弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人田中染吉の上告理由第一点の(一)および第四点について。
 所論は、いずれも、原判決主文第二項とこれに関する原判決の判断について、理
由そごおよび民訴法一八六条違背をいうが、本件上告は、上告人A合資会社が被上
告人に対して申し立てたものであるところ、原判決主文第二項は本件上告人に対す
る請求とは別個の原審相控訴人D、同Eに対する請求に関するものであるから、所
論は、本件上告審の審判の範囲に属しない事項について原判決の違法をいうにすぎ
ず、上告理由として採用の限りでない。
 同第一点の(二)および第三点の(三)について。
 原判決が第一審証人Fの証言および原審における相控訴人D本人尋問の結果は日
時の点で必ずしも正確とはいえないことを判示し、このことは人間の記憶の不確実
さからいえばむしろ当然であると説示していることは、所論のとおりであるが、原
判決が、所論証言および本人尋問結果の信用できない理由の一つに右の不正確性を
掲げたからといつて、理由そごの違法はない。所論は、原判決を正解しないことに
よるものであつて、採用できない。
 同第二点について。
 所論は、乙一五号証(銀行の支払証明書)その他上告人提出援用の諸証拠ならび
にこれによつて認定される間接事実を経験則に照らせば、本件催告期限たる昭和三
三年三月六日までに未払賃料支払のために金六四、八〇〇円が所論株式会社によつ
て代位弁済として現実に提供されたものと推認するのが合理的であるというが、原
判決は、所論乙一五号証によれば、上告人合資会社代表者Gの兄H名義の預金六五、
〇〇〇円が昭和三三年三月五日払い戻されている事実は認められるが、その余の上
告人の主張に副う証言、本人尋問の結果はいずれもたやすく信用できず、右乙一五
号証も右証言および尋問結果の真実性を裏付けるに足りないとしているのであつて、
原判示を記録に当つて検討しても、その点に経験則違反、理由そごの違法は見当ら
ない。
 所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定について
異見を述べるにすぎず、採用できない。
 同第三点の(一)について。
 所論供託書(甲四号証)に提供の日時の記載もなく、同記載内容が上告人援用の
証言および尋問結果に現われた事実と異なることをもつて、原判決が右上告人援用
の諸証拠を信用できないと判断した点に、経験則違背、採証法則違背はない。
 また、第一審および原審における証人Iの「右供託書(甲四号証)は同証人が司
法書士に依頼して作成せしめたものであるが、催告書が地主の代理人中村弁護士か
ら出されているので、司法書士が適当に記載したものである」旨の供述を措信でき
ないことの理由として、原判決は、右I証人の証言中、同人が右弁済提供の日時を
記憶し、また、かかる記憶が残るほど催告期限内の提供に関心を有していたとの証
言部分をとらえて、同人がかかる記憶、関心を有していたのであれば、司法書士に
その点を強調し、これと同一の事実を供託書に記載せしめたはずであると説示して
いる点にも、経験則違背または採証法則違背はない。
 所論は、右Iが右のように仮りに弁済提供の日時を記憶し、かかる記憶が残る程
度に催告期限内の提供に関心を有していたとしても、同人は法律専門職にある者で
なく法律知識のとぼしい普通の人間であるから、供託すること自体の関心に追われ、
とらわれて供託原因の記載内容まで配慮を及ぼしえないのが通常であり、まして法
律専門職の司法書士に対し供託原因の記載内容まで指示して記載せしめるというこ
とは通常期待できないと主張して、原審が法律専門職にある人間にしか期待しえな
い程度の高度の期待を右Iに期待できることを前提とした点に経験則違背があると
主張するが、右に関する原審の認定判断に経験則違背のないことは、前の論旨で述
べたとおりであり、所論は、ひつきよう、原審の認定に副わない事実に基づき独自
の所見によつて原審の専権事項たる証拠の取捨判断について異見を述べるにすぎな
いから、採用できない。
 その余の所論も、原審の右経験則違背を前提にするか、原審の専権事項を云々す
るにすぎないものであつて、採用の限りでない。
 同第三点の(二)について。
 原判決が上告人援用の証言および本人尋問結果の信用性を疑う理由とした所論挙
示の判断は首肯でき、この点に裁判所の専断、経験則違背、採証法則違背は見られ
ない。
 所論株式会社の代位弁済が長年の慣行として行なわれて来たもので、本件の所論
代位弁済は極めて自然に行なわれようとしたものであるとの主張は、原審認定外の
事情をいうものであつて、採用できない。また、所論は、右の事情は乙三号証(J
株式会社の地代通帳)によつて明白であるにもかかわらず、原審が同号証によつて
これを認定しなかつたことの違法をいうが、乙三号証は、その成立が争われている
ところ、その真正な成立を認めるべき証拠があるとはされていないのであるから、
原判決がこれを証拠に供しなかつた点に採証法則違背はない。
 なお、所論は、Gから金六五、〇〇〇円を借り受けるにつき、同人が借受人名義
を営業を休止している上告会社とすることに反対し、上告会社に貸し付けるのを嫌
がり、現に営業活動を行なつている所論株式会社名義にすることを強く要請したこ
とから、上告会社においてGの意向を無視できず、上告会社からの弁済として提供
しえなかつた事情を主張するが、この事実関係も原審の認定しないところである。
 従つて、右二つの所論事情を掲げて、原判決が上告人援用の証言および本人尋問
結果の信用性に疑いをもつたことを非難する所論は、採用できない。
 同第三点の(四)について。
 原判決が、所論株式会社の帳簿が本件証拠として提出されていないことをもつて、
上告人援用の証言および本人尋問結果の信用性を疑う理由の一つとしている点に、
経験則違背も採証法則違背もない。原審の右証拠判断は理想的な株式会社形態を前
提とする限り妥当するけれども本件の所論株式会社のような小額資本で名称のみの
株式会社には妥当しない判断であるとの所論は、独自の所見に基づき、原審の専権
事項について異見を述べるにすぎず、採用できない。よつて、民訴法四〇一条、九
五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六

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