弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人山本剛嗣の上告理由について
 一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。(1) 上告人は、昭
和四六年四月一六日、Dから、自己の居住の用に供するために、東京都世田谷区a
b丁目c番d所在宅地四七二・六二平方メートル(以下「本件土地」という。)及
び同土地上の鉄筋コンクリート造陸屋根地階付き二階建家屋一九五・八一平方メー
トル(以下「本件建物」という。)を、一括して代金五一〇九万八一二五円で買い
受けて取得し、その後、同年六月六日にこれを自己の居住の用に供した、(2) 上
告人は、同年四月一七日、株式会社E銀行(現在の株式会社F銀行)から、本件土
地建物を取得するために、三五〇〇万円を年利率九・二パーセントで借り入れ、昭
和五四年八月一六日右借入金の全額を完済したが、右借入金のうち本件土地建物の
取得のために使用したのは三〇〇〇万円であり、右三〇〇〇万円に対する借入れ後
本件土地建物を自己の居住の用に供した日までの期間(五一日間)に対応する利子
の額は三八万五六四三円であった、(3) 上告人は、昭和五三年一月七日本件土地
の一部一九八・三五平方メートル(以下「甲土地」という。)を同所c番eとして
分筆し、また、本件建物のうち甲土地上にある部分二五平方メートルを取り壊して
甲土地を更地とした上、同月三一日これをG外一名に代金四八〇〇万円で譲渡した、
(4) 次いで、上告人は、翌五四年八月二二日本件土地のうち、甲土地を除くその
余の部分二七四・二七平方メートル(以下「乙土地」という。)及び本件建物のう
ち乙土地上にある部分一七〇・八一平方メートルをH株式会社に代金一億〇七八四
万八〇〇〇円で譲渡した。
 二 そこで、所論にかんがみ、個人の居住の用に供される資産の譲渡による譲渡
所得の取得費について検討する。
 譲渡所得の金額について、所得税法は、総収入金額から資産の取得費及び譲渡に
要した費用を控除するものとし(三三条三項)、右の資産の取得費は、別段の定め
があるものを除き、当該資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合
計額としている(三八条一項)。右にいう「資産の取得に要した金額」の意義につ
いて考えると、譲渡所得に対する課税は、資産の値上りによりその資産の所有者に
帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを
機会にこれを清算して課税する趣旨のものであるところ(最高裁昭和四一年(行ツ)
第一〇二号同四七年一二月二六日第三小法廷判決・民集二六巻一〇号二〇八三頁、
同昭和四七年(行ツ)第四号同五〇年五月二七日第三小法廷判決・民集二九巻五号
六四一頁参照)、前記のとおり、同法三三条三項が総収入金額から控除し得るもの
として、当該資産の客観的価格を構成すべき金額のみに限定せず、取得費と並んで
譲渡に要した費用をも掲げていることに徴すると、右にいう「資産の取得に要した
金額」には、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか、登録免許税、
仲介手数料等当該資産を取得するための付随費用の額も含まれるが、他方、当該資
産の維持管理に要する費用等居住者の日常的な生活費ないし家事費に属するものは
これに含まれないと解するのが相当である。
 ところで、個人がその居住の用に供するために不動産を取得するに際しては、代
金の全部又は一部の借入れを必要とする場合があり、その場合には借入金の利子の
支払が必要となるところ、一般に、右の借入金の利子は、当該不動産の客観的価格
を構成する金額に該当せず、また、当該不動産を取得するための付随費用に当たる
ということもできないのであって、むしろ、個人が他の種々の家事上の必要から資
金を借り入れる場合の当該借入金の利子と同様、当該個人の日常的な生活費ないし
家事費にすぎないものというべきである。そうすると、右の借入金の利子は、原則
として、居住の用に供される不動産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、所得税
法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」に該当しないものというほかはな
い。しかしながら、右借入れの後、個人が当該不動産をその居住の用に供するに至
るまでにはある程度の期間を要するのが通常であり、したがって、当該個人は右期
間中当該不動産を使用することなく利子の支払を余儀なくされるものであることを
勘案すれば、右の借入金の利子のうち、居住のため当該不動産の使用を開始するま
での期間に対応するものは、当該不動産をその取得に係る用途に供する上で必要な
準備費用ということができ、当該個人の単なる日常的な生活費ないし家事費として
譲渡所得の金額の計算のらち外のものとするのは相当でなく、当該不動産を取得す
るための付随費用に当たるものとして、右にいう「資産の取得に要した金額」に含
まれると解するのが相当である。
 以上のとおり、右の借入金の利子のうち、当該不動産の使用開始の日以前の期間
に対応するものは、右にいう「資産の取得に要した金額」に含まれ、当該不動産の
使用開始の日の後のものはこれに含まれないと解するのが相当である。
 三 以上の見地に立って本件をみるのに、前記の事実関係によれば、上告人は、
資金三〇〇〇万円を借り入れることにより、自己の居住の用に供するため本件土地
建物を買い受けて取得し、昭和四六年六月六日これを自己の居住の用に供したとい
うのであるから、右三〇〇〇万円に対する借入れ後同日までの期間に対応する利子
の額である三八万五六四三円は、上告人の昭和五三年分及び同五四年分の各譲渡所
得の金額の計算上、同法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」に該当する
が、昭和四六年六月七日以降のものはこれに該当しないというべきである。原審の
判断は、結論においてこれと同旨であるから、是認することができる。論旨は、違
憲をいう点を含め、独自の見解に基づいて原判決の法令違背をいうものにすぎず、
採用することができない。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    貞   家   克   己
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    佐   藤   庄 市 郎
            裁判官    可   部   恒   雄

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