弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
 原告らの請求をいずれも棄却する。
 訴訟費用は原告らの負担とする。
       事   実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告が平成9年3月19日付けで株式会社Mに対してなした別紙産業廃棄
物処理施設目録記載の施設に対する設置許可処分を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 本案前の答弁
ア 本件訴えを却下する。
イ 訴訟費用は原告らの負担とする。
(2) 本案に対する答弁
ア 原告らの請求をいずれも棄却する。
イ 訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1)ア 原告らはいずれも福島県内に居住する者であり,原告らの居住場所及び
耕作場所は,それぞれ別紙図面1(1)ないし(12)記載のとおりであり,別紙
産業廃棄物処理施設目録記載の産業廃棄物最終処分場(以下「本件処分場」とい
う。)の北側を通過する小川には,上流から順に井野目堰,中野堰,小川堰があ
る。
 原告A,同B,同C,同D,同E及び同Fは井野目堰を利用しており,原告B,
同C,同D及び同Gは小川堰を利用している。
(ア) 原告Aは,福島市a町b及び同市c地内に農地を所有し,桃や林檎を主に
栽培している。灌漑用水として小川の表流水を井野目堰から取水している。この農
業用水が汚染されると,高品質を保ってきた原告Aを含めた付近一帯の果樹農家
は,品質における信用が失墜してしまい,農業経営に重大な打撃を受ける。また,
小川の伏流水を井戸水として取水し,生活用水として使用しており,自らの生命や
健康が脅かされるおそれがある。
(イ) 原告Hは,井野目堰水利組合区域内に居住している。井戸を所有し井戸水
を飲料水及び生活用水として使用している。この井戸水が汚染されると生命や健康
を脅かされる。
(ウ) 原告Bは,福島市a町b字地内に農地を所有し,小川の表流水を小川堰か
ら取水して米や野菜や果樹を栽培している。また,井戸を所有し小川の伏流水であ
る井戸水を飲料水及び生活用水として使用している。これら農業用水及び井戸水が
汚染されると,農業経営に重大な打撃を受け,かつ生命や健康を脅かされる。
(エ) 原告Cは,福島市a町b地内に農地を所有し,米や野菜や果樹を栽培して
いる。灌漑用水として小川の表流水を井野目堰と小川堰から取水している。また井
戸を所有し,井戸水を飲料水及び生活用水として使用している。これら農業用水及
び井戸水が汚染されると農業経営に重大な打撃を受け,かつ生命や健康を脅かされ
る。
(オ) 原告Iは,井野堰水利組合区域内に居住している。井戸を所有し,小川の
伏流水である井戸水を飲料水及び生活用水として使用している。この井戸水が汚染
されると生命や健康を脅かされる。
(カ) 原告Jは,中野堰水利組合区域内に居住している。直接の水利用はない
が,居住地内の水や土壌環境が汚染されることによって居住環境を侵害される。
(キ) 原告Dは,福島市a地内に農地を所有し,米や野菜や果樹を栽培してい
る。灌漑用水として小川の表流水を井野目堰と小川堰から取水している。また,小
川の伏流水である井戸水を飲料水,生活用水として使用している。この農業用水及
び井戸水が汚染されると農業経営に重大な打撃を受け,かつ生命や健康を脅かされ
る。
(ク) 原告Gは,福島市d,同市c地内に農地を所有し,米や野菜や果樹を栽培
している。灌漑用水として小川の表流水を井野目堰と小川堰から取水している。こ
の農業用水が汚染されると,農業経営に重大な打撃を受ける。また,小川の伏流水
を井戸水から取水し,飲料水,生活用水として使用しており,これが汚染されると
生命や健康を脅かされる。
(ケ) 原告Eは,福島市a町b,同市c地内に農地を所有し,米や野菜や果樹を
栽培している。灌漑用水として井野目堰から取水している。この農業用水が汚染さ
れると農業経営に重大な打撃を受ける。また,小川の伏流水を水源とする簡易水道
(共同井戸)から水の供給を受け,飲料水,生活用水として使用しており,汚染さ
れると生命や健康を脅かされる。
(コ) 原告Fは,福島市a町b,同市e地内に農地を所有し,米や野菜や果樹を
栽培している。灌漑用水として井野目堰から取水している。この農業用水が汚染さ
れると農業経営に重大な打撃を受け,かつ生命や健康を脅かされる。
(サ) 原告Kは,井野目堰水利組合区域内に居住している。小川の伏流水である
井戸水を飲料水及び生活用水として使用している。この井戸水が汚染されると生命
や健康を脅かされる。
(シ) 原告Lは,小川堰水利組合区域内に居住している。小川の伏流水である井
戸水を飲料水及び生活用水として使用しているが,これが汚染されると生命や健康
を脅かされる。
イ 被告は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。
ただし,平成9年改正前のもの。以下同じ。)15条に基づき,福島県内に産業廃
棄物最終処理場(以下「産廃処理場」という。)を設置しようとする者に対し,そ
の設置許可権限を有する者である。
(2) 被告は,平成9年3月19日,株式会社M(以下「M社」という。)に対
し,廃棄物処理法15条1項に基づき,本件処分場の設置許可処分(以下「本件許
可処分」という。)をした。
(3) 本件処分場の概要は以下のとおりである。
 建設・運営主体  M社
 建設地      福島市飯坂町中野字赤落18番地外16筆 19万0799

 埋立面積     4万7500㎡
 埋立廃棄物容量  71万8670‰
 受入れ廃棄物   燃え殻(焼却灰),汚泥,廃プラスチック類,紙くず,木く
ず,繊維くず,ゴムくず,金属くず,ガラスくず及び陶磁器くず,鉱さい,建設廃
材,ばいじん(ダスト類),その他産業廃棄物を処分するために処理したもの
 処分場の方式   管理型,全面遮水シートの敷設
 本件処分場の位置と小川及び取水堰との位置関係
 別紙図面2及び3記載のとおり
(4) しかしながら,被告は,以下のとおり,廃棄物処理法,一般廃棄物の最終
処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令(総理府令・
厚生省令,以下「共同命令」という。),福島県産業廃棄物処理指導要綱(平成6
年改正前のもの。以下同じ。以下「指導要綱」という。)等に定められた手続を履
行せず,あるいは定められた要件を充足していないにもかかわらず,要件を充足し
ているとして本件許可処分をしており,本件許可処分は違法である。
ア 遮水シート工法の破綻
(ア) 廃棄物処理法15条1項は,「産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類処
理施設,産業廃棄物の最終処分場その他の産業廃棄物の処理施設で政令で定めるも
のをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は,厚生省令(現,環境省令,廃棄
物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「規則」という。)11条)で定め
るところにより,当該施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を
受けなければならない。」旨規定する。
 また,同条2項は,「都道府県知事は,前項の許可の申請に係る産業廃棄物処理
施設が次の各号に適合していると認めるときでなければ,同項の許可をしてはなら
ない。」として「一 厚生省令(産業廃棄物の最終処分場については,総理府令,
厚生省令(共同命令))で定める技術上の基準に適合していること。二 産業廃棄
物の最終処分場である場合にあっては,厚生省令(規則12条の3)で定めるとこ
ろにより,災害防止のための計画が定められているものであること。」と規定す
る。
 そして,共同命令2条1項4号で準用する1条1項5号は「埋立地からの浸出液
による公共の水域及び地下水の汚染を防止するための次に掲げる措置が講じられて
いること」として「イ 埋立地には,産業廃棄物の投入のための開口部及びロに規
定する集水設備(水面埋立処分を行う埋立地については,排水設備)の部分を除
き,産業廃棄物の保有水及び雨水等(以下「保有水等」という。)の埋立地からの
浸出を防止することができる遮水工を設けること。ただし,埋立地と公共の水域及
び地下水との間に充分な厚さの不透水性の地層その他本文に規定する遮水工と同等
以上の効力を有するものがある部分については,この限りでない。ロ 埋立地に
は,保有水等を有効に集めることができる堅固で耐久力を有する構造の管渠その他
の集水設備(水面埋立処分を行う埋立地については保有水等を有効に排出すること
ができる堅固で耐久力を有する構造の余水吐きその他の排水設備)を設けること。
ただし,雨水が入らないよう必要な措置が講じられる埋立地(水面埋立処分を行う
埋立地を除く。)については,この限りでない。ハ 集水設備により集められた保
有水等(水面埋立処分を行う埋立地については,排水設備により排出される保有水
等。以下同じ。)に係る放流水の水質を排水基準を定める総理府令(昭和46年総
理府令第35号)第1条に規定する排水基準(当該排水基準に係る同令別表第2の
備考2の規定は適用しないものとする。)に適合させることができる浸出液処理設
備を設けること。ただし,集水設備により集められた保有水等を貯留するための十
分な容量の耐水構造の貯留槽が設けられ,かつ,当該貯留槽に貯留された保有水等
が当該最終処分場以外の場所に設けられた本文に規定する浸出液処理設備と同等以
上の性能を有する水処理設備で処理される最終処分場にあっては,この限りでな
い。」と規定する。
(イ) これら規定をふまえて,本件処分場には,本件処分場全面に遮水シートが
施工され,その工法の概略は以下のとおりである。
 浸出水による公共水域や地下水の汚染並びに起因する周辺環境の悪影響を防止す
ることを目的として,遮水工を設ける。
 埋立地の遮水工で特に重要な底辺については,2.0㎜の遮水シート(材質は合
成ゴム系シートで熱融着接合タイプである。)とベントナイト混合土による20㎝
の遮水層を設ける。
 側面には,1.5㎜の遮水シートと10㎜以上の補強不織布防護層を設ける。
 底辺,側面とも500㎜の保護層を遮水シート上に敷設する。
 このようにして完全に地盤と遮断し,浸出水が地中に浸透しないようにする。
 地下水の汚染の有無を監視するため,地下水の流向に沿って埋立地の直下流に1
か所井戸を設置し,また埋立地全域の遮水工の下に地下集水管を設け,集水経路別
に水質を観測する。
 浸出水は,浸出水処理施設によって処理し,福島県の排水基準を下回っているこ
とを確認して河川へ放流する。
 遮水シートの上には廃棄物からの浸出水や雨水を集める集水管,遮水シートの下
には地下水を集める集水管がそれぞれ敷設されることになっている。そして遮水シ
ートの上に敷設された集水管で集められた汚水は適切に処理されることになってい
る。
(ウ) このような遮水シート工法の仕組みからすれば,遮水シートは管理型処分
場の生命線である。これがないと大量の汚水が周辺に止めどもなく拡散していき,
重大な結果をもたらす。
 しかし,予測を超える豪雨等があったときには処理施設の能力が追いつかず,汚
水が直接放流されてしまうおそれがある。
 また,巨大な処分場全体を遮水シートで覆うわけであるから,工事中の破損やゴ
ミ自体の重みで穴が開いたり,廃棄物の化学変化や堆積熱や日光等でシートが劣化
し,そこから有害物質を含んだ汚水が地下に浸透するおそれがある。遮水シート
は,廃棄物の重圧やトラックの走行,下地の岩盤との接触等の直接の破損原因のほ
かに,材質としての劣化原因があり,遮水シート自体の現実の条件下における耐久
性に関する確たるデータは何もなく,劣化が進行すれば直接の破損の危険も広が
る。
 さらに,保護土や保護マットの類もさして有用なものではない。保護土や保護マ
ットは数十mも堆積したゴミ圧のもとでは保護の役目を果たせない。
 遮水シートの接合部分は,遮水シート自体の欠陥とは別に,遮水シートとしての
重大な弱点である。長大な接合部分には必ず不完全な部分が発生する。例えば,東
京都多摩郡日の出町の谷戸沢処分場の場合,10m×20mの遮水シート(本件処
分場の場合,厚さ1.5㎜のものは10m×50m,厚さ2.0㎜のものは10m
×20m)の接合部分の長さは推定で33㎞にも達する。同処分場では,わずか4
枚張り合わせた「試験接着テスト」で2mもの部分が接着不良という結果が出た。
 このように,遮水シートは,浸出を防止することができる遮水工とはなっておら
ず,共同命令1条1項5号イの要件が充足されていない。全国的な事例を見ても,
遮水シートが破損して浸出水が地下水等の自然水に流入し,環境汚染をひきおこし
ている。実例としては,神奈川県平塚市の遠藤原処分場,東京都八王子市の戸吹処
分場,上記谷戸沢処分場,福島県田村郡小野町の一般廃棄物最終処分場等がある。
 東京都多摩郡日の出町の谷戸沢処分場については,遮水シートの破損及び汚水漏
れを示す地下水電気伝導度データの公開により,区域によっては埋立開始当初から
汚水漏れがあった疑いが強く,また一定期間経過後急激に数値が上昇しており,こ
の時期に何らかの大きな破損が生じたことが一見して明らかになっている。しか
も,施工1年後には既に破損しており,それらはいずれも大規模なものであった。
このことからすると,遮水シート工法は,せいぜい10年位しか本来の効用を発揮
しないことが実証されたことになり,少なくとも50年から100年は有効に機能
しなければならない遮水シートがこのような致命的欠陥を有することは,生活環境
上の保全という見地からして何とも頼りないものである。
 また,福島県田村郡小野町の一般廃棄物最終処分場においても,処分場の調整池
及び処分場周辺の対象沢源流河川,排水沢河川の底質は,処分場の稼働に由来する
極めて高濃度のダイオキシン類の汚染を受けており,遮水シートが破損しているお
それが極めて高い。
 このように遮水シート工法自体が既に破綻しており,処分場において自然の浄化
能力が回復するまで破損しないシートなど存在しない。したがって,遮水シート工
法による本件処分場の施工は,共同命令2条1項4号,1条1項5号イに違反し,
ひいては廃棄物処理法15条2項1号に違反する違法なものである。
イ 本件処分場設置に関する同意の不存在
(ア) 福島県は,指導要綱を制定し,平成2年4月1日から施行している。その
目的は,廃棄物処理法,施行令,規則,共同命令,施行細則に定めるもののほか,
産業廃棄物の適正な処理に関して必要な事項を定めることにより,生活環境の保全
及び公衆衛生の向上を図ることにある(指導要綱1条)。平成2年以降,同6年,
同10年,同11年にそれぞれ改正されているが,その目的は一貫して変わらな
い。この指導要綱は,条例となっておらず,法令ではない。しかし,福島県は,産
業廃棄物処理法の趣旨に従い,さらなる生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図る
ために,廃棄物処理法を補完するものとして,この指導要綱を制定したものであ
る。廃棄物処理法15条や共同命令の内容をさらに具体的に表現し,廃棄物処理法
15条や共同命令を実効あらしめるための目的で制定したものである。したがっ
て,指導要綱は,廃棄物処理法や共同命令と一体不可分のものと理解されるべきで
あり,被告を拘束するものであるから,被告が指導要綱に違反した措置や処分をす
れば違法といわざるを得ない。また,設置申請者も指導要綱に準拠して申請の準備
を進めた限りにおいて,指導要綱違反による不利益を甘受しなければならない。
(イ)a 平成6年10月1日施行前の指導要綱には規定されていないが,同日施
行以降の指導要綱12条2項には,産業廃棄物処理業者が保健所に対する事業計画
書を提出するに際しては「施設設置等予定地に隣接する土地の所有者,周辺住居
者,下流域の水利権利者等の同意書の写し」の添付を要する旨規定している。にも
かかわらず,同4年12月7日,M社が福島保健所に対し指導要綱12条1項に基
づき提出した事業計画書には,添付書類として添付することになっている下流域の
水利権利者である井野目堰,中野堰,小川堰の各水利組合の同意書は添付されてい
なかった。
b また,平成6年10月1日施行前の指導要綱には規定されていないが,同日施
行以降の指導要綱12条3項には,「事業計画書の提出を受けた保健所長は(中
略)当該事業計画に係る施設の設置等予定地の市町村の長に当該事業計画書を送付
し,当該事業計画と土地利用計画との整合性,周辺環境への影響の有無,地元住民
等との調整状況及び関係法令等との整合性について,当該市町村の意見を求めるも
のとする。」旨規定されている。
 福島保健所長は,二回にわたり,福島市長に対して同条項に基づき意見照会をし
たところ,福島市長は,これに対し,平成5年3月12日及び同7年8月4日に
「下流域の水利権者である3水利組合の同意を得ること,漁業権者であるR漁協の
同意を得ること,周辺住民の理解を得ること」を設置許可の条件とする旨回答をし
た。
 にもかかわらず,被告はこれを全く無視し,M社は何ら水利組合や地域住民との
調整も行わなかった。
 また,福島県は,①処分場からの排水は,小川の水で800倍に薄まるから,下
流の井野目堰,中野堰,小川堰の各水利組合の水利権利者には影響がないため,各
水利組合の同意は必要ない,②R漁協摺上支部の役員名で「県が認めれば協力す
る」旨の文書が提出されており,これを同意した文書とみなす,③周辺居住者の同
意は,影響のある750m範囲内には誰もいないから不要である,④地区代表者の
同意については,大滝部落の区長の同意がある,⑤平成8年3月12日の連絡協議
会で福島市長を含む関係機関で調整した結果であり,福島市の意見を無視したもの
ではないことを理由として,平成8年3月18日,事前協議は終了した旨M社に通
知した。
 しかしながら,①3水利組合の同意が必要であることは,福島県が平成6年9月
議会で答弁していたことである,②排水が800倍に薄まる根拠についての説明は
なされていない,③R漁協の組合長N県議会議員は,同意文書について「私は何も
知らなかった。」「漁業権は組合に付与されているのだから,支部が決められるも
のではない。」「支部の役員の話では同意をしたことはないと言っている。」等と
言明しており,その後改めて福島県からR漁協への意見照会に対し平成8年8月2
0日不同意の回答書を提出した,④周辺居住者の範囲につき,750m以内とする
説明には合理性がない,⑤大滝部落には誰も住んでいないが,同部落出身者で構成
される同部落保存会が反対の陳情をしている,⑥連絡協議会に出席した福島市の担
当者は,事前協議終了を了承した認識は全くなかったのであり,上記見解は正当な
ものではない。
c また,平成6年10月1日施行前の指導要綱には規定されていないが,同日施
行以降の指導要綱13条2項には,産業廃棄物処理業者が保健所に対する事前協議
書を提出するに際しては,処理場に隣接する土地の所有者,周辺居住者,搬入道路
周辺居住者,下流域の水利権利者・水路管理者,地区代表者等の同意書の写しの添
付を要する旨規定している。
 にもかかわらず,平成6年4月21日,M社は福島保健所に同意書の写しを添付
することなく指導要綱13条1項に基づく事前協議書の提出をし,被告は,これに
基づく本件許可処分をした。
(ウ) 以上によれば,平成6年10月1日施行前の指導要綱には規定されていな
いが,同日施行以降の指導要綱の規定に違反する手続によりなされた被告の本件許
可処分は違法である。
(5) よって,原告らは,被告が平成9年3月19日付けでM社に対してなした
別紙産業廃棄物処理施設目録記載の施設に対する設置許可処分の取消しを求める。
2 本案前の被告の主張
(1) 行政事件訴訟法9条は,行政処分の取消しの訴えは当該処分の取消しを求
めるにつき「法律上の利益を有する者」に限り提起することができると定めてい
る。そして,この場合,行政処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する
者」とは,当該処分の取消しにより回復すべき自己の法律上の利益を有する者,つ
まり当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必
然的に侵害されるおそれのある者をいうと解すべきである。
(2) 「法律上保護された利益」があるというためには,処分の根拠となった行
政法規が当該個人的利益の保護を目的としていることが必要,すなわち,行政法規
が専ら公共の利益の保護を目的としているときに公共の利益が保護される結果とし
て,特定の者の個人的利益が反射的に保護を受けることとなる場合は法律上保護さ
れた利益とはいえないと解すべきである。
 廃棄物処理法について検討するに,同法15条1項本文は,「産業廃棄物処理施
設(廃プラスチック類処理施設,産業廃棄物の最終処分場その他の産業廃棄物の処
理施設で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は,厚生省
令で定めるところにより,当該産業廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄す
る都道府県知事の許可を受けなければならない。」と定めており,この許可は,一
般的に禁止されているところの産業廃棄物処理施設の設置につき,一定の要件を具
備した申請者に対し,その禁止を解除し,その設置を適法に行う自由を回復せしめ
る効果を有するものである。したがって,許可を受けた者に対し特別の権利を付与
するものではない。
 他方,この許可は,許可を受けた者の産業廃棄物処理施設における廃棄物の処分
によって公害等の被害が出た場合に,当該処理施設の周辺住民に対し,被害を受忍
する義務を課するものではない。すなわち,産業廃棄物処理施設の設置者に対する
許可は,処理施設の周辺住民に対し何らの権利義務の変動ももたらさないものであ
る。
 また,廃棄物処理法は,廃棄物を適正に処理することにより公益であるところの
生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的としており,これにより国民
が受ける利益は,一般的,反射的利益であって,法の直接保護する利益ではない。
 産業廃棄物の処理施設設置の許可は,一定の要件を具備した申請者に対し,その
禁止を解除し,産業廃棄物処理施設の設置を適法に行う自由を回復せしめる法律上
の効果を有する処分であり,同法は一定の要件を15条2項で規定しているとこ
ろ,これらの要件は,産業廃棄物を適正に処理するためのものであって,周辺住民
の個人の権利を直接保護するものではない。
 以上によれば,本件許可処分にかかる本件処分場から直線距離にして約8.5㎞
以上離れた場所に居住する原告らにとって,田畑の利用水や井戸水の地下水が本件
処分場からの排水により汚染されることにより生活に重大な影響を受ける可能性は
ほとんどないから,原告らは,本件許可処分につき法律上保護された利益を有せ
ず,本件許可処分によって権利利益を必然的に侵害されるおそれのある者でもない
から,本件許可処分の取消しを求める「法律上の利益を有する者」とはいえない。
したがって,原告らは,行政事件訴訟法9条に規定する原告適格を有しない者であ
り,本件訴えは不適法として却下されるべきである。
3 本案前の被告の主張に対する原告らの反論
(1) 廃棄物処理法は,以下のとおり,単なる公益のみならず,廃棄物処理施設
の周辺住民の個人的な利益をも具体的に保護するものである。
ア 公害対策基本法が目的とする「国民の健康」及び「生活環境の保全」は,その
法益の重大性,貴重性から単なる公益のみならず,具体的な国民個々人の健康,財
産といった個人的利益をも保護していると解すべきところ,廃棄物処理法は,公害
対策基本法の精神に則って,生活環境の保全も公衆衛生を保持するための手段であ
るとした旧清掃法を全面的に見直し,「廃棄物を適正に処理し及び生活,生活環境
を清潔にすることにより,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的」
として人の生活環境の保全をその目的に加えた。
 そうだとすると,公害対策基本法を承けて制定された廃棄物処理法における「生
活環境」も,公益のみならず,施設周辺住民の個人的利益すなわち生命,身体,財
産等を具体的に保護の目的としていると解すべきである。
 しかも,廃棄物処理法は,平成3年に改正され,産業廃棄物処理施設の設置につ
き,届出制から許可制へと変更され,許可にあたっては生活環境の保全上必要な条
件を付することができるとされ,施設の設置者は周辺地域の生活環境の保全及び増
進に配慮しなければならないこととなった。
 さらに,平成9年には廃棄物処理法は再び改正され,施設設置手続の改善が図ら
れ,周辺地域の生活環境への影響調査,関係住民や関係市町村長からの意見聴取,
専門的知識を有する者からの意見聴取等が行われることとなった。
 これら改正により,廃棄物処理法は,周辺住民の個人的利益を保護目的としてい
ることがより明確になった。
イ また,廃棄物処理法に定める産業廃棄物処理施設の設置基準からも,同法が廃
棄物処理施設の周辺住民の個人的な利益をも具体的に保護するものであることが窺
える。
 すなわち,廃棄物処理法15条2項を受けて共同命令や規則により定められた設
置許可基準は,周辺地域の環境の保全,周辺住民の生活環境の保全に配慮をしてい
る。具体的には,産業廃棄物が有する危険性に着目し,産業廃棄物の流出を防止す
るために地滑り防止工を設けることや健全な擁壁,えん堤を設けることと定めてい
る。また,産業廃棄物の保有水等が公共の水域や地下水を汚染しないように遮水工
を設けること,保有水等を排水基準以下に抑える処理設備等を設けることが定めら
れている。さらに地表水が埋立地に流入することを防止する施設も要求されてい
る。そして,災害防止のための計画も定めなければならないとされている。
 このような詳細な許可の基準を定めた趣旨は,産業廃棄物が有する危険性に着目
し,これによって被害を被る対象が人間の生命,身体等の重要な法益であることか
ら,これら法益を最大限に保護することにあることは言うまでもない。このような
法規制の姿勢,趣旨からすると,廃棄物処理法は,単に公益としての生活環境の保
全のみを目的とするものではなく,周辺住民の個人的利益をも保護していると解す
べきである。
 そして,周辺住民には,処分場周辺に居住する者だけでなく,排水される河川の
下流域に居住し,その河川水を飲用水,農家用水,生活用水として使用する者をも
含むと解すべきである。
ウ さらに,福島県では,廃棄物処理法の生活環境の保全に関する不備を補うた
め,平成2年に指導要綱を設けている。指導要綱は,廃棄物処理法の目的に則り,
それを福島県の実情に合わせて規制ないし指導を発展させたものであるが,指導と
はいうものの,行政実務の面では規制として機能しているのが実態である。
 この指導要綱は,産業廃棄物の適正な処理をするため,事業者及び処理業者を指
導し,監督するとともに,処理業者の団体の健全な育成及び指導に努めるとし(指
導要綱3条),福島県知事はこの指導要綱等に従い,生活環境上指導しなければな
らない事柄については指導をし,もし生活環境上許可することが妥当でない場合に
は,知事の裁量として不許可とすることもありうるのである。
 廃棄物処理法は,このような福島県の実情に合わせた指導要綱等の存在を認めて
いると解すべきであり,指導要綱は,廃棄物処理法が周辺住民の生命,身体,健
康,生活の保護を目的としていることを裏づけるものと考えるべきである。
(2) 以上によれば,廃棄物処理法は,単なる公益のみならず,廃棄物処理施設
の周辺住民の個人的な利益をも具体的に保護するものであり,原告らは,請求原因
(1)ア記載のとおり,本件処分場の排水放流先である小川の流域に居住し,本件
処分場に廃棄された産業廃棄物によって小川の水が汚染された場合にはその生命,
健康,財産等を侵害される蓋然性のある者であるから,原告適格を有する。
4 請求原因に対する認否及び被告の主張
(1)ア 請求原因(1)アの事実は不知ないし否認する。
 原告らは,小川流域には居住していない。
イ 同イの事実は認める。
(2) 同(2)の事実は認める。
(3) 同(3)の事実は認める。
(4)ア 同(4)頭書は争う。
イ(ア) 同(4)ア(ア)の事実は認める。
(イ) 同(イ)の事実は認める。
(ウ) 同(ウ)のうち主張は争い,他の事例については不知。
(エ) 遮水シート工法についての被告の反論は以下のとおりである。
a 遮水工の構造,遮水シートの品質,遮水層の被覆について審査し,遮水工の安
全性は確認している。また,集水管等の敷設勾配,材質及び管径を審査し,堅固で
耐久力を有することを確認している。
 すなわち,福島県は,指導要綱13条3項に基づき,産業廃棄物処理施設の構造
に関する基準(平成12年改正前のもの。以下同じ。以下「基準」という。)を定
めており,産業廃棄物処理施設を設置し,又はその構造若しくは規模を変更しよう
とする者に対し,事前協議に係る計画の立案に当たっては同基準を遵守することを
求めている。
 基準は,産業廃棄物最終処分場の構造について「しゃ断型最終処分場」「安定型
最終処分場」「管理型最終処分場」の3つに分類した上で,3つの最終処分場に共
通した基準と各類型ごとの個別基準に分けて規定しており,本件処分場が該当する
管理型最終処分場について,個別基準として(1)貯留構造物(2)埋立工法
(3)しゃ水工(4)浸出水集排水施設(5)浸出水処理施設(6)発生ガス処理
施設(7)防災設備について詳細に規定している。
b(a) 本件処分場の許可に当たって,被告は,基準第4,4(3)イ(ア)に
規定している遮水シートの厚さ,材質,耐久性,同(イ)に規定している保護層,
同(オ)に規定している遮水シートの固定,同(カ)に規定している遮水シートの
接合,同(キ)に規定している産業廃棄物の接触又は埋立用重機及び搬入車両の荷
重からの遮水シートの保護についていずれも基準の求める要件を満たしていること
を確認した。特に,本件遮水シートの材質については,本件処分場の法面部分には
「高規格TPO」,底盤部分には「FPA」シートが使用されており,それぞれの
シートの特性は,別紙処分場しゃ水シート比較表記載のとおりであり,総合評価と
しても優れた性能を有するシートである。
(b) また,基準第4,4(4)アに規定している浸出水集排水施設の構造,同
ウに規定している目詰まり防止,同エに規定している集排水管の管径及び管路断
面,同カに規定している浸出水集排水管の構造について,いずれも基準の求める要
件を満たしていることを確認した。
(c) 基準第4,4(5)に規定している浸出水処理施設,同アに規定している
計画処理水量,同イに規定してる調整設備,同ウに規定している浸出水処理施設の
処理能力,同エに規定している浸出水の水質,同オに規定している処理水の放流
先,同カに規定している排水設備について,いずれも基準の求める要件を満たして
いることを確認した。
 特に,保有水等を排水基準を定める総理府令に規定する排水基準に適合させるこ
とができる浸出水処理設備であることを,申請者が提出した施設の設計計算書等に
より確認した。
 処分場からの排水による下流水利権者等への影響については,河川流量と放流量
との希釈倍率から汚濁負荷はわずかであると判断した。
 具体的には以下のとおりである。
① BOD負荷について
 放流地点の河川水量は,降水量や流域面積等から,渇水期の5月に最低値1万1
499‰/日,増水期の9月に最大値4万9546‰/日,そして年平均で2万8
709‰/日と予測される。
 浸出水量も降雨量などから渇水期の5月に最低値8‰/日,増水期の9月に最大
値130‰/日(最大処理能力量),そして年平均で35‰/日と予測している。
 また,放流水の水質目標を平均5㎎/?,最大10㎎/?としている。
 放流水のBOD日汚濁量は,放流水の水質(BOD:㎎/?)に水量を乗じて求
められるもので,渇水期の平均値が40g,最高値が80gと,同様に増水期は平
均650g,最大1300gと,そして年平均流量で平均値が175g,最高値が
350gと予測される。
 この日汚濁量を河川流量と放流流量の和で除して汚濁負荷が求められるので,渇
水期は平均0.003㎎/?,最大0.007㎎/?,増水期は平均0.013㎎
/?,最大0.026㎎/?,年平均流量では平均0.006㎎/?,最大0.0
12㎎/?と予測される。
 つまり,処分場の放流水による河川のBODの上昇は,放流地点において最大で
も0.026㎎/?と予測されるが,これはBODの測定精度1㎎/?を遙かに下
回るものであり,数値上算出はされるが実際に計測できないオーダーのものであ
る。
 これより下流の農業用水取水地点においては,放流地点よりも河川の流量が多い
ので,汚濁負荷はさらに小さくなっている。
② その他の負荷について
 BOD以外の有害物質等については,放流水の処理目標値として定量限界値かそ
れに近い値が設定されており,放流地点及び農業用水取水地点の希釈率からすれ
ば,いずれも検出限界以下となる。
 本件処分場に係る汚濁負荷は,放流地点においても計測し得ないほど小さいもの
であるが,河川及び農業用水路を流れてあるいはその一部が地下に浸透し地下水脈
を経て本件処分場と直線距離にして約8.5㎞以上離れた原告らの居住地付近に達
するまでには,希釈,河川の自浄作用,土壌による濾過作用などが想定され,数値
的な予測はできないが,放流地点や農業用水取水地点よりもさらに小さくなるもの
と考えられる。
c 仮に,遮水シートが破損しても検知システム(Mr.センサー)が有効に機能
しており問題はない。
 検知システム(Mr.センサー)は,遮水シートの健全性をモニタリングする方
法の1つで,シート損傷位置を速やかに検出することを目的とする。
 観測井戸の設置は義務づけられているものの,検知システムは法的設置義務がな
く,検知システムを採用している処分場は少ない。
 検知システム(Mr.センサー)の実績は,M社のほかに7件あり,いずれも正
常に作動していて,システム設置による問題等は発生していない。
 検知システム(Mr.センサー)の検知部は,遮水シートの下の面電極とシート
上部にある固定電極で構成される。
 面電極の耐久性については,電極体として,金属としての安定性がよく,耐食性
の高い材料であるアルミニウムが使用されており,面電極の寿命は半永久的と考え
られるが,面電極のアルミニウム電極体は,不織布に内蔵することで機械的強度を
向上させ,さらに構造的に安定している2重シート間に設置することにより,耐久
性を高めている。
 株式会社Oが実施した耐食性試験では,35年以上の耐食性を示すデータが得ら
れている。
 仮に遮水シートが破損して,廃棄物を含んだ浸出水による部分的な腐食消耗が発
生したとしても面電極は底盤下の全面に敷設されており,性能上何ら問題はない。
 固定電極は,株式会社Oがステンレス電極と耐食性特殊樹脂の一体形成で製造し
た腐食モニタリングプローブであり,これは,腐食・防食監視センサーとして陸上
石油タンク底盤の直下やガス・水道などの埋設配管の近傍に埋設設置されており,
約20年の実績を有している。
ウ(ア) 同イ(ア)のうち,福島県が指導要綱を作成し,平成2年4月1日から
施行していること,その目的が指導要綱1条に記載しているものであること,指導
要綱が条例とはなっていないことは認め,その余は争う。
 指導要綱は,廃棄物処理法を効果的に運用するための行政指導である。
 なお,指導要綱に規定する保健所長は平成9年4月から地方振興局長に変更され
ている。
(イ)a 同(イ)aの事実は認める。
b 同(イ)bの事実のうち,被告が福島市の意見を全く無視し,M社が何ら水利
組合や地域住民との調整も行わなかったことは否認し,その余の事実は認め,主張
は争う。
 M社がR漁業協同組合に同意願いを提出したのは平成3年1月19日であり,同
組合が不同意の書面を提出したのは同8年8月30日である。しかし,同組合摺上
支部は,同8年9月13日付け書面によりM社に対し,本件処分場の設置に理解を
示す書面を再度提出している。
c 同(イ)cの事実のうち「地区代表者の同意書の写し」との部分を除き,認め
る。
 指導要綱13条3項により設置等予定者が遵守するものとしている「産業廃棄物
処理施設の立地等に関する基準」の第3,3には,地区代表者の同意は,「必要に
応じて」と規定されている。
(ウ) 本件処分場設置に関する同意の不存在についての被告の反論は以下のとお
りである。
a 同意取得の範囲は,産業廃棄物最終処分場建設予定地の所在市町村長から意見
を聴き,産業廃棄物処理施設の種類や規模,周辺の土地利用状況等を総合的に勘案
しながら個別具体的に判断している。市町村関係機関等から意見を聴取した上で,
その意見に対して調整の上,報告するよう事業者を指導し,その意見に対する見通
しがついた段階で次の事前協議に進むことになっている。同意については,市町村
長の意見等を踏まえ,新たな関係者からの同意を求める場合もあり,このような場
合には事前協議の審査の中で対応することとしており,また反対者に正当な反対理
由がないのに単に反対であるとの理由で同意が得られない場合にはやむを得ないも
のと判断して同意がないままで事前協議に進む場合もあり得る。
b 本件に関する同意の取得状況は以下のとおりである。
① 平成6年改正前の指導要綱には規定されておらず,同年改正以降の指導要綱上
規定があるが,同意の必要のなかったもの
 周辺居住者     本件処分場から750m以内には居住者がいない。
 搬入道路周辺居住者 本件処分場から750m以内には居住者がいない。搬入は
国道13号線から直接進入する。
 下流水利権者    福島市長の意見にあった3水利組合の取水堰は本件処分場
の放流地点から約6㎞以上離れ,河川の水質及び水量に影響を及ぼさないと審査し
たため,指導要綱上の下流権利者に該当しないと判断した。
② 平成6年改正前の指導要綱には規定されていないが,同年改正以降の指導要綱
上規定があり今回同意を取得したもの
 隣接土地所有者   土地所有者全員からの同意を得ている。
 地区代表者     本件処分場建設計画当時,大滝地区(ただし,現在居住者
は存在しない。)が存在したことから当該地区の同意を得ている。
③ 平成6年改正前の指導要綱には規定されていないが,同年改正以降の指導要綱
上規定があり,今回同意を取得したものとみなしたもの
 漁業権者      R漁業協同組合が該当し,当該組合からは不同意とする回
答が提出されているが,本件処分場の設置に伴い影響を受けるおそれのある範囲を
直接管理している当該組合の摺上支部から協定締結に向けた意思表示が示されたの
で同意が得られたものと判断した。
       理   由
1 原告適格について
(1) 本件のような行政処分の取消しの訴えの原告適格については,行政事件訴
訟法9条により,「当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限
り,提起することができる。」と規定されているところ,同条が定める行政処分の
取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権
利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある
者をいい,この法律上保護された利益とは,行政法規が私人等権利主体の個人的利
益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障さ
れている利益であって,それは,行政法規が他の目的,特に公益の実現を目的とし
て行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる反射
的利益とは区別されるべきものである。そして,当該処分を定めた行政法規が,不
特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,
それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含
むと解される場合には,かかる利益もこの法律上保護された利益に当たるというべ
きである。当該行政法規が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の
個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは,当該行政法規及び
それと目的を共通にする関連規定によって形成される法体系の中において,当該処
分の根拠規定が当該処分を通して前述のような個々人の個別的利益をも保護すべき
ものとして位置づけられているものとみることができるかどうかによって判断すべ
きである。
(2) そこで,本件で問題となる廃棄物処理法及び同法に関連する法規範が,産
業廃棄物処理施設の設置許可基準につきどのような規定を設けているか概観する
と,以下のとおりである。
 廃棄物処理法15条1項は,「産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類処理施
設,産業廃棄物の最終処分場その他の産業廃棄物の処理施設で政令で定めるものを
いう。以下同じ。)を設置しようとする者は,厚生省令で定めるところにより,当
該施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならな
い。」旨規定する。
 また,同条2項は,「都道府県知事は,前項の許可の申請に係る産業廃棄物処理
施設が次の各号に適合していると認めるときでなければ,同項の許可をしてはなら
ない。」として「一 厚生省令(産業廃棄物の最終処分場については,総理府令,
厚生省令)で定める技術上の基準に適合していること。二 産業廃棄物の最終処分
場である場合にあっては,厚生省令で定めるところにより,災害防止のための計画
が定められているものであること。」と規定する。
 そして,この同条2項にいう厚生省令であるところの共同命令2条1項本文で準
用する1条1号は,「埋立処分の場所(以下「埋立地」という。)の周囲には,み
だりに人が埋立地に立ち入るのを防止することができる囲いが設けられているこ
と。」とし,同命令2条1項本文で準用する1条3号は,「地盤の滑りを防止し,
又は最終処分場に設けられる設備の沈下を防止する必要がある場合においては,適
当な地滑り防止工又は沈下防止工が設けられていること。」とし,同命令2条1項
1号は,「入口の見やすい箇所に,様式第二により産業廃棄物の最終処分場である
ことを表示する立札その他の設備が設けられていること。」とし,同命令2条1項
4号で準用する1条4号は,「埋め立てる産業廃棄物の流出を防止するための擁
壁,えん堤その他の設備であって,次の要件を備えたもの(以下「擁壁等」とい
う。)が設けられていること。イ 自重,土圧,水圧,波力,地震力等に対して構
造耐力上安全であること。ロ 埋め立てる産業廃棄物,地表水,地下水及び土壌の
性状に応じた有効な腐食防止のための措置が講じられていること。」とし,同命令
2条1項4号で準用する1条5号は,「埋立地からの浸出液による公共の水域及び
地下水の汚染を防止するための次に掲げる措置が講じられていること」として「イ
 埋立地には,産業廃棄物の投入のための開口部及びロに規定する集水設備(水面
埋立処分を行う埋立地については,排水設備)の部分を除き,産業廃棄物の保有水
及び雨水等(以下「保有水等」という。)の埋立地からの浸出を防止することがで
きる遮水工を設けること。ただし,埋立地と公共の水域及び地下水との間に充分な
厚さの不透水性の地層その他本文に規定する遮水工と同等以上の効力を有するもの
がある部分については,この限りでない。ロ 埋立地には,保有水等を有効に集め
ることができる堅固で耐久力を有する構造の管渠その他の集水設備(水面埋立処分
を行う埋立地については,保有水等を有効に排出することができる堅固で耐久力を
有する構造の余水吐きその他の排水設備)を設けること。ただし,雨水が入らない
よう必要な措置が講じられる埋立地(水面埋立処分を行う埋立地を除く。)につい
ては,この限りでない。ハ 集水設備により集められた保有水等(水面埋立処分を
行う埋立地については,排水設備により排出される保有水等。以下同じ。)に係る
放流水の水質を排水基準を定める総理府令(昭和46年総理府令第35号)第1条
に規定する排水基準(当該排水基準に係る同令別表第2の備考2の規定は適用しな
いものとする。)に適合させることができる浸出液処理設備を設けること。ただ
し,集水設備により集められた保有水等を貯留するための十分な容量の耐水構造の
貯留槽が設けられ,かつ,当該貯留槽に貯留された保有水等が最終処分場以外の場
所に設けられた本文に規定する浸出液処理設備と同等以上の性能を有する水処理設
備で処理される最終処分場にあっては,この限りでない。」とし,同命令2条1項
4号で準用する1条6号は,「埋立地の周囲には,地表水が埋立地の開口部から埋
立地へ流入するのを防止することができる開渠その他の設備が設けられているこ
と。」と規定する。
(3) 産業廃棄物処理施設の設置許可基準に関する上記一連の規定は,そこで規
定している事故及び悪影響等がもたらす可能性のある被害の内容,状況を考慮した
上で,その産業廃棄物処理施設の技術及び能力に関する基準を定めていると解され
る。
 さらに,産業廃棄物の最終処分場の設置許可には,生活環境の保全上必要な条件
を付することができること(廃棄物処理法15条3項),産業廃棄物処理施設の設
置許可を受けた者は当該処理施設に係る周辺地域の生活環境の保全及び増進に配慮
するものとすること(同法15条の4,9条の4)といった周辺地域への配慮を定
めた規定を置いている。そして,これら規定が設けられた経緯については,平成3
年9月11日及び同月13日に開催された厚生委員会議録等(甲17,18)に,
地元住民に信頼される安全性の高い施設を整備していくために届出制から許可制に
改正し,生活環境保全上の配慮の必要に応じて個別に対応できるよう条件が付けら
れるように改正することが明記されている。
 このように,周辺の環境に配慮するのは,産業廃棄物処理施設を建築すると周辺
地域への悪影響が起きる可能性があるので,これを未然に解消する趣旨であること
はいうまでもない。
 前記各規定の設けられた経緯,趣旨,前記各号が考慮している被害の内容等に鑑
みると,廃棄物処理法15条2項の規定は,単に公衆の生命,安全,環境上の利益
を一般的利益として保護しようとするにとどまらず,産業廃棄物処理施設の周辺に
居住し,同施設自体あるいは施設の事故等がもたらす災害や悪影響により直接的か
つ重大な被害を受けることが想定される付近住民の生命身体の安全等を個々人の個
別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。
(4) そして,原告らの居住する地域が被害の想定される地域といえるかどうか
については,本件処分場の種類,構造,規模等の本件処分場に関する具体的な諸条
件を考慮に入れた上で,原告らの居住地域ないし農地と本件処分場が処理水を排水
する小川ないし本件処分場周辺の伏流水との位置関係等を中心として,社会通念に
照らして合理的に判断すべきである。
(5) 証拠(乙12,13,15,17)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事
実が認められる。
 本件処分場に受け入れられる廃棄物は,燃え殻(焼却灰),汚泥,廃プラスチッ
ク類,紙くず,木くず,繊維くず,ゴムくず,金属くず,ガラスくず及び陶磁器く
ず,鉱さい,建設廃材,ばいじん(ダスト類),その他産業廃棄物を処分するため
に処理したもの等である。
 これら産業廃棄物により排出されることが予想される有害物質としては,カドミ
ウム及びその化合物,鉛及びその化合物,砒素及びその化合物,水銀及びアルキル
水銀その他の水銀化合物,フェノール類,銅,亜鉛,溶解性鉄,溶解性マンガン,
クロム,弗素,窒素,燐等があげられる。
 そして,本件処分場は,管理型の産業廃棄物最終処分場であり,そのシステムの
概要としては,埋立地の底面及び法面部を遮水シートで覆い,その上に上記産業廃
棄物を埋立処理し,埋め立てられた産業廃棄物から排出される汚水は浸出水として
集排水管を通り浸出水調整池に貯められ,浸出水処理施設及び礫間接触酸化槽並び
に消毒槽で浄化処理された上で1級河川小川に放流され,一方,本件処分場内の表
流水及び地下水は沈砂池に貯められ,防災調整池から放流槽を通じて同じく小川に
放流されることになっている。
(6) そうだとすると,本件処分場において,産業廃棄物からしみ出た浸出水が
本件処分場埋立地を覆っている遮水シートの破損等により地下に浸透したり,浄化
処理されるはずの浸出水がシステムが作動しなかったなど何らかの原因で浄化処理
されずに小川に排出される場合には,小川や本件処分場周辺の伏流水が上記有害物
質により相当程度汚染されるおそれがあることは否定できない。
 原告らは,本件処分場から直線距離にして約8.5㎞以上離れた別紙図面(1)
ないし(12)記載の位置にそれぞれ居住しており,距離に限っていえば必ずしも
付近住民とはいい難い。
 しかしながら,証拠(乙6)によれば,本件処分場周辺の地質の被覆土層のうち
谷中堆積物・河床堆積物は,1m~3m内外の厚さで分布する土砂で,その層相が
場所によってかなり変化し,地下水(伏流水)を帯水していることが認められ,本
件処分場の機能,運転状況等によっては,同施設から排出される処理水の中に含ま
れる有害物質により伏流水が汚染され,原告らがその伏流水を井戸などから取水す
ることにより生命,身体に被害を被るおそれがあると認められる(なお,伏流水が
どのような流れになっているかについては,甲第7号証によっても必ずしも明らか
でないものの,本件処分場の埋立地周辺の伏流水が原告らの居住する地域に流入し
ている可能性があることを否定することはできない。)。また,小川の水が汚染さ
れることにより,農作業を営む関係原告らの農作物自体に有害物質による悪影響が
もたらされるという事態を生じるおそれがあることも否定できない。
 そうすると,原告らは,本件処分場の付近住民とはいえないとしても,同施設が
排出する処理水が放流される小川の水や本件処分場からの排水を含む可能性のある
伏流水を生活用水ないしは農作業に使用している状況を踏まえると,付近住民に準
じた地位にあるということができ,本件処分場による被害を被ることが想定される
地域に居住する住民ということができる。
(7) 以上とおり,原告らは,本件処分場の設置により生命,身体等に被害を受
ける可能性があるのであるから,本件許可処分を争う原告適格を有するというべき
である。
2 本案について
(1) 証拠(乙5,7,8の1ないし3,乙9,11,12,13,14,1
5)及び弁論の全趣旨によれば,本件処分場は,廃棄物処理法,同施行令,同規則
及び指導要綱並びにそれに基づく基準等に定められた門扉,フェンス,表示板,貯
留構造物安定計算,防災調節池ダム安定計算,減勢工の設計,防災調節池ダムの構
造,法面安定計算,浸出水調整槽の安定検討,浸出水調整槽側壁の構造計算,浸出
水調整槽上流の排水及び腐食防止,浸出水調整槽容量計算,浸出水排水施設計算,
放流河川の汚濁負荷,雨水排水施設計算,災害防止等の各種要件をいずれも満たし
ていると認められ,原告らもこの点を争うものではない。
 本件では,原告らは,遮水シート工法の有効性と本件処分場設置に関する同意の
不存在について争っているので,以下この点に絞って検討する。
(2) 遮水シート工法の有効性について
ア まず,本件処分場の浸出水処理方式及び処理施設による処理能力について概観
する。
(ア) 証拠(乙12,13,40)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認
められる。
 本件処分場の浸出水処理方式としては,浸出水処理施設(主処理工程)で所定の
管理目標値まで浄化した後,礫間接触酸化層(後処理工程)を経て,地下水及び埋
立地周辺表流水と合流し,放流する。
 この処理方式の特徴としては,水質の自動計測により処理水が管理目標値に達し
なかった場合には,原水槽へ循環し再処理すること,キレート樹脂吸着により,万
が一微量の重金属が浸出(基準値以下も含め)することがあっても取り除くこと,
管理目標値を達成した後に,礫間接触酸化層を通すことによりノーメンテナンスに
よる浄化の効果を向上させることがあげられる。
 そして,浸出水処理施設による主処理工程としては,処理水は,まず,凝集沈殿
処理により主にカルシュウムイオンが沈殿物として除去されるとともに,その他の
コロイド状物質及び重金属類も除去される。その上で生物処理が施され,BOD
(生化学的酸素要求量),COD(化学的酸素要求量),窒素が除去される。再び
凝集沈殿処理が施され,主に,COD,SS(浮遊物質量),色度が除去され,砂
濾過処理ではSSが除去され,活性炭吸着処理ではCOD,色度が除去され,キレ
ート吸着処理では,前工程で除去されなかった重金属が完全に除去され,消毒では
大腸菌群他細菌類が消毒される。
 上記処理の結果,BODを例にとると,阿武隈川水系に対する福島県排水基準
(放流水)(25㎎/?(日間平均20㎎/?))を下回る10㎎/?未満の処理
水として処理されることになる。
 さらに,後処理工程では礫間接触浄化槽を通すことによりBODが30%除去さ
れ,7㎎/?未満とされ,消毒槽を通すことにより,BODは2~3㎎/?にして
排水されることになる。また,その他の有害物質についても同様であり,県の排水
基準を大きく下回るかそれ以下として排水される。しかも,小川の流量は,本件処
分場の処理水放流地点で浸出水量の400倍~1400倍,農業用水取水地点で1
000倍~4000倍程度である。
 本件処分場に起因する月平均の汚濁負荷は放流地点にて0.003(渇水期にお
ける平均値)~最大0.026㎎/?(増水期における平均値),取水地点にて平
均0.001(渇水期における平均値)~最大0.009㎎/?(増水期における
平均値)と計算される。これは最大の浸出水量が予想される埋立工程上の一時期の
値であり,礫間浄化処理も併行して行うので実際の月平均の汚濁負荷はこれを大幅
に下回ると予想される。この数値は計算上では算出されるが,観測上の測定精度
(BOD1㎎/?が限界)をはるかに下回る検出不可能な値であり,実際上も河川
水へ与える影響はないといってよいほどである。福島県の排水基準に定めるBOD
以外の項目についても無負荷又はそれに近い状態である。
(イ) 以上によれば,本件処分場の浄化処理システムには何ら違法な点はなく,
十分な処理能力を有しているということができる。
 しかしながら,これは,本件処分場の遮水シート工法が有効に機能して本件処分
場の産業廃棄物からしみ出た浸出水が全て本件処分場の上記浄化処理システムによ
り処理されることを前提とするものである。このように,本件遮水シート工法が有
効に機能することが本件処分場の安全性を確保する上で重要となるから,本件遮水
シート工法の有効性について検討する必要がある。
イ 本件遮水シート工法について
 証拠(乙17)及び弁論の全趣旨によれば、本件処分場の遮水構成は,底面部が
上部から下部へ保護土A(底面部,t(厚さ)=500㎜,良質発生土もしくは購
入土,施工段階で設置),保護マットC(t=10㎜,1.2㎏/㎡以上(PE
T,補強布入り)),保護マットC,遮水シートB(t=2.0 熱融着タイ
プ),ベントナイト混合土(t=500㎜),保護マットB(t=10㎜,1.2
㎏/㎡以上,面電極付,PET,検知システム用),遮水シートA(t=1.0
㎜,熱融着タイプ,ベントナイト混合土の施工用及び遮水機能の補助),保護マッ
トA(t=10㎜,1.0㎏/㎡以上,PET,基礎地盤に角れき等がなく良好な
場合は不要),基礎地盤となっており,法面部が保護土B(t=500㎜,良質発
生土もしくは購入土,埋立段階で設置),保護マットE(t=10㎜,1.2㎏/
㎡以上(PET+アクリル,補強布入り),紫外線及び熱劣化対策),遮水シート
C(t=1.5㎜,熱融着タイプ),保護マットD(t=10㎜,1.0㎏/㎡以
上(PET)),モルタル吹付(t=70~100㎜(不陸整正必要圧),金網入
り),面状排水材(t=10~20㎜(湧水量による),片面透水,耐圧タイ
プ),基礎地盤となっている(なお,乙第40号証によれば,法面の底面部に最も
近い部分については,遮水シートの下にベントナイト混合土(t=38㎝)が吹付
け施工されている。また,原告らの主張する遮水シート工法の概要は乙10や15
による計画段階のものと思われ,実際の本件処分場建設工事では底面部のベントナ
イト混合土による土質遮水層は50㎝となっている。)。
 このうち,本件では,本件処分場の産業廃棄物からしみ出る浸出水を遮る能力が
問題となっているから,その能力を有するとされる遮水シート及びベントナイト混
合土の有効性について検討する。
(ア) 遮水シートについて
a 証拠(乙32,33,41,証人P)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実
が認められる。
 本件処分場に採用された遮水シートには,高弾性熱融着エラストマーが用いられ
ており,法面には熱融着ブレンドゴム(高規格TPO,厚さ1.5㎜),底面には
熱融着重合ゴムFPA(厚さ2.0㎜)が用いられている(別紙処分場しゃ水シー
ト比較表参照。)。これらはいずれもJIS A 6008(高分子ルーフィン
グ),現在使用されている遮水シートの代表的な材料に含まれる合成ゴム及び合成
樹脂系非補強タイプの中弾性タイプの基準を充分満足する強靱で地盤追従性に富ん
だTPOシートである。
 最終処分場に敷設される遮水シートは,その処分場が供用される間(閉鎖後の水
処理期間を含む。)その遮水性能を維持しなければならない(一般的には10~1
5年)。その間遮水シートは太陽光,熱,風雨及び浸出水,廃棄物中の化学変化等
にさらされる中でその遮水性能を維持する必要がある。したがって,耐候性,耐薬
品性に優れている必要がある。
(a) 耐侯性について
 遮水シートの耐侯劣化は,400nm以下の紫外線を吸収して起こる光劣化を主
に,熱劣化や水分,オゾン等が複雑に影響して進行する。
 遮水シートの耐侯劣化現象やその速度を観察するには促進劣化試験により劣化状
況や寿命推定を行うことが一般に行われている。
 そして,耐候性を評価する試験方法としては,人工促進耐候試験と屋外促進暴露
試験がある。
 屋外促進暴露試験としては,アメリカの各種公的機関より公認されている,アリ
ゾナ州フェニックスの砂漠で行われている太陽光を追跡集光して照射するエマキュ
ア試験があるが,この試験方式はアメリカ規格ASTM-G9-98で規定されて
おり,促進倍率が高く,この試験方法では,照射エネルギー量は通常の屋外暴露の
全波長域で約8倍,紫外線部で約5倍である。そこでの約1か月の屋外暴露は日本
における天然暴露の約1年に相当するとみなされており,遮水シートは15年に相
当する1.5年程度の促進暴露試験の結果,本件で用いられた遮水シートと同種類
の厚み1.5㎜の熱融着タイプゴムシート(TPO)は,外観は「差無し」,表面
の「みかん層状に見えるのは遮水シート製造時に転写されたシボ模様である。16
ヶ月暴露後には表面がわずかに荒れているが,異常な変化は見られない。」,質量
は変化率「0.3%」,強伸度変化については,引張強度保持率は「96%(降伏
点強度保持率,101)」,引張り伸度保持率は「118%(降伏点強度保持率,
99)」,100%伸び時の荷重保持率は「103%」となっており,遮水シート
の耐候性について「シート表面を400倍の顕微鏡で観察すると微細なひび割れが
生じているが,他の物性項目の変化は小さい。」と考察されている。
 また,本件遮水シートとともに用いられる保護マットについても,6か月のエマ
キュア試験の結果(具体的には,短繊維不織布(合成繊維製反毛フェルト3種4
号,目付け1.2㎏/㎡),長繊維不織布(ポリエステル製スパンボンド不織布,
目付け1.2㎏/㎡))とも,耐貫通性の点で貫通強度が約70~80%に低下し
たが,外観,質量,遮光性,極限粘度(ただし,短繊維不織布については測定不
可)等いずれも大きな変化は見られなかった。
 人工促進耐候試験としては,カーボンアークの紫外線と水スプレーによって,日
光と雨の効果を与えるサンシャインウェザーメータ試験が一般に行われている。光
源カーボンの中でもサンシャインカーボンを用いたWS形は分光特性が日光に近
く,照射エネルギー量から約250時間が屋外暴露の約1年に相当するといわれて
いる。この試験による遮水シートの5000時間(約20年相当)に及ぶ試験結果
は,伸び率,引張強さとも,保持率の変化はほとんどない。
 加えて,本件処分場の遮水構成は,遮水シートの上を保護マットで保護すること
により紫外線及び熱劣化対策が施されており,耐侯性の点でより安全な構造となっ
ている。
(b) 耐薬品性について
 浸出水に対する遮水シートの耐久性に関しては,浸出水の性状に幅があることか
ら,pHを目安に耐酸性,耐アルカリ性の試験を実施している。
 社団法人全国都市清掃会議が昭和54年に全国の64処分場を調査した結果,処
分場の浸出水の性状は,pH5.26~8.4の範囲であり,pH3からpH12
までを想定して試験を実施した結果,本件処分場で用いられているのと同種類の遮
水シートTPOは,pH3の場合「引張強さ比97%,伸び率比99%」,pH1
2の場合「引張強さ比98%,伸び率比102%」であって,物性変化が少なく,
実用的に問題はないとされている。
b もっとも,遮水シートの接合が不十分であれば、そこから汚水が漏れることも
考えられるが,証拠(乙40,証人P)によれば,遮水シート表面保護マットの接
合方法として縫製式接合法,取替式固定法が開発され,不織布同士を熱融着より確
実に接合することを可能にし,不織布を固定工に巻き込まず取替えを可能にするな
どの工夫が施されていること,遮水シートの接合については,熱融着タイプのシー
トが開発されたことにより,シート同士を完全に一体化してしまうことで漏出を防
ぐことができ,融着の温度,接合時の圧着力,圧着するスピード等をコントロール
して施工すれば問題ないことが認められ,乙第19号証の写真撮影報告書には,遮
水シートの接着実験を行い,空気圧計及び洗剤の泡による漏出確認の結果,漏れな
く接着することができている状況が撮影されており,接合方法についても問題がな
いことを確認している。
c 以上のとおり,本件処分場に用いられている遮水シートは産業廃棄物からしみ
出る浸出水を遮る機能を十分に発揮するものである。しかしながら,遮水シートの
みの場合,遮水シートに損傷が生じると漏水に対してほとんど無抵抗である。そこ
で,次に検討するベントナイト混合土による土質遮水層の機能について検討する。
(イ) ベントナイト混合土について
 証拠(乙34,35,36の1ないし3,42,証人Q)及び弁論の全趣旨によ
れば,以下の事実が認められる。
 ベントナイトとは,火山灰の変質作用によって生成した粘土鉱物モンモリロナイ
トや他の不純物を含んだ岩石であり,水を加えるとスポンジのように吸水膨張し,
糊のように粘りが出るという高液性限界特性及び膨潤特性を有し,しかも,食品添
加物にも指定されている安全性の高い天然資源である。これに有効応力(重機によ
る締め固め,ゴミ層等積載荷重)が加わると,層間から水が脱水されるが,まだ層
間には層間水(イオン的な力で移動できない水)が残る。このため浸出水は,層間
水が移動しない限り侵入できないことになる。
 ベントナイト遮水層は,現地から発生した土にベントナイトを10%から15%
程度混合して構築した土による天然材料の遮水層である。粒子の小さなベントナイ
トを混合することで組織が密実になり,さらにベントナイトの膨潤機能によって高
遮水性能となる。水の通しにくさを表す透水係数は,毎秒1×10-9から1×1
0-7㎝であり,基準に適合している。
 ベントナイト遮水層は,遮水シートと組み合わせることによって,遮水シートに
不具合部が発生したときのバックアップ材となり浸出水の漏洩を遅らせることがで
きる。厚さ50㎝のベントナイト遮水層を浸出水が通過する時間は,透水係数が毎
秒1×10-7㎝で水圧が常時1mかかったとして計算上約8年となる。
 そして,ベントナイト混合土の厚さについては,トラベルタイム(混合土内部を
浸出水や化学物質等が通過する時間)と混合土のリダンダンシー(体積変化)とし
て重要な要素であり,全体として難透水性を確保するために,重機施工による一層
の施工厚さの限度を20~25㎝とし,総厚50㎝以上にするよう推奨されてい
る。
 本件処分場のベントナイト混合土による土質遮水層の厚さは,前述のとおり50
㎝となっている。
 したがって,ベントナイト混合土による土質遮水層は,遮水シートと相俟って産
業廃棄物からしみ出る浸出水を遮る機能を十分に発揮するものである。
ウ 遮水シート破損検知システム(Mr.センサー)について
 さらに,本件処分場では,遮水シートの破損を検知し,補修するシステムが構築
されている。
(ア) すなわち,証拠(乙37、38,39の1ないし3,40,42,証人
Q)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。
a 遮水シート破損検知システム「Mr.センサー」の概要
 Mr.センサーは,遮水シート下部に設置する保護マット内にアルミシート(厚
さ約35μm)を挟んで一体化させた面電極を設置することを特徴とし,その面電
極とシート上部の測定電極間のインピーダンス(抵抗値)を測定するものである。
この検知システムの原理は,遮水シートが電気的に絶縁性が高い材質であることを
利用したものである。処分場の全面に遮水シートを敷設すると,処分場の内外にあ
る測定電極と面電極の間は遮水シートにより電気的に絶縁状態となり電気は流れな
い。このような状態で遮水シートに不具合部が生じると,その不具合部を通って電
気が流れるようになる。
 計測されるインピーダンスは,不具合部付近の測定電極では電気の流れる経路が
短くなるので小さくなり,一方,不具合部より離れた測定電極では電気の流れる経
路が長くなるので大きくなる。したがって,破損位置は,本件処分場の保護土内部
に10m間隔で64ポイントの格子状に設置した測定電極と面電極間に交流電流を
流してインピーダンスを測定する。破損位置は,計測値を用いた分布図よりしきい
値以下で最もインピーダンスが小さい領域として特定される。
 Mr.センサーは,シート敷設時の全面検査から保護土設置後のシート破損位置
の検知及び操業時の長期モニタリングまでの各段階においてシート破損検査が可能
であり,①シート敷設時,保護土設置後,操業時の各段階で遮水シートの機能管理
ができる,②シート敷設時のピンホールや接合不良をチェックするシートの全面検
査が可能である,③シート下部全面に面電極を設置するので,計測は全ての計測点
で同一条件となり,また,不確定要因が多い廃棄物や周辺地盤の抵抗の影響を受け
にくく,精度の高い検査ができる,④シート破損の位置は,インピーダンスの分布
図より特定することができるので,複雑な解析を必要とせず,簡単・迅速に管理で
きるなどの特徴を有している。
 このMr.センサーの検知能力については,フィールド検知実験が行われてお
り,実験結果は,破損位置は破損の大きさ,個数を問わず特定でき,破損部を補修
したケースではインピーダンスはヤード全域において200kΩ以上となり,破損
したケースの際に生じた4.32kΩ以下の分布が完全に消滅し,破損部が完全に
止水,補修されていることが判定できている。
b 遮水シート破損補修工法の概要
 保護土施工完了後や操業時で廃棄物量が少ない場合の検査において発見された破
損は,シート上部の保護土や廃棄物を撤去して完全にシート表面を露出させてパッ
チ当てで補修することとし,廃棄物の埋立高さが数m以上の開削法による補修が難
しい場合におけるシート破損箇所の補修工法としては,処分場表面よりボーリング
掘削し,補修材を注入して行うことにより,廃棄物や保護土を撤去することなく補
修する。補修後は検知システムにより再度検査を行い,確認する。
 補修工法は,基本的にはボーリング注入工法であり,①検知システムにより破損
を発見した場合,処分場表面にボーリングマシンを設置し,保護土までケーシング
により削孔する,②保護土まで到達したら,地山とケーシングをシールする,③二
重管を建て込み,先端ジェット水でシート直上まで無回転貫入する,④二重管のノ
ズルから水平方向へ超高圧水+エアー噴射により排泥を行い,シート上部の保護土
内部に間隙を造成する,⑤注入管を建て込み,間隙底部より補修材を注入する,⑥
注入管を底部から引き上げながら補修材を注入する(トレミー方式),⑦補修材が
ケーシング上部まで充填されたらエアーパッカーをかけ,補修材を加圧注入する,
⑧保護土間隙やシート破損部を確実に充填する,⑨検知システムにより破損補修の
確認をするといった手順をふんで破損部を補修していく。
 Mr.センサーによる遮水シート破損補修工法は,①ボーリング注入工法である
ため,直接廃棄物内に入ることが無く安全である,②シート上部の保護土の削孔
は,高圧水による無回転掘りであるためシートに破損を与えない,③保護土内部に
超高圧水+エアーによって間隙を造成するため補修材の注入が容易にでき,1回の
注入で深礎掘削工法と同程度の範囲を補修することができる(補修範囲:直径1~
3m程度),④補修材は保護土と混ざり合うことなく固化し,シート破損箇所が確
実に補修される,⑤補修材はシートの材質等を考慮して選定することができる(ゴ
ムアスファルト系,シリコン系,ウレタン系など),⑥ボーリングを複数行うこと
により,広範囲の面的な補修を行うことができるなどの特徴があげられる。
 そして,模擬破損部の大きさを約10×10㎝とする貫通孔による実証試験の結
果,インピーダンスは,破損がある場合,その周辺で約0.6kΩ以下の範囲にあ
り,破損位置を特定できている。破損補修後では,破損付近のインピーダンスが増
大し,0.6kΩ以下の分布が完全に消えて破損部が補修されていることが確認で
きている。シート上部の保護土などを撤去し,補修部分を露出させたところ,補修
材は保護土と混ざること無く完全に固化し,固化体は注入孔を中心に幅約100㎝
~80㎝,高さ50㎝の大きさであった。補修材は破損部のシート下部まで回り込
み,破損部を完全に閉塞していた。
c Mr.センサーの現場導入実績
 本件処分場に導入するに先立って平成6年8月から,一般廃棄物処分場において
ではあるが,既に導入されており,現在では本件処分場を含めて9箇所の廃棄物処
分場に導入されている。
d 本件処分場では,Mr.センサーを用いて建設が終了した時点や操業してから
も日常的に遮水シートの点検を行っているが,計測された結果から遮水シートは不
具合部がなく健全であることが確認されている。
Mr.センサーは,1年に1回メンテナンスを行い,保守点検されることになって
いる。
(イ) 以上のとおり,本件処分場における遮水構造は,遮水シートとベントナイ
ト遮水層による複合遮水工に加えて,遮水シートの機能管理を行う検知システムを
組み合わせた構造になっている。
 この遮水構造は,遮水シートの下層にベントナイト混合土による土質遮水層があ
るので,遮水シートに不具合が発生しても,ベントナイトの遮水機能と膨潤機能に
より埋立地内部の浸出水の漏洩拡散を抑えることができ,かつ,検知システムでそ
の不具合部を特定し浸出水が遮水工から漏出するまでに修復することが可能とな
る。
 したがって,本件処分場の遮水シート工法は,従来の遮水シートのみによる遮水
工に比べて,浸出水漏洩の危険性が非常に小さい,安全性の高い構造となってい
る。
エ 以上検討してきたとおり,本件遮水シート工法は,耐候性,耐薬品性に優れた
ものを使用しており損傷しにくいものとなっている上,遮水シートが損傷した場合
でも,産業廃棄物が実際に埋め立てられた場合,目視により点検し検知することは
できないものの,ベントナイト混合土により産業廃棄物から排出される浸出水によ
る汚染が生じないよう配慮され,しかも,Mr.センサーにより遮水シートの損傷
部位が直ぐに発見できるように工夫され,発見された場合には早期に補修できるよ
うなシステムが構築されており,その上,地下水のモニタリングによって,実際に
処理水を小川に放流する場合には基準値を下回る処理水のみを放流することができ
るようなシステムになっている。したがって,本件遮水シート工法は廃棄物処理法
15条2項1号を承けて定められている共同命令2条1項4号で準用する1条1項
5号イが定める技術上の基準を十分に満たしているものということができる。
(3) 本件処分場設置に関する同意の不存在について
ア 廃棄物処理法では,前述のとおり,許可制を採用しており(15条1項),都
道府県知事は許可申請に係る産業廃棄物処理施設が15条2項各号に適合している
と認めるときでなければ許可をしてはならないと定めている。この点,福島県で
は,廃棄物処理法の規制の他に産業廃棄物の適正な処理施設の確保と適正な処理処
分の推進を図る目的のもと,独自に指導要綱を定めており,指導要綱では,処理事
業者が廃棄物処理法上の設置許可申請を行うに先立ち保健所長と事前協議をするこ
と(13条1項),同事前協議を申し出るにあたっては,地域関係者への事業計画
の説明や付近住民からの同意書の取得などの事前調整を行わなければならないこと
(13条2項,別表第4の4,13条3項,産業廃棄物処理施設の立地等に関する
基準第3,3)が定められている。このような付近住民の同意を要求した条例等の
定めはなく,指導要綱は法律等の委任を受けて制定されたものでもない。
 したがって,付近住民の同意書添付は法律ないし条例自体に許可の要件として規
定されているものではなく,福島県が事業主と付近住民の紛争を事前に防止し,住
民の安全,健康等の保持,公害の防止その他の環境の整備保全を図るという所期の
目的を達成するために,行政指導の一環としてその取得を要請しているものにすぎ
ないものである。そして,行政指導は,その性質上直接的な強制力を持つものでは
なく,指導の相手方の任意の協力を通じて所期の行政目的を達成しようとするもの
であるから,行政指導に従うことをもって行政行為の条件と解することはできず,
被告が本件処分場設置許可手続において,付近住民の同意書を添付しなかったとし
ても,そのことから本件許可処分が違法になるということはない。
イ なお,証拠(乙3,4,31の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,北海
道の産業廃棄物処理に係る指導指針,栃木県産業廃棄物処理に関する指導要綱,群
馬県産業廃棄物処理施設の事前協議等に関する規程で,事前協議者の範囲を当該施
設の所在地周辺おおむね500メートル以内に居住する住民や当該排水を放流する
地点から下流500メートル以内の利水権者又は農業者等の利用者若しくは当該水
利用者の団体の長等としていることをふまえ,①福島県としては周辺居住者及び搬
入道路周辺居住者の範囲を広めにとらえて本件処分場から750m以内とした上で
M社にその範囲の居住者の同意を取るよう指導したが,その範囲内には居住者がい
ないことから同意を取らなかったこと,②下流水利権者としては福島市長の意見に
あった3水利組合の取水堰は,本件処分場の放流地点から約6㎞以上離れているこ
とから同意を取らなかったこと,③隣接土地所有者全員からの同意を得ているこ
と,地区代表者としては,本件処分場建設計画当時,大滝地区(ただし,現在居住
者は存在しない。)が存在したことから,当該地区の同意を得ていること,⑤M社
は,平成3年1月19日,R漁業協同組合に同意願いを提出したのに対し,同組合
は,同8年8月30日,不同意の書面を提出したが,同組合摺上支部は,同8年9
月13日付け書面によりM社に対し,「県行政当局が,処分場設置に係わる関係法
令に従って,行政指導を正しく行い,当支部にも安心できる処分場として貴社に設
置許可を出すならば,現在でも,8月26日の役員会で既に了解した通りであり,
環境保全に係わる協定書等の締結に向けて話し合う用意のある事を申し添えま
す。」との回答をしていることが認められる。
 したがって,M社としては,R漁業協同組合の同意を除けば指導要綱の要件を満
たしており,しかも,同組合摺上支部は県行政当局が設置許可を出すなら話し合う
用意がある旨回答しており,M社としては,指導要綱に定める付近住民の同意を得
るべく相応の対応をしてきたことがうかがえる。
(4) その他,平成9年9月10日,福島市とM社との間で本件処分場の環境保
全に係る覚書(乙20)を取り交わしており,その目的として,M社が設置する施
設の建設工事による下流域生活環境の悪化及び公害の発生と自然環境の破壊を未然
に防止し,もって,下流域住民の生活環境を保全することを掲げており,特に,福
島市及び福島市が指定する者は,M社の承諾を得ることなく,施設放流水の放流先
水系の水質調査を実施するため,必要に応じてM社の立会のもとで施設建設工事地
内に立ち入り,採水をすることができるなどとして環境保全が図れるよう相当程度
配慮していることがうかがえる。
3 以上のとおりであるから,原告らが本件許可処分の取消事由として主張すると
ころはいずれも理由がなく,原告らの本訴請求はいずれも理由がないのでこれを棄
却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,
65条1項本文を各適用して,主文のとおり判決する。
福島地方裁判所第一民事部
裁判長裁判官 吉田徹
裁判官 久保孝二
裁判官高橋光雄は,填補につき,署名押印することができない。
裁判長裁判官 吉田徹
別紙図面等 省略

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