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裁判例


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平成17年9月26日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成15年(ワ)第13703号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結の日 平成17年7月4日
          判         決
         原      告     株式会社大廣製作所
         訴訟代理人弁護士     後   藤   秀   継
         同            布   施       裕
         同            大   野       潤
         補佐人弁理士       鮫   島   武   信
         被      告     株式会社アトリエワールド
         訴訟代理人弁護士     榮   川   和   広
         訴訟復代理人弁護士    小   川       中
         訴訟代理人弁理士     足   立       勉
          主         文
 1 被告は、別紙イ号物件目録記載の製品を製造し、販売し、または販売の申し
出をしてはならない。
 2 被告は、別紙イ号物件目録記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。
 3 被告は、原告に対し、1554万0998円及びこのうち、別紙遅延損害金
起算日一覧表の各元本欄記載の金額に対し、これに対応する同表の各起算日欄記載
の日から、それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 4 訴訟費用は、これを2分し、その1を被告の、その余を原告の各負担とす
る。
 5 この判決は、第1項及び第3項に限り、仮に執行することができる。
          事実及び理由
第1 請求
 1 主文第1項及び第2項と同旨
 2 被告は、原告に対し、4633万2000円及びこれに対する平成16年1
月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
第2 事案の概要
   本件は、原告が「頭髪処理促進装置」に関する特許権を有しているところ、
被告による製品の製造販売が前記特許権の侵害にあたると主張して、その差止め等
と損害賠償を請求した事案である。
 1 前提となる事実(証拠により認定した事実は末尾に証拠を掲げた。その余は
争いがない事実である。)
  (1)ア 原告は、下記の特許権(以下「本件特許権」といい、その明細書の特許
請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本件発明」と、その明細書を「本件明
細書」という。)の特許権者である(甲1、2)。
     考案の名称     頭髪処理促進装置
     出願日       平成8年10月11日
              (特願平8-270228号の分割出願)
     出願番号      特願2000-201926号
     公開日       平成13年2月6日
     公開番号      特開2001-29122号
     登録日       平成14年5月10日
     特許番号      第3306047号
     特許請求の範囲の請求項1は、別紙特許公報(甲2)の該当欄記載のと
おり
   イ 本件発明の構成要件は、次のとおり分説される。
    A 被施術者の頭髪に赤外線または遠赤外線を照射して頭髪処理を促進す
る頭髪処理促進装置において、
    B 半円形状を有し、赤外線または遠赤外線を放射するヒータを有する発
熱装置と、
    C 該発熱装置を該発熱装置の半円形状の弦に相当する直線を回動の軸と
して、往復回動させる駆動手段とを備えた、
    D ことを特徴とする頭髪処理促進装置。
  (2) 被告は、平成11年から、別紙イ号物件目録添付図面に記載された物件
(以下「イ号物件」という。)を、製造、販売している(ただし、同目録の第3図
に記載の「ヒータフレームの角度」及び「ヒータの角度」については、後述のとお
り争いがある。)。
    イ号物件は、少なくとも、本件発明の構成要件A及びDをいずれも充足す
る。
 2 争点
  (1) イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか
   〔原告の主張〕
   ア イ号物件の構造、特に「ヒータフレーム」及び「ヒータ」の角度につい

     イ号物件の構造は、別紙イ号物件目録記載のとおりである。
     なお、イ号物件において、回動軸を0度とした、ヒータフレーム及びヒ
ータの弧の中心からそれぞれの先端までの角度は、ヒータフレームが173.4度
ないし176度、ヒータが170.9度ないし174度である。
   イ 構成要件Bについて
    (ア) イ号物件の「ヒータ4」は、本件発明の構成要件Bにおける「赤外
線または遠赤外線を放射するヒータ」に、「ヒータフレーム3」は、本件発明の構
成要件Bにおける「発熱装置」に、それぞれ相当する。
    (イ) 本件発明の構成要件Bにいう、「半円形状」とは、下記の理由によ
り、中心角180度の円弧のみを指すものと解すべきではなく、実質的に半円形の
ものを含むと解すべきである。
     ① 本件発明は、被施術者の頭部に対して熱を照射する装置であるか
ら、「半円形状」という用語は、この被施術者の頭部を中心に解釈すべきであり、
幾何学的にのみ解釈すべきではない。
     ② 本件発明は、本件明細書の記載から明らかなように、直管ヒータ、
リング状ヒータ、あるいは1/4弧状ヒータに比して、被施術者の頭髪を均一にム
ラなく加熱できる頭髪処理促進装置を提供するものであり、その手段として、右頭
部から左頭部までの所定の駆動角度範囲で往復回動させることで、前頭部から頭上
を経て後頭部までを、一連のヒータでカバーすることができる、「半円形状のヒー
タ」を用いるものである。
       したがって、本件発明の構成要件Bにいう「半円形状のヒータ」と
は、前頭部から頭上を経て後頭部までを、一連の円弧でカバーすることができる形
状を意味するものである。
    (ウ) イ号物件の「ヒータフレーム3」及び「ヒータ4」は、いずれも、
180度をわずかに越える優弧状をなすように湾曲しているものであり、「ヒータ
4」は、前頭部から頭上を経て後頭部までを、一連の円弧で、ヒータを右頭部から
左頭部までの所定の駆動確度範囲で往復回動させることにより、カバーすることが
できるものであるから、本件発明の構成要件Bにいう、半円形状をなすものといえ
る。
    (エ) 本件発明の構成要件Bの構成がもたらす作用効果は、頭部に均等
に、効率の良い熱照射ができるというものであるが、仮に、被告が主張するよう
に、イ号物件のヒータフレーム及びヒータが、劣弧形状であるとしても、幾何学的
な円弧状との差はわずかであり、その作用効果に有意差はない。
    (オ) 以上のとおりであるから、イ号物件の構造(1)bは、本件発明の構成
要件Bを充足するものである。
   ウ 構成要件Cについて
    (ア) イ号物件の「ヒータフレーム3」は本件発明の構成要件Cにおける
「発熱装置」に相当する。
      イ号物件において、「機構部2」は、内部に2個のモータ9とこれら
2個のモータ9によって正転と逆転を繰り返す2個の回動軸8を備え、各回動軸8
に左右のヒータフレーム2の支持軸6が固定されており、各ヒータフレーム3は、
支持軸6及び回動軸8と同体に往復動作を行うものであるから、イ号物件の「機構
部2」は、本件発明の構成要件Cにおける「駆動手段」に相当する。
    (イ) イ号物件のヒータフレーム3は、幾何学的な意味での半円形状では
ないから、その先端と基端とを結ぶ直線は幾何学的な意味での半円形状の弦ではな
いが、上記イのとおり、ヒータフレーム3は本件発明との関係において実質的に半
円形状であるから、その先端と基端とを結ぶ直線は実質的な意味において半円形状
の弦といえる。
      ところで、イ号物件のヒータフレーム3は、支持軸6の延長線sを中
心として回動する。
      上記ヒータフレーム3の半円形状の弦と、支持軸6の延長線sは、幾
何学上の同一線上には存在しないとしても、その位置の相違はわずかであるから、
左右のヒータフレーム3を、その支持軸を中心に約90度回転させるだけで、ヒー
タ4及びヒータフレーム3は、被施術者の頭部全体をカバーすることができる。
    (ウ) したがって、イ号物件の構造(1)cは、本件発明の構成要件Cを充足
するものである。
   エ なお、被告は、本件特許にかかる無効審判請求事件(以下「本件無効審
判請求事件」という。)における特許権者である原告の主張を援用して、イ号物件
は、従来技術である「中心回動方式」に属するものであると主張する(後記〔被告
の主張〕エ(ア))。
     しかしながら、本件無効審判請求事件において、原告が従来技術として
主張した「中心回動方式」とは、発熱装置を、頭頂部付近を中心に回動させるもの
であり、イ号物件の回動方式がこれにあたらないことは明らかである。
     また、従来技術である中心回動方式は、発熱装置を、頭頂部付近を中心
に回動させるものであり、例えば、回動角度を約150度として、発熱装置による
加熱が全周(360度)をカバーできない場合、加熱できない非加熱領域が、縦に
(頂部から下端まで)生じるという致命的欠陥がある。
     これに対し、イ号物件は、発熱装置の回動角度が180度であり、全周
(360度)をカバーできる範囲に発熱装置を回動させない場合であっても、非加
熱領域は、縦に(頂部から下端まで)生じない。
     逆に、イ号物件の発熱装置を、全周(360度)をカバーできる範囲に
回動させた場合、被施術者の体に発熱装置がぶつかってしまい、頭髪処理促進装置
としては機能しない。
     以上のように、イ号物件が中心回動方式に属しないことは明らかであ
る。
   オ また、被告は、本件無効審判請求事件における特許権者である原告の主
張を援用して、イ号物件においては、発熱装置の動作軌跡範囲のうち両端部ではな
く1つの端部に非加熱領域が生じており、これが、本件発明における「最も強く加
熱される部分」のうち大きな範囲を占めているから、原告が本件発明の作用効果と
して主張した、動作軌跡範囲のうち両端部(うなじ又は側頭部分)が最も強く加熱
されるという作用効果を奏しないと主張する。
     イ号物件においては、下端周縁である人頭の後部下端に回動の軸がある
から、下端周縁である「うなじ」が最も強く加熱されるのであって、本件発明の上
記作用効果を奏している。
     しかも、イ号物件においては、前頭部においても、発熱装置の先端部分
が周速度が小さいことにより、強く加熱されるように構成されており、やはり弦回
動方式の本件発明と実質的に同一のものである。
   カ 以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件をいずれも充足し、そ
の作用効果を奏するものであるから、本件発明の技術的範囲に属する。
   〔被告の主張〕
   ア イ号物件における「ヒータフレーム」及び「ヒータ」の角度について
     イ号物件において、回動軸を0度とした、ヒータフレーム及びヒータの
弧の中心からそれぞれの先端までの角度は、ヒータフレームが173.4度、ヒー
タが170.9度である。
   イ 構成要件Bについて
    (ア) 本件発明の構成要件Bでは、「ヒータ」が半円形状を有しているべ
きところ、イ号物件の「ヒータ4」は、劣弧形状であり、しかも、部位毎に半径が
異なるいびつな曲線形状であって、半円形状ではない。
      また、本件発明の構成要件Bの構成がもたらす作用効果は、「頭部に
均等に、効率の良い熱照射ができる」というものであるが、イ号物件のヒータ4
は、劣円弧状であるため、半円形状のヒータに比べて、赤外線又は遠赤外線を放射
する範囲が狭く、このため、被施術者の頭部を照射する頻度が低くなって、上記の
構成要件Bの作用効果を奏しない。
    (イ) 原告は、イ号物件の「ヒータ4」が、幾何学的には劣弧形状である
としても、本件発明の作用効果と、イ号物件の作用効果に有意差はないと主張す
る。
      しかし、本件明細書の記載に照らせば、本件発明は、ヒータの部位毎
に頭髪までの距離が異なることに起因する温度ムラの発生を解消することを目的と
してされたものであるところ、イ号物件のヒータ4が、劣弧形状であることによる
影響は、頭髪の一部が赤外線照射されなくなるというものであって、その作用効果
への影響は極めて大きく、イ号物件のヒータ4は、本件発明と同一の作用効果を奏
することはできない。
      また、原告は、「半円形状のヒータ」とは、前頭部から頭上を経て後
頭部までを、一連の円弧でカバーすることができる形状を意味するとも主張する
が、本件明細書の記載を見ても、そのような記載も示唆もないから、そのように解
する理由はない。
      さらに、原告は、「半円形状」という用語は、この被施術者の頭部を
中心に解釈すべきであるとも主張するが、そのようなことは、本件明細書に記載も
示唆もされていないから、原告の主張は相当ではない。
    (ウ) 以上のとおりであるから、イ号物件は、本件発明の構成要件Bを充
足しない。
   ウ 構成要件Cについて
    (ア) 本件発明の構成要件Cでは、発熱装置はその半円形状の弦に相当す
る直線を軸として回動すべきところ、イ号物件の「ヒータフレーム3」は、劣弧形
状であり、しかも、部位毎に半径が異なるいびつな曲線形状であって、半円形状で
はないから、その半円形状の弦に相当する直線は存在しない。
      また、イ号物件のヒータフレーム3の回動は、支持軸6の延長線を軸
とするものであるところ、その直線は、ヒータフレーム3の先端と基端とを結ぶ線
とも一致しない。
      そして、イ号物件においては、ヒータと回動軸との関係から、ヒータ
により赤外線が照射される領域は、回動軸を中心軸とする球状体を2等分した半球
状体の内側表面領域よりも狭い領域となるのであり、そのため、イ号物件のヒータ
は、本件発明のヒータに比べて、被施術者の頭部を照射する頻度が低くなって、
「頭部に均等に、効率の良い熱照射ができる」という、構成要件Cがもたらす作用
効果を奏さない。
    (イ) 原告は、イ号物件のヒータフレーム3は本件発明との関係において
実質的に半円形状であるから、その先端と基端とを結ぶ直線は実質的な意味におい
て半円形状の弦といえると主張する。
      しかし、上述のとおり、イ号物件のヒータ4とヒータフレーム3は、
本件発明における「半円形状のヒータを有する発熱装置」の、「右頭部から左頭部
までの所定の駆動角度範囲で往復運動させるだけで、頭部全体をカバーすることが
でき、温度ムラを生じることなく熱照射できる」という作用効果を奏しないから、
イ号物件のヒータフレーム3を本件発明との関係において実質的に半円形状である
ということはできない。
      また、原告は、イ号物件において、ヒータフレーム3の半円形状の弦
と、支持軸6の延長線は、幾何学上の同一線上には存在しないとしても、その位置
の相違はわずかであるから、左右のヒータフレーム3を、その支持軸を中心に約9
0度回転させるだけで、ヒータ4及びヒータフレーム3は、被施術者の頭部全体を
カバーすることができると主張する。
      しかし、ヒータフレーム3の回動軸である支持軸6の延長線と、ヒー
タフレーム3の先端と基端とを結ぶ線とが異なる位置にあることにより、イ号物件
において、ヒータ4が赤外線を照射可能な領域は、本件発明における「半円形状の
ヒータ」が赤外線を照射することのできる領域に比べて狭くなる。その結果は、頭
髪の一部が赤外線照射されなくなるというものであって、その作用効果への影響が
極めて大きいことは上述したとおりであるから、イ号物件のヒータフレーム3及び
ヒータ4は、本件発明と同一の作用効果を奏することはできないのであって、被施
術者の頭部全体をカバーすることができるものではない。
    (ウ) ところで、本件特許において、「発熱装置の半円形状の弦に相当す
る直線を回動の軸」とすることは、本件発明を特定するために必要な事項である。
しかも、拒絶査定不服審判において、出願人である原告が、「該発熱装置を該発熱
装置の半円形状の弦に相当する直線を回動の軸として」と補正したものであるか
ら、原告も十分に検討した上で記載した事項であるというべきであり、この補正に
加えて、出願人である原告が、引用例との差異を主張したことで、特許されたもの
であるから、「発熱装置の半円形状の弦に相当する直線を回動の軸」とすること
は、本件発明特有の作用効果を生じるための部分であり、本件発明の本質的部分で
あるというべきである。
    (エ) 以上のとおりであるから、イ号物件は、本件発明の構成要件Cを充
足しない。
   エ イ号物件が従来技術に属することについて
    (ア) 本件特許権の権利者である原告は、本件無効審判請求事件におい
て、従来技術の回動方式は「中心回動方式」であり、発熱装置の回動軌跡は、「地
球に例えれば、1本の緯線と2本の経線で囲まれる球面領域を呈するもの」である
のに対し、本件発明の回動方式は「弦回動方式」であり、発熱装置の回動軌跡は、
「地球に例えれば、2本の経線で囲まれる球面領域を呈するもの」であり、全く異
なる設計思想に立つものと主張した。
      イ号物件の発熱装置であるヒータフレーム3は、半円形状ではなく劣
弧形状であるために、その一端は回動軸を通るものの、他端は回動軸から離れた位
置となることから、その回動軌跡は、「地球に例えれば、1本の緯線と2本の経線
で囲まれる球面領域を呈するもの」となり、原告の上記主張に照らせば、従来技術
に属するものである。
      したがって、イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するものではな
い。
    (イ) なお、原告は、従来技術については、回動角度を180度未満(1
50度)に設定した場合を前提条件として、そのときに生じる非加熱領域を根拠
に、中心回動方式に致命的な欠陥があるとの主張をしながら、イ号物件について
は、本来ならば同様に回動角度を180度未満に設定して作用効果を対比すべきで
あるのに、回動角度が180度である場合を前提として、非加熱領域が縦に生じな
いと主張する。しかし、この主張は、対比に際して前提条件を恣意的に変更してい
るものであって、不当である。
      また、原告は、本件無効審判請求事件においては、中心回動方式の定
義として、頭頂部に回動軸が存在することは一切規定していなかったのに、本件訴
訟においては、中心回動方式の定義として、頭頂部に回動軸が存在することを前提
として、イ号物件が中心回動方式にはあたらないと主張する。しかし、この主張
は、本件無効審判請求事件と本件訴訟で中心回動方式の定義を意図的に異にして主
張するものであって、不当である。
      さらに、原告は、中心回動方式の説明として、回動角度が360度に
限られないとしながら、イ号物件について説明するに当たり、回動角度は360度
という限定を設けて、そうした場合には被施術者の体に発熱装置がぶつかると主張
する。しかし、この主張は、回動角度を意図的に不当な範囲に設定するものであっ
て、不当である。
   オ 原告が無効審判請求事件で主張した本件発明の作用効果について
    (ア) 本件特許権の権利者である原告は、本件無効審判請求事件におい
て、従来技術は、発熱装置の回動範囲を全周(360度)をカバーできる範囲より
も小さくすると、非加熱領域が頭部の縦に(頂部から下端まで)生じてしまい、頭
髪処理促進装置として致命的な欠陥を露呈するのに対して、本件発明は、非加熱領
域が頭部の縦に生じることがないため、このような致命的な欠陥が生じることがな
いと主張した。
      また、原告は、上記審判請求事件において、本件発明の動作軌跡範囲
のうち「最も強く加熱される部分」が動作軌跡範囲の両端部であり、本件発明は当
該加熱ムラを頭髪処理に有効に利用するものである、すなわち、頭髪処理において
は、最も加熱が必要となる部位が下端周縁(うなじ又は側頭部分)であることを前
提として、本件発明の場合、動作軌跡範囲の両端部(うなじ又は側頭部分)が強く
加熱されることから、うなじ又は側頭部分が強く加熱されない従来技術に比べて有
利な作用効果を奏する、と主張した。
    (イ) イ号物件においては、発熱装置の動作軌跡範囲のうち両端部ではな
く1つの端部に非加熱領域が生じている。
      そして、この非加熱領域は、本件発明における「最も強く加熱される
領域」のうち大きな範囲を占めているから、原告が本件発明の作用効果として主張
した、動作軌跡範囲のうち両端部(うなじ又は側頭部分)が最も強く加熱されると
いう作用効果を奏することができない。
      また、この非加熱領域の発生は、原告が本件無効審判請求事件におい
て主張した、致命的な欠陥にあたるから、イ号物件は、原告が主張する、本件発明
の作用効果を奏することができない。
    (ウ) 原告は、イ号物件の回動軸の1つの端部の非加熱領域よりも外側の
領域を前頭部と設定し、当該領域が、本件発明における「最も強く加熱される領
域」に相当するかのように主張する。
      しかし、本件発明において、回動軸の近傍領域に比べてそこから離れ
た領域への加熱が少ないものであることは明らかであり、そのような領域(イ号物
件について原告が主張する「前頭部」)が「最も強く加熱される領域」にあたらな
いことは明らかである。
      原告の主張は、「最も強く加熱される領域」及び「前頭部」を意図的
に設定し、対比の対象を意図的に変更するもので、不当である。
    (エ) このように、イ号物件は、本件発明の作用効果を奏するものではな
いから、本件発明の技術的範囲に属するものではない。
  (2) 原告の訴訟態度が信義則に反し、本件訴訟による本件特許権の行使が許さ
れないか
   〔被告の主張〕
   ア 本件特許権の特許権者である原告の主張は、以下のとおり、本件明細書
の記載及び本件訴訟における主張と、本件無効審判請求事件における主張とで変遷
している。
    (ア) 原告は、本件発明が解決しようとする課題に関して、本件明細書の
記載及び本件訴訟においては、「加熱ムラをなくす、動作空間を小さくする、恐怖
心をなくす、という3つの事項を同時に達成すること」であると主張していた。
      しかし、本件無効審判請求事件においては、原告は、「被施術者の頭
髪を均一にムラなく加熱でき、かつ動作時の必要空間が小さく、施術者の作業性を
向上できる…頭髪処理促進装置を提供することを目的とする」と主張しており、本
件発明の目的に、被施術者の恐怖心をなくすことが含まれていない。
      そして、本件無効審判請求事件においては、原告は、「『発熱装置が
被施術者の視界に入らない』という効果は本件発明(請求項1)の効果ではない」
旨の主張をしている。
    (イ) 原告は、上記のとおり、本件発明が解決しようとする課題に関し
て、本件明細書の記載及び本件訴訟においては、「加熱ムラをなくす、動作空間を
小さくする、恐怖心をなくす、という3つの事項を同時に達成すること」であると
主張していた。
      しかし、本件無効審判請求事件においては、原告は、「本件発明は、
加熱ムラを生じるものであり、当該加熱ムラを有効に利用するものである」旨の主
張をしている。
      なお、原告は、「加熱ムラをなくす」という作用効果について、後記
〔原告の主張〕イのとおり、ヒータが頭髪に対して直線状態になっている従来技術
との比較であると主張するが、本件明細書には、従来技術として、少なくとも1/
4弧状ヒータが記載されているのに、上記のような意図的な限定をする原告の主張
は不当である。
    (ウ) 原告は、本件訴訟において、本件発明における発熱装置の形状は半
円形状に限られず、劣弧形状の発熱装置を備えるイ号物件も、本件発明の技術的範
囲に属すると主張する。
      しかし、上記(1)〔被告の主張〕エ(ア)のとおり、本件無効審判請求事
件においては、原告は、発熱装置の回動軌跡が、「地球に例えれば、1本の緯線と
2本の経線で囲まれる球面領域を呈するもの」は、従来技術に属するものであると
主張しているところ、イ号物件が備えるような、劣弧形状の発熱装置の回動軌跡
が、「1本の緯線と2本の経線で囲まれる球面領域を呈する」ことは明らかであ
る。
      このように、原告の主張には矛盾がある。
    (エ) 原告は、本件訴訟において、イ号物件に非加熱領域が生じてしまう
としても、熱照射に関する作用効果においては、有意差は生じないと主張する。
      しかし、上記(1)〔被告の主張〕オ(ア)のとおり、本件無効審判請求事
件においては、原告は、本件発明の発熱装置の動作軌跡範囲のうち、イ号物件にお
ける「非加熱領域」に相当する領域が、加熱ムラの利用に関する作用効果において
重要な意味を持つ領域である旨主張している。
      このように、原告の主張には矛盾がある。
   イ(ア) 上記のとおり、原告は、本件発明が解決しようとする課題について
も、本件発明の技術的効果についても主張を変更し、その前後で矛盾が生じてい
る。
      このような主張の変更及び矛盾は、本件発明の技術的範囲を解釈する
上で大きな影響を及ぼすものであるから、この原告の態度は、信義則に反するもの
であり、原告が真偽誠実に権利を行使しているとはいいがたい。
      したがって、原告の本件訴訟による本件特許権の行使は、信義則に反
するものとして棄却すべきである。
    (イ) また、原告は、上記ア(ウ)(エ)のような主張をして、本件発明と従
来技術との差異を主張して、本件無効審判請求事件において不成立審決を得たもの
であるところ、これは、制度上手続が2本立てになっていることを奇貨として、そ
れぞれの手続で自己に有利な恣意的な主張をし、それぞれの手続で自己に有利な結
果を得ようとするものであり、信義則上許されるべきではない。
   ウ(ア) なお、原告は、「恐怖心をなくす」という作用効果を主張するにあ
たり、特許請求の範囲に記載されていない構成要件として、後記〔原告の主張〕ア
のとおりの要件を付加しているが、要件を恣意的に付加したこのような主張は、特
許法70条1項の規定を無視した不当な主張であり、本件発明の作用効果の認定に
大きな影響をあたえるものであって、明細書の記載要件(特許法36条4項あるい
は6項2号)違反の無効理由となり得るものである。
    (イ) また、特許明細書の記載に際して、請求項ごとに異なる課題が存在
する場合には、課題を区別して記載するのが一般的であるが、本件明細書において
は、課題が区別して記載されておらず、また、3つの課題が「かつ」、「ととも
に」という語句でつなげられて記載されており、異なる請求項に対する複数の課題
をまとめて記載したものと理解することは極めて困難である。
      したがって、本件明細書の課題の記載が、後記〔原告の主張〕アのと
おり、異なる請求項に対する複数の課題をまとめて記載したものであるとするなら
ば、明細書の記載要件(特許法36条4項あるいは6項2号)違反の無効理由とな
り得るものである。
   〔原告の主張〕
   ア 〔被告の主張〕ア(ア)について
     「恐怖心をなくす」という効果は、本件発明を前提として、これに加え
て、「被施術者の頭部の回りの、右頭部から左頭部までの所定の駆動角度範囲、あ
るいは前頭部から後頭部までの所定の駆動角度範囲で往復回動させることにより」
という特定の条件を付加した構成を採ることによって、得られる効果であり、本件
特許の請求項2及び3の発明の効果である。
     したがって、本件明細書に、本件特許の発明が解決しようとする課題と
して、「恐怖心をなくす」ことを記載することは、当然であり、本件訴訟における
原告準備書面の記載も、この本件明細書の記載を引用したにすぎない。また、本件
明細書には、請求項1に記載された本件発明の効果としては、「恐怖心をなくす」
とは記載されていない。
     そして、本件無効審判請求事件において、請求項1に記載された本件発
明の課題として、「恐怖心をなくす」を引用しなかったのは、本件発明の効果に対
応させたものにすぎず、本件発明の課題に変更はない。
     また、「『発熱装置が被施術者の視界に入らない』という効果は本件発
明(請求項1)の効果ではない」旨の主張は、上に述べたとおり、当然の主張であ
る。
   イ 〔被告の主張〕ア(イ)について
     「加熱ムラをなくす」という効果は、本件明細書に記載したような、直
感ヒータやリング状ヒータといった、頭髪に対し直線状態になっているヒータを回
転させる、従来技術との比較における効果である。
     他方、「加熱ムラを利用する」というのは、どのような回動方式であっ
ても、発熱装置を回動によって移動させるものである以上、移動速度の差によって
何らかの加熱ムラを生ずるものであるが、本件発明は、この加熱ムラを頭髪処理に
有効に利用するものであり、優れた方式であると主張しているものであって、上記
の「加熱ムラをなくす」という際の「加熱ムラ」とは異なるものを問題にしている
ことは明らかであって、主張を変更しているものではない。
   ウ 〔被告の主張〕ア(ウ)について
     前記(1)〔原告の主張〕エのとおり、原告の主張には、被告が主張するよ
うな矛盾は存在しない。
   エ 〔被告の主張〕ア(エ)について
     前記(1)〔原告の主張〕オのとおり、原告の主張には、被告が主張するよ
うな矛盾は存在しない。
   オ 以上のとおりであるから、被告の主張は理由のないものである。
  (3) 損害額
   〔原告の主張〕
   ア 被告は、平成14年5月10日から、平成16年12月31日までの
間、イ号物件を、少なくとも720台販売した。
     原告は、平成13年5月から、本件発明の実施品(商品名:わくわく2
1。以下「原告製品」という。)を製造販売している。
   イ 特許法102条1項による損害額の計算
     原告が、原告製品を販売することにより得ることのできる利益は、1台
当たり6万4219円である。
     したがって、被告によるイ号物件の販売数に、この販売がなければ原告
において販売することができた原告製品の1台当たりの利益額を乗じると、462
3万7680円となる。
   ウ 特許法102条2項による損害額の計算
     被告が上記アのとおりイ号物件を販売したときの単価は、いずれも21
万4500円であった。
     被告のイ号物件についての利益率は30パーセントである。
     なお、被告が後記〔被告の主張〕イで主張する、イ号製品の製造原価
は、高きに過ぎる。
     したがって、被告は、イ号物件の上記販売により、4633万2000
円の利益を受けた。
   〔被告の主張〕
   ア 被告が、平成14年5月10日から平成16年12月31日までの間
に、イ号物件を販売した台数(クレームにより新品と交換した台数も含む。)は、
336台である。
   イ 被告が、イ号物件を販売したときの価格は、代理店に対する一般的な卸
値は単価21万円、美容店等に直接販売するときの一般的な価格は単価27万70
00円であるが、個別の販売でも異なっている。このうち、平成14年5月10日
から平成15年11月10日までに販売したイ号物件276台(クレームにより新
品と交換した台数も含む。)の売上高合計は、5225万3400円であった。
     イ号物件の1台当たりの製造原価は、材料費が13万4818円、労務
費及び経費が2万7600円の合計16万2418円である。したがって、イ号物
件276台分の製造原価は、4482万7368円であった。
     また、被告が平成14年5月10日から平成15年11月10日までに
販売したイ号物件276台(クレームにより新品と交換した台数も含む。)の販売
に要した販売管理費は、985万2194円であった。
     以上のとおり、被告は、イ号物件の製造販売によって、利益を受けてい
ない。
第3 当裁判所の判断
 1 本件発明について
  (1) 甲第2号証によれば、本件特許の特許請求の範囲は、請求項1から4まで
からなり、請求項2ないし4は、それぞれ以下のとおりのものであることが認めら
れる。
   ア 請求項2
     請求項1に記載の頭髪処理促進装置において、上記発熱装置は、該発熱
装置の半円形状の両端にそれぞれ設けられた2本の支持軸により、半円形状の本体
支持枠の半円形状の両端にそれぞれ回動自在に連結され、上記2本の支持軸のいず
れか一方に取り付けられた上記駆動手段により、被施術者の頭部の回りの、前頭部
から後頭部までの所定の駆動角度範囲を往復回動する、ことを特徴とする頭髪処理
促進装置。
   イ 請求項3
     請求項1に記載の頭髪処理促進装置において、上記発熱装置は、該発熱
装置の半円形状の一端に設けられた支持軸により、本体支持枠に回動自在に連結さ
れ、上記支持軸に取り付けられた上記駆動手段により、被施術者の頭部の回りの、
右頭部から左頭部までの所定の駆動角度範囲を往復回動する、ことを特徴とする頭
髪処理促進装置。
   ウ 請求項4
     請求項2に記載の頭髪処理促進装置において、上記ヒータは、各々独立
に制御される複数のヒータ部分で構成される、ことを特徴とする頭髪処理促進装
置。
  (2) また、甲第2号証によれば、本件明細書の「発明の詳細な説明」の項に
は、以下のとおりの記載があることが認められる。
   ア 【発明の属する技術分野】
     この発明は、理容、美容において、頭髪に向かって赤外線を照射してこ
れを加熱し、洗髪時の乾燥、頭髪の染色、頭髪のパーマネント、頭髪のウェーブ化
等の頭髪処理の促進を行なう頭髪処理促進装置に関するものである。
   イ 【従来の技術】
     従来、理美容室における、頭髪の染色、頭髪のパーマネント、頭髪のウ
ェーブ化等の頭髪処理を促進する装置としては、赤外線を放射する直管ヒータを複
数本、被施術者の頭部を取り囲むように配置し、この複数の直管ヒータから被施術
者の頭髪に赤外線を照射して頭髪を加熱するようにしたものがある。また、直管ヒ
ータを複数本用いるかわりに、直管ヒータを回転体に傾斜を付けて取り付け、その
放射面が円錐面軌跡を描くように移動させる構成とし、ヒータが円錐面軌跡の内側
に位置する被施術者の頭部に沿って移動しながら熱を照射するようにしたものもあ
る。
     また、…公報には、リング状のヒータを回転体に取り付け、被施術者の
頭部の周りで該リング状ヒータの放射面が円錐面軌跡を描くようにヒータを移動さ
せるようにしたものが記載されている。同じく、…公報には、他の頭髪処理促進装
置として、1/4弧状のヒータの一端を回転体に接続して、1/4弧状のヒータ
を、被施術者の頭部の周りで該1/4弧状のヒータの放射面が半球面軌跡を描くよ
うにヒータを移動させるようにしたものが記載されている。
   ウ 【発明が解決しようとする課題】
     従来の複数の直管ヒータを用いた頭髪処理促進装置では、複数のヒータ
を使用しているため、スペースをとり、狭い理美容室での施術者の作業性を煩わす
という問題があった。また、直管ヒータ、リング状ヒータを回転させるものでは、
ヒータが頭髪に対し直線状態になっており、曲面になっている頭髪に対し温度分布
にムラが生じ、頭髪全体を均等に温度照射できないという問題があり、また、被施
術者の頭部を均等に照射するために頭部を囲うような状態の軌跡を描くので、比較
的大きなスペースを要することになり、狭い理美容室での作業性が悪くなるという
問題があった。また、直管ヒータ、リング状ヒータ、あるいは1/4弧状ヒータを
被施術者の頭部の周囲を取り囲むように回転させるものにおいては、これらの発熱
装置(ヒータ等)が被施術者の視界に入り恐怖感を伴うという問題があった。
     この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、被
施術者の頭髪を均一にムラなく加熱でき、かつ動作時の必要空間が小さく、施術者
の作業性を向上できるとともに、ヒータ等が視界に入ることによる被施術者の恐怖
感をなくすことのできる頭髪処理促進装置を提供することを目的とする。
   エ 【課題を解決するための手段】
     上記課題を解決するために、本発明(請求項1)に係る頭髪処理促進装
置は、被施術者の頭髪に赤外線または遠赤外線を照射して頭髪処理を促進する頭髪
処理促進装置において、半円形状を有し、赤外線または遠赤外線を放射するヒータ
を有する発熱装置と、該発熱装置を該発熱装置の半円形状の弦に相当する直線を回
動の軸として、往復回動させる駆動手段とを備えたものである。また、本発明(請
求項2)に係る頭髪処理促進装置は、請求項1に記載の頭髪処理促進装置におい
て、上記発熱装置は、該発熱装置の半円形状の両端にそれぞれ設けられた2本の支
持軸により、半円形状の本体支持枠の半円形状の両端にそれぞれ回動自在に連結さ
れ、上記2本の支持軸のいずれか一方に取り付けられた上記駆動手段により、被施
術者の頭部の回りの、前頭部から後頭部までの所定の駆動角度範囲を往復回動する
ものである。また、本発明(請求項3)に係る頭髪処理促進装置は、請求項1に記
載の頭髪処理促進装置において、上記発熱装置は、該発熱装置の半円形状の一端に
設けられた支持軸により、本体支持枠に回動自在に連結され、上記支持軸に取り付
けられた上記駆動手段により、被施術者の頭部の回りの、右頭部から左頭部までの
所定の駆動角度範囲を往復回動するものである。また、本発明(請求項4)に係る
頭髪処理促進装置は、請求項2に記載の頭髪処理促進装置において、上記ヒータ
は、各々独立に制御される複数のヒータ部分で構成されるものである。
   オ 【発明の効果】
     以上のように、本発明(請求項1)によれば、被施術者の頭髪に赤外線
または遠赤外線を照射して頭髪処理を促進する頭髪処理促進装置において、半円形
状を有し、赤外線または遠赤外線を放射するヒータを有する発熱装置と、該発熱装
置を該発熱装置の半円形状の弦に相当する直線を回動の軸として、往復回動させる
駆動手段とを備えた構成としたから、発熱装置部分の動作軌道範囲を小さくでき、
施術者の作業性の向上を図ることができる効果があり、また、上記発熱装置からの
熱を、無駄なく被施術者の頭髪の加熱に用いて、頭髪処理の促進を効率良く行うこ
とができる。また、本発明(請求項2)によれば、請求項1に記載の頭髪処理促進
装置において、上記発熱装置は、該発熱装置の半円形状の両端にそれぞれ設けられ
た2本の支持軸により、半円形状の本体支持枠の半円形状の両端にそれぞれ回動自
在に連結され、上記2本の支持軸のいずれか一方に取り付けられた上記駆動手段に
より、被施術者の頭部の回りの、前頭部から後頭部までの所定の駆動角度範囲を往
復回動するものとしたので、上記の効果に加え、さらに発熱装置が被施術者の視界
に入らないようにして、該発熱装置(ヒータ等)が視界に入ることによる被施術者
の恐怖感をなくすことができる効果がある。また、本発明(請求項3)によれば、
請求項1に記載の頭髪処理促進装置において、上記発熱装置は、該発熱装置の半円
形状の一端に設けられた支持軸により、本体支持枠に回動自在に連結され、上記支
持軸に取り付けられた上記駆動手段により、被施術者の頭部の回りの、右頭部から
左頭部までの所定の駆動角度範囲を往復回動するものとしたので、上記の効果に加
え、さらに上記発熱装置が被施術者の視界に入らないようにして、該発熱装置(ヒ
ータ等)が視界に入ることによる被施術者の恐怖感をなくすことができる効果があ
る。また、本発明(請求項4)によれば、請求項2に記載の頭髪処理促進装置にお
いて、上記ヒータは、各々独立に制御される複数のヒータ部分で構成されるものと
したので、被施術者の頭髪をより均一に加熱することができる効果がある。
  (3) 以上のとおりの本件明細書の記載に照らせば、本件発明は、
   ① 理容、美容において、頭髪に向かって赤外線を照射してこれを加熱して
頭髪処理の促進を行う、頭髪処理促進装置に関し、
   ②a 従来の複数の直管ヒータを用いたものは、スペースをとり、狭い理美
容室での施術者の作業性を煩わすという課題があり、
    b また、従来の直管ヒータ、リング状ヒータを回転させるものは、
     (a) ヒータが頭髪に対し直線状態になっており、曲面になっている頭
髪に対し温度分布にムラが生じ、頭髪全体を均等に温度照射できないという課題が
あり、
     (b) また、被施術者の頭部を均等に照射するために頭部を囲うような
状態の軌跡を描くので、比較的大きなスペースを要することになり、狭い理美容室
での作業性が悪くなるという課題があるところ、
   ③ これらの課題を解決するために、すなわち、発熱装置部分の動作軌道範
囲を小さくして、動作時の必要空間を小さくし、もって施術者の作業性の向上を図
るとともに、発熱装置からの熱を、無駄なく被施術者の頭髪の加熱に用いて、被施
術者の頭髪を均一にムラなく加熱し、もって頭髪処理の促進を効率良く行うことが
できるようにすることを目的として、
   特許請求の範囲記載の構成をとったものであると認められる。
  (4) この点に関し、被告は、本件明細書に、本件発明が解決しようとする課題
について、「恐怖心をなくす」ことが含まれる旨記載されていると主張する(前記
「争点」(2)〔被告の主張〕ア(ア)(イ))。しかし、上記(2)オのとおりの本件明細
書の記載に照らせば、「被施術者の恐怖心をなくす」効果は、本件発明(請求項
1)の効果ではなく、請求項2及び3の効果として記載されていることが明らかで
ある。
    なお、被告は、前記「争点」(2)〔被告の主張〕ウ(イ)のようにも主張す
る。しかし、上記(2)オのとおり、本件明細書においては、【発明の効果】におい
て、解決しようとする課題と請求項との対応が明確に記載され、容易にその対応を
読みとることができるのであるから、異なる請求項に対する複数の課題をまとめて
記載しても、被告が主張するような明細書の記載要件違反の無効理由が生じるもの
でもない。
  (5) 以上を前提として、本件争点について判断することとする。
 2 争点(1)(技術的範囲への属否)について
  (1) 構成要件B及びCについて
   ア 構成要件B及びCの構成によって奏されるべき効果は、前記1で検討し
たところに照らせば、構成要件Bのとおり構成された発熱装置を構成要件Cのとお
り往復回動させて被施術者の頭髪を加熱することによって、動作時の必要空間を小
さくするとともに、被施術者の頭髪を均一にムラなく加熱することにあると認めら
れる。
     これらの効果のうち、前者の効果を奏するためには、発熱装置自体が半
円形状である必要があり、また、後者の効果を奏するためには、ヒータ部分が半円
形状である必要があるから、構成要件Bにおいて半円形状に構成されるべきは、ヒ
ータ及び発熱装置の双方であると解される。
     ところで、このような構成要件B及びCの構成によって奏されるべき効
果に鑑みれば、構成要件Bでいう「半円形状」のヒータ及び発熱装置とは、中心角
が180度の「完全な」半円弧状のもののみを指すものではなく、これとほぼ同一
で、上記効果を奏することができるようなものであれば、わずかに中心角が180
度に満たないものや、部位ごとにわずかに半径が異なるものといった、略半円弧状
のものも含むものと解すべきである。
     すなわち、本件発明は、人間の頭髪に向かって赤外線等を照射して加熱
するための装置に関するものである(前記1(2)ア)ところ、人間の頭髪自体、頭部
のうち完全な半球状の部分に均一に存在するなどといったものではないうえ、被施
術者が、施術に要する時間中、頭部を完全に固定し続けることが期待できないこと
は自明である。そして、このように、加熱の対象(施術中の被施術者の頭髪)が完
全な半球状ではないため、ヒータの半円弧状をどれだけ「完全な」ものにしても、
厳密な意味で被施術者の頭髪を均一にムラなく加熱することは原理的にも実際的に
も不可能であって、そうである以上、ヒータの形状については、半円弧状が「完
全」か否かということには意味が存在しないこともまた自明だからである。
     また、発熱装置の形状についていえば、動作時の必要空間を小さくする
目的は、上記及び前記1で検討したとおり理美容室における施術者の作業性の向上
であるから、これもまた、「完全な」半円弧状でなければならないものではないか
らである。
     したがって、構成要件Bでいう「半円形状」とは、上記のとおり、完全
な半円弧状に限らず、これとほぼ同一で、上記効果を奏するような略半円弧状を含
むものと解するのが相当である。
     そして、このような略半円弧状のうち、中心角がわずかに180度に満
たない発熱装置をもって構成し、かつ、その現実の端部の一方又はその付近が回動
軸と接続しているときには、回動軸を0としたときの発熱装置の中心角も180度
にわずかに満たないものとなるのであるから、上記の構成要件B及びCによって奏
されるべき効果に照らせば、回動軸と発熱装置との接続点と、他方の端部を回動軸
を0として中心角が180度に達するまで延長したと仮想したときに達する点とを
結ぶ直線(すなわち、回動軸の延長線)をもって、構成要件Cにいう、発熱装置の
半円形状の弦に相当する直線であるということができる。
   イ 以上を前提としてイ号物件を見るに、イ号物件において、発熱装置に相
当するヒータフレーム及びヒータについて、回動軸(支持軸)を0とした、弧の中
心からそれぞれの先端までの角度は、少なくとも、ヒータフレームは173.4度
以上、ヒータは170.9度以上であることは当事者間に争いがない。
     そうすると、イ号物件のヒータフレーム及びヒータについて、中心角1
80度の完全な半円弧との中心角の差は、それぞれ6.6度以下と9.1度以下と
なる。
     そして、被告の主張及び乙第7号証によっても、イ号物件において、回
動軸に接続されていない側のヒータの端部と、回動軸の延長線との距離は、3.8
センチメートルにすぎない。
     ここで、この程度の差が存在することによって、上記アで述べたとおり
の構成要件B及びCによって奏されるべき効果が生じなくなるものとは考えられな
い。
     また、被告は、イ号物件のヒータフレーム及びヒータは、部位毎に半径
が異なるいびつな曲線形状であると主張する。しかし、甲第13号証及び乙第5な
いし第7号証によれば、イ号物件のヒータフレーム及びヒータの形状は、仮にこれ
が正確な円弧を描いたものでないとしても、略半円弧状であると認めることがで
き、上記アで述べたとおりの構成要件B及びCによって奏されるべき効果が生じな
くなる程度にまでいびつな曲線形状になっていると認めることはできない。
     以上のとおりであるから、イ号物件のヒータ及びヒータフレームの形状
は、上記アで検討したところの構成要件Bにいう「半円形状」であると認めるべき
ものであり、したがって、イ号物件は構成要件Bを充足するということができる。
     そして、イ号物件のヒータフレームについて、その一方の端部付近が回
動軸に接続されており、回動軸を0としたときの発熱装置の中心角も180度にわ
ずかに満たないものとなることは上記述べたところ及び乙第5ないし第7号証によ
って認めることができるところ、発熱装置の半円形状の弦に相当する直線は上記ア
のとおり解することができるから、イ号物件は構成要件Cも充足するということが
できる。
     被告が争点(1)〔被告の主張〕イ及びウで主張するところは、上記述べた
ところに照らして採用することができない。
  (2) イ号物件が従来技術に属するとの被告の主張(争点(1)〔被告の主張〕
エ)について
    被告は、原告の本件無効審判請求事件における主張を根拠として、イ号物
件が、原告が従来技術であるとした「中心回動方式」に属すると主張する。
    しかしながら、原告が本件無効審判請求事件において従来技術であると主
張するところの「中心回動方式」とは、半円弧状あるいは略半円弧状の発熱装置
が、その半円形状の弦に相当する直線を中心とするのではなく、その円弧上の中央
付近の点において円弧と略垂直に交わる直線を中心として、回動する方式を意味し
ていることは、本件無効審判請求事件の答弁書(乙第23号証の一部)の6頁以下
に、上記審判請求事件の甲第1号証記載の発明についての記述として、「甲第1号
証の発明は、請求人の主張(審判請求書第19頁4~6行)に従えば、『C1:送
風管2を該送風管2の半円形状の円周方向中央位置(頂点位置)から半円の径方向
中心に向かう直線を回動の軸として、往復回動させる駆動手段を備えた、ことを特
徴とする頭髪処理装置』(以下、中心回動方式という)を開示するものであ
る。」、「この中心回動方式によれば、発熱装置を、頭頂部付近を中心にヘリコプ
ターの羽根のようにグルグルと回動させるものである。」と記載されていること及
び上記審判請求事件の甲第1号証(乙第14号証の一部)の記載から明らかであ
る。
    したがって、イ号物件が、原告が本件無効審判請求事件において従来技術
であるとした「中心回動方式」に属するとの被告の主張は、理由がないことが明ら
かである。
  (3) イ号物件が、原告が無効審判請求事件で主張した本件発明の作用効果を奏
しないとの被告の主張(争点(1)〔被告の主張〕オ)について
    被告は、原告の本件無効審判請求事件における主張を根拠として、イ号物
件は、原告が本件発明の作用効果として主張した作用効果を奏しないと主張する。
    しかしながら、被告が援用する、本件無効審判請求における原告の主張と
は、「従来技術は、発熱装置の回動範囲を全周(360度)をカバーできる範囲よ
りも小さくすると、非加熱領域が頭部の縦に(頂部から下端まで)生じてしまい、
頭髪処理促進装置として致命的な欠陥を露呈する」のに対し、「本件発明は、非加
熱領域が頭部の縦に生じることがないため、このような致命的な欠陥が生じること
がない」との主張(以下「主張①」という。)と、「頭髪処理においては、最も加
熱が必要となる部位が下端周縁(うなじ又は側頭部分)であることを前提として、
本件発明の場合、動作軌跡範囲の両端部(うなじ又は側頭部分)が強く加熱される
ことから、うなじ又は側頭部分が強く加熱されない従来技術に比べて有利な作用効
果を奏する」との主張(以下「主張②」という。)である。
    これをイ号物件についてみるに、甲第3号証及び乙第12号証によれば、
被告が主張する非加熱領域(それがどの程度のものかはともかくとして)が生じる
端部は、被施術者の前頭部に相当するものと認められる。
    ところで、被告が援用する原告の上記主張①においては、致命的欠陥とし
て生じる非加熱領域は、「頭部の縦に(頂部から下端まで)」生じるものであるか
ら、被告が主張する非加熱領域が被施術者の前頭部に生じるからといって、イ号物
件において、上記の致命的欠陥を生じさせないという作用効果を奏することができ
なくなるという関係に立たないことは、自ずから明らかである。
    また、被告が援用する原告の上記主張②においては、「最も加熱が必要と
なる部位」は「下端周縁(うなじ又は側頭部分)」であり、本件発明において「強
く加熱される」部位は「動作軌跡範囲の両端部(うなじ又は側頭部分)」であると
いうのであるから、仮に、被告が主張するような非加熱領域が被施術者の前頭部に
生じるとしても、イ号物件において、上記の強く加熱されるべき部位が強く加熱さ
れるという作用効果を奏することができなくなるという関係には立たないことも、
当然に明らかである。
    したがって、被告の上記主張は理由のないものである。
  (4) 以上のとおり、イ号物件は本件発明の構成要件をいずれも充足し、また、
イ号物件が従来技術に属するとか、本件発明の作用効果を奏しないといった被告の
主張にも理由がないから、イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するものと認めら
れる。
 3 争点(2)(原告の訴訟態度)について
  (1) 争点(2)〔被告の主張〕ア(ア)及びウの被告の主張に理由のないことは、
前記1(4)で述べたとおりである。
    争点(2)〔被告の主張〕ア(ウ)の被告の主張に理由のないことは、前記
2(2)で述べたところに照らして明らかである。
    争点(2)〔被告の主張〕ア(エ)の被告の主張に理由のないことは、前記
2(3)で述べたところに照らして明らかである。
  (2) 争点(2)〔被告の主張〕ア(イ)の被告の主張について
   ア 被告は、「加熱ムラをなくす」という作用効果について、原告が、ヒー
タが頭髪に対して直線状態になっている従来技術との比較であると主張するのに対
し、本件明細書には、従来技術として、少なくとも1/4弧状ヒータが記載されて
いるのに、上記のような意図的な限定をするのは不当であるとの主張する。しか
し、前記1で検討したとおり、本件明細書において、加熱ムラの課題は、直管ヒー
タや、リング状ヒータを回転させるものについて記載されており、1/4弧状ヒー
タを被施術者の頭部の周囲を取り囲むように回転させるものについては、被施術者
に恐怖感を与えるという課題に関して記載されていることが明らかであるから、採
用することができない。
   イ また、被告は、原告が、本件無効審判請求事件において、「本件発明
は、加熱ムラを生じるものであり、当該加熱ムラを有効に利用するものである」旨
の主張をしていると主張する。
     乙第23号証中の上記審判請求事件における原告の答弁書の9頁以下に
よれば、審判請求人である被告の、本件発明が従来技術よりも作用効果において劣
ったものであるとの主張に対する反論として、原告が、発熱装置を回動によって移
動させる以上、何らかの加熱ムラを生ずるが、本件発明は、そのような加熱ムラを
頭髪処理に有効に利用するものであって、従来技術よりも優れている旨の主張をし
ていることが認められる。
     原告の上記主張は、本件明細書に記載されていない内容のものではある
が、そのような主張をしたからといって、本件特許権が行使できなくなるものとい
うことはできない。
     また、上記の点について、原告が、本件訴訟と無効審判請求事件とで殊
更に相反する主張をしているというものでもないから、原告の訴訟態度を信義則に
反するものということもできない。
     したがって、この点についての被告の主張も、採用することができな
い。
 4 争点(3)(損害額)について
  (1) 原告が、平成13年5月ころから、本件発明の実施品である原告製品を製
造販売していることは、甲第14号証の1・2によってこれを認める。
  (2) イ号物件の販売台数
   ア 被告のイ号物件の売上票である乙第16号証の1ないし6及び第29号
証によれば、平成14年5月10日から平成16年12月31日までの間に、被告
が、イ号物件を合計337台出荷していることが認められ、被告がこれより多数の
イ号物件を出荷していることを認めるに足りる証拠はない。
   イ ところで、被告は、イ号物件の出荷台数には、クレームにより新品と交
換した台数も含むと主張する。
     そこで、上記各号証を見ると、そこには、被告によるイ号物件の販売の
形跡が記されているが、このうちには、売上単価や売上金額が0とされているもの
が合計95台分存在することが認められる。そして、これを、被告の上記主張に照
らせば、これらがクレームにより新品と交換した出荷分であるものと認められる。
     このような、クレームにより新品と交換した分の台数の損害額計算にお
ける取り扱いについて検討するに、特許法102条1項による損害額の計算にあた
っては、そのような出荷は正常な製品であれば発生しないはずのものであるから、
そもそも侵害者による販売台数として計上すべきものではないと解され、また、同
条2項による損害額の計算にあたっては、そのような出荷によって侵害者は利益を
受けていないものであるから、これも販売としては取り扱うべきものではないと解
するのが相当である。
     したがって、以下の損害額計算のために認定すべきイ号物件の販売台数
としては、上記各号証において売上単価や売上金額が0とされている出荷(クレー
ムによる新品との交換)分は計上しないこととする。
   ウ 以上によれば、平成14年5月10日から平成16年12月31日まで
の間に、被告が販売したイ号物件の台数は、合計242台であると認めることがで
きる。
  (3) 特許法102条1項による損害額の計算
    原告が、原告製品を販売することにより得ることのできる利益が、1台当
たり6万4219円であることは、甲第16ないし19号証及び甲第20号証の1
ないし4並びに弁論の全趣旨によってこれを認める。
    そして、イ号物件の販売台数は、上記(2)のとおり242台である。
    また、甲第16、第17、第19号証及び甲第20号証の1ないし4並び
に弁論の全趣旨によれば、上記販売台数を加えても、原告による実施の能力を越え
ないものと認められる。
    したがって、特許法102条1項により、被告のイ号物件の製造販売によ
り原告が被った損害の額は、下記の計算式のとおり、1554万0998円と計算
される。
   ○ 242(台)×64,219(円)=15,540,998(円)
  (4) 特許法102条2項による損害額の計算
    原告は、イ号物件についての被告の利益率について、30パーセントであ
ると主張するが、甲第15号証は、十分な裏付けを欠くものであるから、これによ
っては原告の主張を認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
    したがって、イ号物件1台の製造に要する費用について、被告が自認する
16万2418円を下回ると認めることはできない。
    そうすると、仮に、イ号物件の販売単価が、原告の主張するとおり21万
4500円であったとしても、イ号物件の製造販売により被告が受けた利益は、1
台当たり5万2082円を上回らないこととなる。この点に鑑みれば、本件全証拠
によっても、特許法102条2項により計算される損害額が、上記(3)で同条1項に
より計算した損害額を上回ると認めることはできない。
  (5) 遅延損害金の始期について
    原告は、訴状送達の日の翌日(平成16年1月14日)からの遅延損害金
を請求する。
    しかしながら、被告によるイ号物件の販売のうち、上記平成16年1月1
4日より後の販売によって生じた損害については、同日からの遅延損害金が発生す
る理由はなく、それぞれ、イ号物件の販売日から遅延損害金が発生するにとどま
る。
    そして、乙第16号証の1ないし6及び第29号証によれば、被告による
イ号物件の販売台数のうち、平成14年5月10日から平成16年1月14日まで
の販売台数及びそれ以後の各日における販売台数は、別紙販売台数一覧表記載のと
おりであることが認められる。
    したがって、本件において認容すべき遅延損害金の始期は、別紙遅延損害
金起算日一覧表記載のとおりとなる。
 5 結論
   以上のとおりであるから、原告の請求は、主文掲記の範囲で理由がある。
   なお、主文のうち、廃棄にかかる第2項については、仮執行の宣言は相当で
ないからこれを付さない。
   よって、主文のとおり判決する。
      大阪地方裁判所第26民事部
         裁判長裁判官    山   田   知   司
            裁判官    高   松   宏   之
             裁判官    守   山   修   生
(別紙)
イ号物件目録第1図第2図第3図第4図第5図第6図
(別紙)遅延損害金起算日一覧表
      
元本(円)起算日
13,678,647平成16年1月14日
128,438平成16年1月15日
64,219平成16年2月20日
128,438平成16年2月26日
128,438平成16年2月27日
64,219平成16年3月8日
64,219平成16年3月22日
64,219平成16年3月24日
64,219平成16年4月8日
64,219平成16年4月14日
128,438平成16年4月30日
64,219平成16年5月21日
64,219平成16年6月7日
64,219平成16年6月24日
64,219平成16年6月28日
64,219平成16年6月30日
64,219平成16年7月21日
64,219平成16年7月29日
64,219平成16年8月31日
64,219平成16年9月2日
64,219平成16年9月16日
64,219平成16年9月30日
64,219平成16年11月4日
64,219平成16年11月12日
64,219平成16年11月17日
64,219平成16年12月6日
      
(別紙)販売台数一覧表
販売日販売台数
平成16年1月14日まで213
平成16年1月15日2
平成16年2月20日1
平成16年2月26日2
平成16年2月27日2
平成16年3月8日1
平成16年3月22日1
平成16年3月24日1
平成16年4月8日1
平成16年4月14日1
平成16年4月30日2
平成16年5月21日1
平成16年6月7日1
平成16年6月24日1
平成16年6月28日1
平成16年6月30日1
平成16年7月21日1
平成16年7月29日1
平成16年8月31日1
平成16年9月2日1
平成16年9月16日1
平成16年9月30日1
平成16年11月4日1
平成16年11月12日1
平成16年11月17日1
平成16年12月6日1

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