弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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     主    文
   原判決を破棄する。
   被告人を懲役2月に処する。
     理    由
 本件控訴の趣意は,検察官中川善雄作成の控訴趣意書に,これに対する答弁は,
弁護人後藤貞人及び大政正一共同作成の答弁書にそれぞれ記載されたとおりである
から,これらを引用する。
 論旨は,被告人を懲役3月,保護観察付き執行猶予5年に処した原判決の量刑
は,刑の執行を再度猶予した点において,著しく軽きに失し不当である,というの
である。
 そこで記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも併せて検討する。
 本件は,被告人が,平成12年5月20日午後9時5分ころ,兵庫県宝塚市内の
路上において,酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.25ミリグラムのアルコー
ルを身体に保有する状態で,普通乗用自動車を運転した,という事案である。
 被告人は,平成8年9月及び平成10年12月に,いずれも酒気帯び運転の罪で
罰金刑に処された前科を有し,さらに,平成11年7月には,同罪により懲役3月
に処されて,その刑の執行を2年間猶予されたにもかかわらず,その猶予期間中に
同種の本件犯行に及んだものである。被告人は,本件当日午後8時半ころ,ゴルフ
場内にある自分が経営するレストランの片づけも終わりホッとしたので,冷えたビ
ールが飲みたくなって,店内で中ジョッキの生ビールを飲んだが,このまま運転す
れば酒気帯び運転になることは今までの経験からわかっていたのに,翌日も早朝出
勤で車が要ることや,自宅まで車で15分位で,検問に遭わなければいいだろうと
安易に考えて,飲酒後すぐに車を運転して帰宅の途につき,約4.3キロメートル
走行した原判示場所で,警察官の検問により本件が発覚したというのであって,被
告人が本件酒気帯び運転をするに至った経緯に緊急性や必要性は認められず,犯行
の動機に酌むべき点は全く見出せない。また,現実に走行したのは約4.3キロメ
ートルであるが,レストランから被告人の自宅までは約8.5ないし8.9キロメ
ートルあり,被告人が飲酒運転により走行を予定していた距離は決して短くはな
い。以上に照らすと,被告人の法軽視の態度は許されず,刑責を軽視することがで
きない。
 そうすると,被告人のアルコール保有量が呼気1リットルにつき0.25ミリグ
ラムにとどまっていること,及び原判決が(量刑事情)の項で摘示しているような
被告人の反省の態度や再犯を防ぐための決意の状況,家族の監督態勢,被告人が実
刑になると,レストランの経営や家族の生活に多大の影響を及ぼすおそれがあるこ
となどの被告人のために酌むべき事情を十分に考慮し,さらに,現時点において
は,前刑の執行猶予期間が経過していることに配慮しても,被告人に対しては実刑
をもって臨み,厳しく刑責を問う必要があるものというべきであって,原判決の量
刑は,被告人に対し刑の執行を猶予した点において軽きに失し不当である。
 論旨は理由がある。
 よって,刑訴法397条1項,381条により原判決を破棄し,同法400条た
だし書に従い,被告事件についてさらに判決する。
 原判決が認定した(罪となるべき事実)に,道路交通法119条1項7号の2,
65条1項,同法施行令44条の3を適用し,所定刑中懲役刑を選択し,その所定
刑期の範囲内で被告人を懲役2月に処することとして,主文のとおり判決する。
(第5刑事部 裁判長裁判官 那須 彰 裁判官 樋口裕晃 裁判官 河原俊也)

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