弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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           主     文
原判決を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。
            事実及び理由
 第1 控訴の趣旨
 主文同旨
 第2 事案の概要
 1 本件は,被控訴人が平成12年5月15日三田市公文書公開条例(平成6年
三田市条例第10号。以下「本件条例」という。)に基づき本件条例の実施機関で
ある控訴人に対し被控訴人の平成11年度の診療報酬明細書のすべて(以下「本件
公文書」という。)についての公開(写しの交付)を請求したところ,控訴人は,
本件公文書に記録されている情報が本件条例8条1号に該当するとして,これを公
開しない旨の決定(以下「本件処分」という。)をしたため,被控訴人が本件処分
の取消しを求めた事案である。
 原審は,本件公文書は本件条例8条1号に該当する情報が記録されている公文書
には該当しないとして,本件処分を取り消した。
 2 争いのない事実等,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付
加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要等」の「一 争
いのない事実等」,「二 争点」及び「三 争点に関する当事者の主張」に記載の
とおりであるからこれを引用する。
 (1) 原判決7頁9行目の次に改行の上次のとおり加える。
 「(公文書の部分公開)
 第一〇条 実施機関は、公開の請求に係る公文書に第八条各号又は前条各号のい
ずれかに該当する情報が記録されている部分がある場合において、当該部分とそれ
以外の部分とが容易に、かつ、公文書の公開の請求の趣旨を損なわない程度に分離
できるときは、その部分を除いて、当該公文書の公開を行わなければならない。」
 (2) 原判決7頁10行目から8頁2行目までを次のとおり改める。
 「3 平成一二年三月三一日、以下のとおりの規定を含む三田市個人情報保護条
例(平成一二年三田市条例第五号。以下「個人情報保護条例」という。)が制定さ
れ、第五章の規定は同年四月一日から、その余の規定は同年一二月一日から施行さ
れた(乙二、弁論の全趣旨)。」
 (3) 原判決9頁10行目の「平成一二年五月一五日付で、」を「平成一二年五月
一五日、」に,同頁11行目の「公開請求」を「公開(写しの交付)の請求」にそ
れぞれ改める。
 (4) 原判決10頁1行目の「右公開請求の後、」の次に「当時まだ施行されてい
なかった個人情報保護条例の制度趣旨に従い、」を加え,同頁3行目の末尾に次の
とおり加える。
 「なお、平成九年六月二五日付け厚生省老人保険福祉局長、保険局長、社会保険
庁運営部長通知「診療報酬明細書等の被保険者への開示について」(以下「本件通
知」という。)は、被保険者から保険者に対し診療報酬明細書等の開示の求めがあ
った場合、保険医療機関等に対して当該診療報酬明細書等を開示することによって
本人が傷病名等を知ったとしても本人の診療上支障が生じない旨を確認するなどし
た上、当該診療報酬明細書等を開示することとする旨定めており、三田市は、本件
通知を受けて、診療報酬明細書等の開示に係る取扱要領(以下「本件要領」とい
う。)を定め、三田市国民健康保険及び老人保健に係る診療報酬明細書等について
被保険者等からの開示の依頼があった場合、開示することによって本人が傷病名等
を知ったとしても診療
上支障が生じないことを主治医に対して確認するなどした上、これを開示する取扱
いをしている(乙三、四)。」
 (5) 原判決10頁8行目冒頭の「とし、」を「から、」に改める。
 (6) 原判決10頁10行目の「原告は、」の次に「個人情報保護条例の施行後
も、同条例に基づく本件公文書の開示の請求をしておらず、」を加える。
 (7) 原判決11頁1行目の「本件訴えにつき」を「本件処分の取消しを求める」
に,同頁2行目の「(1)号」を「一号」にそれぞれ改める。
 (8) 原判決11頁7行目から12頁9行目までを次のとおり改める。
 「 被控訴人は、本件要領等に基づいて本件公文書の開示を受けることが可能で
あるから、本件処分の取消しを求める訴えの利益を有しない。」
 (9) 原判決12頁11行目から13頁4行目までを次のとおり改める。
 「 控訴人の右主張は争う。」
 (10) 原判決13頁7行目の「(1)号本文」を「一号」に改める。
 (11) 原判決13頁9行目の「(1)」を削り,14頁4行目の「(1)号」を「一
号」に改め,同頁8行目の次に改行の上次のとおり加える。
 「 右のとおり、本件条例は、公文書を広く一般に公開することを原則とするこ
とにより、より一層公正で民主的な行政運営を実現すること等を目的として制定さ
れたものであり、非公開事由を定めることにより、公開によって得られる利益とプ
ライバシーあるいは円滑な行政の必要等公開されることによって影響の受ける側の
利益の両者の利益衡量を行い、そのバランスの上に、市民等のだれにでも公開すべ
き公文書とだれにでも公開すべきでない公文書とに区分して、公文書の公開請求権
を認めているのであって、本件条例八条の規定は、その実質は右のような意味での
公文書の公開の実体的要件を定めたものというべきである。もとより、いかなる公
文書を公開の対象とするかは立法政策の問題であり、本件条例に基づく公文書公開
請求権も本件条例によりその規定する要件の下に創設された権利であるから、右公
文書公開請求権の内容については、専ら本件条例の文言に則しつつ本件条例の立法
趣旨に従って解釈することにより決定されなければならない。
 (二) 前記のとおり、本件条例は、情報の公開により公共の利益を図ることを目
的とする公文書公開制度を定めたものであり、「公開」の文言を市民のだれに対し
ても公開することを意味するものとして規定し、個人情報の本人への開示について
定めた規定を置いておらず、八条一号においても当該公文書に記録されている個人
に関する情報が当該公文書の公開の請求をした本人に係るものであるか否かを区別
して規定していない。
 また、本件条例及び個人情報保護条例の立法経過をみても、情報の公開により公
共の利益を図ろうとする公文書の公開制度と自己情報の開示を含めて個人情報の適
正な取扱いを定めることにより個人の人格的権利・利益の保護を図ろうとする個人
情報保護制度とはその目的及び体系を異にする制度であることを明確にした上、本
件条例においては公文書の公開制度のみを規定し、他方で、個人のプライバシーを
含めた人格的権利・利益の保護を図るため、情報保護条例を制定して、個人情報の
本人開示を始め個人情報に係る収集・利用・提供等の適正な取扱いを定めた経過が
明らかである。国においても、個人情報の本人への開示は個人情報保護制度による
ものとして、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」と
いう。)には個人情報の本人開示に関する規定が設けられなかったところでもあ
る。
 (三) 以上によれば、本件条例八条一号は、同号に該当する公文書である以上、
当該公文書に記録されている個人に関する情報が当該公文書の公開を請求をした本
人に係るものであるか否かを問わず、これを公開してはならない旨を定めたものと
解すべきである。同号の規定を当該公文書に記録されている個人に関する情報が当
該個人以外の者に公開されることによって当該個人のプライバシーが侵害されるの
を防止することを趣旨とするものであるとして、公開を請求する当該本人の個人に
関する情報が記録されている公文書は同号に含まれないと解することは、立法者の
意思を無視し、本件条例の定めを逸脱して、公文書公開制度の中にそれとは異質な
別個の制度である個人情報保護制度の一部を新たに創設するものであって、誤りで
あることが明らかである。」
 (12) 原判決14頁9行目冒頭の「(2)」を「(四)」に,15頁1行目の「(1)
号」を「一号」にそれぞれ改める。
 (13) 原判決15頁2行目から17頁2行目までを次のとおり改める。
 「(五) 本件公文書の記載内容は、様式を除いて、個人に関する情報であり、公
文書の公開の請求の趣旨を損なわずに分離することはできないから、その全部につ
いて非公開とすべきである。」
 (14) 原判決17頁4行目の「(1)号本文」を「一号」に改める。
 (15) 原判決18頁1行目の「(1)号」を「一号」に改める。
 (16) 原判決19頁10行目の次に改行の上次のとおり加える。
 「(五) 仮に本件公文書中の疾病名等の公開が問題であるとしても、診療報酬費
等を部分公開すべきである。」
 第3 当裁判所の判断
 1 争点1について
 前記争いのない事実等によれば,三田市は,本件通知を受けて本件要領を定め,
被保険者等からの開示の依頼があった場合,開示することによって本人が傷病名等
を知ったとしても診療上支障が生じないことを主治医に対して確認するなどした
上,開示する取扱いをしており,被控訴人は,本件要領に基づいて本件公文書の開
示の依頼をすることができるほか,平成12年12月1日以降は個人情報保護条例
14条に基づいて本件公文書の開示の請求をすることができ,また,三田市は,被
控訴人の本件条例に基づく公開の請求に対し,本件要領に基づいて本件公文書を開
示する旨決定したというのである。しかしながら,被控訴人は,上記請求に対し
て,実施機関である控訴人から本件条例に基づく公文書の公開として本件公文書の
公開を受けていないのであるから,本件要領又は個人情報保護条例に基づき本件公
文書の開示を受けることが可能であるからといって,そのことのゆえに本件処分の
取消しを求める訴えの利益を失わないというべきである。
 したがって,被控訴人は本件処分の取消しを求める訴えの利益を有しない旨の控
訴人の主張は採用できない。
 2 争点2について
 (1) 本件条例は,三田市が保有する公文書の公開を求める市民の権利を明らかに
することにより,市民の市政参加を促進し,より公正な市政の推進を図り,市政に
対する市民の信頼と理解を深め,もって地方自治の本旨に即した市政の実現に資す
ることを目的として制定されたものであり(1条),その5条において,市内に住
所を有する者,市内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体その他
同条各号に掲げる者を広く公文書の公開を請求することができるものとして規定し
ている。また,本件条例は,その3条において,実施機関は,市民の公文書の公開
を求める権利が十分に尊重されるようこの条例を解釈し,運用するとともに,個人
に関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならな
い旨規定するとともに,8条各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文
書については,公文書の公開を行ってはならない旨,9条各号のいずれかに該当す
る情報が記録されている公文書については公文書の公開を行わないことができる
旨,それぞれ規定している。
 このような本件条例の規定からすれば,本件条例は,5条各号に掲げるものから
の公文書の公開の請求に対しては,当該請求をした者がだれであるかを問わず,当
該公文書に8条各号又は9条各号のいずれかの事由(以下「非公開事由」とい
う。)に該当する情報が記録されている場合を除いて,広くこれを公開すべきもの
としているものと解される。
 ところで,本件条例8条1号は,個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業
に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの
のうち,通常他人に知られたくないと認められるものを非公開事由の一つとして規
定している。乙5によれば,本件条例8条1号の趣旨については,個人のプライバ
シーは基本的人権尊重の立場から最大限保護しなければならないが,プライバシー
の概念は,その内容及び該当する範囲が明確でないため,プライバシーの内容や保
護されるべき範囲を客観的に定めることは困難であるから,該当するかどうか不明
瞭なものも含め,「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は識別
され得るもの」(以下「個人情報」という。)を原則として非公開とすることとす
るが,他方で,プライバシーに該当すると考えられる情報のすべてを非公開とせ
ず,保護すべき情報を通常他人に知られたくないとされる範囲に限ったものである
とされている。そして,同号が個人情報のうち非公開とすべきものを「通常他人に
知られたくないと認められるもの」という文言で規定しているところからすれば,
同号は,プライバシーには個人差があること等にかんがみ,当該個人を基準とする
のではなく,社会通念上一般的にみて当該個人情報が他人に知られたくないと認め
られるものである場合にこれを非公開とする趣旨のものであると解される。
 また,本件条例8条1号は,通常他人に知られたくないと認められる個人情報で
あっても,法令等の規定により何人も閲覧することができるとされている情報を始
め同号アないしウに掲げる情報については,例外として公開すべきものとしている
が,本件条例には公文書に記録されている個人情報が当該公文書の公開の請求をし
た本人に係るものである場合にはこれを公開すべきものとする旨の規定は置かれて
おらず,また,これとは別に個人情報の当該個人本人に対する開示の要件及び手続
等について定めた規定も置かれていない。
 以上のとおり,本件条例は,市民の市政参加を促進し,より公正な市政の推進を
図り,もって地方自治の本旨に即した市政の実現に資すること等を目的とし,市内
に住所を有する者等を広く公文書の公開を請求できる者として規定し,その請求に
対しては,当該請求をした者がだれであるかを問わず,当該公文書に非公開事由に
該当する情報が記録されている場合を除いて,広くこれを公開すべきものとし,個
人情報については,当該個人を基準とするのではなく社会通念上一般的にみて当該
個人情報が他人に知られたくないと認められるものである場合に原則としてこれを
公開してはならないものとし,当該個人情報が当該公文書の公開の請求をした本人
に係るものである場合を非公開事由に対する例外として規定していないのみなら
ず,これとは別に個人情報の当該個人本人に対する開示の要件及び手続等について
定めた規定も置いていない。これらにかんがみると,本件条例は,個人情報が記録
されている公文書については,当該個人情報が社会通念上一般的にみて他人に知ら
れたくないと認められるものに該当する場合には,当該公文書の公開を請求した者
がだれであるかを問わず,これを公開してはならないとしているものと解されるの
であって,公文書に記録されている個人情報が当該公文書の公開の請求をした本人
に係るものである場合であっても,当該個人情報が社会通念上一般的にみて他人に
知られたくないと認められるものに該当するときには,当該公文書は本件条例8条
1号に該当する情報が記録されている公文書に当たるものとして,実施機関は当該
公文書の公開を行ってはならないものと解するのが相当である。また,公文書に記
録されている個人情報に係る個人本人が当該公文書の公開を請求したからといっ
て,直ちに当該情報が社会通念上一般的にみて他人に知られたくないと認められる
ものに該当しなくなると解することもできないというべきである。
 (2) 以上に述べたところは,次のような本件条例及び個人情報保護条例の制定経
過からも裏付けられるところである。すなわち,乙5,6及び弁論の全趣旨によれ
ば,平成6年4月の本件条例の制定に先立って,三田市公文書公開制度検討委員会
が平成4年6月に提出した「三田市のめざす公文書公開-中間報告書-」において
は,本人のみに自己情報を公開する自己情報開示制度については,公文書公開制度
とも一定の関連性を有するが,原則公開と体系を異にするため,請求,訂正,利用
制限を含めた総合的なプライバシー保護制度を別途に検討することとするものとさ
れ,他方で,三田市公文書公開審査会が平成10年3月に提出した「三田市におけ
る個人情報保護制度の創設についての提言」においては,本件条例は,個人に関す
る情報を原則として公開の対象外としており,このことは,市の保有する個人に関
する情報について住民自身がチェックすることができないことを意味し,市が保有
する情報に対する住民の信頼の確保という点では制度的に不十分といわざるを得な
いので,市に対して自己に関する情報の開示,訂正,削除等を求めることができる
権利を創設することも必要であり,そのため,個人情報の保護に関する条例を中核
とした個人情報保護制度を創設することを提言するものとされているのであって,
この提言を受けて,平成12年3月,個人情報保護条例が制定されたものと認めら
れる。このような本件条例等の制定経過からすれば,三田市においては,個人情報
の当該個人本人に対する開示の制度については,公文書の公開を原則とする情報公
開制度とはその目的,体系を異にするため,本件条例の定める情報公開制度の対象
から除外し,個人情報保護制度の一環として個人情報保護条例においてこれを規定
したものと認められるのであって,個人情報については,それが社会通念上一般的
にみて他人に知られたくないと認められるものに該当する場合においては,当該公
文書の公開を請求した者が当該個人情報に係る個人本人であるときであっても,こ
れを本件条例8条1号の非公開事由に該当するものとして,実施機関は本件条例に
基づいて当該公文書を公開してはならないとするのが,条例制定権者の意思であっ
たことが明らかである。ちなみに,情報公開法は,5条1号本文において,個人に
関する情報であって特定の個人を識別することができるものを不開示情報として規
定した上,そのただし書において,法令の規定により又は慣行として公にされ,又
は公にすることが予定されている情報等同号イないしハに掲げる情報をこの不開示
情報から除外しているが,行政文書に記録されている個人に関する情報が当該行政
文書の開示を請求した本人に係るものである場合を除外する旨の規定を置いていな
い。その立法趣旨についても,情報公開法においては個人情報の本人開示を認める
制度を盛り込まないこととし,本人に関する情報が記録された行政文書の開示の請
求がされた場合であっても,情報公開法5条1号の不開示情報に該当する限り,原
則として開示しないものとするものであることが,情報公開法の立法経過に照らし
て明らかである(乙7等)。
 (3) 療養の給付,老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令
(昭和51年厚生省令第36号)及び弁論の全趣旨によれば,本件公文書には,各
月分について,被保険者証の記号・番号,被保険者の氏名,生年月日等,傷病名,
保険医療機関の名称等,診療開始日及び診療実日数,投薬,処置,検査等の内容及
び点数等が記録されているものと推認される。そうであるとすれば,本件公文書に
記録された情報は,本件条例8条1号にいう「個人に関する情報(事業を営む個人
の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,又は識別さ
れ得るもの」に該当するのみならず,被保険者の健康状態ないし病歴や診療上の秘
密等にかかわるものとして,社会通念上一般的にみて他人に知られたくないと認め
られるものに該当するというべきである。
 なお,前記のとおり,本件通知は,被保険者から保険者に対し診療報酬明細書等
の開示の求めがあった場合,保険医療機関などに対して当該診療報酬明細書等を開
示することによって本人が傷病名等を知ったとしても本人の診療上支障が生じない
旨を確認するなどした上,当該診療報酬明細書等を開示することとする旨定めてお
り,各保険者においては本件通知に従った取扱いをしているものと推認される。し
かしながら,本件通知においても,診療報酬明細書等の開示を求めることができる
ものを原則として被保険者本人に限定しているところであるから(乙3),各保険
者において本件通知に従った開示の運用を行っているからといって,そのことのゆ
えに本件公文書を始め診療報酬明細書等に記録されている情報が社会通念上一般的
にみて他人に知られたくないと認められるものではなくなったものと認めることも
できないものというべきである。
 したがって,本件公文書は,本件条例8条1号に該当する情報が記録されている
ものとして,その公開を請求した者がだれであるかを問わず,公開してはならない
公文書に該当するというべきである。
 (4) もっとも,住民に地方公共団体の機関の保有する公文書の公開を請求する権
利をどのような要件の下にどの範囲で付与するかは,各地方公共団体がその条例に
おいて定めるべき事柄であり,いわゆる公文書公開条例において,個人情報が記録
されている公文書についても,当該個人情報が当該個人以外の者に公開されること
によって当該個人のプライバシーが侵害される限りにおいて当該個人のプライバシ
ーを保護するためこれを非公開とし,当該個人本人からの公開の請求に対してはこ
れを公開すべきものとする旨定めることも,もとより可能である。しかしながら,
その旨の明文の規定があれば格別,前記のような規定を有するにすぎない本件条例
の下においては,請求者本人に係る個人情報であっても,住民等が実施機関に対し
て当該個人情報の開示を請求する権利を付与されていると解することはできないも
のといわざるを得ず,本件条例8条1号の規定を上記のように当該個人情報が当該
個人以外の者に公開されることによって当該個人のプライバシーが侵害される限り
において当該個人のプライバシーを保護する趣旨のものと限定的に解することによ
り,当該個人は実施機関に対して当該個人情報の開示を請求する権利を有するもの
とすることは,当該規定の趣旨,文言等を逸脱し,許されないものというべきであ
る。そして,このことは,本件条例とは別に個人情報の本人開示に関する制度が個
人情報保護条例等において定められているか否かによって異なるところはないとい
うべきである。
 (5) なお,被控訴人は,本件公文書に疾病名等通常他人に知られたくないと認め
られるものが含まれているとしても,その部分を除いた診療報酬費等を部分公開す
べきである旨主張する。その趣旨については,本件公文書のうち疾病名等通常他人
に知られたくないと認められる部分を除いたその余の部分(診療報酬費等)は本件
条例8条1号の非公開事由に該当せず,その余の非公開事由にも該当しないから,
実施機関である控訴人は,本件条例10条に基づき,疾病名等を除いたその余の部
分を公開すべきであるとするものと解される。
 前記のとおり,本件条例10条は,実施機関は,公開の請求に係る公文書に非公
開事由のいずれかに該当する情報が記録されている部分がある場合において,当該
部分とそれ以外の部分とが容易に,かつ,公文書の公開の請求の趣旨を損なわない
程度に分離できるときは,その部分を除いて,当該公文書の公開を行わなければな
らない旨規定しているが,その文理に照らすと,同条は,1個の公文書に複数の情
報が記録されている場合において,それらの情報のうちに非公開事由に該当するも
のがあるときは,当該部分を除いたその余の部分についてのみ,これを公開するこ
とを実施機関に義務付けているにすぎず,非公開事由に該当する独立した一体的な
情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや非公開事由
に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開することまでをも
実施機関に義務付けていると解することはできない。しかるところ,本件公文書の
性格及び様式等にかんがみると,本件公文書の各月分に記載されている被保険者証
の記号・番号,被保険者の氏名,生年月日等,傷病名,保険医療機関の名称等,診
療開始日及び診療実日数,投薬,処置,検査等の内容及び点数等は,一体として本
件条例8条1号に該当する独立した情報を成すものとみるべきであるから,同条に
基づいてこれらのうちの傷病名等のみを非公開とし点数等を公開しなければならな
いものとすることはできないものと解すべきである。
 したがって,被控訴人の部分公開に関する上記主張は採用することができない。
 (6) 以上によれば,本件公文書は本件条例8条1号に該当する情報が記録されて
いる公文書に該当すると解されるから,本件公文書に記録されている情報が同号に
該当するとしてされた本件処分に違法はない。
 3 結論
 よって,被控訴人の本訴請求は理由がないからこれを棄却すべきであり,これと
結論を異にする原判決を取り消し,被控訴人の本訴請求を棄却することとして,主
文のとおり判決する。
     大阪高等裁判所第3民事部
         裁判長裁判官    岡   部   崇   明
            裁判官    白   井   博   文
裁判官    西   川   知 一 郎

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