弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1原告らが被告との間で,それぞれ労働契約上の地位を有することを確認する。
2被告は,原告Aに対し,次の金員を支払え。
(1)47万2512円及びこれに対する平成21年3月21日から支払済みま
で年6分の割合による金員,
(2)平成21年4月から毎月20日限り,各23万6256円
3被告は,原告Bに対し,次の金員を支払え。
(1)64万7534円及びこれに対する平成21年3月21日から支払済みま
で年6分の割合による金員,
(2)平成21年4月から毎月20日限り,各32万3767円
4被告は,原告Cに対し,次の金員を支払え。
(1)24万3430円及びこれに対する平成21年3月21日から支払済みま
で年6分の割合による金員,
(2)平成21年4月から毎月20日限り,各24万3430円
5被告は,原告Dに対し,次の金員を支払え。
(1)28万9300円及びこれに対する平成21年3月21日から支払済みま
で年6分の割合による金員,
(2)平成21年4月から毎月20日限り,各28万9300円
第2事案の概要
1概要
本件は,トラック等の製造販売会社である被告に期間従業員として雇用されてい
た原告らが,平成20年秋以降の世界同時不況を契機としてされた雇止めは無効で
あると主張して,被告との間の雇用関係の確認並びに雇止め以後の各月の給料の支
払及び一部につき商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案
である。
2争いのない事実等
(1)当事者
ア被告は,トラック・バス,小型商業車・乗用車等の製造販売等を目的とする
株式会社であり,肩書地に本社及び日野工場を置き,羽村工場(東京都羽村市),
α工場(群馬県太田市),β事務所(東京都港区γ)を有している。
イ原告らは,いずれも被告に期間従業員として雇用され,日野工場で,日野ブ
ランドの大型トラック,中型トラック(以下「大中型トラック」という。)の生産
に従事していた。
(以上,争いのない事実)
(2)被告との雇用契約
ア原告A
(ア)契約関係
原告Aは,平成17年6月14日,株式会社アクティス(その後,合併等により,
順に株式会社コラボレート,株式会社ハイラインに変更になった。)との間で,労
働契約を締結し,当初は出向形式で,平成18年9月1日からは労働者派遣契約に
よる派遣労働者として,被告日野工場にて就労した。
その後,原告Aは,次のとおり,被告との期間雇用契約(甲6の1~6)を締結
し,被告日野工場で,自動車部品の構内運搬供給作業に従事した。
平成19年8月24日~同年12月31日(4か月)
平成20年1月1日~同年2月29日(2か月)
平成20年3月1日~同年4月30日(2か月)
平成20年5月1日~同年6月30日(2か月)
平成20年7月1日~同年8月23日(2か月)
平成20年8月29日~同年12月31日(4か月)
(争いのない事実,甲5の1~5,原告A(甲43,64を含む。以下,同じ。))
(イ)出向
a被告は,平成18年7月26日,東京労働局長より,「労働者派遣事業の
適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第48条第1項
に基づき,事業所における労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就
業条件の整備等に関する法律(第3章第4節の規定を除く)違反について,それぞ
れ指定期日までに是正の上,報告するよう指導」するという指導を受けた。その上
で,東京労働局より,「出向を中止して,適正な労働者派遣契約となるような必要
な措置を講じるか,または適正な請負となるよう必要な措置を講ずる」ように指導
を受けた。
そのため,被告は,同年9月1日,原告A及び原告Bを含む出向労働者との契約
関係を,出向形式から労働者派遣契約に切り替えた。
(争いのない事実)
b上記(ア)及び後記イ(原告B関係)を含む被告への労働者の出向は,グルー
プ会社等の緊密な関係にない人材派遣会社から業としてされたものであり,労働者
派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以
下「労働者派遣事業法」という。)の派遣期間の制限を潜脱する目的でされ,職業
安定法で禁止する「労働者供給事業」に該当する疑いの強いものである。
(甲22,弁論の全趣旨)
cこれらの事実は,同年10月6日,朝日新聞(甲22)で報道された。
(争いのない事実)
(ウ)労働者派遣契約
a原告A及び原告B(後記イ)の期間従業員としての採用は,同原告らが被
告の期間従業員の臨時募集に応募してされたものである。
(争いのない事実)
bこれが労働者派遣事業法に定める雇用申込義務(同法40条の4)に基づ
くものか否かについては,そのように主張する原告らとこれを否定する被告との間
に,主張の対立がある。
イ原告B
原告Bは,平成18年1月23日,株式会社E(以下「E」という。)との間で
雇用契約を締結し,当初は出向形式で,平成18年9月1日からは労働者派遣契約
による派遣労働者として,被告の日野工場にて就労した。
その後,原告Bは,次のとおり,被告との期間雇用契約(甲9の1~6)を締結
し,被告日野工場で,クランクシャフト製造作業に従事した。
平成19年8月24日~同年12月31日(4か月)
平成20年1月1日~同年2月29日(2か月)
平成20年3月1日~同年4月30日(2か月)
平成20年5月1日~同年6月30日(2か月)
平成20年7月1日~同年8月23日(2か月)
平成20年8月29日~同年12月31日(4か月)
(争いのない事実,甲8の1~8,原告B(甲44を含む。以下,同じ。))
ウ原告C
原告Cは,平成19年9月,株式会社ハイライン(その後,会社再編により株式
会社プレミアラインとなった。)との間で雇用契約を締結し,同月21日から平成
20年8月31日まで,労働者派遣契約による派遣労働者として,被告の日野工場
にて就労した。
その後,原告Cは,次のとおり,被告との期間雇用契約(甲12)を締結し,被
告日野工場で,KD(ノックダウン)梱包作業等に従事した。
平成20年9月19日~平成21年1月31日(4か月)
(争いのない事実,甲11の1・2,原告C(甲45を含む。以下,同じ。))
エ原告D
原告Dは,次のとおり,被告との期間雇用契約を締結し,被告日野工場で,トラ
ニオンシャフト加工作業に従事した。
昭和63年7月1日~同年12月27日
平成元年2月21日~同年8月31日
平成元年9月5日~平成2年1月5日
平成2年1月12日~同年8月31日
平成2年9月10日~同年12月20日
平成3年2月12日~同年10月31日
平成3年11月26日~平成4年10月23日
平成4年11月10日~平成5年8月20日
平成5年9月21日~平成6年6月20日
平成6年7月12日~平成7年4月11日
平成7年5月23日~平成8年5月21日
平成8年6月11日~同年12月10日
平成9年1月14日~同年12月10日
平成10年2月17日~平成11年2月15日
平成16年6月25日~同年10月31日
平成16年11月1日~同年12月31日
平成17年6月17日~同年10月31日(4か月)
平成17年11月1日~平成18年1月31日(3か月)
平成18年2月1日~同年4月30日(3か月)
平成18年5月1日~同年6月15日(2か月)
平成18年6月21日~同年10月31日(4か月)
平成18年11月1日~同年12月31日(2か月)
平成19年1月1日~同年2月28日(2か月)
平成19年3月1日~同年4月30日(2か月)
平成19年5月1日~同年6月19日(2か月)
平成19年6月27日~同年10月31日(4か月)
平成19年11月1日~同年12月31日(2か月)
平成20年1月1日~同年2月29日(2か月)
平成20年3月1日~同年4月30日(2か月)
平成20年5月1日~同年5月31日(1か月)
平成20年7月4日~同年11月15日(4か月)
平成20年11月16日~平成21年1月31日(2か月)
(争いのない事実,原告D(甲46,65を含む。以下,同じ。),弁論の全趣旨)
(3)被告日野工場における期間従業員の契約形態
ア最初の1年(更新)
被告日野工場における期間従業員との期間雇用契約は,契約期間について,初回
は4か月,以降の更新(延長)は各2か月とし,更新ごとに期間従業員雇用契約書
を取り交わしていた。期間雇用契約の更新を行い,その結果,初回の採用から12
か月となった場合,続けての更新をせず,期間雇用契約は終了した。
イその後の1年11か月(再赴任)
(ア)被告は,職場評価が良好な者で,本人も早期の再契約を希望している場合
は,職場による本人の意思確認を経て,満了日から4~7日後には再入社ができる
ように採用プロセスの短縮を行っていた。具体的には,採用面接や握力テストなど
は行わず,健康診断を受診し,健康状態が就労に問題がなければ再入社としていた
(これは,「再赴任」と呼ばれていた。)。
(イ)被告は,期間従業員雇用契約書の取り交わしはもちろん,再赴任のために
必要となる退職手続や入社手続,例えば,社会保険の喪失と取得,旧従業員証の回
収と新たな従業員証(社員番号も変更される。)の交付を行っていた。
(ウ)被告は,満了退職時に支給する「帰任旅費」に加えて,5万円の「再赴任
手当」を支給した。
(エ)また,被告は,契約更新の際にはその都度安全教育を行っていたわけでは
ないが,再赴任した場合には,労働安全衛生法59条に基づいて安全教育を実施し
た。
(オ)再赴任は,2回までであり,2回目の再赴任の契約期間は,更新を重ねて
も11か月としていた。
(以上,争いのない事実,乙17~20,証人F(乙22を含む。以下,同じ。))
ウ2年11か月経過後
2年11か月勤務した期間従業員が再度被告との雇用契約の締結を希望する場
合,被告の期間従業員の募集に応募して採用面接を受け,採用される必要があった。
(争いのない事実)
エ原告らとの更新手続等
(ア)被告は,原告らとの間においても,2か月ごとの更新手続をその都度行っ
ていた。
(イ)すなわち,被告は,原告らに対し,入社後は契約満了の1.5か月前ころ
に「満了通知」を渡し,契約が満了となることを書面にて通知していた。その後,
生産動向が判明するに従い,契約更新が必要となる場合には,以下の手続にて更新
を行っていた。
①所属(職場)による本人意思確認を行う。
②本人同意の場合は,所属から工場勤労へ延長申請書を提出する。
③工場勤労では,要員計画等を勘案して延長申請の可否判断を行う。
④承認の場合は,所属経由にて本人へ承認済みの延長申請書を渡す。
⑤本人は承認済みの延長申請を持参して,工場勤労にて,新たな契約期間による契
約の取り交わし及び従業員証の有効期限の更新等の延長手続を行う。
(争いのない事実,弁論の全趣旨)
(ウ)1.5か月前の職長による満了通知の交付については,職長によっては行
っていなかった可能性もないではないが(原告B,原告C),原告Bについては,
最終の期間雇用契約の満了通知は平成20年11月17日に職長より手交され,原
告Cについても,最終の期間雇用契約の満了通知は,少なくとも平成21年1月6
日に口頭でされている。
(原告B,原告C)
オ期間従業員雇用契約書等の定め
(ア)原告A及び原告Bが応募した平成18年8月の期間従業員の臨時募集要項
(甲23)には,次の記載がある。
「契約期間初回4ヶ月,以降通算1年まで延長することがあります。
(再赴任は2回まで可,但し2回目は最長11ヶ月)」
(イ)被告と原告らとの平成20年8月以降の「期間従業員雇用契約書」3条に
は,次の定めがある。
「契約更新の有無契約更新の可能性あり
(契約期間満了時の業務量,勤務態度,会社の経営状況等に
より,更新の有無を判断する。契約更新を行う場合は,甲
(被告)は乙(原告)に対し契約期間満了の1ヶ月前までに,
契約更新の申入れを行う。)」
(以上,明らかに争わない事実)
カ4か月及び2か月の雇用期間を設定した被告の理由
(ア)被告が期間従業員との契約期間を初回4か月,以降は2か月ごと更新とし
ていたのは,被告日野工場において主として生産していた日野ブランドの大中型ト
ラックの需要動向に起因する。
(イ)aすなわち,大中型トラックは,主なユーザーは法人企業であり,設備投
資の性格を持つものであることから,景気の好不況に大きく影響される。
bまた,毎年9月,3月の半期末や年度末に,通常月の1.5倍から2倍の
需要があり,大幅な生産変動に柔軟に対応しなければならない。
cさらに,国の排気ガス規制や過積載規制,優遇税制等によっても需要が大
きく左右される。
dそのため,大中型トラックの生産計画においては,当月の生産計画は前月
中旬まで確定しない。
(ウ)したがって,要員計画も,前月以前に確定させることは困難であり,被告
の都合のみを優先させれば,期間従業員との契約期間を生産計画に連動して1か月
単位とすることが望ましいが,翌月の雇用契約の有無が確定しないと期間従業員の
負担が大きいことを勘案して,2か月単位の契約期間としていた。
初回契約については,他社と同等水準の初回契約期間を設定しなければ,思うよ
うな採用活動ができないことから,4か月に設定した。
(以上,証人F)
(4)被告日野工場における期間従業員の勤務実態
ア期間従業員の更新率等
(ア)被告日野工場の平成20年4月から11月における期間従業員の更新率
は,別紙<表1>のとおりである。
(イ)被告日野工場においては,平成18年4月1日から平成19年3月31日
までに新規で入社し,初回4か月契約を満了した期間従業員計1106名のうち,
955名(86%)が延長となり,151名(14%)が,会社都合(能力不足等)
又は自己都合により満了終了となった。
(ウ)また,上記(イ)と同じ期間に入社し,通算12か月の契約期間を満了した期
間従業員は全体で630名であるが,そのうち477名(76%)が再赴任し,1
53名(24%)が会社都合(能力不足等)又は自己都合により満了終了となった。
(以上,乙16,証人F)
イ勤務部署等
(ア)期間従業員は,基本的に,直接的に物の生産を行っている部署に配属する。
施設管理課(設備の管理等),技術課・設備課(設備の導入・改修等),品質課な
ど直接的な物の生産ではない部署や専門スキルが必要な部署への配属はほとんどな
い。
正社員は,担当する課のライン一通りの作業ができ,また,どの個所においても
生産に必要な設備・治具の不具合等が起きたときに対応できる役割を持っている。
(イ)直接的に物の製造を行う部署では,生産台数に応じてラインのスピード(タ
クトタイム)を調整し,一人の作業範囲(工程)を変化させる一方,人員を増減す
ることで生産能力を調整する。
例えば,日当たり120台の生産(1日8時間として4分/台ペース)に対して,
200人で対応しているラインがあると仮定した場合,その2倍の日当たり240
台の生産(1日8時間として2分/台ペース)となった場合には,人数を2倍の4
00人にして,一人当たりの作業(工程)を半分にするということである。
(ウ)近年の期間従業員の在籍人数の実態として,F1ライン(大型トラック生
産ライン)の生産台数と被告日野工場の期間従業員在籍数の推移を示すと,以下の
とおりである。
平成18年1月F1ライン生産台数108台/日
期間従業員在籍(1月2日時点)580名
平成19年1月F1ライン生産台数78台/日
期間従業員在籍(1月1日時点)399名
平成20年6月F1ライン生産台数93台/日
期間従業員在籍(6月2日時点)705名
平成21年4月F1ライン生産台数23台/日
期間従業員在籍(4月1日時点)5名
(エ)平成21年5月以降しばらくは,正社員のみでの生産を行っていた。
(以上,証人F,弁論の全趣旨)
ウ正社員登用制度
(ア)被告は,期間従業員から正社員に登用する制度を設けている。
(イ)この正社員登用制度は,平成16年度より開始し,ほぼ年2回ずつ実施し
ていた。この制度は,定期採用(主に高校卒)による生産要員の確保が少子化の影
響等で困難になりつつあること,平成12年前後の就職氷河期の世代の社員が少な
いことから,優秀な期間従業員を正社員で採用することで年齢構成の歪みを補うこ
となどを目的として実施したものである。
募集・応募に当たっては,応募時点で期間従業員としての在籍期間が原則6か月
以上で精勤していること,及び各職場からの推薦があることを条件としていた。
(ウ)その実績は,以下のとおりである。
平成19年1月正社員登用合格者43名(受験者45名)
同年7月正社員登用合格者58名(受験者64名)
平成20年1月正社員登用合格者81名(受験者105名)
同年7月正社員登用合格者94名(受験者125名)
(エ)正社員となった場合,期間従業員の時より賃金が下がることがあるが,原
則として定年まで雇用されることとなる。
(以上,証人F)
エ過去の期間従業員の雇止め
被告において,平成10年3月末に全体で1255名いた期間従業員が,平成1
1年6月1日以降0名となった。被告は,平成14年9月1日に採用が再開される
まで,期間従業員の採用を停止した。
これは,被告の経営状況を理由とするものである。
(証人G(乙23を含む。以下,同じ。))
(5)平成20年下期以降の生産状況,業績及び経済状況等
ア生産状況
(ア)被告日野工場でされている日野ブランドの大中型トラックの生産は,生産
計画を経て生産される。
生産計画には,
①年度が変わる前に3年間の生産計画決定する「当初年計」,
②下期になる前に2年6か月間の生産計画を決定する「修正年計」,
③毎月3か月間の生産計画を決定する「3ヶ月計画」
がある。
(イ)平成20年度の日野ブランドの大中型トラックの生産計画の推移及び生産
実績は,別紙<表2>のとおりである。
(ウ)上記<表2>から明らかなとおり,平成20年11月の生産台数計画は,
平成20年度当初計画の7052台から,平成20年10月10日時点では555
0台へと修正された。
平成20年11月10日時点での3ヶ月計画では,平成20年12月の生産台数
計画は,平成20年度当初予定の6804台から3996台へと激減し,平成21
年1月,2月の生産台数計画も,それぞれ4640台,5128台と激減が予想さ
れた。
(エ)原告らが雇止めとなった平成20年12月31日以降の生産計画は,平成
20年9月24日時点で策定した修正年計によれば,平成20年11月6693台,
12月6533台,平成21年1月6909台,2月7117台,3月7394台
であったところ,平成20年10月10日に策定した平成20年11月から平成2
1年1月の3ヶ月計画においては,平成20年11月5550台,12月6495
台,平成21年1月6994台と更なる下方修正を行った。それ以降の3ヶ月計画
においても,前月策定した計画をほぼ毎月下方修正する状況であった。
(オ)これは,世界的な金融危機の深刻化及び景気後退により,大中型トラック
の受注が大幅に落ち込んでいった結果である。
(カ)平成20年度の生産台数の実績からも見ても,平成20年7月の7829
台をピークに以降減少し,特に,平成20年11月以降については,平成20年7
月に比べ40%から60%のマイナスとなっている。平成20年12月の生産台数
は3697台(平成20年度当初の計画は6804台)と激減し,以後も,平成2
1年1月3158台,同年2月2952台,同年3月3111台となっている。
(キ)なお,このような生産台数の激減は,日野工場に限ったものではなく,同
様の減少は,羽村工場などの被告国内全工場でも起こっていた。
(乙1,21の3,証人G,弁論の全趣旨)
イ被告の業績の推移
(ア)被告は,平成20年4月24日の決算発表時に公表した平成21年3月期
の被告の連結業績予想につき,別紙<表3>のとおり,1年間で4回,業績予想修
正(いずれも下方修正)をした。
(乙2~5)
(イ)平成21年4月27日発表の被告の平成21年3月期の連結経営成績で
は,連結売上高は1兆0694億円と前期に比べ2991億円の減収となり,連結
営業損失は194億円と前期に比べ653億円の減益となり,連結当期純損失は6
18億円と前期に比べ840億円の減益となり,設立以来最大の赤字を計上した。
(乙6,弁論の全趣旨)
(ウ)被告の利益剰余金は,平成20年3月期の時点では1314億円であった
が,平成21年3月期には650億円と半分以下に激減した。
また,平成21年3月期の営業活動によるキャッシュフローは,マイナス85億
0400万円となった。
(乙6)
ウ販売台数
(ア)販売台数で見ると,国内が△1.1万台(前年比△24%),海外が△2
千台(△3%),受託車が△8万台(△40%)の大幅な減産となった。
(イ)これらの台数減は,平成20年度下期(平成20年10月以降)での大幅
な減少であり,平成20年度下期の対前年同期比は,国内△35%,海外△23%,
受託車△66%であった。
(ウ)この状況は,平成21年度も続いており,平成21年7月28日発表の平
成22年3月期第1四半期の連結営業損失は188億円となり,平成21年3月期
の通期の営業損失(上記イ(イ))に匹敵するものである。
(エ)さらに,平成22年1月27日発表の平成22年3月期第3四半期決算に
おける平成21年4月~12月累計企業業績は,国内販売台数は前期比△36%,
海外販売は△16%,受託車は△30%であった。
(以上,乙6,7,28,証人G)
エ同業他社の状況
平成20年後半から平成21年前半にかけて,他の自動車メーカーも,世界的な
販売不振により生産が大幅に減少し,期間従業員等を削減した。
(ア)a平成20年11月7日付け日経新聞朝刊は,トヨタ自動車は,期間従業
員につき,同年6月に採用を凍結して,同年3月の平均8800人を同年10月ま
でに6000人に減らし,さらに,期間満了となる契約を更新しない方法で,平成
21年3月末までに3000人に半減する予定であると報じた。
b平成21年1月20日付け日経新聞夕刊は,トヨタ自動車は,今後も国内
生産の落ち込みが続けば,期間従業員を追加削減する検討に入り,期間従業員が零
になる可能性もあると報じた。
(イ)a平成20年11月22日付け日経新聞朝刊は,三菱自動車は,派遣従業
員及び期間従業員につき,現在の2800人を平成21年1月までに1000人削
減する予定であると報じた。
b平成21年1月17日付け日経新聞朝刊は,三菱自動車は,同年2月末に,
派遣社員と期間従業員1600人を削減し,平成20年11月に3300人いた非
正規従業員は400人強となると報じた。
(ウ)平成20年11月26日付け日経産業新聞は,三菱ふそうトラック・バス
は,年内に,期間従業員60人,派遣従業員440人全員を削減予定であると報じ
た。
(エ)平成20年12月4日付け日経新聞地方経済面は,関東自動車工業は,岩
手工場の期間従業員及び派遣従業員合計1200人のうち,350人を平成21年
4月までに段階的に削減する予定であると報じた。
(オ)平成20年12月23日付け日経新聞朝刊は,次のとおり報じた。
①ダイハツは,平成21年3月までに期間満了となる1000人の非正規従業員
のうち,最大600人との契約を更新せず,非正規従業員約3000人を2400
人程度に削減する予定である。
②スズキは,850人の全派遣社員を年内に,110人の全期間従業員を平成2
1年5月までに,いずれも零にする予定である。
③これで,国内の自動車メーカー全12社の人員削減計画が出そろい,直近で約
3万4000人いた非正規社員は,約半分の規模となる。
(カ)平成21年1月16日付け日経新聞朝刊は,日産ディーゼル工業は,派遣
社員700人全員(同社の生産現場では,期間従業員を採用していない。)を同年
6月末までに削減する予定であると報じた。
(キ)平成21年1月17日付け日経新聞朝刊及び同月19日付け日経産業新聞
は,ホンダは,同年4月末までに,期間満了を迎える期間従業員約3100人の契
約を更新せず,自然減の100人を含むと,同年5月以降の期間従業員は零となる
見通しであると報じた。
(乙21の1~9,証人G)
(6)被告における費用削減等及び期間雇用契約満了による終了の決定
ア費用削減
(ア)平成20年10月以降,被告は,仕入先を含めた収益改善活動を実施する
とともに,平成20年11月中旬,社長以下経営トップをメンバーにした緊急収益
対策委員会を正式に立ち上げ,残業目標ゼロ,諸経費の更なる削減を全社に指示し,
工場では,稼働日削減,職場により,最も遅いコンベアタクトタイム設定(平成2
0年12月~),定時間割れ操業(平成20年12月~),1台抜きコンベア流し
操業(平成21年4月~平成21年12月)などを実施した。
(証人G)
(イ)被告は,平成22年10月時点で,平成21年3月期の業績及び平成22
年3月期の業績予想を受け,以下の対策を講じた。
a人件費削減(約20億円程度の間接人件費の削減)
(a)取締役,監査役の賞与
総額約2億円(平成21年7月支給分)から0円へ削減(平成20年12月決定)
(b)取締役,執行役員,監査役の報酬
20%~10%削減(平成21年3月支給分より)
(平成21年2月決定3月実施)
(c)基幹職の賞与
8%の削減(平成20年12月支給分)
(平成20年11月決定12月実施)
(d)基幹職の月額賃金
7%~3%削減(平成21年4月支給分より)
(平成21年2月決定4月実施)
(e)残業制限(平成20年11月以降実施)
(f)期間従業員の削減
(g)通年採用の中止(平成20年11月実施)
(h)新卒採用の抑制(大卒平成20年4月159人→平成21年4月50人)
b原価低減(平成21年度上期実績で対前年同期比約60億円程度の改善)
(a)工場原価低減
(b)資材購入方法見直し
c固定費削減(平成21年度上期実績で対前年同期比約130億円程度の改
善)
(a)設備投資抑制
(b)開発課題調整
(c)拡販費の削減
(d)イベント削減(工場と地域住民との交流目的の祭り3000万円,東京モ
ーターショー3億円など)
d稼働日数調整(休業とし休業補償)
稼働日調整は,平成20年10月から翌4月にかけ月2日から6日,延べ24日
の工場の稼働日削減を実施した(別紙<表4>)。
この間の稼働日削減の内容は,一斉年休8日(年休の無いものは70%補償),
80%休業補償をする休業日14日,工場を止めて清掃や研修を行い100%賃金
補償した非稼働出勤日2日などである。
(以上,乙8~12,証人G)
イ派遣社員の削減
被告は,被告日野工場の製造ラインにおける派遣労働者を労働者派遣契約の期間
満了をもって終了した。
その人数の変動経緯は,以下のとおりである。
平成20年11月1日53名
平成20年12月1日24名
平成21年1月1日6名
平成21年2月1日1名
平成21年3月1日0名
(証人F)
ウ期間従業員の期間雇用契約満了による終了の決定
(ア)被告は,この平成20年下期以降のトラック需要の落ち込みは,国内外の
経済状況や景気の冷え込みなどから,当分の間元には戻らないものと判断した。
このような状況を踏まえ,被告人事部は,平成20年10月28日,日野工場及
びα工場の期間従業員の新規募集を停止することを決定し,同年11月4日,期間
従業員募集の全面停止を決定した(平成20年11月初旬まで求人誌に期間従業員
募集の広告が掲載されたのは,求人誌の締切りの関係から掲載の中止が間に合わな
かったためである。同年11月4日以降,被告は,選考会場で面接を行わず,来場
者へは事情を説明し,応募を断った。)。
(イ)さらに,被告は,同月10日,国内3工場で働いている期間従業員全員を
現在の期間雇用契約の期間満了をもって契約を終了する旨を決定した。
(ウ)被告は,上記決定に従い,同年11月以降,期間従業員について,期間満
了を迎えた者から順次雇用を終了した。
(エ)被告日野工場の製造ラインにおける期間従業員の人数の推移は,以下のと
おりである(平成21年4月1日現在の5名は,同年11月上旬の時点で採用を内
定していたため,入社を認めざるを得なかった。)。
平成20年11月1日733名
平成20年12月1日640名
平成21年1月1日382名
平成21年2月1日55名
平成21年3月1日19名
平成21年4月1日5名
平成21年5月1日0名
(以上,証人G)
エ原告らの雇止め
(ア)被告は,原告A及び原告Bについては,平成20年12月31日をもって,
原告C及び原告Dについては,平成21年1月31日をもって,それぞれ雇用契約
を更新せず(以下「本件雇止め」という。),以後,原告らが被告と雇用関係にあ
ることを否定している。
(争いのない事実)
(イ)今回の場合,1か月半前に期間満了通知を渡した後,平成20年11月末
ころ,各職長が,同年12月末での期間満了者を集め,「減産のため,先にお渡し
した「期間満了のお知らせ」のとおりとなります。延長や再赴任はありません。今
まで生産に協力していただき,有難うございました。」と口頭で通知した。その後,
平成21年1月末での期間満了者に対しても,同様の口頭での通知をした。
(証人G)
(7)原告らの賃金額
原告らが本訴で請求する賃金額の計算は,別紙「原告らの賃金額の計算」のとお
りである。
(争いのない事実)
(8)平成19年5月までの労働組合との団体交渉
ア前記(2)ア(イ)cの朝日新聞の報道後,労働者派遣業を営むH株式会社に雇用
され,派遣労働者として被告で働く労働者がI労働組合関東支部(以下「組合支部」
という。)に加入し,平成18年10月,Jユニオン(ただし,組合支部傘下の分
会である。)を結成し,組合支部及びJユニオンは,同月27日,Hと被告に団体
交渉を申し入れた。
イさらに,原告Bを含むEに雇用され,派遣労働者として被告で働く労働者が,
同年11月,組合支部に加入し,Kユニオン(組合支部傘下の分会。以下「Kユニ
オン」という。)を結成し,組合支部及びKユニオンは,同年12月12日,被告
に団体交渉を申し入れた。
ウそして,同年11月以降,組合支部,Jユニオン及びKユニオン(第1回団
体交渉を除く。)と被告との間で,団体交渉が行われた。
第1回団体交渉平成18年11月14日
第2回団体交渉同年12月26日
第3回団体交渉平成19年2月28日
第4回団体交渉同年4月5日
エ団体交渉の議題は,後に追加したものを含め,次のようなものであった。
①偽装出向に関する経緯の説明と謝罪
②派遣労働者の賃金・労働条件の改善(期間従業員との100万円以上もある年収
格差の解消)
③派遣会社の誇大広告による求人方法の是正
④雇用の安定(派遣労働者の継続的な就労の保障。当時,被告の派遣労働者の派遣
雇用契約は,「1か月単位」だったのを是正する。)
⑤作業服の無償支給
(以上,争いのない事実,甲49の1~15,53~58,証人L第1回(甲42
を含む。以下,同じ。),証人M(甲47,52を含む。以下,同じ。))
オ当時の社会的背景として,派遣や偽装請負という働かせ方が格差と貧困の温
床となっているのではないかとの社会的関心が強く,JユニオンとKユニオンの活
動は主要なメディアで何度も取り上げられ,賃金の引き上げや連休手当の支給など
の成果も上がり,JユニオンのN委員長やL副委員長は,派遣労働者の闘いを象徴
する人物とみなされるようになっていった。また,被告人事部も,Jユニオンの中
心人物がL,Nであることを認識していた。
(以上,甲49の1~15,証人L第1回,証人M,証人G,弁論の全趣旨)
(9)平成20年12月以降の団体交渉
被告は,次のとおり,組合支部及び労働組合日野自動車ユニオン(平成20年1
2月27日結成)との団体交渉を実施した。
平成20年12月11日
同年12月18日
平成21年1月23日
同年1月27日
同年2月11日
同年3月18日
同年6月19日
(争いのない事実)
3争点
(1)原告らと被告との期間雇用契約は,実質的に期間の定めのない契約又は雇用
期間を2年11か月とする契約であったか。
(2)ア仮に,(1)が認められないとしても,原告らは,雇用の継続につき合理的
期待を有していたか。
イさらに,本件雇止めを正当化する客観的で合理的な理由はあったか。
4争点(1)(期間の定めのない契約等)についての当事者の主張
(1)原告らの主張
アまとめ
イ以下の事実及び「使用者は,期間の定めのある労働契約について,その労働契
約により労働者を使用する目的に照らして,必要以上に短い期間を定めることによ
り,その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」
との労働契約法17条2項の趣旨によれば,原告らと被告との期間雇用契約(争い
のない事実等(2)ア~エ)は,契約書上の形式的な期間の定めにかかわらず,実質的
には期間の定めのない契約と同一の状態にあったか,少なくとも2年11か月の雇
用期間の定めがあったものである。
イ原告らの仕事内容
(ア)原告らの従事していた自動車部品の構内運搬供給作業(原告A),クラン
クシャフト製造作業(原告B),KD梱包作業(原告C),トラニオンシャフト加
工作業(原告D)(争いのない事実等(2)ア~エ)は,被告の業務である自動車製造
業務に不可欠な中核的基幹的作業である。
(イ)その上,原告らは,正社員の補助的な業務としてではなく,専属の作業を
任されていた。
(ウ)さらに,原告らは,出向及び労働者派遣の時代から,日野自動車で同一の
作業に従事し続け,その期間は長期に及んでいた。
(エ)そして,原告らは,正社員,派遣労働者と混在して作業をしていた。
(オ)また,工場に勤務する直接雇用労働者(正社員及び期間従業員)のうち,
少なくとも3割が期間従業員であった。
ウ期間雇用契約更新の実態
(ア)原告Dは,平成17年6月17日から数えても,15回の更新で勤続3年
7か月に及び,当初の時期からの通算では15年に及んでいる。
また,原告A及び原告Bは,5回更新1年4か月の勤続である。しかも,出向期
間及び派遣期間も加えると,原告Aは3年6か月,原告Bは2年11か月の勤続で
ある。
(イ)a期間雇用契約書の作成は,名目的形式的なものであった。
b原告A及び原告Bに見られるように,前期の期間雇用契約の終了よりもか
なり早い時期に更新の契約書が作成されることもあった。
c原告Bのように,期間満了のお知らせが全くやってこなかった労働者もい
た。
d期間満了のお知らせがやってきた労働者にとっても,そもそも2か月の雇
用契約で契約期間開始の半月後には既に雇用期間満了のお知らせの書面がやってき
て,しかも,平成20年11月までは,期間雇用契約が更新されていた。
e原告Bに対して平成20年11月17日に「期間満了のお知らせ」を渡し
た職長も,「形式的なものですから。」と断っていた。
エ期間従業員の意識
(ア)被告日野工場においては,職務能力や職務態度に問題がない限りは,2年
11か月は雇用が保障されるとの意識が期間従業員に存在していた。
(イ)すなわち,被告における再赴任2回まで,上限2年11か月という制度(争
いのない事実等(3))は,期間の上限の規制であると同時に,問題のない労働者につ
いては2年11か月の雇用が保障されるというものであった。
(ウ)1年後に再赴任しなかった24%の期間従業員のうち,会社都合(能力不
足等)は20%くらいであるから,1年後に再赴任しなかった期間従業員のうち会
社都合(能力不足等)によるものは,同時期に入社した者の約5%である。
(エ)原告Cは,平成20年9月の面接の際,2年11か月勤務できるかが確認
された。
(オ)a原告Dは,平成20年5月31日に2年11か月となった後,同年7月
4日に4か月契約を締結したが(争いのない事実等(2)エ),この間,職場に復帰す
ることを前提に寮に荷物を置かせてもらった。
bまた,原告Dは,職長から,平成20年5月に辞める前に「また戻ってき
てくれ。」と言われ,約1か月後に職場復帰した際には「2年11か月よろしく頼
むよ。」と言われた。
オ平成19年6月の被告人事部長の約束
(ア)平成19年6月1日,被告の申入れにより,被告と組合支部との少人数で
の協議が行われた。出席者は,被告側がO人事部長とG人事厚生室長,組合支部側
がP委員長とM書記長のみであった。
(イ)被告は,①メディアの寵児となったN,Lの二人が被告から撤退してくれ
るなら,Kユニオン委員長のB委員長らを含む希望者全員を期間従業員として採用
してもいい,②その場合,B委員長らの組合活動は一定期間控えてほしい,という
ものであった。
(ウ)組合支部は,Kユニオンの委員長である原告Bをはじめ団体交渉やビラま
きなどで先頭に立って活動してきた組合員が期間従業員に切り替わって4か月後と
か6か月後に,契約期間満了と称して雇止めされる事態を避けるため,被告が期間
従業員の常態となっている2年11か月の雇用を保障することと引換えに被告の提
案を了承することとした。
(エ)組合支部は,合意に向けて何度かの交渉を重ね,手順についても協議をす
る一方,雇用期間の保障については,同年7月4日の協議の場で,次のようなやり
とりをした。
M書記長「期間満了ですぐに雇止めすることはないだろうな。」
O人事部長「途中で雇い止めするようなことはしない。2年11か月は必ず保障
する。」
M「それならば,組合はN,Lを日野から撤退させる。残る組合員も1年程度は表
立った組合活動を控える。」
(オ)直接雇用に当たってのこのやりとりは,同年8月24日に原告らと被告が
締結した期間雇用契約が,その形式的期間の設定にかかわらず,特段の事情のない
限り2年11か月の継続雇用という被告の期間従業員の通常の扱いを明確にしてい
る。
(2)被告の主張
アまとめ
原告らの主張アは否認する。
争いのない事実等(3)及び(4)のとおり,被告における期間従業員は,生産量に応
じて変動する要員需給に対応するための従業員であり,契約更新はその都度判断し
ていること,契約更新手続は毎回厳格に行っており,期間従業員も毎回期間雇用契
約書に署名捺印をしていること等から,原告らと被告との期間雇用契約が実質的に
は期間の定めのない契約と同一の状態にあったとか,少なくとも2年11か月の雇
用期間の定めがあったものと認めることはできない。
イ原告らの仕事内容
(ア)同イのうち,(エ)及び(オ)は認め,その余は否認する。
(イ)原告らが従事していた業務がトラックの製造において必要な過程であるこ
とを否定するものではないが,期間従業員がいなければトラックの生産ができない
というようなことはない。
ウ期間雇用契約更新の実態
(ア)同ウ(ア)は認める。ただし,原告Dは,平成11年2月15日の期間満了後
平成16年6月25日まで,5年以上採用されていない。
(イ)同(イ)のうち,a,c及びeは否認し,b及びdは認める。
エ期間従業員の意識
(ア)同エ(ア)は否認する。
(イ)同(イ)は否認する。
(ウ)同(ウ)は認める。
(エ)同(エ)は否認する。
期間従業員の採用・面接時には,「期間従業員面接案内」という契約期間,日給,
勤務場所,仕事内容,勤務時間等を説明する資料を応募者に渡し,それを基に処遇
条件の説明を行っていた。被告は,面接官にはその書面に記載されている項目につ
いて,記載されているとおりの説明を行うよう指導していたから,原告Cに対して,
契約更新を行う場合は最長1年であり,さらに再赴任をする場合でも2回まで(通
算2年11か月)であるという一般的な契約について説明したが,2年11か月ま
での雇用を保証する趣旨の説明はしなかった。
(オ)同(オ)のうち,aは認め,bは不知。
オ平成19年6月の被告人事部長の約束
(ア)同オ(ア)は認める。
(イ)同(イ)は否認する。
(ウ)同(ウ)は不知。
(エ)同(エ)のうち,協議の内容は否認し,その余は認め,同(オ)は否認する。
被告のO人事部長は,当時の生産状況が続けば,最長2年11か月まで再契約が
可能であるという趣旨の説明をし,通常の期間従業員と同様に扱うことを説明した
にすぎない。
5争点(2)(客観的で合理的な理由の有無)についての当事者の主張
(1)原告らの主張
ア雇止めの要件
労働者が期間の定めのある労働契約の下で就労していても,実質的に期間の定め
のないのと同様な状態の下で就労している場合や雇用の継続に合理的期待がある場
合には,期間の定めがない労働者を解雇する場合に準じた法規制が及ぶ。
イ継続雇用の合理的期待
前記4(1)で主張した事実によれば,原告らが被告による雇用の継続に期待を有す
ることには合理性があり,仮に雇用の継続に期待を有する合理性の期間が限定され
るとしても,少なくとも2年11か月の雇用の継続に期待を持つことには合理性が
ある。
ウ雇止めの客観的で合理的な理由
(ア)まとめ
後記被告の主張(ア)は否認する。
(イ)原告らの反論
a期間従業員の募集の再開
(a)被告は,平成21年9月,日野工場,羽村工場,α工場の3工場で合計9
00人規模の期間従業員の募集を再開する方針であることを明らかにし,これに先
立って同年8月からハローワークや求人誌によって期間従業員の募集を開始した。
期間従業員の募集は,その後も継続され,同年12月4日までに採用された期間従
業員の数は,日野工場100人,羽村工場600人,α工場400人の合計110
0人に及んでいる。
(b)このように,期間従業員の一斉雇止めをしながら(争いのない事実等(6)
ウ(エ)),短期間のうちに大量採用の再開が行われること自体,本件雇止めがいかに
無定見に行われたものであるかを示すものである。
b雇止めの必要性の不存在
(a)被告主張の平成21年3月期の連結営業損失194億円(争いのない事実
等(6)イ(イ))は,同期の連結売上高1兆0694億円(乙6の1(1))の1~2%で
あり,純資産2189億4200万円(乙6の1(2))の10%にも満たない。
同期の純損失618億3900万円(乙6の1(1))にしても,純資産の30%に
満たない。
(b)したがって,被告の経営状況は,直ちに原告らを雇止めするほどの必要性
を有するものではなかった。
c雇止め回避努力の不十分
(a)本件は,期間従業員のほぼ全員を一時に雇止めしたものであって,人員整
理の方法及び程度を慎重に考慮して,雇止めの対象を一部にとどめる等の解雇回避
努力を尽くしていない。
(b)ⅰ被告の単体決算の資本準備金,利益準備金,固定資産圧縮積立金,別途
積立金,当期未処分利益を合計した「内部留保」を検討すると,平成21年3月期
のそれは1313億円であり,これは,アジア危機後の平成10年1093億円の
1.2倍,平成11年731億円の1.8倍,平成12年976億円の1.35倍
に当たる。それ以前とも比較すると,昭和55年の3.7倍,平成2年の1.7倍
である(甲63)。
ⅱこの内部留保を有効活用すれば,期間従業員の少なくともその一部の雇
用維持が十分に可能なはずであった。
(c)被告の行った人件費の削減,原価低減,固定費削減,稼働日数調整(争い
のない事実等(6)ア)の多くは,本件雇止め後のことであって,雇止め回避のための
方策と評価することはできない。
(d)ⅰ被告の費用削減策では,希望退職の募集や配転,出向,転籍などの措置
を講じていない。
ⅱしたがって,被告の費用削減策は,雇止めの回避策としては不十分なも
のである。
d組合との団体交渉
(a)被告の平成20年12月以降の団体交渉における態度も不誠実なもので
あった。
(b)被告の説明は,世界金融危機の影響で市場が悪化していることを述べるの
みで,雇止め回避努力を問う組合の質問に対しては何らの回答も行わなかった。
雇止めの必要性や雇止め回避努力の検討のために組合側が期間従業員数の推移に
ついて質問しても,被告は「数を示す必要はない。」と答えるのみであった。
(c)また,被告は平成21年1月23日の団体交渉でようやく雇止め回避努力
として,稼働日数を少なくした,社員を他の工場に応援に出した,新規採用の中止
をした,間接部門の経費を削減した,基幹職の賞与をカットした,役員の賞与をカ
ットしたとの6点の項目を挙げただけで,その内容の説明もなかった。
(d)しかも,被告は,役員の報酬のカットを既に実施したかのごとき誤解を招
く説明をした。
(e)その上,この団体交渉は,既に原告A及び原告Bに対する雇止めがされた
後の説明であり,原告C,原告Dに対して更新拒絶の通告がされた後の説明である。
(f)後記被告の主張(イ)d(f)は認める。
(2)被告の主張
ア雇止めの要件
原告らの主張アは争う。
本件は,期間満了による各期間雇用契約の終了であり,解雇ではない。
イ継続雇用の合理的期待
(ア)同イは否認する。
(イ)争いのない事実等(3)及び(4)のとおり,被告における期間従業員は,生産
量に応じて変動する要員需給に対応するための従業員であり,契約更新はその都度
判断していること,契約更新手続は毎回厳格に行っており,期間従業員も毎回期間
雇用契約書に署名捺印をしていること等から,原告らが期間雇用契約が漫然と更新
されるとの合理的期待を有する状況にはなかった。
(ウ)原告Dは,その期間雇用の期間が連続していない上,かなり長期間にわた
って雇用していない時期があり,そもそも長期にわたって更新を繰り返している事
実はない。
原告A,原告B及び原告Cについては,そもそも期間雇用契約を長期にわたって
更新している状況にはない。
ウ雇止めの客観的で合理的な理由
(ア)まとめ
本件雇止めは,争いのない事実等(5)及び(6)の事実のとおり,平成20年秋以降
の世界同時不況下にあって,国内外の景気の悪化によるトラック需要の大幅減少及
びそれによる被告の経営状況の悪化を理由とするものであり,本件雇止めには客観
的で合理的な理由が存する。
(イ)原告らの反論
a期間従業員の募集の再開
原告らの主張ウ(イ)aのうち,(a)は明らかに争わず,(b)は否認する。
平成21年後半からの募集は,本件雇止め時には予期できなかったその後の事情
によるものである。
b雇止めの必要性の不存在
同(イ)bのうち,(a)は認め,(b)は否認する。
一般的に,会社の経営状況は貸借対照表,損益計算書,キャッシュフロー等の様
々な経営指標はもとより,国内外の景気,市場での需要動向等の会社を取り巻く様
々な経営環境,中長期・短期的な生産・販売の見通し等を踏まえた将来の生産体制,
技術・商品戦略などの多くの観点から総合的に判断するものであり,その一要素の
みで被告の経営状況を論じることは失当である。
c雇止め回避努力の不十分
(a)同(イ)c(a)は否認する。
(b)同(b)のうち,ⅰは明らかに争わず,ⅱは否認する。
(c)同(c)は否認する。
(d)同(d)のうち,ⅰは認め,ⅱは否認する。
期間従業員の雇用維持のため正社員の労務費の削減をすべきとの主張は全く理由
がない。
d組合との団体交渉
(a)同(イ)d(a)は否認する。
(b)同(b)は否認する。
被告は,平成20年12月11日及び12月18日の団体交渉においては,期間
雇用契約を更新することが困難な経営状況であることを説明し,また,質疑応答に
応じて,被告として稼働日変更や定時割れ設定(労働時間より早く工場のラインを
停めて就業を終了させ,残り時間は手待ち時間とすること)などを行っていること
を説明した。
(c)同(c)のうち,被告が工場の稼働日数を少なくしたこと等の説明をしたこ
とは認め,その余は否認する。
被告は,質疑応答に応じて,被告の経営状況などを踏まえて,工場の稼動日調整,
残業制限などの間接部門の経費削減,基幹職の賞与カット(8%削減),役員賞与
カット等,被告が講じた施策を可能な限り説明した。
(d)同(d)は否認する。
(e)同(e)は認める。
(f)被告は,団体交渉を踏まえ,期間従業員が使用する寮について,退寮期限
を1か月間延長する対応をした。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(期間の定めのない契約等)について
(1)追加の事実認定又は評価
まず,原告らが,争いのない事実等(3)及び(4)の事実に加えて主張し,又は争い
のない事実等の評価のために主張する点について検討する。
ア原告らの仕事内容
(ア)原告らが正社員,派遣労働者と混在して作業をしていたこと(原告らの主
張イ(エ))及び工場に勤務する直接雇用労働者(正社員及び期間従業員)のうち,少
なくとも3割が期間従業員であったこと(同イ(オ))は,当事者間に争いがない。
(イ)原告らは,原告らの従事していた作業につき,自動車製造業務に不可欠な
中核的基幹的作業であり,正社員の補助的な業務としてではなく,専属の作業を任
されていたものであり,出向等の時代から同一の作業に従事し続け,その期間は長
期に及ぶ旨主張する。
原告らの従事していた作業が自動車製造業務に不可欠な作業であり,通常に作業
が流れる限りは,正社員の関与が目立たない状態で作業が行われ,原告らが争いの
ない事実等(2)のとおりの雇用期間を有することは,そのとおりであるが,期間従業
員と正社員との間には,職務範囲及び責任の重さにおいて厳然とした差異があった
こと(争いのない事実等(4)イ)も,事実である。
イ期間雇用契約更新の実態
(ア)原告らの主張のとおり,原告A及び原告Bの期間従業員としての雇用期間
は,1年4か月であり,出向期間及び派遣期間も加えると,原告Aは3年6か月,
原告Bは2年11か月の勤続である。
原告Cの期間従業員としての雇用期間は,4か月であり,派遣期間も加えると,
1年4か月である。
原告Dは,昭和63年7月から期間従業員として勤務しているが,平成11年2
月15日の期間満了後平成16年6月25日まで5年以上採用されていないし,平
成16年12月31日の期間満了後平成17年6月17日まで5か月以上採用され
ていないものである。
(イ)a期間雇用契約書の作成につき,原告A及び原告Bに見られるように,前
期の期間雇用契約の終了よりもかなり早い時期に更新の契約書が作成されることも
あったこと(原告らの主張ウ(イ)b),並びに期間満了のお知らせがやってきた労働
者にとっても,そもそも2か月の雇用期間開始の半月後には既に雇用期間満了のお
知らせの書面がやってきて,しかも,平成20年11月までは,期間雇用契約が更
新されていたこと(同ウ(イ)d)は,当事者間に争いがない。
b1.5か月前の職長による満了通知の交付については,職長によっては行
っていなかった可能性もないではないが,原告Bについては,最終の契約の満了通
知は平成20年11月17日に職長より手交され,原告Cについても,少なくとも
最終の契約の満了通知は平成21年1月6日に口頭でされている(争いのない事実
等(3)エ(ウ))。
c原告Bに対して平成20年11月17日に「期間満了のお知らせ」を渡し
た職長が,「形式的なものですから。」と断っていたとしても,原告Bの供述によ
れば,同月28日には,同職長から,原告Bに対し,「私(職長)としては,(原
告)Bさんは一生懸命やってくださっているのだから,現場としてはこのまま働き
続けていただきたいんだ,だけども現場の意見だけではどうにもならないんです。」
と今回は形式的なものではないことを伝える電話がされていることが認められる。
dこれらの事実によれば,平成20年秋以降の世界同時不況以前の比較的好
況が続いた経済状況の下で,被告日野工場の現場(職長レベル)において,2か月
ごとの雇用期間の更新手続に当たり,期間従業員にがんばって働いてもらいたいと
の気持ちから,書類の交付が一部されなかったり,形式的なものである等の言葉が
かけられることがあったとしても,原告らにつき,争いのない事実等(3)で認定した
期間雇用契約の更新手続のほとんどは履践されていたものである。
ウ期間従業員の意識
(ア)1年後に再赴任しなかった24%の期間従業員(争いのない事実等(4)ア
(ウ))のうち,会社都合(能力不足等)は20%くらいであるから,1年後に再赴任
しなかった期間従業員のうち会社都合(能力不足等)によるものは,同時期に入社
した者の約5%であること(原告らの主張エ(ウ))は,当事者間に争いがない。
(イ)証拠(原告C)によれば,原告Cは,平成20年9月の面接の際,2年1
1か月勤務できるかが確認されたこと(同エ(エ))が認められる。ただし,同月9月
19日付けで作成された被告と原告Cの期間従業員雇用契約書(甲12)の内容及
び弁論の全趣旨によれば,上記確認の趣旨は,契約更新を行う場合は最長1年であ
り,さらに再赴任をする場合でも2回までであり,不況等の事情の変化がない限り,
通算2年11か月勤務することができるが,そのような場合,原告Cに2年11か
月働く意思があるかを問うものであったと認められる。
(ウ)a原告Dは,平成20年5月31日に2年11か月となった後,1か月余
り寮を離れたが,この間,職場に復帰することを前提に寮に荷物を置かせてもらっ
たこと(同エ(オ)a)は,当事者間に争いがない。
b証拠(原告D)によれば,原告Dは,職長から,平成20年5月に辞める
前に「また戻ってきてくれ。」と言われ,約1か月後に職場復帰した際には「2年
11か月よろしく頼むよ。」と言われたことが認められる。
(エ)争いのない事実等(3)及び(4)の事実に,上記説示の事実を併せ考慮すれば,
被告日野工場において,職務能力や職務態度に問題がない限りは2年11か月は雇
用が保障されるとの意識が期間従業員に存在していたと認めることはできず,被告
日野工場での期間従業員の意識は,職務能力や職務態度に問題がないことに加え,
不況等の事情の変化がない場合は,2年11か月の雇用が保障されるとの意識であ
ったと認められる。
エ平成19年6月の被告人事部長の約束
(ア)平成19年6月1日,被告の申入れにより,被告と組合支部との少人数で
の協議が行われ,出席者は,被告側がO人事部長とG人事厚生室長,組合支部側が
P委員長とM書記長のみであったことは,当事者間に争いがない。
(イ)証拠(甲60,証人M,証人L(第1回,第2回))によれば,被告のO
人事部長らは,①メディアの寵児となったN,Lの二人が被告から撤退してくれる
なら,Kユニオン委員長のB委員長らを含む希望者全員を期間従業員として採用し
てもいい,②その場合,B委員長らの組合活動は一定期間控えてほしいとの申入れ
をしたこと,組合支部は,Kユニオンの委員長である原告Bをはじめ団体交渉やビ
ラまきなどで先頭に立って活動してきた組合員が期間従業員に切り替わって4か月
後とか6か月後に,契約期間満了と称して雇止めされる事態を避けるため,被告が
期間従業員の常態となっている2年11か月の雇用を保障することと引換えに被告
の提案を了承することとしたこと,組合支部は,合意に向けて何度かの交渉を重ね,
手順についても協議をしたことが認められる。
(ウ)原告らは,同年7月4日の協議の場で,M書記長の質問に答え,O人事部
長が「途中で雇い止めするようなことはしない。2年11か月は必ず保障する。」
と答えた旨通常の期間従業員の雇用期間の保証以上の保証を与えた趣旨を含むかの
ような主張をし,証人Mは,それに沿う証言をする。
しかし,証人Mの証言は,反対趣旨の証人Gの証言,原告ら主張のO人事部長と
の合意内容を記載した覚書のような書面は作成されていないこと,並びに派遣従業
員から期間従業員となり,通常の期間従業員と同じ待遇を受けることであっても,
大幅な待遇改善となり,労働組合運動の成果として誇り得るものであったと認めら
れること(証人M,証人L第1回,弁論の全趣旨)に照らし,採用することができ
ず,他にこの点を認めるに足りる証拠はない。
(エ)したがって,O人事部長の約束は,労働者派遣により被告日野工場で働い
ている派遣従業員を期間従業員として雇用した後,契約期間,更新及び再赴任等の
点でこれまでの期間従業員と同じ待遇をし,契約期間の更新の際を利用して,組合
役員の首切りをするようなことはしないことは含んでいるが,それ以上の保証を含
むことの立証はない。
(2)判断
以上に説示した事実によれば,労働契約法17条2項の趣旨を考慮しても,原告
らと被告との期間雇用契約(争いのない事実等(2)ア~エ)が,実質的には期間の定
めのない契約と同一の状態にあったとか,少なくとも2年11か月の雇用期間の定
めがあったものと認めることはできない。
2争点(2)(客観的で合理的な理由の有無)について
(1)継続雇用の合理的期待
前記1に説示した事実によれば,被告日野工場では,職務能力や職務態度に問題
がなく,不況等の事情の変化がない場合,2年11か月雇用されることが期待され
ていたものであり,原告Dの雇用期間は平成17年6月以降だけでも3年半に及ん
でおり,原告原告A及び原告Bの期間従業員としての雇用期間は1年4か月であり,
原告Cの期間従業員としての雇用期間は4か月であるが,最大2年11か月の更新
又は再赴任があり得るとの契約の下に雇用されていたものであるから,このような
期間従業員を契約期間満了によって雇止めするに当たっては,解雇に関する法理が
類推され,解雇であれば解雇権濫用に当たる事実関係の下に被告が新契約を締結し
なかったとするならば,期間満了後における被告と期間従業員との間の法律関係は
従前の期間雇用契約が更新されたのと同様の法律関係となると解せられる。
ただし,その場合に要求される雇止めを判断する基準は,正社員を解雇する場合
とは自ずから合理的な差異がある。
(2)雇止めの客観的で合理的な理由
ア世界同時不況等の存在
本件雇止めは,争いのない事実等(5)及び(6)のとおり,平成20年秋以降の世界
同時不況下にあって,国内外の景気の悪化によるトラック需要の大幅減少及びそれ
による被告の経営状況の悪化を理由とするものであり,他に特段の事情の認められ
ない限り,本件雇止めには客観的で合理的な理由が存すると認められる。
イ特段の事情の有無
(ア)期間従業員の募集の再開
a被告は,平成21年9月,日野工場,羽村工場,α工場の3工場で合計9
00人規模の期間従業員の募集を再開する方針であることを明らかにし,これに先
立って同年8月からハローワークや求人誌によって期間従業員の募集を開始したこ
と,並びに期間従業員の募集は,その後も継続され,平成21年12月4日までに
採用された期間従業員の数は,日野工場100人,羽村工場600人,α工場40
0人の合計1100人に及んでいること(原告らの主張ウ(イ)a(a))は,被告にお
いて明らかに争わないから,これを自白したものとみなす。
b原告らは,期間従業員の一斉雇止めをしながら,短期間のうちに大量採用
の再開が行われること自体,本件雇止めが無定見に行われたことを示すものである
と主張するが,弁論の全趣旨によれば,経済情勢の予想には困難を伴い,平成20
年秋の世界同時不況についても,当初は100年に一度の大恐慌と喧伝されていた
ことが認められるところであり,原告らの上記主張は採用することができない。
(イ)雇止めの必要性の不存在
a原告らは,被告の平成21年3月期の連結営業損失194億円は,同期の
連結売上高1兆0694億円の1~2%であり,純資産2189億4200万円の
10%にも満たず,同期の純損失618億3900万円も,純資産の30%に満た
ないこと(同ウ(イ)b(a))は,当事者間に争いがない。
b原告らは,この事実に基づき,被告の経営状況は,直ちに原告らを雇止め
するほどの必要性を有するものではなかった旨主張する。
しかしながら,争いのない事実等(5)を併せ考慮すれば,被告の経営状況を原告ら
主張のように認めることは,到底できない。
(ウ)雇止め回避努力の不十分
a被告の単体決算の資本準備金,利益準備金,固定資産圧縮積立金,別途積
立金,当期未処分利益を合計した「内部留保」を検討すると,平成21年3月期の
それは1313億円であり,これは,アジア危機後の平成10年1093億円の1.
2倍,平成11年731億円の1.8倍,平成12年976億円の1.35倍に当
たり,それ以前とも比較すると,昭和55年の3.7倍,平成2年の1.7倍であ
ること(同ウ(イ)c(b)ⅰ)は,被告において明らかに争わないから,これを自白し
たものとみなす。
b原告らは,この事実に基づき,この内部留保を有効活用すれば,期間従業
員の少なくともその一部の雇用維持が十分に可能なはずであった旨主張する。
しかしながら,争いのない事実等(5)を併せ考慮すれば,期間従業員の一部ではな
く,全員の雇止めを必要とした被告の判断は,十分首肯し得るものであるといわな
ければならない。
c被告の行った人件費の削減,原価低減,固定費削減,稼働日数調整の多く
の実施開始は,本件雇止め後のことである(争いのない事実等(7)ア)。
d(a)被告の費用削減策では,希望退職の募集や配転,出向,転籍などの措置
を講じていないこと(同ウ(イ)c(d)ⅰ)は,当事者間に争いがない。
(b)原告らは,この事実に基づき,被告の費用削減策は,雇止めの回避策とし
ては不十分なものであると主張する。
しかしながら,期間従業員の雇用維持のために,正社員につき希望退職の募集や
配転,出向,転籍などの措置を講じるべきであると解することはできない。
(エ)組合との団体交渉
a被告は,平成20年12月11日から平成21年6月19日まで,7回に
わたり,組合支部又は労働組合日野自動車ユニオンとの団体交渉を実施した(争い
のない事実(9))。
bその誠実さについては,経営者側,労働者側の立場の違いにより,評価が
分かれ,開催時期も,原告Aらに対する雇止めがされ,原告Cらに対して更新拒絶
の通告がされた後の説明であるが(同ウ(イ)d(e)),証拠(証人G,証人M)及び
弁論の全趣旨によれば,雇止めの理由,その回避努力,退寮期限等について,それ
ぞれの立場から必要な質疑応答はされていることが認められる。
(オ)まとめ
以上(ア)ないし(エ)の事実を併せ考慮しても,本件雇止めには客観的で合理的な理
由が存すると認められる。
3結論
以上によれば,原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく理由が
ないから,棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所立川支部民事第3部
裁判長裁判官
市川正巳
裁判官
木目田玲子
裁判官
八槇朋博

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