弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、
二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判
決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張は被控訴代理人において「東京国税局長は昭和三十二
年一月十八日被控訴人が為した審査請求に対し、棄却の決定を為し、右決定は同日
被控訴人に送達された。被控訴人は同年四月十日東京国税局長を相手方として右決
定に対する不服の訴を東京地方裁判所に提起し、右訴訟は目下該裁判所に係属中で
ある。」と述べ控訴代理人において「右事実はこれを認める。」と述べた外原判決
事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。
 証拠として、被控訴代理人は甲第一ないし第五号証、第六、七号証の各一、二、
第八ないし第十二号証(第四号証、第六、七号証の各一、二、第八号証はいずれも
写)を提出し、乙第二、第五号証の各成立を認め、乙第一、第三、第四号証、第六
号証の一、二の各原本の存在及び成立を認め、控訴代理人は乙第一ないし第五号
証、第六号証の一、二(第一、第三、第四号証、第六号証の一、二はいずれも写)
を提出し、証人Aの喚問を求め、甲第一ないし第三号証、第五号証、第九号証ない
し第十二号証の各成立を認め、甲第四号証、第六、七号証の各一、二、第八号証の
各原本の存在及び成立を認めた。
         理    由
 本件取消の対象について当事者間に種々法律的論議があるので、最初にこの点に
ついて判断する。後記法条にいわゆる「更正」をするのには、先ず関係機関の内部
的判断(意思決定)があり、次いでその内容が通知書に作成され、更にそれが関係
者に届けられるという一連の手続の履践を要する。裁判において先ず評決があり、
それが判決書に作成され(担当裁判官の署名押印がなされ)、言渡期日に言渡がな
されるのと似ている。
 口頭弁論の審理にたずさわつたのは甲乙丙の裁判官であるのに評議は甲乙丁によ
つてなされた場合、評議は甲乙丙によつてなされたのに甲乙丁が署名押印した場
合、或は当事者に告知されない言渡期日に判決が言渡された場合に、その評議、署
名押印、又は言渡といういずれかの一点に違法があるからといつてその個々の行為
だけの取消を求めるものでないことは説明するまでもない。行政訴訟においては、
行政処分が取消の対象になるのではあるが、「更正」に対する不服を主張するのに
右一連の手続の一部に瑕疵があるからと云つてその部分を摘出し、その部分だけの
取消を求める必要はない。「更正」と裁判とを完全に同一視することは許されない
が、以上の点に関する限り大体同様に考えてさしつかえない。(農地法において買
収又は売渡計画の樹立、公告縦覧、令書の交付による買収又は売渡は究極において
買収又は売渡のために行われる一連の行為ではあるが、右のような段落を分け、そ
の各段落の行為(処分)を対象として行政訴訟を起し得る。しかしたとえば計画の
樹立を前示のように内部的意思決定、その対外的表示等に分析してその個々の部分
を行政訴訟の対象とすることはないのである。)被控訴人が原審において訴状に
「更正決定は之を取消す」旨を記載し、口頭弁論においてこれに基き陳述したのも
以上の趣旨に帰するものと解するのが相当である。(被控訴人は当審において請求
趣旨訂正の申立(一二二丁)を提出したが、これは陳述しなかつた)よつて本件
「更正」は通知書にその理由が附記されていなかつたかどうか、又それだけのため
に取消されるべきであるかどうかについて判断を進めることにする。
 被控訴人は肩書地において料理旅館業を営むものであるところ、昭和二十六年二
月二十八日青色申告書をもつて控訴人に対し、昭和二十五年度の所得金額九十四万
二千七十九円の確定申告をしたこと、控訴人は昭和二十七年一月三十一日附で被控
訴人の昭和二十五年度の所得金額を金百六十三万二千二百七十七円と更正し、被控
訴人は同年二月九日その旨の通知を受けたこと、右更正の通知書には更正の理由が
全然附記されていなかつたこと、被控訴人は昭和二十七年三月一日附を以て東京国
税局長に対し審査の請求をしたこと、審査の請求をした日から三箇月を経過したが
審査の決定がないので被控訴人は本訴を提起したこと、控訴人は昭和三十年六月十
一日書面をもつて被控訴人に対し、前記更正額及びその更正の理由として被控訴人
の提示した帳簿書類の記載事項に真実性が認められない旨を記載した通知をしたこ
と、前記審査の請求に対し、東京国税局長は昭和三十二年一月十八日棄却の決定を
為し、右決定は同日被控訴人に送達されたこと、はいずれも当事者間に争いがな
い。
 <要旨第一>ところで所得税法(昭和二十九年法律第五十二号による改正前のもの
を指す、以下同様)第四十六条の二第二項(現行所得税法第四十五条第
二項)の規定により、政府は青色申告書について更正をした場合においては、同法
第四十六条第七項の規定に従い附記する事項に代えて、更正の理由を附記しなけれ
ばならない旨定められている。右理由の附記を欠く通知は法定の要件を欠く違法な
ものであり、通知にかかる瑕疵がある場合、当該更正は取消を免れないものという
べきである。第四十六条の二第二項の規定に「理由を附記しなければならない「と
あるのを単に訓示的規定に過ぎないものと解する控訴人の主張は採用に値しない。
 もつとも、控訴人は被控訴人に対し昭和三十年六月十一日改めて更正の理由を通
知していることは前記のとおりであつて、控訴人は仮に前記昭和二十七年一月三十
一日附の更正決定に理由の附記を欠くという瑕疵があ<要旨第二>つたとしても昭和
三十年六月十一日の右通知によりその瑕疵が治癒されたと主張するので按ずるに、
政府が確定申告につき更正をすることができるのは所得税法第四十六条
の四第一項の規定により一定の期間内に限られている。これを本件について見れば
右規定により青色申告書の提出期限たる昭和二十六年三月十五日から三年を経過し
た日以後においては右更正をすることができないことが明かである。(被控訴人の
本件確定申告が詐偽その他不正の行為により所得税を免れんとした場合に該当する
ことは控訴人において主張しないところであるから、本件は同条同項但書の場合に
当らないものと見る外はない。)右期間はその経過後においては更正を許さない趣
旨であるから、瑕疵ある通知の追完も右の期間内においてなされるべきことは理の
当然であつて、右期間経過後の追完はその効力がないものと解すべきである。従つ
て昭和二十六年三月十五日から三年以上を経過した昭和三十年六月十一日附の前記
理由の通知は、(新な更正として見ても、はたまた)昭和二十七年一月三十一日附
の更正の通知の追完として見ても無効なものと謂わなければならない。
 これを要するに本件更正は瑕疵ある違法な行政処分であるから、その取消を求め
る被控訴人の本訴請求は正当としてこれを認容すべきものと認める。従つて原判決
はその理由の一部において不当な点があるが、結論においては当裁判所の見る所と
同一に帰するのでこれを正当とし、本件控訴は理由がないものと認めて、民事訴訟
法第三百八十四条第八十九条第九十五条に則り主文のとおり判決する。 (裁判長
判事 梶村敏樹 判事 岡崎隆 判事 堀田繁勝)

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