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裁判例


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         主    文
     一 原判決中、主文第二項を除く部分を次のとおり変更する。
     被上告人は上告人に対し、金二三六万七〇三一円及び(1)内金一九六万
五二九二円に対する昭和五三年四月一日から完済まで年六分の割合による金員、(
2)内金四〇万一七三九円に対する昭和四九年六月一五日から昭和五〇年六月一四
日まで年七分三厘五毛、同月一五日から同年一一月三日まで年三分、同月四日から
昭和五一年九月一八日まで年二分五厘、同月一九日から完済まで年六分の各割合に
よる金員の支払をせよ。
     上告人のその余の金銭支払請求を棄却する。
     二 上告人のその余の上告を却下する。
     三 訴訟の総費用はこれを一〇分し、その一を被上告人の、その余を上
告人の各負担とする。
         理    由
 一 上告代理人中野哲の上告理由第一について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審
の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用するこ
とができない。
 二 同第二について
 次の点は、当裁判所に顕著なところである。
 大韓民国の民法のうち相続に関する部分については一九七七年(昭和五二年)一
二月三一日公布の改正法によつて法定相続分等の改正が行われ、右改正に係る規定
は一九七九年(昭和五四年)一月一日から施行されたが、右改正法の附則五項によ
り、改正法施行前に開始された相続については改正法施行後も旧法の規定を適用す
るものと定められている。そして、右旧法の規定によれば、(1)戸主相続において
は被相続人の直系卑属男子が第一順位の相続人であり、同順位の直系卑属が数人あ
るときは最近親の年長者を先順位とすること(九八四条、九八五条)、(2)財産相
続においては被相続人の直系卑属が第一順位の相続人であり、同順位の相続人が数
人あるときは最近親を先順位とし、同親等の相続人が数人あるときは共同相続人と
なること(一〇〇〇条)、(3)直系卑属が財産相続人となる場合には、被相続人の
妻はこれと同順位で共同相続人となること(一〇〇三条)、(4)財産相続における
法定相続分については、(イ)同順位の相続人が数人あるときは均分とするが、財
産相続人が同時に戸主相続をする場合にはその固有の相続分に五割を加算し、女子
の相続分は男子の相続分の二分の一とすること(一〇〇九条一項)、(ロ)同一家
籍内にない女子の相続分は男子の相続分の四分の一とすること(同条二項)、(ハ)
妻が直系卑属と共同相続人になる場合の妻の相続分は直系卑属男子の二分の一とす
ることが、それぞれ定められている。
 原審の確定したところによれば、上告人の父で、戸主であるDは右改正法施行前
の昭和四八年六月二三日に死亡し、その相続については法例二五条により大韓民国
法が適用されるべきところ、同人には妻、長男である上告人を含めて男の子三名、
他家の家籍にある女の子一名、同一家籍の女の子一名があるというのであるから、
右相続について適用される前掲の法改正前の各規定に照らせば、上告人はDの戸主
相続人を兼ねた財産相続人として二三分の六の法定相続分を有するものというべき
である。
 ところが、原判決は、前記改正後の法律によつて上告人の法定相続分を二九分の
六と認め、これを前提として本件預金払戻請求権のうち上告人に属すべき部分を算
定しているのであつて、右は大韓民国法の解釈適用を誤つたものというべく、この
違法が原判決中上告人の本訴預金払戻請求を棄却した部分に影響を及ぼすことは明
らかである。論旨は理由があり、原判決中右預金の払戻請求に関する部分は破棄を
免れない。
 そこで、原審の適法に確定した事実関係に基づき、正しい相続分に従つて上告人
に属すべき預金債権の額を計算する。
 上告人は、Dの死亡の結果、相続により、本件預金債権(預金(一)ないし(五))
の二三分の六並びに被上告人に対する元本額一二二九万七二四二円及び一七一六万
円の二口の債務の各二三分の六を承継したものであるところ、被上告人は、昭和五
三年九月八日の第一審口頭弁論期日において右二口の債権及び別に上告人に対して
有する元本額五〇〇万円の貸金債権を自働債権として上告人の有する本件預金債権
と対当額で相殺する旨の意思表示をしたが、右意思表示においては相殺に供される
自働債権と相殺の目的となる受働債権との個別的な指定がされておらず、また、相
手方たる上告人もそのような指定をしていない。このように自働債権又は受働債権
として数個の元本債権があり、相殺の意思表示をした者もその相手方も右数個の元
本債権につき相殺の順序の指定をしなかつた場合における元本債権相互間の相殺の
順序については、民法五一二条、四八九条の規定の趣旨に則り、元本債権が相殺に
供しうる状態となるにいたつた時期の順に従うべく、その時期を同じくする複数の
元本債権相互間及び元本債権と利息・費用債権との間で充当の問題を生じたときは
右四八九条、四九一条の規定を準用して充当を行うのが相当である。そこでこれに
よつて相殺及び相殺充当を行うのに、まず自働債権についてみると、被上告人の上
告人に対する債権は、(一)貸付元本三二〇万七九七六円(前記一二二九万七二四二
円の二三分の六)及びこれに対する弁済期の翌日たる昭和四八年四月一五日以降の
年六分の割合による遅延損害金の債権(以下「自働債権(一)」という。)、(二)貸
付元本四四七万六五二二円(前記一七一六万円の二三分の六)及びこれに対する昭
和五三年四月一日以降の年六分の割合による未払遅延損害金の債権(以下「自働債
権(二)」という。)、(三)貸付元本五〇〇万円及びこれに対する弁済期の翌日たる
昭和五一年五月六日以降の年六分の割合による遅延損害金の債権(以下「自働債権
(三)」という。)の三口であるところ(遅延損害金の割合はいずれも商事法定利率
による。なお、原判決は右(一)、(二)の遅延損害金の額を確定しえないことを理由
としてこれを相殺の自働債権とすることができない旨判示するが、少なくとも上記
の割合による遅延損害金の発生を否定すべき理由を見出しえない。)、昭和五三年
三月三一日まで遅延損害金が支払われた前記自働債権(二)は、相殺の順序に関して
は同日に相殺に供しうる状態となつたものとして扱うべきであるから、結局自働債
権(一)、同(三)、同(二)の順に相殺を行うべきことになる。次に受働債権について
みると、上告人の被上告人に対する債権は、(一)定期預金元本五二一万七三九一円
(預金(一)の元本二〇〇〇万円の二三分の六)及びこれに対する(イ)昭和四九年
五月四日から昭和五〇年五月三日(満期の前日)まで年七分三厘五毛、同月四日か
ら昭和五〇年六月一二日(上告人が払戻請求をした日)まで年三分の各割合による
利息、(ロ)同月一三日以降の年六分の割合による遅延損害金の債権(以下「受働
債権(一)」という。)、(二)定期預金元本六五二万一七三九円(預金(二)の元本二
五〇〇万円の二三分の六)及びこれに対する(イ)昭和四九年五月三一日から昭和
五〇年五月三〇日(満期の前日)まで年七分三厘五毛、同月三一日から同年一一月
三日まで年三分、同月四日から昭和五一年九月一八日(上告人が払戻請求をした日。
以下、(三)及び(四)の各預金について同じ。)まで年二分五厘の各割合による利息、
(ロ)同月一九日以降の年六分の割合による遅延損害金の債権(以下「受働債権(
二)」という。)、(三)定期預金元本一二万円(預金(三)の元本四六万円の二三分
の六)並びにこれに対する前記(二)におけると同一の各期間につき同一の各割合に
よる利息及び遅延損害金の債権(以下「受働債権(三)」という。)、(四)定期預金
元本四〇万一七三九円(預金(四)の元本一五四万円の二三分の六)及びこれに対す
る(イ)昭和四九年六月一五日から昭和五〇年六月一四日(満期の前日)まで年七
分三厘五毛、同月一五日から同年一一月三日まで年三分、同月四日から昭和五一年
九月一八日まで年二分五厘の各割合による利息、(ロ)同月一九日以降の年六分の
割合による遅延損害金の債権(以下「受働債権(四)」という。)、(五)通知預金元
本一三〇万四三四八円(預金(五)の元本五〇〇万円の二三分の六)及びこれに対す
る(イ)昭和四九年六月一五日から昭和五一年九月二〇日(上告人が解約通知をし
た日の二日後)まで年三分五厘の割合による利息、(ロ)同月二一日以降の年六分
の割合による遅延損害金の債権(以下「受働債権(五)」という。)の五口であると
ころ(いずれも利率は約定利率、遅延損害金の割合は商事法定利率による。)、相
殺の関係では、定期預金である受働債権(一)ないし(四)はいずれもその満期に、ま
た、通知預金である受働債権(五)は期限の定めのない債権として預入れの時に弁済
期にあるものというべきであるから、結局受働債権(五)、同(一)、同(二)及び(三)
(同一順位)、同(四)の順に相殺を行うべきことになる。
 まず、最初に相殺適状となるのは自働債権(一)と受働債権(五)であるから、両者
の間で相殺をすると、相殺適状を生じた昭和四九年六月一五日までに前者について
は二二万五一七四円の遅延損害金が生じているから、遅延損害金、元本の順に充当
される結果、自働債権(一)は元本二一二万八八〇二円か残存し、受働債権(五)は全
部消滅することになる。次に相殺適状となる右自働債権(一)の残存分と受働債権(
一)との間で相殺をすると、相殺適状を生じた昭和五〇年五月四日までに前者につ
いては一一万三〇三一円の遅延損害金が、後者については三八万三四七八円の利息
が生じているから、利息(遅延損害金)、元本の順に充当される結果、自働債権(
一)は全部消滅し、受働債権(一)は元本三三五万九〇三六円が残存することになる。
次に相殺適状となる自働債権(三)と右受働債権(一)の残存分との間で相殺を行うと、
相殺適状を生じた昭和五一年五月五日までに後者について利息、遅延損害金合計一
九万一六六〇円が生じているので、前同様の順序で充当される結果、自働債権(三)
は元本一四四万九三〇四円が残存し、受働債権(一)は全部消滅することになる。次
に相殺適状となる右自働債権(三)の残存分と受働債権(二)及び(三)との間で相殺を
すると(この場合受働債権(二)と(三)とは遅延損害金の率が同じであるから、民法
四八九条四号が準用されることとなる。)、相殺適状を生じた昭和五一年五月五日
までに後者について合計六五万七三四九円の利息が生じているので、前同様の順序
で充当される結果、自働債権(三)は全部消滅し、受働債権(二)及び(三)は元本合計
五八四万九七八四円が残存することになる。次に相殺適状となる自働債権(二)と右
受働債権(二)及び(三)の残存分とを相殺すると、前記のように相殺適状の成立時と
同視すべき昭和五三年三月三一日までに後者について合計五九万二〇三〇円の利息、
遅延損害金を生じているので、前同様の順序で充当される結果、自働債権(二)は全
部消滅し、受働債権(二)及び(三)は元本合計一九六万五二九二円(その内訳は、当
初の債権元本額によつて右合計額を按分した額、すなわち受働債権(二)が一九二万
九七八四円、同(三)が三万五五〇八円である。)が残存することになる。
 以上の結果、上告人の本訴預金払戻請求は、(1)受働債権(二)及び(三)の残額一
九六万五二九二円並びにこれに対する昭和五三年四月一日から完済まで年六分の割
合による遅延損害金、(2)受働債権(四)の元本四〇万一七三九円並びにこれに対す
る昭和四九年六月一五日から昭和五〇年六月一四日まで年七分三厘五毛、同月一五
日から同年一一月三日まで年三分、同月四日から昭和五一年九月一八日まで年二分
五厘の各割合による利息及び同月一九日から完済まで年六分の割合による遅延損害
金の支払を求める限度でこれを正当として認容し、その余を失当として棄却すべき
である。原判決中主文第二項を除く部分は、右と趣旨を異にするものであるから、
これを右のとおり変更することとする。
 三 本件上告中、上告人の中間確認の訴につき原判決の破棄を求める部分につい
ては、上告人は民訴法三九八条に違背し民訴規則五〇条所定の期間内に上告理由を
記載した書面を提出しないので、右上告は却下すべきである。
 四 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九
二条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    谷   口   正   孝
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亨
            裁判官    中   村   治   朗

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