弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
1 本件控訴を棄却する。
2 本件附帯控訴に基づき、
(一) 原判決中、控訴人(附帯被控訴人)が昭和五〇年一月三〇日付でした被控
訴人(附帯控訴人)の昭和四四年一二月一日から昭和四五年一一月三〇日までの事
業年度の法人税についての第三次更正処分(ただし、昭和五〇年三月一八日付で減
額更正された後のもの)のうち、欠損金額控除前の所得金額を五億八六二一万五一
二三円として計算した額を超え、同じく五億八八九二万四三二八円として計算した
額までの部分につき取消請求を棄却した部分を取り消す。
(二) (一)掲記の更正処分のうち同掲記の部分を取り消す。
3 訴訟費用は、第一、第二審を通じてこれを二〇分し、その一を被控訴人(附帯
控訴人)の、その余を控訴人(附帯被控訴人)の各負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴について
1 控訴人(附帯被控訴人。以下単に「控訴人」という。)
(一) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
(二) 被控訴人(附帯控訴人。以下単に「被控訴人」という。)の請求を棄却す
る。
(三) 訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
との判決
2 被控訴人
控訴棄却の判決
二 附帯控訴について
1 被控訴人
(一) 主文2同旨
(二) 訴訟費用は、第一、第二審とも控訴人の負担とする。
との判決
2 控訴人
附帯控訴棄却の判決
第二 当事者双方の主張及び証拠関係
次のとおり訂正又は付加するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引
用する。
1 原判決三枚目(記録二〇丁)裏九行目から一一行目までを次のように改める。
「三 しかしながら、
1 右一連の各更正処分は、一貫して、被控訴人の後記損金処理を否認している点
においていずれも違法である。
2 四五事業年度の法人税に係る更正処分は、次の点で違法である。
すなわち、被控訴人はかねて控訴人により青色申告の承認を受け、右事業年度の確
定申告も青色申告書をもつてしたところ、課税標準を更正した更正通知書(後記損
金処理を否認した第一次更正に係るもの)には右損金処理否認の理由として別紙一
のとおりの理由が附記されているのみで、この附記理由からだけでは、何故に貸し
付ける相手方から取得した資産は、事業の用に供した資産に該当しないのか到底理
解することが不可能であるのみならず、理由附記を命じた立法の趣旨であるところ
の、処分庁の判断の慎重、合理性を担保して、その恣意を抑制するとともに、処分
理由を相手方に知らせ不服申立の便宜を与えるという観点からしても、右更正通知
書による更正は、法人税法一三〇条二項所定の理由附記を欠いた違法がある。
2 同六枚目裏九行目の「これに伴い、」から同七枚目(記録二四丁)表二行目ま
でを次のように改める。
「これに伴い、被控訴人が減価償却超過額として益金に算入した一一〇五万三八三
〇円については、右超過額が二七〇万九二〇五円に減少することとなつたので、右
一一〇五万三八三〇円を益金から減額するとともに、右二七〇万九二〇五円を益金
に加算した。」
3 同九枚目(記録二六丁)裏一行目「賃借しているが、」の次に、次のとおり加
える。
「その結果は、利息の負担が賃料の負担に変形するに過ぎず、他に本件買換資産を
売却しなければならない特別の事情は存しなかつた。そして、」
4 同八行目「貸し付けていたので」の次に、次のとおり加える。
「(都自動車としてもその経営上資金調達を被控訴人に求めざるを得ない事情にあ
つた。)」
5 同九行目「資金的余裕は」から同一〇行目「ものであり、」までを、「資金的
余裕はなく、また買換資産取得の予定もなく、本件買換資産の取得は四五事業年度
に至りにわかに実現したものであり、」と改める。
6 原判決一〇枚目(記録二七丁)表一行目「からである。」を次のとおり改め
る。
「からであるが、本件買換資産は都自動車にとつて業務上不可欠の資産であること
は前述のとおりであるから、被控訴人としてはそれを都自動車に一括して貸し付け
る以外に運用の方法はなかつたものである。」
7 同二行目「そうしてみると、」の次に、次のように加える。
「本件譲渡資産の譲渡は、当初から都自動車に対する貸付資金の調達が目的であ
り、被控訴人は右譲渡代金による本件買換資産の取得を当初から企図したものでは
なく、」
8 同裏四行目「本件買換資産の取得は、」から同五行目「ものであるから、」ま
でを、次のとおり改める。
「以上述べた事実関係を総合判断すれば、被控訴人の本件買換資産の取得は、その
実質において、被控訴人の都自動車に対する長期貸付金の一部弁済としての取得、
すなわち代物弁済であるのに、専ら課税繰延べを図ることを目的として、単に法形
式として売買の形を採つたに過ぎず、代物弁済としてしか認定できないものである
から、」
9 原判決一一枚目(記録二八丁)表二行目の次に、次のように加える。
「3更正通知書の附記理由について
被控訴人主張の更正通知書に附記された圧縮損(建物圧縮記帳引当金を含む)否認
に係る理由が被控訴人主張のとおりであることは認める。しかし、控訴人のした被
控訴人指摘の更正理由に係る各損金計上の否認は、被控訴人の帳簿書類等に記載の
事実それ自体を否認したものではなく、その記載から認められる客観的事実を基礎
として、その事実関係の下で旧措置法六五条の五第二項の規定に基づく課税の特例
の適用を認めるか否かの法律判断をしたものであり、このように、ある事実を基礎
とする法的判断については、更正通知書に附記する理由において事実と法的判断の
結論のみ示せば足り、それ以上にそのような結論をとるべき根拠まで示す必要はな
いし、現に被控訴人は、附記された理由の内容が右にとどまつたことにより、不服
申立の便宜は少しも奪われていない。」
10 同一五枚目(記録三二丁)表七行目の次に、次のとおり加える。
「さらに、国税庁長官は昭和五四年一〇月一八日付で『直法二ー三一法人税基本通
達等の一部改正について』との通達を発し、右改正前の法人税基本通達において
『買換資産を当該法人の事業の用に供したことの意義』の(6)として別紙二の上
欄のとおり記載されていたのを同下欄のとおり改正し、『当該貸付ける相手方から
取得した当該資産を除く。』とあつたかつこ書を削除した。したがつて、通達上一
般的には、貸付ける相手方から取得した資産であつても、その貸付が相当な対価で
継続的に行われる限り、事業の用に供した資産に該当することとなつたのであり、
控訴人において右貸付を『事業の用に供した』ことに当たらないと主張すること
は、右通達に違反し、国家行政組織法一四条二項及び国家公務員法九八条一項に違
反する。」
11 同一六枚目(記録三三丁)表一〇行目の次に、次のように加える。
「仮に、本件買換資産の取得及び貸付が租税回避と目されるとしても、租税法律主
義の法理上、課税庁は明文の規定なくしてこれを否認することはできない。また前
記法人税基本通達は、買換資産の譲渡人が元の状態のまま賃借している場合も『事
業の用に供した』ことに当たることを明らかにしているから、控訴人がこれを租税
回避行為と断ずることは右通達に違反し、国家行政組織法一四条二項及び国家公務
員法九八条一項に違反する。」
12 同一七枚目(記録三四丁)表二行目の次に、次のように加える。
「仮に右のような主張が許されるとしても、被控訴人が本件買換資産の取得に伴い
とつた行為は民法五〇五条の相殺であり、旧措置法施行令三九条の六第二項が代物
弁済と規定している以上、右は民法四八六条の代物弁済を意味し、右代物弁済に相
殺が含まれることはない。もし含ませようとするならば、明文をもつて規定するこ
とが租税法律主義の要請であり、そのような明文がないのに、納税者が選択した相
殺を代物弁済として扱うことは租税法律主義に違反する。」
13 同三行目と四行目の間に、次のように加え、同四行目に「一」とあるのを
「二」と、原判決一八枚目(記録三五丁)表六行目の冒頭に「二」とあるのを
「三」とそれぞれ改める。
「一 被控訴人の反論二2について
国税庁長官が被控訴人主張のように法人税基本通達を改正する通達を発したことは
認める。しかし、本件のように専ら圧縮記帳の適用を受けることを目的として行な
われた貸付が『事業の用に供した』ものとは認められないことは、右通達改正の前
後を通じていささかも変りはない。」
14 原判決一七枚目(記録三四丁)裏五行目「このように」から同九行目まで
を、次のとおり改める。
「また、被控訴人は前記貸付金により都自動車から年利一〇パーセントの利息を得
ていたのであるから、本件買換資産の管理費用の負担を考慮すると、貸付金が本件
買換資産に振り変つたことは被控訴人にとつて必ずしも有利な資金運用とはいえな
い。このように被控訴人の一連の行為は、営利を目的とする会社の行為として著し
く経済的合理性を欠くものであり、本件買換資産の売買が会社としての事業目的に
副つた事業上必要な取引であつたとみることはできず、この点からしても、本件買
換資産の取得及び貸付が本件譲渡資産の譲渡対価に係る特別勘定繰入額の益金算入
を回避する意図でされたものであることは明らかである。」
15 同一九枚目(記録三六丁)表四行目の次に、次のように加える。
「仮に更正通知書の附記理由との関係で何らかの主張制限があるとの考え方をとつ
たとしても、旧措置法六五条の五第二項の規定に基づく課税の特例適用のための各
要件事実につき訴訟法上主張立証責任を負うのはその適用を主張する納税者であ
り、訴訟において納税者が主張する右各要件事実の存否について課税庁が争い得る
のは当然であり、その各事実が通知書に附記された事項に係るものであるか否かに
かかわらない。本件に即していえば、控訴人が更正通知書に附記した理由は本件買
換資産を事業用に供したとは認められないという点だけであるが、控訴人としてそ
の余の各要件はすべて認められると判断したわけではなく、また更正通知書にその
ような判断を示したわけでもない。控訴人は本訴において、これに加えて本件買換
資産の取得が旧措置法六五条の四第一項所定の取得に該当しないこと(取得原因が
代物弁済であること)を主張しているのであつて、この主張は通知書の附記理由と
矛盾するものではなく、ともに特例適用の要件事実の欠如を主張しているのであ
る。仮に被控訴人主張のように通知書に附記した理由以外は訴訟において主張でき
ないというのであれば、課税庁は、更正時にあらかじめ訴訟のことを配慮し、考え
得るあらゆる理由を更正通知書に記載して置く必要があることになり、その不当な
ることは明らかである。」
16 証拠関係(省略)
○ 理由
一 当裁判所の認定判断は、次のとおり訂正するほか、原判決が理由として説示す
るところと同一であるから、これを引用する。
1 原判決二六枚目(記録四三丁)表一一行目から同裏六行目までを次のとおり改
める。
4 また、控訴人は、本件買換資産の取得は、その実質において、代物弁済である
から、旧措置法六五条の五の適用は受けられないと主張する。
しかし、右主張が青色申告書に係る更正の附記理由との関係において許されるか否
かの点はさておき、口頭弁論の全趣旨によれば、控訴人の本件買換資産の取得が売
買の形式を通じてなされたことが明らかである一方、本件にあらわれた全証拠をも
つてしても、右売買が仮装のそれであり、真実は代物弁済であつたとの事実を認め
ることはできないから、右売買は真実のそれであつたと解するのほかはない。そし
て、納税者が他から不動産を買い受け、納税者の代金債務と納税者が売主に対し有
する既存の債権との相殺を行なつた場合において、これと同様の経済的目的を納税
者と右相手方との間の代物弁済契約によつても達し得るとしても、右売買及び相殺
を目してことさら不自然、不合理な行為ということはできないから、当事者が真実
に売買を行ない、相殺を行なつたものである以上、たとえそれを選択した理由が旧
措置法六五条の五の適用を受けることにあつたとしても、それだけで明文の規定も
ないのに課税庁において、その実質が代物弁済であると認定して、これによる買換
資産の取得につき右法条の適用がないとすることはできないというべきである。」
2 同裏九行目「なお、」から原判決二七枚目(記録四四丁)表八行目までを次の
とおり改める。
「そうすると、被控訴人の圧縮記帳に係る二億一八四二万六三三〇円(建物圧縮記
帳引当金一億三九一七万二六二五円及び土地圧縮損七九二五万三七〇五円の合計
額)は、損金としてこれを本件更正処分(二)の欠損金控除前の所得金額から減算
すべきであり、またこれに応じて本件更正処分(二)に当たり益金から減算された
減価償却超過相当額一一〇五万三八三〇円を加算し、益金に加算された二七〇万九
二〇五円を減算すべきである。右によつて計算すると、被控訴人の四五事業年度に
おける欠損金控除前の所得金額は五億八六二一万五一二三円となる。」
3 同二七枚目(記録四四丁)表一一行目「本件更正処分(二)は」から同裏二行
目から三行目にかけて「取り消すこととし」までを次のとおり改め、同五行目
「)」の次の「、」を「。」に改める。
「本件更正処分(二)は、その余の点について判断するまでもなく、欠損金額控除
前の所得金額を五億八六二一万五一二三円として計算した額を超える部分が違法で
あるので、この限度で本件更正処分(二)を取り消すべきである。」
二 してみると、原判決が本件更正処分(二)のうち欠損金額控除前の所得金額を
五億八八九二万四三二八円として計算した額を超える部分を取り消したのは相当で
あるが、右所得金額を五億八六二一万五一二三円として計算した額を超え、同じく
五億八八九二万四三二八円として計算した額までの部分についての取消請求を棄却
したのは失当であり、控訴人の控訴は理由がないが、被控訴人の附帯控訴は理由が
ある。よつて、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法三八四条、三八六条、九六条、九
二条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判官 石川義夫 三好 達 柴田保幸)
別紙一
第一次更正に係る更正通知書の附記理由
1 損金にならない圧縮記帳引当金  一三九、一七二、六二五円
特定資産の買換を適用し、上記引当金を損金としていますが、貸付ける相手方から
取得したものは、事業の用に供した資産に該当しません。
従つて都自動車(株)から購入した建物は同社に引続き貸し付けているものであり
圧縮記帳の対象になりません。
2 損金とならない圧縮損  七九、二五三、七〇五円
1 と同様の理由により損金算入は認められません。
別紙二
昭和五四年一〇月一八日付直法二-三一「法人税基本通達等の一部改正について」
による法人税基本通達中の六五-七(2)-一
「買換資産を当該法人の事業の用に供したことの意義」の(6)の改正内容

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