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平成27年10月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成27年(ネ)第10097号差止請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成26年(ワ)第23512号)
口頭弁論終結日平成27年9月1日
判決
控訴人株式会社チャフローズ・コー
ポレーション
被控訴人楽天株式会社
同訴訟代理人弁護士高橋雄一郎
同弁理士望月尚子
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,原判決別紙差止対象製品目録記載の各製品の製造,販売及び輸
出をしてはならない。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
4この判決は,仮に執行することができる。
第2事案の概要
1訴訟の概要
(略称は,特に断らない限り,原判決の略称に従う。)
⑴本件は,控訴人において,被控訴人が原判決別紙差止対象製品目録(以下「差
止目録」という。)記載の各製品(被告製品)を製造,販売,輸出して控訴人の特
許権(本件特許権)を侵害している旨主張し,被控訴人に対し,特許法100条1
項に基づき,上記製造,販売,輸出の差止めを求めた事案である。
⑵原判決は,被告製品が本件特許権の請求項1に係る発明(本件発明)の技術
的範囲に属すると認めることはできないとして,控訴人の請求を棄却した。
控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。
2前提事実
原判決2頁17行目「生ずる。」を,「生ずる(甲53,甲54,甲56)。」と改
めるほかは,原判決の事実及び理由第2の1記載のとおりである。
3争点
⑴被控訴人による被告製品の製造,販売,輸出の事実の有無
⑵被告製品に係る本件発明の技術的範囲への属否
第3当事者の主張
1争点⑴(被控訴人による被告製品の製造,販売,輸出の事実の有無)につい

〔控訴人の主張〕
被控訴人は,その運営するインターネット上のショッピングモールに被告製品を
陳列しており,これは,被控訴人による譲渡等のための展示に当たる。
被控訴人が運営するインターネット上のショッピングモールには,販売者の名前
はなく,一見して被控訴人が売主又はそれに準ずる立場にあるかのような外観を備
えている。利用者は,被控訴人の名声と信用力を信頼して取引をしているのが現状
であり,これにより,被控訴人は直接及び間接の利益を得ている。被控訴人は,イ
ンターネット上のショッピングモールに展示された商品が法に触れる場合には直ち
に調査し,違反している場合には撤去すべきである。
以上によれば,被控訴人は,共同不法行為責任又は注意義務違反に基づく責任を
負う。また,被控訴人は,外観法理により責任を負う(商法14条)。
〔被控訴人の主張〕
争う。被控訴人は,インターネット上のショッピングモールにおいて取引の場と
してのシステムないしソフトウェアを提供しているのであって,商品の販売主体は
出店者である。
2争点⑵(被告製品に係る本件発明の技術的範囲への属否)について
〔控訴人の主張〕
⑴本件発明の技術的範囲
ア方解石型構造による結晶構造体を備えた二枚貝の貝殻を原料とする洗浄剤は,
全て本件発明の技術的範囲に属する。
イ本件特許の特許請求の範囲にいう「炭酸カルシウム粉末」は,ホタテ貝殻を
原材料としていれば足り,方解石型構造による結晶構造体を備えている必要はない。
ウまた,ホタテ貝殻を粉砕した粉末それ自体のみならず,これを焼成する,水
を加えるなどの化学反応を経たものを含む。
エ本件発明の技術的範囲に属するというためには,炭酸カルシウムと酸化カル
シウムが含まれていれば足り,その分量又は割合は技術的範囲の属否に関わりがな
い。
⑵被告製品の構成
ア被告製品は,ホタテの貝殻を使用した製品であり,その主成分は,炭酸カル
シウム及び酸化カルシウムである。
すなわち,未焼成のホタテの貝殻は炭酸カルシウムから構成されているところ,
焼成温度500℃までは炭酸カルシウムの単一相であるが,600℃から少量の酸
化カルシウムが現れ,700℃では酸化カルシウムが多くなるが,主な結晶相は依
然として炭酸カルシウムである。800℃では酸化カルシウムが主な結晶相となり,
炭酸カルシウムは少量残る程度である。900℃,1000℃では,完全に分解し
て酸化カルシウムの単一相となる。しかし,酸化カルシウムは,空気に触れると大
気中の二酸化炭素を吸収し,結合するため,不定量ではあるが少量の炭酸カルシウ
ムを生成する。
以上によれば,焼成したホタテの貝殻は,炭酸カルシウム及び酸化カルシウムを
含有するものといえ,この点に鑑みると,被告製品は,いずれも炭酸カルシウムと
酸化カルシウムが混合したものといえる。
イ被告製品は,いずれも方解石型構造による結晶構造体を備えた二枚貝の貝殻
を焼成して酸化カルシウムを作り,これに水を加えて水酸化カルシウムに変化させ
たものであるところ,本件発明に係る洗浄剤も,使用時には酸化カルシウムを水溶
して水酸化カルシウムにするものであるから,被告製品と,本件発明に係る洗浄剤
とは,使用形態においても同じである。
⑶したがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属する。
⑷仮に被告製品が,炭酸カルシウム及び酸化カルシウムのほかに水酸化カルシ
ウムを含むことから,本件発明を文言上充足しないとしても,本件明細書(【000
8】)の記載によれば,置換を想到することが容易であり,相違に係る部分は本質的
なものではないので,均等の範囲内である。
〔被控訴人の主張〕
争う。控訴人の主張する被告製品の構成の特定は不十分である。また,控訴人の
主張は,実質的には,被告製品が控訴人の製造する製品と異なり品質が不良である
というものであり,特許権侵害をいうものではない。
第4当裁判所の判断
1争点⑴(被控訴人による被告製品の製造,販売,輸出の事実の有無)につい

⑴控訴人は,被控訴人に対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の製造,
販売及び輸出の差止めを請求しているところ,同請求が認められるためには,被控
訴人において被告製品の製造,販売及び輸出をしていること又はそのおそれがある
ことが立証されなければならない。
しかしながら,本件において,控訴人は,被控訴人が被告製品の製造,販売及び
輸出をしていること又はそれらの行為に及ぶおそれがあることについて,何らの立
証をしていない。
なお,証拠(乙ハ1~3)によれば,①被控訴人がインターネット上で運営する
ショッピングモール「楽天市場」は,出店者が,被控訴人との間の契約に基づき,
出店ページを開設するなどして出店者の物品の販売又は役務の提供を行うものであ
ること,②上記物品の売買又は役務の提供は,出店者と上記出店ページを閲覧した
者,すなわち,顧客との間で行われ,出店者は,顧客に対し,取引の当事者は出店
者と顧客であることを明確に表示する旨が上記ショッピングモールの利用規約(乙
ハ1)に明記されていることが認められ,これらの事実によれば,たとえ被告製品
が上記ショッピングモール上に紹介されていたとしても,直ちに被控訴人が自ら当
該被告製品を販売しているということはできない。
⑵控訴人は,被控訴人が共同不法行為責任を負うなどと主張する。それが,出
店者の販売行為を教唆,幇助するものであるという趣旨であるとしても,以下のと
おり,被控訴人に対して特許法100条1項に基づく販売の差止めを請求すること
はできない。
アすなわち,特許法100条1項は,特許権を侵害する者又は侵害するおそれ
がある者(以下「特許権を侵害する者等」という。)に対し,その侵害の停止又は予
防を請求することができる旨を規定しているところ,特許権を侵害する者等とは,
自ら特許発明の実施(同法2条3項)若しくは同法101条所定の行為をした者又
はそのおそれがある者を意味し,特許権侵害の教唆,幇助をした者は,これに含ま
れないと解するのが相当である。
このように解する理由は,以下のとおりである。すなわち,①民法上,不法行為
に基づく差止めは認められておらず,特許法100条1項所定の「侵害の停止又は
予防」としての差止めは,特許権の排他的効力に基づき,特許法により特に定めら
れたものである。②他方,教唆又は幇助による不法行為責任は,自ら他人の権利を
侵害する者ではないにもかかわらず,被害者保護の観点から特に教唆及び幇助を共
同不法行為として損害賠償責任(民法719条2項)を負わせることとしたもので
あり,上記①の特許権の排他的効力に基づく特許法100条1項所定の差止請求権
とは,制度の目的,趣旨において異なる。③教唆又は幇助については,その行為態
様として様々なものがあり,特許権侵害の教唆行為又は幇助行為に対して無制限に
差止めを認めると,差止請求の相手方が無制限に広がり,差止めの範囲が広範にす
ぎるなどの弊害が生じるおそれがあるところ,特許法101条所定の間接侵害の規
定は,上記弊害の点に鑑み,特許権侵害の幇助行為の一部の類型に限り侵害とみな
して差止めの対象としたものと解されるから,それを超えて幇助行為一般及び教唆
行為について差止めを認めることは,同条の趣旨に反するものということができる。
イそして,前記⑴によれば,被控訴人が本件発明を実施したとは認められず,
特許法101条所定の行為をしたとも認められないし,そのおそれもないから,被
控訴人に対する製造,販売及び輸出の差止請求が認められる余地はない。
⑶以上のとおり,控訴人の本件差止請求は,理由がない。
2争点⑵(被告製品に係る本件発明の技術的範囲への属否)について
事案に鑑み,念のため争点⑵についても判断する。
⑴本件発明について
ア特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて
定めなければならず(特許法70条1項),その場合においては,願書に添付した明
細書の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈す
るものとされている(同条2項)。
したがって,本件発明の技術的範囲も,その願書に添付した特許請求の範囲請求
項1の記載に基づいて確定しなければならず,その際,本件明細書の記載を考慮し
て,その用語の意義を解釈する必要がある。
イ本件特許の特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲請求項1には,「炭酸カルシウムの方解石型構造による
結晶構造体を備えた貝殻を粉砕した粉末からなる炭酸カルシウム粉末と該炭酸カル
シウム粉末を焼成してなる酸化カルシウム粉末とが混合されていることを特徴とす
る洗浄剤。」と記載されている。
ウ本件明細書(甲1)の記載
(ア)「発明が解決しようとする課題」において,「本発明者は,不用物として処
分されてきたホタテの貝殻を粉砕し,その粉体が,他の貝の貝殻よりなる粉体に比
べて,化学物質を吸着する効果と細菌に対してその繁殖を抑える効果が極めて高い
ことに着目したものである。そこで,本発明は上記事情に鑑みて,農薬などの化学
物質を取り除き殺菌を行なう洗浄剤をホタテの貝殻から得るようにすることを課題
とし,不用物の有効利用を図ることを目的とする。」(【0003】)との記載がある。
(イ)「発明の実施の形態」において,「洗浄剤を得るに当たっては,まず,少な
くとも貝殻主要部分が炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体としている
貝殻を用いるもので,この貝殻はホタテの貝殻であり,貝殻の大部分をこの結晶構
造体としている点でホタテの貝殻は他の貝殻と異なる。」(【0005】),「上述した
ように洗浄剤を得るに当たってホタテの貝殻を原材料としているが,(中略)集めら
れた貝殻を天日乾燥を行なって乾かし硬化させる。つぎに天日乾燥によって硬化し
た貝殻を粒径約200μmとなるまでに粉砕する。粉砕方法自体は特に限定するも
のではなく,既存の粉砕装置を用いればよい。このようにして炭酸カルシウム粉末
が得られるものもの(判決注:原文ママ)であり,粒体は多孔性粒体となっている。
つぎに上述の多孔質性粒体からなる炭酸カルシウム粉末の一部分を用いてこれをセ
ラミックの壺に入れて約1000℃の温度で数十分から数時間程度の時間で加熱し
て酸化カルシウム粉末を得るようにする。そして,このようにして得られた酸化カ
ルシウム粉末と上記炭酸カルシウム粉末とを混合することで洗浄剤が得られる。」
(【0007】),「上記洗浄剤中,炭酸カルシウム粉末分は上述したようにホタテの
貝殻粉末の独特な多孔質粒体からなるもので,吸着効果が大である。また,酸化カ
ルシウム粉末分はアルカリ性であり,殺菌性を示すものである。よって,この洗浄
剤は,農薬などの化学物質を吸着する効果があり,この洗浄剤と水とを混合してな
る洗浄液に食品素材を浸したり,その洗浄液を流水状態にしてその流水を食品素材
に当てて洗うようにすることで,付着している農薬などの化学物質を取り去ること
ができ,アルカリ性の作用により細菌やカビなどを死滅させるようになる。食品素
材の洗浄ばかりでなく,手洗いや汚れた物品の洗浄においても手や前記物品の表面
に付いていた化学物質や微細な汚染物質を多孔質粒体が吸着し,アルカリ性の作用
にて細菌などを死滅させる。」(【0008】)との記載がある。
(ウ)「発明の効果」として,「以上説明した本発明により,この洗浄剤を,野菜
などの食品素材の洗浄や一般の汚れた物品の洗浄に用いれば,表面に付着していた
化学物質や微細な汚染物質を取り除くようになるとともに,殺菌が行なえるように
なる。」(【0009】)との記載がある。
⑵被告製品について
ア差止目録記載の番号92「スカローうおっしゃあ抗菌消臭スプレー50
0ml」について
(ア)上記製品は,原審における弁論分離前の相被告である株式会社抗菌研究所
(以下「抗菌研究所」という。)が製造,販売する製品であるところ(乙イ1),そ
のパッケージには,「主成分」として「水,貝殻焼成カルシウム(水酸化カルシウム)」
と記載されている(乙イ2)。
前記⑴によれば,本件発明に係る洗浄剤は,炭酸カルシウム粉末及び酸化カルシ
ウム粉末が混合されたものであるところ,上記製品のパッケージにおいて,炭酸カ
ルシウム粉末又は酸化カルシウム粉末の含有を示す記載はない。
(イ)証拠(乙イ5)及び弁論の全趣旨によれば,①上記製品は,「スカローS」
に他の物質を添加,混練又は配合したものであること,②「スカローS」は,ホタ
テの貝殻を電気炉において1000℃の温度で焼成した後に水を加えたものを粉砕
して微粉末化したものであること,③株式会社クレハ分析センター作成の分析報告
書(乙イ5)には,「スカローS」のカルシウム熱重量分析を実施した結果につき,
水酸化カルシウムが95.7%,炭酸カルシウムが1.6%含有されていた旨記載
されていることが認められる。
したがって,「スカローS」には,本件発明に係る洗浄剤の構成要件の1つである
酸化カルシウム粉末の含有が認められない。
イ差止目録記載の番号3「ホタテの力くんホタテで洗浄野菜・くだものに
1.2g」について
控訴人が提出した甲第31号証には,上記製品についてX線回析結果を行った結
果,Ca(OH)2(水酸化カルシウム),CaCO3(炭酸カルシウム)及びCa
(カルシウム)の含有が認められるが,本件発明に係る洗浄剤の構成要件の1つで
ある酸化カルシウム粉末の含有が認められない。
ウその余の被告製品について
控訴人は,その余の被告製品が本件発明の技術的範囲に属することにつき,何ら
立証していない。
エ小括
以上によれば,被告製品のいずれについても,本件発明を構成する「炭酸カルシ
ウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を粉砕することによって得られ
る粉末である炭酸カルシウム粉末」及びこの「炭酸カルシウム粉末の一部を焼成し
て得られる酸化カルシウム粉末」のいずれの含有も認めるに足りず,したがって,
本件発明の技術的範囲に属すると認めるに足りない。
⑶控訴人の主張について
ア控訴人は,本件発明の技術的範囲につき,①方解石型構造による結晶構造体
を備えた二枚貝の貝殻を原料とする洗浄剤は,全て本件発明の技術的範囲に属する,
②本件特許の特許請求の範囲にいう「炭酸カルシウム粉末」は,ホタテ貝殻を原材
料としていれば足り,方解石型構造による結晶構造体を備えている必要はない,③
前記「炭酸カルシウム粉末」は,ホタテ貝殻を粉砕した粉末それ自体のみならず,
これを焼成する,水を加えるなどの化学反応を経たものを含む旨主張する。
(ア)しかしながら,上記①の点については,前記⑴イのとおり,本件発明の特
許請求の範囲には,「炭酸カルシウム粉末と酸化カルシウム粉末とが混合されてい
ることを特徴とする洗浄剤」と明記されており,したがって,方解石型構造による
結晶構造体を備えた二枚貝の貝殻を原料とする洗浄剤であっても,炭酸カルシウム
粉末及び酸化カルシウム粉末の両方を含有するものでなければ,本件発明の技術的
範囲に属しないことは,明らかである。
上記②の点についても,前記⑴イのとおり,特許請求の範囲には,「炭酸カルシウ
ムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を粉砕した粉末からなる炭酸カル
シウム粉末」と明記されていることから,炭酸カルシウムの方解石型構造による結
晶構造体を備えた貝殻を粉砕した粉末から成るものではない炭酸カルシウム粉末は,
これを充足しないことは,明らかである。
以上によれば,上記①及び②は,いずれも特許請求の範囲の記載に基づかない主
張というべきである。
(イ)上記③の点に関し,本件発明を構成する「炭酸カルシウムの方解石型構造
による結晶構造体を備えた貝殻を粉砕した粉末からなる炭酸カルシウム粉末」の意
義について検討する。
前記⑴ウのとおり,本件明細書には,「発明が解決しようとする課題」において「ホ
タテの貝殻を粉砕」(【0003】)という記載があり,また,「発明の実施の形態」
において,ホタテの貝殻を天日乾燥によって硬化させた後に,粉砕して炭酸カルシ
ウム粉末を得ることが記載されており(【0007】),他方,粉砕以外の方法により
炭酸カルシウム粉末を得ることは,記載も示唆もされていない。酸化カルシウム粉
末を得る方法についても,「発明の実施の形態」において,ホタテの貝殻を粉砕して
得た炭酸カルシウム粉末の一部分を約1000℃の温度で数十分から数時間程度の
時間で加熱して得る方法が記載されており,それ以外の方法については,記載も示
唆もされていない。
そして,本件明細書には,ホタテの貝殻を粉砕して得た炭酸カルシウム粉末につ
き,「粒体は多孔性粒体となっている。」(【0007】),「ホタテの貝殻粉末の独特な
多孔質粒体からなるもので,吸着効果が大である。」,「この洗浄剤は,農薬などの化
学物質を吸着する効果があり,」,「手洗いや汚れた物品の洗浄においても手や前記物
品の表面に付いていた化学物質や微細な汚染物質を多孔質粒体が吸着し」(【000
8】)という記載があり,前記酸化カルシウム粉末については,「アルカリ性であり,
殺菌性を示すもの」,「アルカリ性の作用により(食品素材の)細菌やカビなどを死
滅させる」,「(手洗いや汚れた物品の洗浄においても)アルカリ性の作用にて細菌な
どを死滅させる」(【0008】)という記載がある。
以上に鑑みると,本件発明は,①炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造
体を備えたホタテ等の貝殻を粉砕することによって得られる炭酸カルシウム粉末の
「粒体は多孔性粒体」であり,「多孔性粒体」は吸着効果が大きいこと,②前記炭酸
カルシウム粉末の一部を約1000℃の温度で焼成して得た酸化カルシウム粉末は,
アルカリ性であり,殺菌性を備えていることを利用して,これらの炭酸カルシウム
粉末と酸化カルシウム粉末とを混合することによって,炭酸カルシウム粉末により,
食品素材等の洗浄対象に付いた化学物質等を吸着して除去し,酸化カルシウム粉末
により,洗浄対象の細菌やカビなどを死滅させ,洗浄対象の「表面に付着していた
化学物質や微細な汚染物質を取り除くようになるとともに,殺菌が行なえる」(【0
009】)洗浄剤を作り,「農薬などの化学物質を取り除き殺菌を行なう洗浄剤」を
得るという課題(【0003】)を解決するものといえる。
以上によれば,本件発明を構成する「炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶
構造体を備えた貝殻を粉砕した粉末」は,そのような貝殻を単に粉砕することによ
って得られる粉末それ自体を指し,貝殻を粉砕した粉末を焼成する,水を加えるな
どの化学反応を経たものは含まれないものと解される。
したがって,控訴人の前記③の主張も,採用できない。
(ウ)控訴人提出の証拠について
a「スカローHK」について
控訴人は,抗菌研究所が製造,販売する「スカローHK」につき,含有物等のX
線回析等による分析結果(甲32,甲34,甲39,甲65)を提出し,それによ
れば,「スカローHK」には,CaCO3(炭酸カルシウム)及びCaO(酸化カル
シウム)の含有が認められる。
しかし,そもそも「スカローHK」と被告製品との関連性は不明である。しかも,
「スカローHK」のパッケージ(甲38)には,「成分」として「ホタテ貝殻カルシ
ウム粉(水酸化カルシウム)」と記載されており,炭酸カルシウム粉末及び酸化カル
シウム粉末のいずれも記載されていない。そうすると,上記CaCO3が前記(イ)
の炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を単に粉砕するこ
とによって得られる粉末それ自体であると認めるに足りない。
bサンプル測定結果報告書(甲52)について
また,控訴人は,「サンプル測定結果報告書」(甲52)を提出し,そこには,「サ
ンプル測定結果」として,「含まれていると予想される成分が,酸化カルシウム,炭
酸カルシウムおよび水酸化カルシウムのみの場合には,下記のような方法で含有率
を解析できます。」と記載されている。
しかし,その測定対象自体が不明である上に,前記(イ)の本件発明に係る洗浄剤
を構成する「炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構造体を備えた貝殻を粉砕
することによって得られる炭酸カルシウム粉末」及び該「炭酸カルシウム粉末を焼
成してなる酸化カルシウム粉末」のいずれの含有も認めるに足りない。
イ控訴人は,被告製品は,いずれも方解石型構造による結晶構造体を備えた二
枚貝の貝殻を焼成して酸化カルシウムを作り,これに水を加えて水酸化カルシウム
に変化させたものであるところ,本件発明に係る洗浄剤も,使用時には酸化カルシ
ウムを水溶して水酸化カルシウムにするものであるから,被告製品と,本件発明に
係る洗浄剤とは,使用形態においても同じであるとして,この点を,被告製品が本
件発明の技術的範囲に属することの根拠の1つとして主張するものと解される。し
かし,技術的範囲への属否は,当該特許発明の特許請求の範囲に基づいて定められ
る技術的範囲を対象製品の構成自体と対比して判断するものであるから,使用形態
の同一性をもって充足性の根拠とする控訴人の前記主張は,採用できない。
ウさらに,控訴人は,仮に被告製品が,本件発明を文言上充足しないとしても,
置換を想到することが容易であり,相違に係る部分は本質的なものではないので,
均等の範囲内である旨主張する。
いわゆる均等侵害の主張に当たっては,特許権者側において,最高裁平成6年(オ)
第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁に示さ
れている要件のうち,①特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる
部分が存する場合であっても,当該部分が特許発明の本質的部分ではないこと,②
当該部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達すること
ができ,同一の作用効果を奏するものであること及び③上記のように置き換えるこ
とに,当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたこ
とを主張立証すべきものである。
控訴人の主張には,必ずしも明瞭とはいえない点があるものの,上記②の要件の
主張を明らかに欠いており,主張自体失当である上に,上記②及び③の要件の立証
を欠くものである。
3結論
以上によれば,控訴人の請求は,理由がないから,これを棄却した原判決は相当
である。
よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官髙部眞規子
裁判官田中芳樹
裁判官鈴木わかな

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