弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人大山忠市、同佐野栄三郎連名の控訴趣意書に、これに
対する答弁は、検察官宮本喜光名義の答弁書にそれぞれ記載されているとおりであ
るから、これらを引用する。
 控訴趣意第一点(法令適用の誤りの主張)について
 所論は、要するに、所得税法二三八条一項の規定は、偽りその他不正の行為によ
り正当に納付すべき所得税の額につき所得税を免れたときに処罰するという趣旨の
ものであつて、その正当に納付すべき税額とは、法律の定めがなければ租税を課さ
れないという実体的要請と租税を課すためには法律の定める手続によらなければな
らないという手続的要請とに則り、税法の定める所定の確定手続を経て計算された
税額をいい、そのいずれかの要請に違反して計算された税額は正当税額とはいえな
いところ、被告人は、青色申告の承認を受けていたので、昭和四二年分の所得税に
つき、青色の確定申告書を提出したのに対し、八王子税務署長は、青色申告の承認
を取り消すとともに、右申告所得額を更正したが、右青色申告承認の取消処分及び
右更正処分はいずれも後に国税不服審判所長の裁決により取り消されたので、被告
人の昭和四二年分の申告所得税額を更正するには所得税法一五五条所定の手続を要
するのに、その更正がなされていない以上、同年分の所得税額は申告税額のとおり
に確定したものというべく、したがつて、被告人は、昭和四二年分の所得税を免れ
ていないことになるから、所得税法二三八条一項前段の規定により処罰されるいわ
れがないにもかかわらず、同条項を適用して被告人を有罪とした原判決には、法令
の解釈、適用を誤つた違法があり、その違法が判決に影響を及ぼすことが明らかで
あるというのである。
 そこで、検討するに、被告人は、青色申告の承認を受けていたので、昭和四三年
三月一四日、八王子税務署長に対し、昭和四二年分の課税総所得額が二〇九九万円
で、これに対する所得税額が一〇一六万四六〇〇円である旨記載した青色の確定申
告書を提出したところ、同署長は、昭和四五年一〇月一七日付で、被告人の昭和四
〇年分以降における青色申告承認の取消処分をするとともに、同月二七日付で被告
人の昭和四二年分の所得税につき増額の更正処分をした。ところが、右の各処分に
は具体的事実もしくは更正の理由を附記していない違法があるとして、右青色申告
承認の取消処分については昭和五四年二月二三日付で、右更正処分については同月
二七日付で、いずれも国税不服審判所長の裁決により取り消されていることは所論
指摘のとおりである。
 そして、八王子税務署長は、被告人の昭和四二年分の所得税につき、更正の期間
制限内に所得税法一五五条所定の更正をしていないから、被告人の所得税額は申告
税額のとおりに確定する結果になつた。
 ところで、一般に国税は、税法の規定する課税要件を充足することにより、国と
納税義務者との間で、法律上当然に、抽象的租税債権(正当税額)として成立し、
これが賦課、徴収の対象となるのであるが、これを納付、徴収するためには、右租
税債権の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税を除
いては、国税通則法等国税に関する法律の定める手続により、これを具体的租税債
権(確定税額)として確定する必要がある(国税通則法一五条)。しかし、税法の
定める確定申告、更正、決定等の確定手続制度そのものは徴税行政上の手段として
設けられたものであつて、これが租税債権成立のため必要不可欠のものでないばか
りか、確定手続を離れて課税要件を認定することは勿論、不正の手段等により抽象
的租税債権を侵害することも十分可能であるから、税の確定手続を経なければ逋脱
犯が成立しないというものではない。本来、正当税額と確定税額とは一致すべきも
のであつて、税法は、確定税額が正当税額のとおりに確定し、これが確実に履行さ
れることを期待し、その実現を図るため、罰則を設けて、偽りその他不正の行為に
より税を免れた者に刑罰を科し、そのことにより国の抽象的租税債権(正当税額)
の確保を間接的に強制するとともに、納税義務者相互間の税の均衡負担を図ること
としたのである。所得税のような申告納税方式を採用している国税は、その納付す
べき税額が納税義務者の申告により確定することを原則とするが、その申告に係る
税額等が国税に関する法律の規定に従つていなかつたときなどは、税務署長におい
て、その申告税額を更正することができるけれども、その更正は徴収すべき国税を
確定するための行政手続にすぎない。このように、逋脱犯は、一次的には国の課税
権を保護法益とする犯罪であるから、偽りその他不正の行為により抽象的租税債権
を侵害している以上、国において納税義務者の申告した申告税額を更正するなどの
徴税行政上国税の確定手続を尽すことができなくなつたため、結局、徴収すべき税
額が申告税額のとおりに確定したとしても、そのことから直ちに、その目的、性質
を異にする刑事裁判の場において、罰則を発動することができなくなるものとは到
底考えられない。
 <要旨>以上考察したところに従つて検討すると、所得税法二三八条一項前段の
「税を免れた」とは、徴税手続で具体的に確定する所得税の納付を免れる趣
旨ではなく、逋脱行為当時存在した正当税額(抽象的租税債権)よりも過少な税額
を記載した確定申告書を提出し、又は提出期限までに確定申告書を提出しないで納
付すべき確定税額(具体的租税債権)をことさらに正当税額よりも過少に確定さ
せ、その差額部分に対する納税義務を免れようとすることをいうものと解すべきで
ある。そうだとすると、課税要件の充足により成立した抽象的租税債権につき、手
続上の過誤により、これを具体的租税債権として確定することができなくなつたた
め、国において課税権の行使ができなくなつたとしても、偽りその他不正の行為に
より、その納期限当時存した抽象的租税債権そのものを免れた以上、直ちに所得税
法二三八条一項前段の逋脱罪が成立し、その後の行政処分の如何によつて、その成
否に消長を来たすものではないというべきである。してみると、右と同旨の見解に
立脚して、被告人の本件所為が所得税法二三八条一項前段の罪に当るとした原判決
には法令の解釈、適用を誤つた違法はないから、論旨は理由がない。
 控訴趣意第二点(事実誤認の主張)について
 所論は、要するに、被告人は、A株式会社の代表取締役Bに対し、神奈川県a地
区の用地買収を依頼し、その手数料として、同人に合計三七〇〇万円を支払つたに
もかかわらず、そのうち三六〇〇万円について、その支払いを認めなかつた原判決
は、事実を誤認したものであつて、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかで
あるというのである(控訴趣意は審理不尽による理由のくいちがいも主張するが、
記録及び原判決を精査してもそのような違法は認められないのみならず、その実質
は事実誤認の主張と解される。)。
 そこで、検討するに、関係各証拠によると、次の事実を認めることができ、これ
に反するBの収税官吏に対する質問てん末書(昭和四四年六月一二日付、同年九月
一六日付)、被告人の収税官吏に対する質問てん末書(同年一月二九日付、同年五
月一六日付、同年一〇月二九日付)及び検察官に対する供述調書(昭和四五年一〇
月七日付)並びに原審における供述は、他の関係各証拠に照らし、にわかに措信す
ることができない。
 すなわち、
 一 不動産業を営んでいる被告人は、昭和四二年ころ、同じく不動産業を営んで
いたAの代表取締役Bに対し、神奈川県a地区の用地買収を依頼したところ、B
は、同年九月ころから翌四三年末ころまでの間、右用地を買収すべく、その所有者
らと種々交渉したが、結局、その間に用地の買収に成功したものは一件もなかつ
た。しかし、被告人は、架空の支払手数料を計上すべく、Bに対し、a地区の用地
買収に関し、Aにおいて被告人から仲介手数料を受領した旨の計上方を依頼し、そ
の承諾を得た。
 二 そこで、被告人は、昭和四一一年二月三〇日、Bとともに取引銀行であるC
銀行D支店に赴き、まず、同支店にAの普通預金口座を新規に開設してもらい、以
前から同支店に開設してあつた被告人名義の普通預金口座から現金二二〇〇万円を
払い出し、その全額を一たんAの預金口座に預け入れた後、さらに六口に分けて合
計二一〇〇万円を同口座から払い出し、そのうち一五〇〇万円を同支店に開設して
あるE名義の預金口座(被告人の仮名預金)に預け入れた。なお、その際、Bは、
右金員が正当な仲介手数料でないことは勿論、真実これを受領したものでもないこ
とを十分承知のうえ、同日付でAが右金員を仲介手数料として受領した旨記載した
領収証を作成し、これを被告人に手交した。そこで、被告人は、右一連の手続に協
力した謝礼として、Bに対し、手元にあつた現金一〇〇万円を手渡すとともに、A
の前記預金口座に残した一〇〇万円を謝礼に充てるべく、Bにその処分を委ねた。
 三 次いで、被告人は、昭和四三年四月三日にも前同様の方法により、前記支店
の被告人名義の預金口座から現金一五〇〇万円を払い出し、これを一たんA名義の
預金口座に預け入れた後、同月五日、同口座から二口に分けて合計一五〇〇万円を
払い出し、これに他の資金を合わせて、借入金の返済や無記名預金の資金に充てる
などした。そして、その謝礼として、Bに対し、現金二〇〇万円を支払つた。
 四 Aの従業員で、経理事務を担当していたFは、昭和四三年一二月ころ、Bか
らAがC銀行D支店に開設した前記普通預金の預金通帳のみを渡され、仲介手数料
として、被告人から前記金員の合計額三七〇〇万円を受領した旨の経理処理をする
よう命ぜられた。Fとしては、Aにおいて右金員に見合う金員を受領していなかつ
たので、その経理処理に疑問を抱いたが、Bから命ぜられたとおり経理処理をし
た。
 以上認定した事実によれば、被告人がAに対し、a地区の用地買収に伴う仲介手
数料を支払つていないことは明らかであるから、この点につき、原判決には何ら事
実の誤認はない。論旨は理由がない。
 控訴趣意第三点(事実誤認の主張)について
 所論は、要するに、被告人が旅館G発行に係る領収証の金額を訂正したと認める
に足りる証拠がないうえ、これが認められるとしても、それは被告人の悪意による
ものではないから、右訂正が改ざんに当らないことが明らかであるのに、これが改
ざんに当ると認定した原判決は事実を誤認したものであつて、その誤認が判決に影
響を及ぼすことが明らかであるというのである(控訴趣意は審理不尽による理由の
くいちがいも主張するが、記録及び原判決を精査してもそのような違法は認められ
ないのみならず、その実質は単なる事実誤認の主張と解される。)。
 そこで、検討してみるのに、関係各証拠、特に原審における証人Hの供述、検察
事務官I作成の昭和四六年二月一五日付報告書、押収してある経費明細帳及び売上
明細書綴(当庁昭和五六年押第一三九号の一の4、二二の1ないし16)、被告人
の検察官に対する昭和四六年二月一七日付供述調書によると、次の事実を認めるこ
とができ、これに反する原審における被告人の供述は、他の関係各証拠に対比する
と、にわかに措信することができない。すなわち、
 一 神奈川県秦野市所在の旅館Gでは、飲食した客から飲食代金の支払いを受け
たときは、必ず領収した金額を明示した正規の公給領収証を発行していたが、被告
人が同旅館で飲食した場合も全く同様に扱い、特に公給領収証の金額を過大あるい
は過少に記載したようなことはなかつた。
 二 被告人は、昭和四二年一月六日ころから同年一二月二三日ころまでの間、同
旅館で飲食し、その都度同旅館発行に係る公給領収証を受け取つていたが、他の店
で飲食代金を支払つた場合には、必ずしも領収証を徴していないことがあつたの
で、昭和四二年分に係る所得計算をするに際し、右代金を含めた交際費を架空に計
上しようと考え、無断で同旅館発行に係る公給領収証記載の金額の冒頭あるいは末
尾に「1」を書き加えて、あたかも訂正された金額が実際に支払われたかの如く改
ざんし、これを税理士に渡して同年中における交際費の計上を依頼したが、その架
空計上分が五〇万四九七〇円にも達している。
 以上認定したところによれば、被告人が旅館G発行の公給領収証を改ざんした事
実は優に認められるところ、所論は、この点につき、被告人が悪意をもつて右領収
証の金額を訂正したものではないから改ざんに当らない旨主張するけれども、被告
人は、交際費の架空計上を意図して、その権限がないにもかかわらず、前記領収証
の金額を訂正したものであつて、これが悪意によるものであることは明白であり、
したがつて、被告人の右所為が改ざんに当ると認定した原判決には何ら事実の誤認
はない。論旨は理由がない。
 控訴趣意第四点(理由のくいちがいないしは事実誤認の主張)について
 所論は、要するに、被告人は、J株式会社から八王子b地区及び神奈川県c地区
の用地買収を依頼されたので、被告人において右両地区の用地を買収した後、これ
をJに売り渡したものであつて、両地区の買収につき、被告人の果した役割は殆ん
ど同一であるのに、同じような証拠から、b地区の用地買収については、被告人が
各地主から一括して買い受けた旨、c地区の用地買収に関しては、被告人は仲介人
であつて、売買契約の当事者はJと各地主である旨それぞれ認定判示した原判決に
は、理由相互間にくいちがいがあるうえ、事実を誤認した違法があるので、原判決
は到底破棄を免れないというのである。
 そこで、まず、理由のくいちがいの主張について検討するに、原判決は、b地区
の用地買収については、被告人が各地主から一括して買い受けた旨、c地区の用地
買収に関しては、被告人は仲介人であつて、売買契約の当事者はJと各地主である
旨、それぞれ認定判示していることは所論指摘のとおりである。
 しかしながら、原判決は、b地区の用地買収につき、売買形式によるものである
旨認定した証拠として、被告人の原審における供述、原審証人K、同L、同M、同
Nの各供述、押収してある領収証一通を挙示しており、他方、c地区の用地買収に
つき、仲介形式によるものである旨認定した証拠として、被告人の検察官に対する
昭和四六年二月一九日付供述調書、原審証人O、同L、同Pの各供述を挙示してい
ることが判文上明らかである。このように、原判決は、別個の証拠に基づき、一方
を売買形式とし、他方を仲介形式によるものと認定したのであるから、その結論が
異なつても当然であつて、右のように認定したことをもつて、理由相互間にくいち
がいがあるということはできない。
 次に、事実誤認の主張について検討してみるに、所論は、帰するところ、原判決
がc地区の用地買収協力金四〇〇〇万円の未払計上を認めなかつたことの不当をい
うものと解されるが、原判決が右未払金の計上を認めなかつたのは、c地区の用地
買収が仲介形式によるものであつて、被告人は売買契約の当事者ではないから、右
債務を負担すべきいわれがないとしたことのほか、その債務は昭和四四年に至つて
確定したものであるから、被告人の昭和四二年の所得計算をする時点においては、
未だ債務として確定していなかつたことを理由とするものであり、そして、右債務
確定時期の認定は関係各証拠により十分肯認することができる。してみれば、仮り
に所論のような事実の誤認があるとしても、その誤認は判決に影響を及ぼすもので
はないといわなければならない。のみならず、関係各証拠によると、被告人は、J
から両地区の用地買収を依頼されて、これに関与するようになつたこと、そして、
c地区の用地につき、地主から直接買い受けたものも若干あること、しかし、c地
区の用地で所論の主張する用地買収協力金四〇〇〇万円に関係する用地について
は、被告人は単にJと地主らとの売買契約を仲介したものにすぎないことが認めら
れ、これに反する被告人の検察官に対する昭和四六年二月一七日付、同月一九日付
供述調書の供述記載部分は、いずれも他の関係各証拠に対比し、措信することがで
きない。右認定事実によれば、c地区の用地買収については、被告人は仲介人であ
つたと認めるのが相当である。
 以上のとおり、原判決には、理由のくいちがいは勿論、事実の誤認もないから、
論旨は理由がない。
 控訴趣意第五点(理由のくいちがいないし事実誤認の主張)について
 所論は、要するに、原判決は、期中に存在したとされる多額の手持現金につい
て、それは期首における他の資産が期中において現金に転化したか、所得秘匿行為
によつて期中に発生した簿外の資産が現金に転化したかのいずれかであると考えざ
るを得ないが、本件においては、所得秘匿行為の一部が証拠上認められないことに
なるので、当該秘匿行為によつて生じたとされる期中の資産増加分は過年分からの
持込みによるものと判断されるから、その分については、期首調整金勘定を設け
て、これを当年分の所得から排除すべきであるとしている以上、その資産がいずれ
も期首に存したものと認められるQ及び被告人名義の定期預金、A及びE名義の普
通預金、R、S、T及びU名義のV株式会社の株式についても、右と同様に扱うべ
きであるのに、これらについては期首における原資の存在を否定して、期首調整金
勘定への計上を認めなかつた原判決には、その前提となる事実を誤認したばかりで
なく、理由相互間にもくいちがいがあるので、到底破棄を免れないというのであ
る。
 右論旨のうち理由にくいちがいがある旨の主張は、原判決書自体に存する矛盾を
指摘するものではないから、その前提を欠き、実質はすべて事実誤認の主張に帰す
るというべきである。
 そこで、検討するに、原判決が所論指摘のとおり、所得秘匿行為の一部が証拠上
認められないときは、当該秘匿行為によつて生じたとされる期中の資産増加分は過
年分からの持込みによるものと判断されるから、その分については期首調整金勘定
を設けて、それを当年分の所得から排除すべきである旨判示していることは判文上
明らかであるが、本件は、期首における資産、負債及び資本並びに期末におけるそ
れらにつき実額をもつて確定し、その比較により、被告人の昭和四二年における事
業所碍額を計算しているのであつて、このように財産増減法によつて所得を計算し
ている場合には、同年中の事業所得に係る必要経費の支出が認められるとしても、
直ちにその支出が所得額の計算に影響を及ぼすものとはいえないから、右支出に係
る必要経費の原資が期首に存在したものと推論したうえ、それに見合う金額を期首
調整金勘定に計上して、その所得額を縮少認定することには疑問があり、原審の右
見解にはにわかに左袒することはできない。そうすると所論の各金額を期首調整金
勘定に計上すべきことを前提とする所論は失当といわざるを得ない。
 のみならず、原判決は、期中における所得秘匿行為が認められない場合、すなわ
ち、所得秘匿行為として主張された必要経費の水増又は架空計上分のうち、証拠上
実際に支払われたことが認められるもの及び水増又は架空計上であることの証明が
不十分であるため、実際に支払われたとして取扱うべきものに限つて、その支出に
見合う金額を期首調整金勘定に計上することを認めているものであるところ、関係
各証拠によると、手広く不動産業を営み、多額の事業所得を上げていた被告人は、
土地の買収が難航したような場合、地主らに裏金を支払つて歓心を買う必要があつ
たため、その資金を捻出し、併せて自己の事業欲を満たそうと考え、昭和四〇年ご
ろから昭和四二年にかけ、所得を過少に申告して脱税を図つていたこと、Q名義の
定期預金一一〇〇万円(二口)は昭和四二年六月八日に設定されて、翌四三年九月
二七日に解約されていること、被告人名義の定期預金中、四〇七万二六〇〇円につ
いては昭和四二年五月二九日に設定されて、翌四三年五月三〇日に解約されてお
り、五〇万六一三七円については昭和四二年一二月二六日に設定されて、翌四三年
一〇月一六日に解約されていること、E名義の普通預金は昭和四二年三月一日に設
定されて、翌四三年三月一三日に解約されているが、その間の昭和四二年三月一日
に五〇〇万円、同年七月二八日に一三〇万円、同年一〇月六日に三〇〇万円、同月
七日に二〇〇万円、同月一一日に一〇〇万円、同年一二月三〇日に」五〇〇万円そ
れぞれ預け入れられたので、同月三一日現在、合計一五三三万二八六五円の残高が
あること、R、S、T及びU名義の株式は、昭和四二年七月二六日から同年九月三
〇日までの間に取得されたものであることがそれぞれ認められる。以上のような被
告人の事業内容、高収入及び脱税の意図、各資産の設定、取得時期並びにその金額
等からすると、所論のいう各資産の原資は期中に取得したものと推認されるので、
それが期首に存したものとは認め難いところである。なお、A名義の普通預金につ
いては、原判決は右預金が被告人に帰属しない旨認定しているのであるから、この
点についての所論は無意味な主張と解するほかはない。してみると、右と同旨の原
判決には事実の誤認は存しないから、論旨は理由がないといわなければならない。
 (なお、職権で調査すると、原判決は、原判決添付別紙(二)税額計算書中、納
付すべき所得税額欄の実際額欄に「36,037,200」と、その通脱額欄に
「25,872,600」とそれぞれ記載すべきところ、右各金額を脱落したた
め、理由中の罪となみべき事実(原判決三頁六行目から七行目にかけて)及び争点
に対する判断等(同一〇三頁六行目)において、正規の所得税額と申告税額との差
額を二五八七万二六〇〇円と認定判示すべきであるにもかかわらず、これを二五八
七万九二〇〇円と認定した違法があるが、その誤認は判決に影響を及ぼさないもの
と解される。)
 よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決
する。
 (裁判長裁判官 海老原震一 裁判官 杉山英巳 裁判官 新田誠志)

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