検口の周辺を形成する背板を挟むこ
とができる蓋上エッヂ部材と蓋下エッヂ部材を蓋本体に固定した蓋を、点検口に取
り付ける方法である。
b 本件方法発明は、基板の表面側と裏面側に、それぞれ挟持片とそれよ
り短い掛支片とが突設された断面ほぼS字形の取付具を用い(構成要件AⅠ参
照)、蓋の下端を取付具に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付
具を下方に押し下げることにより、蓋の上端縁を上方の取付具の基板と掛支片との
間に差し込み、蓋を保持するものである(構成要件CⅠ参照)。したがって、上方
の取付具の挟持片が掛支片より長いことを利用し、上方の取付具を押し下げてその
基板と掛支片の間に蓋の上端縁が差し込まれた状態で、なお基板と挟持片との間に
点検口の周端縁が挟持されるようにして、蓋を保持するものである。本件明細書に
も、「図4に矢印で示すように、上方の取付具8を下方に押し下げると、蓋7の上
端縁がこの取付具8の掛支片8cの内側に侵入し、このことにより、蓋7は、図2
に示すように、上下の取付具8の掛支片8cでその上下端縁が掛支され、点検口6
aを塞いだ状態に取り付けられる。この時、挟持片8aは掛支片8cより長く形成
されているので、背面板6との挟持状態が外れる虞れはない。」(本件公報5欄1
2行ないし19行)と記載され、挟持片が掛支片より長く形成されていることによ
って点検口の周端縁(背面板)との挟持状態が保持されることが示されている。そ
して、本件方法発明においては、上方の取付具と下方の取付具は、同じ形状のもの
を使用することができる。また、蓋を差し込む取付具の掛支片と基板との位置関係
に関して、蓋は、取付具の基板と、点検口の手前側に突設された掛支片との間に差
し込むこととなる。
これに対し、被告従来方法は、蓋の蓋上エッヂ部材の基板と保持片と
の間に点検口の周辺を形成する背板の上辺部を挟み込み(構成(a6)参照)、蓋を点
検口開口部側に押し付けた状態で下方に押し下げることにより、蓋下エッヂ部材の
基板と保持片との間に背板の下辺部を挟み込むものであり、蓋が下方に押し下げら
れた状態において、なお蓋上エッヂ部材の基板と保持片との間に背板の上辺部が挟
み込まれていなければならないから、蓋上エッヂ部材の保持片は蓋下エッヂ部材の
保持片より長くなければならず、蓋上エッヂ部材の保持片が蓋下エッヂ部材の保持
片より長いことを利用して、蓋を点検口に取り付けるものである。そこで、蓋上エ
ッヂ部材の形状と蓋下エッヂ部材の形状は、少なくとも保持片の長さが異なること
となる。また、点検口の周囲の背板を差し込む取付具の保持片と基板との位置関係
に関して、点検口の周囲の背板は、取付具の基板と、後ろ側に突設された保持片と
の間に差し込むこととなる。
(エ) このように、本件方法発明と被告従来方法は、取付具と蓋の点検口へ
の取付けの順序、蓋を取り付けるために利用する寸法差、上下の取付具の形状の異
同、蓋又は背板を差し込む取付具の掛支片又は保持片と基板との位置関係などが相
違し、これらの点に関する本件方法発明の構成は、被告従来方法において示唆され
ているとは認められない。
イ 前記(1)イ認定のとおり、イートン社製クリップは、本件物発明、すなわち
本件方法発明に使用される取付具と構成が同一であるが、イートン社製クリップ及
びそれを含むSクリップ、ニフコ社製クリップ、乙4公報の第3図に記載された取
付具、乙6公報の第8図に記載された取付具によっては、前記ア(ウ)に記載された
被告従来方法との相違点に関する本件方法発明の構成は、示唆されていないし、そ
れを当業者が容易に想到することができたとも認められない。
ウ 以上によれば、本件方法発明は、当業者が被告従来方法に基づいて容易に
発明をすることができたとは認められず、被告従来方法とイートン社製クリップ及
びそれを含むSクリップ、ニフコ社製クリップ、乙4公報の第3図に記載された取
付具、乙6公報の第8図に記載された取付具を組み合わせたとしても、それらに基
づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
したがって、本件方法発明に係る特許は、特許法29条2項に違反して特
許されたものであるとはいえず、同法123条1項2号の無効理由が存在すること
が明らかであるとは認められず、その他の無効理由が存在することが明らかである
とも認められない。
4 損害について検討する。
(1) 前記1(7)ア(イ)認定のとおり、被告方法である被告第1方法目録(被告
案)記載の方法及び被告第2方法目録(被告案)記載の方法は、本件方法発明の技
術的範囲に属し、前記1(5)イ記載のとおり、被告が被告キャビネットを製造すると
き及び設置するときに被告方法を使用していたことは、当事者間に争いがないか
ら、被告が被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに被告方法を使用し
ていたことは、本件方法発明の侵害に当たる。
そこで、本件方法発明の侵害による損害の額について検討する。
(2) 請求原因(9)ア(ア)ないし(エ)のうち、被告キャビネットの平成14年8月
22日までの販売総数が63万台を下らないことは、当事者間に争いがない。
(3) 原告は、被告キャビネットの販売により被告が得た利益の総額を算定し、被
告の「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」のシ
リーズ中の各製品について、点検口付きシンクキャビネット・ガスキャビネットは
点検口のないものに比べて定価が1台当たり3500円高く、各製品のシンクキャ
ビネット・ガスキャビネットの定価に上記価格差が占める割合が平均で約6.27
%であることから、点検口付きシンクキャビネット・ガスキャビネットの販売によ
り被告が得た利益に対する本件方法発明の寄与率は6%とするのが妥当である旨主
張する。そして、利益の総額に寄与率6%を乗じて、本件方法発明により被告が得
た利益(特許法102条2項)を算定する旨主張する。また、原告は、製品全体の
売上げに対する本件方法発明の実施料率は、点検口部分の約10分の1であり、上
記6.27%の約10分の1に当たる0.6%であるとして、販売総額に実施料率
0.6%を乗じて、実施料相当額(特許法102条3項)を算定し、又は被告キャ
ビネット1台当たりの実施料相当額が上記価格差の10分の1に当たる350円で
あるとして実施料相当額の総額を算定する旨主張する。
しかし、甲第6号証、乙第12ないし第15号証及び弁論の全趣旨によれ
ば、被告は、「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトB
M」のシンクキャビネット・ガスキャビネットの点検口付きの製品の点検口の蓋の
取付方法について、従前は、被告方法と異なる方法を使用しており、平成8年5月
ごろから平成14年8月22日まで被告方法を使用したが、同月23日以降は被告
方法の使用をやめたこと、被告方法を使用していたときの製品のみならず、被告方
法を使用する前の製品も、被告方法の使用をやめた後の製品も、点検口付きの製品
は点検口のない製品に比べて定価が3500円高いことが認められる。
そして、弁論の全趣旨によれば、蓋の取付方法をどのようなものにするにせ
よ、点検口を設ける場合には、点検口を設けない場合に比べて、シンクキャビネッ
ト・ガスキャビネットの背面の背板に開口部を設け、その蓋部材を用意するなどの
ために余分の費用を要することが推認される。さらに、本件明細書には、本件方法
発明の効果として、蓋の着脱操作が極めて容易かつ短時間で行え、洗面台や流し台
を設置する際の配管接続工事やその後のメンテナンスが行い易くなること、蓋が確
実に背面板に保持されること、点検口を設けた製品の生産性が向上するとともにそ
のコストダウンも図られること、本件方法発明に用いられる取付具についてコスト
ダウンが図られ、耐久性及び信頼性に優れることなど(本件公報段落【0024】
ないし【0027】)が記載されているが、本件方法発明は、点検口の蓋の取付方
法に係るものであり、これらの効果は、点検口が設けられていることを前提とし
て、点検口の取付方法を本件方法発明のようにしたことにより得られる効果であ
る。甲第7ないし第10号証及び弁論の全趣旨によれば、蓋の取付方法に本件方法
発明を使用することによる上記の効果とは別に、蓋の取付方法のいかんを問わず、
点検口を設けた場合は、点検口を設けない場合に比べて、配管の点検、清掃、補修
等を容易に行うことができるなど、大きな効果が存するものと認められる。
このように、蓋の取付方法のいかんを問わず、点検口を設ける場合は、点検
口を設けない場合に比べて、余分の費用を要し、また、点検口を設けたことによる
大きな効果を得ることができるから、点検口付きの製品とそうでない製品の350
0円の価格差は、このような費用や効果の差異に対する評価の額を含むものであ
り、蓋の取付方法の効果に対する評価の額にとどまるものではないと推認される。
したがって、点検口付きの製品とそうでない製品の3500円の価格差を基
に、本件方法発明の実施がシンクキャビネット・ガスキャビネット全体に占める割
合や本件方法発明の実施料を算定することは、相当とは認められない。
(4) 前記1(4)ア(イ)認定のとおり、本件方法発明は物を生産する方法の発明で
はなく、単純方法の発明である。単純方法の発明の侵害行為は、その方法を使用す
ることであり、製造過程等の一部にその方法の使用を組み入れて物を製造する場
合、その物の製造や販売は、単純方法の発明に係る特許権の侵害行為とはならない
が、当該特許権の侵害による損害額を算定するに当たり、その物の販売価格を参酌
することが相当とされる場合があるのは、否定し得ない。しかし、本件において
は、前記(3)記載のとおり、点検口付きの製品とそうでない製品の価格差である35
00円を基に、本件方法発明の実施がシンクキャビネット・ガスキャビネット全体
に占める割合や本件方法発明の実施料を算定することは、相当とは認められない。
そうすると、本件においては、本件方法発明の実施により被告が得た利益の立証は
ないというべきであり、次のとおり、本件方法発明の実施に要する費用に基づいて
算定した実施料相当額をもって損害の額とするのが相当である。
弁論の全趣旨によれば、被告キャビネットに点検口の蓋を取り付けるのに要
する費用は、1点検口当たり16円を超えることはないと認められる。また、弁論
の全趣旨(原告は、請求原因(9)イ(イ)において、本件方法発明の実施料率が点検口
部分の約10分の1であることを主張している。)によれば、点検口部分に対する
本件方法発明の実施料率は、10%が相当であると認められる。そうすると、本件
方法発明の実施料は、1点検口当たり1.6円であると認められる。
前記(2)記載のとおり、被告キャビネットの販売総数は63万台を下らないか
ら、製造についての本件方法発明の実施料相当額は、100万8000円(1.6
円×63万台=100万8000円)である。
また、前記1(8)ア(イ)b認定のとおり、被告は、販売後の業者による被告方
法の使用について民法719条に基づいて損害賠償責任を負うことはなく、被告自
ら(下請業者による場合も含む。)が設置する場合の被告方法の使用が本件方法発
明の侵害となる。弁論の全趣旨によれば、被告自らが設置する自社施工率は13%
であることが認められるから、設置についての本件方法発明の実施料相当額は、1
3万1040円(1.6円×63万台×0.13=13万1040円)である。
したがって、実施料相当額の合計は、113万9040円(100万800
0円+13万1040円=113万9040円)であると認められる。
5 結論
よって、原告の本訴請求は、本件方法発明の実施料相当額の合計113万90
40円及びこれに対する不法行為及び請求の後である平成14年9月1日から支払
済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理
由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負
担につき民事訴訟法61条、64条本文を、仮執行宣言につき同法259条1項を
それぞれ適用して、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
             裁判長裁判官    小   松   一   雄
裁判官    中   平       健
                裁判官   大   濱寿   美
別紙1
         被 告 方 法 目 録(原告案)
(a1) 被告方法は、シンクキャビネット及びガスキャビネットの背板6に形成され
た点検口6aを閉じる蓋7を、別紙被告物件目録(原告案)記載の被告物件8を使
用することによって取り付ける。
被告物件8は、別紙第1図面のとおり、基板8bの表面側と裏面側にそれぞれ
弾性を有する挟持片8aと該挟持片8aより短い掛支片8cが突設されており、断
面はほぼS字形である。
(b1) 被告取付方法は、まず、被告物件8を、基板8bと挟持片8aとの間で点検
口6aの周端縁を挟持するように点検口6aの上下に取り付ける。
(c1) 次に、蓋7の下端縁を下方の被告物件8の基板8bと掛支片8cとの間に差
し込み、蓋7を点検口6a側に押し付けた状態で上方の被告物件8を下方に押し下
げることにより、蓋7の上端縁を上方の被告物件8の基板8bと掛支片8cとの間
に差し込み、蓋7を点検口6aの前面に保持するようにする。
(d1) 以上が、被告方法による点検口6aの蓋7の取付方法である。
被告物件
別紙2
         被 告 物 件 目 録(原告案)
(a2) 被告物件8には、基板8bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片
8aと掛支片8cが突設されており、断面はほぼS字形である。
(b2) 被告物件8においては、挟持片8aは基板8bとほぼ同寸である。
(c2) 被告物件8においては、掛支片8cは該挟持片8aより短く形成されてい
る。
(d2) 被告物件8は、点検口6aの周端縁を挟持片8aと基板8bとの間に差し込
み挟持した状態で、蓋7の端縁を掛支片8cと基板8bとの間に差し込み掛支する
ことができるようになされている。
(e2) 被告物件8は、点検口6aの蓋7の取付方法に使用される物件である。
第2図面被告物件第1図面第2図面
別紙3
         被 告 第 1 方 法 目 録(被告案)
 下記「3 方法の説明」に記載された工程からなる「セクショナルGSシリー
ズ」、「システムキッチン シェルトBM」のシンクキャビネット及びガスキャビ
ネットに設けられた点検口の前面に蓋を取り付ける方法
1 図面の説明
第4図(1)は下記「3 方法の説明」(b3)の工程を説明する断面図である。
第4図(2)は下記「3 方法の説明」(c3)の工程を説明する断面図である。
第4図(3)は各工程が完了して蓋を取り付けた状態を示す断面図である。
2 符号の説明
6・・・・背板
6a・・・点検口開口部
7・・・・蓋
8・・・・別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具
8a・・・弾性片
8b・・・基板
8c・・・弾性片
3 方法の説明
(a3) 点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上部及び下部の各右方部分と
各左方部分の合計4か所を、それぞれ別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具8
の基板8bと弾性片8aで挟み込んで保持する工程
(b3) 蓋7の下端部の右方部分と左方部分を前記下部に保持された各取付具8の
基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程
(c3) 蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で、前記上部に保持された各
取付具8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端部を前記上部に保持された各
取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程
別紙3被告第1方法目録(被告案)図面)
別紙4
         被 告 第 2 方 法 目 録(被告案)
 下記「3 方法の説明」に記載された工程からなる「セクショナルGSシリー
ズ」、「システムキッチン シェルトBM」のシンクキャビネット及びガスキャビ
ネットに設けられた点検口の前面に蓋を取り付ける方法
1 図面の説明
図(1)は下記「3 方法の説明」(c4)の工程を説明する断面図である。
図(2)は下記「3 方法の説明」(d4)の工程を説明する断面図である。
図(3)は下記「3 方法の説明」(c4)、(d4)の各工程が完了して蓋を取り付
けた状態を示す断面図である。
図(4)は下記「3 方法の説明」(e4)の工程を説明する断面図である。
図(5)は下記「3 方法の説明」(e4)の工程が完了して蓋を取り付けた状態
を示す断面図である。
2 符号の説明
6・・・・背板
6a・・・点検口開口部
7・・・・蓋
8・・・・別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具
8a・・・弾性片
8b・・・基板
8c・・・弾性片
3 方法の説明
(a4) 点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上部及び下部の各中央部付近
の合計2か所を、それぞれ別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板8b
と弾性片8aで挟み込んで保持する工程
(b4) 点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の左右各中央部付近の合計2か
所を、別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板8bと弾性片8aで挟み
込む工程
(c4) 蓋7の下端部の中央部分を前記下部に保持された取付具8の基板8bと弾
性片8cとの間に挟み込む工程
(d4) 蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で、前記上部に保持された取
付具8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端部の中央部分を前記上部に保持
された取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程
(e4) 蓋7を前記左右に保持された取付具8を点検口開口部6a内側に移動する
ことにより、蓋7の左右端部の中央部分を前記左右に保持された取付具8の基板8
bと弾性片8cとの間に挟み込む工程
別紙4被告第2方法目録(被告案)図面
別紙5
 被 告 物 件 目 録(被告案)
 下記「3 構造の説明」に記載された構成を有する「セクショナルGSシリー
ズ」、「システムキッチン シェルトBM」のシンクキャビネット及びガスキャビ
ネットに設けられた点検口の蓋の取付方法に使用される取付具
1 図面の説明
第1図は取付具の正面図である。
第2図は取付具の斜視図である。
第3図は取付具の側面図である。
2 符号の説明
6・・・・背板
6a・・・点検口開口部
7・・・・蓋
8・・・・当目録記載の取付具
8a・・・弾性片
8b・・・基板
8c・・・弾性片
3 構造の説明
(a5) 基板8bの一方表面側及び他方表面側にそれぞれ弾性片8a及び8cが第
3図に示される断面形状を有するように形成されている。
(b5) 弾性片8aは基板8bの一方端から略L字状に基板8bよりやや短く、先
端部が基板外方に湾曲している。
(c5) 弾性片8cは基板8bの他方端部から略L字状に基板8bより約3分の1
の長さを有し、その先端部は基板外方に折曲している。
(d5) シンクキャビネット及びガスキャビネットの背板6に形成された点検口開
口部6aの周辺を形成する背板6を基板8bと弾性片8aとの間に挟み込んだ状態
で、点検口開口部6aを閉じる蓋7の端部を基板8bと弾性片8cとの間に挟み込
むことができるように一体成形されている。
別紙5被告物件目録(被告案)図面)
別紙6
         被 告 従 来 方 法 目 録
 下記「3 方法の説明」に記載された工程からなるシンクキャビネット及びガス
キャビネットに設けられた点検口の前面に別紙被告従来方法蓋部目録記載の蓋を取
り付ける方法
1 図面の説明
第4図(1)は下記「3 方法の説明」(a6)の工程を説明する断面図である。
第4図(2)は下記「3 方法の説明」(b6)の工程を説明する断面図である。
第4図(3)は各工程が完了して蓋を取り付けた状態を示す断面図である。
2 符号の説明
6・・・・背板
6a・・・点検口開口部
7・・・・蓋
70・・・蓋本体
71・・・蓋上エッヂ部材
71a・・保持片
71b・・基板
71c・・保持片
72・・・蓋下エッヂ部材
72a・・保持片
72b・・基板
72c・・保持片
3 方法の説明
(a6) 点検口の蓋7の蓋上エッヂ部材71の基板71bと保持片71aとの間に
点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上辺部を挟み込む工程
(b6) 蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で下方に押し下げることによ
り、蓋7の蓋下エッヂ部材72の基板72bと保持片72aとの間に点検口開口部
6aの周辺を形成する背板6の下辺部を挟み込む工程
(別紙6被告従来方法目録図面)
別紙7
        被 告 従 来 方 法 蓋 部 目 録
 下記「3 構造の説明」に記載された構成を有するシンクキャビネット及びガス
キャビネットに設けられた点検口の蓋
1 図面の説明
第1図面
第1図は蓋上エッヂ部材の正面図及び蓋下エッヂ部材の正面図である。
第2図は蓋上エッヂ部材の斜視図及び蓋下エッヂ部材の斜視図である。
第3図は蓋上エッヂ部材の断面図及び蓋下エッヂ部材の断面図である。
  第2図面
第1図はシンクキャビネットに点検口の蓋を取り付けた概略図である。
第2図はガスキャビネットに点検口の蓋を取り付けた概略図である。
2 符号の説明
6・・・・背板
6a・・・点検口開口部
7・・・・蓋
70・・・蓋本体
71・・・蓋上エッヂ部材
71a・・保持片
71b・・基板
71c・・保持片
72・・・蓋下エッヂ部材
72a・・保持片
72b・・基板
72c・・保持片
3 構造の説明
(a7) 蓋7は、蓋本体70、蓋上エッヂ部材71、蓋下エッヂ部材72より構成
されている。
(b7) 蓋上エッヂ部材71の基板71bの一方表面側及び他方表面側にそれぞれ
保持片71a及び71cが第3図に示される断面形状を有するように一体形成され
ている。
(c7) 保持片71cは基板71bの一方の略中央部から略L字状に基板71bの
約半分で、先端部が基板外方に湾曲している。
(d7) 保持片71aは基板71bの他方端部から略L字状に基板71bよりやや
短く、先端部が基板外方に湾曲している。
(e7) 蓋下エッヂ部材72の基板72bの一方表面側及び他方表面側にそれぞれ
保持片72a及び72cが第3図に示される断面形状を有するように一体形成され
ている。
(f7) 保持片72cは基板72bの一方の略中央部から略L字状に基板72bの
約半分で、先端部が基板外方に湾曲している。
(g7) 保持片72aは基板72bの他方の略中央部から略L字状に基板72bの
約半分で、先端部が基板外方に湾曲している。
(h7) 蓋上エッヂ部材71は基板71bと保持片71aとの間に点検口開口部6
aの周辺を形成する背板6の上辺部を挟み込むよう形成されている。
(i7) 蓋下エッヂ部材72は基板72bと保持片72aとの間に点検口開口部6
aの周辺を形成する背板6の下辺部を挟み込むよう形成されている。
(j7) 蓋上エッヂ部材71の基板71bと保持片71cとの間に蓋本体70の上
端部を両面テープで接着して挟み込み、蓋下エッヂ部材72の基板72bと保持片
72cとの間に蓋本体70の下端部を両面テープで接着して挟み込み、それぞれ点
検口の蓋7の上エッヂ部及び下エッヂ部を構成するように取り付けられる。
被告従来方法第1図面第2図面
別紙8
        ニ フ コ 社 製 ク リ ッ プ 目 録
 下記「3 構造の説明」に記載された構成を有する昭和62年(1987年)9
月発行の株式会社ニフコの製品カタログ195頁に掲載された「FENDER P
ROTECTOR CLIP 1」製品番号1851,1X45のクリップ
1 図面の説明
第1図はクリップの正面図である。
第2図はクリップの斜視図である。
第3図はクリップの断面図である。
2 符号の説明
73a・・保持片
73b・・基板
73c・・保持片
3 構造の説明
(a8) 基板73bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する保持片73cと保持
片73aが突設された断面ほぼS字形のもので、
(b8) 保持片73aは基板73bとほぼ同寸であり、
(c8) 保持片73cは保持片73aより短く形成され、
(d8) 保持片73cと基板73bとの間に車のフェンダープロテクターを差し込
み挟持した状態で、保持片73aと基板73bとの間に車のフェンダーを差し込み
保持することができるようになされたものであることを特徴とする
(e8) 車のフェンダープロテクターを取り付けるクリップ。
(別紙8ニフコ社製クリップ目録図面)
別紙9
       イ ー ト ン 社 製 ク リ ッ プ 目 録
 下記「3 構造の説明」に記載された構成を有する昭和60年(1985年)発
行のイートン(Eaton)社のカタログに掲載されたクリップ
1 図面の説明
第1図はクリップの正面図である。
第2図はクリップの側面図である。
第3図はパネルの取付を示す断面図である。
2 符号の説明
11a・・挟持片
11b・・基板
11c・・挟持片
3 構造の説明
(a9) 基板11bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片11cと挟持
片11aが突設された断面ほぼS字形のもので、
(b9) 挟持片11aは基板11bとほぼ同寸であり、
(c9) 挟持片11cは挟持片11aより短く形成され、
(d9) 挟持片11cと基板11bとの間に一方のパネル端縁を差し込み挟持した
状態で、挟持片11aと基板11bとの間に他方のパネル端縁を差し込み保持する
ことができるようになされたものであることを特徴とする
(e8) パネルの取付に使用されるクリップ。
(別紙9イートン社製クリップ目録図面)

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すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
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採用担当宛