弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告は、別紙目録記載の硬貨投入口開閉装置を付したコインロツカーを製造
し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡のために展示してはならない。
2 被告は、その本店所在地及び工場において、占有する右1項記載のコインロツ
カーを廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金六、六九七万四、二一五円を支払え。
4 仮執行宣言
二 被告
主文同旨
第二 原告の請求原因
一 原告の実用新案権
 原告は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考
案」という。)を有する。
考案の名称 貸ロツカーの硬貨投入口開閉装置
出願日 昭和四三年六月七日
公告日 昭和四八年五月一七日
登録日 昭和四九年二月七日
登録番号 第一〇二九〇三八号
 そして、本件考案の願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の項の記載
は、次のとおりである。
「鍵2の挿入または抜取りにより硬貸投入口8を開閉する遮蔽板9を設けたことを
特徴とする貸ロツカーの硬貸投入口開閉装置。」(以下、本件考案についての番号
は、別添本件考案の実用新案公報記載のものを指す。)
二 本件考案の構成
本件考案の構成要件は、次のとおりである。
1 鍵2の挿入により硬貨投入口8を開き、
2 鍵2の抜取りにより硬貨投入口8を閉じる、
3 遮蔽板9を設けた、
4 貸ロツカーの硬貨投入口開閉装置。
三 本件考案の作用効果
本件考案の作用効果は、次のとおりである。
1 本件考案にかかる硬貨投入口開閉装置は、鍵2の挿入又は抜取りに伴い、硬貨
投入口8を開閉する遮蔽板9を連動させるので、ロツカー使用中に誤つて、さら
に、硬貨を投入したりすることがなく、かつ、硬貨計数装置16やロツク装置の故
障を防止できる。
2 また、右装置は、装置自体が簡単であるため、新たに製造されるロツカーだけ
でなく、既製品にも容易に取り付けることができる。
3 さらに、右装置の硬貨投入口8は、鍵2の挿入又は抜取りにより、遮蔽板9を
作動して、硬貨投入口8を開閉できるため、たとえば、使用時間単位毎に料金を徴
集し、使用単位時間経過後は追加料金を投入しない限り、解錠できない貸ロツカー
においては、ロツカーの扉の施錠を解錠することなく、鍵2を挿入して、硬貨投入
口8を開くことにより、追加料金を簡単に投入して、継続使用することが可能であ
る。
四 被告製品
 被告は、昭和四八年五月一八日から別紙目標記載の硬貨投入口開閉装置(以下
「本件物件」という。)を付したコインロツカー(商品名アルフアコインロツカー
ターミナル用、以下「本件コインロツカー」という。)を、業として、製造し、譲
渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡のために展示している。
五 本件物件の構造
 本件物件の構造を区分説明すると、次のとおりである。
1′ キー8の挿入により、進退杆9をコイルバネ13に抗して押して係止動作解
除上下動板15のカム14による係合を解除して降下させることにより、遮蔽板2
1を反時計方向に回動させて硬貨投入口4を開き(本件物件についての番号は、別
紙目録記載のものを指す。)、
2′ キー8の抜取りにより、進退杆9かコイルバネ13の押圧力により押し戻さ
れ、カム14によつて係止動作解除上下動板15がピン22を押して、遮蔽板21
を時計方向に回動して、硬貨投入口4を閉じる、
3′ 遮蔽板21を設けた、
4′ 硬貨投入口開閉装置。
六 本件考案と本件物件との対比
本件考案と本件物件とを対比すると、次のとおりである。
1 本件物件の構造1′、2′、3′は、それぞれ、順次、本件考案の構成要件
1、2、3と同一である。
2 右のとおり、本件物件は、本件考案の構成要件をすべて具備しており、したが
つて、また本件考案の作用効果と同一の作用効果を有するものである。
3 以上のとおりであるから、本件物件は、本件考案の技術的範囲に属する。
七 損害賠償義務及び損害
1 被告は、本件考案の公告日の翌日である昭和四八年五月一八日から現在に至る
までの間、前述のとおり、本件物件を付したコインロツカーを製造、販売するなど
して、原告の本件実用新案権を侵害し、しかも、右当時、原告が本件考案について
の仮保護の権利又は本件実用新案権を有することを知り、又は取引上必要とされる
注意を怠らなければ、これを知ることができたものであったから、原告がこれによ
り受けた損害を賠償すべき義務がある。
2 被告は、右の期間中、(イ)昭和四八年五月一八日から同年一〇月三一日まで
の間は少くとも三、二六五口の、(ロ)昭和四八年一一月一日から現在に至るまで
の間は少くとも七、〇一五口の本件コインロツカーを製造販売した。ところで、被
告の右行為がなければ、原告は、右の期間、被告の製造販売に相当する本件考案に
かかる硬貨投入口開閉装置を付したコインロツカーを製造販売し、純利益として、
右(イ)の期間中は金八七五万六、七三〇円(一口当りの平均額金二、六七二円に
三、二六五を乗じた金額)、右(ロ)の期間中は金五、八二一万七、四八五円(一
口当りの平均額金八、二九九円に七、〇一五を乗じた金額)、以上合計金六、六九
七万四、二一五円を得ることができたものと予想されるので、これと同額の損害を
受けた。
3 仮に右2の主張が認められないとしても、被告は、右の期間、本件コインロツ
カーを製造販売し、これにより、右2のとおりの純利益合計金六、六九七万四、二
一五円を得たから、原告は、これと同額の損害を受けた。
八 侵害の差止、廃棄及び損害賠償請求
 よつて、原告は、本件実用新案権に基づき、被告に対し、本件コインロツカーの
製造、譲渡等の差止及びその廃棄を求めるとともに、右損害金六、六九七万四、二
一五円の支払を求める。
第三 原告の請求原因に対する被告の答弁及び主張
一 答弁
1 請求原因一は認める。
2 同二、三は争う。
3 同四のうち、被告が昭和四八年五月一八日前から昭和四九年一二月末日までの
間、本件コインロツカーを製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡のために
展示したことは認めるが、その余の点は否認する。
 被告は、昭和五〇年一月からは、本件コインロツカーを製造販売せず、新式の硬
貨返却装置付貸ロツカーを製造販売しているが、右ロツカーは、使用中に他の利用
者が誤つて硬貸を投入しても、自動的に硬貨返却口から硬貨が返却されるもので、
本件コインロツカーとは全く異なる構造のものである。なお、被告は、今後、本件
コインロツカーの製造販売をする意図はなく、その在庫品をも有しない。
4 同五は認める。
5 同六は争う。
6 同七は争う。
 わが国においては、長年にわたり錠前、コインロツカーを製造しているのは、東
では被告、西では原告のみであつて、原、被告の製品を購入するユーザーはほぼ決
まつているので、被告が本件コインロツカーを製造販売したことにより、原告の製
品を購入していたユーザーが直ちに被告の製品を購入するようになることはないか
ら、被告の行為によつて、原告がその主張のような損害を受けることはない。
 また、本件実用新案権が有効なものであるとしても、その侵害による損害賠償額
の算定にあたり、コインロツカー全体の価格を基準とすることは不当である。けだ
し、本件実用新案権の範囲に含まれるものは、硬貨投入口開閉装置であつて、コイ
ンロツカーの装置全体ではなく、右両者は別個独立のものだからである。
二 主張
1 権利濫用等
(一) 元来、本件考案のように、鍵の挿入又は抜取りにより、硬貨投入口を開閉
する遮蔽板を作動させることを特徴とする装置においては、鍵の挿入又は抜取りと
いう動作と遮蔽板の移動という動作とを連動させる運動伝達のための中間的機構の
存在が不可欠であり、考案の新規性があり得るとすれば、右のような中間的機構に
存しなければならない。
(二) ところが、本件考案においては、その明細書の考案の詳細な説明の項に
は、右中間的機構として、作動棒、作動体、操作軸、ピン、発条等が記載されてい
るが、その登録請求の範囲は「鍵の挿入又は抜取りにより硬貨投入口が開閉する」
とあるのみである。しかして、右鍵の挿入又は抜取り行為は、コインロツカーの一
般的機能を働かすための当然の前提操作であつて、それ自体が本件考案の構成要件
であるということはできない。また、右鍵の挿入又は抜取り行為により硬貨投入口
が開閉されるというのは、右両者間に条件的因果関係があることを示しているにす
ぎず、本件考案の対象たる硬貨投入口開閉機構の記載ということはできない。けだ
し、右開閉機構については、種々の技術的方法及び機構があるのであつて、「いか
にして鍵の挿入又は抜取りにより硬貨投入口を開閉する装置を構成するか」が考案
の登録請求の範囲として、記載されなければならないものだからである。したがつ
て、本件考案の登録請求の範囲の記載は、単に本件考案の究極的目的ないしテーマ
を機能的に表示した、いわゆるフアンクナシヨナル・クレームにすぎず、産業上利
用可能な物品の形状、構造、組合せ等を具体的に表示したものとはいえないから、
その内容が空虚であり、対象たる権利が特定しているとはいうことができない。
 以上のとおりであるから、本件考案は、権利として、不成立であるといわなけれ
ばならない。仮に本件考案が権利として成立しているとしても、対象たる権利が特
定されず、原告は、結局、本件考案の保護対象たる技術的範囲を明確に主張し、特
定しているとはいえない。
(三) このような本件実用新案権に基づいて、原告が第三者である被告に対し、
本訴請求をすることは、禁反言ないしクリーン・ハンドの原則及び信義則に反し、
かつ、権利の濫用として、許されないところである。けだし、出願人の悪意ないし
怠慢によつて、その権利内容を特定できないような権利に基づく行為の差止及び損
害賠償の請求は、権利者にとつて、何らの実益がないのに反し、第三者に対して
は、その正当な営業活動を阻害して、回復し難い損害を与える結果となり、特許制
度に内在する公益的目的に反するからである。
(四) なお、本件考案のように、その対象たる権利が特定できない場合に、その
権利範囲を定めるために、明細書記載の実施例及び図面の記載に従い、その記載の
とおりの内容のものとして、限定して解釈することも許されない。けだし、このよ
うな解釈は、実用新案法第一条に違背するものであり、また、権利範囲が不明かつ
不特定の実用新案権を有効なものとして認知することを意味し、取引の安全を著し
く害し、特許制度の本旨に反するものだからである。
2 本件考案における新規性の欠如
(一) 仮に右1の主張が認められないとしても、本件考案のように鍵を用いて、
施錠、解錠をするロツカーにおいて、鍵の挿入、抜取りという操作により、硬貨投
入口の開閉をする装置についての技術的思想は、本件考案の出願前、公知であつ
た。すなわち、
(1) 米国特許第三〇五〇一六九号(乙第一号証)
発明の名称 預入れロツカー
出願日 一九六〇年(昭和三五年)二月一八日
特許認可日 一九六二年(昭和三七年)八月二一日
 右発明の明細書によれば、「利用者が戻つてきて、鍵を錠に挿入すると、ボルト
は第八図の位置から第九図の位置へ動けるようになり、この時メンバー101上に
外方向に突出している部分が軸99に固定されたアーム102に当接し、この軸と
遮蔽板を第一五図の実線の位置まで回動する(第五欄一九ないし二六行目)。」と
記載されている。したがつて、右装置は、鍵の挿入又は抜取り操作により、内部の
中間機構が所定の作用をして、硬貨投入口を開閉するのであり、右中間機構を除外
すれば、その前提操作である鍵の挿入又は抜取りにより、鍵の施錠、解錠以外の機
能である硬貨投入口を開閉させる遮蔽板の機能と連係させている。これによれば、
本件考案における技術的思想が先行技術として、公知であることが明らかである。
(2) 実用新案登録出願(昭和四二年第八一七一六号)(乙第二号証)
考案の名称 錠
出願日 昭和四二年九月二六日
 右考案の明細書によれば、「この種の錠前において、機構内での硬貨保持および
その施錠完成後の釈放は、錠前機構の一部分としてのピンタンブラー錠等の錠体に
おける鍵の抜き差し操作に連動して動作するように構成されるのが通例である。そ
の場合、錠体における鍵孔の内奥部にスプリングで、前方に附勢された連動素子が
設けられていて、鍵が鍵孔の深奥部にまで差し込まれたとき、鍵の先端がスプリン
グに抗して連動素子を後退位置に保持するとともに、鍵の鍵孔より抜き取られると
き、連動素子がスプリングの作用によつて前進位置に占位するものとなり、この連
動素子の進退動作を介して硬貨の保持および釈放を制御するという方式のものが在
来の形態である(第一、二頁)。」と記載されている。したがつて、右装置は、鍵
の挿入又は抜取り操作により、施錠、解錠以外の諸機能(遮蔽板の開閉動作を含
む。)に連係させようとしたものである。これによれば、本件考案における技術的
思想が先行技術として、公知であることが明らかである。
(二) 次に、本件考案の作用効果が原告主張の請求原因三の1ないし3のとおり
であるとしても、右1の鍵を錠から抜き取つた場合、硬貨投入口を閉鎖して、ロツ
カーの使用中に誤つて硬貨が投入されることを防止するとの点については、本件考
案の出願前、鍵を用いた施錠、解錠の動作により、硬貨投入口を開閉する硬貨投入
口開閉装置が広く知られていた(このことは、本件考案の明細書の詳細な説明の項
にも記載されている。)ところ、右装置により、ロツカー使用中は硬貨投入口が閉
鎖され、誤つて硬貨が投入されることが防止される作用効果を奏することは明らか
である。したがつて、右作用効果は新規性を欠くものである。
 また、右3の作用効果に関する本件考案の明細書中の記載は、昭和四三年六月七
日付願書に添付された明細書中には存在せず、その後、昭和四六年一〇月一八日付
及び昭和四七年八月一四日付各手続補正書によつて、補正されたものである。とこ
ろで、右願書に添付された明細書中に記載された右1の作用効果は、硬貨を投入で
きないようにすることを内容とするが、右3の作用効果は、硬貨を投入できるよう
にすることを内容としているのであつて、両者は、全く二面背反的なものである。
したがつて、昭和四六年一〇月一八日以降にされた補正は、昭和四三年六月七日付
で出願された本件考案の要旨を変更するものであるから、特許法第四〇条、実用新
案法第九条第一項により、早くとも昭和四六年一〇月一八日に出願されたものとみ
なされる。しかるに、被告は、これより先昭和四四年一二月二四日頃から右3の作
用効果と同一の作用効果を奏する硬貨投入口開閉装置についての考案を公然実施し
ていた。したがつて、右作用効果は、新規性を欠くものである。
 さらに、右3の作用効果は、要するに、(イ)鍵を用い、(ロ)扉を解錠するこ
となく、(ハ)使用中は閉状態にある硬貨投入口を開状態にすることによつて、硬
貨の投入を可能にするというものであつて、この点については、本件考案の出願
前、外国において頒布されていた前記米国特許第三〇五〇一六九号(乙第一号証)
の明細書(第五欄一九ないし二六行目)により公知であつた。すなわち、右明細書
には、前記2の(一)、(1)のとおり、「利用者が戻つてきて、鍵を錠に挿入す
ると、ボルトは第八図の位置から第九図の位置へ動けるようになり、この時メンバ
ー101上に外方向に突出している部分が軸99に固定されたアーム102に当接
し、この軸と遮蔽板を第一五図の実線の位置まで回動する。こうして利用客は必要
とされる硬貨を硬貨投入口から投入することができる。」と記載されているとこ
ろ、右記載は、右3の作用効果について、述べたものに外ならない。したがつて、
右作用効果は、この点からしても、新規性を欠くものである。
(三) 以上のとおり、本件考案は、何らの新規性、進歩性がないので、その実用
新案登録は、本来、無効でありそうでないとしても、右のような実用新案権に基づ
いて、第三者に対し、権利を行使することは許されないところである。
3 本件考案の技術的範囲の限定
(一) 仮に右1、2の各主張が認められないとしても、およそ、実用新案の技術
的範囲は、その出願当時における公知技術を除外して限定的に解釈されなければな
らない。すなわち、かかる考案は、明細書の考案の詳細な説明及び図面に記載され
た構造及び作用効果と一致するものに及ぶにすぎず、多少とも、これと構造及び作
用効果を異にするものには及ばないと解されるのである。
(二) これを本件考案についてみるのに、その明細書の考案の詳細な説明の項の
記載及び図面に示されたところによると、その構成要件は、次のとおりである。
(1) 鍵2の挿入又は抜取りによつて、進退する作動棒6を設け、
(2) 作動棒6の他端が操作軸7の下方のクランクアーム部7aに当接し、
(3) 操作軸7の上部は直角に折曲され、その先端はピン13により軸着された
遮蔽板9の突片10に当接し、
(4) 遮蔽板9は、ピン13により軸着され、その中間部において、コイル状発
条14の一端を係止している。
(5) 硬貨投入口開閉装置。
また、本件考案は、右のような構成要件を有することにより、次のような作用効果
を奏する。
 すなわち、鍵2を錠3に挿入することにより、作動棒6が突出して、この作動棒
6に当接する操作軸7を回動させ、その回動により、操作軸7の上部が当接してい
る遮蔽板9の突片10も回動するため、遮蔽板9はピン13を支点として、発条1
4に抗して回動し、この結果、硬貨投入口は開口される。また、鍵2を錠から抜き
取るこによつて、逆の作用をして、硬貨投入口は閉塞されるのである。
(三) しかるに、本件物件の構成は、次のとおりである。
(1′) 鍵8の挿入によつて突出し、鍵8の抜取り時はコイルバネ13の押圧力
によつて表側に押し出される進退杆9を設け、(2′) 進退杆9には、その上部
が斜状に形成された突片14が取り付けられ、この突片14の上部は上下動板15
の下端に設けられたローラ16と当接し、
(3′) 上下動板15の上部は、ピン23により回動自在に枢着された遮蔽板2
1の下端に設けられた突出棒22に当接している。
(4′) 硬貨投入口開閉装置。
 また、本件物件は、右のような構成を有することにより、次のような作用効果を
奏する。
 すなわち、鍵8が錠5から抜き取られると、進退杆9はコイルバネ13の押圧力
により表側に押され、進退杆9に取り付けられていた突片14の上端部の凸部分が
上下動板15の下端にあるローラ16と当接するため、上下動板15は上昇し、上
下動板15の上端部は、突片22を押し上げるため、遮蔽板21はピン23を軸と
して時計廻りに動き、硬貨投入口は閉鎖される。次に、鍵2を挿入すると、右と反
対の作用をし、上下動板15は下方に移動するため、上下動板15の上端部は、突
片22から離れるため、遮蔽板21はピン23を軸として反時計方向に回転し、硬
貨投入口は開口される。
(四) 本件考案と本件物件とを対比すると、本件物件の構造は、本件考案におけ
る操作軸(クランク)7を欠くから、この点において本件考案の右(3)の要件を
欠くものである。
 また、作用効果の点からみても、本件考案においては、鍵2の挿入により、進出
する作動棒6が操作軸7の下方のクランクアーム7aに当接し、操作軸7を回動さ
せ、その結果、遮蔽板9を移動させて硬貨投入口を閉鎖させるものであるのに対
し、本件物件においては、鍵8の挿入により、進退杆9が突出し、この結果、上下
動板15が下方に移動し、遮蔽板21を反時計方向に回転させて、硬貨投入口を開
口する。
 右のとおり、本件考案は、操作軸の回動という運動伝達の方法を採用している
が、この方法においては、直角に折曲している操作軸が回動するのに必要な空間を
要する。これに反し、本件物件は、上下動板の上下移動という運動伝達の方法を採
用しているが、この方法においては、薄い板の僅かの上下運動が必要とされるにす
ぎないから、これに要する空間は僅かで足りる。なお、貨ロツカー用錠装置におい
ては、従来からケーシング部分(施錠、解錠などの装置)は限定された狭い部分し
かなく、しかも、ロツカー用錠装置においては、機械要素、電気要素が相当多く組
み込まれているため、操作軸を回動する空間をとることは困難であり、本件物件の
ように上下動板の上下移動という方法を採用することが有意義である。
(五) 以上のとおり、本件考案と本件物件とは、構造及び作用効果のいずれの面
においても差異があり、本件物件が本件考案の技術的範囲に属しないことが明らか
であるから、原告の本訴請求は、理由がないものである。
第四 被告の主張に対する原告の答弁及び反論
一 被告の権利濫用等の主張は争う。
1 わが国における特許権及び実用新案権は、特許庁が私人の出願に対して付与す
る権利であつて、行政行為により形成される形成権であると解されているから、形
成行為が存在する以上、権利の不成立の問題は生じない。そして、特許権及び実用
新案権が権利として存在する以上、その権利が新たな行政行為(たとえば無効審判
等)によつて取り消されない限り、権利者は、その権利に基づいて、裁判上の請求
をすることができるのであつて、ただ、権利範囲の問題が裁判所によつて明確にさ
れることがあるにすぎない。
 しかして、本件実用新案権については、実用新案登録という行政行為が存在し
て、権利が成立しているうえ、新たな行政行為によつて、取り消された事実もない
から、原告の本訴請求は、信義則に反するものでなく、また、権利の濫用にも当ら
ないものである。
2 次に、実用新案権の実用新案登録請求の範囲は、当業者が容易にその実施をす
ることができる程度に記載されていれば足りるのであり、実用新案法第五条第四項
にも「実用新案登録請求の範囲には、考案の詳細な説明に記載した考案の構成に欠
くことができない事項のみを記載しなければならない。」と規定されているとこ
ろ、本件考案の実用新案登録請求の範囲の記載は、右要件を充足するものである。
 しかして、本件考案の構成要件は、具体的に鍵の挿入又は抜取りによつて、直接
又は間接に遮蔽板を作動させる装置を示すのであるから、本件考案は、産業上利用
できる具体的な技術である。この技術は、鍵の挿入又は抜取りという動作に遮蔽板
を作動させるという重要な役割を与える点で画期的な考案であり、これによつて、
従来の日送り式コインロツカーにおいては、鍵を完全に解錠し、又は鍵を錠に挿入
後、回動しなければ、追加料金の投入ができないという問題点を解決したのであ
る。なお、本件考案においては、被告主張のような中間的機構を必要とせず、鍵の
挿入又は抜取りによる鍵の作動自体により、直接、遮蔽板を作動させて、硬貨投入
口を開閉させることが可能であるから、中間的機構は、その構成要件ではない。本
件考案の明細書中の中間的機構の記載は、一実施例にすぎない。
二 被告の新規性欠如の主張は争う。
1 被告は、本件考案に対しては、公知の技術的思想が存在した旨主張し、鍵の挿
入又は抜取りを錠の施錠、解錠以外の機能と連係させようとする技術的思想を挙げ
ているが、本件考案の技術的思想は、前述したとおり、「鍵の挿入または抜取りを
錠の施錠、解錠以外の硬貨投入口の遮蔽板の開閉と関連させたもの」という具体的
な技術的思想である。したがつて、鍵の挿入又は抜取りという操作により、硬貨投
入口の開閉をする装置が抽象的な技術的思想として、本件考案の出願前、公知であ
つたとしても、本件考案のように具体的技術が出願前公知であつたことにはならな
い。
2 次に、被告が公知技術として主張する米国特許第三〇五〇一六九号(乙第一号
証)は、その特許公報によれば、「扉の閉塞によつて投入口を閉塞し、鍵を挿入し
た後、これを回動することによつて投入口を開放するシヤツターを設けた構造」で
あるから、右発明は、鍵を挿入した後、これをさらに回動しなければ、投入口を開
放することができない機構である。これに対し、本件考案は、その実用新案登録請
求の範囲の記載によれば、「鍵の挿入又は抜取りにより硬貨投入口を開閉する」の
であるから、その構成は、鍵の挿入又は抜取りのみで投入口を開閉することができ
る機構であつて、鍵の回動は投入口の開閉については全く不要のものである。した
がつて、右両者は、その構造の面で差異が存する。
 なお、本件考案の実用新案公報の末尾にも引用文献として、右米国特許が記載さ
れていることからしても、特許庁においては、これを本件考案と比較したうえで、
本件考案の実用新案登録をしたのである。
3 次に、被告が公知技術として主張する実用新案登録出願(乙第二号証)は、単
なる願書にすぎず、また、その願書に在来の錠前の型態であつたとして記載されて
いるものは、硬貨投入口を開閉する遮蔽板ではなく、これと全く異なる「硬貨の保
持装置」である。したがつて、右実用新案登録出願は、本件考案の出願前公知の資
料とはなり得ないものである。
4 次に、被告は、請求原因三の3の作用効果は、同三の1の作用効果とは二面背
反的なものであり、右3の作用効果に関する補正は本件考案の要旨を変更するもの
である旨主張するところ、本件考案においては、鍵を抜き取つたときに投入口が閉
じ、鍵を挿入したときに投入口が開くという作用効果があるが、これは、全く異な
つた一連のロツカー操作上の動作により生じる異なつた結果であつて、何ら二面背
反ではなく、要旨の変更でもない。したがつて、被告が昭和四四年一二月一四日頃
から、その主張の硬貨投入口開閉装置についての考案の実施をしていたとしても、
本件考案出願前の実施とはいえない。
三 本件考案の技術的範囲の限定について
 被告は、本件考案の技術的範囲は公知技術を除外して限定的に解釈されるべきで
ある旨主張するが、前述のとおり、本件考案については、公知技術がなく。また、
本件考案の実用新案登録請求の範囲には産業上利用できる技術が記載され、しか
も、不明確な文字もない以上、これを限定的に解釈しなければならない理由は存し
ない。
四 仮に本件考案の技術的範囲が被告主張のように明細書記載の実施例及び図面に
示された装置に限定して解釈されるべきであるとすれば、本件物件の構造と本件考
案の構成との差異は、次の点のみである。すなわち、本件考案においては、鍵の挿
入又は抜取りという直線運動をクランクによつて回転運動に変えたうえで、回動板
となつている遮蔽板を回動させるのに対し、本件物件においては、鍵の挿入又は抜
取りという直線運動を一たんカム(突片14は機械的にはカムである。)によつて
上下運動に変えたうえで、回動板である遮蔽板を回動させるのである。
 ところで、右のように鍵の抜挿という直線運動を遮蔽板を回動させる運動に変え
るために、本件考案におけるクランク機構を本件物件におけるカム機構に置換する
ことは当業者において容易に想到できることであり、その差異は設計変更の域を出
ない微差にすぎない。
 右のとおりであるから、本件物件は、本件考案と全く均等のものである。
第五 証拠(省略)
       理   由
一 原告の実用新案権
原告が本件実用新案権を有することは、当事者間に争いがない。
二 本件考案の構成要件
 成立に争いのない甲第一号証(本件実用新案公報)によれば、本件考案の構成要
件は、次のとおりであることが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠は
ない。
1 鍵2の挿入により硬貨投入口8を開き、
2 鍵2の抜取りにより硬貨投入口8を閉じる、
3 遮蔽板9を設けた、
4 貸ロツカーの硬貨投入口開閉装置。
右認定の事実によれば、本件考案にかかる右装置は、(イ)鍵の挿入又は抜取りと
いう手段と(ロ)これにより作動する遮蔽板という手段とを有するものということ
ができる。
三 本件考案の権利範囲
1 しかしながら、すでに判示したところからすれば、本件考案の実用新案登録請
求の範囲に記載されているところは、鍵の挿入又は抜取りにより、貸ロツカーの硬
貨投入口を開閉する装置を構成する課題の提示のみであるというべきである。すな
わち、すでに判示したとおり、本件考案においては、右課題の解決のために鍵の挿
入又は抜取りという手段及び遮蔽板という手段を具体的に挙げているので、右課題
の解決を示しているかのように見られるが、右各手段についての表現は、抽象的で
あり、右各手段が具体的にいかなる中間的機構を有すれば、鍵の挿入又は抜取りと
いう動作と遮蔽板の作動という動作とを連動させることができるかについては、実
用新案登録請求の範囲の記載のみによつては知ることができないから、右のような
抽象的な記載をもつて、何ら右課題の解決を示したものということはできない。
 しかして、実用新案権の技術的範囲は、願書に添付した明細書の実用新案登録請
求の範囲の記載に基づいて定めなければならない(実用新案法第二六条、特許法第
七〇条)ところ、本件考案は、その明細書の右のような抽象的な実用新案登録請求
の範囲の記載のみによつては、とうてい、その技術的範囲を定めることはできない
ものというべきである。そこで、本件考案の技術的範囲を定めるためには、右明細
書の考案の詳細な説明の項及び図面の記載に従い、その記載のとおりの内容のもの
として、限定して解さなければならない。したがつて、本件考案の構成要件を具備
した装置がすべて本件考案の技術的範囲内にあるものということはできない。
2 ところで、被告は、本件考案はその実用新案登録請求の範囲の記載が右のよう
に抽象的であるので、権利として不成立であり、そうでないとしても、その権利範
囲が特定されず、さらに、その構成要件のすべてが公知であつて、新規性を欠くか
ら、原告の本件実用新案権に基づく権利の行使が許されない旨主張する。しかしな
がら、本件実用新案権が権利として成立している以上、被告主張のような事実があ
るとしても、この権利が無内容のものであり、したがつて、実質的にその登録が無
効のものとして、取り扱うことはできないから、本件考案の技術的範囲は、右1の
とおり限定して解されるべきであり、この範囲における権利の行使が許されないも
のとはいえない。したがつて、被告の右主張は、理由がない。
3 しかして、前示甲第一号証(本件実用新案公報)によつて、本件考案の明細書
の考案の詳細な説明の項及び図面の記載を参酌して、本件考案の技術内容を区分説
明すれば、次のとおりであることが認められる。
(1) 鍵2の挿入又は抜取りによつて進退する作動棒6を設け、
(2) 作動棒6の一端が操作軸7の下方のクランクアーム部7aに当接し、
(3) 操作軸7の上部は直角に折曲され、その先端はピン13により軸着された
遮蔽板9の突片10に当接し、
(4) 遮蔽板9の下端部は、ピン13により軸着され、その中間部においてコイ
ル状発条14の一端を係止している。
(5) 硬貨投入口開閉装置。
四 本件物件の構造
 請求原因五の事実は当事者間に争いがなく、右事実と本件物件を表示するもので
あることについて当事者間に争いのない別紙目録の記載によつて、本件物件の構造
を区分説明すれば、次のとおりであることが認められる。
(1′) 鍵8の挿入によつて突出し、鍵8の抜取りによつて、コイルバネの押圧
力により表側に押し出される進退杆9を設け、
(2′) 進退杆9には、その上部が斜状に形成された突片14が取り付けられ、
この突片の上部は上下動板15の下端に設けられたローラ16と当接し、
(3′) 上下動板15の上部は、ピン23により回転自在枢着された遮蔽板21
の下端に設けられた突出棒22に当接している、
(4′) 硬貨投入口開閉装置。
五 本件考案と本件物件との対比
 そこで、本件物件と本件考案とを対比すると、本件物件においては、本件考案に
おける操作軸7を欠くから、この点において、本件考案の右三の3、(3)の要件
を備えていないものである。したがつて、本件物件は、その余の点について判断す
るまでもなく、本件考案の技術的範囲に属しないものである。
六 原告の均等の主張
 原告は、本件物件について、鍵の抜挿という直線運動を遮蔽板を回動させる運動
に変える構造について、クランク機構を利用するかカム機構を利用するかは設計上
の問題にすぎず、カム機構を利用する本件物件はクランク機構を利用する本件考案
の均等物である旨主張する。しかし、すでに判示したとおり、本件考案の技術的範
囲は、明細書の考案の詳細な説明の項及び図面の記載のとおりの内容のものとし
て、限定して解さなければならない。ところで、前示甲第一号証によれば、本件考
案については、その詳細な説明の項及び図面の記載には原告主張のようなカム機構
を利用することに関する記載はないから、カム機構を利用することは、その技術的
範囲に属しないものといわなければならない。したがつて、原告の右主張は、理由
がない。
六 してみれば、本件物件が本件考案の技術的範囲に属することを前提とする原告
の本請請求は、その余の点について、判断するまでもなく、失当として、棄却され
るべきであるから、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九条を適用して、主
文のとおり、判決する。
(裁判官 佐藤栄一 伊藤博 塚田渥)
 物件目録
一 硬貨投入口開閉装置
 第1図はコインロツカーの外観斜面図、第2図はケーシングの前面図、第3図は
ケーシングの側面図、第4図は硬貨投入口開閉装置の作動説明図である。
 図中、1はキヤビネツトで1個のキヤビネツトは四段ロツカー2、2、2、2か
らなり(図示の四段のもののほか、二段、三段及び五段のものがある。)、各ロツ
カー2には、それれぞれケーシング3が一個ずつ内蔵されている。
 ケーシング3には、第2図に示すように、正面上部に硬貨投入口4が設けられ、
中央部にシリンダー錠5のキー挿入口6が設けられている。ロツカー使用中は中央
部の使用表示窓に使用「中」と表示され、不使用時は使用「可」と表示されてい
る。使用中、すなわちキー抜取り中は硬貨投入口4は閉鎖され、他の硬貨は投入で
きないようになつている。
 シリンダ錠5のロータ7内にはキー8の先端に当接する進退杆9が位置して硬貨
案内板10に起立された支持板11により前後動自在に支持され、該支持板11と
ワツシヤ12との間に設けられたコイルバネ13により常にシリンダ錠5方向(前
方向)に押圧されている。該進退杆9にはカム板14が取着されている。
 該カム板14には係止動作解除上下動板15の下端に設けられたローラー16が
係合している。該係止動作解除上下動板15はその縦方向の長孔18に硬貨案内板
10に植設した。ピン17が嵌入して支承され、カム板14の前後動によつて、上
下動するようになつている。
 係止動作解除上下動板15は、その上動によつてこれを係止する係上フインガ2
0を反時計方向に回動し、該係止フインガ20に止められていた旋錠動作阻止上下
動板19の係止を外して、これを落下させる。落下した旋錠動作阻止上下動板19
はその折曲突起が旋錠板阻止位置にある点で停止し、キーを挿入回動してロツカー
を開いた後は該突起が施錠板の動きを阻止し、硬貨を再び投入しなければ、施錠で
きないようになつている。
 前記係止動作解除上下動板15の上端は硬貨投入口遮蔽板21のピン22と係合
し、該上下動板15の上昇によつてピン22は押されて該遮蔽板21は軸23を中
心として回動し、硬貨投入口4を閉鎖し、前記上下動板15の下降によつて該遮蔽
板21は自重により回動し、投入口4を開口するようになつている。
<12021-001>
<12021-002>
<12021-003>
<12021-004>
 実用新案公報
昭四八ー一七三六〇
公告 昭和四八年(一九七三)五月一七日
貸ロッカーの硬貨投入口開閉装置
実願 昭四三ー四七八五四
出願 昭四三(一九六八)六月七日
考案者 【A】 姫路市<以下略>株式会社国栄機械製作所内
出願人 株式会社国栄機械製作所 姫路市<以下略>
代理人 弁理士 【B】 外一名
図面の簡単な説明
 図は本考案による貸ロツカーの要部の分解斜視図である。
考案の詳細な説明
 本考案は硬貨投入によつて錠のロツクが制御される貸ロツカーに係り、ロツカー
使用中に誤つて硬化を投入するのを防止しようとするものである。
 従来、貸ロツカー使用、不使用に拘らず硬貨投入口が開放していたために、ロツ
カー使用中に誤つて硬貨を投入する者があり、また、使用中に硬貨を投入すること
により、硬貨計数装置やロツク機構に支障をきたし、故障の原因となるものであつ
た。
 また施錠解錠によつて硬貨投入口を開閉する硬貨投入口開閉装置も知られている
が、この構造では例えば使用時間単位毎に料金を徴集し、使用単位日時間経過後は
追加料金を挿入しない限り解錠できない貸しロツカーにおいては使用時は硬貨投入
口が閉塞されているため追加料金の硬貨を投入できない不都合が生じる。
 本考案はこれらの点に鑑みなされたもので、鍵が錠に挿入されている場合は硬貨
投入口を開放し、鍵を錠から抜きとつた場合は硬貨投入口を閉鎖してロツカーの使
用中に誤つて硬貨の投入するのを防止し、また同一硬貨投入口により追加料金の徴
集も可能としたものである。
 本考案の一実施例を図面について説明すると、ロツカー前面の枠体1に、鍵2が
挿入される側を前面にして錠3を固着する。この錠3の背面には鍵2によつて回動
されて、ロツクレバー(図示しない)を作動させる作動体4が設けられている。こ
の動作体4の水平方向の嵌合孔5には作動棒6の一端が進退自在に嵌挿され、鍵2
の進退動によつてこの作動棒6も進退する。また、この作動棒6の他端は操作軸7
の下方クランクアーム部7aに当接し、さらにこの操作軸7は上部にて直角に折曲
し、前記枠体1に設けられた硬貨投入口8を遮蔽板9の突片10に当接している。
 なお、操作軸7は枠体1に固着したL型金具11、12に回動自在に挿通軸支す
る。
 また、前記遮蔽板9の下端部は前記枠体1の内部にて回動自在にピン13にて軸
着され、かつ中間部にコイル状発条14の一端を係止し、この発条14の他端は枠
体1に係止され、遮蔽板9は常時硬貨投入口8を遮蔽するように附勢されている。
 また硬貨投入口8と適合する硬貨通路15は前記遮蔽板9の略厚さ分だけ間隙を
設けて枠体1の内部に設置され、かつ硬貨通路15の他端は硬貨選別装置16およ
び硬貨による鍵制御機構(図示しない)に連通している。
 しかして、錠3に鍵2を挿入すると鍵2の先端にて作動棒6を突出させ、この作
動棒6に当接する操作軸7は回動する。この操作軸7の回動により遮蔽板9はピン
13を支点として発条14に抗して回動(図面反時計方向)し硬貨投入口8は開口
される。
 つぎに鍵2によつて作動体4を回動して扉(図示しない)をロツクし鍵2を抜き
とると、作動体4は後退して発条14の弾力によつて遮蔽板9は硬貨投入口8を遮
蔽する。
 なお、鍵2はロツク時のみ挿脱ができる周知の鍵を用いる。
 本考案は上述のように、鍵2の挿入又は抜取りに伴い硬貨投入口8を開閉する遮
蔽板9を連動させたので、ロツカー使用中に誤つてさらに硬貨を投入したりするこ
とがなく、また、硬貨計数装置16やロツク装置の故障を防止できる。さらに、装
置自体が簡単であるため、これから製造されるものだけでなく、既製品にも容易に
取付けることができるものである。
 また、硬貨投入口8は鍵2を挿入または抜取ることで遮蔽板9を動作して硬貨投
入口8を開閉できるため、たとえば、使用時間単位毎に料金を徴集し、使用単位時
間経過後は追加料金を投入しない限り解錠できない貸しロツカーにおいて、ロツカ
ーの扉の施錠を解錠することなく鍵2を挿入して硬貨投入口8を開くことにより、
追加料金を簡単に投入して継続使用することが可能である。
実用新案登録請求の範囲
 鍵2の挿入または抜取りにより硬貨投入口8を開閉する遮蔽9を設けたことを特
徴とする貸ロツカーの硬貨投入口開閉装置。
引用文献
特公 昭三九ー一一四一一
米国特許 三〇五〇一六九
実用新案登録
<12021-005>

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