弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する
     上告費用は上告人の負担とする
         理    由
 上告人の上告理由は別紙記載のとおりであり、その要旨は、被上告人の被用者た
る電報配達員訴外Aが本件電報を配達するにあたり名あて人訴外Bの住所として記
載された地番に該当する現地に臨んで名あて人を探索することをせず、たんに所轄
郵便局、市役所支所又は二、三の近隣居住者に問合せただけで名あて人の所在が判
明せざるものとし、配達不能の取扱をしたのは右Aに故意又は過失があるといわな
ければならない。しかるに、右Aのなした名あて人調査をもつて業務上の義務を一
応尽したものとし故意はもとより重大な過失もないと判示した原判決には理由不備
の違法があるというのである。
 <要旨>しかしながら、国家賠償法は国又は公共団体の損害賠償の責任につき公権
力の行使に基く損害の賠償および公の営造物の設置管理の瑕疵に基く損害賠
償以外のものについては原則として民法の規定によるべきものとし(同法第四条)
ながら、同法第五条において民法以外の他の法律に別段の定があるときはその定め
るところによるとして特別法の優先適用を認め民法の規定の適用を排除している。
そして、被上告人公社が公衆電気通信役務を提供すべき場合においてその提供をし
なかつたことにより利用者に損害を加えたとき、その損害の賠償につき国家賠償法
第一条ないし第三条の適用なきことは右役務の性質上明白であるところ、他方公衆
電気通信法第一〇九条は、かかる場合において同条第一項第一号ないし第七号に該
当する限りそれぞれ右各号に掲げる額を限度とし被上告人公社においてその損害を
賠償する旨規定しているから、被上告人公社の右役務不提供による損害の賠償につ
いては前記国家賠償法第五条の規定により、民法不法行為の規定の適用が排除され
もつぱら右第一〇九条の規定によるべきものと解すべきである。けだし、被上告人
公社の現時の人的物的施設のもとにおいてぼう大な数量の電気通信を低廉かつ迅速
に取扱うにあたりある程度の誤謬・障害が発生しこれによつて利用者に損害を与え
ることがあるのは避けがたいところであり、しかもかかる誤謬・障害に対しいちい
ち損害賠償として多額の金員の支出を余儀なくされるものとすれば、電気通信事業
の運営は困難となりかえつて一般利用者の負担を重からしめ公衆電気通信法の所期
する公共の福祉の増進に背馳するにいたること明らかであるのに鑑み、前記同法第
一〇九条はかかる結果を避けるため被上告人公社の負うべき責任の範囲を限定しか
つ賠償額を制限したものとすべきであるからである。 これを本件についてみる
に、本件電報が名あて人に配達されなかつたことは、公衆電気通信法第一〇九条第
一項第一号に該当すること疑を容れないから、上告人は右に説示したところにより
民法不法行為の規定に基いては被上告人に対し損害賠償を請求することができない
ものといわなければならない。(なお、附書するに、公企業の利用関係から生じた
利用者の損害賠償請求につき国又は公共企業体の責任を制限した規定としては、右
公衆電気通信法第一〇九条のほか郵便法第六八条、鉄道営業法第一一条の二、第一
二条等を挙げることができるが、これらの規定は鉄道営業法第一一条の二第三項、
第一二条第四項のような特則が存しないかぎり国又は公共企業体の被用者の故意又
は重大な過失による行為についても適用せられるというべきである。)
 果して然らば前記訴外Aの本件電報配達の取扱方が民法不法行為の規定に該当す
るものとして被上告人に対し損害賠償を求める上告人の本訴請求は右訴外人に故意
又は過失ありたるや否やを審究するまでもなく失当たるを免れないものであつて、
原審が公衆電気通信法第一〇九条につき右と異なる見解に立ち電報が名あて人に配
達されなかつたことにつき被上告人又はその被用者に故意又は重大な過失の存する
場合には民法不法行為の規定の適用があるとしたのは法律の解釈を誤つた違法があ
るが、原判決は更に進んで右訴外Aには本件電報配達の取扱につき故意又は重大な
過失がなかつたものと判定し、上告人の請求を排斥した一審判決を是認し控訴を棄
却したものであるから原判決は結局正当に帰し所論のような違法は存しないといわ
なければならない。論旨は理由がない。
 よつて、本件上告を棄却することとし、民事訴訟法第四〇一条、第九五条、第八
九条により主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 河相格治 裁判官 胡田勲 裁判官 宮本聖司)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛