弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1本件各控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2本件を鹿児島地方裁判所に差し戻す。
3訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
以下,略称については,原判決のそれに従う。
1請求,争点及び各審級における判断の各概要
本件(平成21年8月11日訴え提起)は,阿久根市から一般廃棄物収集運
搬業の許可(廃棄物処理法7条1項)及び浄化槽清掃業の許可を得て,し尿及
び浄化槽汚泥の収集運搬業を営む控訴人らが,従来,同市の定める一般廃棄物
処理実施計画の下,既存業者2社体制で事業を行ってきたところ,阿久根市長
が上記実施計画を変更した上で訴外A(本件新規参入業者)に新規参入を許可
したのは,処分行政庁の裁量の範囲を超えた違法な処分であると主張して,本
件新規参入業者に対する一般廃棄物収集運搬業及び浄化槽清掃業の許可処分
(本件許可処分)の取消しを求めた事案である。
本案前の争点は,控訴人らの原告適格の有無であり,本案の争点は,本件許
可処分の適法性である。
原判決(平成22年5月25日言渡し)は,本案前の争点について,本件許
可処分の根拠法規である廃棄物処理法及び浄化槽法が,既存の許可業者の経済
的利益を保護する趣旨に出たものとはいえないとして,控訴人らの原告適格を
否定し,控訴人らの本件訴えをいずれも却下した。
これに対し,控訴人らが本件各控訴に及んだものであるが,本判決は,原判
決と同旨の判断をしてこれらをいずれも棄却するものである。
2関係法令の定め及び前提となる事実
この点は,原判決2頁19行目から9頁8行目までに記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
3争点及びこれに対する当事者の主張
この点は,以下のとおり付加・訂正するほかは,原判決9頁9行目から18
頁15行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決9頁10行目の「(原告の主張)」を「(控訴人らの主張)」と,
16行目の「本件処分」を「本件許可処分」と,17行目から18行目にか
けての「生活環境の保全」を「生活環境の保全及び公衆衛生の向上」とそれ
ぞれ改める。
(2)原判決11頁10行目の「業者の安定」を「事業の安定」と,17行目
の「経済性確保などの要請」を「経済性確保等の要請」とそれぞれ改める。
(3)原判決15頁8行目の「(原告の主張)」を「(控訴人らの主
張)」と改める。
(4)原判決18頁15行目の後に行を改め
「5控訴人らの当審における主張
(1)本件許可処分によって害される控訴人らの利益は,違法な営業と
競争させられない利益であるところ,これは本件許可処分の根拠法規
の関連法令である憲法22条の営業の自由として保障されており,法
律上保護された利益に当たる。
(2)原審の弁論終結に際し,原審裁判長は,原告適格について中間判
決をする旨述べたため,控訴人らは,原審は原告適格を肯定する判断
をするものと考えていたところ,予期に反して原告適格を否定する原
判決がされ,原告適格についての主張の不足を補う機会を逸した。こ
のように,原審の訴訟指揮には釈明権の不行使に著しい懈怠があり,
違法である。」
を加える。
第3当裁判所の判断
この点は,以下のとおり付加・訂正するほかは,原判決18頁17行目から
28頁7行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
1原判決27頁4行目から5行目にかけての「(両許可の考慮要素が共通であ
るとの趣旨と解される。)」を削り,9行目から10行目にかけての「一般廃
棄物処理業等(浄化槽清掃業を含む(同法2条,同法施行令1条)。)。につ
いて」を「一般廃棄物処理業等(浄化槽清掃業を含む(同法2条,同法施行令
1条)。)について」と改める。
2原判決28頁4行目と5行目の間に
「(6)控訴人らの当審における主張について
ア控訴人らは,当審において,本件許可処分によって害される控訴人ら
の利益は,違法な営業と競争させられない利益であるところ,これは本
件許可処分の根拠法規の関連法令である憲法22条の営業の自由として
保障されており,法律上保護された利益に当たる旨主張する。
控訴人らの上記主張によれば,およそ憲法上保障される権利であれば,
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」に当たるということになる
が,同項の「法律上の利益」とは,あくまで当該処分の根拠となる法令
の規定から判断されるべきものであり,当該根拠法令の解釈において,
憲法の規定が考慮されることがあり得るとしても,常に憲法が当該根拠
法令と目的を共通にする関連法令であるということはできず,また,憲
法が廃棄物処理法及び浄化槽法と目的を共通にする関係法令であるとい
うこともできない。そして,控訴人らのいう「違法な営業との競争にさ
らされない権利」は,経済的利益に含まれるものであるところ,廃棄物
処理法及び浄化槽法が,既存の許可業者等の経済的利益を個別的利益と
して保護しているということができないことは,前示のとおりである。
イ控訴人らは,当審において,原審の弁論終結に際し,原審裁判長は,
原告適格について中間判決をする旨述べておきながら,原審が原告適格
を否定する原判決をしたことから,原審の訴訟指揮には釈明義務違反の
違法があると主張する。
しかしながら,原審裁判長の発言の趣旨はさておくとしても,原告適
格の主張立証責任は控訴人らにあるところ,控訴人らは,原審において,
訴状,平成21年10月6日付け準備書面(1),同年11月11日付け
準備書面(2)及びこれを補完する同年10月30日付け法律意見書(甲
17),同年11月16日付け準備書面(3)並びに同月19日付け準備
書面(3)(修正,差し替え版)をもって,控訴人らの原告適格について
縷々主張してきたところであり,当審においても,控訴理由書及び平成
22年9月22日付け準備書面(1)をもって,原判決に対する反論も含
めた詳細な主張を展開しており,釈明権を行使すべき状況にはなかった
ものである。そして,原審及び当審がこれらの控訴人らの主張を結論と
して採用せず,控訴人らの原告適格を否定する判断に至ったからといっ
て,釈明権の行使を怠ったとはいえないことは明らかである。控訴人ら
の上記主張は,独自の見解であって採用することができない。」
を加え,同行目の「(6)」を「(7)」と改める。
第4結論
よって,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であり,本件各控訴は理
由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所宮崎支部
裁判長裁判官横山秀憲
裁判官川﨑聡子
裁判官空閑直樹

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