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平成一一年(ワ)第二三五四八号営業表示使用差止等請求事件
(口頭弁論終結日平成一一年一二月一四日)
判決
原     告  リズム時計工業株式会社
右代表者代表取締役【A】
右訴訟代理人弁護士森 田 政 明
右補佐人弁理士【B】
被     告リズムハウス有限会社
右代表者代表取締役【C】
主文
一被告は、埼玉県北葛飾郡<以下略>において、看板、ちらし等の宣伝広告物及
び名刺に、「リズムハウス㈲」又は「リズムハウス有限会社」の営業表示を使用し
てはならない。
二被告は、「リズムハウス㈲」又は「リズムハウス有限会社」の営業表示を付し
た看板、ちらし等の宣伝広告物及び名刺を廃棄せよ。
三被告は、原告に対し、金五〇万円及びこれに対する平成一一年一〇月二四日か
ら支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四原告のその余の請求をいずれも棄却する。
五訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余は被告の負担と
する。
六本判決は、第一項ないし第三項に限り仮に執行することができる。
事実
第一請求
 一被告は、埼玉県北葛飾郡<以下略>地区内において、看板、ちらし等宣伝広
告物、名刺、刊行物書類に「リズムハウス」の営業表示を使用してはならない。
二被告は、「リズムハウス」の営業表示を付した看板、ちらし等の宣伝広告
物、名刺、刊行物書類一切を廃棄せよ。
三被告は、原告に対し、金八〇〇万円及びこれに対する平成一一年一〇月二四
日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四被告は、原告に対し、日本経済新聞、朝日新聞及び読売新聞の各朝刊埼玉版
広告欄に別紙記載の謝罪広告を別紙記載の条件で一回掲載せよ。
第二当事者の主張
一請求原因
1(一)原告は、各種時計及び部分品、精密機械及び器具等の製造、買入及び
販売、不動産賃貸業等を目的とする株式会社である。
   (二)被告は、不動産の売買、仲介及び賃貸業務、ビデオ撮影業務、広告宣
伝業務、旅行業務、ホテルの経営その他これらの業務に付帯する一切の業務を目的
とする有限会社である。
2(一)原告は、全国に支店、営業店六三を擁し、昭和四七年以来東京証券取
引所第一部に上場している、時計・精密機器の製造販売において世界的に著名な会
社である。
(二)原告は、昭和二五年以来、本社及び埼玉事業所を埼玉県北葛飾郡<以
下略>地区に置いていた。平成九年に原告の本社は移転したが、原告は、同地区に
おいて、最大一三〇〇名に及ぶ従業員を雇用し、リズムの名を冠した子会社、関連
会社とともに幅広い事業活動を展開してきたものであり、同地区は原告の会社町と
して発展してきた。
(三)原告は、平成九年、埼玉県北葛飾郡<以下略>の土地上にあった原告
の工場等を解体したが、地元商工会の要請に基づき、その跡地にショッピングプラ
ザを建設させ、地元の商店に使用させている。
また、その宣伝チラシにも、「リズム時計跡地」と銘打ち、「この建物
は、地元商店の活性化のため、商工会がリズム時計㈱様の御理解のもとに施工して
いただいた店舗です。」と記載されている。
(四)東武野田線南桜井駅では、長い間、原告の表示である「リズム時計」
の看板が乗降客の目に入り、強い印象を与えていた。また、右跡地周辺には、今で
も原告の事業所が存し、事業活動を幅広く展開している。さらに、右跡地周辺に
は、原告がその名において所有、管理する多数の土地が存在している。
(五)以上によると、原告の会社名は、埼玉県北葛飾郡<以下略>地区にお
いて周知である。
3被告は、「リズムハウス」という営業表示を、看板、ちらし等の宣伝広告
物、名刺、刊行物書類に用いている。
4原告の会社名と被告の右営業表示は類似している。
5被告が右営業表示を使用する行為は、被告が、原告と、親会社、子会社若
しくは系列関係などの緊密な営業上の関係があるか又は同一の表示の商品化事業を
営むグループに属するものと誤信させる行為である。現に、原告に被告の営業活動
に対する問合せが来たり、郵便物の誤配が生じるなど、営業主体の誤認混同が生じ
ている。
6原告は、被告が原告の営業とは無関係である旨の表示を設置した。また、
原告の地元商工会等に対する協力関係、信頼関係に亀裂が生じた。これらによる損
害は八〇〇万円を下らない。
7よって、原告は、被告に対し、不正競争防止法三条一項に基づき、被告の
右表示の使用の差止めを求め、同条二項に基づき、右表示を付した看板等の廃棄を
求めるとともに、同法四条に基づき、金八〇〇万円及びこれに対する平成一一年一
〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、同法七
条に基づき、信用回復措置をすることを求める。
 二請求原因に対する認否
請求原因1(二)は認めるが、その余の請求原因は否認又は不知。
理    由
一当事者について
弁論の全趣旨によると、原告は、各種時計及び部分品、精密機械及び器具等の製
造、買入及び販売、不動産の賃貸業等を目的とする株式会社であることが認められ
る。
被告が、不動産の売買、仲介及び賃貸業務、ビデオ撮影業務、広告宣伝業務、旅
行業務、ホテルの経営その他これらの業務に付帯する一切の業務を目的とする有限
会社であることは、当事者間に争いがない。
二原告の会社名の周知性について
以下の証拠によると、次の事実が認められる。
1原告は、昭和二五年から平成九年まで、埼玉県北葛飾郡<以下略>の東武
野田線南桜井駅前に存する約二万六五〇〇平方メートルの敷地において、工場を操
業し、最盛期には約一三〇〇名の従業員を有していた(甲一、弁論の全趣旨)。
2原告は、平成九年、右工場を解体したが、その跡地を住友信託銀行株式会
社に信託し、同社は、右土地に、商業用ビルを建築した(甲一〇ないし一二、甲一
三の一、二)。
右ビルは、スーパーマーケット、地元の商店等が出店しているショッピン
グプラザとして使用されており、その宣伝チラシには、「リズム時計跡」との記載
があり、「この建物は、地元商店の活性化のため、商工会がリズム時計㈱様の御理
解のもとに施工していただいた店舗です。」と記載されていた(甲一三の一、二、
甲一四の一ないし三、甲一五、一八)。
3原告は、庄和町の産業祭に出展したり、同町のマラソン大会に協賛するな
どしてきた(甲三ないし九(いずれも枝番をすべて含む))。
  4東武野田線南桜井駅の近くには、「リズム時計駅前駐車場」との看板が掲
げられた、原告が経営する駐車場があり、また、東武野田線沿線の<以下略>内に
は、原告の埼玉事業所があり、「Rリズム時計」の看板が掲げられているほか、
「リズム」との屋上塔表示がされている(甲二〇、乙三)。さらに、<以下略>に
は、原告の子会社であるリズムサービス株式会社がある(甲二、乙三)。
以上の事実によると、埼玉県北葛飾郡<以下略>において、原告の会社名
は、不正競争防止法二条一項一号の周知性を有するものと認められる。
 三被告の行為について
1証拠(甲一六、一七、一八、二一、乙五)と弁論の全趣旨によると、被告
は、平成一〇年一二月に、商号を「有限会社正光」から「リズムハウス有限会社」
に変更し、埼玉県北葛飾郡<以下略>の東武野田線南桜井駅前にある、右二2認定
のショッピングプラザにおいて、平成一一年六月九日から、不動産業を営んでいる
こと、被告は、南桜井駅のホームから見える被告店舗の看板に「リズムハウス㈲」
との表示をしていること、被告は右表示を広告のちらしに用いていること、被告は
「リズムハウス有限会社」との表示を被告代表者の名刺に用いていることが認めら
れる(以下、これらの表示を「被告表示」という。)。
  2しかし、右1以外に被告が「リズムハウス」を含む営業表示を使用してい
ることを認めるに足りる証拠はない。
四原告会社名と被告表示の類似性について
原告の「リズム時計工業株式会社」との社名のうち、「時計工業」の部分
は、時計の製造を行っているという原告の業種を表すものと一般に理解され、ま
た、「株式会社」の部分は、原告の会社組織の種類を表すものであるから、いずれ
も識別力に乏しい。そうすると、原告会社名の要部は、「リズム」の部分であると
認められる。
また、被告表示のうち、「ハウス」の部分は、不動産に関する事業を営んで
いるという被告の業種を表すものと一般に理解され、また、「有限会社」又は
「㈲」の部分は、被告の会社組織の種類を表すものであるから、いずれも識別力に
乏しい。そうすると、被告表示の要部は、「リズム」の部分であると認められる。
以上述べたところからすると、原告会社名の要部と被告表示の要部は同一で
あるから、被告表示は原告会社名と類似すると認められる。
五混同のおそれについて
前記二認定の原告会社名の周知性、前記四認定の原告会社名と被告表示の類似性、
前記三認定の被告表示の使用形態、殊に、原告工場の跡地で被告が営業を行ってい
る事実に照らすと、被告が被告表示を営業表示として使用することは、被告と原告
が同一営業主体と誤信させるか、又は、原告と被告との間に、いわゆる親会社、子
会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係若しくは同一の表示の事業を営む
グループに属する関係があると誤信させるものと認められるから、被告が被告表示
を使用する行為は、不正競争防止法二条一項一号の「混同を生じさせる行為」に該
当するものと認められる。
したがって、被告が被告表示を使用する行為は、不正競争防止法二条一項一号の
不正競争行為に当たり、原告は、右行為によって営業上の利益を侵害されたものと
認められる。
六損害等について
1前記二認定の事実によると、被告は、原告会社名を認識していたものと認
められるから、被告の不正競争行為は、少なくとも過失に基づくものということが
できる。
  2証拠(甲二一、乙四)によると、原告は、被告との営業主体の誤認混同を
防止するために、被告が原告とは無関係である旨の表示を前記ショッピングプラザ
の壁に設置したことが認められる。
また、原告は、被告の右行為により、右五認定のとおり、営業上の利益を侵害さ
れたものと認められ、証拠(甲一九)と弁論の全趣旨によると、原告には、被告と
の関係について問合わせがあったり、郵便物が誤って配達されたりしたことがあっ
たものと認められる。
これらによる原告の損害は、本件で認定した諸般の事情を考慮すると、五〇万円
とするのが相当である。
なお、本件で認定した諸般の事情によると、被告の右行為により、原告に
謝罪広告を要するほどの信用毀損があったとまでは認められない。
七よって、原告の請求は、主文掲記の範囲で理由がある。
東京地方裁判所民事第四七部
裁判長裁判官森  義 之
裁判官榎 戸 道 也
裁判官岡 口 基 一

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