弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役三月に処する。
     但し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
     原審における訴訟費用は、証人Aに支給した分を除きその余を被告人の
負担とする。
     本件公訴事実のうち、食糧管理法違反の点及び物価統制令違反の点はい
ずれも無罪
         理    由
 弁護人庭山四郎の控訴趣意は末尾に添えた書面に記載した通りである。
 (一) 第二点に対する判断及び職権調査。
 原判決は、その第一の一において、「被告人は米の生産者であるが、漁定の除外
事由がないにも拘らず、昭和二十五年六月二十二日頃其生産に係る昭和二十四年度
産の梗玄米四斗入三俵を長男Bに命じて、精米の為肩書自宅より同町字ab番地精
米業C方に運搬せしめて輸送し、同人に対し所轄食糧事務所出張所長の加工証認を
受けずに精米加工の委託を為し」た事実を認定して、その粳玄米輸送の点に対して
食糧管理法第九条第三十一条同法施行令第十一条同法施行規則第二十九条(昭和二
十五年九月十一日改正により同条は第四十七条となる)を、粳玄米の精白加工委託
の所為に対し食糧管理法第九条第三十一条同法施行令第十三条昭和二十三年八月十
四日北海道規則第六十六号食糧管理演施行細則第四条第一項を各適用している。
 <要旨第一>よつて先ず、右精白加工委託の点に対する法令の適用について審究す
ると、原判決の適用した昭和二十三年八月十四日北海道規則第六十六号
食糧管理法施行細則第四条第一項には「主要食糧の生産者が主要食糧の加工又は製
造の委託をしょうとするときは、その居住地市町村長から第二号様式の主要食糧加
工証認通帳の交付を受け、その所在の食糧事務所出張所長(食糧事務所出張所のな
い市町村では市町村長)に提示し加工証認を受けなければならない。」と規定して
ある。(同条は昭和二十五年六月三十日北海道規則第百六十五号により削除)この
規定は食糧管理海第九条の規定により、政令たる食糧管理法施行令に基くものとし
て制定せられたのであるが、当時の食糧管理法施行令には生産者に対し主要食糧の
加工委託を制限することを都道府県知事に委任することを定めた規定はない。(第
十二条は主要食糧を原料又は材料として物品を製造する者に対し、当該物品の原料
又は材料たる主要食糧の消費又は使用の制限に関する規定であり、第十三条は主要
食糧の加工又は製造業者に対し、主要食糧の加工又は製造に関し必要な命令を為し
得る規定である。)
 されば、右北海道規則たる食糧管理法施行細則第四条第一項の主要食糧加工委託
の点は食糧管理法第九条の定むる政令に基かず従つて北海道知事が権限なくして制
定公布したものであつて、無効な規定といわざるを得ない。即ち原判決がこの無効
な規定を適用して、被告人の本件精米加工委託の所為を有罪と断定したのはその法
令の適用において誤ありというべく、その誤が判決に影響を及ぼすことは明かであ
るから、論旨は理由があり、原判決は破棄しなければならない。
 次に右と関連して右粳玄米輸送の点に対する法令の適用について職権を以て調査
すると、食糧管理法第九条に基く同法施行令第十一条には、農林大臣は、命令の定
めるところにより、主要食糧の移動を制限することができる。旨を規定し、これに
基き農林省令同法施行規則第二十九条(昭和二十五年九月農林省令第百一号による
改正により第四十七条となる)は原則として主要食糧の輸送又は輸送の委託を禁止
すると共にその例外を認め、同条第三号は「旅行者転居者その他都道府県知事の指
定する者が都道府県知事の定める数量の範囲内の主要食糧を輸送し、又はこれにつ
き輸送の委託をするとき」を以てその例外の一場合としている。この規定及び前示
北海道規則たる食糧管理法施行細則の規定に基いて定められた昭和二十三年八月十
四日北海道告示第六百六十六号一、(四)には「自家用食糧加工の為同一市町村内
において加工場所まで移動搬送するとき、食糧事務所出張所長の加工証認数量の範
囲内」に於て主要食糧の輸送を為し得る旨規定している。しかし右「食糧事務所出
張所長の加工証認数量の範囲内」というのは、前叙北海道規則たる食糧管理法施行
細則第四条第一項の規定に基くものであるから、既に右施行細則第四条第一項が無
効なること前叙の如くである以上、これに基く右制限規定が無効なることは又自明
の理といわねばならない。従つて右告示一(四)のうち、右無効な部分を除き、
「自家用食糧の範囲内」であれば、「同一市町村内において、加工場所まで移動搬
送すること」は、法の認容するところと解せざるを得ない。然して、原審第四回公
判調書中、被告人の供述記載及び岩内町長D作成の回答書の記載によると、被告人
の輸送に係る本件粳玄米は被告人が昭和二十四年度に生産した自家用食糧米である
ことが認められるから、被告人が精米のため右粳玄米を居町字ab番地なる精米業
C方まで輸送することは法の認容するところといわねばならない。果して然らば、
原判決は粳玄米輸送の点についても無効な規定を適用して、罪とならない事実を有
罪と認定したものであつて、法令の適用に誤があり、その誤が判決影響を及ぼすこ
とは明らかであるから、この点からも原判決は破棄を免れることは出来ない。
 (二) 第三点に対する判断。
 論旨は、原判示第一の二の事実は被告人の業務に関しない所為であるのに、これ
を業務に関して為されたものと認定したことが誤であると主張するのであつて、結
局この点につき事実の誤認があるというに帰する。
 思うに、物価統制令第十三条が、価格等に関する給付に関し、対価として金銭以
外のものを受くるの契約を為し、又はこれを受領することを禁止しているのは、そ
れが業務上行われる場合に限るのであるが、原判示第一、(二)の「被告人が自己
生産に係る昭和二十四年度産粳精米四斗入一儀を氏名不詳者に給付して、これが対
価として糯精米四斗入一儀を受領した。」との事実が果して被告人の業務に関して
行われたものかどうかを考えると、記録によれば、被告人は古物商兼仲立業を営み
傍ら自家の食糧に充つるため約一反半の田地を耕作しているのであつて、米を生産
して販売することを業とするものではなく、右粳精米の給付及びその対価としての
糯精米の受領は、自家用のためこれを為したに外ならないことが明らかであるか
ら、これを目して被告人の業務に関する行為とは到底認むることが出来ない。従つ
て原判示第一の二の所為は物価統制令第十三条にいわゆる業務上の行為とはいえな
いに拘らず、原判決がこれを以て被告人の業務に関して行われたものと認定したの
は事実の誤認であつて、その誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、
論旨も理由があり、原判決は破棄せざるを得ない。
 (三) 第四点に対する判断
 <要旨第二>刑法第百九十八条に「供与」というのは、昭和十六年法律第六十一号
による改正前の同条にいわゆる「交付」「提供」の両者を包含し、その
提供たるためには必ずしも賄賂を直接相手方の実力支配内に置くことを必要とせ
ず、相手方に交付すべきことを依頼して第三者の実力支配内に置く場合であつて
も、その第三者が相手方と特別な関係があつて、相手方がその賄賂を収受し得べき
状態にあるときは、これによつて賄賂供与罪の成立を妨げないのである。原判決の
認定するところによると、「被告人は捜査に手心を加えて貰う意図のもとに、岩内
地区警察署勤務巡査部長E方に至り同人の妻Fに対し、警察から呼出を受けた旨を
告げて清酒三升を提出して、同人の夫E及び同警察署勤務巡査G、同Hに一升宛渡
され度いと申向けた」というのであるから、これによつて、右Fの夫Eと同一警察
署に勤務する同僚たる右G、Hの両巡査に対する関係においても賄賂供与罪の成立
することは明らかであるから、論旨は理由がない。
 叙上のとおりで、本件控訴は理由があるから、爾余の論点に対する判断をしない
で、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条第三百八十二条により原判決を破棄
し、同法第四百条但し書に従い被告事件について更に判決をする。
 当裁判所が認定する罪となるべき事実及び証拠は、原判示第二の事実及びその認
定の資料として掲ぐる証拠と同一である。
 法律によると、被告人の本件所為は各刑法第百九十八条(罰金刑については尚罰
金等臨時措置法第三条第一項第一号第二条第一項)に該当するが、一個の行為で数
個の罪名に触れる場合であるから、同法第五十四条第一項前段第十条により、犯情
の最も重いEに対する賄賂供与罪の刑に従い、定められた刑のうち懲役刑を選び、
その刑期範囲内で被告人を懲役三月に処し、情状刑の執行を猶予するを相当と認
め、同法第二十五条によりこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予するもの
とし、原審における訴訟費用は、刑事訴訟法第百八十一条第一項に従い証人Aに支
給した分を除き、被告人の負担とする。
 本件公訴事実のうち、被告人は米の生産者であるが法定の除外事由がないのに、
 (一) 妻I及び長男Bと共謀の上、昭和二十五年六月二十一日頃昭和二十四年
度自家生産粳玄米四斗入三俵を精米のため、居町字a精米業C方に運搬輸送し、所
轄食糧事務所長の加工証認を受けず、同人に対し精米加工の委託を為し、同月二十
二日頃これを同所から自宅まで運搬輸送し、
 (二) 同年六月中旬頃業務に関し、自宅において氏名不詳者に対し、自己生産
に係る昭和二十四年度産粳精米四斗入一俵を給付し、これが対価として糯精米四斗
入一俵を受領し、
 たものであるとの点は、前叙の理由により罪とならないから、刑事訴訟法第三百
三十六条に従い無罪の言渡を為すべきである。
 よつて、主文の通り判決する。
 (裁判長判事 藤田和夫 判事 百村五郎左衛門 判事 長友文士)

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