弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士上野開治の上告理由第一点について。
 離婚の原因たる事実に因つて生じた損害賠償の請求を離婚の訴と併合して提起で
きることは、人事訴訟法七条二項但書前段の明定するところであるが、右にいう損
害賠償の請求とは、ただに離婚の相手方に対するものだけではなく、離婚の相手方
と共同不法行為の関係にある第三者に対する損害賠償の請求の如きものを包含する
ものと解するを相当とする(尤も右共同不法行為が離婚原因を構成する場合たるこ
とを要することは勿論である)。けだし、人事訴訟法七条二項本文が人事訴訟と通
常訴訟との併合提起を禁止しているのは、右併合訴訟を無制限に許すときは両訴訟
が性質、手続を異にする関係上審理のさくそう遅延を来すのおそれあるが為めに外
ならない処、前示のような損害賠償の請求と離婚の訴とを併合提起しても、立証そ
の他について便宜こそあれ、これが為めに特に審理のさくそう遅延を来すおそれは
なく、従つてこのような訴の併合提起は、右規定の趣旨に毫末も抵触するものとは
認め難いからである。さすれば、叙上と同一見解の下に上告人両名の共同不法行為
を離婚原因の中核とする本件離婚の訴と右共同不法行為に基く本件請求の訴との併
合提起は右人事訴訟法の規定に違反するものでないとした原判決の判断は正当であ
つて、これに反する所論は独自の見解に座するもので採るを得ない。
 同第二、三点について。
 原判決はその挙示する証拠によつて認められる判示事実関係の下においては上告
人両名は被上告人に対し、結局において共同不法行為者たるの責任を免れ得ないも
のとの趣旨を判断しているのであつて、この判断は当裁判所も正当としてこれを支
持する。所論は、上告人A1において上告人A2の判示不倫行為を知らなかつたが
故に上告人A1に上告人A2の不倫行為を防止すべき義務はなかつた筈であるとい
うが、原判示の前示事実関係に徴すれば、上告人A1は上告人A2の判示不倫行為
を夙に知つていたものと認められるばかりでなく、上告人A1に父たる上告人A2
の自己の妻に対する不倫行為を防止すべき法律上の義務ありや否やの点はともあれ、
原判示のような事実関係である以上は、上告人A1において共同不法行為者として
の責を到底免れ得ないものと認めるを相当とする。なお、原判決がその判示のよう
な事実関係の下においては、上告人A1の被上告人に対する離婚請求権を是認でき
ないとした判断は正当であつて、この場合父たる上告人A2に自己の妻に対する判
示不倫行為があるからと云つて、婚姻を継続し難い重大な事由ありとして右離婚請
求権を是認することはできない。所論も亦独自の見解に座するものでしかない。以
上のとおりであるから所論はすべて採用に価しない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎

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