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         主    文
     被告人Aの本件控訴を棄却する。
     原判決中被告人Bに対する部分を破棄し
     本件を浦和地方裁判所川越支部に差し戻す。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、被告人両名の弁護人一松弘作成名義の控訴趣意書記載のと
おりであるから、これをここに引用し、これに対して次のとおり判断する。
 控訴趣意第二(1)について
 原判決が、被告人Bからウエハー一〇二個(昭和三十年押第二号の九の中数字の
記入してあるもの)、ココア一鑵(同号の一〇)、マヨネーズ一壜(同号の一
一)、石鹸三四個(同号の一二)、ミルク三鑵(同号の一三)、ココア空鑵二個
(同号の一四)、角砂糖一箱(同号の一五)、コーヒー空壜一個(同号の一六)、
チーズ空箱一個(同号の一七)、チーズ一壜(同号の一八)、菓子空箱一個(同号
の一九)、マヨネーズ空鑵二個(同号の二〇)を没収し、一方追徴額の説明におい
て、「昭和二九年六月以前の取引分については、同年法律第六一号による改正前の
関税法第八三条第三項の規定に則り、「原価」にあたる到着価格に相当する金額を
追徴し、同年七月以降の分については、東京高裁昭和三二年九月一〇日判決(高集
第一〇巻第七号第五九三頁以下)の趣旨に従い、到着価格に関税額を加え、物品税
を課せられる物品については物品税額を加え、さらに、これに二割の利潤を加算し
た金額を追徴することにする」旨判示していることは、所論のとおりである。とこ
ろで所論は、前示押収品は、被告人が昭和二九年六月以前にも、又、同年七月以降
にも買い受けた品々であつて、右押収品のいずれが六月以前に買い受け、いずれが
七月以降に買い受けた分であるか原審の審理において明らかにしていないのである
が、右没収品の買受年月日如何によつて追徴額に相違を来すことは明らかであるに
かかわらず、原判決が漫然と同被告人から金三十四万六千五百八十七円を追徴した
のは、理由不備の違法がある旨主張するにより、考察するに、原判決書の記載に徴
するときは、原判決においては、被告人Bに対して言渡した前示没収及び追徴に関
する法令の適用については、関税法第一一八条第一項及び第二項を適用し、その追
徴額の算定については、前掲原判示の方法によつたものであることが窺われるので
あるから、同被告人に対する追徴額を算定するには、原判決の認定した同被告人の
買受物品のうちから前示没収品を控除した残りの物品についてこれを算出すべき筋
合であると考えられるのであるが、右原判示の方法によるとすれば、昭和二九年法
律第六一号による関税法改正の前後によつて追徴額に相違を来すべきことは、所論
のとおりであつて、原判決書によれば、前記没収物件中ココア、マヨネーズ、石
鹸、コーヒー等については、これらと同種類の物品が、昭和二九年六月以前の取引
中にも、同年七月以降の取引中にも存することが認められることもまた所論指摘の
とおりであるから、まず、原判決において同被告人に対して没収した前掲押収物件
が、原判決認定にかかる同被告人の取引中いずれの取引における買受物品であるか
を明らかにするのでなければ、該物品の買受が、前示改正法律施行の前後いずれに
あたるかが分明せず、従つて、いずれの買受物品中からこれを控訴すべきかがわか
らない訳であつて、結局、追徴額を算出することができない道理であると考えられ
るところ、原判決書をみるに、原判決においては、この点につき、前記押収物件が
原判決認定にかかるいずれの買受物件に該当するかを明らかにしておらず、従つ
て、その買受が右改正法律施行の前後いずれにあたるかをも示すことなくして、漫
然同被告人から金三十四万六千五百八十七円を追徴する旨の言渡をしていることが
認められるのであるから、右追徴額が果していかなる方法によつて算定されたもの
であるかは、原判決書の記載によつてはこれを知るに由ないものというのほかな
く、結局、同被告人に対する追徴についての原判決の主文のよつて生じた理由は、
不明であるといわなければならない。してみれば、原判決には、ひつきよう、この
点につき判決に理由を附さないか、判決の主文と理由とにくいちがいがあることに
帰し、原判決中同被告人に対する部分は、この点において破棄を免れないものとい
うべく、論旨は理由がある。
 同第二の(2)について。
 原判決が、その理由中、関税法第一一八条第二項の追徴額について、前記のとお
り東京高裁判決の趣旨に従い、到着価格に関税額を加え、物品税を課せられる物品
については物品税額を加え、さらにこれに二割の利潤を加算した金額を追徴するこ
とにすると説示していることは、所論のとおりであつて、これに対して所論は、右
法条にいわゆる貨物相当の価格というのは、その貨物の到着価格に関税額を加算し
た額を指称するものと解すべきであり、右東京高裁の判決は、関税法違反のほか物
品税法違反にかかる事案に対するものであつて、本件に適切でないから、原判決
が、前示解釈の下に被告人Bから金三十四万六千五百八十七円を、被告人Aから金
十六万九千九百六十二円をそれぞれ追徴したのは、理由不備の違法があるか、又は
明らかに判決に影響<要旨>を及ぼすべき法令の適用の誤が存する旨主張するによ
り、案ずるに、関税法第一一八条第二項所定の「その没収することができな
いもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、そのものの犯罪が行
われた当時における国内卸売価格をいうものと解すべきであるから、没収しない犯
罪貨物が、物品税法所定の課税物品であり、しかも物品税法に違反して物品税を免
れているものであるときは、その物品税相当額をも加算してその犯罪が行われた時
の価格を算定すべきものと解するを相当とするところ、本件においては、関税法違
反の点のみを起訴されたものであつて、物品税法違反の点については起訴されてい
ないことは、所論指摘のとおりであるけれども、しかし、原判決認定にかかる被告
人両名の買受物品のうちには、物品税法所定の課税物品が包含されており、被告人
両名において、該物品税を免れていることは、記録上明らかであるから、原判決が
右被告人両名に対し、関税法第一一八条第二項所定の追徴額を算定するにつき、前
示のように、物品税相当額をも加算したことは、適法であるというべく、従つて、
原判決には、この点につき所論のような理由不備の違法又は判決に影響を及ぼすこ
との明らかな法令適用の誤があるものということはできない。論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 中西要一 判事 山田要治 判事 鈴木良一)

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