弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主         文
被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
理         由
(犯行に至る経緯)
1 被告人は,宮城県内で出生し,高校を卒業後,運送会社,土木建設会社などに勤務
した後,平成11年には父にダンプカーを購入してもらって独立し,以後ダンプカーの
運転手として稼働していた。本件犯行当時,被告人は,父母及び祖父と共に,住居地
において生活していた。
2 被害者は,高校を卒業後,東京の美容専門学校に進学し,東京で知り合った男性と
結婚して昭和58年6月に長女を,昭和62年12月に長男を出産した。被害者は,平
成元年3月ころ,二児を連れて実家のある宮城県柴田郡a町に戻り,同年11月ころ離
婚した。被害者は,昼は化粧品の販売員,保険の外交員等として稼働し,夜はスナッ
クで働くなどして二児を育て,平成9年には,同郡b町内にスナック(以下便宜上,単に
「スナック」という。)を開店した。
3 被告人は,平成9年に客としてスナックを訪れて被害者と知り合い,程なく被害者と
肉体関係を持つようになった。被告人は,その一方で,当時勤務していた土木建設会
社の同僚で夫及び子のあるAといわゆる不倫関係となった。被告人は同年暮れころ
にAを妊娠させ,Aは自ら費用を負担して堕胎した。二人の関係はAの夫や被告人の
両親の知るところとなったが,被告人はその後もAとの関係を続けて再び同女を妊娠
させた。Aは,平成10年12月,被告人の子を出産し,被告人は,平成11年4月,同
児を認知した。同児はAが引き取って養育していたが,その後被告人とAとの関係は
冷えていき,Aは堕胎費用や養育費の負担に不満を述べるようになり,堕胎費用及び
養育費として被告人に対し,20万円の支払いを要求するようになった。
4 被告人は,平成12年初めころ,消費者金融から借入れをしてAに対して堕胎費用等
を支払ったが,このとき思いがけず簡単に金を借りることができたことに味をしめ,そ
の後も消費者金融からの借入れを重ね,他の女性と肉体関係を持つ際のホテル代に
充てたり,飲み歩いたりするようになった。被告人は,厳格な父に,日ごろから,祖父
の代から築いた家の財産を潰すことのないように言い聞かされており,借金も固く戒
められ,自己の収入もいったん全て父に渡し,その中から月5万円程度をもらって小
遣いにしていたが,消費者金融への返済を滞らせて督促状を自宅に送付されれば,
借金嫌いの父に消費者金融からの借入れの事実が知られてしまうと考え,こうした事
態を避けるため,消費者金融への返済に他の消費者金融からの借入金を充てるよう
になった。被告人は,平成13年に入ると,知人の名義を借りてさらに消費者金融から
の借入れを重ねていった。
5 この間も,被告人は,被害者との関係を続けていたが,もともと被害者に対して大し
た愛情を抱いておらず,上記のとおり,むしろAとの交際に夢中になっていたことなど
もあって,次第にスナックから足が遠のいていった。
6被告人の消費者金融に対する借金は,平成15年1月ころには合計約370万円に上
っていたが,被告人は,被害者からスナックに飲みに来るよう誘われた際,被告人の
足がスナックから遠のいているのは,スナックに飲みに行ったことで消費者金融に多
額の借金があるためだなどと話した。被害者は,被告人に対し,消費者金融からの借
入れを解消するよう助言し,同年1月28日,被告人に対し,消費者金融への返済に
充てるための資金として無利息で150万円を貸し渡した。被害者は,被告人に対し,
残額は金利の低い銀行からの借入れで返済したり,消費者センターに相談することな
どを勧めたが,被告人は,銀行から借入れをすれば,書類が自宅に送付され,父に
借金の事実が知られてしまうなどと考え,被害者に対し,さらに金を貸してくれるよう
に懇願した。これを受けて,被害者は,スナックの客から借入れをして,同年2月11
日ころ,被告人に対し,さらに無利息で150万円を貸し渡した。被告人は,被害者か
ら借り受けた合計300万円のうち280万円余りを消費者金融への返済に充てたが,
その余の額は自己の手元に残し,消費者金融からの借入金が完済していなかったに
もかかわらず,被害者に対しては,消費者金融からの借入れは全て解消した旨嘘を
ついていた。
7 その一方で,被告人は,平成15年2月ころから,保険外交員をしていた夫及び子の
あるBと不倫関係となり,被害者からの借入金で消費者金融に対する借金を一部返
済した後も,消費者金融から新たな借入れを重ねていった。平成16年に入ると,被告
人は,母に嘘をついて父に内緒で30万円を借りたり,高利貸しからも借入れをするよ
うになった。また,被告人は,Bを妊娠させ,同年8月,Bは堕胎したが,その費用を負
担したBに対し,堕胎費用は少しずつ支払うなどと約束していた。
8 被告人は,被害者からの借入金300万円について,毎月7万円を返済すると被害者
に約束していたが,被害者は自分に愛情を持っているのでそれほど強い態度には出
ないだろうと考え,被害者からのたびたびの催促に対しても自分が被害者に愛情を持
っているかのように装って話をはぐらかすなどし,消費者金融や母への返済を優先し
て,被害者に対する返済を大幅に滞らせ,合計85万円を返済するにとどまっていた。
このような被告人の態度に困惑していた被害者は,同年8月22日,被告人に対し,
「このままの状態が続くなら自分も大変だから明日休みだし家に相談しに行くからよろ
しく!!」とのメールを送信した。これを見た被告人は,被害者が被告人の自宅を訪
問すれば,借金のことが父に知られてしまうなどと焦り,被害者に対し,「まだ,今月終
わってないよね。今週振り込みするよ!ヨロシク。」などとメールを返信して取り繕っ
た。しかし,被告人は,翌8月23日,再び被害者から「様子見て家行くからね。必ず払
いなさいよ。」とのメールを受け,このままでは父に借金のことが知られてしまうなどと
危機感を募らせた。
9 被告人は,借金のことを父に知られるのだけは何としてでも避けなければならないな
どと考え,被害者からの借入金については借用証なども作成しておらず,また,被害
者は他に口外していないはずなので,被害者を殺害すれば,口封じができ,被害者か
らの借金も免れることができるなどと思い至り,被害者の殺害を決意した。さらに,被
告人は,被害者が普段からスナックの売上金などを入れて持ち歩いている手提げバ
ッグを奪えば,今後の消費者金融等への返済や,Bと不倫関係を続けるためのホテ
ル代,Bに支払う堕胎費用,遊興費などの足しにでき,また,被害者とのメールのやり
とりが記録された被害者の携帯電話を持ち去れば,自分が犯人であると発覚すること
もないだろうと考え,被害者を殺害した機会に,被害者の手提げバッグや携帯電話を
奪うことも決意した。
10 被告人は,閉店後のスナック店内で被害者と2人きりで会い,そこで被害者の頭部
を金づちで殴って気絶させてから首を絞めて殺害することを計画した。そこで,被告人
は,同年8月25日,被害者に対し,「明日,後片付け(店の)終わったらメール貰いた
いのですがいいかな?現金手渡ししたいので,久々二人っきりで顔も見たいので!ち
なみに大金なんで・・ヨロシクです。明日終わったらメール待ってます!」などと,あた
かも被害者に返済する資金の手当てが付いたかのように装ってメールを送信した。被
害者から直ちに返信がなかったことから,被告人はさらに被害者に対し,「昨夜の返
信無いんで・・シカトですか?」などとメールを送り,急に返済金の手当が付いた旨の
被告人の言葉をいぶかる被害者に対し,「乗用車売ったんで。ランク下げたんです。」
などと,さらに嘘の内容のメールを送信して,同年8月26日夜から翌27日にかけて
のスナックの営業時間終了後,同店内で被害者と2人きりで会う約束を取り付けた。
また,被告人は,深夜に自宅から自己の車両を運転して外出すれば,父にとがめら
れるおそれがあると考え,スナックに向かう際の足にするため,同年8月26日,近所
に住む知人から車を使用することの了解を得た。
11 被告人は,同年8月27日午前零時前ころ,家族に気づかれないようひそかに自宅
を出ると,被害者の頭を殴るための金づちを自宅敷地内の倉庫から持ち出して携行
し,知人方から,あらかじめ使用の了解を得ていた車を運転してスナックに向かった。
被告人は,同日午前零時過ぎころ,スナックが入店しているcビル近くの駐車場に到
着し,そこに車を停めて,被害者からスナックの営業が終了した旨の連絡が来るのを
待った。被告人は,同日午前1時44分ころ,被害者から,最後の客を送り,スナックに
戻った旨の電話連絡を受け,用意していた金づちをズボンの内側に隠し持ってスナッ
クに向かった。
12 被告人は裏口からスナックの店内に入ると,閉店後の店内で1人で待っていた被害
者が被告人を迎えた。被告人は,被害者とともに,スナック店内のトイレ前にあるボッ
クス席に座り,被害者が出したウーロン茶を飲んだりタバコを吸ったりしながら,被害
者と会話して被害者殺害の機会をうかがった。被告人は,スナックに入る際,スナック
の入った建物の北側駐車場に,スナックの隣店のママの車が停めてあるのを見てい
たことから,ママがまだ店内に残っていれば,被害者殺害を気づかれてしまうのでは
ないかと危惧し,なかなか被害者殺害を実行に移せずにいたが,意を決して,トイレ
に行くふりをして席を立ち,被害者に気づかれないようにしてズボンの内側に隠し持っ
ていた金づちを取り出した。
(罪となるべき事実)
 被告人は,上記の経緯により,被害者(当時42歳)を殺害して同女に対する残額215
万円の借入債務の返済を免れるとともに金品を強取しようと決意し,平成16年8月27
日午前2時30分ころ,宮城県柴田郡b町(以下略)cビル1階所在のスナック店内におい
て,ボックス席に座っていた同女の背後から,その頭部を所携の金づちで力一杯殴りつ
け,声を上げて中腰に立ち上がって被告人の方を振り向いた同女の頭部をさらに上記
金づちで数回殴打した上,仰向けに倒れかかった同女をボックス席の角付近に追いつ
め,ボックス席角付近の座席に上半身を乗せて仰向けの状態になった被害者に馬乗り
になり,その頚部を両手で力一杯締め付け,よって,そのころ,同所において,同女を頚
部圧迫により窒息死させて殺害した上,上記債務の弁済を免れて財産上不法の利益を
得るとともに,同女の所有又は管理に係る現金合計約6万6515円入りの財布2個及び
携帯電話機1台ほか191点在中の手提げバッグ1個(時価合計15万7000円相当)を
強取した。
(法令の適用 省略)
(量刑の理由)
1 本件は,被害者から借金をしていた被告人が,被害者を殺害してその返済を免れる
とともに金品を強取しようと企て,被害者の頭を金づちで殴り,首を絞めるなどして殺
害した上,被害者に対する借金の返済を免れて財産上不法の利益を得るとともに,
被害者から金品を強取したという強盗殺人の事案である。
2 被告人は,自己の消費者金融からの借入金を解消するため,被害者から,その好意
により無利息で合計300万円を借りたにもかかわらず,被害者は自分に愛情を持っ
ているのでそれほど強い態度には出ないだろうとたかをくくり,被害者からの度々の
督促に対しても,不誠実な対応に終始して返済を滞らせ,困惑した被害者から,親に
相談に行くと言われるや,借金の事実を父に知られることだけは何としても避けなけ
ればならないなどと考えて,被害者を殺害して口封じをし,借金を免れるとともに,今
後の消費者金融等への返済や遊興費等の足しにするため被害者殺害の機会に被害
者から金品を奪うことを決意したもので,極めて身勝手かつ短絡的な本件犯行の動
機に酌量の余地はない。被告人は,複数の女性と不倫関係を結んで,相手の女性を
何度も妊娠させるなどし,堕胎費用等の支払いに充てるために消費者金融から借金
をしたところ,案外簡単に金を借りられることに味をしめ,不倫女性と肉体関係を持つ
ためのホテル代,遊興費,他の消費者金融への返済等に充てるため,次々と消費者
金融からの借入れを重ねたもので,被告人の消費者金融に対する借金が膨らんだ経
緯を見ても,結局のところ,被告人自身の放縦な女性関係,自堕落で勝手気ままな生
活態度の結果というほかはなく,酌むべき点は皆無である。
  被告人は,被害者の経営するスナックで閉店後に被害者を殺害することを計画し,
借金返済の資金が用意できたかのように装って,被害者と閉店後のスナックで2人き
りで会う約束を取り付けた上,犯行現場に赴くための車両や被害者を殴るための金づ
ちを事前に準備するなどして本件犯行現場に赴き,トイレに立つふりをして,被害者
の背後から,その頭部を突然金づちで力一杯殴りつけ,被害者が気絶せず,声を上
げて中腰に立ち上がり,被告人の方を振り向くと,さらに金づちで被害者の頭部を数
回殴りつけ,仰向けに倒れかかった被害者に馬乗りになってその首を両手で力一杯
締め付け,被害者が失禁する音が聞こえても手を緩めることなく,被害者が全く動か
なくなってもしばらく首を締め続けて被害者を殺害したもので,その犯行態様は,計画
的で強固な犯意に基づく執拗で残虐極まりない凶行である。
  本件犯行の結果は,強盗の被害相当額としても230万円余りの多額である上,何も
のにも代え難い人の命を一方的に奪った点で重大であることは言うまでもない。被害
者は被告人に好意を寄せ,消費者金融に対する借入金の返済のために,資金の援
助までしてくれたのに,突然,被告人から頭部を金づちで殴打されて首を絞められる
といった強度の暴行を受け,その生涯を閉ざされたもので,死に至るまでの短時間に
受けた肉体的,精神的苦痛は想像を絶するものがある。不幸にして離婚後は昼夜を
問わず稼働し,いわば女手ひとつで育て上げてきた愛する二児の成長を見届けるこ
となく,この世を去ることを余儀なくされた被害者の無念は計り知れない。また,心の
支えであり,生活の支えであった被害者を突然失った長男及び長女や,我が子に先
立たれた被害者の母親をはじめ,残された遺族の悲嘆,憤慨の情は察するに余りあ
り,遺族が被告人に対する峻烈な処罰感情を有しているのも至極当然である。
  被告人は,被害者を殺害した後,被害者と会った痕跡を消すために,使ったグラスや
灰皿を片付けて被害者が店内に一人でいたかのように仮装したり,店内の指紋を拭
き取ったり,死体を運び出して処分しようと試みるなどし,さらに,警察の捜査をかく乱
するため,被害者から奪った携帯電話機に記録されていた通話先の1つに無言電話
をかけた上でその携帯電話機を投棄するなどの手の込んだ罪証隠滅工作を行ってお
り,その犯情はいっそう重いものがある。以上の事情を総合すれば,被告人の刑事責
任は極めて重い。
3 そうすると,被告人の両親が,被害弁償の一部として,これまで1300万円余りを遺
族に支払っていること,被告人が逮捕後間もなく事実を認め,不十分な表現ながら
も,被害者の長女及び長男に謝罪の手紙を書き,公判廷においても毎日被害者の冥
福を祈っているなどと述べ,被告人なりに反省を深めていることがうかがわれること,
被告人の前科は罰金前科のみで,身柄拘束と正式裁判を受けるのは今回が初めて
であることなど,被告人のために有利に斟酌すべき事情を考慮しても,主文の刑に処
するのが相当である。
  よって,主文のとおり判決する。
(求刑 無期懲役)
   平成17年3月1日
     仙台地方裁判所第1刑事部
             裁判長裁判官   佐々木 直人
 
裁判官   中丸  隆
裁判官   大木 美結己

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