弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 申立代理人弁護士大原健司の抗告趣意は、別紙のとおりである。
 職権により調査すると、原決定が認定した事実および本件記録によれば、本件準
抗告申立の対象である所論司法警察員のした被害者還付処分により株式会社Aに還
付された本件押収物(原決定別紙目録記載の物)は、その後、他に売却、搬出され、
原決定前すでに同会社に存在しなかつたことが認められる。そうすると、右還付処
分を取り消しても実益がないから(刑訴法四二一条但書参照)、右還付処分の取消
を求める本件準抗告の申立は、もともと不適法であり、従つて、原裁判所がこの申
立について判断を加え、申立を理由がないとして棄却したのは誤りであつて、この
申立を不適法として棄却すべきであつたといわなければならない。
 そして、本件抗告趣意は、本件準抗告の申立が適法であることを前提とするもの
であるところ、その前提を欠くことになるので、抗告趣意に対して判断するまでも
なく、抗告を棄却すべきである(なお、申立人が民事訴訟の手続に従つて被還付者
株式会社Aに対し本件押収物に関する権利を主張し得ることは、刑訴法二二二条一
項、一二四条二項の明定するところである。)。
 よつて刑訴法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文の
とおり決定する。
  昭和四四年八月二七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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