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平成18年ワ第370号損害賠償請求事件
()
主文
1被告は、原告に対し、22万円及びこれに対する平成17年12月14日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用はこれを10分し、その1を被告の、その余を原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は、原告に対し、220万円及び及びこれに対する平成17年12月14日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
広島弁護士会所属の弁護士である原告が、平成17年12月2日(以下、平成
17年については年の記載を省略することがある)付けで殺人・死体遺棄被疑
事件(以下「本件被疑事件」という)の被疑者であるA(以下「本件被疑者」
という)から弁護人に選任されたところ、同月13日広島地方検察庁(以下
「広島地検」という)所属の検察事務官B(以下「B事務官」という)から、
翌14日同庁所属の検察官検事C(以下「C検事」という)からいずれも本件
被疑者との接見を違法に妨害されたと主張して、国賠法1条1項に基づく損害
賠償及びこれに対する違法行為日ないしその翌日である平成17年12月14日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事
案である。
1前提事実(証拠により認定した事実はその証拠を該当箇所に掲記する)
本件被疑者
(1)
本件被疑者は、11月30日、海田警察署(以下「海田署」という)に殺人
罪及び死体遺棄罪の被疑事実で逮捕され、12月1日、身柄を広島地検に送
致され、翌2日勾留決定(勾留場所は海田署、同月9日勾留延長決定がさ

れ、同月21日、殺人・死体遺棄・強制わいせつ致死の公訴事実で起訴され
た者である。ペルー国籍であり、スペイン語の通訳を必要とした。
本件被疑者の留置場出入状況は、別紙1「Aの出入状況」に記載のとおり
である(甲2。

弁護人の選任
(2)
広島弁護士会所属の弁護士である原告は、弁護士E(以下「E弁護士」と
いう)とともに、11月30日、12月1日の両日とも本件被疑者と接見し、翌
2日付けで弁護人に選任された。原告が主任弁護人であり、上記2名の弁護
人以外に事実上これを補助するために4名の弁護士が活動することになった
(以下、以上の6名を「弁護団」という(弁論の全趣旨。
))
弁護団の接見状況は別紙2「Aの接見状況」に記載のとおりである(甲
2。

12月13日の経過
(3)
ア12月13日午前10時から11時頃まで、広島簡易裁判所において本件被
疑者の勾留理由開示のための公判が行われた。同被疑者は、同期日におい
て「被害者を殺すつもりも傷つけるつもりも全くありませんでした」と

いう意味の陳述(以下「本件陳述」という)をした。
イE弁護士が同日午後0時30分頃事件の主任検察官であるC検事に架電
したところ、その立会事務官であるB事務官が電話に出た。同検事の所在
を尋ねたところ、同事務官から不在であることを告げられるなどして、電
話を切った(通話内容は当事者間に争いがある。B事務官は、E弁護士

から電話があったことをC検事に伝えなかった。また、その後同日中に弁
護団が広島地検に電話その他の連絡をすることはなかった。
ウ原告その他の弁護団の弁護士は、同日、前記公判後は本件被疑者に接見
することができなかった。
12月14日の経過(時刻につき甲5の②)
(4)
原告は、翌14日午後2時過ぎにC検事に架電して本件被疑者と同日中に
接見させるよう申し出たところ、本日は午後9時ないし10時頃まで取調べ
の予定であり海田署留置場に戻して接見させることはできないと言われたの
で、さらに同日中に検察庁内で接見させるよう申し出た。C検事は、取調室
が空いているかどうかを確認すると告げていったん電話を切った。
C検事は、午後2時15分頃原告に架電して「検察庁内での接見をするた
めには緊急性が必要ですが、緊急性はありますか」と尋ねたところ、原告か
ら本件陳述の真意を確認する必要がある旨の説明を受けた。そこで、さらに、
原告に対して、本件被疑者から既に本件陳述同様の供述を聞いているのでは
ないか、真意は既に確認できているのではないかなどと質問したところ、
「接見内容を答える必要はない」と回答を拒否され、再び検討のため電話を
切った。
C検事は、午後2時18分頃再度原告に架電して、現在本件被疑者を取調
べ中であること、緊急性はないことを理由に接見を拒否したところ、原告か
ら「接見指定ということですか」と問われ「接見指定ではありません」な

どと返答し、原告から「接見指定もなく、とにかく接見を拒否するというこ
とですか」などと念を押されたのに対して「そうです」と答えたところ、原
告は「分かりました」と言って電話を切った。
同検事はその後も原告に対する接見指定をしなかった。
2主要な争点及び当事者の主張
違法な接見妨害行為の有無
(1)
(原告の主張)
弁護人が被疑者と即時に秘密接見交通をする権利(刑事訴訟法〔以下「刑
訴法」という〕39条1項)は憲法34条前段に由来し国際人権法の要請する
極めて重要な権利であるにもかかわらず、以下のとおりB事務官及びC検事
は弁護人である原告の本件被疑者に対する接見を違法に妨害した。
アB事務官による接見妨害行為
原告の指示を受けたE弁護士が12月13日午後0時30分頃の電話でB
事務官に対して「弁護人としては本日午後7時にならないと接見できない
ので、7時からの接見を希望したい」と申し出たところ「C検事は不在

です。午後4時から取調べ予定なので、それまでには戻ると思いますが、
どこにいるかは不明です。被疑者の接見については、今日は勾留理由開示
公判があったので、検事調べを午後4時から午後9時か10時までする予
定です。ですから、本日の弁護人接見はご遠慮いただき、明日接見して下
さい」という返答があり、電話を切った。同事務官はE弁護士から電話の
あったことをC検事に報告せず放置した。
すなわち、同事務官はE弁護士から原告による接見の申し出を受けた以
上そのことを接見指定の権限を持つ主任検察官(C検事)に伝達する義務
があったのにこれを怠った。この不作為は故意又は過失による違法行為に
当たる。
イC検事による接見妨害行為
即時に接見させなかったこと又は接見指定しなかったことの違法性
(ア)
a捜査機関の接見指定を認める刑訴法39条3項は憲法34条前段に反
し無効であるから、C検事による接見拒否行為は違法である。
b捜査機関は弁護人から被疑者との接見の申し出があったときは原則
としていつでも刑訴法39条1項の接見(以下「秘密接見」ともい
う)の機会を与えなければならない。捜査の中断による支障が顕著で
ある場合は接見指定が可能であるとしても、捜査機関は被疑者の取調
べ状況のみから形式的に接見指定の要件を即断してはならず、取調べ
の重要性や取調べ開始時刻を遅らせることによる捜査への影響等を具
体的に検討して弁護人の接見希望時間との調整を図った上でなお弁護
人の接見を認めることにより捜査の中断による支障が顕著であるか否
かを慎重に検討すべき義務がある。
本件においては次のとおりである。
①前記のとおり広島地検庁舎内における秘密接見は可能であった。
②12月14日の電話の時点で本件被疑者は昼食休憩中であり、取調
べ中ではなかった。
③C検事は同日夜遅くまでの取調べを予定していた。
④被疑者に対しては勾留中の20日間連日8∼12時間程度の取調べ
が行われており、なおかつ12月13日、14日以外は毎日1∼2時
間程度の弁護人による秘密接見が確保されていた(甲2。

⑤12月20日、海田署において午後6時過ぎから秘密接見が行われ、
その後8時過ぎから検察官の取調べが行われた。そのことからすれ
ば12月14日も同様の取扱いが可能であったはずである。
⑥12月13日の勾留理由開示における本件陳述の真意を確認する緊


急の必要があり(逮捕直後の初回接見と同程度の緊急性があった
C検事もそのことを認識していた。
以上のとおり、12月14日の原告とC検事の電話の時点では、C検
事による被疑者取調べの開始時刻を遅らせることによって即時の接見
を認めたとしても捜査の中断による支障が顕著であるとはいえないの
であり、同検事は原告に対して即時の接見を認めるべき義務を有して
いたところ、同検事は原告に対して即時の接見を拒否する際に被疑者
を取調べ中であるという虚偽の説明を行うにとどまり捜査の支障が顕
著であるか否かを具体的に検討しなかったのであるから、同検事の前
記拒否行為は違法である。
c捜査機関が接見指定をすることなく即時の接見も拒否することは違
法である。C検事は接見指定もそのための協議もしなかった。
なお、原告がC検事に対して面会接見の申し出をしたという被告の
主張は否認する。原告は一貫して秘密接見を申し出ていたのであって、
12月14日の会話では原告もC検事も「面会接見」の語を用いたこと
はない。本件では判例(最高裁判所第三小法廷平成17年4月19日判
決・民集59巻3号563頁)の定める面会接見の要件も満たしていな
い。広島地検の庁舎内における秘密接見は過去にも多数行われたこと
があるから、同庁舎内での接見を原告が申し入れたことが直ちに面会
接見の申し出を意味するはずもない。さらに、原告が立会人ありの面
会である面会接見で目的を達することができないことは明らかであっ
た。
あらかじめ接見日時の協議をしなかったことの違法性
(イ)
本件においては、弁護団とC検事の指示を受けた捜査機関との間には、
毎日午後6時ないし7時からの接見を認める合意があった。
仮にそうでなくとも、11月30日から12月13日、14日まで毎日上記
時間帯に接見しており、特に本件ではスペイン語の通訳を必要とするた
め毎日決まった時間帯に接見することが重要であった。
したがって、捜査機関において上記合意ないし運用を一方的に破棄す
るすることは許されないにもかかわらず、C検事はあらかじめ接見日時
についての調整をすることなく一方的に接見を拒否したのであり、これ
は故意又は重過失による違法行為である。
(被告の主張)
アB事務官による接見妨害行為について
B事務官がE弁護士からの電話において接見の申し出を受けたことは
(ア)
否認する。E弁護士からはC検事の所在を尋ねられたに過ぎない。した
がって、原告の主張は前提を欠き失当である。
仮に原告が主張し証人Eが証言するような事実があったとしても、B
(イ)
事務官は午後7時からの接見を求めるE弁護士に対して同日午後4時か
ら被疑者取調べ予定であること(捜査のため必要があるとき」に当た

ること)を伝えるとともに接見を翌日にしてくれるよう電話で求め、同
弁護士は検討すると言って電話を切ったというのであるから、これによ
って接見日時の協議が開始されたのであって、同事務官の対応は違法で
はない。
イC検事による接見妨害行為について
即時に接見させなかったこと又は接見指定しなかったことの違法性に
(ア)
ついて
a刑訴法39条3項は憲法34条前段に反するものでない(最高裁判所
大法廷平成11年3月24日判決・民集53巻3号514頁、同裁判所第
三小法廷平成16年9月7日判決・判例時報1878号88頁など。

b原告がC検事に電話してきた12月14日午後2時過ぎの時点で、C
検事はまさに本件被疑者を取り調べようとしていた。そして、それま
でには被疑者から犯罪事実についてほとんど聴取できていなかったこ
と、被疑者の供述態度や要通訳事件であることから取調べには特に時
間を要したこと、海田署での接見を認めれば2時間以上も取調べが中
断することなどからして、接見を認めた場合の捜査の中断による支障
が顕著であり、刑訴法39条3項本文の「捜査のため必要があると
き」の要件を満たしていた。
そして、C検事は、12月14日の原告との電話において、現に被疑
者を取調べ中であり同日午後9∼10時まで取り調べる予定であるこ
とを理由に当日の立会人のない接見はできないことを説明したうえで、
翌日午前8時30分から午前9時30分までに接見をしてはどうかと提
案し協議を行おうとした。
以上によれば、同検事が即時の接見を拒否したことに違法性はない。
なお、本件で初回接見と同程度の接見の必要性があったことは争う。
c前記提案に対して原告から「検察庁での接見をお願いしたい」とい
う申し出があった。
C検事は、広島地検においては従前から庁舎内での秘密接見を認め
ておらずそのことは原告も知悉しているはずであったことなどから、
前記申し出の意図は前記最高裁平成17年判決の中で判示された面会
接見の申し出であると理解した。
そこで、原告に対して面会接見の要件である緊急性の有無につき意
見を聴取するなどした結果、緊急性は認められないと判断されたので、
「現在、取調べ中であるうえ、本件では面会接見を認める緊急性はな
いと思われますので、接見はできません」と説明して面会接見を拒否
した。
したがって、面会接見を拒否したことにつき違法性はない。
また、仮にC検事においてこれが秘密接見の申し出であると解すべ
きであったとしても、上記最高裁判決にいう要件を充たすような設備
はなかったから、そのことを理由として秘密接見の申し出を拒否した
ことに違法性はない。
あらかじめ接見日時の協議をしなかったことの違法性について
(イ)
原告の主張するような合意の存在は否認し、その余は争う。
損害額
(2)
(原告の主張)
被疑者に対する厳しい取調べが連日されていた中で前記各違法行為により
弁護人は2日間にわたって被疑者との接見ができない事態となったのであり、
その被害は甚大であった。これを考慮すれば、慰藉料は合計200万円、弁護
士費用は合計20万円が相当である。
第3争点に対する判断
1争点(違法な接見妨害行為の有無)について
(1)
B事務官による接見妨害行為について
(1)
ア原告本人によれば、原告がE弁護士に依頼したのは当日午後7時に海田
署において原告が本件被疑者と接見したい旨をC検事に伝えて配慮を請う
趣旨であったというのであって、海田署において接見するのであれば同署
担当官に接見の申し出をすれば足りるし、原告の主張するE弁護士とB事
務官の通話内容にも照らして、E弁護士は接見の予定を具体化するために
C検事から当日の取調べ予定を確認しようとしたに過ぎないと解すべきで
ある。そうすると、原告の主張はE弁護士が原告による接見の申し出をし
たことという前提を欠く。
イまた、原告がE弁護士がB事務官との電話において接見を申し出たとす
る内容は第2・2(1)(原告の主張)ア第1段落(4頁)のとおりであり、
この点につき証人Eは「明日接見して下さい」と言われたのに対して「検
討します」と言って電話を切りC検事への伝言は頼まなかったと供述する。
仮に前記主張・供述に係る事実が存在したとしても、E弁護士が「検討
します」と言って電話を切ったのは、当初の予定である同日午後7時から
の接見をするか否かを弁護団内部で再検討したうえで改めて態度を明らか
にする趣旨に出たものとみるのが自然かつ合理的である。
証拠(甲1、証人E)によれば、E弁護士がB事務官との通話終了直後
である同日午後0時44分に弁護団宛の電子メールを発信して午後4時以
前に海田署において接見可能な者が存在するかどうかを問い合わせた事実
が認められる。すなわち、E弁護士は上記通話によって同日の取調べ予定
を知り、弁護団のメンバーの予定によっては改めてその前に接見すること
を海田署に申し入れる方向で検討したというのである。
そうすると、原告の主張と証人Eの供述を前提としても、E弁護士によ
る接見申し出はこれがなされたとしても電話が終了する前に撤回されたも
のとみるべきであるから、原告の主張するような義務がB事務官に生じた
ということはできない。
ウ他にB事務官による違法行為の存在を認定するに足りる証拠はない。
エ以上によれば、その余の点を検討するまでもなく、この点に関する原告
の主張は理由がない。
C検事による接見妨害行為について
(2)
ア即時に接見させなかったことの違法性について
憲法違反を前提とする主張について
(ア)
刑訴法39条3項が憲法34条前段に違反すると解する根拠はない(被
告指摘の各判例を参照。原告のこの点に関する主張は前提を欠き失当

である。
接見指定をしないまま即時の接見を拒否したことの違法性について
(イ)
a当裁判所の判断
検察官は、弁護人から接見の申し出を受けた場合において、捜査の
中断による支障が顕著であることを理由として即時の接見を拒否する

ときは、必ず刑訴法39条3項本文の接見指定をしなければならない
他方、接見指定をしない場合は即時の接見を認める義務がある。これ
らの義務を怠ったときは国家賠償法上も違法となるものと解される。
前記前提事実によれば、C検事は12月14日の原告との電話におい
て接見の申し出を受けたにもかかわらず接見指定をしないまま即時の
接見を拒否したのであるから、上記行為は国家賠償法上も違法である。
そして、その違法性は明らかであるから、C検事には少なくとも過失
があるというべきである。
b被告の主張に対する補足説明
a接見指定に向けての協議をしたという主張について
()
原告とC検事との間で接見指定に関する協議が調ったことはない
こと及び同検事が接見指定をしなかったことは当事者間に争いがな
い。したがって、仮に被告の主張するような事実があったとしても、
そのことは同検事の行為の違法性を左右しない。この点に関する被
告の主張はそれ自体失当である。
b面会接見に関する主張について
()
①面会接見に関する判例
前記最高裁平成17年判決は「検察官が〔弁護人等と被疑者と
の立会人なしの接見を認めても、被疑者の逃亡や罪証の隠滅を防
止することができ、戒護上の支障が生じないような〕設備のある
部屋等が存在しないことを理由として接見の申出を拒否したにも
かかわらず、弁護人等がなお検察庁の庁舎内における即時の接見
を求め、即時に接見をする必要性が認められる場合には、検察官
は、例えば立会人の居る部屋での短時間の『接見』などのように、
いわゆる秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の
『接見(以下、便宜『面会接見』という)であってもよいか
』。
どうかという点につき、弁護人等の意向を確かめ、弁護人等がそ
のような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したとき
は、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある」と
判示して、面会接見の意義・要件等について判示した(亀甲括弧
内は当裁判所による補充部分。

②被告の主張自体の当否
仮に原告による面会接見の申し出の事実が存在したとしても、
C検事は面会接見の申し出を拒否する際に併せて当初の秘密接見
の申し出に対する接見指定をするか、そうでなければ即時の接見
を認める義務があったのであって、同検事がこれに違反したこと
に変わりはない。この点に関する被告の主張する事実は違法行為
の成否を左右するものではなく、主張自体失当である。
ⅰすなわち、a(10頁)で判示したとおり、検察官は、弁護人
の接見申し出に対して即時の接見を拒否するときは必ず接見指
定をしなければならず、接見指定をしないのであれば即時の接
見を許さなければならない。
また、①で掲記した最高裁判決からすれば、面会接見は秘密
接見が拒否された場合の補充的な手段に過ぎないことが明らか
である。
そうすると、捜査機関としては、弁護人からの面会接見の申
し出を拒否するときは、弁護人が「面会接見が拒否される場合
は接見指定も求めない」という意見を表明するなど特段の事情
がない限り、併せて当初の秘密接見の申し出に対する接見指定
をする義務を免れないものというべきである。この解釈は弁護
人の通常の意思にも適うものと解される。無論、捜査機関は接
見指定をしない場合は即時の接見を認めなければならない。
ⅱこれを本件についてみるに、前記前提事実のとおり、C検
事は同日中に海田署で秘密接見をしたいという原告の申し出を
捜査の支障を理由に拒否し、次いで広島地検庁舎内で即時に接
見したいという申し出も認めなかったにもかかわらず、接見指
定をしなかった。
そして、ⅰの特段の事情に該当するような事実の主張は何ら
なされていない(なお、原告がC検事に対し3回目の電話で
「接見指定もなく、とにかく接見を拒否するということです
か」などと念押しした事実は当事者間に争いがない。これは、
検察官は即時の接見を拒否するのであれば接見指定をすべきで
あり接見指定をしないのであれば即時の接見を許すべきである
旨の注意喚起にほかならない。したがって、本件において前記
特段の事情が存在するといえないことが明らかである。

③被告の主張する事実(面会接見の申し出)の有無
ⅰ本件においては、C検事が面会接見であってもよいかどうか
という点につき原告の意向を確かめ弁護人等がそのような面会
接見であっても差し支えないとする意向を示したという事実は
全くないから、当時広島地検が同庁舎内における秘密接見を認
めない運用をしていたか否か、そのことを原告が知っていたか
否かなどの事情のいかんにかかわらず、原告が面会接見を申し
出たものと解する余地はない。
ⅱ特に、本件においては、原告は、勾留理由開示公判における
被疑者の「殺すつもりも、傷つけるつもりも全くありませんで
した」という陳述の真意を確認する必要があることを理由とし
て接見の申し出をしている(当事者間に争いがない。そうす

ると、立会人がいる面会接見で原告の意図するところを達成す
ることができないことは明らかであるから、原告の「それでは
検察庁での接見をお願いしたい」という要求が面会接見の申し
出であると解することはできないし、C検事が面会接見の申し
出であると誤解したとしてもその誤解に合理的な理由があると
はいいがたい。
ⅲまた、原告との電話においてC検事が回答したところは「接


見指定ですか」というのに対して「接見指定ではありません
「接見指定もなく、とにかく接見を拒否するということです
か」というのに対して「そうです」というにとどまり、C検事
が面会接見を念頭においていたのが真実であれば、面会接見に
ついて話していることを原告に対して確認するのが当然である
のに、全くそのような形跡がない。そもそも面会接見の性質上、
改めてその日時、場所及び時間を指定するということは通常想
定できないのである。
ⅳ他に原告の検察庁内における接見の申し出が面会接見の申し
出であると解すべき事実を認めるに足りる証拠はない。
④以上によれば、いずれにせよ被告の主張は採用しがたい。
接見指定の要件を欠くという原告の主張について
(ウ)
前記のとおりC検事は接見指定をしないまま即時接見を拒否したので
あるから、接見指定の要件の有無は同検事の行為の適法性を基礎付ける
ものではない(但し、接見指定の要件の有無は争点〔損害額〕を決め
(2)
るための重要な考慮要素ではあると解されるから、同争点に対する判断
である後記2において必要な限度で検討する。

イあらかじめ接見日時の協議をしなかったことの違法性について
原告のいう合意の存在を認めるに足りる証拠はない。
(ア)
で判示したとおり、原告の主張するような取扱いをすることについ
(イ)(ア)
ての合意があるとはいえないのであって、原告の主張するような取扱い
がなされていたとしてもそれは事実上のものにとどまる。捜査官がこれ
と異なる取扱いをしたとしても、それは当・不当の問題を生ずるに過ぎ
ない。
したがって、この点に関する原告の主張はいずれも理由がない。
(ウ)
2争点(損害額)について
(2)
接見指定の要件の有無について
(1)
前記のとおりC検事が接見指定をしないまま即時の接見を拒否した行為は
違法であるので、以下では損害額について検討する。
ア損害額(慰藉料額)を判断するに当たっては12月14日の電話の当時接
見指定の要件が存在したか否かが重要な考慮要素となるものと解されると
ころ、以下のとおりその要件が存在したものと解される。
捜査機関は弁護人等から被疑者との接見等の申出があったときは原則
(ア)
としていつでも接見等の機会を与えなければならないのであり、刑訴法
39条3項本文にいう「捜査のため必要があるとき」とは接見等を認め
ると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られる。
そして、弁護人等から接見等の申出を受けた時に捜査機関が現に被疑
者を取調べ中である場合や実況見分・検証等に立ち会わせている場合、
また間近い時に取調べ等をする確実な予定があって弁護人等の申し出に
沿った接見等を認めたのでは取調べ等が予定どおり開始できなくなるお
それがある場合などは、原則として取調べの中断等により捜査に顕著な
支障が生ずる場合に当たると解すべきである(最高裁判所大法廷平成

11年3月24日判決・民集53巻3号514頁)
証拠(乙2、4、証人C)によれば、①原告がC検事に対して接見申
(イ)
し出をした12月14日午後2時過ぎの時点では本件被疑者を別室に待機
させており取調べを開始する直前であったこと、②同取調べは主任検察
官であるC検事による勾留延長後2回目の取調べであったこと、③その
時点では犯行動機・具体的な犯行状況等についての詳細な供述が得られ
ていないことからこれを聴取する必要があったところ、被疑者の取調べ
に通訳を要することや被疑者の供述態度などからみて、取調べには今後
も相当の時間を要すると判断されたこと、④12月14日午前中の取調べ
では身上関係について聴取できたにとどまり犯罪事実についてはほとん
ど聴いていなかったこと、⑤同日の取調べは午後10時前までかかった
こと、以上の各事実が認められる。
また、⑥原告らが本件被疑者の逮捕当日から12月12日まで毎日被疑
者と接見していたことは前記前提事実のとおりである。
以上の各事実によれば次のようにいうことができる。
(ウ)
a本件においては、C検事において間近い時に上記取調べ等をする確
実な予定があって弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは取調
べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合に該当するから、
原則として取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当
たる。
b⑥をふまえれば12月14日の接見が初回接見と同視しうるものと
(イ)
はいえないし、同②∼⑤の点や本件被疑事件が重大な刑事事件である
ことなどにも照らせば本件において12月14日の取調べが予定どおり
に行えないとしても捜査に顕著な支障が生じないというべき例外的な
事情があると認めることはできない。
原告が第2・2(原告の主張)イb(4頁以下)で指摘する点
(1)(ア)
も前記判断を左右するようなものではなく、他に本件において捜査に
顕著な支障が生じない場合に該当することを認めるに足りる証拠はな
い。
損害額
(2)
以上を前提に判断すると、
①接見交通権は被疑者・弁護人に認められた防御権行使のための重要な権
利であり、特に本件においては本件陳述の真意を確認する必要があるとし
て緊急に接見を申し出たものであって、早期の接見の必要性を否定するこ
とはできないこと、
②接見指定をすることなく即時の接見を拒否したことの違法性は明らかで
あり、C検事はそのことを原告から指摘されたにもかかわらずなお接見指
定も即時接見の許可もしなかったこと、
③他方、のとおり本件においては接見指定の要件自体は存在したものと
(1)
いうべきところ、原告は電話の翌日である12月15日午前8時45分から
午前9時36分までの間に本件被疑者と接見しているのであり、仮にC検
事が接見指定をしたとしてもこれより早い日時に接見ができたものと認め
るに足りる証拠はないから、事後的にみれば接見指定をしなかったことが
原告の弁護活動に対して与えた実質的な悪影響はさほど大きなものではな
かったといえること(但し、前記違法行為により接見可能な日時場所の不
確実な状態に原告が置かれたことは軽視すべきでない)
など本件に現れた一切の事情を考慮すれば、C検事の前記違法行為による慰
藉料は20万円、弁護士費用2万円をもってそれぞれ相当とする。
第4結論
よって、原告の請求は主文の限度で理由があるからこれを認容し、その余の
請求は理由がないからこれを棄却し、仮執行宣言は必要があるとは認められな
いからこれを付さないこととして、主文のとおり判決をする。
広島地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官橋本良成
裁判官佐々木亘
裁判官相澤聡
(別紙1,2は省略)

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