弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     上告人の本訴請求中、上告人が福岡法務局昭和六一年度金第一三一三号
の供託金六二万円のうち三一万円の還付請求権の取立権を有することの確認請求を
棄却した部分につき、原判決を破棄する。
     右部分について被上告人の控訴を棄却する。
     上告人のその余の上告を棄却する。
     訴訟の総費用は、これを二分し、その一を上告人の、その余を被上告人
の負担とする。
         理    由
 上告代理人岩佐善巳、同鈴木芳夫、同堀嗣亜貴、同竹田博輔、同牧野広司、同安
齋隆、同金子順一、同平良晶、同小林武廣、同菅野隆、同竹下雅彦、同久田稔、同
縄田信二の上告理由第一点について
 国税徴収法に基づく滞納処分としての債権の差押えをした者と同一債権の譲受人
との間の優劣は、債権差押えの通知が第三債務者に送達された日時と確定日付のあ
る債権譲渡の通知が当該第三債務者に到達した日時又は確定日付のある第三債務者
の承諾の日時との先後によって決すべきである(最高裁昭和五六年(オ)第一二三
〇号同五八年一〇月四日第三小法廷判決・裁判集民事一四〇号一頁参照)。したが
って、右各通知が第三債務者に到達したが、その到達の先後関係が不明であるため
に、その相互間の優劣関係を決することができない場合には、右各通知が同時に第
三債務者に到達した場合と同様に、差押債権者と債権譲受人との間では、互いに相
手方に対して自己が優先的地位にある債権者であると主張することが許されない関
係に立つものというべきである(最高裁昭和五三年(オ)第三八三号同年七月一八
日第三小法廷判決・裁判集民事一二四号四四七頁参照)。右と同旨の原審の判断は
正当であって、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を
論難するものにすぎず、採用することができない。
 同第二点について
 一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 上告人は、株式会社D(以下「債務者会社」という。)に対し、昭和六〇年
九月二四日現在、二四四万五三〇四円の租税債権を有していた。
 2 債務者会社は、E協同組合(以下「第三債務者組合」という。)に対し、昭
和六〇年九月二四日現在、運送代金支払請求権六二万円(以下「本件債権」という。)
を有していた。
 3 香椎税務署職員は、昭和六〇年九月二四日、前記租税債権を徴収するため、
国税徴収法四七条及び六二条の規定に基づいて本件債権全額を差し押さえ、右債権
差押えの通知(以下「本件債権差押通知」という。)は、右同日、第三債務者組合
(福岡市所在の本部)に送達された。
 4 他方、被上告人は、昭和六〇年九月一八日、債務者会社から本件債権を譲り
受け、債務者会社は、第三債務者組合に対し、同月一九日の確定日付のある内容証
明郵便をもって右債権譲渡の通知(以下「本件債権譲渡通知」という。)をし、右
通知は、同月二四日、第三債務者組合(北九州市所在の営業所)に到達した。
 5 本件債権差押通知と本件債権譲渡通知の第三債務者組合への各到達時の先後
関係は不明である。そこで、第三債務者組合は、右先後関係が不明であるために債
権者を確知することができないことを理由として、昭和六一年六月一七日、本件債
権額六二万円を供託(福岡法務局昭和六一年度金第一三一三号)した。
 6 そこで、上告人は、昭和六二年三月二三日、右供託金につき債務者会社が取
得した供託金還付請求権を差し押さえた上、被上告人を相手方として、上告人が右
供託金六二万円の還付請求権の取立権を有することの確認を求める本訴を提起した。
 二 原審は、右事実関係の下において、本件債権差押通知と本件債権譲渡通知の
第三債務者組合への各到達時の先後関係が不明である場合には、差押債権者である
上告人と債権譲受人である被上告人は、互いに自己が優先的地位にある債権者であ
ると主張することは許されず、共に、第三債務者組合に対し自己の債権の優先を主
張し得る地位にはないから、上告人の本件供託金還付請求権の取立権確認請求は失
当であると判断して、右請求をすべて棄却した。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 国税徴収法に基づく滞納処分としての債権差押えの通知と確定日付のある右
債権譲渡の通知とが当該第三債務者に到達したが、その到達の先後関係が不明であ
るために、その相互間の優劣を決することができない場合には、右各通知は同時に
第三債務者に到達したものとして取り扱うのが相当である。
 2 そして、右のように各通知の到達の先後関係が不明であるためにその相互間
の優劣を決することができない場合であっても、それぞれの立場において取得した
第三債務者に対する法的地位が変容を受けるわけではないから、国税の徴収職員は、
国税徴収法六七条一項に基づき差し押さえた右債権の取立権を取得し、また、債権
譲受人も、右債権差押えの存在にかかわらず、第三債務者に対して右債権の給付を
求める訴えを提起し、勝訴判決を得ることができる(最高裁昭和五三年(オ)第一
一九九号同五五年一月一一日第三小法廷判決・民集三四巻一号四二頁参照)。しか
し、このような場合には、前記のとおり、差押債権者と債権譲受人との間では、互
いに相手方に対して自己が優先的地位にある債権者であると主張することが許され
ない関係に立つ。
 3 そして、滞納処分としての債権差押えの通知と確定日付のある右債権譲渡の
通知の第三債務者への到達の先後関係が不明であるために、第三債務者が債権者を
確知することができないことを原因として右債権額に相当する金員を供託した場合
において、被差押債権額と譲受債権額との合計額が右供託金額を超過するときは、
差押債権者と債権譲受人は、公平の原則に照らし、被差押債権額と譲受債権額に応
じて供託金額を案分した額の供託金還付請求権をそれぞれ分割取得するものと解す
るのが相当である。
 4 これを本件についてみるのに、前記の事実関係によれば、本件債権差押通知
と本件債権譲渡通知の第三債務者組合への到達の先後関係が不明であるために、第
三債務者組合が本件債権額に相当する六二万円を供託し、被差押債権額(六二万円)
と譲受債権額(六二万円)の合計額(一二四万円)は右供託金額を超過するから、
差押債権者である上告人と債権譲受人である被上告人は、公平の原則に照らし、被
差押債権額と譲受債権額に応じて供託金額を案分した額、すなわち各三一万円の右
供託金還付請求権をそれぞれ分割取得するものというべきである。
 5 そうすると、右と異なる解釈の下に上告人の本訴請求をすべて棄却すべきも
のとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、これが判決に影響
を及ぼすことは明らかである。そして、前記説示に徴すれば、上告人の本訴請求は、
上告人が福岡法務局昭和六一年度金第一三一三号の供託金六二万円のうち三一万円
の還付請求権の取立権を有することの確認を求める限度で理由があるから右の限度
でこれを認容し、その余は失当として棄却すべきものである。論旨は右の限度にお
いて理由がある。
 四 以上の次第で、上告人の本訴請求中、上告人が福岡法務局昭和六一年度金第
一三一三号の供託金六二万円のうち三一万円の還付請求権の取立権を有することの
確認請求を棄却した部分は破棄を免れず、右部分に関する上告人の本訴請求を認容
した第一審判決はその限度で正当であるから、右部分について被上告人の控訴を棄
却し、上告人のその余の上告を棄却することとする。
 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条、九二条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    貞   家   克   己
            裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    佐   藤   庄 市 郎
            裁判官    可   部   恒   雄

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