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平成21年2月26日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成19年(ワ)第1479号特許を受ける権利等譲渡代金請求事件
口頭弁論終結の日平成20年3月25日
判決
原告セプロ株式会社
訴訟代理人弁護士安倉孝弘
被告JFEスチール株式会社
訴訟代理人弁護士森本紘章
同佐藤史肇
同西尾亮平
被告JFE物流株式会社
訴訟代理人弁護士大藤潔夫
同太田尚成
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告らは,原告に対し,各自3億円及びこれらに対する平成19年2月23日
から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,①後記特許に係る発明の発明者は,同発明についての特許を受ける権
利をその使用者たる会社に譲渡し,同会社は,上記特許を受ける権利を更に原告
に譲渡したこと,②後記実用新案登録に係る考案の考案者である原告代表者は,
同考案についての実用新案登録を受ける権利を原告に譲渡したことを前提とし,
原告が,被告らに対し,上記特許を受ける権利及び上記実用新案登録を受ける権
利の各持分25パーセントをそれぞれ譲渡したとして,その各持分の譲渡代金の
支払(各被告に対しそれぞれ13億8750万円のうちの3億円を請求。遅延損
害金は各被告に対しいずれも訴状送達の日の翌日である平成19年2月23日か
ら支払済みまで商事法定利率年6分の割合による。)を求めた事案である。
第3前提となる事実(次の事実は,当事者間に争いがないか,末尾記載の証拠等に
より認められる。)
1当事者等
(1)原告
原告は,旧商号が平井電機株式会社であり,平成6年4月1日,現在の商号
に商号変更した株式会社である。
(2)被告JFEスチール株式会社(以下「被告スチール」という。)
被告スチールは,旧商号が川崎製鉄株式会社であり,平成15年4月1日,
現在の商号に商号変更した株式会社である。
(3)被告JFE物流株式会社(以下「被告物流」という。)
被告物流は,旧商号エヌケーケー物流株式会社が,平成16年4月1日,川
鉄物流株式会社(平成6年7月1日の商号変更前の旧商号は川鉄運輸株式会
社)を吸収合併すると同時に,現在の商号に商号変更した株式会社である。被
告物流は,被告スチールの関連会社である。
(4)JFE電制株式会社(以下「JFE電制」という。)
JFE電制は,旧商号が川鉄電気設備工事株式会社であり,昭和62年1月
1日,川鉄電設株式会社に商号変更し,平成16年4月1日,現在の商号に商
号変更した株式会社である(甲4の1・2)。
2本件装置
(1)被告スチールは,その西日本製鉄所倉敷(旧川崎製鉄株式会社水島製鉄所。
以下「本製鉄所」という。)において,溶融状態の銑鉄を高炉出銑口で積み込
み,所要の場所まで運搬するための貨車(それ自体は駆動力を備えていないも
ので,「台車」「TC車」「トピードカー」ともいう)及びこれを牽引するデ
ィーゼル機関車(「動力車」「DHL車」ともいう。)を使用し,溶銑運搬の
作業を行っている。
(2)前記の機関車と貨車には,昭和61年3月から,「混銑車自動停留ブレー
キ及び連結解放装置」ないし「トレックス−PB装置(TrainRemoteElectric
wavecontrolSystemParkingBrake/列車遠隔電磁波制御方式停留制動装置)」
(以下「本件装置」という。)が採用されている。本件装置は,無線遠隔指令
によって任意の貨車のブレーキの緊締・緩解及び機関車と貨車,貨車相互の連
結・解放を行うとともに,貨車の突放(逸走)等の緊急時にブレーキが自動的
に作動するシステムである。
3特許及び実用新案登録
(1)特許(甲110の1ないし8。以下,この特許を「本件特許」,その特許
発明を「本件発明」という。)
発明の名称車両の連結並びに解放方法及び装置
出願日昭和61年8月4日(特願昭61−183235)
登録日平成5年11月26日
特許番号特許第1804586号
特許請求の範囲別紙特許公報記載のとおり
抹消登録日平成18年10月11日
発明者P1,P2,P3,P4
出願人兼特許権者被告スチール,被告物流,JFE電制,原告
(2)実用新案登録(甲111の1ないし6。以下,この実用新案登録を「本件
実用新案登録」,その考案を「本件考案」という。)
考案の名称低速車両の自己発電による電気制御装置
出願日昭和61年11月12日(実願昭61−174285)
登録日平成6年10月21日
実用新案登録番号実用新案登録第2036129号
実用新案登録請求別紙実用新案公報記載のとおり
の範囲
抹消登録日平成14年1月16日
考案者P1,P2,P3,P4
出願人兼
実用新案権者被告スチール,被告物流,JFE電制,原告
4本件訴訟の提起
原告は,平成19年2月13日,本件訴訟を提起した。
5時効の援用
被告らは,原告に対し,平成19年9月3日の本件弁論準備手続の期日におい
て,本件発明に係る特許を受ける権利(以下「本件特許を受ける権利」とい
う。)及び本件考案に係る実用新案登録を受ける権利(以下「本件実用新案登録
を受ける権利」という。)の各譲渡代金債権につき,消滅時効を援用するとの意
思表示をした。
第4争点
1譲渡代金の発生の有無
(1)本件発明の発明者及び特許を受ける権利の譲渡の有無
(2)本件考案の考案者及び実用新案登録を受ける権利の譲渡の有無
2消滅時効の成否
3譲渡代金相当額
第5争点に対する当事者の主張
1譲渡代金の発生の有無(前記第4の1の争点)
(1)原告の主張
ア本件発明の発明者及び特許を受ける権利の譲渡の有無(前記第4の1(1)
の争点)
(ア)湯浅通信機工業株式会社(以下「湯浅通信機」という。)の従業員で
あったP5及びP6は,昭和60年1月ころから昭和61年3月ころまで
に,湯浅通信機における自己の職務として,本件装置のハード部分(ただ
し,電気制御装置に関する部分は除く)に関する発明(本件発明)をして,
本件特許を受ける権利を取得した。
(イ)P5及びP6は,本件特許を受ける権利を湯浅通信機に譲渡した。
(ウ)湯浅通信機は,原告に対し,遅くとも昭和61年3月3日までに,本
件特許を受ける権利を譲渡した。
(エ)原告は,被告ら及びJEF電制に対し,遅くとも昭和61年8月4日
までに,本件特許を受ける権利の持分のうち各25パーセントをそれぞれ
黙示の合意により譲渡した(以下「本件譲渡1」という。)。同譲渡に際
しては報酬ないし対価に関する定めはなかったが,商法512条により商
人間の契約として有償であるから,譲渡人である原告は,譲受人である被
告らに対し,相当額の譲渡代金を請求することができる(以下「本件譲渡
代金1」といい,その債権を「本件譲渡代金債権1」という。)。本件譲
渡代金1の支払時期の定めはなかった。
イ本件考案の考案者及び実用新案登録を受ける権利の譲渡の有無(前記第4
の1(2)の争点)
(ア)原告代表者P4は,原告における自己の職務として,昭和60年1月
ころから昭和61年3月ころまでに,本件装置のうち電気制御装置に関す
る部分についての考案(本件考案)をして,本件実用新案登録を受ける権
利を取得した。
(イ)P4は,遅くとも昭和61年5月31日までに,本件実用新案登録を
受ける権利を原告に譲渡した。
(ウ)原告は,被告ら及びJEF電制に対し,遅くとも昭和61年11月1
2日までに,本件実用新案登録を受ける権利の持分のうち各25パーセン
トをそれぞれ黙示の合意により譲渡した(以下「本件譲渡2」といい,本
件譲渡1と併せてそれぞれの譲渡を「本件各譲渡」という。)。同譲渡に
際しては報酬ないし対価に関する定めはなかったが,商法512条により
商人間の契約として有償であるから,譲渡人である原告は,譲受人である
被告らに対し,相当額の対価を請求することができる(以下「本件譲渡代
金2」といい,その債権を「本件譲渡代金債権2」という。また,本件譲
渡代金1及び同2を併せて「本件譲渡代金」といい,本件譲渡代金債権1
及び同2を併せて「本件譲渡代金債権」という。)。本件譲渡代金2の支
払時期の定めはなかった。
(2)被告スチールの主張
否認する。被告スチールは,昭和59年12月ころ,被告物流に対し,本件
装置の開発を依頼し,被告物流は,本件装置の電気制御エンジニアリング部門
の開発をJFE電制に依頼し,JFE電制は,原告に対し,本件装置の全体設
計・製作・配線工事を依頼し,こうして本件装置は,被告ら,JFE電制,原
告が共同開発したものであり,本件発明及び本件考案も上記4社により共同で
行われた。
仮に,本件各譲渡につき,有償譲渡契約が締結されていたとすれば,その本
質的要件である目的物の具体的対価ないしその算定方法を契約締結時に定めな
ければならないところ,被告スチールは,被告スチールにとって著しく不利・
不合理な算定方法というべき原告が主張する対価の算定方法(本件装置導入に
より被告スチールが得られる利益を基準として対価とするもの)について,明
示の意思表示はしていないし,黙示にもすることは絶対にない。
原告は,商法512条を根拠に,本件譲渡代金につき相当額を請求できると
主張するが,商法512条は,民法上の無償契約の特則であり,適用の前提と
して当該契約が無償契約であることを要するところ,原告の主張によれば,本
件各譲渡は有償契約なので,商法512条の適用はない。
(3)被告物流の主張
否認ないし争う。電磁コイル信号伝送装置のアイディアが湯浅通信機によっ
て発案されたことは認めるが,本件装置の開発自体は,被告らの指示,指導の
もと,共同開発体制下で共同開発されたのであり,本件特許を受ける権利及び
本件実用新案登録を受ける権利も,被告ら,JFE電制,原告(本件特許を受
ける権利については湯浅通信機を含む。)が共同で取得した。なお,湯浅通信
機にあっては,本件装置の開発,設計には,もっぱらP7,P5,P8の3名
が携わり,P6は実験機の製作段階である昭和60年3月以降に関与した。
2消滅時効の成否(前記第4の2の争点)
(1)被告スチールの主張
ア消滅時効の完成
原告の主張によれば,本件特許を受ける権利の譲渡は昭和61年8月4日,
本件実用新案登録を受ける権利の譲渡は昭和61年11月12日に行われ,
いずれも弁済期の定めはなかったのであるから,各譲渡日から本件譲渡代金
債権1及び2の権利行使は可能である。したがって,本件譲渡代金債権1及
び2は,いずれも各譲渡日から5年の経過により時効消滅している。
イ原告の時効未完成の主張について
消滅時効は,権利を行使することができる時から進行するところ(民法1
66条1項),権利を行使することができる時とは,権利を行使するのに法
律上の障害がなくなった時をいうのであり,権利者の一身上の都合で権利を
行使できないことや権利行使に事実上の障害があることは何ら影響しない。
原告は,平成16年12月21日まで,被告らと後記の本件プログラムの使
用料の清算に関する協議・交渉を行っていたから,本件譲渡代金債権の権利
行使に障害があり,時効は進行しないと主張するが,本件譲渡代金債権は,
後記の本件プログラムの使用料とは別個の債権であり,その行使に法律上の
障害はなかった。
ウ原告の信義則違反の主張は争う。
(2)被告物流の主張
ア消滅時効の完成
原告の主張によれば,本件譲渡代金債権1及び2の支払時期の定めはなか
ったのであるから,本件譲渡代金債権の支払時期は,譲渡日が遅い方である
本件実用新案登録を受ける権利の譲渡日である昭和61年11月12日とな
り,これから5年(商事債権)を経過した平成3年11月12日に本件譲渡
代金債権は時効により消滅した。
イ原告の時効未完成の主張について
時効は,権利を行使することができる時から進行するところ,権利を行使
することができるとは,権利行使について法律上の障害がない状態をいう。
原告が主張する諸事情は,法律上の障害にはあたらない。
ウ原告の信義則違反の主張について
原告は,被告らの消滅時効の主張は,著しく信義則に違反すると主張する
が,原告が主張する諸事情は,本件譲渡代金債権の行使により,利益をもた
らしている被告らとの商取引が円滑に運ばなくなることをおそれたことに尽
きるのであり,利益をもたらしている商取引をとるか,本件譲渡代金債権を
行使するかの選択において,原告は,企業者の自由意思をもって前者を選択
したのであるから,原告が選択しなかった他方の結果につき,被告らが消滅
時効を主張したからといって,信義則違反となるものではない。
(3)原告の主張
ア時効の未完成
(ア)被告物流は,昭和43年9月から平成10年ころまで,約定に基づき,
被告物流が保有する車両の電装品に関するメンテナンス業務をすべて原告
(昭和43年当時は原告代表者の個人営業)に発注し,発注業務の範囲を
拡大したり,被告物流の下請業者からの発注をあっせんするなどし,原告
もこれに応じてきた。
(イ)原告は,本件装置の開発・製作を受注し,昭和60年8月27日,被
告らとの間で,本件装置用のコンピュータープログラムの使用料(以下
「本件プログラムの使用料」という。)の清算について,支払に替えて5
項目(本件装置完成後のメンテナンスにつき,原告が被告スチールと外注
契約を締結した上,被告物流の下請として常駐体制でメンテナンスを行う
こと等)の代替措置をする合意をし(以下「本件5項目合意」という。),
その代替措置が不履行にならない限り,被告らに対して,上記使用料を請
求できない約定があった。
(ウ)本件5項目合意は,平成8年ころから徐々に十分に履行されない状態
となり,原告は,本件5項目合意の対象である発注額の増額を申し入れた
が,平成10年ころにほぼ不履行になった。
(エ)原告は,平成13年4月から平成16年12月21日まで,被告らと
の間で,本件装置の更新に関する協議をしたが,原告が,本件プログラム
の使用料の清算を協議対象としたこともあり,被告物流から,被告ら及び
その関連会社と原告との取引を打ち切る旨通告されたため,原告は,協議
による解決を断念し,平成17年3月22日,本件プログラムの使用料の
支払等を求める訴えを提起した。
(オ)被告物流は,その優越的な地位を利用し,原告との取引の全期間を通
じて,しばしば無理難題と思える要求を押しつけ,原告が異議を述べたり,
要求をすると,取引関係の打ち切りを示唆することが多かったが,原告は,
被告物流との取引関係を打ち切られると,経営が破綻するおそれがあった
ため,異議や要求を差し控えざるを得なかった。
(カ)以上の経緯ないし事情に照らすと,原告が被告らに対し明示の支払約
束のない本件譲渡代金債権を行使することは,少なくとも平成16年12
月21日までは,取引社会の通念上不可能又は著しく困難であった。よっ
て,原告は,平成16年12月21日までは,本件譲渡代金債権の行使に
障害があったので,同日まで時効は進行しない。
(キ)被告らは,上記の経緯ないし事情は法律上の障害にはあたらないと主
張するが,事実上の障害であっても,その障害が重大で,権利行使が取引
社会の通念上著しく困難であり,権利の上に眠れる者などと評価すること
が酷であると認められるときは,その事実上の障害は法律上の障害と同視
されるべきであり,その事実上の障害が存在しなくなったときに初めて時
効が進行すると解するべきである。上記の経緯ないし事情は,法律上の障
害と同視すべき事実上の障害ということができる。
イ信義則違反
上記の経緯ないし事情に照らせば,被告らの消滅時効に関する主張は,著
しく信義則に反し,許されない。
3譲渡代金相当額(前記第4の3の争点)
(1)原告の主張
ア従来方式による装置と対比した本件装置の利点は次のとおりである。
①作業効率の上昇に伴う溶銑温度低下の抑止によるエネルギーの節約
②自動化による作業員の大幅削減
③モーターカー(MC車)の廃止によるその新規購入費用及びメンテ
ナンス費用の削減
④脱硫センターの廃止による設備費用及び監視要員の削減等
⑤各貨車の無線機器の廃止による設備費用及びメンテナンス費用の削

⑥安全性の向上による監視要員の削減
イ本件装置の導入に伴う上記利点を金銭に換算すれば,控えめにみても1か
月当たり1億円,年額12億円を下回ることはなく,このうち本件発明及び
本件考案の寄与にかかる部分は,その50パーセントに相当する年額6億円
をくだらない。また,本件発明及び本件考案の寄与の割合は,本件発明が7
0パーセント,本件考案が30パーセントである。
ウこれを前提とすると,本件特許を受ける権利は84億円(6億円×70%
×20年),本件実用新案登録を受ける権利は27億円(6億円×30%×
15年),合計111億円と評価すべきところ,本件発明及び本件考案の実
施に当たる本件装置が被告スチールに納入され,その製作代金が既に決済さ
れていること等から,本件譲渡代金1及び2の合計額は,その50パーセン
トである55億5000万円が相当である。
エよって,原告が各被告に対して請求できる本件譲渡代金は,55億500
0万円の25パーセントに当たる13億8750万円であり,原告は,うち
各3億円を本件訴訟において請求する。
(2)被告スチールの主張
否認ないし争う。本件装置が溶銑運搬作業の効率と安全性の向上に寄与する
ことは否定しないが,それらを飛躍的に高めたわけではない。
特許権,実用新案権の有償譲渡の対価は,当該権利の法的独占に由来する独
占的実施の利益あるいは第三者に対する実施許諾による実施料収入等の利益に
より決せられるべきである。本件では,同様の目的を達しうる本件装置が先行
して開発されているので,当該権利を独占できる利益はなく,また,本件装置
について,開発以来,他社への実施権設定契約も販売実績もない。被告スチー
ルは,本件装置そのものを有償で購入しているので,当該権利を被告スチール
で実施することによる利益を考慮する必要はない。
(3)被告物流の主張
否認ないし争う。本製鉄所において溶銑運搬作業の効率が従来より高まった
のは,同作業について総合的な合理化対策を実施したからであり,本件装置そ
のものの寄与は極めて小さい。実際,原告と被告物流は,平成6年8月ころ,
韓国の浦項製鉄所に本件装置の売り込みを図ったが,成功しなかったし,本製
鉄所において本件装置を導入して20年を経過した現在でも,本件装置を使用
しているのは本製鉄所のみであり,我が国の他の製鉄所では,それぞれ独自の
方式で溶銑運搬をしている。原告が挙げる利点のうち①のみがわずかながらあ
ることは認めるが,その余は否認する。
第6当裁判所の判断
1消滅時効の成否(前記第4の2の争点)について
(1)消滅時効は,権利を行使することができる時から進行するところ(民法1
66条1項),権利を行使することができる時とは,法律上の障害がなくなっ
たときをいうと解される。
(2)本件においては,原告の主張によれば,本件各譲渡に際して,本件譲渡代
金債権の弁済期の定めはなかったというのであるから,原告は,本件各譲渡時
から本件譲渡代金債権を行使することができたというべきであり,本件譲渡代
金債権の消滅時効は,本件各譲渡のときから進行する。原告の主張によれば,
本件譲渡1は遅くとも昭和61年8月4日,本件譲渡2は遅くとも昭和61年
11月12日に行われたというのであるから,本件譲渡代金債権は,本件各譲
渡の日から5年の経過により時効消滅したものである。そして,前記第3の前
提となる事実のとおり,被告らはその消滅時効を援用したので,原告の被告ら
に対する本件譲渡代金の請求はいずれも理由がない。
(3)この点,原告は,原告と被告らとの優劣関係・取引関係,従前の交渉経緯
等からすれば,本件譲渡代金債権の行使は,平成16年12月21日までは取
引社会の通念上不可能又は著しく困難であったから,時効は進行しないと主張
する。
しかし,原告が主張する事情ないし経緯は,本件譲渡代金債権を行使するこ
とについての事実上の障害にすぎず,法律上の障害ではないから,この点に関
する原告の主張は失当である。
(4)また,原告は,原告と被告らとの優劣関係・取引関係,従前の交渉経緯等
からすれば,被告らの消滅時効に関する主張は,著しく信義則に反し,許され
ないと主張する。
しかし,原告の指摘する事情ないし経緯をもって,消滅時効を援用すること
が社会的に許容された範囲を逸脱し,又は信義則上許されない行動を取ったと
評価することはできないから,被告らが消滅時効の主張ないし援用をすること
が著しく信義則に違反するということはできない。
2結論
よって,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のと
おり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官山田知司
裁判官村上誠子
裁判官高松宏之は,転補のため署名押印できない。
裁判長裁判官山田知司

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