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平成17年(行ケ)第10211号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成17年9月12日
判決
原       告A
同訴訟代理人弁理士山田勇毅
被       告   サンケン電気株式会社
同訴訟代理人弁護士松本博
同訴訟代理人弁理士清水敬一
主文
     1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
 特許庁が無効2004―35134号事件について平成16年7月6日にし
た審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 本案前の答弁
 本件訴えを却下する。
(2) 本案の答弁
 主文と同旨
第2 争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 被告は,発明の名称を「半導体発光装置」とする特許第3491016号の
特許(平成9年1月14日にした特許出願を分割して平成11年7月19日出願,
平成15年11月14日設定登録,以下「本件特許」という。)の特許権者であ
る。
 原告は,平成16年3月12日,本件特許につき無効審判の請求をした(無
効2004―35134号)ところ,特許庁は,平成16年7月6日,「本件審判
の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄
本は,同月16日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲
 本件特許に係る明細書(甲9。以下「本件明細書」という。)の請求項1な
いし4の記載は,次のとおりである(以下,これらの発明をそれぞれ「本件発明
1」等といい,まとめて「本件各発明」という。)。
【請求項1】複数のリードと,該複数のリード間に電気的に接続された半導体
発光素子と,前記複数のリードの一端及び前記半導体発光素子を封止する樹脂封止
体と,一端に開口が設けられ且つ前記樹脂封止体に被着された透光性の蛍光カバー
とを備え,前記半導体発光素子から照射した光により前記蛍光カバー内に配合され
た蛍光体を励起し,前記半導体発光素子から生ずる光とは異なる波長の光を前記樹
脂封止体の外部に取り出す半導体発光装置において,
 前記蛍光カバーは,前記蛍光体を含む樹脂の射出成形により前記樹脂封止体
と同一の形状の内面を有する所定の形状に形成され,且つ交換可能に前記樹脂封止
体に被着され,
 該樹脂封止体に被着された前記蛍光カバーは弾力性を有し,前記樹脂封止体
に密着し,
 前記蛍光カバー内の蛍光体は,前記半導体発光素子から照射した相対的に小
さい発光波長の光により励起され,前記半導体発光素子から生ずる光とは異なる相
対的に大きい発光波長の光を取り出すことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】前記半導体発光素子の発光波長は430~480nmであり,前
記蛍光体により変換された発光波長は500~600nmである請求項1に記載の
半導体発光装置。
【請求項3】前記樹脂封止体は,円柱状の封止部と,該封止部の一端側にこれ
と一体に形成されたほぼ半球状のレンズ部とを備え,前記蛍光カバーは,円筒状の
カバー本体と,該カバー本体に一体に半球状に形成された球面部とを備え,前記カ
バー本体は前記樹脂封止体の前記封止部に合致する形状を有し,前記球面部は前記
樹脂封止体の前記レンズ部に合致する形状を有し,
 前記カバー本体及び前記球面部は,それぞれ前記樹脂封止体の前記封止部及
びレンズ部に密着する請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】前記樹脂封止体と前記蛍光カバーとの間の空気を除去する複数個
の小さな孔が前記蛍光カバーに形成された請求項1~3のいずれか1項に記載の半
導体発光装置。
3 本件審決の理由
 別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件各発明は,実願昭48-1
35849号(実開昭50-79379号)のマイクロフィルム(甲1。以下「引
用文献1」という。),特開昭58-196067号公報(甲2。以下「引用文献
2」という。),実願昭51-113250号(実開昭53-30783号)のマ
イクロフィルム(甲3。以下「引用文献3」という。),実願昭51-10171
3号(実開昭53-21887号)のマイクロフィルム(甲4。以下「引用文献
4」という。),特開平5-152609号公報(甲5。以下「引用文献5」とい
う。),特開平8-7614号公報(甲6。以下「引用文献6」という。)及び実
願平2-103859号(実開平4-63162号)のマイクロフィルム(甲7。
以下「引用文献7」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明を
することができたものとはいうことができない,というものである。
 本件審決が認定した本件発明1と引用文献1記載の発明(以下「引用文献1
発明」という。)との一致点及び相違点は,次のとおりである。なお,本件発明2
ないし4は,本件発明1を引用しているため,下記一致点及び相違点は,本件発明
2ないし4においても共通する(本件発明2ないし4については,下記相違点以外
にも相違点がある。)。
(一致点)
 複数のリードと,該複数のリード間に電気的に接続された半導体発光素子
と,前記複数のリードの一端及び前記半導体発光素子を封止する樹脂封止体と,該
樹脂封止体上の蛍光体を備え,前記半導体発光素子から照射した光により前記蛍光
体を励起し,前記半導体発光素子から生ずる光とは異なる波長の光を前記樹脂封止
体の外部に取り出す半導体発光装置において,前記蛍光体は,前記半導体発光素子
から照射した相対的に小さい発光波長の光により励起され,前記半導体発光素子か
ら生ずる光とは異なる相対的に大きい発光波長の光を取り出す半導体発光装置
(相違点1)
 蛍光体が,本件発明1は,一端に開口が設けられたカバー内に蛍光体が配合
された透光性の蛍光カバーであるのに対し,引用文献1発明は,単なる蛍光材料層
であって,その上に透明樹脂等から成る透明覆蓋体が形成されているものの,前記
のような透光性の蛍光カバーではない点。
(相違点2)
 本件発明1における蛍光カバーは,蛍光体を含む樹脂の射出成形により樹脂
封止体と同一の形状の内面を有する所定の形状に形成され,且つ交換可能に前記樹
脂封止体に被着され,弾力性を有し,前記樹脂封止体に密着するものであるのに対
し,引用文献1発明のものは,透明樹脂上に蛍光変換塗料及び透明樹脂を順に塗布
して形成するものであって,塗布形成の性質上,透明樹脂に対し弾力性を有し,交
換可能に被着されたものではない点。
第3 被告の本案前の主張及びこれに対する原告の反論
1 被告の本案前の主張
 特許法123条2項には,「特許無効審判は,何人も請求することができ
る。」と規定されているが,同項は,特許法178条に規定される審決取消訴訟に
準用されていない。請求不成立審決を受けた審判請求人であれば,「何人」でも審
決取消訴訟を提起できるとの解釈は,「利益なければ訴権なし」との民事訴訟の原
則に反するから,審決取消訴訟を提起する者は,審決が取り消されることについて
法的利害関係を必要とすると解すべきである。しかるところ,原告は,自然人であ
り,半導体発光装置を現に製造販売し営業権を保有する事業者であるとは認められ
ない。したがって,原告は,審決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有しない
から,原告適格を備えておらず,本件訴えは却下されるべきものである。
2 原告の反論
 被告の上記主張を争う。
第4 原告主張に係る本件審決の取消事由
本件審決は,相違点1の判断を誤り,かつ,相違点2の認定,判断を誤った
結果,本件各発明についての進歩性の判断を誤ったものであり,これらの誤りが審
決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,取り消されるべきである。な
お,一致点及び相違点1の認定は認める。
1 相違点2の認定の誤り
 本件審決は,相違点2において,引用文献1発明の蛍光層が,「透明樹脂上
に蛍光変換塗料及び透明樹脂を順に塗布して形成するものであって,塗布形成の性
質上,透明樹脂に対し弾力性を有し,交換可能に被着されたものではない」(審決
書5頁)と認定したが,誤りである。
 すなわち,引用文献1には,実用新案登録請求の範囲に,「該透明覆蓋体の
前記半導体発光素子に対向する側の表面に蛍光材料層を有する」と記載され,その
実施例として,「この透明覆蓋体6の内面には半導体発光素子4からの輻射線を可
視光に変換する蛍光材料を分散させた結合剤が塗布されて,蛍光材料層7が設けら
れている。透明覆蓋体6はガラス或はエポキシ樹脂等の材料で構成されるものであ
り,気密封止用のキャップの役割を兼ねてステム1に固着されるのが好ましい。」
(3頁20行~4頁6行)と記載されているから,引用文献1発明の蛍光層は,透
明樹脂上に塗布して形成する場合だけでなく,透明樹脂とは別個独立した透明覆蓋
体の内面に塗布されて形成されるものを含んでいる。
 したがって,相違点2は,「本件発明1における蛍光カバーは,蛍光体を含
む樹脂の射出成形により樹脂封止体と同一の形状の内面を有する所定の形状に形成
され,且つ交換可能に前記樹脂封止体に被着され,弾力性を有し,前記樹脂封止体
に密着するものであるのに対し,引用文献1発明のものは,透明覆蓋体の内面に蛍
光材料を塗布して形成するものであって,透明樹脂に対し弾力性を有し,交換可能
に被着されたものではない点。」と認定すべきである。
2 相違点1の判断の誤り
(1) 本件審決は,「引用文献1発明の透明覆蓋体は蛍光材料層の保護を目的と
したものであることが明記されていることから,引用文献1発明において透明覆蓋
体と蛍光材料層は別体として互いに積層した構成を前提としていることは明らかで
あり,引用文献1には蛍光材料を透明覆蓋体に配合することを示唆する記載は存在
しない。」(審決書5~6頁)と認定した。
 確かに,引用文献1には,蛍光材料を透明覆蓋体に配合することを示唆す
る記載は存在しないが,そもそも蛍光材料を透明覆蓋体に配合又は含侵して形成し
た発光LED用蛍光カバーは,本件特許出願時に周知の事項である。例えば,特開
平7-193281号公報(甲10。以下「甲10文献」という。)には,蛍光体
をエポキシ樹脂に配合して形成した蛍光成形体を発光ダイオードに装着することが
記載されており,また,特開平1-260707号公報(甲11。以下「甲11文
献」という。)には,透光性ガラス体(樹脂カバー)に蛍光染料を浸透させること
が記載されている。したがって,引用文献1発明の内側表面に蛍光材料を塗布した
透明覆蓋体に代えて,蛍光材料を含有した透明覆蓋体を採用することは,当業者に
とって自明な事項にすぎない。
(2) 本件審決は,「引用文献1発明の蛍光材料層・透明覆蓋体は透明樹脂上に
塗布形成されることからも明らかなように,透明樹脂とは分離した単体として観念
しうる,一端に開口が設けられたカバー状の構成とは全く異なる構成を有してお
り,引用文献1において蛍光材料層・透明覆蓋体をかかるカバー状の構成にしうる
ことを示唆する記載はない。」(審決書6頁)と認定したが,誤りである。
 すなわち,引用文献1発明は,前記1のとおり,透明な樹脂カバー(覆蓋
体)の内側表面に蛍光材料層が形成されることを特徴とするものである。そして,
引用文献1においては,第1図に,透明樹脂によるモールドが存在しない場合が示
されており,また,「ステム1には本考案による透明覆蓋体6が固着される。この
透明覆蓋体6の内面には半導体発光素子4からの輻射線を可視光に変換する蛍光材
料を分散させた結合剤が塗布されて,蛍光材料層7が設けられている。」(3頁1
9行~4頁3行)と記載されているように,透明覆蓋体及びその内面に形成された
蛍光層は,ステムに直接固着される場合があり,透明樹脂とは,別個独立した単体
として観念し得るものであるから,引用文献1における蛍光材料層・透明覆蓋体
を,「透明樹脂とは分離した単体として観念しうる,一端に開口が設けられたカバ
ー状の構成」となしうることが示唆されているものである。
(3) 本件審決は,「引用文献6記載のフイルムは面状光源を構成する導光板の
一主面側に設置されるもので,引用文献1のように半球状の透明樹脂を覆うものと
は構成が異なり,また…フイルム内部に蛍光物質を配合したものと同一視し得るか
必ずしも明らかでもないことから,引用文献1に適用しうるものでもない。」(審
決書6頁)と判断したが,誤りである。
 すなわち,引用文献6においては,「そのフイルム6の表面あるいは内部
には前記青色発光ダイオード1の発光により励起されて蛍光を発する蛍光物質が具
備されている」(請求項1)と記載されているとおり,蛍光フイルムとして,蛍光
体をフイルム内部に含むものと表面に有するものとが明らかに同視されている。引
用文献6には,フイルムの内部に蛍光物質が具備される場合の具体的実施例は示さ
れていないが,樹脂フイルム内部に蛍光物質を含むものは甲10文献に見られるよ
うに本件特許出願時に周知の事項である。したがって,引用文献6及び甲10文献
は,引用文献1記載の蛍光材料を塗布した透明覆蓋体を,本件発明1における蛍光
体を含む樹脂成形体に置き換えることができることを十分示唆している。
(4) 本件審決は,「本件発明1は蛍光体をカバー内に配合することで,例えば
複数種の蛍光体による所望の混合色又は中間色の光を取り出すことができたり,配
合する蛍光体の量を制御しうる等の効果を奏するものである。」(審決書6頁)と
認定したが,上述したように,蛍光体をカバー内に配合することが本件特許出願前
に周知であるから,これに伴う上記の効果も周知の事項である。
 例えば,複数の蛍光体を混合することは,引用文献6には,「蛍光層5
は,赤色蛍光顔料であるシンロイヒ化学製FA-001と緑色蛍光顔料である同社
製FA-005とを等量に混合した蛍光顔料をアクリル系バインダー中に分散した
ものを塗布して形成した。」(4欄9~13行)と記載されており,また,甲10
文献には,「表1に示される3種類の変換蛍光体を同表1に示される割合でエポキ
シ樹脂に分散混合し,これを外径3.0mm,高さ3.0mm,厚さ0.5mmの
蛍光成型体とし,」(2欄11~14行)と記載されているとおりである。また,
配合する蛍光体の量についても,甲10文献の表(3欄)には,蛍光体と樹脂との
配合割合について,蛍光体1が10%,同2が20%,同3が30%とされる旨記
載されており,配合割合は適宜変更できることが示唆されている。
(5) 以上のとおり,引用文献1発明の透明覆蓋体の内面に蛍光材料が塗布され
た蛍光カバーに代えて,カバー内に蛍光体を配合した樹脂カバーとすることは,甲
10文献等にみられる周知技術を勘案すれば当業者が適宜なし得ることである。
3 相違点2の判断の誤り
 本件審決は,「引用文献3,4には発光体の発光色を変化させ,弾力性を有
し,着脱自在なカバーが開示されているととらえるべきではなく,白色豆電球又は
白熱電球等の電球に対しフィルタ(濾光)機能を有する着色カバーで,弾力性を有
し,着脱自在なものが開示されているとすべきであり,引用文献1のように特定の
波長域の光を発する半導体発光素子の光を蛍光材料により波長変換する機構とは原
理や構成部材の材質において相違するから,やはり引用文献1に適用しうるもので
はない。」(審決書7頁)と判断したが,誤りである。
 すなわち,引用文献3及び4記載の着色カバーは,引用文献1発明のように
特定の波長域の光を発する半導体発光素子の光を蛍光材料により波長変換するもの
ではないが,カバーによって照明装置の色調変更を行っている点では共通してい
る。
 そして,蛍光カバーを着脱自在にするかどうかは,照明装置の色調の変更を
光の波長変換によって行うか,フィルタ(濾光)機能によって行うかという,色調
変換の機構によって左右されるものではない。むしろ,どのような目的,用途に使
用されるか,また,キャップの形状が着脱自在を許す形状なのかなどによって決め
られるべきものである。
 引用文献1発明の半導体発光装置は,引用文献3及び4記載の電球等の代替
技術であって,しかも,発光体である電球と発光半導体の樹脂封止体の形状は先端
部が半球状である点で共通している。また,引用文献3及び4記載のキャップの形
状については,先端部が半球状の電球に密着するように電球と同一の形状となって
おり,引用文献1発明の透明覆蓋体の形状と共通する。そうすると,前述のとお
り,引用文献1には,透明覆蓋体を透明樹脂とは独立したカバーとして形成するこ
とも開示されているから,これを従来から同じ目的のために用いられていた引用文
献3及び4記載のキャップのように,弾力性を有し,着脱自在に構成することは,
当業者が容易に想到し得たことである。
4 まとめ
 以上のとおり,本件発明1は,引用文献1~7に記載された発明並びに甲1
0文献及び甲11文献のような周知技術から当業者が容易に想到し得たものである
から,特許法29条2項に違反して特許されたものであり,同法123条1項2号
により無効とされるべきものである。また,本件発明2~4も,本件発明1と同様
の理由により,無効とされるべきものである(なお,本件発明2~4において,本
件発明1を限定する部分は,いずれも本件特許出願時に周知の事項である。)。
第5 被告の反論
 本件審決の判断に誤りはなく,原告の主張する本件審決の取消事由には理由が
ない。
1 相違点2の認定について
 引用発明の認定においては,進歩性の存在を否定し得る論理付けに最も適す
る一つの引用発明を選ぶものであって,引用文献1に示される第1図の実施例又は
第2図の実施例のいずれを審決に引用するかは審判官の自由裁量である。また,引
用文献1に示される第1図の実施例と第2図の実施例は,いずれも塗布により形成
された「蛍光材料層」を示すものであるから,たとえ引用文献1に示される第1図
の実施例を引用したとしても,引用文献1発明の認定は,第2図の実施例を引用し
たときと何ら相違がない。したがって,本件審決の相違点2の認定に誤りはない。
2 相違点1の判断について
(1) 引用文献1は,透明覆蓋体6の内面又は透明樹脂12の表面に蛍光材料を
塗布する以外の方法を示しておらず,塗布しない方法で透明覆蓋体に蛍光材料層を
設けることは多量の蛍光体を必要とせずに安価に製作できるという引用文献1発明
の目的に反する。したがって,甲10文献記載の発明の構造を引用文献1発明の構
造に組み合わせることは不可能である。また,甲10文献記載の発明では,蛍光成
型体を透明樹脂モールド7で取外し不能にパッケージするのであるから,蛍光成型
体を透明樹脂モールド7の外側に塗布する着想は,甲10文献記載の発明には存在
しない。
 甲11文献記載の発明も甲10文献記載の発明と同様であって,蛍光材料
を塗布する引用文献1発明とは蛍光体の被着構造を完全に異にする異質の技術であ
る。
(2) 引用文献1の「考案の詳細な説明」には「塗布」で蛍光材料層を形成する
技術のみが開示され,「塗布」以外の方法で蛍光材料層を形成する技術を示唆する
記載は全くない。したがって,技術常識を勘案しても「塗布」以外の形成技術を導
き出すことはできない。
(3) 引用文献6には,フイルムの内部に蛍光物質が具備される場合の具体的実
施例は示されていない。引用文献6に開示された発明は蛍光染料を単に表面に塗布
したフイルムにすぎないから,蛍光染料を内部に配合したフイルムが引用文献6に
開示されていると解釈することは許されない。
 そして,引用文献1と引用文献6と甲10文献記載の各発明は,蛍光体層
の形成方法,蛍光体層を形成する対象物,蛍光体層を配置する場所等がいずれも異
なり,引用文献1に示される塗布技術と,引用文献6に示される塗布技術及び甲1
0文献に示される配合技術との間に技術の置換容易性も転用容易性も存在しない。
また,引用文献1には,蛍光体を樹脂中に配合できることを示唆する動機付けも存
在しない。したがって,引用文献1に示される蛍光材料層7,13と,引用文献6
に示される蛍光層5が形成されたフイルム6と,甲10文献に示される蛍光成型体
2とを組み合わせるべき必然性はなく,組み合わせること自体技術的に不可能であ
るから,これら文献に開示された発明を単に組み合わせても,当業者が本件発明1
を推考することはできない。
(4) 引用文献6に示されるように,バインダー中に蛍光顔料を等量で分散させ
た材料を塗布して発光波長の変換が可能であっても,得られる蛍光顔料層の厚さを
正確に制御することは極めて困難であるから,蛍光顔料の塗布により均一な混合色
の光を取り出すことはできない。また,甲10文献には,変換蛍光体を一定の割合
でエポキシ樹脂に分散混合して,蛍光成型体を作成することが記載されているが,
蛍光成型体を作成する方法は,甲10文献に示されていない。したがって,本件発
明1のように,弾力性をもって樹脂封止体に着脱自在であり,蛍光体を一定割合で
均一に混合させることができるという効果は自明ではない。
3 相違点2の判断について
 引用文献3及び引用文献4記載の発明は,真空状態又は適当な気体を封入し
て,ガラス球内のフィラメントに電流を通じ,熱放射に伴って発する光を利用する
白熱電球に関するものであり,半導体デバイスである本件発明1とは技術分野が全
く異なる。また,原告も認識するように,引用文献3及び引用文献4に示されるカ
ラーフィルタによる色調変更は,蛍光体による波長変更とは科学的原理を完全に異
にする。
第6 当裁判所の判断
1 本案前の主張について
 被告は,原告は半導体発光装置を現に製造販売し営業権を保有する事業者で
はないから,審決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有しないため,原告適格
を備えておらず,本件訴えは却下されるべきである旨主張する。
 しかしながら,原告は,本件審決に係る無効審判の請求人として,審判事件
の当事者であるところ,特許法178条2項は,「前項の訴え(判決注・審決に対
する訴え等)は,当事者…に限り,提起することができる。」と規定しているか
ら,原告が本件審決の取消訴訟を提起することができることは明らかである。実質
的に見ても,原告は,本件審決に係る無効審判の請求人として,審判事件の当事者
であるところ,自らに不利益な結論である「本件審判の請求は,成り立たない。」
との本件審決を受けたのであるから,本件審決の取消しを求めるにつき法律上の利
益を有することは明らかである。
 したがって,被告の本案前の主張は理由がない。
2 相違点2の認定について
 原告は,引用文献1発明の蛍光層は透明樹脂上に塗布して形成する場合だけ
でなく,透明樹脂とは別個独立した透明覆蓋体の内面に塗布されて形成されるもの
を含んでいるから,本件審決の認定した相違点2のうち引用文献1発明に係る部分
は誤りであり,正しくは,「引用文献1発明のものは,透明覆蓋体の内面に蛍光材
料を塗布して形成するものであって,透明樹脂に対し弾力性を有し,交換可能に被
着されたものではない点。」と認定すべきである旨主張する。
 原告の上記主張は,本件審決が本件発明1との対比において引用した引用文
献1記載の発明の内容に関わるものであるので,まず,この点について検討する。
(1) 引用文献1(甲1)には,本件審決が引用したとおり,「本考案の他の実
施例の半導体発光装置を第2図に示す。この実施例はモールド型の半導体発光装置
に本考案を適用したときの例である。第2図において,絶縁基体8にはリード9が
固置着され,一方のリード9の先端には半導体発光素子10が導電的に接着され,
さらにこの半導体発光素子10と他方のリード9とはリード線11により電気的に
接続されている。また半導体発光素子10の周囲には透明樹脂12が半球状にモー
ルドされており,この透明樹脂12の表面に蛍光材料層13が形成され,さらに蛍
光材料層13上には透明樹脂等から成る透明覆蓋体14が設けられる。」(4頁1
3行~5頁4行),「蛍光材料層13及び透明覆蓋体14は半球状の透明樹脂12
上に蛍光変換塗料及び透明樹脂を順次塗布すれば形成できる。本実施例において
は,透明覆蓋体14は気密封止用のキャップの役割を果すものではなく,単に蛍光
材料層13の保護を計るものである。」(5頁19行~6頁4行)との記載があ
る。
 そうすると,本件審決が,相違点2として,引用文献1発明の蛍光層が,
「透明樹脂上に蛍光変換塗料及び透明樹脂を順に塗布して形成するものであって,
塗布形成の性質上,透明樹脂に対し弾力性を有し,交換可能に被着されたものでは
ない」(審決書5頁)と認定したことに誤りはない。
(2) 原告が指摘するように,引用文献1(甲1)においては,その実用新案登
録請求の範囲に,「半導体発光素子と該半導体発光素子を離間して覆う透明覆蓋体
とを具え,該透明覆蓋体の前記半導体発光素子に対向する側の表面に蛍光材料層を
有することを特徴とする半導体発光装置。」と記載され,また,実施例として,
「本実施例は,いわゆるTO-5型ステムを用いた半導体発光装置に本考案を適用
した例である。第1図においてTO-5型の金属ステム1にはガラス2によってリ
ード3が固着されている。このステム1には半導体発光素子4が導電的に接着され
ており,一方,半導体発光素子の他方の電極とリード3の一つとがリード線5によ
り電気的に接続されている。このステム1には本考案による透明覆蓋体6が固着さ
れる。この透明覆蓋体6の内面には半導体発光素子4からの輻射線を可視光に変換
する蛍光材料を分散させた結合剤が塗布されて,蛍光材料層7が設けられている。
透明覆蓋体6はガラス或はエポキシ樹脂等の材料で構成されるものであり,気密封
止用のキャップの役割を兼ねてステム1に固着されるのが好ましい。」(3頁12
行~4頁6行)との記載がある。
 しかしながら,上記実施例に記載された半導体発光装置は,審決が引用し
た「他の実施例」とは異なり,本件発明1の「樹脂封止体」に相当する半球状にモ
ールドされた「透明樹脂12」を有しないものである。したがって,原告が主張す
るように,引用文献1における上記実施例の記載から,蛍光材料層が内側に塗布さ
れた透明覆蓋体を認定するのであれば,該透明覆蓋体は,半導体発光素子が接着さ
れたステムに固着されるものであり,「透明樹脂12」に被着されるものではない
から,本件審決が認定した本件発明1と引用文献1発明との一致点のうち,「前記
複数のリードの一端及び前記半導体発光素子を封止する樹脂封止体と,該樹脂封止
体上の蛍光体」(下線を付記した。)を認定することはできなくなる。そうする
と,本件発明1の進歩性を検討する上で,引用文献1における上記実施例に記載さ
れた発明は,本件審決が認定した引用文献1発明よりも適したものとはいえない。
 また,上記実用新案登録請求の範囲には,「半導体発光素子と該半導体発
光素子を離間して覆う透明覆蓋体とを具え,該透明覆蓋体の前記半導体発光素子に
対向する側の表面に蛍光材料層を有することを特徴とする半導体発光装置。」とし
か記載されていないから,技術常識を参酌したとしても,同記載に基づき,「透明
樹脂12と組み合わせて用いるものであって,しかも,透明樹脂12とは独立し,
その内面に蛍光材料層が塗布された透明覆蓋体」を認定することもできない。
 したがって,本件審決が,「樹脂封止体」に相当する「透明樹脂12」を
有する「他の実施例」の記載から引用文献1発明を認定し,これを前提として相違
点2を認定したことは相当というべきである。
(3) 以上のとおり,相違点2の認定についての原告の主張は理由がない。
3 相違点1の判断について
(1) 原告は,蛍光材料を透明覆蓋体に配合又は含侵して形成した発光LED用
蛍光カバーは,甲10文献,甲11文献に記載されているように,本件特許出願時
に周知の事項であるから,引用文献1発明の内側表面に蛍光材料を塗布した透明覆
蓋体に代えて,蛍光材料を含有した透明覆蓋体を採用することは,当業者にとって
自明な事項にすぎない旨主張する。
 原告が,引用文献1発明において,内側表面に蛍光材料を塗布した透明覆
蓋体を備えていることを前提としている点は,前記2のとおり相当でないが,その
点はさておき,検討するに,本件審決の一致点及び相違点1の認定については,当
事者間に争いがないところ,そこでは,一致点として,「…前記複数のリードの一
端及び前記半導体発光素子を封止する樹脂封止体と,該樹脂封止体上の蛍光体…」
が認定され,その上で,「蛍光体が,本件発明1は,一端に開口が設けられたカバ
ー内に蛍光体が配合された透光性の蛍光カバーであるのに対し,引用文献1発明
は,単なる蛍光材料層であって,その上に透明樹脂等から成る透明覆蓋体が形成さ
れているものの,前記のような透光性の蛍光カバーではない点。」が相違点1とし
て認定されている。したがって,上記相違点1に係る本件発明1の構成である「蛍
光カバー」は,「樹脂封止体上の蛍光カバー」を意味するものであることは明らか
であり,当業者が相違点1に係る本件発明1の構成を想到するためには,「一端に
開口が設けられたカバー内に蛍光体が配合された,樹脂封止体上の透光性の蛍光カ
バー」という先行技術が存在することが必要であると解すべきである。
 また,本件発明1は,「前記複数のリードの一端及び前記半導体発光素子
を封止する樹脂封止体と,一端に開口が設けられ且つ前記樹脂封止体に被着された
透光性の蛍光カバーとを備え」るものであるから,そこにおける蛍光カバーは,樹
脂封止体に被着されたものであり,それ自体は「複数のリードの一端及び前記半導
体発光素子を封止する」という役割を果たす必要がないものである。そうであるか
らこそ,上記蛍光カバーは,交換が可能であり,その結果,「蛍光カバーを装着し
又は交換することにより容易に異なる波長の光を取り出すことができる。」(本件
明細書の段落【0016】,甲9)との効果を奏するものである。その意味では,
本件発明1の相違点1及び2に係る構成は,一体不可分な技術事項であるから,そ
の容易想到性を判断するに当たっては,相互の関連をも十分考慮して行うべきもの
である。
 甲10文献(甲10)には,「赤外可視変換蛍光体を分散含有するドーム
状樹脂成型体を赤外発光ダイオードチップに対して所定の距離を設けて装着してな
る指向性の少ない赤外可視変換発光ダイオード」(特許請求の範囲)が記載されて
いる。該樹脂成型体は,その実施例に記載されるように,「3種類の変換蛍光体を
同表1に示される割合でエポキシ樹脂に分散混合し,これを外径3.0mm,高さ
3.0mm,厚さ0.5mmの蛍光成型体とし」たものであるが,「図1に見られ
るように前述の従来変換発光ダイオードにおける発光部と同じ構造を持つダイオー
ドチップの上面にたいして1.0mmの距離を離れて内面が位置するように蛍光成
型体を設置し,更に保護の目的で蛍光成型体を含む全体を透明樹脂モールド7でパ
ッケージすることにより本発明変換発光ダイオード1~3をそれぞれ製造した。」
(いずれも,段落【0007】)と記載されるように,樹脂封止体に被着するもの
ではなく,全体が透明樹脂モールドでパッケージされるものである。換言すれば,
甲10文献記載の発明においては,樹脂成型体ではなく透明樹脂モールドが封止体
の役割を果たすものであるし,樹脂成型体はその上から透明樹脂モールドによりパ
ッケージされるものであるから,該樹脂成型体はおよそ交換可能なものすることが
できない構成のものである。なお,甲10文献には,「発光部を保護するために蛍
光成型体の内部を透明樹脂で充填してもよい」(4欄6~7行)との記載がある
が,この透明樹脂が透明樹脂モールドに代わるものであるとも認められない。
 また,甲11文献(甲11)には,「LEDと,このLEDの発光色とで
加色混合の三原色を構成する二色の染料のそれぞれを表裏面のそれぞれから浸透さ
せた染料浸透性かつ高透光性の透明ガラス体の中空封止体と,から構成したことを
特徴とする白色発光装置。」(特許請求の範囲(2))と記載され,「透明ガラス体に
浸透させる染料を蛍光染料とすると,光の混合状態がより良好になる。」(2頁左
下欄18~19行),「ガラス体1は,ビスアリル系化合物を必須成分として含む
モノマーまたはオリゴマーまたはこれらの混合物を含む重合可能な液状物の重合体
を平板状に形成したものである。」(2頁右下欄14~17行),「なお,本実施
例では染料浸透性の透明ガラス体を平板状に形成したが,この透明ガラス体を第3
図に示すようにLEDの中空封止体としてもよい。…この中空封止体31により,
三原色のうちの残りの一色に発光するLED32をカバーすれば,LED32の発
光が中空封止体31を浸透する際に加色混合の三原色が混合し,中空封止体31の
外部に白色光を得る。」(4頁右上欄17行~左下欄8行)と記載されている。し
たがって,甲11文献に記載される中空封止体は,内部に発光ダイオードを封止す
るものであり,樹脂封止体に被着するものではない。換言すれば,甲11文献記載
の発明においては,該中空封止体は,それ自体が封止の役割を果たすものであるか
ら,これを交換可能なものとすることができない構成のものである。
 したがって,甲10文献や甲11文献の記載からは,「一端に開口が設け
られたカバー内に蛍光体が配合された,樹脂封止体上の透光性の蛍光カバー」が周
知技術であるということはできない。
 そもそも,甲10文献記載の発明の目的は,「上記の従来変換発光ダイオ
ードにおいては蛍光体層が一般に塗布あるいは滴下などによってダイオードチップ
上に形成されているので,均一な被着が困難となるばかりでなく,この結果観察方
向によって輝度が異なるという指向性があらわれ,表示が不鮮明にならざるを得な
いというのが現状である」(甲10,1欄36~41行)という課題を解決しよう
とするものである。一方,引用文献1に,「係る赤外線発光ダイオードの表面に可
視光変換蛍光材料を塗布した半導体発光装置が製作されている。このような半導体
発光装置は例えば特公昭46-9194号公報に示されている。これらの半導体発
光装置は高輝度ではあるが,半導体材料が高価であるため発光素子を小さくしなけ
ればならず,殆んど点光源に近いという欠点を有する。」(甲1,1頁18行~2
頁6行),「本考案は以上の点に鑑み,安価で大きな発光面積を有する半導体発光
装置を提供せんとするものである。」(同3頁2~4行)と記載されるように,引
用文献1発明では上記課題は既に解決済みであるから,甲10文献記載の事項を適
用するための動機付けを明らかに欠くものである。
 以上のとおりであるから,甲10文献や甲11文献の記載事項に基づき,
相違点1に係る本件発明1の構成を想到することが容易であるということはできな
い。
(2) 原告は,引用文献1発明は透明な樹脂カバー(覆蓋体)の内側表面に蛍光
材料層が形成されることを特徴とするものであり,また,透明覆蓋体及びその内面
に形成された蛍光層は,ステムに直接固着される場合があり,透明樹脂とは別個独
立した単体として観念し得るものであるから,引用文献1における蛍光材料層・透
明覆蓋体を,「透明樹脂とは分離した単体として観念しうる,一端に開口が設けら
れたカバー状の構成」となし得ることが示唆されている旨主張する。
 しかしながら,本件審決が引用した引用文献1記載の「他の実施例」につ
いては,「蛍光材料層13及び透明覆蓋体14は半球状の透明樹脂12上に蛍光変
換塗料及び透明樹脂を順次塗布すれば形成できる。本実施例においては,透明覆蓋
体14は気密封止用のキャップの役割を果すものではなく,単に蛍光材料層13の
保護を計るものである。」(甲1,5頁19行~6頁4行)と記載されており,そ
こにおける蛍光材料層・透明覆蓋体は,透明樹脂12上に順次塗布して形成される
ものであって,「透明樹脂とは分離した単体として観念しうる,一端に開口が設け
られたカバー上の構成」とは全く異なる構成である。また,前記2のとおり,引用
文献1に記載される,透明覆蓋体の内側に蛍光材料層を塗布したものは,本件審決
が引用した上記「他の実施例」とは異なる実施例のものであり,これを透明樹脂1
2を有する「他の実施例」のものに適用することは,引用文献1に開示も示唆もさ
れていない。したがって,引用文献1には,蛍光材料層・透明覆蓋体を,「透明樹
脂とは分離した単体として観念しうる,一端に開口が設けられたカバー状の構成」
となし得ることは示唆されておらず,これと同旨の本件審決の認定に誤りはない。
(3) 原告は,引用文献6では,フイルムの内部に蛍光物質が具備される場合の
具体的実施例は示されていないものの,蛍光フイルムとして,蛍光体をフイルム内
部に含むものと表面に有するものとが明らかに同視されており,樹脂フイルム内部
に蛍光物質を含むものは甲10文献に見られるように本件特許出願時に周知の事項
であるから,引用文献6及び甲10文献は,引用文献1記載の蛍光材料を塗布した
透明覆蓋体を,本件発明1の蛍光体を含む樹脂成形体に置き換えることができるこ
とを示唆している旨主張する。
 そこで検討すると,引用文献6(甲6)の実施例には,「次に,表面に微
細な凹凸が施されたフィルム6に蛍光層5を形成した。蛍光層5は,赤色蛍光顔料
であるシンロイヒ化学製FA-001と緑色蛍光顔料である同社製FA-005と
を等量に混合した蛍光顔料をアクリル系バインダー中に分散したものを塗布して形
成した。」(段落【0016】),「黄色蛍光染料としてBASF社のLumog
enF Yellow-083と橙色蛍光染料として同社製Orenge-240
とをほぼ等量混合し,それらとアクリル樹脂をブチルカルビトールアセテートに溶
解した蛍光染料を微細な凹凸が施されたフィルム6上に塗布した。」(段落【00
18】)と記載されており,蛍光体をフイルム表面に有する実施例のみが記載さ
れ,フィルム内部に蛍光物質を配合した実施例は引用文献6には記載されていな
い。
 また,引用文献6の特許請求の範囲には,「透明な導光板2の端面の少な
くとも一箇所に青色発光ダイオード1が光学的に接続されており,さらに前記導光
板2の主面のいずれか一方に白色粉末が塗布された散乱層3を有し,前記散乱層3
と反対側の導光板2の主面側には,透明なフィルム6が設けられており,そのフィ
ルム6の表面あるいは内部には前記青色発光ダイオード1の発光により励起されて
蛍光を発する蛍光物質が具備されていることを特徴とする面状光源。」と記載され
ているが,仮に,同記載に基づき,内部に蛍光物質を具備するフィルムの発明が認
定できるとしても,そのフィルムは面状光源の導光板2の主面に設けられるもので
あるから,引用文献1発明のような半球状の透明樹脂12をカバー状に覆うもので
はないし,相違点1に係る本件発明1の構成である「一端に開口が設けられたカバ
ー内に蛍光体が配合された,樹脂封止体上の透光性の蛍光カバー」を示唆するもの
でもない。したがって,引用文献6の記載に基づき,相違点1に係る本件発明1の
構成の蛍光カバーを想到することが容易であるということはできない。
 なお,甲10文献の記載事項に基づき,相違点1に係る本件発明1の構成
を想到することが容易であるといえないことは,前記のとおりである。
 したがって,原告の上記主張は理由がない。
(4) 以上のように,相違点1に係る構成の蛍光カバーは,「一端に開口が設け
られたカバー内に蛍光体が配合された,樹脂封止体上の透光性の蛍光カバー」,す
なわち,樹脂封止体に被着される蛍光カバーであり,引用文献6,甲10文献,甲
11文献の記載事項を参酌しても,この点を当業者が容易に想到することができた
とすることはできない。
 そして,相違点1に係る構成を当業者が容易に想到することができない以
上,本件審決が認定した「複数種の蛍光体による所望の混合色又は中間色の光を取
り出すことができたり,配合する蛍光体の量を制御しうる等の効果を奏する」点が
周知であるという原告の主張も理由がない。
 したがって,本件審決の相違点1の判断には誤りがなく,この点に関する
原告の主張は理由がない。
4 相違点2の判断について
 原告は,引用文献1発明の透明覆蓋体を,引用文献3及び4記載のキャップ
のように弾力性を有し着脱自在に構成することは,当業者が容易に想到し得たこと
であり,本件審決が相違点2の技術的事項が容易とはいえないと判断したのは誤り
である旨主張する。
 しかしながら,本件審決の相違点1の判断に誤りがないことは上記のとおり
である以上,相違点2の判断について検討するまでもなく,本件審決の結論に誤り
はない。
 なお,原告の上記主張は,透明覆蓋体を透明樹脂とは独立したカバーとして
形成することが引用文献1に開示されていることを前提とするものであるところ,
引用文献1には,引用文献1発明の透明覆蓋体について,そのような開示がないこ
とは前記のとおりであるから,原告の上記主張はその前提を欠き理由がない。
5 結論
 以上のとおり,甲10文献及び甲11文献記載の技術事項を加味しても,本
件発明1は引用文献1~7記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることで
きたものではないとの本件審決の判断に誤りはなく,本件発明1を引用する本件発
明2~4についても同様である。
 したがって,本件審決を取り消すべき旨の原告の主張は理由がなく,他に本
件審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
 よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文
のとおり判決する。
  知的財産高等裁判所第3部
  裁判長裁判官   佐  藤  久  夫
 裁判官    若  林  辰  繁
       裁判官 沖  中  康  人

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