弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原告の請求を棄却する。
     訴訟受刑は原告の負担とする。
         事    実
 原告訴訟代理人は「昭和二十六年四月二十三日施行せられた北海道沙流郡a村長
選挙において、同月二十五日同村選挙委員会告示による被告の当選を無効とする。
訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告訴訟代理人は、主文と同じ
判決を求めた。
 原告訴訟代理人が請求原因として陳述するところは次の通りである。
 昭和二十六年四月二十三日施行せられた北海道沙流郡a村長選挙において、原告
は選挙人であり、被告は同月三日立候補の届出をし、同月二十五日同村選挙管理委
員会によつて当選人として告示されたものである。而して右選挙における同村選挙
委員会の告示した選挙運動に関する支出の金額は金五千百円であつたが、被告のた
めに支出された選挙運動に関する支出の金額は別紙選挙運動に関する支出一覧表の
(甲)欄記載の通りその合計は金二万四千四百十六円に上り、制限支出金額を超過
すること金一万九千三百十六円であるから、被告の右当選は無効である。
 これに対し被告代理人の答弁は、次の通りである。
 原告主張の村長選挙において原告が選挙人であり被告が当選人であること、及び
同選挙における選挙委員会の告示した選挙運動に関する支出の金額は金五千百円で
あつたことはいづれもこれを認めるが、被告のために支出された選挙運動に関する
支出の金額に関する主張の一部はこれを争う。その金額は別紙選挙運動に関する支
出一覧表の(乙)欄記載の通りであつて、その合計は金四千百六円であるから、制
限支出金額を超過していない。従つて被告の当選は無効ではない。
 立証として原告訴訟代理人は証人A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同
H、同I、同J、同K、同L、同Mの各証言及び原告本人尋問の結果を援用し、被
告訴訟代理人は証人E、同N及び同Oの各証言を援用した。
         理    由
 昭和二十六年四月二十三日施行せられた北海道沙流郡a村長選挙において、原告
が選挙人であり、被告が同月三日立候補の届出をし、同月二十五日同村選挙委員会
によつて当選人として告示されたものであること、及び同選挙における同村選挙委
員会の告示した選挙運動に関する支出の金額は金五千百円であることは当事者間に
争のないところである。よつて直ちに被告の選挙運動に関する支出として争のある
項目について検討するに、別紙選挙運動に関する支出一覧表中
 (一) 昭和二十六年四月七日のb村道垣内旅館における被告と選挙運動員Pと
の両名の休泊費については、証人Cの証言に証人Dの証言を合せて考えると、被告
は道垣内旅館の主人Cの妻に対し宿泊費として金二千円を渡したけれども、Cはこ
れを過大の報酬として内金千二百円を返還した事実が認定できるのであつて、原告
援用の証人D及び証人Jの証言では右認定に反する心証は得られないし、これに反
する原告本人の供述は信用できない。すると被告は道垣内旅館に対し宿泊料として
金八百円を支払つたという被告の主張が正しいと認められ、原告の主張する金二千
円の支出はこれを認めるわけにはいかない。
 (二) 次に同年四月十五日の、a村三告小学校における演説会場へ行くための
選挙運動員のバス乗車賃の点であるが、この点は一覧表記載の通り、被告の選挙運
動員であるO及びNの両名の分については争のないところであるから、結局争点は
AとBの分のみに帰着するのである。先ずAが果してその日OやN等と共にバスに
乗つて三岩小学校の演説会場へ行つたかという点については、評人G、同L、同
I、同Mの各証言及び原告本人の供述と、証人A、同N、同O及び同E(第二回)
の各証言とを対比検討すると、前者の各証言及び供述はにわかに措信することはで
きないし、その他原告の立証を以てしてもAがバスを利用したという原告の主張事
実は認にし難いのである。次にBの分についてであるが、同人がその日バスに乗つ
て三岩小学校に行き被告やその選挙運動員の演説が終つた後に演説をした事は、証
人Bの証言によつて明らかである。しかしながら更に同人の証言や、証人A、同
N、同O、同L及び同Mの各証言を綜合すると、Bは当時目ら村会議員選挙に立候
補し選挙運動中であつたので、同日も偶々被告り選挙演説会が三岩小学校で行われ
るのに便乗し自分のために演説をし併せ被告のためにも演説をしたのであつて、同
人がこの際被告のために演説をなるということについては被告或はその出納責任者
と予め意思を通じていたものてはなく、Bが勝手にその場に臨んで臨機になしたも
のと認定できるのであつて、これに反なる証人Gの証言と原告本人の供述は措信で
きないし、他にこの認定を覆すべき資料はない。そうするとBが同日バスの乗車賃
として支払つた金額は候補者たる被告又は出納責任者と意思を通じてした支出では
ないから、被告の選挙運動に関する支出に計上すべきものではない。以上の次第で
あつて結局原告主張のA及びBのバス乗車賃の点は採用できない
 (三) 次に同年四月十九日のb村F方における宿泊費及び宴会費用の点てある
が、Fに対し金百四十円を支出したことは一覧表記載の通り被告の認めるところで
あるけれども、それ以上に支出したということについては証人D、同Hの各証言及
び原告本人の供述その他の証拠によるもこれを認めることはできない。
 (四) 次に同年四月二十八日の広漱旅館に対する選挙事務所借上料その他飲食
費等の支出の点であるが、同旅館に対する金一千七百七十円の支出は被告の認める
ところであるけれどもそれ以上の支出がなされたということは原告本人の供述丈で
はこれを認定することはできないし、他にこれを認めるに足る証拠がない。
 (五) 最後に同日頃被告が広瀬旅館に対し支払つた被告の宿泊料金、五千九百
五十円の点について検討するに、被告が昭和二十六年四月三日立候補の届出をした
日から、同月二十二日(投票日の前日)までの間に、九、十、十一日の三日間を除
いて合計十七日間a村の広瀬旅館に投宿し、その間の宿泊料として金五千九百五十
円の支払をしたことは被告の認めるところであるが、証人Eの第一回の証言や原告
本人の供述によつて明かなように被告は本件選挙当時は様似郡様似村に居住しa村
には被告の自宅もなかつたためその選挙期間選挙事務所を置いた同村の広瀬旅館に
滞在し、これを一時生活の本拠として選挙運動に従事したものである。公職選挙法
において選挙運動に関する支出金額を制限した所以は、できる丈け費用のかからな
いようにして選挙を実施するとともに、競争候補者をしてできる丈け平等の経済的
条件の下に競争させようとするものであるから、選挙実施地に住居を有しない候補
者が選挙のために選挙実施地内の一定の場所に一時生活の本拠を移して、選挙期間
を通じて長期滞在する場合に、その滞在のために要する費用は、公職選挙法に規定
するところの選挙運動に関する支出には該当しないものと解すべきである。従つて
本件被告の場合においても被告がその滞在中の宿泊費として広瀬旅館に支払つた金
員はこれを被告の選挙運動に関する支出と見るべきではない。
 以上の通り被告の選挙運動に関する支出として争のある項目については、いづれ
も原告の主張は認められない。而して当事者間に争のたい支出金額は別紙一覧表の
「被告の認める選挙費用支出金額」欄記載の通りであつてその合計は金四千百六円
となり、この選挙の制限支出金額金五千百円を超過するという原告の主張は結局排
斥されざるを得ない。従つて被告の選挙運動に関する支出金額が制限額を超過する
ことを理由として被告の当選無効の判決を求める原告の本訴請求は理由がないから
これを棄却し、訴訟費用の負担については公職選挙法第二百十九条民事訴訟法第八
十九条を適用し主文の通り判決する。
 (裁判長裁判官 浅野英明 裁判官 河野力 裁判官 臼居直道)
 (別紙選挙運動に関する支出一覧表省略)

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