弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中被告人三名に関する部分を破棄する。
     被告人Aを懲役一年六月に同B同Cを各懲役一年に処する。
     被告人B同Cに対しいづれもこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を
猶予する。
     原審訴訟費用中国選弁護人清水昌三に支給した分は被告人Cの負担とし
その余の分は被告人三名及び原審相被告人Dの連帯負担とし当審訴訟費用中証人E
(第一回)同F(第一回)同G及び同Hに支給した分は被告人B同Cの連帯負担と
しその余の分は被告人Aの負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は被告人Aその弁護人森長英三郎青木彦次郎連名提出並びに被告
人B同Cの弁護人清水昌三提出の各控訴趣意書に記載されたとおりであるからここ
にこれを引用し、これに対し次のように判断する。
 一、 A被告人の控訴趣意一の第一点同補充書一の一乃至四並びに森長青木両弁
護人連名の控訴趣意一について。
 原判決が判示第一の各事実の認定について挙示した各証拠を総合すれば、被告人
は千葉県弁護士会所属弁護士として判示のような業務に従事していた者であるが、
I外十四名から同人等が債権を有する匿名組合J金庫の財産及び債権に対する仮差
押の申請等の法律事務を依頼せられ、判示年月日頃同人等から右仮差押手続のため
千葉地方法務局松戸支局に保証金として供託すべき現金合計五十五万円を預り、一
部は前記支局に供託したがその後返還を受け、これを夫々業務上保管中、判示のと
おり、その頃十五回に亘り松戸市内でほしいままに自己の生活費等に費消して横領
したものであることを認めるに充分である。
 所論は、先ず、弁護士が民事事件の解決を委任された場合、委任者との清算は委
任事務終了のとき報酬等を差引いてこれをなすのが弁護士業務の慣習であるが、本
件については委任事務は未だ終了せず、従つて清算時期も到来していないから、被
告人が一時判示金員を自己の用途に費消しても横領罪を構成しないと主張する。
 <要旨>しかしたとえ所論のように清算が委任事務終了のときになされるとして
も、判示横領の目的物たる金員は被告人が各依頼者から他の金員と区別され
特に供託保証金として供託すべき約の下に預つたものであることが証拠上明らかな
本件においては、右供託保証金は、被告人が依頼者のため右約旨に従つて供託し、
用済の上は依頼者に返還し、または依頼者のために保管すべき依頼者所有の金員で
あるから、弁護士といえども時期の如何を問わず、これをほしいままに自己の用途
に費消することは許さるべきでなく、これをほしいままに費消した被告人の所為は
業務上横領罪を構成するものというべきであつて、委任事務終了後返還に応じない
とき初めて横領の犯意の発現があり同罪が成立するとの所論は当らない。
 次に所論は、判示第一の各事実中には訴訟の目的を達し現実に債権額を受領し依
頼者として満足しているものがあるから、罪に問われるいわれはないと主張する。
なる程、判示第一の一乃至六の各事実については、依頼者I外二名が被告人の処理
した訴訟及び強制執行の結果前記J金庫に対する債権三十数万円の内二十万円余の
取立に成功したことは所論のとおりであるが、被告人は右取立金を右I等に引き渡
す際成功報酬として金二万円をその内から差引き受領していることが証拠上明らか
であり、右I等が判示供託保証金を被告人に贈与しまたは被告人がこれを流用する
ことを許容したものと認むべき証拠の存しない本件の場合、たとえI等が被告人の
努力の結果に満足しているとしても、また爾後において一部の弁償がなされたとし
ても、右は何等犯罪の成否に消長を及ぼすものではない。
 また判示第一の九乃至十二の各事実につき横領金額合計十六万円の内十二万円が
本件検挙前返還済であることは所論のとおりであるが、右は犯行当時から相当期間
を経過した後依頼者等の強い請求に基いて返還されたものであることが証拠上明ら
かであるから、これまた犯罪の成立を左右すべき事由とは認めがたい。
 更に記録を精査しても、原判決には、所論のような事実誤認または法律解釈の過
誤は存しない。論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 谷中董 判事 坂間孝司 判事 司波実)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛