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平成28年6月29日判決言渡
平成27年(行コ)第121号行政文書部分開示決定処分取消等請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成26年(行ウ)第98号)
主文
11審被告の控訴に基づき,原判決のうち1審被告敗訴部分を取り消す。
2(1)本件訴えのうち,別紙「不開示部分一覧表」の2,7及び12の各部
分の開示決定の義務付け請求に係る訴えを却下する。
(2)内閣情報官が平成25年11月25日付けで1審原告に対してした,
別紙「行政文書目録」記載の行政文書の一部不開示決定(閣情第395号)
のうち,上記(1)の各部分をいずれも不開示とした部分の取消請求を棄却
する。
31審原告の控訴を棄却する。
4訴訟費用については,1,2審を通じて,1審原告の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
11審原告
(1)原判決のうち1審原告敗訴部分を取り消す。
(2)内閣情報官が平成25年11月25日付けで1審原告に対してした,別
紙「行政文書目録」記載の行政文書の一部不開示決定(閣情第395号)の
うち,別紙「不開示部分一覧表」の1,3~6,8~11の各部分をいずれ
も不開示とした部分を取り消す。
(3)内閣情報官は,1審原告に対し,別紙「不開示部分一覧表」の1,3~
6,8~11の各部分の開示決定をせよ。
21審被告
主文同旨
第2事案の概要
1本件は,1審原告が,内閣情報官に対し,行政機関の保有する情報の公開
に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づき平成25年10月2
4日付けで別紙「行政文書目録」記載の行政文書(以下「本件行政文書」と
いう。)の開示請求(以下「本件開示請求」という。)をしたところ,同年
11月25日,内閣情報官から,本件行政文書のうち別紙「不開示部分一覧
表」記載の部分(以下「本件不開示部分」という。)を不開示とし,その余
の部分を開示する内容の一部不開示決定(閣情第395号。以下「本件一部
不開示決定」という。)を受けたため,同決定のうち本件不開示部分を不開
示とした部分の取消しを求めるとともに,本件不開示部分について開示決定
の義務付けを求める事案である。
原審は,①別紙「不開示部分一覧表」の2,7及び12の各部分は,情報公
開法5条3号及び6号が定める不開示情報に当たらないとして,本件一部不
開示決定のうちこれらの各部分を不開示とした部分を取り消すとともに,内
閣情報官にこれらの各部分の開示を命じ,②別紙「不開示部分一覧表」の1,
3~6,8~11の各部分は,同法5条3号が定める不開示情報に当たると
して,本件訴えのうち,これらの各部分の開示決定の義務付け請求に係る訴
えを却下するとともに,本件一部不開示決定のうちこれらの各部分を不開示
とした部分の取消しを求める請求を棄却した。これを不服とする当事者双方
が控訴を提起した。
2(1)関係法令等,前提事実及び争点は,後記(2)のとおり改めるほかは,原
判決3頁8行目から14頁21行目までに記載のとおりであるから,これを
引用する。
(2)ア原判決5頁5行目の「容易に」を削る。
イ原判決7頁2行目の「有識者報告書」を「有識者会議報告書」と改める
(以下,原判決の「有識者報告書」を全て「有識者会議報告書」と改める。)。
ウ原判決11頁21行目の「当庁」及び14頁10行目の「当裁判所」を
いずれも「大阪地方裁判所」と改める。
3(1)争点に対する当事者の主張は,後記(2),(3)のとおり当審における当事
者の主張を追加するほかは,原判決14頁22行目から33頁4行目までに
記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決16頁15行目
の「おそれのる」を「おそれのある」と,19頁7行目の「いないこと」を
「いえないこと」とそれぞれ改める。
(2)当審における1審原告の主張
ア総論
(ア)情報公開法5条3号の立証の程度について
同法5条3号所定の不開示情報であるとして不開示決定がされ,そ
の取消訴訟が提起された場合には,国は,我が国を取り巻く国際情勢,
我が国と当該他国又は国際機関との従前及び現在の関係,これらをめぐ
る歴史的経緯及び事象,我が国の外交方針,我が国と当該他国又は国際
機関との今後の交渉及び将来の関係の展望等に関する事実について可
能な限り具体的に主張立証し,これらを総合的に踏まえて,同法5条3
号所定のおそれがあると合理的に判断する根拠があることを証明する
必要があると解するのが相当である(東京高判平成26年7月25日参
照)。
国の安全や外交を理由とする秘密については,濫用の危険が高く,
一般市民が行政機関に裁量権の逸脱濫用があったことを知る由もない。
また,開示請求対象文書が開示請求者及び裁判所の目に触れる状況に置
かれない。さらに,国の安全や他国若しくは国際機関との交渉に関する
正確かつ詳細な情報は,専ら行政機関の長が保持しており,国民として
は,公にされている刊行物やメディアによる報道等から概括的に入手す
るほかないと考えられる。これらに照らすと,同法5条3号所定のおそ
れがあることについては,国が可能な限り具体的な事実関係に基づく合
理的な根拠を示すことを要すると解すべきである。
国は,市民に対し,説明責任を負うとともに,違法性を基礎付ける
証拠が国の側に偏在しているので,行政訴訟において,国に一定程度立
証責任を負わせたとしても負担ではないし,それによって,実質的な市
民の裁判を受ける権利が保障される。
以上のようなことからすると,本件では,1審被告は,①我が国に
おける情報保全事務における全体的な体制,②本件行政文書に記載され
ている文言の抽象性(本件行政文書,秘密取扱者適格性確認制度の実施
に関するガイドライン[以下「ガイドライン」という。],各行政機関
が作成する秘密取扱者適格性確認制度実施規程はどのような関係にあ
るのか),③諸外国との関係(諸外国においては,本件行政文書と類似
する文書のうち,どのようなレベルの文書が公開又は非公開となってい
るのか),④情報収集活動の容易性の根拠(本件行政文書の内容が公開
されれば,どのような理由で情報収集活動が容易になるのか),⑤我が
国の安全体制が害される蓋然性(その蓋然性があるとすれば,その根拠),
⑥本件行政文書を公開した場合に予想される他国から妨害行為等に関
する事実について,可能な限り具体的に主張立証し,これらを総合的に
踏まえて,同法5条3号所定のおそれがあると合理的に判断する根拠が
あることを証明する必要がある。
(イ)本件行政文書が機密性2情報であることについて
本件行政文書は,秘密文書制度においては,秘密文書に該当しない
と解されており,情報セキュリティ上の格付けも機密性2情報であって,
国の安全を害するおそれがない文書と位置付けられているから,本件行
政文書は,秘密文書制度や情報セキュリティ上の格付けでは,国の安全
が害されるおそれはないが,情報公開法上では,公にされると国の安全
が害されるおそれがあることにつき,内閣情報官が相当の理由があると
判断したということになる。
原判決は,秘密文書制度及び情報セキュリティ上の格付けと不開示
情報は連動しないと述べるが(原判決46頁),「国の安全」という同
一の術語が用いられているにもかかわらず,秘密文書制度及び情報セキ
ュリティ上の格付けと同法5条3号所定の不開示情報の「国の安全」と
がどう異なるのかについて何ら審理を尽くしていない。仮に,両概念が
直ちに連動するものではないとしても,秘密文書制度及び情報セキュリ
ティ上では,国の安全を害するおそれがないと判断されている以上,当
該評価は,内閣情報官が相当な理由があると判断したことにつき,十分
な反証となる間接事実である。
なお,別件開示請求における裁決(甲8)にも,理由説明書(甲12)
にも,国の安全を害するおそれについて指摘されているものの,他国又
は国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ,他国又は国際機関との交
渉上不利益を被るおそれについては,摘示されていない。このことは,
これらの摘示されていないものについては,相当の理由がないとの強い
推定が働くというべきである。
(ウ)本件行政文書におけるクリアランス手続について
特定秘密保護法における適性評価制度は,本件行政文書のクリアラ
ンス手続を受け継ぎ法制度化したものであるところ,特定秘密保護法に
おける適性評価制度においては,細部にわたって調査事項,手続,配慮
事項が公にされている。特定秘密保護法における適性評価制度において
これらの事項が公にされているということは,これらの事項を公にする
ことが国の安全等を害するおそれがないということの証明である。また,
本件行政文書におけるクリアランス手続に関する記載は,その分量から
して,特定秘密保護法等よりも概括的な記載にとどまることは明白であ
る。本件行政文書におけるクリアランス手続が特定秘密保護法における
適性評価制度と異なっているのであれば,重要でないとして廃止,変更
されたのであるから,それらの部分には,国の安全等を害するおそれが
ない。
有識者会議報告書では,本件行政文書におけるクリアランス手続の
問題点を具体的に列挙し,一番に「①法令上の位置付けが必ずしも明確
でないこと」を問題点として上げている。そして,特定秘密保護法の逐
条解説(甲40)及び特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実
施に関し統一的な運用を図るための基準(甲39,以下「運用基準」と
いう。)においては,プライバシーの保護等の観点から,評価対象者の
明示的な同意が必要とされており,さらに,特定秘密保護法においては,
適性評価手続の調査結果は本人に告知され,苦情申出制度も設けられて
いる。このように特定秘密保護法等においては,適性評価制度について,
調査対象者のプライバシーについて相当の配慮がされているのに対し,
本件行政文書におけるクリアランス手続には,プライバシーに対する配
慮が全くされていない。したがって,本件行政文書におけるクリアラン
ス手続は,調査対象者のプライバシーを侵害するものであって違法であ
る。情報公開法の不開示情報は,国の違法な行為に関する行政文書の情
報を含まず,違法な手続を規定した行政文書も不開示対象とはならない
から,クリアランス手続に関する不開示部分①は開示されるべきである。
(エ)情報公開法5条6号該当性について
同法5条6号の立証責任は国にあり(原判決34頁),国において,
同法5条6号該当性を主張立証しなければならない。
同法5条6号の趣旨は,国の機関等が行う事務又は事業は,公共の
利益のために行われ,公にすることにより,その適正遂行に支障を及ぼ
すおそれがある情報については,不開示とする合理的な理由があるとい
う点にある。そうであるとすれば,国が主張する「事務又は事業」は適
法でなければならない。
「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」とは,当該事務又は事業が,
根拠規定や趣旨に照らし,公益的な開示の必要性等の種々の利益衡量し
た上で適正な遂行といえるものであることを求められるものであると
ころ,「適正」の要件の判断に際しては,開示のもたらす支障のみなら
ず,開示のもたらす利益も比較衡量されなければならない。また,「お
それ」の程度についても,法的保護に値する蓋然性があることを要する。
原判決は,本件不開示部分のうち1審原告敗訴部分の同法5条6号
該当性について判断していないが,本件では,開示のもたらす支障も利
益についても,1審被告は何ら具体的な主張立証をしておらず,「おそ
れ」についても蓋然性の立証は行われていない。
イ各論
(ア)不開示部分①について
a運用基準(甲39)15頁以下の見出しは次のようになっている。
「1適性評価の実施に当たっての基本的な考え方
2実施体制
(1)適性評価実施責任者
(2)適性評価実施担当者
(3)関与の制限
(4)留意事項」
この運用基準の記載からすると,不開示部分①が該当する「クリ
アランス手続の構成」には,運用基準2(1)(2)(3)程度の内容しか記
載されていないといえる。そして,このような記載であれば,およそ
情報公開法5条3号の不開示情報に該当しない。
b運用基準(甲39)の「5調査の実施」(20頁)を見ると,(1)
評価対象者による質問票の記載と提出,(2)上司等に対する質問等,
(3)人事管理情報等による確認,(4)評価対象者に対する面接等,(5)
公務所又は公私の団体に対する照会の5項目が掲げられている。また,
本件行政文書の下位規範である「秘密取扱者適格性確認制度の実施に
関するガイドライン」(甲43,以下「ガイドライン」という。)に
は,クリアランス手続として,「1■調査」に,「(1)人事管理
情報等による調査」と「(2)調査対象者の上司及び人事担当課に対
する調査票による調査」が掲げられているところ,ガイドラインの(1)
は,運用基準の(3)と,ガイドラインの(2)は,運用基準の(2)とそれ
ぞれ対応しており,ガイドラインの(2)では,「上司又は人事担当課
が把握していない事項について該当がある旨を把握することを目的
とする限りにおいて,調査対象者本人に確認することを妨げない。」
とされているから,この部分は,運用基準の(4)と対応している。そ
して,運用基準の(1)は,ガイドラインに対応する箇所はなく,運用
基準の(5)は,ガイドラインの「2■調査」の部分に対応すること
となる。そうすると,本件行政文書のクリアランス手続の構成の4項
目(不開示部分①)は,(ア)上司等に対する質問等,(イ)人事管理情
報等による確認,(ウ)評価対象者に対する面接等,(エ)公務所又は公
私の団体に対する照会の4項目からることになる。このことは,運
用基準と本件行政文書のそれぞれの行数を比較すると,文章の長さが
対応していることや衆議院における政府の答弁(甲47~49の各
1・2)からも裏付けられる。
国は,評価対象者の同意を得ないままに公務所又は公私の団体に対
する照会によって情報を収集し,評価対象者のプライバシーを侵害し
ていたことを隠すために,クリアランス手続の構成の項目を隠してい
る。
(イ)不開示部分②について
上記(ア)bで述べたところからすると,不開示部分②には,公務所
又は公私の団体に対する照会についての留意事項が記載されており,
「特に,行政機関以外の照会については,調査のための補完的な措置と
して,必要最小限となるようにしなければならない。」というような記
載である。
(ウ)不開示部分③について
不開示部分③は,「カウンターインテリジェンスに関する情報」の
単なる定義部分であることが明らかである。単なる定義が公にされたと
ころで,国の安全が害されたり,他国等との信頼関係が損なわれ又は他
国等との交渉上不利益を被るとは考えられないから,不開示部分③は,
情報公開法5条3号の不開示情報に該当しない。
(エ)不開示部分④~不開示部分⑥について
原判決は,不開示部分④~不開示部分⑥が開示されると,情報の収
集,分析,共有の手法等が明らかになるという。
しかしながら,政府が特定の情報を収集した場合,それが分析され,
行政機関内部の一定の範囲で共有されることは当然のことであり,その
こと自体は,公知の事実である。
「情報の収集の手法等」については,公開情報からの取得,聴取り
調査は,合法的な手法であり,そのような手法を採用することを秘匿す
る必要性はない上,密行性を要する内偵も行政上の必要性に応じて合法
的な範囲では可能であるから,内偵行為を行うということ自体は,秘匿
する必要性はない。情報収集の手法等が一般的な情報収集方法の類型だ
けではなく,特に秘匿する必要があるようなノウハウが含まれる場合は
別であるが,本件行政文書の分量で秘匿性のあるノウハウが記載される
のは不自然である。そもそも本件行政文書は,各行政機関におけるカウ
ンターインテリジェンスに関する対応の基本的な方針を策定したにす
ぎないものであり,個々の具体的な対応については,各行政機関に委ね
られている。本件行政文書のような法律レベルで制定されてもおかしく
ない基本法的な一般規定において具体的なノウハウが書かれているこ
とについての合理的な理由も主張立証されていない。
また,「分析の手法等」についても,分析自体は,外部との接触が
生じない対内的な活動であり,不開示部分の記載内容は,分析方法を規
定するものではなく,分析方法の例示の域を出ない。特に秘匿する必要
があるようなノウハウが含まれる場合は別であろうが,本件行政文書の
位置付け,分量でノウハウが記載されるのは不自然である。
さらに,「共有の手法等」については,別件開示請求における裁決
(甲8)の記載を勘案すると,共有範囲を明らかにすると,そこが外国
情報機関等の情報収集活動のターゲットになるという趣旨であるよう
であるが,情報共有の部分は3行しかなく,しかも,本件行政文書第2
部Ⅱの前文において,「その成果物を各行政機関で共有するものとする」
としているのであるから,この3行の中に,外国情報機関等のターゲッ
トになる情報が記載されていることはありえない。
したがって,不開示部分④~不開示部分⑥は,情報公開法5条3号の
不開示情報に該当しない。
(オ)不開示部分⑧~不開示部分⑪について
原判決は,各行政機関及びカウンターインテリジェンスセンターに
よる事案対処の要点の記載が公にされることで生じる支障がどのよう
なものか具体的に述べてはいない。単に,支障が生じるおそれを一般的
抽象的に「具体的なおそれが存する」というのみである。
本件行政文書は,各行政機関におけるカウンターインテリジェンス
に関する対応の基本的な方針を策定したにすぎないものであり,個々の
具体的な対応については,各行政機関に委ねられている。そのため,各
行政機関が本件行政文書に記載された基本方針をさまざまに解釈,運用
していった結果,各行政機関でばらばらの基準になってしまった。この
ような不都合をなくすために特定秘密保護法により統一していく必要
があることが,平成25年秋の第185回国会審議において,同法案担
当の森まさ子国務大臣の答弁によって明らかにされている。すなわち,
本件行政文書に記載された基本方針は,それを実施する段階では各行政
機関によってばらばらな内容として具体化されてしまうほどの抽象度
の高い記載である。
現に「事案対処」の項目でも,一部開示された部分は,要点が記載
されているものの,それだけでは外国情報機関において秘密情報を不正
入手することを可能又は容易にするような内容が記載されているもの
ではない。不開示部分についても,一部開示部分と説明レベル及び分量
的に同等であり,一部開示部分と同程度の抽象性しかないものというほ
かない。
したがって,不開示部分⑧~不開示部分⑪は,情報公開法5条3号
の不開示情報に該当しない。
(4)当審における1審被告の主張
ア情報公開法5条3号該当性に関する審理,判断の手法の誤りについて
(ア)同法5条3号は,同号該当性に関して行政機関の長がした判断に
ついて,広い裁量権を認めた趣旨の規定であることから,当該行政機関
の長の判断に違法があるかどうかについて,裁判所は,同号該当性に係
る行政機関の長の第一次的な判断を尊重し,その判断が合理性を持つ判
断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)
どうかを審理の対象とし,これについて判断することになる。より具体
的にいうと,「公にすることにより,国の安全が害されるおそれ…(中
略)・・・がある情報」に該当するか否かを認定するためにした前提事実
の認定,それらの認定事実に係る不開示情報の要件への当てはめ及びそ
の充足性を判断して不開示情報に該当するとの認定(評価)をしたこと
について,それらが高度の政策的判断や将来予測として行政機関の長が
した専門的,技術的判断を伴う裁量権の行使によるものであることから,
裁判所は,これらについての行政機関の長の第一次的判断(認定)を尊
重した上で,これが合理的な許容限度内であるか否かという観点から審
理,判断すべきものである。
したがって,不開示情報該当性の判断に至る過程で行政機関の長が
行った各段階における当該行政機関の長の裁量権の行使に逸脱又は濫
用があったことを基礎づける具体的事実について,1審原告がその主張
立証責任を負うものと解すべきである。裁判所は,判断の基礎とされた
重要な事実に誤認があること等により判断が全く事実の基礎を欠くか
どうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により判断
が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうか
について審理し,それが認められる場合に限り、判断が裁量権の範囲を
超え又はその濫用があったものとして違法であるとすることができる
ものと解するのが相当である。
(イ)原判決は,不開示部分②,不開示部分⑦及び不開示部分⑫について,
1審被告の主張によっても,これらを開示することによって,国の安全
が害されるおそれ,他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等
との交渉上不利益を被るおそれが具体的に存するものとは認められな
いとして,上記各部分の不開示は違法であると判示している。
この判断は,当該行政文書に記載された国の安全等の確保に関する情
報について,裁判所が情報公開法5条3号所定の「おそれ」があると推
認するに足りる事情を1審被告において主張立証しなければならず,こ
の主張立証により上記の「おそれ」を推認するに至らない場合には,同
号該当性が否定されることを意味するものである。
しかし,当該行政文書に記載された情報が同法5条3号所定の「おそ
れ」があるものと認められるかどうか,行政機関の長の裁量に委ねられ
る事項であることは原判決も認めるところであり,この点について,1
審被告に裁判所をして確信をもって認定させる立証責任を課すことは,
実質的に,上記の「おそれ」の有無の認定に関して行政機関の長に裁量
権を認めず,判断代置的な司法審査を行うに等しいのであって,原判決
が示した一般的な判断手法と事案への具体的な当てはめとの間には大
きな食違い,矛盾があるといわざるを得ない。しかも,原判決は,1審
被告の上記の「おそれ」の主張立証の程度について,同法5条6号の場
合と同様の「法的保護に値する蓋然性」を要求しており,これは,記録
されている情報自体を明らかにして不開示情報該当性の主張立証をす
ることができない1審被告に対し,殊更に厳格な立証を要求するものと
いうほかない。
以上のような判断の仕方は,同法5条3号が,「おそれがあると行政
機関の長が認めることにつき相当の理由がある」と規定して,飽くまで
行政機関の長においておそれがあると判断したことにつき相当の理由
があるかどうかを問題としており,おそれが具体的に存するかどうかを
直接問題としない規定とされたことを全く顧みないものである。
イ不開示部分②,不開示部分⑦及び不開示部分⑫に係る原判決の判断の誤
りについて
(ア)不開示部分②につき
不開示部分②は,平等取扱原則やプライバシー保護への配慮といった
一般的な配意事項に引き続くものではあるが,このような前後3項目と
は異なり,「イクリアランス手続の構成」を踏まえ,その運用に当た
って特に配意すべき事項として,クリアランス手続において特定の具体
的な手法を執る際に講ずるべき配意事項が記載されている。同部分は,
不開示が適法とされた不開示部分①と一体として,クリアランス手続の
構成,手法等,すなわち調査対象者が特別管理秘密を取り扱うに当たっ
て信用し得るか否かについての調査がどのようなものかについて記載
されており,我が国政府全体のカウンターインテリジェンスに係る情報
保全体制,能力の一部を構成するものである。
不開示部分②には,不開示部分①と一体となって,クリアランス手続
の構成,手法等が記載されているところ,これを公にすることにより,
どのような調査を行っているかが明らかとなり,我が国の情報保全対策
に対する対抗・妨害措置を講じられるおそれがある。すなわち,クリア
ランス手続がどのように構成されているかが公にされると,外国情報機
関等がそのように公にされたクリアランス手続に抵触しないような形
で特別管理秘密取扱者に接触を試みる等して,特別管理秘密を取得しよ
うとすることを可能にし又は容易にすることとなる。
また,不開示部分②が開示されると,過去のクリアランス手続におい
て,どの時点で我が国が当該特定の具体的な手法を執るべきと判断した
かが明らかとなり,我が国政府の調査能力が露呈するおそれがある。す
なわち,協力者等の適格性を偽装しようとしていた外国情報機関等が,
いずれの段階で当該特定の具体的な手法が執られたか,あるいは執られ
なかったかを分析することにより,過去に講じた偽装措置の成否を段階
的に検証することが可能となり,我が国政府の調査能力を推察すること
を可能にすることとなる。
我が国政府の調査能力は,クリアランス手続にのみ用いられるもので
はなく,外国情報機関等による情報収集活動の実態を把握し,これらの
活動から我が国が保有する重要情報を守るためにも用いられるのであ
って,我が国政府の調査能力を推察されることは,我が国政府全体の情
報保全に関する事務に支障を及ぼすおそれが極めて高い。
このように,不開示部分②を開示すると,我が国政府が外国情報機関
等に対する情報収集に関して用いる調査能力が推察され,それに抵触し
ない形で外国情報機関等が情報収集活動を行うことを可能にし,あるい
は容易にするおそれがあり,我が国政府全体の情報保全に関する事務の
遂行に実質的な支障を及ぼし,ひいては国の安全が害されるおそれがあ
る。
このような不開示部分②を開示した場合の弊害に照らすと,不開示部
分②が同法5条3号の不開示情報に該当するとの内閣情報官の判断は
十分に合理的であり,かつ,不開示部分②は同法5条6号の不開示情報
に該当するというべきである。
(イ)不開示部分⑦及び不開示部分⑫につき
不開示部分⑦及び不開示部分⑫には,カウンターインテリジェンス・
センターにおいて作成される文書の具体的な名称等が記載されている
が,より具体的に言うと,不開示部分⑦については,同センターが諸外
国におけるカウンターインテリジェンス等に関する調査をした後に,同
センターが行う具体的な業務内容が,具体的な文書の名称とともに記載
され,また,不開示部分⑫には,同センターの業務内容について,前後
の項目の一般的な事項とは異なり,具体的な文書の名称を挙げた上で,
同文書を利用して行う具体的な業務内容が記載されている。
不開示部分⑦及び不開示部分⑫は,これを公にすることにより,政府
がカウンターインテリジェンスに関する情報をどのような方法で共有
しているかが明らかとなり,我が国の情報保全対策に対する対抗・妨害
措置が講じられるおそれがある。すなわち,カウンターインテリジェン
スに関する情報の調査に基づいて作成される文書の内容が明らかにな
った場合,外国情報機関による情報収集活動を可能にし,あるいは容易
にするおそれがあることは,原判決が判示するとおりであるが,当該文
書の名称のみが明らかになった場合であっても,それを端緒とした探索
が可能となり,外国情報機関等が協力者を通じて重要文書の持出しを企
図した場合には,端的にその文書名を告げることで窃取行為を格段に容
易ならしめるなど,当該文書の内容が漏えいするおそれを著しく高める
こととなる。
しかも,不開示部分⑦には,カウンターインテリジェンス・センター
が,カウンターインテリジェンスに関する調査を行った結果をどのよう
に取り扱うのか,具体的な文書の名称を含めた同センターの具体的な業
務内容が記載されており,不開示部分⑫には,具体的な文書の名称を挙
げた上で,同文書を利用して行う同センターの具体的な業務内容が記載
されているから,これらを公にすることは,正にカウンターインテリジ
ェンスに関する情報の収集,分析,共有の手法等を公にすることにほか
ならない。当該文書の利用方法は,収集した情報を分析し,その成果物
をどのように利用するかということであって,外国情報機関等がこれを
分析することにより,カウンターインテリジェンス・センターの情報収
集,分析能力が推察されることになる。
このように,不開示部分⑦及び不開示部分⑫に記載された文書の具体
的な名称を明らかにすれば,外国情報機関等による情報収集活動の端緒
を与え,これを格段に容易するおそれがあり,文書の利用方法について
は,正にカウンターインテリジェンスに関する情報の収集,分析,共有
の手法等を公にすることにほかならず,我が国政府全体の情報保全に関
する事務の遂行に実質的な支障を及ぼし,ひいては国の安全が害される
おそれがある。
このような不開示部分⑦及び不開示部分⑫を開示した場合の弊害に
照らすと,不開示部分⑦及び不開示部分⑫が同法5条3号の不開示情報
に該当するとの内閣情報官の判断は十分に合理的であり,かつ,不開示
部分⑦及び不開示部分⑫は,同法5条6号の不開示情報に該当する。
ウ本件行政文書によって定められた秘密取扱者適格性確認制度が既に廃
止されていることについて
本件行政文書によって定められた秘密取扱者適格性確認制度は,平成2
6年12月10日の改定によって廃止されているが,従前のクリアランス
手続がどのように構成されていたかが公にされると,クリアランス手続の
実施時に協力者等の適格性を偽装しようとしていた外国情報機関等が,ク
リアランス手続のいずれの段階でどのような手法が執られたか,あるいは
執られなかったかを分析することにより,過去に講じた偽装措置の成否を
段階的に検証することが可能となり,それによって,我が国政府の調査能
力を推察することが可能となる。
したがって,不開示部分①及び不開示部分②は,情報公開法5条3号及
び6号の不開示情報に該当する。
第3当裁判所の判断
1情報公開法5条3号及び6号の各不開示情報の当たるかどうかが争点とな
った場合の審理方法等
(1)情報公開法は,国民主権の理念にのっとり,行政文書の開示を請求する
権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一層の公開を
図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされる
ようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な
行政の推進に資することを目的としており(1条),その観点から,行政
機関の保有する行政文書の開示の請求権者を特に限定せず(3条),また,
5条各号に掲げる不開示情報のいずれかが記録されている場合を除き,行
政機関の長に対して開示請求に係る行政文書の開示を義務付けている(5
条)。
このうち,情報公開法5条3号は「公にすることにより,国の安全が害さ
れるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は
他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の
長が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報として定めて
いるが,その趣旨は,我が国の安全,他国若しくは国際機関(以下「他国
等」という。)との信頼関係及び我が国の国際交渉上の利益を確保するこ
とは,国民全体の基本的な利益を擁護するために政府に課された重要な責
務であって,同法においてもこれらの利益は十分に保護されるべきと考え
られたことによるものである。そして,公にすることにより,国の安全が
害されるおそれ,他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等との
交渉上不利益を被るおそれがある情報については,一般の行政運営に関す
る情報とは異なり,その性質上,開示・不開示の判断に高度の政治的判断
を伴うこと,我が国の安全保障上又は対外関係上の専門的・技術的判断を
要することなどの特殊性が認められる。このような同法5条3号の文言及
び趣旨に照らすと,同号該当性の判断には行政機関の長に一定の裁量が認
められるのであって,行政機関の長が同号に該当するとして不開示決定を
した場合には,裁判所は,当該行政文書に同号に規定する不開示情報が記
録されているか否かについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し,
その判断が合理的なものとして許容される範囲内であるかどうかを審理,
判断すべきであって,同号に該当する旨の行政機関の長の判断が社会通念
上合理的なものとして許容される限度を超えると認められる場合に限り,
裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったものとして違法となると解するのが
相当である。
同法5条3号が定める不開示情報に当たるかどうかが不開示決定の取消
訴訟で争われる場合には,行政機関の長は,不開示決定に係る行政文書を
保有し,その内容を把握している上,国の安全が害されるおそれ,他国等
との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等との交渉上不利益を被るおそ
れを基礎付ける情報を保有しているのであるから,国(1審被告)におい
て,まず,これらの事実を,当該行政文書の具体的な内容を明らかにする
ことなく主張立証すべきであり,それに対する開示請求者(1審原告)の
主張立証を併せて考慮して,裁判所は,行政機関の長の判断が合理的なも
のとして許容される範囲内であるかどうかを判断し,行政機関の長の判断
が社会通念上合理的なものとして許容される限度を超えると認められる場
合には,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったものとして違法であるとの
判断をすべきことになる。
以上述べたところを主張立証責任の観点からいうと,上記の裁量権の範囲
の逸脱又は濫用があったことについての主張立証責任は,開示請求者(1
審原告)にあるということができるが,国(1審被告)は,上記のとおり
主張立証する必要があり,その主張立証の程度,内容によっては,裁量権
の範囲の逸脱又は濫用があることが事実上推認されることがあり得るとい
うことができる。
(2)次に,情報公開法5条6号は「国の機関…が行う事務又は事業に関する
情報であって,公にすることにより,…当該事務又は事業の性質上,当該
事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を不開示情
報として定めているが,その趣旨は,国の機関等が行う事務又は事業は,
公共の利益のために行われるものであり,公にすることによりその適正な
遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については,不開示とする合理的な
理由があると考えられたためである。そして,同法5条6号にいう「支障」
の程度は名目的なものでは足りず,実質的なものであることが必要であり,
また,同法5条6号にいう「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性では
なく,法的保護に値する蓋然性が要求されると解される。
同法5条6号が定める不開示情報に当たるかどうかが不開示決定の取消
訴訟で争われる場合には,不開示情報に該当しない限り原則的には行政機
関の長に行政文書の開示を義務付けているという同法の構造や同法5条6
号の不開示情報を定めた趣旨に照らすと,国(1審被告)において,当該
行政文書には「国の機関…が行う事務又は事業に関する情報であって,公
にすることにより,…当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適
正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」が記録されていることを主張
立証すべきであり,それに対する開示請求者(1審原告)の主張立証を併
せて考慮して,裁判所は,当該行政文書に同号所定の不開示情報があるこ
とが認められるかどうかを判断し,認められない場合には,不開示決定は,
違法であるとの判断をすべきことになる。
(3)以上の(1),(2)に反する,情報公開法5条3号及び6号の各不開示情報
に当たるかどうかが争点となった場合の審理方法等に関する当事者の主張
を採用することはできない。
(4)1審原告は,本件不開示部分が,情報公開法5条3号所定の不開示情報
に当たることについて,1審被告は,①我が国における情報保全事務にお
ける全体的な体制,②本件行政文書に記載されている文言の抽象性,③諸
外国との関係,④情報収集活動の容易性の根拠,⑤我が国の安全体制が害
される蓋然性,⑥本件行政文書を公開した場合に予想される他国からの妨
害行為等に関する事実について,可能な限り具体的に主張立証し,これら
を総合的に踏まえて,同法5条3号所定のおそれがあると合理的に判断す
る根拠があることを証明する必要があると主張する。
しかし,前記(1)で判示したとおり,1審被告は,不開示決定に係る行政
文書の内容,国の安全が害されるおそれ,他国等との信頼関係が損なわれ
るおそれ又は他国等との交渉上不利益を被るおそれを基礎付ける事実を,
当該行政文書の具体的な内容を明らかにすることなく主張立証すべきであ
るが,同号該当性の判断には行政機関の長に一定の裁量が認められるので
あり,行政機関の長が同号に該当するとして不開示決定をした場合には,
裁判所は,当該行政文書に同号に規定する不開示情報が記録されているか
否かについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し,その判断が合理
的なものとして許容される範囲内であるかどうかを審理判断すべきことか
らすると,1審被告は,裁量権の範囲の逸脱又は濫用がないことを明らか
にし,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があることが事実上推認されない程度
に主張立証する必要はあるが,それを超えてまで主張立証する必要はない。
したがって,1審被告が上記で主張しているような主張立証までする必要
があるとは解されない。
2認定事実
(1)後記(2)のとおり改めるほかは,原判決35頁5行目から42頁8行目
までに記載のとおりであるから,これを引用する。
(2)ア原判決36頁19行目から20行目にかけての「秘密取扱者適格性確
認制度の実施に伴うガイドライン」を「ガイドライン」と改める。
イ原判決41頁5行目の「その頃,本件行政文書の改定がれた(証人A)」
を,「同日,本件行政文書における秘密取扱者適格性確認制度は廃止さ
れ,本件行政文書の改定がされて,不開示部分①及び不開示部分②を含
む部分は,削除された(甲46,証人A)。」と改める。
3検討
以上を踏まえ,本件不開示部分についての情報公開法5条3号及び6号の
不開示情報該当性について,以下検討する。
(1)不開示部分①及び不開示部分②について
ア不開示部分①及び不開示部分②の各記載内容につき
(ア)不開示部分①及び不開示部分②は,いずれも,本件行政文書の「第
2部政府統一基準」中の「Ⅰ特別管理秘密に係る基準」の「3人
的管理」の「(1)秘密取扱者適格性確認制度」に存する。
このうち,不開示部分①は,秘密取扱者適格性確認制度についての「ア
基本方針」として,特別管理秘密に当たる秘密についての取扱いにつ
いては,これを取り扱うことについての適格性を確認した者に行わせる
ことや,この適格性の確認はクリアランス手続により行うこと等が記載
されている部分に続けて,新たな項目として「イクリアランス手続の
構成」の表題の下に記載された部分であり,その内容全体が不開示とさ
れている。不開示部分①は,15行からなるものであり,その体裁から
すると,クリアランス手続の構成に係る四つの項目が記載されているも
のと推認される。この点について,Aは,不開示部分①は,クリアラン
ス手続の構成の部分であり,これは,調査対象者が特別管理秘密を取り
扱うに当たって信用できかつ信用し得るか否かについての調査がどの
ようなものかについて記載されており,我が国政府全体のカウンターイ
ンテリジェンスに係る情報保全体制,能力の一部を構成するものである
旨陳述,証言している(乙9,証人A)。
また,不開示部分②は,上記「イクリアランス手続の構成」に続
く,「ウクリアランス手続を行う際の配意事項」としてまとめられ
た,(ア)から(エ)の4項目のうちの一つ((イ)の項目)であって,3
行からなるものである。同項目の(ア)は,適格性の確認に当たり国家
公務員法を遵守するとともにプライバシーの保護への配慮を尽くさな
ければならないことを,(ウ)は,クリアランス手続の過程で得られた
情報を正当な理由なく第三者に提供してはならないことを,(エ)は,
各行政機関がクリアランス手続の実効性確保のために相互に必要な協
力を行うものとすることをそれぞれ記載しており,不開示部分②も,
クリアランス手続を行う際の配意事項が記載されているものと推認さ
れる。この点について,Aは,不開示部分②が存する「ウクリアラ
ンス手続を行う際の配意事項」についても,調査対象者が特別管理秘
密を取り扱うに当たって信用できかつ信用し得るか否かについての調
査がどのようなものかについて記載されており,我が国政府全体のカ
ウンターインテリジェンスに係る情報保全体制,能力の一部を構成す
るものである旨,及び,不開示部分②は,他の3項目とは異なり,ク
リアランス手続において特定の具体的な手法をとる際に講ずるべき配
意事項が記載されている旨陳述している(乙9,13)ところ,配意
事項として,特定の具体的な手法をとる際に講ずるべき配意事項が記
載されていても不自然ではないから,不開示部分②は,他の3項目と
は異なり,クリアランス手続において特定の具体的な手法をとる際に
講ずるべき配意事項が記載されているものと認められる。
(イ)不開示部分①は,上記(ア)のとおり,クリアランス手続の構成に
係る四つの項目が記載されているものと推認されるところ,この四つの
項目について,1審原告は,前記第2の3(2)イ(ア)bのとおり,運用
基準(甲39)及びガイドライン(甲43)に基づいて,その内容を主
張する。
しかし,運用基準は,特定秘密保護法の統一的な運用を図るため,特
定秘密保護法18条1項に基づき定められ,平成26年12月10日
から施行されているものである(甲39)ところ,特定秘密保護法に
基づく特定秘密を取り扱う者の適性評価の制度は,本件行政文書に記
載されている秘密取扱者適格性確認制度とは別個の制度であるから,
運用基準の内容から本件行政文書の記載内容を推認することはできな
い。このことは,有識者会議報告書(平成23年8月8日,甲14)
が,上記秘密取扱者適格性確認制度について,法令上の位置付けが必
ずしも明確でないことなどを指摘し,秘密保全法制の早急な整備を提
言しているとしても,左右されるものではない。なお,1審原告は,
運用基準と本件行政文書のそれぞれの行数を比較すると,文章の長さ
が対応しているとも主張するが,文章の長さが対応していることから
直ちにその内容を推認することができないことは明らかである。
また,ガイドライン(甲43)は,上記秘密取扱者適格性確認制度を
実施するに際してのガイドラインであり,クリアランス手続として,
「1■調査」に,「(1)人事管理情報等による調査」と「(2)調査対
象者の上司及び人事担当課に対する調査票による調査」が掲げられて
おり,この(2)には,「上司又は人事担当課が把握していない事項につ
いて該当がある旨を把握することを目的とする限りにおいて調査対象
者本人に確認することを妨げない。」と記載されており,その後に,
「2■調査」が記載されているものの,これだけの記載では,本件
行政文書の記載内容を推認することは困難である。
さらに,証拠(甲47~49の各1・2)によると,①衆議院議員が,
消費者庁の秘密取扱者適格性確認制度実施規程7条の文言(「ガイド
ラインⅡ1(1)の人事管理情報等による調査は,調査対象職員に係る人
事記録,勤務評定記録書その他次長が定める種類の資料を参照するこ
と及びガイドラインⅡ1(1)アただし書の照会を行うことにより行う
ものとする。」)と有識者会議報告書(甲14,8頁)の秘密取扱者
適格性確認制度の課題についての記載(「対象者本人から十分な情報
が得られない場合に,適性評価の実施権者(対象者が適性を有してい
ると認める権限のある者をいう。)が公私の団体に照会する権限が明
確でないこと」)に基づいて,上記秘密取扱者適格性確認制度では,
対象者本人から十分な情報が得られない場合に,適性評価の実施権者
は,公私の団体等に照会する規定となっているのかどうか明らかにさ
れたいとの質問をしたのに対して,政府が,消費者庁の上記実施規程
7条と同様の規定を定めている府省等がある旨の答弁をしていること,
②衆議院議員が,消費者庁の上記実施規程7条と同様の規定を定めて
いる府省等を明らかにされたいとの質問をしたのに対して,政府が,
「内閣官房,内閣府,宮内庁,公正取引委員会,金融庁,復興庁,厚
生労働省及び原子力規制委員会」との答弁をしていること,③衆議院
議員が,上記②の府省等の照会規定は,「権限がない」ものと解釈し
てよいか,他の府省等は,公私の団体に照会することを行っていない
のか明らかにされたいとの質問をしたのに対して,政府が,「お尋ね
については,いずれも秘密取扱者適格性確認制度の具体的運用に関わ
ることであり,これを明らかにすることにより,政府の情報保全に支
障を及ぼすおそれがあることから,お答えを差し控えたい。」との答
弁をしていることが認められる。しかし,これらの質問と答弁によっ
ても,「ガイドラインⅡ1(1)アただし書の照会」が何であるかは明ら
かでなく,これらの質問と答弁から,本件行政文書の記載内容を推認
することはできない。
1審原告は,国は,評価対象者の同意を得ないままに公務所又は公私
の団体に対する照会によって情報を収集し,評価対象者のプライバシ
ーを侵害していたことを隠すために,クリアランス手続の構成の項目
を隠していると主張するが,推測による主張というほかなく,採用す
ることはできない。
したがって,1審原告の前記第2の3(2)イ(ア)bの主張を採用する
ことはできない。
(ウ)1審原告は,前記第2の3(2)イ(イ)のとおり,不開示部分②には,
公務所又は公私の団体に対する照会についての留意事項が記載されて
いると主張するが,この主張は,前記第2の3(2)イ(ア)bの主張に基
づくものであり,前記(イ)のとおり前記第2の3(2)イ(ア)bの主張を
採用することができない以上,前記第2の3(2)イ(イ)の主張を採用す
ることもできない。
イ不開示部分①及び不開示部分②の情報公開法5条3号が規定する不開
示情報該当性につき
(ア)本件基本方針が,カウンターインテリジェンスに関する各行政機
関の施策に関し,必要な事項の統一を図るとともに,カウンターイン
テリジェンス・センターその他カウンターインテリジェンスに関する
施策を推進する体制を確立し,もって国の重要な情報や職員等の保護
を図ることを目的としてとりまとめられたものであること(本件行政
文書の「第1部総則」の「1目的」参照)に加え,各行政機関が
保有する国の安全,外交上の秘密その他国の重大な利益に関する事項
であって公になっていないもののうち,特に秘匿を要するもの(特別
管理秘密)の管理(情報漏えいの絶無を期すこと)は,我が国の安全
を守り,また,他国等との信頼関係を維持するという観点から,極め
て重要なものであることからすると,そのような特別管理秘密の管理
の方法として,クリアランス手続により適格性を確認された者で,か
つ,知る必要がある者のみが特別管理秘密取扱者としてアクセスでき
ることとする本件基本方針において,このようなクリアランス手続が
どのように構成されているのかが公にされると,クリアランス手続の
実施時に協力者等の適格性を偽装しようとしていた外国情報機関等が,
クリアランス手続のいずれの段階でどのような手法が執られたか,あ
るいは執られなかったかを分析することにより,過去に講じた偽装措
置の成否を段階的に検証することが可能となり,それによって,我が
国政府の調査能力を推察することが可能となるものと認められる。そ
して,そのことは,我が国の安全が害される結果を招くおそれがある
ということができる。
上記アのとおり,不開示部分①は,クリアランス手続の構成に係る四
つの項目が記載されているものであり,不開示部分②は,クリアラン
ス手続において特定の具体的な手法をとる際に講ずるべき配意事項が
記載されているものであるから,これらの部分を開示すると,クリア
ランス手続がどのように構成されているのかが公にされて,上記のと
おり,我が国の安全が害される結果を招くおそれがあるということが
できる。
このことは,本件行政文書によって定められた不開示部分①及び不
開示部分②を含む秘密取扱者的確性確認制度が,平成26年12月1
0日に廃止されているとしても,変わるものではない。
なお,クリアランス手続の実施時に協力者等の適格性を偽装しようと
していた外国情報機関等が,過去に講じた偽装措置の成否を段階的に
検証した事例があったことを具体的に認めるに足りる証拠はないが,
前記1で判示したとおり,1審被告は,裁量権の逸脱又は濫用がない
ことを明らかにし,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があることが事実上
推認されない程度に主張立証する必要があるにとどまるから,具体的
に上記のような事例があったことまで主張立証する必要はないものと
いうべきである。
(イ)この点について,1審原告は,本件行政文書は,基本方針であっ
て,その性格は全行政機関横断的な抽象的概括的な規定とならざるを得
ず,その総頁数や,各項目の分量からしても,その内容が詳細かつ具体
的に記載されているとはいえない旨,また,本件行政文書は,その機密
性についての格付け及び取扱制限に照らすと,秘密文書に相当する機密
性を有しない旨主張する。
しかし,本件基本方針(本件行政文書)が,カウンターインテリジ
ェンスに関する各行政機関の施策に関し必要な事項の統一を図るもの
であることからすると,各行政機関がそれぞれ当該行政機関に適合した
形で「秘密取扱者適格性確認制度実施規程」を作成するとしても(なお,
同実施規程を作成するか否かの判断は,各行政機関に委ねられている。),
各行政機関が行うクリアランス手続に共通する事項についての統一的
な取り決め,方針は本件基本方針においてされているものと推認される
ところであって,本件行政文書が,クリアランス手続の構成について概
括的な記載しかしていないものとは認め難い。この点について,本件行
政文書の総頁数や,各項目の分量,各不開示部分の行数の多寡は,どの
ような内容の情報が記載されているかを推知する一つの指標にはなり
得るものといえるが,それによって,当該情報の具体性が直ちに左右さ
れるものではない。
また,本件行政文書は,「秘密文書」には当たらないものとして,
「機密性2情報」との機密性についての格付けがされている(前記2の
認定事実[原判決第3の2(1)ウ])が,「秘密文書等の取扱いについ
て(昭和40年4月15日事務次官等会議申合せ)」において,秘密文
書等の指定及び作成は,必要最小限度にとどめることとされていること
(甲30)や,機密性についての格付けが,情報公開法に基づく情報公
開請求がされた場合の同法所定の不開示情報該当性に直ちに結びつく
ものとは解されないことに照らすと,本件行政文書について,「機密性
3情報」ではなく,「機密性2情報」との格付けがされていることから,
直ちに,本件行政文書の全体について,これを開示しても,我が国の安
全,利益に損害を与えるものではないということはできない。そうであ
るところ,不開示部分①及び不開示部分②が特別管理秘密の管理の観点
から,我が国の安全を守るために,これを不開示とする必要性がある情
報ということができることは,上記(ア)で説示したとおりである(なお,
本件行政文書が「機密性2情報」とされていることと,本件不開示部分
の不開示情報該当性の関係については,不開示部分①及び不開示部分②
以外の他の不開示部分に関しても,上記と同様であると解される。)。
(ウ)また,1審原告は,本件行政文書のうち,人的管理に関する事項
については,有識者会議報告書によって,その項目が明らかにされるな
どしていることからすると,既に公知のものとなっている旨,また,特
定秘密保護法における適性評価制度において,細部にわたって調査事項,
手続,配慮事項が公にされており,本件行政文書におけるクリアランス
手続が特定秘密保護法における適性評価制度と異なっているのであれ
ば,重要でないとして廃止,変更されたものである旨主張する。
この点について,有識者会議報告書においては,「2人的管理」
の「(1)適正評価制度」の「エ評価の観点及び調査事項」として,
秘密漏えいのリスクとの関連が深い,例えば,①我が国の不利益とな
る行動をしないこと,②外国情報機関等の情報収集活動に取り込まれ
る弱点がないこと,③自己管理能力があること又は自己を統制できな
い状態に陥らないこと,④ルールを遵守する意思及び能力があること,
⑤情報を保全する意思及び能力があることといった観点から対象者
の適性を評価することが考えられるとし,諸外国の適正評価における調
査事項を参考にすると,調査事項としては,例えば,①人定事項(氏
名,生年月日,住所歴,国籍(帰化情報を含む。),本籍,親族等),
②学歴・職歴,③我が国の利益を害する活動(暴力的な政府転覆活
動,外国情報機関による情報収集活動,テロリズム等)への関与,④
外国への渡航歴,⑤犯罪歴,⑥懲戒処分歴,⑦信用状態,⑧薬
物・アルコールの影響,⑨精神の問題に係る通院歴,⑩秘密情報の
取扱いに係る非違歴といったものが考えられるとの指摘がされている
ことが認められる(甲14)。また,平成25年の臨時国会で,クリア
ランス手続の調査事項は,①セキュリティクリアランス対象活動を行
っている国,組織又は人への関与,②帰化,③外国籍配偶者,④
特定の外国への頻繁な私的渡航,⑤懲戒処分等,⑥刑事処分,⑦
金銭問題,⑧アルコール依存,⑨薬物濫用等,⑩精神障害,⑪
情報の不適切な取扱い,⑫特異な言動であることが,その事項名のみ
明らかにされている(前記2の認定事実[原判決第3の2(1)イ(オ)])。
これらのことからすると,本件基本方針(本件行政文書)が定めるクリ
アランス手続における調査事項自体は既に公にされているものであっ
て,その内容も有識者会議報告書が指摘する各項目と同種のものという
ことができるが,そうであるとしても,クリアランス手続として,上記
のような各項目をどのように調査するかについては,何ら明らかにされ
ていないから,不開示部分①及び不開示部分②の内容が既に公知のもの
になっているということはできない。
また,特定秘密保護法における適性評価制度は,本件行政文書に記載
されている秘密取扱者適格性確認制度とは別個の制度であるから,特定
秘密保護法における適性評価制度において,細部にわたって調査事項,
手続,配慮事項が公にされているからといって,不開示部分①及び不開
示部分②の内容が既に公知のものになっているとか,不開示部分①及び
不開示部分②を開示しても我が国の安全を害するおそれがないという
ことはできないし,本件行政文書に記載されている秘密取扱者適格性確
認制度と特定秘密保護法における適性評価制度とが異なる部分がある
場合に,その部分は重要でないとか,それを開示しても我が国の安全を
害するおそれがないというべき根拠もない。
(エ)さらに,1審原告は,本件行政文書に基づいて実施されていたク
リアランス手続は,法律の根拠がなく,対象となる行政機関職員の同意
を得ないで行われ,評価項目・調査事項を具体的に明らかにしていなか
った点で,違法な調査を行うものであって,このようなクリアランス手
続は違法であるというべきであり,憲法が保障するプライバシー権を侵
害する違憲・違法なものとして本件行政文書には秘密として保護される
べきものではない旨主張するところ,前記第2の2「前提事実」(原判
決第2の2「前提事実」(1)イ(ウ))のとおり,有識者会議報告書にお
いて課題として指摘されている点がある。
これに対し,本件基本方針においては,秘密取扱者適格性確認(ク
リアランス手続)の実施の根拠は任命権(任命権者である行政機関の長
等による特別管理秘密を取り扱う官職への職員の任用に関して任命権
者の権限の範囲内で実施するもの)であるとされ,国の行政機関の職員
のみを対象として,当該職員の同意を必ずしも要することなく実施する
ことができるものとされていた(前記2の認定事実[原判決第3の2(1)
イ(エ)])。上記の有識者会議報告書で指摘されているように,このよ
うなクリアランス手続が法制度化され,明確化されることが望ましいこ
とであるとしても,各行政機関が保有する国の安全,外交上の秘密その
他の国の重大な利益に関する事項であって,公になっていない情報であ
る特別管理秘密について,クリアランス手続によって適格性を確認する
ことができた者のみにそのアクセスを認めることによって,特別管理秘
密の管理を徹底する(その情報漏えいの絶無を期す)ことは,我が国の
安全を守るために必要性が高い事柄であることに鑑みると,上記のよう
な任命権の発動として,特別管理秘密を取り扱う官職への職員の任用に
関して,必ずしも当該職員の同意を得ることなく,クリアランス手続を
実施することが,違憲,違法であるとまでいうことはできない。また,
クリアランス手続において,当該職員への通知や不服申立ての制度が整
備されていないとしても,同様に違憲,違法であるとまでいうことはで
きない。したがって,本件基本方針が定めるクリアランス手続をもって,
違憲,違法な手続ということはできないから,不開示部分①及び不開示
部分②を不開示とすることができないというべき理由はない。
(オ)以上によると,不開示部分①及び不開示部分②について,これを
公にすることにより,国の安全が害されるおそれがあると行政機関の長
が認めることにつき相当の理由があるということができ,情報公開法5
条3号の不開示情報に該当すると認められる。
(2)不開示部分③について
ア不開示部分③の記載内容につき
不開示部分③は,本件行政文書の「第2部政府統一基準」中の「Ⅱ
カウンターインテリジェンスに関する情報の収集・共有」の「1カウ
ンターインテリジェンスに関する情報の定義」に存する。
そして,不開示部分③の前後をみるに,同部分の直前は,「「カウンタ
ーインテリジェンスに関する情報」とは,外国情報機関の我が国に対する
情報収集活動の状況及び態様に関する情報」と記載されており,これに続
いて約3行にわたる不開示部分③があり,同不開示部分の直後には,「及
び外国情報機関の情報収集活動による被害を防止するための方策に関す
る情報をいう。」と記載されている。これらからすると,不開示部分③は,
その前後部分とあわせて,カウンターインテリジェンスに関する情報の定
義が記載された文章の一部を構成するものと推認される。この点について,
Aは,不開示部分③には,カウンターインテリジェンスに関する情報とし
て,「外国情報機関の我が国に対する情報収集活動の状況及び態様に関す
る情報」の更に具体的な内容,すなわち,政府として収集するべき「カウ
ンターインテリジェンスに関する情報」の具体的内容が例示されて記載さ
れており,簡単にいうと,政府が関心を持っている情報の具体例が記載さ
れている旨陳述,証言している(乙9,証人A)。
本件行政文書の性質に加え,不開示部分③が記載された位置や,その前
後の文脈,不開示部分③が約3行(2行半)にわたるものであることに鑑
みると,上記Aの陳述等の内容に格別不自然な点は認められず,同陳述等
のとおり,同不開示部分には,「外国情報機関の我が国に対する情報収集
活動の状況及び態様に関する情報」の更に具体的な内容として,政府とし
て収集するべき「カウンターインテリジェンスに関する情報」の具体的内
容が例示されて記載されているものと認めるのが相当である。
イ不開示部分③の情報公開法5条3号が規定する不開示情報該当性につき
外国による諜報活動を阻止し,情報の漏えいその他の国益を害する事態
を予防すること(カウンターインテリジェンスの定義)は,我が国の安全
を守り,また,他国等との信頼関係を維持する上で重要な事柄であること
は明らかであるところ,我が国政府のカウンターインテリジェンス機能を
強化するために,カウンターインテリジェンス・センターにおいて,カウ
ンターインテリジェンスに関する情報を収集及び分析し,その成果物を各
行政機関で共有すること(不開示部分③が存する,本件行政文書の「Ⅱ
カウンターインテリジェンスに関する情報の収集・共有」の項)は,上記
のようなカウンターインテリジェンス機能を十全ならしめる上で必要性
の高いものといえる。そうであるところ,我が国がカウンターインテリジ
ェンスに関する情報として,いかなる情報を収集,分析し,これを共有し
ているかについて,抽象的にこれを定義付けた情報に止まらず,これを具
体的に例示したものについてまで公にすることは,我が国が関心を有する
カウンターインテリジェンスに関する情報がどのようなものかが具体的
に明らかになって,かかる情報の収集を困難にさせるものといえるし,逆
に,他国の情報機関等が,そのように具体的に明らかにされた,我が国が
収集,分析を行っているカウンターインテリジェンスに関する情報がどの
ようなものかを把握し,これに抵触しないような形で我が国に対する情報
収集活動を行うことを可能にし,あるいは容易にするものということがで
きる。
これらからすると,実効的なカウンターインテリジェンスに関する情報
の収集,分析を確保するために,カウンターインテリジェンスに関する情
報の内容が具体的に例示されている不開示部分③を不開示とする必要性
があるものということができる。
これに対し,1審原告は,不開示部分③は定義であって一般的内容で
ある上に,具体的な例示があるとしても例示にすぎない以上,これを開示
したとしても1審被告が主張するような我が国政府の情報保全等に与え
る影響はない旨主張する。しかし,不開示部分③の記載内容が,カウンタ
ーインテリジェンスに関する情報の内容を具体的に例示するものであっ
て,これを公にすることにより,我が国のカウンターインテリジェンスに
関する情報の収集,分析に具体的な支障を生じさせることは,上記で説示
したとおりであるから,この点についての1審原告の主張は採用すること
ができない。
以上によると,不開示部分③について,これを公にすることにより,
国の安全が害されるおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相
当の理由があるということができるから,情報公開法5条3号の不開示情
報に該当すると認められる。
(3)不開示部分④~不開示部分⑥について
ア不開示部分④~不開示部分⑥の各記載内容につき
(ア)不開示部分④~不開示部分⑥は,いずれも本件行政文書の「第2
部政府統一基準」中の「Ⅱカウンターインテリジェンスに関する情
報の収集・共有」に存し,「1カウンターインテリジェンスに関する
情報の定義」に続く,「2情報収集」の項目が不開示部分④,「3
情報分析」の項目が不開示部分⑤,「4情報共有」の項目が不開示部
分⑥である。これらの各不開示部分は,いずれも,各項目の表題を除く
本文全てが不開示とされている。
このうち,不開示部分④は,「2情報収集」の項目の本文部分で
あり,その体裁(別紙「行政文書」参照)に鑑みると,三つの項目から
構成されるものと推認され,それぞれ3行,3行及び5行の分量である
と認められる。
また,不開示部分⑤は,「3情報分析」の項目の本文部分であり,
その体裁に鑑みると,二つの項目から構成されるものと推認され,それ
ぞれ4行及び3行の分量であると認められる。
さらに,不開示部分⑥は,「4情報共有」の項目の本文部分であり,
その体裁に鑑みると,さらなる細項目はないものと推認され,3行の分
量であると認められる。
(イ)不開示部分④~不開示部分⑥の内容は,上記(ア)のとおりであるか
ら,これら各不開示部分には,カウンターインテリジェンスに関する情
報の収集,分析,共有の各点について,その手法等が記載されているも
のと推認される(この点について,Aも,不開示部分④~不開示部分⑥
は,我が国政府がカウンターインテリジェンスに関する情報をどのよう
な手法で収集,分析及び共有しているかが明らかとなる旨陳述している
[乙9])。
イ不開示部分④~不開示部分⑥の情報公開法5条3号が規定する不開示
情報該当性につき
我が国政府のカウンターインテリジェンス機能を強化するために,カ
ウンターインテリジェンス・センターにおいて,カウンターインテリジェ
ンスに関する情報を収集及び分析し,その成果物を各行政機関で共有する
ことが,カウンターインテリジェンス機能を十全ならしめる上で必要性の
高いものといえることは,上記(2)イで説示したとおりであるところ,こ
のようなカウンターインテリジェンスに関する情報の収集,分析,共有の
手法等を公にすることは,外国情報機関において,我が国政府がカウンタ
ーインテリジェンスに関する情報をどのような手法で収集し,収集した情
報をどのように分析し,その成果物をどのように共有するかといった事項
が明らかになり,このような情報の収集等の手法を踏まえた対処がされる
ことによって,我が国がカウンターインテリジェンスに関する情報を収集
等することが困難になると共に,我が国の情報保全体制全体の傾向や水準
等を具体的に推知させることとなり,外国情報機関による情報収集活動を
可能にし,あるいは容易にするものと認められる。
これらからすると,我が国がカウンターインテリジェンスに関する情報
を的確に収集し,これを分析してその成果物を各行政機関が共有すること
を確保するために,カウンターインテリジェンスに関する情報の収集,分
析及び共有の手法等が記載されている不開示部分④~不開示部分⑥を不
開示とする必要性があるものということができる。
この点について,1審原告は,不開示部分④及び不開示部分⑤について,
特に秘匿する必要があるようなノウハウが含まれる場合以外は不開示と
する必要がないが,本件行政文書の分量で秘匿性のあるノウハウが記載さ
れるのは不自然であり,本件行政文書は基本法的な一般規定を記載したも
のであるから,そこに具体的なノウハウが書かれていることについての合
理的な理由も主張立証されていない旨の主張をするが,不開示部分④及び
不開示部分⑤を不開示とする必要性があることは,上記で判示したとおり
であり,特別なノウハウが記載されている場合に限られることはないから,
1審原告の上記主張を採用することはできない。また,1審原告は,不開
示部分⑥について,3行しかなく,しかも,本件行政文書第2部Ⅱの前文
において,「その成果物を各行政機関で共有するものとする」としている
のであるから,この3行の中に,外国情報機関等のターゲットになる情報
が記載されていることはありえないと主張するが,不開示部分⑥を不開示
とする必要性があることは,上記で判示したとおりであり,不開示部分⑥
が3行であり,本件行政文書第2部Ⅱの前文において,「その成果物を各
行政機関で共有するものとする」とされているからといって,この判断が
左右されることはない。
以上によると,不開示部分④~不開示部分⑥について,これらを公に
することにより,国の安全が害されるおそれがあると行政機関の長が認め
ることにつき相当の理由があるということができるから,情報公開法5条
3号の不開示情報に該当すると認められる。
(4)不開示部分⑦について
ア不開示部分⑦の記載内容につき
(ア)不開示部分⑦は,本件行政文書の「第2部政府統一基準」中の
「Ⅱカウンターインテリジェンスに関する情報の収集・共有」に存し,
「2情報収集」,「3情報分析」,「4情報共有」の各項目に続
く,「5調査等」に存する。この「5調査等」の項目は,(1)と(2)
の二つからなっており,不開示部分⑦は,このうち,(1)の文章中,「カ
ウンターインテリジェンス・センターは,諸外国におけるカウンターイ
ンテリジェンスに関する事例及び方策に関する情報を一般刊行物等に
より調査し,」に続く,約1行半の部分である。なお,同項目の(2)に
は,カウンターインテリジェンス・センターから各行政機関へのカウン
ターインテリジェンスに関する情報の提供の方針が記載されている。
(イ)不開示部分⑦の内容は,上記(ア)のとおりであり,カウンターイン
テリジェンスに関する情報の調査等について,諸外国におけるカウンタ
ーインテリジェンスに関する事例及び方策に関する情報を一般刊行物
等により調査した後にカウンターインテリジェンス・センターが行うべ
き内容が記載されているものと推認される。そして,この点について,
1審被告は,不開示部分⑦には,上記調査の上で作成される文書の具体
的な名称等が記載されている旨主張するところ,上記のような不開示部
分⑦が存する項目や,同部分に先立つ文章の内容に照らすと,1審被告
主張のように,同部分には,上記のとおりの調査に基づいて作成される
文書の具体的な名称等が記載されているものと認めるのが相当である。
イ不開示部分⑦の情報公開法5条3号が規定する不開示情報該当性につ

カウンターインテリジェンスに関する情報の調査に基づいて作成され
る文書の内容が明らかになると,カウンターインテリジェンスに関する情
報の収集,分析及び共有について,上記(3)イで説示したのと同様に,外
国情報機関において,我が国政府がカウンターインテリジェンスに関する
情報をどのような手法で収集し,収集した情報をどのように分析し,その
成果物をどのように共有するかといった事項が明らかになり,このような
情報の収集等の手法を踏まえた対処がされることによって,我が国がカウ
ンターインテリジェンスに関する情報を収集等することが困難になると
ともに,我が国の情報保全体制全体の傾向や水準等を具体的に推知させる
こととなり,外国情報機関による情報収集活動を可能にし,又は容易にす
るものと認められる。
そして,上記調査に基づいて作成される文書の具体的な名称等を含む調
査した後にカウンターインテリジェンス・センターが行うべき内容が公に
されることにより,それを端緒とした探索が可能となり,外国情報機関等
が協力者を通じて重要文書の持出しを企図した場合には,端的にその文書
名を告げることで窃取行為を容易にするなど,調査に基づいて作成される
文書の内容が漏えいするおそれを高めることとなる。「行政文書の管理に
関するガイドライン」(平成23年4月1日内閣総理大臣決定)では,「秘
文書極秘文書に次ぐ程度の秘密であって,関係者以外には知らせてはな
らない情報を含む極秘文書以外の行政文書」,「秘文書については,イン
ターネットからの侵入に対する多重防御による情報セキュリティ対策が
施された電子計算機でも保存することができる。」とされているところ,
国の行政機関等がサイバー攻撃にさらされた場合,文書名が判明していれ
ば,その文書の窃取が容易になるものと認められる(乙13,14)。こ
れらのことからすると,不開示部分⑦を不開示とする必要性があるものと
いうことができる。
この点について,1審原告は,本件行政文書は,カウンターインテリ
ジェンス・センター設置の組織規範(根拠規定)でもあるところ,不開示
部分⑦は,カウンターインテリジェンス・センターの業務内容について記
載されており,組織規範(根拠規定)に記載されるレベルでの当該機関の
業務の記載について,不開示事由に該当する記載を採用するはずがなく,
また,本件行政文書では,「カウンターインテリジェンスに関する情報」
の概念は,カウンターインテリジェンス・センターという国の機関の組織
規範(根拠規定)に組み込まれるべき内容であることを前提として定義さ
れており,このような内容を有する「カウンターインテリジェンスに関す
る情報」は不開示事由に当たらないと主張するが,本件行政文書は,カウ
ンターインテリジェンス・センター設置の組織規範(根拠規定)としての
性格も有していること,不開示部分⑦は,カウンターインテリジェンス・
センターの業務内容について記載されていること,本件行政文書では,「カ
ウンターインテリジェンスに関する情報」の概念は,カウンターインテリ
ジェンス・センターという国の機関の組織規範(根拠規定)に組み込まれ
るべき内容であるとして定義されていることの各事実から,不開示部分⑦
を不開示とする必要性があるとの上記判断が左右されることはない。
そうすると,不開示部分⑦について,これを開示することによって,国
の安全が害されるおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の
理由があるということができるから,情報公開法5条3号の不開示情報に
該当すると認められる。
(5)不開示部分⑧~不開示部分⑪について
ア不開示部分⑧~不開示部分⑪の各記載内容につき
(ア)不開示部分⑧~不開示部分⑪は,いずれも本件行政文書の「第2
部政府統一基準」中の「Ⅳ事案対処」に存する。
本件行政文書の上記「Ⅳ事案対処」の項目は,冒頭に,「各行政
機関は,当該行政機関の職員(以下「所属職員」という。)が外国情報
機関の不審動向の対象となった場合又はそのおそれがある場合には,必
ず組織として対処するものとする。」と記載されており,不開示部分⑧
は,同記載部分に続く部分である。そして,不開示部分⑧を含む本件行
政文書の体裁(別紙「行政文書」参照)に鑑みると,同不開示部分は,
三つの項目からなっており,「1」として表題1行と本文2行からなる
項目,「2」として表題1行と本文4行からなる項目,「3」として表
題1行があり,その後,「(1)」として5行の文章が,「(2)」として3
行の文章が記載されている項目からなるものと推認される。不開示部分
⑨は,同様に,「4」として表題1行があり,その後,「(1)」として
7行の文章が,「(2)」として2行の文章が記載されている項目からな
るものと推認される。不開示部分⑩は,同様に,「5」として表題1行
があり,その後,「(1)」として4行の文章が,「(2)」として3行の文
章が記載されている項目からなるものと推認される。不開示部分⑪は,
同様に「6」として表題1行と本文2行からなる項目からなるものと推
認される。
(イ)不開示部分⑧~不開示部分⑪の内容は,上記(ア)のとおりであり,
「Ⅳ事案対処」の項目に存するものであり,これら各不開示部分に先
立つ部分に,「各行政機関は,各行政機関の職員(所属職員)が外国情
報機関の不審動向の対象となった場合又はそのおそれがある場合には,
必ず組織として対処するものとする。」と記載されていること,同項目
中,開示されている部分の記載内容も,カウンターインテリジェンス・
センターは,各行政機関の職員からのカウンターインテリジェンスに関
する不安・心配の相談等に対応することや,各行政機関のカウンターイ
ンテリジェンス・センターに対する支援の要請,各行政機関の職員から
相談があった場合のカウンターインテリジェンス・センターから当該行
政機関に対する情報提供等が記載されていることからすると,「Ⅳ事
案対処」の項目には,各行政機関の職員が外国情報機関の不審動向の対
象となった場合又はそのおそれがある場合に,各行政機関が組織として
いかに対処すべきかについての対処要領等が記載されているものと推
認される。
イ不開示部分⑧~不開示部分⑪の情報公開法5条3号が規定する不開示
情報該当性につき
外国情報機関による不審動向に対する対処要領等の内容が公にされる
と,外国情報機関において,このような対処要領等を踏まえた上で我が国
(各行政機関)が保有する特別管理秘密等の秘密情報を不正に入手しよう
とすることを可能又は容易にし,その漏えいの絶無を期すべき特別管理秘
密等を漏えいの危機にさらすものということができ,我が国の安全を守る
点から,このような対処要領等が記載された不開示部分⑧~不開示部分⑪
を不開示とする必要性があるものということができる。
この点について,1審原告は,不開示部分⑧~不開示部分⑪に記載さ
れているのは,事案対処要領としてのマニュアル的なものにすぎない上に,
いずれも5行程度の記載であって,これを公にした場合に支障が生ずるほ
どの具体性を有するものではない旨,並びに,本件行政文書に記載された
基本方針は,それを実施する段階では各行政機関によってばらばらな内容
として具体化されてしまうほどの抽象度の高い記載であり,「事案対処」
の項目でも,一部開示された部分は,要点が記載されているものの,それ
だけでは外国情報機関において秘密情報を不正入手することを可能又は
容易にするような内容が記載されているものではないから,不開示部分⑧
~不開示部分⑪についても,一部開示部分と説明レベル及び分量的に同等
であり,一部開示部分と同程度の抽象性しかない旨主張し,上記のような
支障が生ずることを争う。しかし,上記アのような不開示部分⑧~不開示
部分⑪の記載内容に照らすと,これら不開示部分に記載された外国情報機
関による不審動向に対する対処要領等の内容は,各行政機関の職員(所属
職員)が外国情報機関による不審動向の対象となった場合又はそのおそれ
がある場合に,各行政機関が組織としていかに対処すべきかについて,詳
細な記載ではないとしても,その要点が記載されているものと推認される
ところであり,これを公にした場合には上記のような支障が生じるおそれ
が存するものということができるから,マニュアル的で抽象度の高い記載
であることを理由として上記のような支障が生じることを否定する1審
原告の主張を採用することはできない。
以上によると,不開示部分⑧~不開示部分⑪について,これらを公に
することにより,国の安全が害されるおそれがあると行政機関の長が認め
ることにつき相当の理由があるということができるから,情報公開法5条
3号の不開示情報に該当すると認められる。
(6)不開示部分⑫について
ア不開示部分⑫の記載内容につき
(ア)不開示部分⑫は,本件行政文書の「第3部カウンターインテリ
ジェンス・センター」中の「2業務」に存する。カウンターインテリ
ジェンス・センターは,政府のカウンターインテリジェンス機能を強化
するため,各行政機関と連携して,行政機関の枠組みを超えたカウンタ
ーインテリジェンスの業務を推進することとされており,その業務の内
容は,以下の10項目の業務((1)から(10)まで)であり,不開示部分
⑫は,そのうちの一つ((5)の部分)であって,1行の文章である(別
紙「行政文書」参照)。
「(1)基本方針の施行に関する連絡調整
(2)基本方針の改定案の策定
(3)カウンターインテリジェンスに関する情報の収集及び分析
(4)我が国及び諸外国におけるカウンターインテリジェンスに
関する事例及び方策についての一般刊行物等による調査
(5)不開示部分⑫
(6)行政機関の求めに応じたカウンターインテリジェンス・セン
ターの保有する情報の提供
(7)行政機関職員からのカウンターインテリジェンスに関する
不安・心配の相談への対応
(8)行政機関の求めに応じたクリアランス手続に関する支援
(9)行政機関に対する秘密保全研修及び啓発に関する支援
(10)行政機関の求めに応じた事案対処に関する支援」
(イ)上記のとおり,不開示部分⑫は,業務の(4)「我が国及び諸外国に
おけるカウンターインテリジェンスに関する事例及び方策についての
一般刊行物等による調査」に続く業務内容であることからすると,不開
示部分⑦と同様に,上記業務(4)の調査に基づく文書の作成が記載され
ているものと推認されるところであり,1審被告も,不開示部分⑫には,
カウンターインテリジェンス・センターにおいて作成する文書の具体的
な名称等が記載されていると主張しているところ,上記のような不開示
部分⑫が存する項目や,同部分に先立つ文章の内容に照らすと,この主
張を認めることができる。
イ不開示部分⑫の情報公開法5条3号が規定する不開示情報該当性につ

上記アのような不開示部分⑫の内容に照らすと,同不開示部分の不開
示情報該当性については,不開示部分⑦の不開示情報該当性(上記(4)参
照)と同様に解するのが相当であり,不開示部分⑦と同様に,これを開示
することによって,国の安全が害されるおそれがあると行政機関の長が認
めることにつき相当の理由があるということができるから,情報公開法5
条3号の不開示情報に該当すると認められる。
4以上によると,本件不開示部分は,いずれも情報公開法5条3号に該当す
ると認められるから,内閣情報官がした本件一部不開示決定のうち,これら
の部分を不開示とした部分は適法であると認められる。
5本件訴えのうち本件不開示部分の開示決定の義務付けの請求に係る部分は,
行政事件訴訟法3条6項2号に基づく義務付けの訴えとして提起されたもの
と解されるところ,上記説示のとおり,本件一部不開示決定のうち本件不開
示部分の取消しを求める1審原告の請求は理由がないから,本件訴えのうち
これらの各部分の開示決定の義務付けの請求に係る部分は,いずれも同法3
7条の3第1項2号所定の訴訟要件を満たさない不適法なものとして,却下
を免れない。
6以上の次第で,本件一部不開示決定のうち本件不開示部分の取消しを求め
る1審原告の請求は理由がないから棄却し,本件不開示部分の開示決定の義
務付けに係る訴えは不適法であるから却下することが相当である。
よって,1審被告の控訴に基づき,原判決のうち1審被告敗訴部分を取り
消し,本件訴えのうち,不開示部分②,不開示部分⑦及び不開示部分⑫の各
部分の開示決定の義務付け請求に係る訴えを却下し,本件一部不開示決定の
うち,不開示部分②,不開示部分⑦及び不開示部分⑫をいずれも不開示とし
た部分の取消請求を棄却するとともに,1審原告の控訴を棄却することとし
て,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第14民事部
裁判長裁判官森義之
裁判官井上一成
裁判官住山真一郎
(別紙)
行政文書目録
カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針(平成19年8月9
日カウンターインテリジェンス推進会議決定)(ただし,平成23年12月6日付
け改定後のもの。)
なお,同行政文書の内容は,その不開示部分を含め,別紙「行政文書」のとお
りである(ただし,別紙「行政文書」中のマスキング部分は,別紙「不開示部分
一覧表」記載のとおり,不開示とされた部分であり,また,別紙「行政文書」に
記載された下線及び「不開示部分①」ないし「不開示部分⑫」の各記載は,本判
決における便宜のために付したものである。)。
(別紙)
不開示部分一覧表
1別紙「行政文書」の4頁17行目から5頁2行目までの部分
(第2部Ⅰ3(1)のイ「クリアランス手続の構成」の部分)
(以下「不開示部分①」という。)
2別紙「行政文書」の5頁10行目から12行目までの部分
(第2部Ⅰ3(1)のウ「クリアランス手続を行う際の配意事項」の(イ)の部分)
(以下「不開示部分②」という。)
3別紙「行政文書」の7頁2行目20文字目から4行目36文字目までの部分
(第2部Ⅱの1「カウンターインテリジェンスに関する情報の定義」の部分)
(以下「不開示部分③」という。)
4別紙「行政文書」の7頁7行目から17行目までの部分
(第2部Ⅱの2「情報収集」の部分)
(以下「不開示部分④」という。)
5別紙「行政文書」の7頁19行目から25行目までの部分
(第2部Ⅱの3「情報分析」の部分)
(以下「不開示部分⑤」という。)
6別紙「行政文書」の7頁27行目から29行目までの部分
(第2部Ⅱの4「情報共有」の部分)
(以下「不開示部分⑥」という。)
7別紙「行政文書」の8頁3行目35文字目から5行目までの部分
(第2部Ⅱの5「調査等」の(1)の部分)
(以下「不開示部分⑦」という。)
8別紙「行政文書」の9頁3行目から19行目までの部分
(第2部のⅣ「事案対処」の部分)
(以下「不開示部分⑧」という。)
9別紙「行政文書」の9頁28行目から10頁8行目までの部分
(第2部のⅣ「事案対処」の部分)
(以下「不開示部分⑨」という。)
10別紙「行政文書」の10頁11行目から18行目までの部分
(第2部のⅣ「事案対処」の部分)
(以下「不開示部分⑩」という。)
11別紙「行政文書」の10頁22行目から24行目までの部分
(第2部のⅣ「事案対処」の部分)
(以下「不開示部分⑪」という。)
12別紙「行政文書」の11頁32行目の部分
(第3部の2「業務」の部分)
(以下「不開示部分⑫」という。)

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