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平成30年3月6日判決言渡
平成29年(行コ)第343号工作物除却命令等請求控訴事件(原審・
東京地方裁判所平成28年(行ウ)第484号)
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2処分行政庁は,被控訴人補助参加人に対し,原判決別紙1物件目録
記載1の土地上にある同目録記載2のフェンス及びブロック塀を撤去
せよとの是正措置命令を発せよ。
3処分行政庁は,被控訴人補助参加人が前項の是正措置命令を履行し
ないときは,行政代執行法の定めるところに従い,原判決別紙1物件目
録記載2のフェンス及びブロック塀を除却せよ。
第2事案の概要
1不動産業を営む控訴人は,東京都文京区内の原判決別紙1物件目録
記載3ないし5の土地(以下「本件土地」という。)を取得して,同所
に鉄筋コンクリート造地上4階,地下1階建の集合住宅(以下「本件マ
ンション」という。)の建設を計画し,建築基準法令の接道要件を満た
すため,公道に接続する既存の西側通路(幅員約2m。なお,本件土地
が西側通路に接する範囲は上記幅員の限度である。)に加えて,高台に
ある本件土地の北側がけ地部分(高さが約6mあり,擁壁が設けられて
いた。)を造成し,新たにがけ下の北側へ降りる階段を設置することで,
そのがけ下を通っていた私道(幅員約3mで2項道路の指定を受けて
いる。以下「本件私道」という。)と接続させようとしたところ,本件
私道を所有する被控訴人補助参加人が,本件土地に沿って本件私道上
にフェンス(以下「本件フェンス」という。)を設け,間もなく本件フ
ェンスに沿ってブロック塀(以下「本件ブロック塀」といい,本件フェ
ンスと併せて「本件各工作物」ともいう。)も設けたため,本件土地と
本件私道との行き来が引き続きできない状態になった。
本件は,控訴人が,被控訴人に対し,本件各工作物の設置が建築基準
法(以下,単に「法」という。)45条1項所定の私道の変更に当たり,
重大な損害を避けるために他の適当な方法がないと主張して,処分行
政庁である文京区長において,被控訴人補助参加人に対し,工作物除却
の是正措置命令(以下「本件是正措置命令」という。)を発し,被控訴
人補助参加人が係る命令を履行しない場合には,自ら行政代執行する
よう義務付けを求めた事案である。
原審は,本件訴えが原告適格を欠く旨の被控訴人の主張を排斥した
上,本件各工作物の設置の時点で,本件私道が本件土地との関係で接道
機能を果たす通路であったとは認められず,本件土地は本件私道「に接
する敷地」であるという法45条1項の要件を満たしていないから,本
件各工作物の除却を命ずる本件是正措置命令の義務付け請求は理由が
なく,何ら行政上の義務が生じていない段階で,行政代執行を行うべき
法的権限を処分行政庁が有していないと判示し,本件訴えのうち,行政
代執行の義務付けを求める部分を却下し,その余の請求を棄却したと
ころ,これを不服とする控訴人が控訴をした。
2関係法令の定め,前提事実及び主な争点と当事者の主張は,次の3
で原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事
案の概要」の1から3まで(原判決3頁2行目から19頁21行目ま
で)に記載のとおりであるから,これを引用する。
3原判決の補正
(1)原判決6頁17行目の「却下した」の次に「(同裁判所平成28
年(ヨ)第217号)」を加える。
(2)原判決6頁18行目の「棄却し」の次に「(同裁判所平成28年
(ラ)第484号)」を加える。
(3)原判決6頁20行目の「決定」の次に「(同裁判所平成28年(ラ
許)第223号)」を加える。
(4)原判決6頁21行目の「決定がされた」の次に「(同裁判所平成
28年(ク)第659号)」を加える。
(5)原判決6頁25行目から末行にかけての「言い渡した」の次に
「(同裁判所平成28年(ワ)第11157号)」を加える。
(6)原判決7頁初行の「言い渡した」の次に「(同裁判所平成29年
(ネ)第967号)」を加える。
(7)原判決10頁16行目の「高度であり,」を「大きく,」と改め
る。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,原審と同様に,控訴人について,本件訴えの原告適格
は認められるものの,本件各工作物の設置の時点で,本件土地は本件私
道「に接する敷地」とは言えず,法45条1項の要件を満たしていない
から,その除却を命ずる本件是正措置命令の義務付け請求は理由がな
いから棄却すべきであり,また,行政上の義務が生じていない段階で
は,行政代執行を行うべき法的権限を処分行政庁が有することはない
から,本件訴えのうち,行政代執行の義務付けを求める部分は不適法で
却下すべきと判断する。その理由は,次のとおり控訴人の主張に対する
判断を補足して説明するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3
当裁判所の判断」の1から5まで(原判決19頁23行目から29頁末
行まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
2控訴人は,法43条の接道要件の充足は,建築物の敷地としての当
該土地と道路との現状に基づいて判断されるもので,過去の形状がど
うであったか考慮する必要がなく,法45条1項に定める「道路に接す
る敷地」に当たるか否かも同様であって,本件各工作物が設置された時
点で,既に従前の擁壁が撤去されてがけ地ではなく,本件私道への出入
りが可能な形状になっていたのであるから,接道要件を満たしており,
本件土地が「道路に接する敷地」に当たると主張する。
確かに,法45条は,既存の建築物がその敷地に接する私道の廃止
又は変更に伴い,事後的に接道義務に違反することになる事態を防止
するための規定であり,私道の廃止又は変更が行われた時点において,
当該私道により接道要件を充足する建築物の敷地が存在するか否かが
問題となるものである。
しかし,本件においては,上記で引用する原判決が摘示した前提事
実⑹によれば,平成28年1月頃,控訴人が本件土地の造成工事に着手
したところ,同月11日から翌12日にかけて,本件私道上の本件土地
寄りの部分に,本件土地に沿って本件フェンスが設けられ,その後,同
年2月初め頃,本件私道から見て本件フェンスの内側に沿って本件ブ
ロック塀が設けられた。すなわち,証拠(甲8[枝番を含む。],18,
19,33,乙4)によれば,本件マンションの建築確認に係る計画で
は,本件土地の北側がけ地を掘削して新たに擁壁を設けるとともに,北
東部分に階段を設置して,本件私道と接続することになっていたが,上
記のとおり本件フェンスが設置された時点では,造成工事に着工し,既
存の擁壁を撤去してがけ地の掘削作業が進んでいたものの,階段は設
置されておらず,擁壁新設工事もなされていない状況にあり,また,そ
の後の本件ブロック塀が設置された時点では,擁壁新設工事が行われ
ている途中で,未だ階段は設置されていない状況にあって,結局,同年
2月22日には,全部工事の取り止めが届出されたことが認められる。
そうすると,控訴人の上記主張を前提としても,本件土地は,本件各工
作物が設置された時点において,到底,人の通行が可能な状態にはな
く,本件私道によって接道要件を充足しているという状態にはなかっ
たから,本件土地は,法45条1項の「道路に接する敷地」には当たら
ないというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
3控訴人は,建築物の建築を具体的に予定し,建築に着手する手続が
執られた後であれば,建築を予定する敷地所有者の期待は法的保護に
値するもので,私道の変更によって法43条に抵触する場合には,法4
5条1項の適用が認められなければならないと主張する。
しかしながら,法45条は,既存の建築物が,その敷地と接して接道
要件を満たしていた私道の変更又は廃止によって,事後的に接道義務
に違反することになる事態を防止するための規定であることは上記の
とおりであり,その変更,廃止の時点で,当該私道によって法43条の
接道要件を満たしていることが必要であり,当該私道による接道要件
の充足を前提として建築確認を得たというだけでは,法45条に基づ
いて,当該私道所有者の権利を制限することはできないというべきで
ある。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
4なお,控訴人は,法42条2項は,道路の幅員確保を目的として,
一義的明確性及び取引の安全を図る見地から,一律に法施行時(昭和2
5年当時)の道路の位置,形状を基準としてセットバック義務を定めた
もので,道路に沿接する土地における道路利用の必要性や程度といっ
た観点から定めたものではなく,がけ地について,道路の利用が予定さ
れていないためにセットバック義務を課さないのではないから,法4
5条1項の「道路の接する敷地」の判断において,本件土地が本件私道
との関係でセットバックの負担がないことを考慮することは許されな
いとの主張もする。
しかし,本件では,上記2のとおりの理由で,本件土地は,本件各工
作物設置の時点で「道路の接する敷地」と認められないのであり,セッ
トバックの負担の有無で上記結論を認めるものではないから,控訴人
の主張は上記結論を左右するものではない。
しかも,法42条2項ただし書において,2項道路のいわゆる一方的
後退を認めた趣旨は,道路に接した土地の一方が,がけ地や,川,線路
敷地等(以下「がけ地等」という。)であるときには,拡幅が物理的に
困難であるため,セットバックの負担を解除したものである。これを道
路の利用面から見れば,通常,がけ地等の拡幅が物理的に困難な状態に
ある敷地と道路を人が出入りして通行することは想定することができ
ず,当該敷地の所有者等においても道路を常時使用することを予定し
ていないため,セットバックの負担が解除されるのである。したがっ
て,当該敷地は,セットバックの負担が解除される場合には,通常,当
該道路が接道機能を果たすことがないから,法45条1項の「道路の接
する敷地」ではない状況にあるということができる。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
5よって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主
文のとおり判決する。
東京高等裁判所第19民事部
裁判長裁判官
裁判官
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