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平成30年2月22日判決言渡し
平成29年(行コ)第194号所得税更正処分取消等・裁決取消請求控
訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成28年(行ウ)第129号(甲事件),同第1
68号(乙事件))
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2泉佐野税務署長が,控訴人に対し,平成27年7月7日付けでした
平成24年分所得税の更正処分のうち,納付すべき税額109万58
00円を超える部分及び重加算税賦課決定処分を取り消す。
3国税不服審判所長が,大裁(所)平27第〇号事件について平成2
7年12月11日付けでした裁決を取り消す。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,控訴人が平成24年分の所得税に係る更正処分(以下「本
件更正処分」という。)及び重加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課
決定処分」といい,本件更正処分と合わせて「本件更正処分等」という。)
を受けたため,本件更正処分等につき審査請求(大裁(所)平27第〇
号事件)をしたところ,同審査請求は法定の不服申立期間後にされた不
適法なものであるとしてこれを却下する旨の裁決(以下「本件裁決」と
いう。)を受けたことから,被控訴人に対し,本件更正処分のうち申告
額を超える部分及び本件賦課決定処分の各取消しを求める(甲事件,以
下「本件処分取消訴訟」という。)とともに,本件裁決の取消しを求め
る(乙事件,以下「本件裁決取消訴訟」という。)事案である。
原審は,前記審査請求は,法定の不服申立期間後にされた不適法な
ものであると判断し,甲事件に係る訴えは不適法であるとしてこれを
却下し,乙事件に係る控訴人の請求は理由がないとしてこれを棄却し
たため,これを不服とする控訴人が控訴した。
2関連法令の定め
関連法令の定めは,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概
要」の2(原判決2頁23行目~4頁3行目)に記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
3前提事実
前提事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨
により容易に認められる事実)は,原判決の「事実及び理由」の「第2
事案の概要」の3(原判決4頁6行目~7頁14行目)に記載のとお
りであるから,これを引用する。ただし,原判決7頁13行目から14
行目にかけての「顕著な事実」を「記録上明らかな事実」に改める。
4争点及びこれに関する当事者の主張
争点及びこれに関する当事者の主張は,後記5のとおり,当審にお
ける控訴人の補充主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の
「第2事案の概要」の4及び5(原判決7頁15行目~15頁8行目)
に記載のとおりであるから,これを引用する。
5当審における控訴人の補充主張
(1)Aは,平成27年7月7日に控訴人方マンションに臨場した際に,
同所近くのα駐車場(現在の名称はβ駐車場。以下「本件駐車場」と
いう。)に官用車を駐車したと証言したところ,控訴人が,駐車場運
営会社に,同日の本件駐車場の利用(入出庫)状況を確認して,次の
とおりの回答を得た。
データNo.入庫時刻出庫時刻
19:5111:03
210:3611:11
311:2711:34
410:4011:49
511:4011:59
611:3912:26
711:4619:11
811:1121:23
911:4921:55
このうち,Aの証言によれば,Aの使用した官用車の駐車に係る
記録に該当し得るのはデータNo.3(以下「本件データ」という。)
であるが,Aが控訴人方マンションに臨場したのは平成27年7月
7日午前11時28分であり,入庫記録からすれば僅か1分しか経
過していないところ,本件駐車場と控訴人方マンションの実際の距
離は約150mであると考えられ,当日は小雨が降り,Bが傘を持っ
ていなかったため,Aが持っていた折りたたみ傘にAとBが入って
歩いて行ったというのであるから,僅か1分で控訴人方マンション
に到着できたはずがない。
以上によれば,Aが使用した官用車が本件駐車場に駐車された事
実はないことになり,本件通知書が差置送達されたという平成27
年7月7日午前11時30分には,Aは,控訴人方居宅マンションを
訪れていないことになって,Bによって本件通知書が差置送達され
た事実はないことになる。
(2)被控訴人は,前記入庫時刻及び出庫時刻が正確ではない可能性が
あることを主張するが,本件駐車場はコインパーキングであり,料金
の発生につながるタイマーの時刻は正確であるはずで,誤差はまず
生じないはずである。また,被控訴人の主張によっても誤差が生じる
可能性があるにすぎない。
被控訴人は,前記入庫時刻は発券時刻であると主張するが,そうで
あれば,平成27年7月7日午前11時27分に発券された場合,被
控訴人の再現によれば,駐車から駐車場を出るまでに1分23秒を
要するというのであるから,同日午前11時28分にはいまだ駐車
場にいたはずで,控訴人方マンションに到着していたことはあり得
ず,本件データは,Aらの官用車に係るデータではない。
被控訴人は,駐車から差置送達に至る過程を再現したと主張するが,
条件が同じであるとはいえず,正確ではない。
(3)控訴人は,平成27年8月11日に受領した督促状又は同年9月
16日に保有個人情報の開示請求に基づいて受領した決議書の写し
により,初めて本件通知書の存在を知ったのであるから,これらの日
の翌日を不服申立(審査請求)期間の起算日とすべきであって,本件
審査請求は不服申立期間内にされた適法なものである。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,本件審査請求は,法定の不服申立期間後にされた不適
法なものであって,甲事件に係る訴えは不適法であり,乙事件に係る
控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,後記2のとお
り,当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほかは,
原判決の「事実及び理由」の「第3当裁判所の判断」の1ないし3
(15頁10行目~21頁13行目)記載のとおりであるから,これ
を引用する。
2当審における控訴人の補充主張に対する判断
(1)控訴人は,駐車場運営会社に照会した結果によれば,平成27年
7月7日午前11時30分に本件通知書が差置送達された事実はな
いと主張する。
しかし,被控訴人が差置送達の際の行程(官用車を本件駐車場へ駐
車し,2人で1本の傘を差して控訴人方マンションへ移動し,当該マ
ンションのエントランスにて不在確認(インターホンを4回鳴らす
まね)を行った上で,本件通知書を本件郵便受けに投かん(するまね
を)して,本件駐車場に戻り,出庫するまで)を再現したところ(以
下,この結果を「本件再現結果」という。),本件駐車場への入場時
の駐車券発券時刻から本件駐車場からの出場時の駐車券挿入時刻ま
でに要した時間は1回目が6分26秒,2回目が4分57秒であっ
たこと(乙8)が認められる。これによれば,本件データは,本件送
達記録書の記載内容及びAの証言に合致するものであり,同日のA
らによる本件駐車場利用に係るデータである可能性が高いものと認
められる。
(2)これに対し,控訴人は,本件データの入庫時刻は11時27分,
本件送達記録書の控訴人方マンションへの臨場時刻は午前11時2
8分であり,僅か1分程度でB及びAが控訴人方マンションに臨場
したことはあり得ないと主張(補充主張(1))する。
確かに,本件再現結果によれば,本件駐車場において発券ボタンを
押し,官用車を駐車し,2人で1本の傘を差して控訴人方マンショに
行き,エントランスに到着するまでの時間は1回目に3分1秒,2回
目に2分15秒であった(乙8)。しかし,被控訴人の駐車場運営会
社への照会の結果によれば,控訴人の照会に対する回答の入庫時刻
及び出庫時刻は,発券機及び精算機に内蔵されたタイマーによる駐
車券の発券時刻及び精算時刻を示しているところ,本件駐車場の発
券機と精算機のタイマーは,正確な時刻から1,2分程ずれているこ
ともあること,実際に,前記再現の日の入庫時刻表示には正確な時刻
から15秒以上30秒未満の遅延があったことが認められる(乙7,
8)。さらに,本件送達記録書の控訴人方マンションへの臨場時間の
記録がどのような時計によってされたかは明らかではない。発券機
のタイマー及び臨場時間を記録した時計の双方に誤差があり得るこ
とを考えれば,本件駐車場の発券機のタイマーの時刻において平成
27年7月7日午前11時27分頃に駐車券が発券され,A又はB
の時計において同日午前11時28分頃に控訴人方マンションにA
らが臨場したことがあり得ないとはいえない。
前記のとおり,本件送達記録書及びAの証言並びに本件データ及び
本件再現結果を総合して考慮すれば,本件データは差置送達の際の
Aらの行程に合致するものと認められ,本件データの入庫時刻と本
件送達記録書の控訴人方マンションへの臨場時間の差が1分となっ
ていることは,前記認定を覆すには足りない。
(3)控訴人は,発券機及び精算機のタイマーの時刻が正確ではないこ
とは,その可能性があるにすぎないこと,被控訴人による再現は正確
ではないことを主張する。しかし,発券機の時刻が正確であることを
前提とする控訴人の主張に理由がないことは前記のとおりである。
また,乙第8号証によれば,行程の再現は2回行われており,その結
果も信用することができるものであって,本件駐車場と控訴人方マ
ンションとの距離,2回の所要時間,本件データ等を総合して検討す
れば,前記のとおり,本件データは差置送達の際のAらの行程に合致
するものと認められる。控訴人の主張(補充主張(2))には理由がな
い。
(4)以上によれば,前記1において原判決を引用して認定したとおり,
被控訴人は,控訴人に対し,平成27年7月7日に本件通知書を差置
送達した事実が認められる。有効な差置送達がなかったことを前提
とする控訴人の補充主張(3)も採用できない。
第4結論
以上によれば,平成27年9月25日にされた本件審査請求は,法
定の不服申立期間後にされた不適法なものであって,甲事件に係る訴
えは不適法であるから却下すべきであり,乙事件に係る控訴人の請求
は理由がないから棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であ
る。
よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のと
おり判決する。
大阪高等裁判所第13民事部
裁判長裁判官髙橋譲
裁判官山本善彦
裁判官真鍋麻子

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