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 判決目次
 主文
 理由
 第一弁護人の控訴趣意について
 一 被告人A1、同A2、同A3についての控訴理由(控訴趣意第一篇の第一な
いし第四)
 1 「B1事件等に殺人・殺人未遂の適用をなした原判決には事実誤認、法令適
用の誤りがあり、判決に影響を及ぼすことが明らかである」との主張について(控
訴趣意第一の一ないし五)
 (一) 「爆弾攻撃の対象は誰かー爆破事件における殺意の問題」(控訴趣意第
一の一)
 (二) 「B1事件につき被告人らに殺人、同未遂の故意を認めた原判決は誤つ
ている」(控訴趣意第一の二)
 (三) 「B1事件につき、負傷者C1について傷害罪を適用した原判決は法令
の適用を誤つている」(控訴趣意第一の三)
 (四) 「B2本社ビルB3階事件について被告人A1に殺人未遂の故意の成立
を認めた原判決には判決に影響を及ぼすべき事実の誤認がある」(控訴趣意第一の
四)
 (五) 「B2B4作業所爆破事件における殺意の不存在について」(控訴趣意
第一の五)
 2 「原判決には憲法の解釈、法令適用の誤りがあり、判決に影響を及ぼすこと
が明らかである」との主張について(控訴趣意第二の一、二)
 (一) 「死刑制度は憲法一三条、三一条、三六条に違反する」(控訴趣意第二
の一)
 (二) 「爆発物取締罰則の適用について」(控訴趣意第二の二の(一)ないし
(五))
 (1) 本罰則の形式的無効論(控訴趣意第二の二の(一)(二))
 (2) 本罰則の実質的無効論(控訴趣意第二の二の(一)(三))
 (3) 本件各行為における本罰則一条の目的の不存在(控訴趣意第二の二の
(四))
 (4) 本件各行為における本罰則一条の共謀共同正犯の認定の誤り(控訴趣意
第二の二の(五))
 3 「原判決には訴訟手続の法令違反があり、判決に影響を及ぼすことが明らか
である」との主張について(控訴趣意第三の一ないし三)
 (一) 「B5B6特別列車爆破予備事件について、公訴棄却の判決をなさなか
つた原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある」(控訴
趣意第三の一)
 (二) 「A4、A5、A6の検察官に対する各供述調書に証拠能力を認めた原
判決には判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反がある」(控訴趣意第三の
二)
 (三) 「原判決には証拠能力につき任意性の判断を誤つた訴訟手続の法令違反
があり判決に影響を及ぼすことが明らかである」(控訴趣意第三の三)
 4 「量刑不当」との主張について(控訴趣意第四の一ないし四)
 (一) 「正当性の主張について」(控訴趣意第四の一)
 (二) 「被告人A1に対する刑の量定不当について」(控訴趣意第四の二)
 (三) 「被告人A2に対する刑の量定不当について」(控訴趣意第四の三)
 (四) 「被告人A3に対する刑の量定不当について」(控訴趣意第四の四)
 二 被告人A7についての控訴理由(控訴趣意第二篇の第二の一ないし四)
 1 「原判決には重大な訴訟手続の法令違反、審理不尽ないしは訴因に明示され
ていない事実を認定し有罪判決をなした遠法があり、いずれも判決に影響を及ぼす
ことが明らかである」との主張について(控訴趣意第二の一の(一)(二))
 (一) 「訴因制度の無視」(控訴趣意第二の一の(一))
 (二) 「審理不尽ないしは訴因に明示されていない事実を認定し有罪判決をな
した違法について」(控訴趣意第二の一の(二))
 2 「原判決には法令の解釈適用について誤りがあり、これが判決に影響を及ぼ
すことが明らかである」との主張について(控訴趣意第二の二の(一)(二))
 (一) 「幇助意思についての原判決の判断の誤り」(控訴趣意第二の二の
(一))
 (二) 「幇助行為についての判断の誤り」(控訴趣意第二の二の(二))
 3 「原判決には事実の誤認ないし法令の適用を誤つた違法があり、これが判決
に影響を及ぼすことが明らかである」との主張について(控訴趣意第二の三の
(一)ないし(五))
 (一) 「被告人の検察官に対する供述調書の信用性について」(控訴趣意第二
の三の(一))
 (二) 「被告人は『B7』に参加していたとの認定について」(控訴趣意第二
の三の(二))
 (三) 「被告人が交付したクサトールのうち約五〇〇グラムがB2本社B3階
爆破事件に使用された爆弾の爆薬に費消されたとの認定について」(控訴趣意第二
の三の(三))
 (四) 「無形的幇助行為の認定について」(控訴趣意第二の三の(四))
 (五) 「資金供与行為が本件各爆破事件についての幇助行為に該当するとの認
定について」(控訴趣意第二の三の(五))
 4 「原判決の被告人に対する刑の量定は不当である」との主張について(控訴
趣意第二の四)
 第二 被告人本人の控訴趣意について
 一 被告人A1、同A3、同A7の控訴趣意
 二 被告人A2の控訴趣意
 法令の適用
         主    文
     本件各控訴を棄却する。
     被告人A3、同A7に対し、当審における未決勾留日数中各五〇〇日を
原判決の各本刑にそれぞれ算入する。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、弁護人庄司宏、同新美隆、同鈴木淳二、同内田雅敏、同高
橋耕連名作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書(二通)並びに被告人A1、同A
3、同A7連名作成の控訴趣意書及び被告人A2作成の控訴趣意書にそれぞれ記載
されたとおりであり、これに対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事加藤・也作
成の答弁書(二通)に記載されたとおりであるから、これらをここに引用する(な
お、弁護人は、被告人A1ほか二名連名作成の控訴趣意書第二編の八の(一)ない
し(三)は、弁護人の控訴趣意中の被告人A7に対する量刑不当の主張の一事情と
して述べるものである旨付陳した。)。
 控訴趣意に対する当裁判所の判断は、次のとおりである。
 第一 弁護人の控訴趣意について
 一 被告人A1、同A2、同A3についての控訴理由(控訴趣意第一篇の第一な
いし第四)
 1 「B1事件等に殺人・殺人未遂の適用をなした原判決には事実誤認、法令適
用の誤りがあり、判決に影響を及ぼすことが明らかである」との主張について(控
訴趣意第一の一ないし五)
 (一) 「爆弾攻撃の対象は誰か―爆破事件における殺意の問題」(控訴趣意第
一の一)
 所論は、要するに、原判決は、被告人らのいわゆる「反日思想」には、日本人の
歴史的存在形態の一態様である「日本国家」の否定はあつても、日本人自体の存在
の否定、抹殺のごとき思想は全くないにもかかわらず、被告人らの言う日帝本国人
の「自己否定」を敢えて他者による否定として把え、「日本人のあり方の否定」を
日本人の存在そのものの否定とすり替え、これとB1爆破事件で多数の死傷者を出
したという結果を結びつけて、本件における被告人らの殺人の故意の存在をその思
想から論理的に流れ出て来るものとして立証しようとしているけれども、この点か
ら殺意の認定ができないことは明らかであり、また、原判決は、被告人らのいわゆ
る「反日思想」からB1爆破事件における多数の死傷者の発生につき認容があつた
と認定する理由として、被告人A1の原審における最終陳述をとりあげているが、
同被告人がその最終陳述のなかで述べたことは、多数の死傷者を出したB1爆破事
件を失敗であつたと評価し、その失敗の原因についての自己批判と、事件後「B
7」が出した声明文でB1爆破の結果を正当化するような評価をしていることに対
する自己批判であつて、原判示のように、日本帝国主義の分析のあいまいさや敵・
味方の区別についての明確な意識がなかつたことが直接に大衆蔑視の視点を生み、
爆弾により多数死傷者が発生する可能性について認容したことを認めたものではな
い、というのである。
 しかしながら、関係証拠、特に、被告人A1、同A2の両名が執筆した「B8」
と題するパンフレツトには、いわゆる「反日思想」についての記述、例えば、「日
帝本国の労働者、市民は、植民地人民と日常不断に敵対する帝国主義者、侵略者で
ある。」「日帝の手足となつて無自覚に侵略に荷担する日帝労働者が、自らの帝国
主義的、反革命的、小市民的利害と生活を破壊、解体することなしに、『日本プロ
レタリアートの階級的独裁』とか『暴力革命』とかを、例えどれ程唱えても、それ
は全くのペテンである。」「日本帝国に於いて唯一根底的に闘つているのは、流民
=日雇労働者である。」「われわれに課せられているのは、日帝を打倒する闘いを
開始することである。法的にも、市民社会からも許容される『闘い』ではなくし
て、法と市民社会からはみ出す闘い=非合法の闘い、を武装闘争として実体化する
ことである。」などの記載があり、更に、「B8」の技術篇では、武装闘争=都市
ゲリラ戦に必要な時限式手製爆弾の作り方の解説があることからみても、被告人ら
は、いわゆる「反日思想」に基づく反日武装闘争において、爆弾使用闘争を是認し
て行動していたことは明白であるといわなければならない。もともと、爆弾は、強
大な破壊力と殺傷力を有するものであるから、爆弾を都会地や会社の事務所等に仕
掛けて爆発させることは、付近に人が居れば当然その死傷の結果が予想されるとこ
ろであつて、右の結果発生を防止するための特段の措置を講じた場合は別として、
そうでない限り、死傷の結果を当然認容していたことを意味するものである。現
に、「B7」グループの構成員である被告人A2は、検察官に対し、「B7」がB
1ビルの爆破計画を決定する経過を説明するなかで、「爆弾闘争をやる以上、巻き
ぞえとなる死傷者が出ることは避けられないわけで、死傷者を出すのがいやなら最
初から企業を対象とする爆弾闘争をやらなければよいのであり、私達が爆弾闘争に
踏み切つたことは、巻きぞえとなる死傷者が出ることを爆弾闘争の宿命として覚悟
した上のことでありました。しかし、私達も労働者の殺傷それ自体が目的だつたわ
けではありませんから、死傷者は少ないほど良いし、出来ることなら皆無にしたい
と思つていたことも、また事実であります。これは、私を含めA1、A4、A6の
気持でもありました」(被告人A2の昭和五〇年六月一二日付検察官調書八項)と
述べており、右供述は、被告人らの「反日思想」に基づく爆弾闘争によつて人を殺
害したり、死亡の結果を惹起することを是認していたことを率直に言い表わしてい
るものといつてよい。
 したがつて、原判決が、被告人らの「反日思想」に表われている考え方を、B1
爆破事件における死傷者の発生につき、被告人らに認容があつたと認定するための
一資料としたからといつて、そのこと自体はかくべつ不当であるとは考えられない
し、所論の指摘する被告人A1の最終陳述の点を考慮してみても、右判断を左右す
るに足るものとは認められないので、結局、所論は採用することができない。
 (二) 「B1事件につき被告人らに殺人、同未遂の故意を認めた原判決は誤つ
ている」(控訴趣意第一の二)
 所論は、要するに、原判決が判示第五の事実(B1爆破事件)につき、被告人A
1、同A2に殺意があつたと認定したのは事実を誤認したものである、というので
あり、その論拠として、「1」同被告人らは本件爆弾の威力を十分には認識してい
なかつたこと、「2」本件爆弾による被害は、爆発現場の空間の閉鎖性に基づく特
殊効果により発生したもので、ビルのガラスが道路側へ落下することは同被告人ら
において予想しえない事態であつたこと、「3」同被告人らは絶対に死者を出すべ
きではないと考えていたので、事前に予告電話をして避難するよう警告し、かつ、
本件爆弾の外部に危険物である旨警告の表示をしたこと、「4」本件爆弾の爆発に
よる負傷者のうち一〇四名については全く死亡の可能性がなかつたこと、などを挙
げている。
 そこで、所論にかんがみ、記録及び証拠物を精査し、当審における事実取調べの
結果をも加え、本件につき被告人らの殺意を認めた原判決の当否について、以下、
項を分けて順次検討する。
 (1) 被告人らが本件爆弾の威力を十分には認識していなかつたとの点につい

 所論は、被告人らは、本件以前に手製雷管を起爆装置としたセジツト爆薬の爆発
実験をした際、雷管が破裂したのみで、セジツトは雷管の周辺にあるものが燃えた
だけでそのまま残る状態であつたことから、本件セジツト爆薬の威力を過少に認識
していたこと、そのため、被告人らは、セジツトにオージヤンドルを混合させて爆
発させる方法を考えたが、その場合でも、セジツトの一部が爆ごうすれば、最大限
TNT爆薬の三割の威力を、セジツトが爆燃にとどまれば、TNT爆薬の一割以下
の威力をそれぞれ予測していたこと、本件セジツト爆薬が爆発によつて強大な威力
を発揮したのは、たまたまセジツトを缶体に詰め込む方法が適切であつたことによ
るものであること、被告人らは、本件セジツト爆弾の爆発による爆風圧が爆心地か
ら一定距離以上離れると猛度の高低の差よりはるかに小さい差しか生じないという
本件爆弾の特質を全く知りえなかつたこと、本件爆弾はもともとB5B6特別列車
爆破共謀事件に使用するために製造されたものであるが、セジツト爆薬の実験結果
により、被告人らはB6の直撃爆死を不可能と考えていたこと、などを主張する。
 しかしながら、関係証拠によれば、被告人らが製造、使用した本件二個の爆弾
は、原判示のとおり、塩素酸ナトリウム約九〇パーセント、ワセリン約三パーセン
ト、パラフィン約七パーセントの割合で混合したセジツト爆薬を主薬とし、これに
塩素酸ナトリウム約五〇パーセント、砂糖及び黄血塩各約二五パーセントの割合で
混合した白色火薬、塩素酸ナトリウム約六〇パーセント、砂糖約三〇パーセント、
硫黄約一〇パーセントの割合で混合した白色火薬及び塩素酸カリウム約五〇パーセ
ント、砂糖及び黄血塩各約二五パ―セントの割合で混合した少量の白色火薬とを加
えた爆薬を、二十数キログラムずつほぼ等量に、一個の容量約二〇リツトル余の金
属性ペール缶二個に詰め、これに手製雷管各一個をそれぞれ装着した大型の手製爆
弾であり、その威力は、本件二個の爆弾の爆発により、爆心地近くのB1ビル玄関
前付近、同ビル一階玄関ホール付近、同ビル西側歩道上に居合わせたC2ら八名が
死亡(うち五名は即死)し、爆心地周辺路上及び周辺ビル内に居合わせたC3ら一
六五名の多数の者が負傷(そのうち加療一か月以上の重傷者は五十数名)するとと
もに、B1ビル及びB9ビルをはじめ、周辺の高層ビルの多くが窓ガラス等を破壊
され(本件爆心地直近の歩道上に設置されていた直径一・〇八メートル、重量合計
約三四八キログラムの人造石のフラワーポツトが粉砕されて跡形もなく飛散し、長
片一二センチメートル、短片七センチメートルもある大きなフラワーポツトのコン
クリートの破片等がB1ビル二階のB17課の室内に飛び込んでいるほか、B1ビ
ル正面玄関の金属性ドア二個が約二〇メートルも吹き飛ばされ、正面玄関及びその
周辺は原形をとどめないほどに破壊され、地上B3のB1ビル及びこれと道路を挾
んで向かい合つていたほぼ同規模のB9ビルの爆心地に面した側の窓ガラスは最上
階に至るまでほぼ全面的に破壊され、更に、爆心地より約七〇メートル以上の距離
にあるB10ビル別館、B11ビル及びB12ビルの窓ガラスも爆心地に面した部
分が広範囲にわたり多数破壊されている。)、合計四億円余に達する物的損害を被
るなど、多大の人的・物的損害が発生していることによつて明らかなとおり、極め
て強大なものであつたことが認められる。したがつて、本件爆弾が客観的に極めて
威力の強烈なものであつて、爆心地付近はもとより、相当広範囲にわたつて、現在
する不特定多数人を殺傷するに足る威力を有していたことは明白といわなければな
らない。
 そこで、更に、本件爆弾の威力についての被告人らの認識、予見の有無について
検討してみると、関係証拠によれば、被告人らが本件爆弾を製造する以前に、数回
にわたる爆弾の爆発実験や四件の爆破事件(原判示第一ないし第三の一、二の事
実)を敢行していること、被告人両名は爆弾教本「B8」を執筆して手製爆弾につ
いて相当高度な知識を有していること(右「B8」の第二章展開、第一篇爆破の項
に、「砂糖で代用した火薬は五キログラム単位ぐらいで使わないと威力は望めな
い。塩素酸カリウムを主剤にした火薬、爆薬を混合し併用するならば、より良い結
果を引き出しうる。なお、対人殺傷用で確実にその人間に接近して爆発させられる
場合は、この十分の一程度でよい」旨記載されており、被告人らが各種爆弾の一般
的威力についても相当な知識を有していたことがうかがえる。また、被告人A1の
居室から押収された「B13」と題する専門書の塩素酸塩爆薬の項に、「塩素酸塩
が分解し酸素を遊離する速度が急激なために、この爆薬は威力は大きいが摩擦、衝
撃に対し鋭敏である」と記載され、同じく押収されたバインダーに編綴されている
セジツト爆薬に関するメモに、「その製造中は比較的危険性が少ないが、爆力はか
なり強い」との記載があることからみて、セジツト爆薬の威力が一般的にも強力な
ものであることを認識していたことが認められる。)、本件爆弾は、もともとB6
特別列車をB5で爆破してB6を暗殺する目的で製造された爆薬量の極めて多い大
型爆弾であり、その数も二個であること(なお、右爆破計画は、右特別列車そのも
のの爆破ではなく、枕木と密着して爆弾を仕掛け、線路や枕木にシヨツクを与えて
列車を一瞬浮き上がらせることを予定していたにすぎない旨の被告人らの弁解は、
客観的な状況や証拠((爆弾を橋桁の主桁の側面に吊り下げるようにして仕掛け、
橋桁もろともB6特別列車を爆破しようとしたものと認められる))と矛盾し、到
底措信できないが、かりに、弁解のとおりだとしても、爆弾を爆発させたうえ、固
定された線路や枕木とともに重量のある列車を押し上げようと予定したものである
から、被告人らにおいて本件爆弾の威力が極めて強大であることを認識していたこ
とは明らかである。)、被告人らは、本件爆弾の起爆力を高めるため起爆装置に手
製雷管を用い、また、爆発力を強めるため数種の混合爆薬を用い、その充填の方法
にも工夫をして塩素酸カリウム系の爆薬を雷管の周囲に充填したこと、弾体となる
容器に気密性が高く頑丈なものを用い爆発力を高める工夫をしたこと、などの事実
が認められ、これらの事実に照らすと、被告人らが本件爆弾の爆発の威力が強大で
あることを十分認識、予見していたことは明らかといわなければならない(特に、
被告人A1の昭和五〇年六月一二日付〔乙一の15〕、同月一四日付、同月二四日
付検察官調書、被告人A2の昭和五〇年五月二二日付、同月二五日付、同月二六日
付、同年六月一日付、同月一二日付検察官調書、A4の昭和五〇年六月一五日付、
同月一七日付、同月二三日付検察官調書謄本、A5の昭和五〇年六月一六日付〔甲
共二の13〕検察官調書謄本参照)。なお、爆薬と爆風圧の関係についての実験結
果によると、猛度の比較的高い三号桐ダイナマイトと猛度の低い硝安油剤爆薬とセ
ジツト爆薬の三種類の爆薬の間で、爆風圧力の面ではあまり差異はなく、爆心周辺
に対する破壊力にも大した違いはないことが明らかであるが(D1作成の昭和五〇
年一一月一〇日付鑑定書二通及び同人の原審第二五回公判の証言参照)、右の事実
は、本件爆弾の爆発により現実に発生した物的、人的な被害の結果及び本件爆弾が
被告人らにおいて白昼、都心の高層ビル街の路上に仕掛けて爆発させたものである
ことなどを考慮すると、被告人らの本件爆弾の威力についての認識、予見に関する
前記認定の妨げになるものとは考えられない。
 結局、(1)の点に関する所論は採用することができない。
 (2) 本件爆弾による被害は、爆発現場の空間の閉鎖性に基づく特殊効果によ
り発生したもので、ビルのガラスが歩道上へ落下することは被告人らにおいて予想
しえない事態であつたとの点について
 所論は、我が国の閉鎖空間における爆発現象の研究が極めて少なく、特に、爆発
が都市空間に及ぼす影響という分野では公表された文献も存在しないので、被告人
らには半閉鎖空間における爆発現象やガラス落下についての知識が全くなく、本件
爆弾による被害が広範囲なガラス窓の損壊のため大きくなることを予想できなかつ
た、と主張する。
 しかしながら、関係証拠によれば、本件爆弾の爆発した場所は、原判示のとお
り、近代高層ビルが立ち並ぶaビジネス街の一角に位置するB1ビルとB9ビルと
の間の通称a仲通りの歩道上であるから、開放された場所に比し、爆風圧による破
壊力が強まることは容易に想像され(原審証人D1は、本件現場はいわゆる拘束空
間といいうる旨供述しており、同人作成の昭和五〇年一一月一〇日付鑑定書にも、
「大きい爆風圧力がビル街の中にあつて空間に自由拡散せず反射波となつて遠方ま
で破壊力を及ぼしたことが考えられる」旨の記載がある。)、被告人らの執筆した
「B8」の第二章展開、第一編爆破の項にも、爆弾の破壊力をより大きくするため
に、仕掛け場所は、閉鎖された場所を選ぶように記載していることからみても(こ
の理は、本件爆弾が仕掛けられた高層ビルにはさまれた半閉塞状態の場所にも、あ
る程度適合することは容易に想定しうるところである。)、被告人らは、本件高層
ビル街の道路上に仕掛けた爆弾の爆発によつて、相当広範囲にわたり周辺のビルの
窓ガラスが爆風圧等により破壊されることを予測していたものと推認できるし、も
ともと高層ビル街において爆弾を爆発させその被害が及ぶ範囲について実験した事
例等はないのであるから、被害の範囲などを正確に予想することは困難であり、し
かも、都会地において爆弾を爆発させた場合には、その爆発による直接の被害のほ
か、副次的に二次、三次の災害の発生も予想されることを考えあわせると、被告人
らにおいて本件爆弾の威力に応じた結果の発生することは当然予見、認容していた
ものとみるべきであつて、本件爆弾の爆発によつて生じた各ビルのガラスの損壊の
結果についても、これを認容していたものといわなければならない。現に、被告人
A2は検察官に対して、「この爆弾を二個仕掛けるということは四〇キロの爆弾を
仕掛けることになるわけで、道路側に面したビルの窓ガラスは全部爆風等で破壊さ
れ、あるいははずれ落ちるだろうし、そうなればこの攻撃は成功だというのがみん
なの結論でありまして……」と供述していることは、その間の事情を言い表わして
いるものといつてよい(被告人A2の昭和五〇年六月一二日付検察官調書参照)。
 なお、原判決は、被告人A1の居室から押収された前記書籍「B13」一六九頁
以下に「爆風の挙動」として、「爆風ははじめに大きなプラスの圧力を持つている
が、そのあとにマイナスの圧力を持つた領域が続く、そして時間的には後者の方が
長い」と記載され、圧縮相と吸引相の爆風圧力の変化が図解により説明されている
ことから、被告人らがこれを読んでいたとすれば、強い爆発が起つた場合、当初は
爆風のプラス(圧縮)の作用で割れたガラス片が室内の方へ飛散するが、次にはマ
イナス(吸引)の作用で割れ残つていたガラス片が室外に飛散するという理論面ま
で知つていたことになる旨判示していることは、所論の指摘するとおりであるが、
被告人らにおいて右「爆風の挙動」に関する記述を全く読んでいなかつたとして
も、そのことから直ちに本件被害が被告人らにとつて予想外の事情によつて生じた
ものといえないことは、さきに述べたところから明らかである。
 したがつて、被告人らは本件爆弾の爆発によつて相当広範囲にわたり周辺ビルの
窓ガラスが爆風圧により破壊されることを予測していたものと認められる旨の原判
決の説示は、相当として是認することができる。結局、(2)の点に関する所論は
採用できない。
 (3) 予告電話等について
 所論は、被告人らに殺意がなかつたと主張する理由として、被告人らが本件爆弾
をB1ビル玄関前の路上に仕掛けたのは、B1ビルやB9ビルに対し物理的損壊に
よる損害を与え、過去の企業罪悪を糾弾し、現在の経済侵略を戒めることが目的で
あつて、B1の労働者や通行人を傷つけることは目的でなく、死傷の結果は避けら
れるものと考えており、現に、被告人らは、本件爆弾の爆発による死傷の結果を回
避するため、事前に予告電話をして避難するよう警告し、かつ、本件爆弾に危険物
である旨警告の表示を行つたこと、右予告電話を爆発五分前にしたのは、いわゆる
B14作戦(原判示第四のB5B6特別列車爆破共謀事件)の失敗後、被告人らに
おいてB10社長C4の暗殺の可能性を検討し、右C4宅を下見したところ、警備
が厳重であつたので、当然B1ビルにおいても警備が厳しく、爆破予告電話により
直ちに避難態勢がとられるものと誤信した結果、予告電話を爆発五分前で十分であ
ると考えたこと、本件後に被告人らが公表した「声明文」は、被告人らの殺意を示
す証拠とはなりえないことなどを指摘する。
 しかしながら、被告人らが本件爆破予告電話を爆発時刻の五分前で十分と考えた
理由として述べるところは、いかにもその根拠が薄弱であつて不合理であり、いか
にB10社長C4方の私宅の警備が厳重であつたとしても、そのことから、右私宅
とは規模、周囲の状況等において著しく異なるB1ビルも右私宅と同様に警備が厳
重であり、予告電話により直ちに避難態勢がとられるものと想定することはできな
いし、その予告電話の内容も、具体的な仕掛け地点、爆発時刻、爆弾の形状など重
要なことは全く通告していないのであるから、かりに、五分前に予告電話が通じた
としても、原判決の説示するとおり、警察への連絡、その出動、ビル内に現在する
人々への退避連絡、退避行動、通行人への退避連絡、その退避行動、交通制限措置
等がとられる可能性は極めて少なく、殆んど不可能に近いこと、もともと、予告電
話は必ずしも確実に相手に通じるとは限らないのに、これを担当したA6と爆弾の
仕掛けを担当した被告人A1との間に、予告電話が予定時刻までに完全に通じたか
どうかを確認する打合せも全くなされていなかつたこと(現に、本件予告電話は、
A6が爆発時刻の五分前に行うことになつており、当日午後零時三七分ころ最初に
B1ビル管理室に電話したところ、途中で相手から切られ、更に、その直後B9ビ
ルの管理室にも電話したが、やはり途中で切られて通じなかつたため、最後にB1
ビルの受付に電話し、電話に出た女性に、爆破予告と退避勧告を行つたことが関係
証拠により認められる。)、被告人らは、通行人の避難措置がとられたかどうかも
確認せず、現場から立ち去つていることなどの事実に照らすと、被告人らは、予告
電話によつてB1ビル及びB9ビル内に現在する人々や一般通行人までも確実に退
避させて被害が及ぶことを回避できると考えていたとは到底認められない旨の原判
決の説示は、相当として是認することができる。
 したがつて、被告人らは、予告電話が通じなかつたり、不十分である場合には、
前述したとおり、本件爆弾の規模(多量の爆薬を使用した大型爆弾で、極めて威力
の強烈なものであつて、爆心地付近はもとより、相当広範囲にわたつて、現在する
不特定多数人を殺傷するに足りる威力を有していたこと)、爆発時刻及び仕掛け場
所(近代高層ビルが立ち並ぶaビジネス街の一角に位置するB1ビルとB9ビルと
の間の通称a仲通りの歩道上であり、同所は、ウイークデーの昼休みの時間帯に
は、周辺のビルに勤務するサラリーマンなどの通行でにぎわうところであるが、爆
弾を仕掛けたB1ビル正面玄関前は特に人の出入りの多い場所であること)などか
らみて、爆心地周辺はもちろん、その付近の路上、ビル内で爆弾の爆発力によつて
死亡する可能性のある範囲内に現在する不特定多数の人を死亡するに至らせうるこ
とは十分認識していたものといわなければならない。
 もつとも、本件爆弾の表面に危険物である旨の警告表示を行つたことは所論のと
おりであるが、関係証拠によれば、右表示は、包装した本件爆弾を被告人A1らが
日中運搬したり、道路上に仕掛けたりする際に、他人から見られてもあやしまれな
いよう納品中の商品のように見せかけるための偽装手段であつて、通行人等に危険
物であることを警告して避難させるための手段としてなされたものでないことは、
原判決の説示するとおりであり、また、缶体に貼りつけた危険物の表示も、直接外
部から認識できるものではないから、このようなものによつて警告の効果があると
は到底考えられないA4の昭和五〇年六月一六日付検察官調書謄本参照)。
 以上述べたところから明らかなように、被告人らが、本件爆弾の爆発前に予告電
話をしたことや、本件爆弾の表面に危険物である旨の警告表示を行つたことは、被
告人らの本件被害者らに対する殺意を否定する根拠とはなりえないものである。
 また、本件後に、被告人らが公表したいわゆる声明文についても、原判決は、
「右声明文自体が直接被告人らの殺意を推定させるものではない」としたうえで、
これを被告人A1の原審における最終陳述と「B8」等の記載内容とともに、被告
人らの反日武装闘争の一環としての企業爆破攻撃についての考え方を推認する一資
料としているに過ぎないことは原判文に照らし明らかであるから、右声明文につい
ての原審の証拠評価は、所論の指摘する「被告人らが組織の志気に影響があるのを
おそれたため、B1爆破事件の作戦上の失敗と死傷者に対する哀悼の気持を率直に
公表することができずに、開きなおりの闘争宣言を内容とする声明文となつてしま
つた」との点を考慮に入れてみても、かくべつ誤りがあるとは考えられない。
 結局、(3)の点に関する所論は採用することができない。
 (4) 本件爆弾の爆発による負傷者のうち一〇四名の者については死亡の可能
性が全くなかつたとの点について
 所論は、爆心から半径約二〇メートルの圏外にいた者(半径二〇メートルの圏内
にいた者についても、自動車などの障害物があつた場合は同様に解する。)につい
ては、弾体片の直撃で死亡する危険性はなく、また、ビル上部から落下するガラス
破片による負傷者の死亡する可能性についても、爆風の衝撃で完全に失神した者、
爆風で完全に転倒して無防備の状態になつた者、失神や転倒をしなかつたが、落下
ガラスで現に生命にかかわる重傷を負つた者などを除き、その他の者はガラスの落
下と同時に退避行動がとれるので死亡の危険性が少なく、現にガラス落下が原因と
なつて死亡した者は存しなかつたし、ビル内にいた者についても、爆心から半径二
〇メートルの圏外にいた者及び半径二〇メートルの圏内にいたが爆心に直面しない
者は、弾体片と同程度の勢力をもつガラス破片によつて直接致命傷を受ける危険性
はなく、更に、負傷者の傷の深さからみて、一〇ミリメートル以上で、かつ、その
傷が内臓、中枢神経、動脈を損傷した者のほかは死亡する可能性はなかつたと考え
られるので、結局、原判決の別紙負傷者一覧表番号7、13、16、ないし18、
20ないし23、25、26、28、29、36ないし38、40、42、43、
45、48、49、62ないし64、66、68ないし70、72ないし78、8
2、83、85ないし95、98ないし123、125ないし149、151ない
し153、160の一〇四名の者については死亡の可能性は全く認められない、と
主張する。
 しかしながら、関係証拠によれば、本件爆心地から南に約二〇メートル離れたB
1ビル前の歩道上を歩いていたC5は、爆風で飛ばされ頭部を打つて右大脳挫砕に
より死亡したこと(原審証人E1の供述及び鑑定医D2の原審証言並びに同人ほか
一名作成の鑑定書参照)、爆心地から南へ六十数メートル離れたB12ビル西側歩
道上にいたC6(原判決添付の別紙負傷者一覧表番号158、以下負傷者につき、
同表の番号だけを略記する。)の左足に受けた爆創は、貫通してその傷口がぱつく
りと開いていたほどであつたこと、右遊川のいた地点より本件爆心地に近く、か
つ、爆心から半径二〇メートルの圏外にいた者でも重傷を負つた者(番号10ない
し12、14、15、19、32、33、35等)が多数いることなどの事実が認
められるから、「死者の出た爆心地付近はもちろんのこと、B1ビルとB9ビルの
間を通ずる通称a仲通りのうち、B1ビル玄関前の爆心地から南北に少なくとも約
五〇メートルの範囲内の路上にいた人々は、本件爆弾の爆発による爆風、飛散する
弾体及び損壊した建物等の破片によつて死亡する可能性のある範囲内にいたものと
認められる」旨の原判決の説示は、相当として是認することができる。もつとも、
本件負傷者のうちに、前記a仲通りの道路上に駐車中のトラツクの蔭にいたため、
大きな被害を受けなかつた者(番号7、25、26、28、29)、あるいは右道
路上で被害を受けたが、たまたま傷害の程度が軽かつた者(番号13、16ないし
18、20ないし23、36ないし38、40、42、43、45、48、49)
が存することは、所論指摘のとおりであるが、右の事実は、本件爆弾の爆発によつ
て現実に生じた建物等の損壊の状況及び付近にあつた自動車の破損状況、被害者の
死体の損傷状況、負傷被害者の負傷した地点及び負傷の状況等と対比すると、本件
爆弾の爆発による被害者の死亡の可能性についての前記判断を左右するに足るもの
とは考えられない。
 また、本件爆心地から約一〇〇メートル以上も離れているB15ビルの東側歩道
上を歩行していたC7(番号155)は、本件爆発によつて破損し大量に落下した
ガラス片を左側頭部に受けて裂傷を負い、一五針も縫合しており、入院当初二、三
日は意識も断続的であり、入院一週間を含めて加療四週間を要する頭部裂傷の重傷
を負つたこと、爆心地から約七〇メートル前後も離れたB11ビル北側歩道上を歩
行していたC8(番号163)も、本件爆発により猛烈な勢いで落下してきたガラ
ス片を全身に浴び、その一部が頭部に突き刺さつて骨にまで食い込み、左頭頂骨開
放性陥没骨折の傷害を負い、合計五七針も縫合し、入院三二日間を含み、加療四か
月を要したこと、同所歩道上にいたC9(番号164)、C10(番号165)
も、滝のように降つてくる落下ガラス片によつて原判示のような重傷を負つたこ
と、B9ビル北側歩道上にいたC11(番号156)、C12(番号157)も、
体が吹き上げられるような強い風圧を受け、雨のように降り注ぐガラス破片を受
け、それぞれ原判示のように腱断裂を生ずるほどの創傷を負つたこと、B11ビル
東側歩道上にいたC13(番号162)も、落下するガラス片によつて、実際上は
約五〇日の通院加療を要する右背中部より左横隔膜に達する裂傷を負つたこと、B
12ビル西側歩道上にいたC6(番号158)は、ガラス破片が市のように落下し
たのを目撃したこと、B1ビルとB9ビル間においては、車道上の自動車のトラン
クにガラス片が突き刺さつていること、B9ビル東側歩道上にいたC14(番号3
7)の所持していた鞄を落下ガラス片が突き抜けていること、同人や同ビル東側歩
道上にいたC15(番号45)は、破損ガラスが雨のように落下するのを目撃した
こと、などの事実も関係証拠により認められるから、「B15ビル東側路上、B1
1ビル北側路上、B9ビル北側路上、B11ビル東側とB12ビル西側間の路上、
B1ビル西側とB9ビル東側の間の路上等にいた被害者らは、本件爆弾の爆発によ
つて破壊されて落下したビルの窓ガラス片により死亡する可能性のある範囲内にい
たものと認められる」旨の原判決の説示も、相当として是認することができる。な
お、本件負傷者のうちに、ガラス片による傷害の程度が軽かつた者(番号160)
が存することは所論の指摘するとおりであるが、右の事実は、前記負傷被害者らの
負傷した地点、負傷の状況及びその程度等と対比すると、本件爆弾の爆発により破
壊されて落下したビルの窓ガラス片による被害者の死亡の可能性についての前記判
断の妨げとなるものとは考えられない。
 更に、三菱重エビル一階玄関ホール付近及び一階喫茶室にいて創傷を受けた被害
者についてみると、これらの場所は、爆心地に近く、死者四名のほか重傷者一三名
(番号50ないし61、65)を出したところであり、同ビル玄関付近での建物の
損壊状況等をあわせ考えると、同所に居合わせた被害者らは、爆弾の爆発力によつ
て死亡する可能性がある場所にいたと認められることは言うまでもなく、所論指摘
の負傷者(番号62ないし64、66、68ないし70、72ないし78)につい
ても、たまたま柱等の蔭にいたとか、あるいは爆心に面した窓ガラスにブラインド
が掛けてあつたとかの事情により、軽い傷害を負つたにとどまつたというにすぎな
いから、右の認定の妨げになるものとは考えられない。
 また、B1ビルよりB16ビルへ通ずる中廊下にいて創傷を受けた所論指摘の被
害者C16、同C17(番号82、83)についてみると、同女らはそれぞれ原判
示のような創傷を受けたが、特に、C17は、爆心地の方向よりものすごい勢いで
叩きつけるようにガラスが当つたと述べており、C16も、うしろから爆風ととも
にガラスが吹きつけて、首、耳のうしろ辺に三針縫う創傷を負つたことは関係証拠
により認められるから、これに、前記中廊下における本件爆弾の爆発による被害状
況(特に、喫茶店F1前付近にいたと認められるC18、C19、C20《番号7
9ないし81》のうち、C18は加療一年一か月を要する右坐骨神経断裂等の重傷
を負い、C19も原判示のような加療八〇日を要する重傷を負い、C20は降りか
かつた内装材や飛んできたガラス片を受けて原判示のような加療約一か月を要する
創傷を負つたが、二ないし三・五センチメートルのガラス破片が食い込んだ同人の
頬の傷はほとんど頸動脈に達するほどのものであつたこと)をあわせ考えると、
「前記中廊下にいた被害者は本件爆弾の爆発による爆風、弾体の破片、損壊した建
物、ガラスの破片等によつて死亡する可能性のある範囲内にいたものと認められ
る」旨の原判決の説示は相当として是認することができる。
 次に、B1ビル及びB9ビル内にいて爆発によつて飛散した窓ガラス等の破片を
身体に受けて創傷を負つた者についてみると、所論の指摘する負傷者(番号85な
いし95、98ないし123、125ないし149、151ないし153)は、い
ずれも、その負傷の部位がたまたま身体の枢要部を外れ、致命傷とならなかつたも
の、あるいは、とつさに両手で顔や頭を覆つて壁際にしやがみこんだり、机の下や
柱の蔭にかくれたりしたため、致命傷となるような傷害を負わなかつたものである
から、本件爆弾の爆発により破壊されて落下ないし飛散した窓ガラス片により死亡
する可能性のある範囲内にいた者ではないと断定することはできないし、かえつ
て、関係証拠によれば、B1ビル及びB9ビルの爆心地に面した窓ガラスは、ほと
んどが破壊されており、その一部が室内に飛散し、その余のガラス片は路面が見え
ないほど道路一面に落下し、これらのガラス片の中には、大きいものや、破砕面の
鋭利なものも相当存在していたことが認められるから、このようなガラス片が身体
の枢要部に突き刺さり、致命傷となるおそれのあることは言うまでもないところで
ある。現に、B1ビル二階B17課にいたC21(番号96)は、頭を何かで打撃
されたような衝撃を受け、天井から内装材が降り落ちてきた旨供述しており、五〇
か所受傷して一〇針縫合し、三六日間の加療を要する原判示創傷を負い、また、同
ビル五階にいて窓を背にしていたC22(番号124)は、机もろとも前に倒れる
ような感じと腹部に火傷したような痛みを感じ、約一か月の加療を要する左側腹部
切創を負つたが、その深さは約八センチメートルに及ぶもので重傷であつたこと、
B9ビル七階にいたC23(番号150)は、爆発の瞬間頭を何かでひどく叩かれ
たような衝撃を受け、加療約六週間の原判示創傷を負つて合計三〇針ぐらい縫合し
たが、特に左手指の腱は完全に切れたこと、など前記ビル内にいた者が相当な重傷
を負つているし、更に、B1ビル二階以上及びB9ビルの各階の爆心地に面した窓
の近くに居た者の多くが、爆発によつて飛散した窓ガラス等の破片を身体に受けて
原判示のような創傷を負つているのである。
 右に述べたところから明らかなように、本件爆弾は、単に爆心地付近に現在した
人を殺害するにとどまらず、窓ガラス等の破損により、その破片が落下ないし飛散
する付近に現在する不特定多数の人をも死亡させる危険性があつたものといえるか
ら、本件爆弾の爆発による負傷者のうち一〇四名の者について死亡の可能性が全く
なかつたとの所論は、到底採用することができない。
 以上(1)ないし(4)において詳述したとおり、被告人A1、同A2らが本件
爆破に用いた爆弾の構造、大きさ及び個数、本件爆弾の爆発により現実に発生した
物的・人的な損害の結果、同被告人らの有していた爆弾に関する相当高度な知識並
びに本件爆弾の威力についての認識、本件爆弾を製造した当初の使用目的、本件爆
弾は、同被告人らが反日武装闘争の一環として海外進出企業の爆破を目的として白
昼、都心の高層ビルが立ち並ぶaビジネス街の道路上に仕掛けて爆発させたもので
あること、同被告人らが爆発によつて破壊されたビルの窓ガラス破片の落下により
通行人等に創傷を与える可能性のあることを十分認識していたこと、予告電話等に
よつては爆心地付近の路上及びビル内に現在する不特定多数人を退避させる可能性
が極めて少なく、同被告人らもこのことを認容していたと認められること等を総合
すると、被告人両名は、本件爆弾の爆発によつて死亡する可能性のある本件爆発地
点及びその周辺一帯に現在する不特定多数人を死亡に至らせうることを認容してい
たものと認められるから、原判示第五の事実(B1爆破事件)につき、右被告人ら
に、原判示C1を除くその余の被害者に対する殺意を認めた原判決の事実認定に誤
りはなく、この点に関する論旨は理由がない。
 (三) 「B1事件につき、負傷者C1について傷害罪を適用した原判決は法令
の適用を誤つている」(控訴趣意第一の三)
 所論は、要するに、原判決は、被告人A1、同A2の原判示第五の爆発物の使用
とC1に対する傷害の所為につき、爆発物取締罰則一条の罪と傷害罪が成立し、両
者は観念的競合の関係にあると判示しているが、同罰則一二条は少なくとも傷害罪
については法条競合の関係にあることを規定したものと解すべきであるから、C1
に対する傷害の罪の成立を認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな
法令適用の誤りがある、というのである。
 <要旨第一>そこで、考えてみるのに、爆発物取締罰則一条の規定は、爆発物の使
用がその使用目的いかんによつては国家社会に重大な危害を与える危険
性のある点に着目し、いやしくも他に危害を加える目的をもつて爆発物を使用した
ものに対しては、その治安を妨げると、人の身体財産を害するとを問わずこれを処
罰することによつて、人の身体財産のみならず、我が国社会の平和秩序を保護する
ことを目的としたものであり、同罰則一条の目的で爆発物を使用すれば、直ちに同
罰則一条の罪が成立し、その目的の達成は右の罪の成否とはなんら関わりがないの
であるから、同罰則一条の罪と傷害罪との間には、犯罪構成要件の仕組み、保護法
益、罪質、処罰の実質的理由等の点において重要な一般的差異が存するものといわ
なければならない。したがつて、爆発物取締罰則一条の罪と傷害罪が一個の行為に
よつて行われる場合があるとしても、その間にいわゆる法条競合の関係があると解
するのは相当でなく、両者は、各所定の構成要件を充足することによつて別個独立
に成立することを妨げられるものではないというべきである。
 そうだとすれば、原判決が、被告人A1、同A2の原判示第五の爆発物の使用と
C1に対する傷害の所為につき、爆発物取締罰則一条の罪と傷害罪の成立を認め、
両者は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるとして同罰則一二条により一罪
として同罰則一条の罪の刑で処断することとする旨判示したのは正当であるから、
原判決に所論のような法令適用の誤りは存しない。論旨は理由がない。
 (四) 「B2本社ビルB3事件について被告人A1に殺人未遂の故意の成立を
認めた原判決には判決に影響を及ぼすべき事実の誤認がある」(控訴趣意第一の
四)
 所論は、要するに、原判決が、判示第九の一の事実(B2本社B3爆破事件)に
つき、被告人A1に殺意があつたと認定したのは事実を誤認したものである、とい
うのであつて、その論拠として、「1」爆発時刻を従業員の退社後である午後八時
としたこと、「2」予告電話を爆発の二〇分前にかけていること、「3」爆弾の爆
薬の量を少なくしたこと、「4」当初、B2の重役テロを検討したが、その家族等
を巻きぞえにするおそれがあるとしてこれを中止し、企業施設の破壊を目的とする
本件爆破に変更したものであること等の諸点を挙げている。
 しかしながら、記録及び証拠物を調査し、当審における事実取調べの結果をも加
えて検討すると、原判決が「B2本社B3爆破事件における殺意について」の項で
説示するところは、すべて相当として是認することができる。なお、所論にかんが
み、若干、付加説明する。
 まず、所論は、爆発時刻を従業員の退社後である午後八時としたことをもつて、
殺意がなかつたとする論拠の一つとしているが、原判示のとおり、B2本社ビル
は、間口三八・四メートル、奥行き三一・五メートル、鉄骨造りの地上一八階のビ
ルであつて、右ビル内には、B2の社員のみでなく、多数の者が勤務しており、夜
間でも警備員あるいは残業の社員がいることは、被告人A1らも下見等によつて当
然予測していたものと認められ、現に、「B7」「B18」「B19」の三者会談
で爆発時刻を午後一二時とする当初の案が午後八時に変更されたのは、仕掛けと爆
発の間にあまり時間があると発見されるおそれがあるということによるものであつ
た点を考えあわせると、被告人A1らは建物内で残業している者あるいは夜間の巡
視者等のいることを認識予見していたものといつてよい。もともと、爆弾は人を殺
傷する機能をもつたものであるから、爆弾を前記B2本社ビル内のB3B20部B
20室に仕掛けて爆発させることは、常に死傷者の発生を随伴するものともいえる
のであつて、同被告人らにおいて人の死傷の結果発生を回避するための特段の措置
を講じた場合でないかぎり、その死傷の結果を当然認容していたものと認めざるを
えないのである。この点について、被告人A3は、検察官に対し「午後八時といえ
ば、それほど遅い時刻でもないので、ビル内には相当数の人がいると考えたが、B
2の社員であれば爆破に巻き込まれ、最悪の場合死ぬようなことがあつてもやむを
えないと考えていた」旨供述しているが(被告人A3の昭和五〇年六月二二日付検
察官調書参照)、本件B2本社ビルB3・B27等爆破の評議に加わつた被告人A
1についても、原判決の説示するとおり、同様の考えをもつていたものと推認して
も、かくべつ不合理であるとは考えられない。
 次に、予告電話の件についてみると、関係証拠よれば、被告人A1らの「B7」
グループと「B18」及び「B19」との三者の間において、予告電話をB2の管
理室にかけることは、録音されたり、逆探知されるおそれがあるというのでやめる
ことにし、B2本社ビルの管理とは全く関係のない地下の喫茶店にかけることにし
たこと、その予告電話の内容も、具体的な仕掛け地点、爆発時刻、爆弾の形状など
重要な点については通告していないことなどの事実が認められ、二〇分間で予告電
話の相手方が適切に対処することは到底不可能であることを考えあわせると、右被
告人らは、予告電話によつてB2本社ビル内に現在する不特定の人を確実に退避さ
せて被害が及ぶことを回避できると考えていたものとは認められない。
 また、爆弾の爆薬の量の点についてみても、本件爆弾は、原判示のように、容量
約二・五リツトルの明治粉ミルクの空缶に塩素酸ナトリウム約五〇パーセント、黄
血塩と砂糖各約二五パーセントの割合で混合した爆薬約二・八キログラム及び塩素
酸カリウム約五〇パーセント、黄血塩と砂糖各約二五パーセントの割合で混合した
爆薬約二〇〇グラムの総計約三キログラムの爆薬を詰め、これに手製雷管を装着し
た手製爆弾(缶体の外囲をパテで固めるなどして威力を増すように工作を施したも
の)であつて、その爆発の結果からも明らかなように(約一六三平方メートルのバ
ンチテレツクス室内の天井は全部破損して落下し、室内の什器、備品類もことごと
く破損、倒壊あるいは横転、飛散している。)、威力の強大なものであつたこと、
被告人A1らにおいて、絶対に人を殺傷しない程度の安全な爆薬の量を決定したう
えで本件の爆弾を製造した形跡もないこと等の事情に照らすと、所論の爆薬の量の
点は、本件殺意を否定する論拠とはなりえないものといわなければならない。
 なお、本件B2本社B3爆破の計画を決定する過程に所論のような計画変更の事
実があつたからといつて、既に述べたような本件爆弾を仕掛けた状況等に照らし、
右爆破事件について被告人A1の殺意を認定する妨げになるものとは考えられな
い。
 以上のとおりであるから、被告人A1に本件につき殺意があつたと認めた原判決
に所論のような誤りは存しない。結局、論旨は理由がない。
 (五) 「B2B4作業所爆破事件における殺意の不存在について」(控訴趣意
第一の五)
 所論は、要するに、原判決が判示第一一の事実(B2B4作業所爆破事件)につ
き、被告人A3に殺意があつたと認定したのは事実を誤認したものであるというの
であつて、その理由として、本件行為の目的と態様、犯行に至る経緯と実行過程、
爆発物の威力と被害の客観的状況、被告人A3の各供述調書と公判廷供述の信用性
の問題等を総合的に考察すると、被告人A3に本件行為時に人が現在しているとの
表象、認識はなく、結果発生についての予見可能性は存しなかつたこと、かりに人
が現在している可能性の認識があつたとしても、その人を殺すに至る結果の発生ま
で予見しえなかつたと解されることを挙げている。
 そこで、記録及び証拠物を精査し、当審における事実取調べの結果をも加えて検
討すると、原判決が「B2B4作業所爆破事件における殺意について」の項で説示
するところは、相当として是認することができる。
 以下、所論の指摘する事項について若干の説明を加えることとする。
 所論は、本件行為の目的と態様について、B2B4作業所爆破の目的は、B2の
過去における悪業の責任を問い、現在のやり方に反省を求めるとともにこれら悪業
に対し警告をするため、企業の物的施設、設備を破壊することにあつたから、現場
の下見調査等も右の観点から集中的に行われ、使用する爆弾の爆薬にも建物を壊す
だけの威力があれば足ることもあつて、黄血塩を用いていないこと、仕掛ける場所
については、本件作業所の床下に仕掛けることに被告人A3、A8、A9の三人の
間で話し合つて決めたが、具体的な仕掛け場所は実行者のA8に一任されていたか
ら、本件現場の客観的状況からみて、実行者の判断で爆弾が事務室の床下に仕掛け
られたならば、宿直室内部まで破壊され本件被害者が損傷を受けるということはあ
りえなかつたことなどを主張する。
 しかしながら、関係証拠によれば、本件B2B4作業所爆破事件は、被告人A3
らの東アジア反日武装戦線「B18」グループが、爆弾による反日武装闘争の一環
として海外に進出している建設企業であるB2に対する爆破攻撃を目的として敢行
した犯行であつて、被告人A3を主謀者として、あらかじめ数回にわたつて現場の
下見調査を行い、検討、協議を重ねて綿密な計画をたて、手製爆破の製造など周到
な準備を整えたうえ、被告人A3の指示のもとに、爆弾の運搬、仕掛け等の役割を
分担して実行したものであること、本件爆弾は、容量一・八リツトルのボイル油缶
を缶体とし、これにデゾレートと砂糖の混合爆薬約二キログラムを入れ、「B7」
グループから供与を受けた手製雷管を起爆装置とし、被告人A3らにおいて爆発の
威力を強めるため缶体の全面をコンクリートで固めて補強したものであること、本
件爆弾の爆発によつてB2B4作業所の南西側に位置する当直室(和室六畳間)は
その床から天井、屋根に至るまで原形をとどめないほど完全に破壊され、この当直
室で就寝中の被害者C24が瀕死の重傷を負うなど重大な結果が発生した状況など
からみても明らかなように、その威力は強大なものであつたこと、被告人A3は日
雇人夫として建設現場等で働いた経験から、現場の事務所には宿直者がいることを
知つていたばかりでなく、本件の現場事務所にも、下見をした際、夜九時ころまで
人がいるのを見ていたので、宿直者のいる可能性があると考えていたこと、本件爆
破の一週間くらい前の謀議の際、予告電話をかけるべきかどうかについて、被告人
A3は、一般の日雇労働者は夕方には帰るから、夜間事務所にいるのは現場の監督
的立場にある者であるが、このような者は会社の日雇労働者の搾取に手を貸す者で
あるから、爆破に巻きこまれても仕方がない旨の意見を述べ、A9、A8の了解を
えて、予告電話をかけないことにしたものであること、本件爆弾の仕掛けを担当し
たのはA8であるが、その仕掛け場所は同人に一任されていたものではなく、被告
人A3が、下見の結果、事務所の建物の床下が一五センチメートルくらいあいてい
たのを認めて床下に仕掛けるのが適当であると考え、右A8に指示したものである
こと、などの事実が認められ、これらの事実を総合すれば、原判決の「本件B2B
4作業所爆破事件において、被告人A3には判示認定のような殺意があつたものと
認められる」旨の説示は相当として是認することができる。したがつて、この点に
関する所論は採用できない(なお、被告人A3の検察官調書中には、一部供述の変
遷している部分の存することは所論指摘のとおりであるが、他方、「B18」グル
ープの活動状況、協議の模様など捜査官にとつて全く知りえない事項についての供
述等も含まれており、取調官の誘導等による事実に反する供述であるとの疑いはな
いから、十分信用できるものといつてよい。これと異なる同被告人の公判廷の供述
は関係証拠と対比し措信できない。)。
 もつとも、原判決は、本件爆弾の爆薬について、「除草剤デゾレート約五〇パー
セント・黄血塩と砂糖各約二五パーセントの割合で混合した爆薬」と認定判示して
いるが、関係証拠によれば、本件爆弾の爆薬の組成分と配合比はデゾレート三に対
し砂糖二の割合による混合爆薬であることが認められるから、原判決に本件爆弾の
爆薬の成分に関する事実誤認が存することは所論の指摘するとおりである。しかし
ながら、本件爆弾の爆薬の組成分と配分比の認定に所論のような誤りがあつても、
「爆発物」にあたる爆弾であることには変りがないから、右の誤りは判決に影響を
及ぼすことが明らかなものとはいえないし、本件爆弾の威力は爆発によつて現実に
生じた現場の損壊状況などからみても明らかなように強大なものであつたのである
から、右の誤りは、本件爆破事件について被告人A3の殺意を認める妨げになるも
のとも考えられない。結局、論旨は理由がない。
 2 「原判決には憲法の解釈、法令適用の誤りがあり、判決に影響を及ぼすこと
が明らかである」との主張について(控訴趣意第二の一、二)
 (一) 「死刑制度は憲法一三条、三一条、三六条に違反する」(控訴趣意第二
の一)
 所論は、要するに、死刑制度は憲法一三条、三一条、三六条又は憲法の精神に違
反するのに、原判決がこれを合憲としたうえ、被告人A1、同A2に対し死刑の言
渡しをしたのは、右各条の解釈を誤つたものであり、原判決には法令適用の誤りが
あるというのであつて、その論拠として、「1」死刑は残虐な刑罰であるから憲法
三六条により禁止されていること、「2」死刑制度は国家目的のため国民の生命を
犠牲にするものであるから、憲法の精神に反し、また、「公共の福祉」の「公共」
の中には犯罪者も含まれているので、犯罪者を死刑にすることは公共の福祉にも合
致しないから憲法に違反すること、「3」死刑には必ずしも一般予防の効果がな
く、応報を刑罰の根拠とする考えは近代民主主義国家における刑罰についての基本
的考えから清算されつつあり、むしろ、教育刑ないし社会的予防の見地からは、犯
罪者を社会から隔離すれば足り、死刑をもつて臨む理由がないこと、「4」裁判に
おける認定は、証拠によつて認定される事実にすぎず、真実とは必ずしも一致する
ものではないから、絶対刑ともいうべき死刑を科すべきではないこと、「5」世界
の趨勢からみても、死刑制度は漸次廃止の方向に向いつつあること等の諸点を挙げ
ている。
 しかしながら、刑罰としての死刑そのものが憲法三六条にいわゆる残虐な刑罰に
該当するものでないことは、最高裁判所の判例(昭和二三年三月一二日大法廷判
決・刑集二巻三号一九一頁、昭和三〇年四月六日大法廷判決。刑集九巻四号六六三
頁)とするところであり、特に、昭和二三年三月一二日の最高裁判所大法廷判決
は、死刑は、尊厳な人間存在の根元である生命そのものを永遠に奪い去るものであ
るが故に、刑罰のうちで最も冷厳な刑罰であり、また、まことにやむをえざるに出
ずる窮極の刑罰であることを認めつつ、憲法一三条は、すべて国民は個人として尊
重せられ、生命に対する国民の権利については、立法その他国政の上で最大の尊重
を必要とする旨を規定すると同時に、公共の福祉という基本的原則に反する場合に
は、生命に対する国民の権利といえども立法上制限ないし剥奪されることを当然に
予想しているものというべきであり、更に、憲法三一条によれば、国民個人の生命
の尊重といえども、法律の定める適理の手続によつて、これを奪う刑罰を科せられ
ることが明らかに定められていることを根拠として、「憲法は現代多数の文化国家
におけると同様に、刑罰として死刑の存置を想定し、これを是認したものと解すべ
きである。言葉をかえれば、死刑の威嚇力によつて一般予防をなし、死刑の執行に
よつて特殊な社会悪の根元を絶ち、これをもつて社会を防衛せんとしたものであ
り、また、個体に対する人道観の上に全体に対する人道観を優位せしめ、結局社会
の公共の福祉のために死刑制度の存続の必要性を承認したものと解せられるのであ
る。」と判示しているのである。そして、右大法廷判例を踏襲した昭和二四年八月
一八日最高裁判所第一小法廷判決(刑集三巻九号一四七八頁)は、弁護人が「刑の
目的は痛苦の裡に反省の念を起さしめ、之によつて犯したる罪を悔い改め、本然の
姿に帰らしむるのが目的である……罪あり、死に当る、既に絞首台上の露と消ゆ、
何を以つてか改過遷善の途を講ずるの余地あらんや。」として、死刑の適用は違憲
であると主張するのに対し「所論のごとく自由刑の目的の一つに過ぎない個人に対
する痛苦、個人の改過遷善等のみをもつて他の種の一切の刑罰の目的効果を推量す
ることも許すべきではない。」とし、更に、「その科すべき刑罰の質量は、その科
せらるべき人為である犯罪の質量に応ずべき相対的のものであることを当然とし」
「他人の生命を尊重せずして故意にこれを侵害した者は、その自己の行為につき、
自己の生命をも失うべき刑罰に処せられる責任を負担するものといわざるを得な
い。」と判示して弁護人の主張を排斥しており、また、昭和二七年一月二三日最高
裁判所大法廷判決(刑集六巻一号一〇四頁)は、「殺人は尊厳な個人の生命を奪う
ものであつて社会的人間生活の安全を根底から破壊する憎むべき反社会的行為であ
る。今日の時代と環境とにおいて、殺人罪に対し社会の秩序と公共の福祉を護るた
めに刑罰として死刑を科する場合のあることは、必要であり是認さるべきであると
言わなければならない。」と判示し、その後も最高裁判所は累次の判決において死
刑が憲法三六条に違反しないことを宣明しており(例えば、昭和二八年一一月一九
日第一小法廷判決・刑集七巻一一号二二二七頁、昭和三〇年四月六日大法廷判決・
刑集九巻四号六七五頁、昭和三三年四月一〇日第一小法廷判決・刑集一二巻五号八
四〇頁、昭和三六年七月一九日大法廷判決・刑集一五巻七号一一一二頁、昭和五二
年四月二六日第三小法廷判決・裁判集刑事二〇三号六一三頁など多数がある。)、
この点は判例として確立しているところといつてよい。
 右に述べたような最高裁判所の判例によつて確立された我が憲法の解釈について
は、所論の指摘する死刑制度に関する国内及び国際的な論議・思潮の推移等を勘案
してみても、今日これと異なる見解をとらなければならない特段の事由を見いだす
ことはできないから、結局、所論は採用することができない。
 したがつて、被告人A1、同A2に対し死刑の言渡しをした原判決に所論のよう
な憲法の解釈ないし法令適用の誤りは存しないから、論旨は理由がない。
 (二) 「爆発物取締罰則(以下、本罰則という。)の適用について」(控訴趣
意第二の二の(一)ないし(五))
 (1) 本罰則の形式的無効論(控訴趣意第二の二の(一)(二))
 所論は、要するに、本罰則は昭和二二年法律七二号一条によつて昭和二二年一二
月三一日限り無効であるから、原判決が被告人A1、同A2、同A3らの原判示所
為につき本罰則を適用したのは誤りである、というのである。
 しかしながら、本罰則は、旧憲法七六条一項により、憲法に矛盾しない現行の法
令であつて遵由の効力を有するものと認められており、明治四一年法律二九号及び
大正七年法律三四号という旧憲法上の法律の形式をもつて改正手続が行われている
のであるから、現行憲法施行の時点で「法律」と同一の効力を有するものであつた
ことは明らかである。所論指摘の昭和二二年法律七二号の一条は「命令」の効力を
規定したものであつて、本罰則について適用の余地はないから、これと異なる見解
を前提として本罰則の無効をいう所論は到底採用することができない。なお、本罰
則が現行憲法下において法律の効力を有することは最高裁判所の判例(昭和三四年
七月三日第二小法廷判決・刑集一三巻七号一〇七五頁参照)の判示するとおりであ
る。
 結局、この点に関する論旨は理由がない。
 (2) 本罰則の実質的無効論(控訴趣意第二の二の(一)(三))
 所論は、要するに、本罰則は、その構成要件が不明確で、とりわけ「治安を妨げ
る目的」という概念は漠然としているから憲法一三条に違反し、また、合理的根拠
なしに苛酷な刑を定め、あるいは本罰則三条以下の各規定が近代刑法の基本原理と
全く相反しているなど、憲法の保障する自由と人権を不当に侵害するものであるか
ら、憲法一一条、一二条、一三条、一九条、二一条、三一条等に違反して無効であ
るのに、原判決が被告人らの原判示所為につき本罰則を適用したのは誤りである、
というのである。
 しかしながら、本罰則にいう「治安を妨げ」るとは、公共の安全と秩序を害する
ことをいうのであつて、その意味内容が不明確であるとはいえず、本罰則は、その
所定の目的をもつて爆弾を使用するなどした行為を罰するのであつて、その行為者
の思想、信条等を理由に処罰するものではないし、爆発物の有する強大な破壊力及
びそれによる公共の安全秩序、人の生命身体財産に対する侵害の危険性が大きいこ
とを考えれば、合理的根拠なしに苛酷な刑を定めているものとはいえない。また、
本罰則三条以下の各規定も同様の理由に基づくもので、立法政策の問題にすぎない
から、本罰則が所論の憲法各条に違反するものでないことは明らかである(昭和四
七年三月九日最高裁第一小法廷判決・刑集二六巻二号一五一頁、昭和五三年六月二
〇日最高裁第三小法廷判決・刑集三二巻四号六七〇頁参照)。
 なお、所論は、原判決が本罰則一条及び四条のみを判断の対象としたのは不当で
あるというが、被告人らの原判示所為につき適用されたのは本罰則一条及び四条で
あるから、具体的な審判の対象から離れてその他の規定の効力についてまで論ずる
ことは、現行司法制度のもとにおいて容認しうるものではない(昭和二七年一〇月
八日最高裁大法廷判決・民集六巻九号七八三頁参照)。したがつて、この点に関す
る所論も採用することが
できない。
 結局、論旨は理由がない。
 (3) 本件各行為における本罰則一条の目的の不存在(控訴趣意第二の二の
(四))
 所論は、要するに、原判決は、被告人A1、同A2の判示第一ないし第四の事実
(B21碑爆破事件、B22爆破事件、B23研究施設・B24各爆破事件、B5
B6特別列車爆破共謀事件)及び被告人A3の判示第一二の事実(B25B4橋工
事現場爆破事件)について、被告人らは、「治安を妨げる目的」をもつて爆発物を
使用し、あるいは使用することを共謀した旨認定し、また、被告人A1、同A2の
判示第五、第七の事実(B1爆破事件、B26爆破事件)及び被告人A1、同A
2、同A3の判示第九の一、二、第一一の事実(B2本社B3・B27各爆破事
件、B2B4作業所爆破事件)について、被告人らは、「人の身体を害する目的」
をもつて爆発物を使用した旨認定したが、被告人らには本罰則一条の「治安を妨げ
る目的」ないし「人の身体を害する目的」についての確定的認識が存在しなかつた
のであるから、原判決が右の目的があつたと認定したのは、事実誤認ないし法令適
用の誤りがある、というのである。
 そこで、検討してみるのに、関係証拠によれば、原判示第一のB21碑爆破事件
の興亜観音像等については、日本帝国主義の中国その他アジア諸国に対する軍事的
侵略の歴史を象徴するものとして、原判示第二のB22爆破事件のB22について
は、民間人を含めた日本帝国主義の朝鮮侵略の歴史を象徴するものとして、原判示
第三のB23研究施設・B24各爆破事件のB23研究施設についてはアイヌ文化
遺産の略奪を、また、B24については和人のG1政策をそれぞれ象徴するものと
して、いずれも、被告人らのいわゆる「反日思想」に基づく武装闘争の爆破対象に
選定したものであること、原判示第四のB5B6特別列車爆破共謀事件におけるB
6暗殺計画は、新旧帝国主義の頂点にあつて、過去における侵略戦争の最高責任者
であり、現在及び將来も侵略イデオロギーの支柱となるべきB6を日本人の側から
裁こうとしたものであること、原判示第一二のB25B4橋工事現場爆破事件につ
いては、同所での爆破は、日本帝国主義の侵略を物質的に支え推進した企業である
B2を爆破対象としてB2B4作業所と同時爆破を企てた際の爆弾が不発に終つた
ことから、再度新たな爆弾を仕掛けて両爆弾を爆発させたものであること、などの
事実が認められ、これに、原判決の説示するような各爆破事件に用いられた爆弾の
威力、使用の態様、仕掛け場所、声明文ないし通告文等により被告人らの爆弾闘争
の意図を明らかにしていること、及び本件爆弾闘争の目的、方法について、捜査段
階で、被告人A2は、「政治的、社会的に動揺を起こさせていく」「連続的にやら
ねば社会的に効果がうすい」旨供述し(同被告人の昭和五〇年六月四日付、同年五
月二八日付検察官調書参照)、被告人A3も、「企業に恐怖を与え、その従業員に
その誤りを悟らせるためのものであつたこと、その目的が革命機運の醸成にあつた
こと、三グループとも同じ意図であつたこと」「あまり間隔をおかずに連続してや
つた方が政治的な意味があると考えたこと」「B2B4作業所を攻撃した際は、東
京以外でやれば、同調部隊が各地にいることを示すことになるというA1の話がヒ
ントになつた」旨述べていること(同被告人の昭和五〇年七月八日付〔乙三の2
4〕、同年六月一二日付、同月一四日付検察官調書参照)などをあわせ考えると、
被告人らが「反日思想」に基づく爆弾闘争の一環として都市ゲリラ闘争を展開し、
爆弾によつて日本帝国主義の象徴となるものを破壊し、新旧帝国主義者の頂点にあ
るものとしてB6を暗殺しようとし、あるいは、海外進出企業を攻撃して政治的、
社会的不安を生じさせ、国民に動揺、恐怖、衝撃を与えようと意図していたことは
明らかであるから、被告人らが本件爆弾を使用ないしその共謀をするにあたり、治
安すなわち公共の安全と秩序を害する結果の発生することを認識し、かつ、これを
認容していたものといわなければならない。したがつて、被告人らに本罰則一条の
「治安を妨げる目的」があつたと認定した原判決に所論のような誤りは存しない。
 また、原判示第五、第七、第九の一、二及び第一一の事実(B1爆破事件、B2
6爆破事件、B2本社B3・B27爆破事件、B2B4作業所爆破事件)について
も、原判決の説示するような、被告人らの爆弾闘争についての考え方、本件爆弾の
威力及びこれを仕掛けた現場の状況等に徴すると、被告人らが本件爆弾を使用する
にあたり、爆発地点及びその周辺に居合わせた不特定の人に爆発による被害が発生
することを認識し、かつ、これを認容していたものと認められるので、本罰則一条
の「人の身体を害する目的」に関する原判決の認定に所論のような誤りは存しな
い。
 なお、所論は、かりに、前記爆破事件において爆弾の仕掛けを担当した者に未必
的殺意が認められるとしても、実行行為を分担しなかつた被告人については、「人
の身体を害する目的」に関する確定的認識が存在しないことは明らかであるから、
本罰則一条の目的を認めることはできない、と主張する。
 しかしながら、本罰則一条の「人の身体を害する目的」があるというためには、
爆発物の使用にあたり、爆発物の爆発により他人の身体が害される結果の発生する
ことを確定的に認識するまでの必要はなく、右の結果の発生することを未必的に認
識し、かつ、これを認容していれば足りると解するのが相当である(昭和五六年七
月二七日東京高裁判決・高刑集三四巻三三一頁参照)から、所論はその前提におい
て失当であり、採用することができない。
 結局、論旨は理由がない。
 (4) 本件各行為における本罰則一条の共謀共同正犯の認定の誤り(控訴趣意
第二の二の(五))
 所論は、要するに、原判決が、被告人A1、同A2はB26、B2本社B27と
同社B28工場、B29研究所、B30株式会社、B2B4作業所の各爆破事件に
ついて、また、被告人A3はB2本社B3と同社B28工場、B29、B30の各
爆破事件について、いずれも本罰則一条の共謀共同正犯の責任を免れないとしたの
は誤りであるというのであり、その論拠として、いわゆる三者会談は三グループの
連係を保つために開かれたもので、右会談では、攻撃対象の選定、具体的実行内容
等の犯行の重要な部分についての謀議が成立していないのであるから、実行したグ
ループ以外のグループの構成員については自己の犯罪意思を実行することを内容と
する謀議まで遂げたとは解しえないことを挙げている。
 そこで、所論にかんがみ、記録及び証拠物を精査し、当審における事実取調べの
結果をも参酌して、以下各事件について検討することとする。
 (ア) B26爆破事件について
 記録によれば、原判決は、B26爆破事件の共謀の点について「被告人A1は、
昭和四九年一二月初めころ、東京都新宿区内の喫茶店で『東アジア反日武装戦線B
19』所属のA5から、同人及びA10において、B26株式会社が、戦前はG2
として日本帝国主義の植民地支配の一翼を担い、戦後も、韓国やインドネシアに対
する企業侵略を行なつているとして、同社の本社を爆弾攻撃する計画である旨告げ
られるとともに、右攻撃に使用する起爆装置として雷管一個の交付方を依頼された
ため、そのころ『B7』グループの被告人A2、A4、A6らとともに、右『B1
9』の計画と依頼につき協議し、検討した結果、『B7』の全員がこれに賛成し
て、被告人A2らにおいて用意した雷管一個を、同年一二月四日ころ被告人A1が
右A5に手渡し、ここに、被告人A1、同A2は、『B7』所属のA4、A6並び
に『B19』所属のA5及びA10と、治安を妨げ、かつ、人の身体・財産を害す
る目的をもつて、右B26株式会社の本社に爆弾を仕掛けて爆発物を使用する共謀
を遂げ」と判示しているが、右共謀の成立に至るまでの経過については、関係証拠
により、そのとおり肯認することができる(特に、被告人A1の昭和五〇年六月一
二日付〔乙一の15〕検察官調書、被告人A2の昭和五〇年六月二〇日付〔乙二の
27〕検察官調書参照)。
 右の経過にかんがみれば、本件B26爆破事件は、被告人A1、同A2らの「B
7」グループのメンバーとA10らの「B19」グループのメンバーとが「東アジ
ア反日武装戦線」に結集し、いわゆる「反日思想」に基づく武装闘争の一環として
海外進出企業に対して爆弾闘争を行つたものであり、同被告人らにつき、B26株
式会社の爆破という共通の目的のもとに一体となり、互に他の者の行為を利用して
自己の犯意を実行に移すことを内容とする謀議が成立したものと認められることは
明らかである。現に、A4もB26の爆破について、検察官に対し「私達東アジア
反日武装戦線の一員であるB7にとつても、このB26に対する爆弾攻撃は、一連
の爆破攻撃の一環としてなされるもので自分達の闘争の一部であると考えていた」
旨供述していること(同人の昭和五〇年六月二〇日付検察官調書謄本三項)は、こ
の間の事情を言い表わしているものといつてよい(なお、A10が公表した声明文
に「東アジア反日武装戦線の一翼を担い、わがB19は、本日、B26を筆頭とす
る旧G2系企業の本拠地を爆破攻撃した」とある点を参照)。
 もつとも、本件爆弾を仕掛ける場所がA5ら「B19」グループの一存で、B2
6本社内部から同社一階駐車場前に変更されたことは、所論の指摘するとおりであ
るが、右の事実は、共犯者の間でB26本社を爆破することについての意思の合致
に欠けるところのない本件においては、被告人A1、同A2の本罰則一条の共謀共
同正犯を認定する妨げになるものとは考えられない。
 (イ) B2本社B3、同本社B27、同社B28工場各爆破事件について
 記録によれば、原判決は、B2本社B3、同本社B27、同社B28工場各爆破
事件の共謀の点について、「被告人A1、同A3、A10の三名は、昭和五〇年一
月末ころ、東京都内の喫茶店で『東アジア反日武装戦線』の『B7』・『B1
8』・『B19』の三者会談を開き、その席上、被告人A3からB2に対する爆弾
攻撃が提案され、同年二月三日ころ同都新宿区内の喫茶店『F2』で開かれた前記
三名の出席した三者会談において、B2が戦時中の木曽谷のダム工事にみられるよ
うに、朝鮮人や中国人捕虜を強制連行して酷使し、多数の死者を出し、現在でもマ
レーシアのテメンゴールダム建設では、現地の反動政権に協力し革命勢力に敵対し
ているとして、これを攻撃対象にすべき旨の被告人A3の提案を、全員の賛成で採
択するとともに、右B2に対する攻撃を『B7』・『B18』・『B19』の三グ
ループの共同作戦として実行すること、直ちに各グループはそれぞれ攻撃目標を選
定し準備にかかること等を決定し、そのころ、右出席者から右決定内容を各グルー
プの所属員に告げて全員の賛成を得、各グループは各別に下見などの調査を重ねた
うえ、同月二一日ころ同都内の喫茶店において、前記被告人A1、同A3、A10
の三名は、三者会談を開き、『B7』が『B2ビルチング』(以下、B2本社ビル
と略称する。)のB3を、『B18』が同B27を、『B19』がB2のB28工
場をそれぞれ同時に爆弾攻撃をすることを決め、さらに、同月二五日同都内の喫茶
店において、決行日は同月二八日、爆発時刻は午後八時とすることなどを決め、そ
の都度出席者から右決定内容を各グループの所属員に告げて全員の賛成を得、ここ
に、被告人A1、同A2、同A3は、A4、A6、A8、A9、A5、A10と、
B2本社ビルB3、同B27については、治安を妨げ、かつ、人の身体・財産を害
する目的をもつて、B2B28工場については、治安を妨げ、かつ、人の財産を害
する目的をもつて、右三か所にそれぞれ爆弾を仕掛けて爆発物を使用する共謀を遂
げ」と判示しているが、右共謀の成立に至るまでの経過については、関係証拠によ
り、そのとおり肯認することができる(特に、被告人A1の昭和五〇年六月二二日
付検察官調書、被告人A3の同年六月二二日付検察官調書、被告人A2の同年六月
二九日付検察官調書参照)。
 右の経過にかんがみれば、いわゆる三者会談において、「B18」グループの被
告人A3からB2を爆破対象企業とする旨の提案がなされ、「B7」「B18」
「B19」の三グループの共同作戦として実行することが決定され、出席者は右決
定内容を各グループの所属員に告げて全員の賛成をえたうえ、更に、分担場所の決
定、実行の日取り等の細目が協議され、実行に移されていることが明らかであるか
ら、被告人A1、同A2、同A3らの本件B2関係三か所爆破についての本罰則一
条の共謀が成立したものと認定した原判決に、所論のような誤りは存しない。
 もつとも、被告人A2は、本件B2本社B3、同B27、同社B28工場各爆破
事件について、実行行為の分担をしていないことは所論指摘のとおりであるが、被
告人A2は、昭和五〇年二月一日ころから同月一四日ころの間の数回にわたる被告
人A1、A4、A6らとの会合で、被告人A1から三者会談の内容の説明を受けて
これに賛成しているばかりでなく、同月一三日ごろには、被告人A1からB2関係
の爆破に用いる爆弾の起爆装置である雷管三個の製造を依頼されてこれを承諾し、
当時居住していたアパートB31荘で三日間ぐらいを費して、雷管三個を製造して
これを同月一七日ころ被告人A1に渡しており、更に、同月二二日ころ被告人A1
から爆破場所とその分担、爆破時刻の連絡を受けていることが関係証拠により認め
られるから、被告人A2は、B2関係三か所の爆破についての共謀共同正犯として
の責任を免れることはできないものといわなければならない。
 (ウ) B29、B30各爆破事件について
 記録によれば、原判決は、B29、B30各爆破事件の共謀の点について、「被
告人A1、同A3、A10は、東京都内の喫茶店で昭和五〇年三月一一日と同月二
五日の二回にわたり三者会談を開いたが、その席上、右A10から、『B19』で
は、B30株式会社社長を団長とするG3の韓国派遣を阻止するために、次に行な
う企業爆破の対象として右B30株式会社を選び、同年四月下旬とされている右G
3派遣の前に決行する計画である旨の説明があり、被告人A1に対して、右爆破攻
撃に使用する爆弾の起爆装置たる雷管の用意方依頼があり、さらに、同年四月一日
同都内の喫茶店で開かれた三者会談において、右A10から、B29研究所が、右
韓国のG3派遣の仲介をしているほか、日本企業の韓国・台湾・マレーシア等への
進出の仲介役をしているとして、これをB30株式会社と同時に爆破すべき旨の説
明があつたため、右爆破計画の説明を受け、雷管の用意方を依頼された被告人A1
は、右三者会談の都度『B7』グループ所属の被告人A2、A4、A6に対して、
右『B19』の爆破計画を説明したところ、韓国へのG3派遣は、同国への経済侵
略につながるとの見地から、全員がこれに賛成し、前記雷管を用意することとな
り、同月八日同都内の喫茶店で開かれた三者会談の席上で、被告人A1は、『B
7』グループは全員右爆破計画に賛成である旨告げるとともに、雷管二個をA10
に手渡し、被告人A3は、A10から説明を聞いた右『B19』の爆破計画をみず
から調査し、検討した末、右計画の意義を認めて、前記四月八日の三者会談で賛成
し、A10はA5の賛同を得、ここに、被告人A1、同A2、同A3は、A10、
A5、A4、A6と、治安を妨げ、かつ、人の財産を害する目的をもつて、右B3
0株式会社及びB29研究所をそれぞれ爆破するため爆発物を使用する共謀を遂
げ」と判示しているが、右共謀の成立するに至るまでの経過については、関係証拠
により、そのとおり肯認することができる(被告人A1の昭和五〇年六月二日付、
同月二九日付検察官調書、被告人A3の昭和五〇年六月四日付及び同月二九日付検
察官調書参照)。特に、被告人A1は、B30の爆破計画について昭和五〇年三月
二七日ころA6方で同人や被告人A2に伝え、また、B29の爆破計画について
も、同年四月二日ころ被告人A2に電話で連絡し、更に、同月五日ころA6方で被
告人A2、A6と雷管の管体を作つた時にも、右の二つの爆破計画を被告人A2に
話していること、及び同年四年一五日ころ都内の喫茶店で開かれた三者会談では、
A10がB30とB29を四月一九日の午前一時に爆破する旨を話して被告人A
1、同A3から最終確認を得ていることなどの事実も証拠上認められる(なお、被
告人A2の昭和五〇年六月四日付検察官調書は被告人A1の同年六月二日付、同月
二九日付検察官調書と対比し、措信できない)。
 以上の経過にかんがみれば、本件B29、B30各爆破事件は、いわゆる三者会
談で提案され、会談に出席した各グループの代表者から、その都度、それぞれの構
成員に告げられ、その全員の賛同を得て、次の三者会談で決定されて実行に移され
たものであることが明らかであるから、被告人A1、同A3、同A2らの本件B2
9、B30各爆破についての本罰則一条の共謀が成立したものと認定した原判決に
所論のような誤りは存しない。
 (エ) B2B4作業所爆破事件について
 関係証拠によつて認められる本件爆破事件の実行に至るまでの経過をみると、昭
和五〇年三月二五日ころの東京都内の喫茶店における被告人A1、同A3及びA1
0による三者会談で、被告人A3から、「B18」としてはB2が工事をしている
B25のB4鉄橋を爆破したい旨の提案がなされたが、被告人A1から鉄橋を爆破
するには爆弾の爆発力が不足である旨反対されたため、B2のB4作業所とB2の
B25B4橋工事現場の建設機械とを爆破することに計画が変更され、被告人A1
及びA10の賛成を得たこと、その後同年四月一日ころの同都内の喫茶店における
前記三名による三者会談の席上で、被告人A3は、被告人A1に対し右B2B4作
業所ほか一か所の爆破のための爆弾に用いる雷管二個の供与方を申し入れ、被告人
A1は、右会談の都度、その内容を「B7」グループの被告人A2、A4、A6に
伝え、全員の賛成を得たので、右雷管を用意することとなり、同月五日ころと六日
ころにA6方で被告人A1、同A2、A4及びA6が協力して前記爆破に用いる爆
弾の起爆装置である雷管二個を製造したうえ、同年四月八日ころの三者会談におい
て、被告人A1がこれを被告人A3に供与し、その席上、被告人A3は右爆破の決
行日を同月二七日とすることを提案して全員の賛成を得たことが明らかであるか
ら、以上の経過にかんがみれば、被告人A1、同A3、同A2のB2B4作業所爆
破についての本罰則一条の共謀が成立したものと認定した原判決に所論のような誤
りは存しない。
 特に、被告人A1は、前記三月二五日ころの三者会談で、爆破対象について、鉄
橋爆破の困難性を指摘し、計画変更を提言しているばかりでなく、四月八日ころの
三者会談でも、爆破時期について四月二〇日とする被告人A3の計画について「B
29の直後ではあまり意味がない、間隔をあけた方が政治的効果がある」旨の意見
を述べており、被告人A3において被告人A1の右意見を受け入れ、爆破対象及び
爆破時期を変更していることからもうかがわれるように、被告人A1が本件犯行に
ついては「B18」の自由にまかせ、単に、爆破攻撃についての理解者の地位にと
どまつていたものとは到底認められないから、この点に関する所論は採用すること
ができない。
 以上詳述したとおり、被告人A1、同A2がB26、B2本社B27と同社B2
8工場、B29、B30、B2B4作業所の各爆破事件(原判示第七、第九ないし
第一一の事実)について、被告人A3がB2本社B3と同社B28工場、B29、
B30の各爆破事件(原判示第九及び第一〇の事実)について、いずれも本罰則一
条の共謀共同正犯の責任を免れないとした原判決に、所論のような誤りは認められ
ないから、結局、論旨は理由がない。
 3 「原判決には訴訟手続の法令違反があり、判決に影響を及ぼすことが明らか
である」との主張について
 (控訴趣意第三の一ないし三)
 (一)「B5B6特別列車爆破予備事件について、公訴棄却の判決をなさなかつ
た原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある」(控訴趣
意第三の一)
 所論は、要するに、被告人A1、同A2に対するB5B6特別列車爆破予備事件
についての公訴提起は、適正かつ客観的な考慮に基づかず、姿意的になされたもの
であり、また、違法な捜査に基づくものであるから、公訴棄却の判決がなさるべき
であるのにこれをしなかつた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令
適用の誤りがある、というのである。
 しかしながら、記録及び証拠物を調査し、当審における事実取調べの結果をも加
えて検討すると、原判決が「B5B6特別列車爆破等事件についての被告人ら・弁
護人らの公訴棄却の申立並びにこれに対する当裁判所の判断」の項で説示するとこ
ろは、すべて相当として是認することができる。すなわち、検察官は、いわゆるB
1爆破事件の捜査の過程で、同事件に使用された爆弾に関連して、被告人A2につ
いては昭和五〇年六月二一日に、被告人A1については同月二五日にそれぞれ本件
B5B6特別列車爆破予備事件についての概略の自白を得て供述調書を作成してい
たが、当時既に捜査の対象とされ、あるいは逮捕・勾留の事実となつていた一連の
企業爆破事件を順次捜査し、その処理を急ぐ必要があつたこと、この段階では、B
5B6特別列車爆破予備事件は他の事件と異なつて爆発という結果が発生しておら
ず、被告人らの単なる考えにすぎないのではないかとの疑いがあつたこと、B5B
6特別列車爆破予備事件公表による社会的影響を十分配慮する必要があつたことな
どから、同事件の捜査を進めることを一時保留し、同事件の存在を秘したまま同年
七月一七日一連の企業爆破事件についての捜査及び起訴を一応終結したこと、その
後、右一連の企業爆破事件についての公判準備を進めるとともに、B5B6特別列
車爆破予備事件の捜査、処理について検討していたところ、同年九月二〇日F3新
聞に同事件の概要が報道されるに至つたことから、早急に同事件の捜査を遂げて処
理する必要に迫られ、同事件の真相を究明するため、同年一〇月三〇日強制捜査に
ふみ切ることを決定し、翌三一日に被告人A1及び同A2を逮捕して更に取調べを
行い、B5及びその付近について被告人A2の指示を求めるなどして実況見分を
し、あるいは、被告人A1の自供に基づいて電線八巻を発見して押収するなどの捜
査を遂げたうえ本件公訴を提起したものであることが関係証拠により認められるの
で、右の経過にかんがみれば、本件公訴の提起が刑事政策その他適正かつ客観的な
考慮に基づかず、訴追裁量権を逸脱した恣意的なものということはできない。ま
た、B1爆破事件の捜査の過程で得られた被告人A1、同A2らのB5B6特別列
車爆破予備事件に関する供述内容は極めて概括的なものであつて、物的な裏付け捜
査もなされておらず、同事件について公訴を提起するためには、なお相当な捜査を
必要とするものであつたことは記録に照らし明らかであるから、これに本件B5B
6特別列車爆破予備事件の性質等を考えあわせると、同事件について被告人A1、
同A2を逮捕、勾留して取り調べる必要性も十分に認められ、所論のように逮捕、
勾留のむしかえしによる違法捜査であるとの非難はあたらない。更に、検察官が本
件B5B6特別列車爆破予備事件について被告人A1、同A2を取り調べるに際
し、弁護人を不当に中傷したとの点については、記録を調べても、同被告人らの取
調べを担当した検察官において弁護人を中傷する意図や弁護人と被告人との間の信
頼関係を破壊する意図を有していたものとは認められず、かえつて、関係証拠(原
審証人E2、同E3の各証言参照)によれば、同被告人らの取調べを担当した検察
官は、担当被疑者に対し、現段階に至つて強制捜査を開始するに至つた事情とし
て、F3新聞のスクープ記事により本件が公表された以上、早急に捜査を遂げて決
着をつけざるをえなくなつたことなど諸般の事情を告げて説得を重ね、本件につい
ての詳細な供述を得たものであることが明らかであり、したがつて、弁護人に対す
る不当な中傷が加えられたという点で違法捜査であるとの所論は採用できない。結
局論旨は理由がない。
 (二) 「A4、A5、A6の検察官に対する各供述調書に証拠能力を認めた原
判決には判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反がある」(控訴趣意第三の
二)
 所論は、要するに、A4、A5、A6の身柄を国外で釈放することは、国が右三
名に対する訴追権、刑罰権を放棄したわけであるから、右三名の供述録取書につい
ても証拠としてすべてを放棄したものと解すべきであるのに、右三名の検察官に対
する各供述調書の証拠能力につき刑訴法三二一条一項二号前段の要件を認めた原判
決には重大な訴訟手続の法令違反がある、というのである。
 しかしながら、関係証拠によれば、A6は、クアラルンプールにおけるG4事件
によつて昭和五〇年八月六日に、A4及びA5は、ダッカにおけるG5事件によつ
て昭和五二年一〇月二日にいずれも国外で釈放されたことが認められるが、国によ
る右三名の釈放は、いわゆる日本赤軍の無法な要求により右各事件の緊急事態の下
で、やむなくなされたものであつて、国の側に責めらるべき事由は全く存しないば
かりでなく、国が右釈放によつて訴追権、刑罰権を放棄したものと解すべきもので
もないから、これと異なる前提にたつて、右三名の検察官調書(謄本)の証拠能力
を認めた原判決を論難する所論は到底採用することができない。論旨は理由がな
い。
 (三) 「原判決には証拠能力につき任意性の判断を誤つた訴訟手続の法令違反
があり判決に影響を及ぼすことが明らかである」(控訴趣意第三の三)
 所論は、要するに、原判決が被告人A1、同A2、同A3、A4、A5、A6の
検察官に対する各供述調書について任意性を認めたのは、訴訟手続の法令違反があ
る、というのである。
 そこで、所論にかんがみ、記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも加
えて検討すると、捜査官の被告人A1、同A2、同A3、A4、A5、A6に対す
る取調状況及び供述調書作成の経緯については、原判決が「A4、A5、A6、被
告人A1、同A2、同A3の検察官に対する各供述調書等が証拠能力を欠くとの弁
護人らの主張並びにこれに対する当裁判所の判断」の項の二の2ないし7において
詳細に説示するとおりであつて、所論検察官調書が検察官の違法かつ不当な取調べ
によつて作成されたものでないことは優に肯認することができる。特に、被告人A
1は、当初身上関係等についてのみ供述し、犯罪事実については黙秘していたが、
逮捕(昭和五〇年五月一九日)後、間もない五月二四日から供述しはじめ、同月三
一日には被告人A2、A4、A6、A7あてに「五月三一日から供述をはじめた。
これは権力に屈服して開始するのではなく、自己の意思によつて自己らの行なつた
一連の戦いの意義を明らかにするためである。」旨の書面を作成し、被告人A2
は、逮捕されて三日後である五月二一日に「この事態に関する一部又は全部を明ら
かにしてこの運動が正しく理解され、正しく継承されることを望みます。」等の記
載を含む供述書をみずから作成し、被告人A3は、取調べ当初は黙秘していたが、
間もなく検察官に申し出てみずから申述書を書き始め、逮捕されて六日後である五
月二五日には、東アジア反日武装戦線に志願した思想的背景と必然性等、同被告人
の一連の行動についての経緯、心境を内容とする長文の申述書を作成し、A4も、
同年六月三日には自供する心境及びこれまでの経緯等を内容とする供述書をみずか
ら作成し、その後それぞれ犯罪事実について供述するに至つたものであること、A
5は、当初黙秘していたが、五月二八日ころから「自分は爼上の鯉であり、一切合
財罪を負つてもよい」旨を述べるに至り、六月二日から供述するに至つたものであ
ること、また、A6も、検察官に対し「責任逃れはしない。自分の判断で時機をみ
て話す」旨述べていたところ、六月二日から供述するに至つたものであることなど
の事実が記録上認められるばかりでなく、所論検察官調書の内容は、いずれも具体
的、詳細で、被告人らがみずから作成した図面が添付され、あるいは被告人らの申
立により表現方法や用語などについて訂正されている部分も存することなどをあわ
せ考えると、所論検察官調書について任意性があるとした原判決の判断に所論のよ
うな法令違反は認められない。結局論旨は理由がない。
 4 「量刑不当」との主張について(控訴趣意第四の一ないし四)
 所論は、要するに、原判決の被告人A1、同A2、同A3に対する量刑は重きに
失するというのであるが、論旨の基調をなすものは、被告人らの「本件行為の正当
性」についての主張と解せられるので、まず、右の主張に対する原判決の説示につ
いて考察したのち、量刑上考慮すべき各被告人の情状を順次検討することとする。
 (一) 「正当性の主張について」(控訴趣意第四の一)
 所論は、原判決が、被告人らの本件行為の正当性についての主張に対し、「その
動機ないし目的とするところは、日本の過去における侵略ないし戦争の責任、日本
の現在における新植民地主義による経済侵略なるものの責任をそれぞれ追及し、現
在の日本国家及び社会を破壊し革命を目指すというものであるところ、法治国家・
議会制民主主義を基本とする憲法のもとでは、自己の主義・主張・信条等を具体化
するには、合法的な言論・出版・政治等の手段によつて行なうべきものであり、暴
力就中爆弾攻撃などの兇悪な手段を用いてその主張を貫徹しようとすることは、ま
さに憲法秩序に敵対するものであつて、絶対に許されないことは自明であり、被告
人、弁護人らの挙げる事由は、本件各行為において、犯罪の成立要件である構成要
件該当性、違法性、責任性のいずれをも阻却しないことが明らかである」旨判示し
ているが、現行法上違法と認定されるものであつても、その思想の核心に現実の情
況を把え、鋭い問題の提起として評価されるものがあるとすれば、その実践として
の行為は社会的、歴史的評価を受けるべきであつて、少なくとも被告人らの責任な
いし情状の面で正当に考慮されねばならない、と主張する。
 そこで、考えてみるのに、関係証拠によれば、被告人らがいわゆる爆弾闘争を決
意するに至つた経緯については、ほぼ以下のとおり要約することができる。すなわ
ち、被告人A1は、昭和四四年四月F4大学F5部F6科に入学したが、当時F4
大学はバリケード封鎖が行なわれており、いわゆる全共闘運動の拠点の一つであつ
た。同被告人もバリケードの中に入つて全共闘運動の一員として活動して行くこと
になるが、その頃F4大学F5部F6科に入学した被告人A2は、いわゆる民青系
の学生とともに学園封鎖に反対していた。しかし、同被告人は、被告人A1と知り
合つたことから、全共闘運動に参加するようになつた。そのように被告人A2の行
動を変えたものは、学生の特権的地位を否定する「自己否定」の思想であり、その
特権的存在自体がベトナム人民を殺し、沖縄人民を抑圧することに加担していると
いう痛烈な自覚によるものであつた。ところで、全共闘運動は、昭和四四年一一月
の沖縄返還交渉のためのG7訪米阻止闘争を境に、急速に勢いを弱め、角材や火炎
びんによる実力闘争が完全装備の警察機動隊の前には無力であることを痛感した闘
争参加者の多くは、闘争から離れ、自らが否定しようとした元の学園や社会に戻つ
て行つた。しかし、被告人A1、同A2らは、単なる反政府闘争ではなく、革命運
動が必要であるとの認識のもとに、学校の外にいわゆる研究会を結成し、その研究
会は、解体、再組織を通じて昭和四六年一〇月ころには、都市ゲリラグループとし
て武装闘争を開始することとなつた。同被告人らが実行した武装闘争の根底にある
思想は、いわゆる「反日思想」であるが(「B8」の「はじめに」の項を参照)、
その根幹は、歴史的現実から形成されて来た日本人の帝国主義的「あり方」に対す
る自らの批判による否定、すなわち自己否定であり、かかる自己批判の実践とし
て、植民地人民と共同の立場に立つての日帝本国中枢に対する非妥協的闘争を日本
人(被告人らの言う「日帝本国人」)の唯一の緊急任務とするものである。そし
て、同被告人らは、昭和四六年一二月から爆弾による武装闘争に突き進み、興亜観
音七士之碑爆破から始まり、昭和四七年四月にはB22の爆破を、同年一〇月には
旭川のB24とB23研究施設の爆破を行つたが、これらの爆破闘争は未だ本格的
な武装闘争ではなく、象徴主義的な闘争であつた。同被告人らのグループは、昭和
四八年夏から秋にかけて、当時その構成員であつた被告人A1、同A2、A4らに
おいて、そのグループを「東アジア反日武装戦線B7」と呼ぶこととし、また、そ
の思想的背景を明らかにするとともに同調者の参加を求めるため、昭和四九年三月
被告人A1、同A2の両名が執筆した「B8」と題する都市ゲリラ爆弾闘争の教本
ともいうべきパンフレツトを出版し、新左翼系書店等へ郵送するなどして頒布し
た。その後、「B7」グループは、日本の過去における侵略ないし戦争の責任及び
現在の新植民地主義による経済侵略等の責任を追及する本格的な武装闘争として、
昭和四九年七月にB6暗殺目的でB6特別列車B5爆破の準備をし、同年八月から
B1をはじめとする海外進出企業とその関連施設を連続的に爆破するに至つた。ま
た、被告人A3は、昭和四二年四月都立大学F7学部F8科に入学したが、当時は
いわゆる全共闘運動がはなやかなころであり、同年秋のG8闘争、同四三年初頭の
G9闘争、G10闘争、G11闘争と全国いたるところで学生を中心とする部隊と
警察機動隊との実力闘争がくり拡げられていた。同被告人も、入学後いくつかの政
治闘争に参加し、全共闘運動にかかわつたが(G7訪米阻止闘争、G9闘争、G1
1闘争などに参加して、昭和四二年一〇月公務執行妨害罪で、翌四三年一月一五日
公務執行妨害、兇器準備集合罪でそれぞれ逮捕された)、その運動の中で把んだ学
生の特権的地位を否定する「自己否定」の思想を更につきつめて考えるとともに、
昭和四七年から日雇労働者としての生活の中で建設資本に関する文献、資料を研究
し、戦前戦後を通じて一貫した建設資本の植民地人民に対する搾取収奪の実態を知
り、自己の植民地人民に対する支配性を否定し、労働者の中にある民族的差別を否
定することによつて日本人総体のあり方を思想的に否定していこうと決意した。そ
して、昭和四八年秋ころ、同じく日雇労働に従事していたA6と知り合い、同人と
の接触を通じて「B8」を入手し、昭和四九年七月から右A6の勧誘により被告人
A1と接触するようになり、同年九月末に至り、被告人A1からB1爆破は「B
7」の犯行であることを打ち明けられて、東アジア反日武装戦線への参加を決意
し、同年一一月A9(昭和四八年のG12闘争以来の知り合い)及びA8(昭和四
九年七月A9を通じて知り合つたもの)と相謀つてB32爆破を企図し、同年一二
月二三日B32爆破事件の実行に際して「東アジア反日武装戦線B18」を名乗
り、同戦線への参加の意思を表明した。その後も、反日武装戦線の一環として海外
進出の建設企業等に対する継続的な爆破闘争を目的として、B2本社B3・B2
7・B28工場、B29研究所、B30、B2B4作業所、B25B4橋工事現場
各爆破事件を敢行したが、そのうちB2本社B27、B2B4作業所、B25B4
橋工事現場の各爆破事件については、被告人A3らの「B18」グループが直接実
行を担当した。
 右に要約したところから明らかなように、被告人らの爆弾による武装闘争は、
「法的にも、市民社会からも許容される『闘い』ではなく、法と市民社会からはみ
出す闘い=非合法の闘い」(「B8」四頁参照)であつて、憲法の定める法の支配
と思想的寛容とに正面から挑戦する行為であるから、絶対に許されないものである
ことはあらためて説明するまでもない。したがつて、被告人らの本件犯行の動機、
目的が前に述べたようなものであるからといつて、被告人らが本件各犯行について
責任を免れうるものでないことは原判決が説示するとおりであり、また、その量刑
事情として持つ意味についても、被告人らが提唱する「反日思想」の実践として、
危険極まりない爆弾攻撃という行動パターンを選択したという点で、厳しく否定的
評価が与えられなければならないのである(なお、思想がいかに危険なものであろ
うとも、それ自体が刑罰の対象にならないことは現代刑法の鉄則である。)。原判
決が、その「量刑の事情」欄(二の3、三の3、四の4参照)で、被告人らが判示
のような目的、認識のもとに本件各犯行に及んだことはその刑責を軽減する理由と
なりえない旨説示している部分も、右と同旨と解せられるので、結局この点に関す
る所論は採用することができない。
 (二) 「被告人A1に対する刑の量定不当について」(控訴趣意第四の二)
 所論は、原判決が、被告人A1らの本件爆弾闘争において提起したもの、すなわ
ち、戦争責任に関する問題と独占資本による海外侵略の問題等に対する判断を回避
しながら、被告人らの動機、目的は独善的な主義主張であるとしたうえ、「目的を
貫徹するためには無関係の一般市民まで巻き添えにして殺傷することを容認するな
ど卑劣極まりなく酌量の余地がない」と述べて同被告人に対し極刑を科したのは、
判決に影響を及ぼすべき事実誤認ないしは量刑不当の誤りがある、と主張する。
 しかしながら、被告人A1の本件各犯行の動機目的が所論のようなものであるか
らといつて、同被告人が本件各犯行につき責任を免れうるものでないこと、及び量
刑事情としてみても、同被告人の罪責を軽減する理由となりえないことは、原判決
の説示するとおりであり、また、戦争責任に関する問題あるいは独占資本による海
外侵略の問題について原判決が判断を差しひかえたことも、司法機能の限界上当然
というべきであるから、結局、この点に関する所論は採用することができない。
 そこで、更に、所論にかんがみ、記録及び証拠物を精査し、当審における事実取
調べの結果をも参酌して、被告人A1の情状について検討することとし、同被告人
の関与した本件一連の事件のうち、犯情の最も重いと認められるB1爆破事件、B
2本社B3・B27・B28工場各爆破事件及びB5B6特別列車爆破予備事件を
中心に順次考察する。
 (1) B1爆破事件(原判示第五の事実)について
 原判決は、その「量刑の事情」欄の一の1の(一)において、「被告人A1、同
A2らの実行した本件は、爆薬量各二十数キログラムに及ぶ大型で強大な殺傷・破
壊の威力をもつ爆弾二個を、平日の白昼、しかも昼休みの時間帯でとくに人通りの
多い都心aの高層ビル街路上で爆発させ、周辺一帯を修羅場と化さぜ、現場付近に
いて何の危険も予知していなかつた善良な多数の一般市民を巻き添えにして八名も
の何ものにも替え難い貴重な生命を奪い、少なくとも一六五名に重軽傷を負わせ、
爆弾事件としては、わが国で空前の犠牲者を出すとともに、四億円余の物的損害を
与えた残虐・兇悪極まりない無差別殺傷事件である」とし、被告人らの爆弾攻撃に
より死亡した被害者八名については、「いずれも社会人として真面目に生きてきた
もので、或いは春秋に富み、或いは働き盛りで一家の大黒柱であつた人たちであつ
て、被告人らとは何のかかわりもなく、被害を受けるいわれのない善良な市民であ
り、被告人らの爆弾により、見るも無残なありさまでその生命を奪われたこの八名
の被害者及びその遺族らの無念さと被告人らに対する憎しみ、憤りは、想像に余り
あるものがあり、本件犯行が被害者の遺族に与えた影響は、精神的なものはもちろ
んのこと経済的影響もかなり深刻である」と判示し、更に、負傷にとどまつた被害
者についても、「加療一か月以上の者が五十数名あり、日常生活に不自由をきたす
後遺症のある者が相当数にのぼり、また、当初診断された治療見込期間以上の治療
期間を要したものが多く、中でも、加療期間二年以上の被害者も三名あり、うち一
名は受傷後四年を経た時点でもなお通院加療中であつて、被害者らに与えた精神
的・肉体的苦痛や経済的負担も重大かつ深刻な者が多い」と指摘しているが、関係
証拠によれば、すべてそのとおり肯認することができる。
 したがつて、右に述べたとおり、人的、物的な両面にわたり、重大な結果を招来
させた被告人A1の責任は、極めて重いといわなければならない。
 また、本件は、被告人A1らが爆弾闘争の一環として、組織的、計画的に敢行し
た犯行であることは、原判決がその「量刑の事情」欄の一の3の(一)に説示する
とおりであるが、その犯行において同被告人は、本件爆弾使用のための時限装置を
製作し、更に、本件爆弾二個を被告人A2とともに完成させて、現場に運搬したう
えこれを仕掛けるという本件爆弾の完成と使用に最も重要かつ不可欠な役割を果た
したことも関係証拠により明らかであるから、原判決が、被告人A1につき、「そ
の刑責は特に重大である」と判示するところも、十分これを是認することができ
る。
 更に、本件は、被告人A1ら「B7」グループがその提唱する「反日思想」に基
づく武装闘争の一環として海外進出企業に対する爆弾攻撃を行うことを企図し、そ
の第一弾として敢行した犯行であつて、その動機目的についても、原判決の説示す
るとおり、その刑責を軽減する理由となりえないこと、本件では、同被告人らから
被害者らに対し何ら慰謝の措置が講ぜられていないし、被害者らやその遺族も極め
て厳しい被害感情を有していて、被告人らの厳罰を望んでいること、本件犯行が社
会一般に与えた衝撃は強烈で、世人に与えた恐怖と不安は極めて大きかつたことな
ど関係証拠により認められる本件犯行の動機、目的、犯行後の情況等に徴すると、
同被告人の罪責はまことに重く、極刑に処することの当否を検討すべき事案である
ことは否定できないところである。
 (2) B2本社B3・B27・B28工場各爆破事件(原判示第九の事実)に
ついて
 原判決は、その「量刑の事情」欄の一の1の(二)において、「被告人A1、同
A2、同A3らの実行したこの三事件において、右被告人らが製造し使用した爆弾
も、とくに本社B3及びB27に使用したものは、極めて威力の強いものであり、
しかも、犯行態様は三か所同時攻撃という悪質なものであつた。B2B3は、その
爆発によつて、爆発現場のパンチテレックス室内で残業中の社員一名に瀕死の重傷
を負わせるとともに、同室を破壊し、B3の大半を全焼させて、一四億円余に達す
る莫大な損害を与えており、その犯行結果は極めて重大である。」と判示し、更
に、パンチテレックス室で残業し、爆弾の仕掛け地点の至近距離にいた社員C25
について、「同人は、爆発とともに数メートル飛ばされて失神し、火災の熱で覚醒
して救助を求め漸く九死に一生を得たが、右爆発により、判示のような重傷を負
い、三年余を経過した時点でも骨折に伴う神経麻痺など後遺症のため、時折通院加
療を受けている状態で、従前の職務も担当不可能となるなど同人に与えた精神的・
肉体的苦痛は極めて深刻である」と指摘しているが、関係証拠によれば、すべてそ
のとおり肯認することができる。
 また、本件は、東アジア反日武装戦線の「B7」「B19」「B18」の三グル
ープが共同して、三者聞及び各グループ内で綿密な計画と周到な準備のもとに実行
に及んだものであることは原判決がその「量刑の事情」欄の一の3の(二)に説示
するとおりであるが、その犯行において、被告人A1は、「B7」グループの代表
者として三者会談に臨み、本件B2同時爆破攻撃を決定し、「B7」内部でもB2
本社の下見、調査を重ね、A4及びA6とともに「B7」の爆破箇所、仕掛け地点
等を決定し、自ら本件爆弾の時限装置を製作し、右A6らとともに、本件爆弾一個
を完成させたうえ、犯行当日もこれを運搬して右A6に手渡し、同人とともにB2
本社B3のB20室に入り、右A6がこれを仕掛ける間、出入口付近で見張りを行
つており、また、「B19」のA10及び「B18」の被告人A3から両グループ
が本件爆破攻撃に使用する爆弾の起爆装置に用いる手製雷管の提供方を依頼され
て、これを引き受け、被告人A2が製作した手製雷管各一個を同人らに提供したこ
とも、関係証拠により明らかであるから、原判決が、被告人A1につき、「『B
7』内部においても、三グループ間においても中心的役割を果たし、本件全般にわ
たり積極的・主導的に行動して、本件各爆弾使用に重要かつ不可欠な役割を担当し
た」と判示するところも、相当として是認することができる。
 更に、本件について、被告人A1らから被害者に対する慰謝の措置は全く講じら
れていないし、被害者も被告人らの厳罰を望んでいること、本件犯行の社会に与え
た影響が重大であることなどをあわせ考えると、本件についての被告人A1の罪責
はとりわけ重大であるといわなければならない。
 (3) B5B6特別列車爆破予備事件(原判示第四の事実)について
 原判決は、その「量刑の事情」欄の一の1の(三)において、「本件は、憲法に
よつて日本国の象徴・日本国民統合の象徴たる地位にあるB6搭乗の特別列車を爆
弾によつて鉄橋もろとも爆破してB6を暗殺しようとしてその共謀をし準備をした
ものであつて、重大で悪質な犯行というべきである。」と判示し、更に、「本件は
偶然の事情から予備行為に止まつたが、被告人A1、同A2らの殺意はとくに強固
であつたこと、爆発物使用に近い段階にまで至つたまことに危険な行為であつたこ
と、しかも、本件爆弾は、その後、前記B1爆破に用いられて著しい爆発力・破壊
力を発揮した極めて危険なものであつたこと」を指摘しているが、関係証拠によれ
ば、すべてそのとおり肯認することができる。
 また、本件において、被告人A1は、B6の旅行日程等について調査、検討を
し、現場の下見を重ねて具体的な計画を立案し、手製雷管の開発、実験等にも関与
し、本件爆弾の製造に関しても、その弾体のペール缶を被告人A2とともに購入し
て爆弾の製造を行い、更に現場で電線敷設作業を行うなど、終始主導的な立場で積
極的に重要な行為を担当し、本件犯行の中心的役割を果たしたものであることも、
関係証拠により明らかであるから、本件について被告人A1の罪責は極めて重いと
いわなければならない。
 のみならず、本件は、予備にとどまつたとはいえ、爆弾によるB6暗殺を企図し
た事件として、国の内外にもたらした影響が甚大である点も、量刑上考慮されなけ
ればならないところである。
 前記(1)ないし(3)の爆破事件のほか、被告人A1は、「B7」グループの
敢行したいわゆるB33B34爆破事件(原判示第六の事実)においても、爆弾の
製造からその運搬、仕掛けに至る重要な役割をすべて担当し、また、他のグループ
が実行を担当した六件の企業爆破事件(原判示第七、第九ないし第一一の事実)に
ついても、いずれも他グループのリーダーと謀議を重ね、爆弾攻撃に使用する手製
爆弾の起爆装置に必要な手製雷管を「B7」グループで製造して提供するなど極め
て重要な役割を果たし、その実行に大きく寄与したこと、及び被告人A1は、「B
7」グループの結成前に実行したいわゆる興亜観音・七士之碑爆破事件など四件の
爆破事件(原判示第一ないし第三の一、二の事実)についてもその実行行為に関与
するとともに、手製爆弾の製造技術の開発を推進するなど重要な役割を果たし、ま
た、「B8」の総論部分を執筆していることからもうかがわれるように「東アジア
反日武装戦線」結成の中心人物であり、A6及び被告人A7をオルグして「B7」
グループに加入させたばかりでなく、「B19」「B18」の各グループを東アジ
ア反日武装戦線の傘下に結集させ、その連携の中核となつて爆弾闘争を展開、推進
させたものであることなどの事実が関係証拠により認められるから、被告人A1の
責任は、とりわけ重いといわなければならない。
 以上詳述したとおり、本件一連の事件は、いわゆる反日武装闘争を提唱する被告
人A1ら都市ゲリラグループが、その爆弾闘争の一環として、B1をはじめとする
海外進出企業等を連続的に爆破し、あるいはB6暗殺の目的でB5B6特別列車爆
破の準備をし、あるいは日本帝国主義の侵略を象徴するものとして銅像、施設等を
爆破し、その結果、国民の耳目を聳動させ、社会に極めて深刻な衝動を与えた事件
であつて、爆弾事件としては、我が国犯罪史上前例をみない残虐、兇悪、卑劣な犯
行であるといえるから、これら犯行に積極的に関与し、重大な役割を果たした被告
人A1に対し、死刑を言い渡した原判決の量刑は、相当として是認することができ
る。
 なお、当審における事実取調べの結果によると、被告人A1は、B1爆破事件な
どで攻撃すべきでない人を殺傷した点は自己批判しなければならない旨供述してい
るが、他方、本件一連の犯行の正当性を主張し、これをもつて武装闘争の活性化の
種をまいたと高く評価し、これからもやれる限りのことはやりたいし、多くの人達
が更に闘つて行くべきである旨供述していることが認められ、これらの事実を考慮
してみても、前記判断を左右するに足るものとは考えられない。
 結局、被告人A1に対し極刑を科した原判決に所論のような事実誤認ないし量刑
不当の誤りは存しないから、この点に関する論旨は理由がない。
 (三) 「被告人A2に対する刑の量定不当について」(控訴趣意第四の三)
 所論は、原判決が被告人A2に対し死刑を言い渡したのは、以下(1)ないし
(3)にその理由を要約するように、同被告人に有利な情状を十分に斟酌しなかつ
たものであるから、あまりに苛酷であり不当である、というのである。
 そこで、所論の指摘する理由についての考察を中心に、量刑上考慮すべき被告人
A2の情状を検討することとする。
 (1) 所論は、被告人A2が爆弾闘争を決意するに至つた背景には、社会の矛
盾の解消に我が国の政治機構が十分に機能していなかつたことなどの事情があつた
のであるから、同被告人の行動について刑事責任を問う場合には、その背景となつ
た社会の側に責任がないか否かを点検し、それがある場合には同被告人に有利な事
情として斟酌すべきであるのに、同被告人の思想自体を極めて悪性のものとしてと
らえ、これを量刑上過大に評価した原判決は誤つている、と主張する。
 しかしながら、被告人A2がいわゆる反日武装闘争の一環として敢行した本件一
連の犯行の動機形成に、所論のような事情が存したからといつて、同被告人が本件
各犯行について責任を免れうるものでないことは原判決の説示するところがら明ら
かであり、また、量刑事情としてみても、本件のように、現在の日本国家及び社会
の体制(平和主義、国民主権、基本的人権の保障を柱とする現行憲法の下で、民主
主義が国政の基本理念とされ、国民の力で民主主義を実質化することが可能とされ
ている。)を破壊し、その崩壊の上に成立すると見られる新しい社会への義務意識
に基づき、自己の主義、主張を暴力をもつて貫徹しようとする事犯においては、所
論のような事情は必ずしも罪責を軽減すべき事由になりうるものとは考えられない
から、結局、(1)の点に関する所論は採用することができない。
 (2) 所論は、被告人A2が武装闘争を決意しながらも、その実行にあたつて
は死傷者を出さないように配慮して計画を立てたことを主張し、現に、同被告人ら
は、「B7」グループの結成前の爆破事件では、予告電話をかけることを予定して
いないかわりに爆発時刻を夜間とし、特に興亜観音・七士之碑爆破事件において
は、近所に住む住職が負傷することのないようにしたこと、B6特別列車爆破予備
事件においては、一般の市民に被害が及ばないようにB5に爆弾を仕掛けることに
し、しかも、仕掛け場所を川の中の橋脚としたこと、B35爆破事件については、
予告電話を相手に正確に伝えるには一五分ないし二〇分前からする必要がある旨提
言し、A6を通じて「B19」グループに伝えていること、B33B34爆破事件
においては、当初、B33本社の爆破を考えていたものであるが、同本社がいわゆ
る雑居ビルにあり、これを爆破するときはB33に関係のない他の会社や人に被害
が及ぶおそれがあつたため、爆破目標をB33B34に変えたばかりでなく、仕掛
けた爆弾が爆発した旨の報道がなかつたことから不発に終つたものと誤信し、作業
員が誤つて爆弾に触れて爆発し、負傷することがないよう右爆弾の回収に赴いてい
ること、B2本社爆破事件においては、当初、B2の海外工事局長と社長に対する
個人テロを検討していたものであるが、海外工事局長や社長以外の者を巻きぞえに
する可能性が大きいということで中止し、爆破目標をB2本社に変えたこと、B2
5B4橋工事現場爆破事件については、「B18」グループが仕掛けた爆弾のうち
一個が不発であつたため、その処理に関し相談を受けて検討した結果、労働者らが
右爆弾に触れて爆発し負傷することがないよう、早急にもう一つの爆弾を仕掛けて
誘爆させる方法をとることになつたこと、などの事実を指摘している。なお、B1
爆破事件においても、被告人A2らは、予告電話により通行人等は十分避難を完了
できると考えていたものであつて、右事件で死傷者を出してしまつたのは、B6攻
撃用の爆弾を本件に流用するという軍事技術上の初歩的な失敗を犯したこと、本件
爆弾の威力、特に爆風の威力について同被告人らに十分な知識がなく、本件爆弾に
よる被害は同被告人らの予測をこえるものであつたこと、予告電話が予期したとお
りの効果をもたらさなかつたことなどによるものであり、本件後に発表した声明文
や同被告人らの執筆した「B8」の記載や同被告人らの原審公判廷における本件に
対する反省、総括に関する供述などは同被告人らの殺意の存在を裏付けるに足るも
のではない、と主張する。
 そこで、検討してみるのに、B1爆破事件(原判示第五の事実)において、被告
人A2について、被害者C1を除くその余の被害者に対する殺意を認めるに十分で
ある旨の原判決の説示が相当として是認できることは、既に詳述したとおりである
から(控訴趣意第一の二に対する判断参照)、ここでは、所論指摘のその余の爆破
事件において、同被告人が死傷者を出さないためにとつたとされる措置を、本件の
量刑上どの程度参酌することができるかという観点から考察することとする。
 ところで、被告人A2が関与した本件一連の事件のうち、事犯の重大性にかんが
み、最も犯情の重いと思われるB1爆破事件についてみると、被告人A1の量刑不
当の論旨に対する判断の中で詳述したところからも明らかなように、人的、物的な
両面にわたり重大な結果を招来させた被告人A2の責任が極めて重いことは多言を
要しない。また、前記爆破事件において、被告人A2は、本件爆弾の運搬、仕掛け
に必要な安全装置付の時限装置を組み立てて起爆装置に結合させるなど、被告人A
1とともに本件爆弾を完成し、犯行当日は、被告人A1の乗用車を運転して途中ま
で運搬したうえ、被告人A1と合流して同人とともにタクシーでこれを本件現場ま
で運搬するなど、本件爆弾の完成と使用に重要かつ不可欠な役割を果たしたことも
関係証拠により認められるから、原判決が被告人A2につき「同被告人の刑責は被
告人A1に劣らぬほど重大である」と判示する点も相当として是認することができ
る。特に、被告人A2は、爆弾製造の技術開発に努め、爆弾の威力を高めるための
手製雷管製造の技術を身につけるなど、「B7」グループの技術面の中心人物であ
り(前記「B8」の技術篇を執筆していることからもうかがわれる。)、「その経
験と技術をもつて開発した本件大型爆弾がB1爆破事件の重大な人的・物的な被害
を発生させた」と指摘する原判決の説示も首肯できるところといつてよい。更に、
前記爆破事件において、被告人A2らは重大な人的・物的被害に対し何ら慰謝、補
償の措置を講じておらず、被害者らも厳しい被害感情を有していて被告人らの厳罰
を望んでいること、及びその犯行の社会に与えた影響も重大であることなどをあわ
せ考えると、右爆破事件についての被告人A2の罪責はまことに重く、極刑に処す
ることの当否を検討すべき事案であることは否定できないところである。そうだと
すれば、所論の指摘するその余の爆破事件において、被告人A2が死傷者を出さな
いためにとつた措置が所論のようなものであつたとしても、同被告人の関与した前
記B1爆破事件を含む本件一連の事件についての責任が極刑に値いするとした原判
決の量刑を左右するに足る事情とは認められないから、結局、(2)の点に関する
所論は採用することができない。
 (3) 所論は、被告人A2がB1爆破事件において多数の死傷者を出したこと
に非常な衝撃を受け、爆弾闘争継続の意思を放棄していたことは、その後のB3
5、B26、B2本社各爆破事件における同被告人の役割と被害結果についての評
価並びに爆弾製造工場をA6のアパートに移転して自らは実家に戻つた事実に照ら
し明白であり、また、同被告人は企業爆破闘争並びに爆弾闘争は誤りであると総括
し、このような反省にたつて、死傷した労働者やその遺族に謝罪しているものであ
るのに、これらの点を情状として十分斟酌しなかつた原判決は量刑に関する重要な
事実を誤認したものである、と主張する。
 そこで、検討してみるのに、関係証拠によれば、被告人A2がB1爆破事件にお
いて多数の死傷者が出たことに強い衝撃を受け、原審公判廷でも「我々の失敗で何
人も死んだと分ると絶望的な気持になり、何度も死のうという誘惑にかられた」旨
供述していること、同被告人は、B35(ただし、同被告人は実行に加担していな
い。)、B26、B2本社各爆破事件において負傷者を出したことについて失敗で
あつたと評価していること、同被告人は、B33B34爆破事件後に「B7」グル
ープが関与した爆破事件において実行行為を担当していないこと、爆弾製造工場を
A6のアパートに移転して同被告人は実家に戻つたこと、同被告人は原審公判廷で
B1爆破事件等の死傷者に対する謝罪の意を表明していることなどの事実が認めら
れることは所論の指摘するとおりであるが、他方、同被告人は、B1爆破事件にお
いて多数の死傷者を発生させた重大な結果と社会に与えた強烈な衝撃を十分承知し
たうえで、なおも、「B7」グループが反日武装闘争の一環として敢行した一連の
爆破事件に関与し、特に、B33B34爆破事件においては爆弾の仕掛けを担当し
ているばかりでなく、「B7」グループが関与したその余の爆破事件においても、
手製雷管の製造を引き受けるなど爆弾闘争の実行に大きく寄与していることが記録
上明らかであるから、原判決が「同被告人は、あくまで自己の各犯行の目的、動機
は正当であるとし、また、武力闘争による革命という考え方は何ら変えてはいず、
労働者を巻き添えにしない対物的爆弾闘争は継続する趣旨のことを述べ、さらに、
B6暗殺計画は現在でも正しいと思つている旨陳述し、要は革命のため味方になり
うべき労働者を殺傷する戦術は得策でないとしているにすぎない」旨を説示してい
る点にかくべつ誤りがあるとは考えられない。また、同被告人は当審公判廷におい
て、B1爆破事件等の死傷者に対する謝罪の意を表明し、今後は武装闘争を放棄す
る旨供述するものの、本件一連の犯行の正当性を主張し、日帝本国人の在り方ない
しは生き方という根本的などころで問題を提起する役割を果たしたと評価するほ
か、世界に目を向けると、武装闘争によつて民族解放のために闘つている人達がい
るし、一般的にも武装闘争を否定すべきであるとは考えていない旨供述し、あるい
は、捜査段階で詳細な自白をしたことは闘う人間の姿勢として誤つていた旨供述し
ていることに照らすと、原判決が、同被告人について「その反社会的思考は深く固
着化していて抜き難いと認められる」と説示する点も肯認することができる。結
局、原判決の量刑事情についての判示部分に所論のような誤りは認められないか
ら、(3)の点に関する所論は採用することができない。
 なお、所論は、被告人A2がB2本社B3における殺人未遂事件について起訴さ
れていないことは、量刑上考慮されなければならないと主張するが、同被告人は被
告人A1と比較した場合その関与の範囲に若干の差があることは否定できないにし
ても、犯情の最も重いと認められる前記B1爆破事件をはじめ被告人A2の関与し
た本件一連の爆破事件自体からも、その罪責は極めて重いと認められるから、「結
果として被告人A1のそれとほぼ同等である」旨の原判決の説示は相当として是認
することができる。
 以上詳述したとおり、原判決に被告人A2についての有利な情状を十分に斟酌し
なかつた誤りがあるとは認められないし、また、事件一連の犯行(原判示第一ない
し第七、第九ないし第一一の事実、ただし、原判示第九、第一一の事実につき殺人
未遂の点を除く)は、いわゆる反日武装闘争を提唱する被告人A2らの都市ゲリラ
グループがその武装闘争の一環として敢行した極めて悪質重大な爆弾事件であるこ
とも、既に述べたところから明らかであるから(被告人A1の量刑不当の論旨に対
する判断を参照)、これら犯行に積極的に関与し、重大な役割を果たした被告人A
2の罪責が極めて重いことは多言を要しないところであり、所論指摘の同被告人の
家族の状況等を斟酌してみても、同被告人を死刑に処した原判決の量刑はやむをえ
ないところであつて、重きに失し不当であるとは考えられない。結局、この点に関
する論旨は理由がない。
 (四) 「被告人A3に対する刑の量定不当について」(控訴趣意第四の四)
 所論は、原判決が、被告人A3の本件各行為の動機、目的をことさらに無視し、
また、「B18」グループによる各犯行についても同被告人が主謀者であると強調
し(なお、同被告人が共謀共同正犯として有罪の認定を受けた各爆破事件において
も、謀議は存在しない。)、更に同被告人がB1爆破事件を十分承知のうえで反日
武装戦線に参加したことを刑責上重大であると判示しているが、いずれも恣意的に
量刑事情を認定したものであつて、同被告人に対する無期懲役という量刑は不当に
重いものである、と主張する。
 しかしながら、被告人A3の本件各犯行の動機、目的が所論のようなものである
からといつて、同被告人が本件各犯行につき責任を免れうるものでないことは、原
判決が説示するとおりであり、量刑事情としてみても、同被告人の罪責を軽減する
理由となりえないことは、既に「正当性について」の論旨に対する判断の中で述べ
たとおりであるから、この点に関する所論は採用することができない。
 また、原判決は、その「量刑の事情」欄の四の2において、「『B18』が単独
で実行したB32事件及び『B18』が直接実行を担当した各事件は、被告人A3
が爆破対象企業を選定してA9、A8に提示して協議し、現場の下見・調査を重ね
て具体的計画を決定し、被告人A3のA9、A8に対する指示・指導のもとに共同
して本件各手製爆弾を製造し、その運搬・仕掛け・見張り等の役割を分担して犯行
に及んだもので、『B18』グループが被告人A3を主謀者として綿密周到な計
画・準備を経て組織的に実行したものである。(中略)B2本社B27・B3等爆
破事件においては、被告人A3は、『B18』のリーダーとしてその犯行を主導的
に計画立案し、『B18』の代表者として三者会談に出席し、B2攻撃案を提出し
て採用させ実行に至らせるなど、三グループ間の謀議及び『B18』内部の謀議に
おいて中心的役割を積極的に果たし」と判示しているが、関係証拠によれば、その
とおり肯認することができるから、「B18」グループの行つた本件各爆破事件に
ついて被告人A3が主謀者であると判示した原判決に所論のような誤りは存しない
(なお、同被告人が共謀共同正犯として有罪の認定を受けた各爆破事件において、
いわゆる謀議が存したことは、控訴趣意第二の二の(五)に対する判断の中で詳述
したとおりである。)。
 更に、原判決は、その「量刑の事情」欄の四の4において、「被告人A3は、
『B7』グループがB1事件を実行した後、その空前の多数死傷者を出したことを
十分承知のうえで、反日武装戦線の爆弾闘争に共鳴し、その成果を拡大するために
これに加わり、爆破事件を次々に重ねたもので、その犯情は極めて悪質であり」と
判示していることは所論指摘のとおりであるが、関係証拠によれば、被告人A3
は、昭和四八年秋ころ同じく日雇労働に従事していたA6と知り合い、同人との接
触を通じて「B8」を入手し、昭和四九年七月から右A6の勧誘により被告人A1
と接触するようになり、同年九月末に至り、被告人A1からB1爆破は「B7」の
犯行であることを打ち明けられて、東アジア反日武装戦線への参加を決意し、その
参加表明として、建設企業を爆破攻撃することを企図し、同年一二月二三日最初の
B32爆破事件を敢行し、その際「東アジア反日武装戦線B18」と名乗り、同戦
線への参加を表明したこと、及びその後も被告人A3らの「B18」グループは、
被告人A1らの「B7」及びA10らの「B19」の両グループと共同して大手建
設企業のB2本社B3・B27・B28工場の同時爆破事件を敢行し、更に、B2
B4作業所爆破事件及びB25B4橋工事現場爆破事件を実行したことが明らかで
あるから、原判決の量刑事情に関する前記判示部分に誤りがあるとは認められな
い。
 そこで、進んで、所論にかんがみ、記録及び証拠物を精査し、当審における事実
取調べの結果をも参酌して、被告人A3の情状について検討する。
 記録によれば、被告人A3が関与した本件一連の企業爆破事件(原判示第八ない
し第一二の事実)のうち、同被告人らの東アジア反日武装戦線「B18」グループ
が単独で実行し、あるいは直接実行を担当したのは、B32、B2本社B27、B
2B4作業所及びB25B4橋工事現場の各爆破事件であるが、右各犯行は、いわ
ゆる反日武装闘争の一環として海外進出の建設企業等に対する継続的な爆破攻撃を
目的として敢行されたもので、極めて悪質、重大な犯行というべきものであること
は、原判決の説示するとおりであり、特に、B2B4作業所爆破事件については、
被告人A3らは、同作業所宿直室で社員が宿直している可能性を予見しながら、宿
直室の床下に爆弾を仕掛けて爆発させ、宿直者C24に瀕死の重傷を負わせたが
(なお、C24の負傷は、右後頭部に骨折と意識障害を伴う頭部外傷で、入院初期
のころには全治の見込みもたたなかつたが、約半年後に退院し、郷里で約半年通院
しながら静養に努め、昭和五一年四月一七日から勤務に復している。しかし、同人
は、本件のあつた昭和五〇年四月二七日の夜から入院中の同年七月半ば過ぎまでの
間の記憶は欠落したままであつて、完全に回復した状態ではない。同人は被告人ら
を厳重に処罰するよう求めている。)、同被告人は、その下見をし、爆弾の仕掛け
場所を指示するという重要な役割を果たしていることも関係証拠により明らかであ
るから、同被告人の罪責はとりわけ重大であるといわなければならない。
 また、被告人A3は、「B18」グループのリーダーとして、本件各犯行の主謀
者として重要かつ不可欠な役割を果たしたものであることは、既に述べたとおりで
あるが、「B18」が直接実行を担当していないB29研究所、B30各爆破事件
についても、いわゆる三者会談で「B19」のA10から提示された右爆破計画に
ついて自ら企業の内容を調査してその爆破攻撃の必要性を確認してからこの計画に
賛同し、犯行当日には警察無線を盗聴して右B29爆破の事実を確認するなど、右
両事件についてもかなり積極的に関与したことが関係証拠により認められる。
 更に、関係証拠によれば、被告人A3らが製造し、使用した本件の各爆弾は、い
ずれも塩素酸塩系の混合爆薬を約一キログラムから約四キログラムと多量に用い、
弾体を針金、コンクリート等で補強して爆発の威力を強めるように工作したもので
あつて、これら爆弾の爆発により、一名に瀕死の重傷を負わせ、建物あるいは機械
等を破壊し、多額の損害を与えたことが認められるから、本件各犯行の結果も極め
て重大であるといわなければならない。
 しかも、被告人A3は、前述のとおり、本件犯行によつて多額の物的損害を与
え、特にC24に対しては生命に危険の及ぶおそれのある重傷を与えたのに、被害
者らに対して慰謝や補償の措置を全く講じていないばかりか、B2B4作業所爆破
事件で負傷者を出したことについての考えを当審公判廷で弁護人から聞かれたのに
対し、「負傷者を出してしまつた点については、部分的には作戦の失敗である。そ
れに対しては個人的に責任をとるとかそういうことではなくて、やはり闘争の中で
政治的になぜ失敗をしたか総括して、今後の闘争で失敗を二度と繰り返さないよう
に考えて行くことが、革命を目指す人間の任務ではないかと考えている」旨述べ、
何ら瀕死の重傷を負つたC24に謝罪する態度を示していないこと、本件各犯行の
社会に与えた影響も重大であることなどをあわせ考えると、原判決が「その犯情は
極めて悪質であり、その刑責が被告人A1、同A2に次ぐ重大なもの」と判示した
点も相当として是認することができる。
 のみならず、被告人A3は、当審公判廷においても、本件の反日武装闘争に関し
ては、それが革命運動の総体の中で必要であるし、今までやつてきたことは正しか
つたと現在でも思つていると述べており、また、今後の日本の革命の展望について
も、非合法な武装闘争を軸とした反合法の実力闘争と合法的な大衆運動との三点突
破闘争が必要である旨を述べていることに照らしても、反省の態度は全く見られ
ず、その反社会的性格は矯正が困難なほど強度であると認められる。
 以上詳述したような本件各犯行の罪質の重大性、動機、態様の悪質性、被害者の
被害感情、社会的影響、犯行後の情況などに徴すると、被告人A3は、「B18」
グループのリーダーとして、また、各犯行の主謀者として、被告人A1らに劣らぬ
ほどその罪責は重大であるというほかなく、ただ、被告人A3の関与した事件で
は、幸いにも死亡者が発生しなかつた点において被告人A1、同A2らとは犯情の
差があるとしても、被告人A3に対し無期懲役を言い渡した原判決の量刑はやむを
えないところであつて、重きに失し不当であるとは考えられない。結局、論旨は理
由がない。
 二 被告人A7についての控訴理由(控訴趣意第二篇の第二の一ないし四)
 1 「原判決には重大な訴訟手続の法令違反、審理不尽ないしは訴因に明示され
ていない事実を認定し有罪判決をなした違法があり、いずれも判決に影響を及ぼす
ことが明らかである」との主張について(控訴趣意第二の一の(一)(二))
 (一) 「訴因制度の無視」(刑訴法二五六条、三一二条、三三八条四号違反)
(控訴趣意第二の一の(一))
 所論は、要するに、被告人A7に対する訴因が十分に特定されていないから、原
裁判所において刑訴法三一二条により訴因の変更を命じて同被告人の防禦上の危険
を排除するか、あるいは不適法として公訴を棄却すべきであるのに、なんら適切な
処置をとることなく有罪判決を言い渡した原審の訴訟手続には重大な法令違反があ
る、というのである。
 そこで、検討してみると、記録によれば、被告人A7に対する昭和五〇年六月二
八日付起訴状には、正犯者A1ほか数名の実行行為として、「A1ほか数名が、東
アジア反日武装戦線『B7』と名乗り、海外進出企業等に対して継続して爆弾によ
る爆破闘争を行うことを企図し、その闘争の一環として、治安を妨げ、かつ、人の
身体・財産を害する目的をもつて、一昭和四九年八月三〇日東京都千代田区ab丁
目c番d号B1ビルヂング前歩道において、二同年一一月二五日同都日野市ef丁
目g番地のhB33株式会社B34中和槽操作盤室内において、三昭和五〇年二月
二八日同都港区ij丁目k番l号株式会社B2本社ビルB3において、それぞれ塩
素酸ナトリウム等を主薬とする混合爆薬を用いた時限式手製爆弾を装置爆発させ、
もつて爆発物を使用するにあたり」との各爆発物使用行為の記載があり、また、同
被告人の幇助行為としては、「(一)昭和四九年四月ころ東京都足立区所在喫茶店
において、前記A1らと会合して、前記反日武装戦線『B7』に加盟し、その一員
として前記一連の企業爆破闘争を支援することを約し、(二)同年五月ころ同都足
立区所在喫茶店における同人との会談及びそのころ同人と取り交わした書簡によつ
て、右支援の方法として、爆弾製造の原料として使用すべき塩素酸ナトリウム等を
今後継続的に入手して右『B7』に補給することを約し、(三)同年八月初旬こ
ろ、右約束に基づき、岩手県一関市内において、塩素酸ナトリウム九八・五パーセ
ントを含有する除草剤クサトール四〇キログラムを入手するなどしたうえ、同月二
〇日ころ、東京都荒川区所在喫茶店において右クサトール約六キログラム、同年九
月八日ころ仙台市mn丁目o番p番q荘の居室においてそのころ入手していた起爆
剤原料等として使用すべき硫黄約五〇〇グラム、同年一一月九日ころ東京都荒川区
rs丁目t番u号v荘内右A1方において右クサトール約六キログラム、昭和五〇
年一月一一日ころ右A1方において右クサトール約八キログラム及びそのころまで
に入手していた硫黄約一、五〇〇グラムをそれぞれ右A1らに交付し、(四)右
『B7』の企業爆破闘争の資金として、昭和四九年七月六日ころ現金四五、〇〇〇
円を右A1方に送付して同人らに供与し、同年一一月九日ころ右A1方において同
人らに対し現金六〇、〇〇〇円を供与し、昭和五〇年一月一一日ころ右A1方にお
いて同人らに対し現金三〇、〇〇〇円を供与し」たことが掲げられているが、正犯
の実行行為と幇助行為との関係については、「右(一)ないし(四)の一連の行為
により、前記一ないし三の各犯行を容易ならしめて、これを幇助したものである」
との記載があるのみであることは、所論の指摘するとおりである。
 所論は、被告人A7の幇助行為と正犯の実行行為との結びつきについて、前述の
ような記載のみでは、同被告人の幇助行為として示されているものが正犯の実行行
為にどのような態様、関係において「容易ならしめた」ものとして結びつけられて
いるのか全く不明である、というのであるが、本件起訴状の記載と原審検察官の冒
頭手続段階における釈明によれば、同被告人が、正犯者A1らの東アジア反日武装
戦線「B7」に加盟してその企図する爆弾による企業爆破闘争に対し精神的、物質
的支援を約し、かつ、その約旨に従つて「B7」に爆発物製造の原料及び右闘争の
資金としての金員の供与を継続的に行つた一連の行為が一体となつて、右闘争の一
環として正犯者A1ら「B7」によつて行われた各犯行を容易ならしめたという趣
旨であることが明らかであり、同被告人に対する爆発物取締罰則違反幇助の訴因の
特定としては、右の程度で足りると解されるので、この点に関する原判決の判断は
正当として是認できる。
 したがつて、被告人A7に対する訴因が不特定であることを前提とする所論は採
用できない。
 (二) 「審理不尽ないしは訴因に明示されていない事実を認定し有罪判決をな
した違法について」(控訴趣意第二の一の(二))
 所論は、要するに、被告人A7からA1への昭和四九年八月五日ころの電話連絡
は、本件訴因に含まれていないのに、これをB1爆破事件(原判示第五の事実)の
爆発物使用の幇助を成立させるための決め手の一つにしている原判決には、同被告
人に十分な防禦の機会を与えていない点で審理不尽の違法があり、また、右電話連
絡やクサトール約五〇〇クラムがB2本社B3爆破事件(原判示第九の事実)の爆
弾製造に使用されたということは、本件訴因の内容とされていないのに、これを事
実として認定し有罪の判決をした原審の訴訟手続には、審判の請求を受けない事件
について判決をした違法がある、というのである。
 そこで、検討してみると、関係証拠によれば、所論指摘の電話連絡は、被告人A
7に対する昭和五〇年六月二八日付起訴状の公訴事実のうち、同被告人の幇助行為
(三)として記載されている冒頭部分の行為、すなわち「昭和四九年八月初旬こ
ろ、右約束に基づき、岩手県一関市内において塩素酸ナトリウム九八・五パーセン
トを含有する除草剤クサトール四〇キログラムを入手」した結果の報告であること
が明らかであつて、右クサトールの入手行為の付随事情にすぎないから、右クサト
ールの入手行為が訴因として明示されていれば、電話連絡行為を独立して訴因とし
て摘示する必要はないものである。したがつて、電話連絡に関する供述を含む同被
告人の昭和五〇年六月二二日付検察官調書が証拠として採用されたのちは、同被告
人及び弁護人においてこれに対処し防禦する機会は十分に与えられていたものとい
えるから、原判決に所論のような審理不尽の違法は存しない。
 また、所論指摘の電話連絡やクサトール使用の点については、原判決が罪となる
べき事実としてこれを認定しているのではなく、被告人A7の幇助犯の成否に関す
る弁護人らの主張に対する判断の中で、同被告人の幇助行為の存在についての理由
づけとして説示しているにすぎないことは原判文にてらし明らかである。
 しかも、右電話連絡の点は、前述のとおり、クサトールの入手行為が訴因として
明示されていれば、独立して訴因として摘示する必要のないものであり、クサトー
ル使用の点も、同被告人の幇助行為そのものではなく、訴因として明示する必要の
ないものであることは明らかであるから、これと異なる前提にたつて原判決を論難
する所論は採用することができない。
 結局、論旨はいずれも理由がない。
 2 「原判決には法令の解釈適用について誤りがあり、これが判決に影響を及ぼ
すことが明らかである」との主張について(控訴趣意第二の二の(一)(二))
 (一) 幇助意思についての原判決の判断の誤り」(控訴趣意第二の二の
(一))
 所論は、要するに、原判決が、被告人A7について正犯らの各実行行為(B1、
B33B34、B2本社B3各爆破事件)の一切の具体的認識を欠いている事実を
認定しながら、右正犯らの実行行為についての幇助の意思を認めたのは、刑法六二
条一項の解釈適用を誤つたものである、というのである。
 記録によれば、原判決が、被告人A7の幇助犯の成立に関する弁護人らの主張に
対する判断の中で、同被告人には、「本件各幇助行為の時点において、正犯のA1
らが実行した三件のいわゆる企業爆破事件について、あらかじめ具体的攻撃目標や
その実行行為の具体的内容についての認識のないものがあつても、少なくとも右A
1らが手製爆弾を製造しこれを使用してその新旧帝国主義者の一つとする海外進出
企業を爆破攻撃する行為に出るとの認識を有していたものと認められる」旨の説示
をしていることは所論の指摘するとおりである。そして、幇助犯成立の要件の一つ
である幇助の意思は、「幇助者が正犯の実行行為を表象していること、及び自己の
行為が正犯の実行を容易ならしめるものであることを認識していること」が必要で
あると解されることも所論のとおりであるが、本件においては、同被告人が正犯の
実行行為を認識していたか否かが問題とされているので、この点について検討す
る。
 ところで、被告人A7の幇助犯が成立するためには、同被告人において、正犯が
実行した行為につき、その日時、場所、行為の対象、実行担当者がなんびとである
かなど具体的な手段、方法を逐一認識予見していたことは必要でなく、特定の犯罪
構成要件に該当する行為を犯すという認識、予見があれば足るものと解すべきとこ
ろ、関係証拠によれば、同被告人が輔助者として正犯であるA1らの実行行為につ
き、あらかじめその具体的内容についてまでの認識はなかつたとしても、少なくと
もA1らが手製爆弾を製造し、これを使用して海外進出企業を爆破攻撃すること、
すなわち爆発物取締罰則一条及び三条違反の行為に出ることの認識を有していたも
のと認められることは、原判決の説示するとおりである。特に、同被告人は、捜査
段階で検察官に対して、A1ら「B7」グループが爆弾使用の闘争によつて海外進
出企業を攻撃することを十分に知つてこれを支援するため、爆弾製造の原料である
クサトールや硫黄を購入してA1らに交付し、あるいは資金を供与するなどの各種
幇助行為を行つた旨の自白をしており(同被告人の昭和五〇年五月二五日付、同月
二九日付、六月四日付及び同月二五日付検察官調書参照)、右供述は、原判決の判
示するような同被告人の「B7」グループに加入するに至つた経緯及びその間の経
過並びに同被告人の居室から押収されたパンフレツト「B8」(昭和四九年四月A
1から被告人A7に渡され、同被告人においてこれを読み、その内容に共鳴したと
認められるもの)に「東アジア反日武装戦線B7がこれまで自分たちの手で研究、
開発、実験、爆弾闘争を戦つた経験を今の段階で総括するものであり……」(同書
一頁)、「B7は、現在いくつかの爆弾事件によつて治安警察から追求されている
が、致命的な捜査資料は残していない。」(同書二頁)、「われわれは、新旧帝国
主義者、軍国主義者、植民地主義者、帝国主義イデオローグ、同化主義者を抹殺
し、新旧帝国主義、植民地主義企業への攻撃、財産の没収などを主要な任務とした
B7である。」(同書四頁)などの記載があること等に照らすと、十分措信できる
ものといつてよい。
 次に、爆発物取締罰則一条の「目的」についても、右A1らが海外進出企業を爆
破する以上、「財産ヲ害セントスル目的」を持つていたことを被告人A7が認識し
ていたことは明らかであり、「治安ヲ妨ゲル」目的についても、右A1ら「B7」
グループの意図する反日武装闘争の一環として海外進出企業の事務所等を爆破する
ことは、とりもなおさず、法秩序に挑戦し、社会不安を生ぜしめて国民に動揺、衝
撃を与えようとすることであつて、A1らがこの目的を持つていたことは同被告人
においても十分認識していたものと認められる。また、「人ノ身体ヲ害セントス
ル」目的については、都会地や会社の事務所等において爆発物を爆発させる場合、
付近に人が居れば当然死傷の結果が予想されるところであり、それが第一次的目的
であつたか否かは別として、A1らにおいてこれを認容して犯行に及んでいるもの
である以上、「B7」グループの一員として企業の爆破を支持していた同被告人が
右A1らに「人ノ身体ヲ害セントスル」目的があつたことを認識していたものと認
めるのが相当である。
 以上要するに、被告人A7が輔助者として正犯であるA1らの爆発物使用につ
き、あらかじめその日時、場所、攻撃目標など具体的内容を認識していなかつたと
しても、少なくとも、右A1らが爆発物取締罰則一条にあたる目的をもつて爆発物
を使用することを認識してこれを幇助する行為をしたことは十分認定できるところ
であるから、同被告人に「幇助の意思」の存在を認めた原判決に所論のような刑法
六二条一項の解釈適用の誤りは存しない。論旨は理由がない。
 (二) 「幇助行為についての判断の誤り」(控訴趣意第二の二の(二))
 所論は、要するに、幇助犯の成否、特に無形的、精神的幇助を論ずる場合には、
幇助行為の無定型、無限定な性格からして慎重かつ厳格な解釈態度が要請されると
ころ、原判決が被告人A7の原判示所為につき爆発物取締罰則一条、刑法六二条一
項を適用するにあたり、同罰則一条の幇助行為を「現実に正犯の爆発物の使用それ
自体を容易ならしめたことが客観的に明らかな場合」に限定するという限定的解釈
をとらなかつたのは誤りである、というのであり、その理由として、「1」同罰則
には、爆発物使用に必要不可欠な爆発物や器具の製造、譲与等の一定の重要な幇助
行為を五条で独立して処罰する規定を設けており、同条の規定は、文言上明らかな
ように、正犯が同罰則一条の実行行為に及んだ場合でも、五条の態様における幇助
行為については同条の罪が成立するにとどまるものと解せられるのに、右態様以外
の、例えば、本件のごとく爆発物製造の原料や資金の提供のような、より犯情の軽
いことが明らかな幇助行為について、正犯が爆発物の使用に及んだ場合に同罰則一
条の幇助犯が成立すると解するのは、刑の権衡のうえからも全く当をえないこと、
「2」言いかえれば、同罰則五条は、同罰則三条についての幇助行為のうち、一定
の類型のものを重く処罰する規定であるが、同罰則五条に規定する態様以外の態様
によつて同罰則三条についての幇助をした場合に、たまたま正犯が同罰則一条の爆
発物の使用に及んだからといつて、同罰則五条のより重大な態様の者がなお同条の
適用を受けるのに、より軽い態様の同罰則三条についての幇助者が同罰則一条の幇
助となることは、明らかに論理矛盾であり、刑の権衡を失すること、「3」してみ
ると、同罰則一条、三条、五条の各規定の相互関係からして、同罰則五条以外の態
様による同罰則三条についての幇助行為は、正犯が同罰則一条の爆発物の使用に及
んだとしても、なお、同罰則三条についての幇助犯が成立するにすぎないものと解
すべき筋合であるから、同罰則一条の幇助行為なるものは、爆発物を直接使用させ
ることについての幇助行為に限定されざるをえないこと、の諸点を挙げている。
 <要旨第二>そこで、考えてみるのに、爆発物取締罰則五条は、爆発物の高度の危
険性にかんがみ、同罰則一条の幇助行為のうち、最も典型的な本犯のた
めにする爆発物若しくはその使用に供するための器具の製造、輸入、販売、譲与、
寄蔵等について、その独自の危険性に着目して独立罪として設けられたものであつ
て、本犯が爆発物の使用に及んだ場合に刑法六二条の適用を排除し、同罰則一条の
幇助犯の成立を否定し、これを軽く処罰しようとする規定でないことは、同罰則の
立法趣旨が人の生命、身体、財産に危険な爆発物の爆発に結びつくあらゆる行為を
あらゆる段階で処罰することを目的としていること、及び同罰則中に刑法の総則の
適用を排除する規定が存しないことからも明らかである(なお、同罰則の立法趣旨
からみて、同罰則五条が実質的に刑法八条にいう「特別の規定」にあたると解する
ことはできない。)。したがつて、同罰則五条の態様における幇助行為について
は、本犯が爆発物の使用に及んだ場合には、同罰則五条の罪と同罰則一条の幇助犯
が成立するものと解すべきであるから、これと異なる法解釈を前提として刑の均衡
を論じ、同罰則一条の幇助行為について限定的解釈を主張する所論は採用すること
ができない。
 結局、同罰則一条の幇助行為には、直接爆発物を使用させることについての幇助
行為に限らず、同罰則五条に規定する態様における幇助行為、その他本犯の爆発物
の使用を容易にする行為のすべてが含まれると解するのが相当であるから、被告人
A7の原判示第一三の所為につき同罰則一条、刑法六二条一項を適用した原判決に
所論のような法令の解釈適用の誤りは存しない。論旨は理由がない。
 3 「原判決には事実の誤認ないし法令の適用を誤つた違法があり、これが判決
に影響を及ぼすことが明らかである」との主張について(控訴趣意第二の三の
(一)ないし(五))
 (一) 「被告人の検察官に対する供述調書の信用性について」(控訴趣意第二
の三の(一))
 所論は、要するに、原判決が証拠として採用した被告人A7の検察官に対する供
述調書一二通の信用性については重大な疑問があるにもかかわらず、その信用性の
保障について慎重な吟味をすることなく、事実の認定に供した原審の措置を論難す
るものである。
 そこで、検討してみると、被告人A7の検察官に対する供述調書中に、客観的事
実に反する供述ないし他の証拠により否定される事実についての供述が含まれてい
ることは所論の指摘するとおりであるが、右の供述部分については、取調べ担当の
検察官において、同被告人に対し、これを確かめ、あるいは訂正させていることが
記録上うかがわれるばかりでなく(例えば、B2本社、B29研究所各爆破事件の
事前認識の点について、訂正された検察官調書が作成されている。)、原審におけ
る証拠調の結果によつて裏付けられた供述部分(例えば、一関市内で購入したクサ
トール五キログラム入り四袋及び一キログラム入り二〇袋の計四〇キログラムのう
ち、五キログラム入り二袋及び一キログラム入り二〇袋の計三〇キログラムをA1
らに交付した経緯並びに現金を三回にわたり供与した経過など)も存することなど
に徴すると、所論検察官調書の信用性をすべて否定することが失当であることは明
らかである。
 もつとも、被告人A7は、取調べ担当の検察官に対して「私は『B7』の闘争に
ついてはすべての同志と共に責任を負いたいと考えており、このような偶然(B3
3B34及びB26各爆破事件について事前に知らされていたかどうかという点)
によつて責任の有無を論ずることには疑問をもつています」旨供述しているところ
からもうかがわれるように、当時はA1らの「B7」グループの者と一緒に処罰さ
れたいとの心境にあり、そのことが客観的事実に反する供述を含む検察官調書が作
成される一因となつていることは所論の指摘するとおりである。したがつて、同被
告人の右のような供述態度を考慮し、他の証拠とも対照したうえで同被告人の検察
官調書の信用性について吟味する必要があることも所論のとおりであるが、記録を
調べても、原判決の認定する事実に符合する範囲で右検察官調書についての信用性
を認めた原審の措置になんら不当なかどは見いだせないのて、結局、この点に関す
る所論は採用することができない。
 (二) 「被告人は『B7』に参加していたとの認定について」(控訴趣意第二
の三の(二))
 所論は、要するに、原判決は、被告人A7の本件三つの爆破事件の爆発物使用に
ついての幇助意思を認定する一つの論拠として、同被告人が「B7」グループに参
加していたことを挙げているが、「B7」に加わること自体は「B8」の内容を支
持する思想的共鳴関係を示すものにすぎず、原判示第一三の幇助行為として認定さ
れた事実も、「B8」の思想に向けられた支持表明にほかならないから、右の事実
を幇助行為にあたると認定した原判決には、事実誤認ないし幇助犯についての法令
適用の誤りがある、というのである。
 そこで、検討してみるのに、原判決が、被告人A7は、爆弾闘争を志向するグル
ープ「B7」の単なる同調者ではなく、「B7」に参加していたことは明らかであ
るとして、同被告人が「B7」に加入するに至つた経緯及びその間の経過について
詳細に判示するところは、すべて関係証拠により肯認することができる。
 所論は、被告人A7が、F4大学在学中からA1、A2らと種々の活動を共に
し、研究会活動をし、釧路付近での爆弾実験に立ち会い、原判示第二のB22爆破
事件にも途中まで関与したことは原判決の判示するとおりであるとしても、右爆破
事件の際、A1らと対立して同人らのもとを去つた昭和四七年三月から「B8」の
出版まで二年間の空白があることを考慮すれば、同被告人とA1らとの間にあつた
当初の人間関係の延長線上に昭和四九年四月以降の同被告人と「B7」グループと
の関係が存在するものとして同被告人の「B7」への参加を認めた原判決は誤りで
ある、と主張する。
 しかしながら、関係証拠によれば、被告人A7は昭和四七年初めころ原判示第二
のB22爆破事件の決行日をめぐつてA1らと対立したため、同人らのグループか
らいつたん離脱して同年一〇月に郷里に引き揚げたが、その後も、在京する姉A1
1がA1らのグループの一員であつたことから、昭和四八年夏には、姉A11と共
に岩手県一関市の農薬店で同グループが爆弾製造に用いるクサトール三〇キログラ
ムを購入し、貨車便でA1らに送付する手伝いをしていること、及び同被告人は昭
和四八年一〇月看護婦の資格を得るためF9大学付属F10大学看護科に入学した
ものの、学業を続けるべきか右A1らの武装闘争に復帰すべきか悩み始め、同年一
二月ころ及び同四九年二月ころ右A1らと会つて意見を交換していたが、右A1ら
が同人らのグループを東アジア反日武装戦線「B7」と呼称し、「B8」を出版し
た後の同年四月ころに上京して右A1らと会つた際、右「B8」一冊を渡され、そ
の内容が自己の考えと同一であつたところから、爆弾使用闘争による反日武装闘争
に共鳴し、東アジア反日武装戦線「B7」への参加を表明したことがそれぞれ認め
られるので、これらの事実に徴すると、原判決が、同被告人の「B7」に加入する
に至つた経緯及びその経過として判示する諸事実を総合して同被告人が「B7」に
参加していたものと認めたのは相当であつて、その事実認定の過程に所論のような
誤りは存しない。
 更に、所論は、原判決が被告人A7を「B8」のいう「ゲリラ兵士」として「B
7」の一員になつたとか、又は「兵站」という任務を担当したものと判定してみて
も、それだけでは本件について幇助行為を確定したことにはならないから、同被告
人と「B7」グループの関係が武装闘争の必要性で結びついたものにほかならない
との基本的事実を前提とするかぎり、原判示第一三の幇助行為とされる事実は、
「B8」の思想に向けられた支持表明にほかならず、正犯らの実行行為に結びつけ
られるべきものではない、と主張する。
 たしかに、被告人A7が「B8」の提唱する爆弾を武器とする反日武装闘争に共
鳴し、東アジア反日武装戦線「B7」に加入していたとしても、そのこと自体は本
件の幇助行為となりえないことは所論のとおりである。しかしながら、原判決は、
被告人A7が東アジア反日武装戦線「B7」に加入してA1らの行う一連の企業爆
破闘争を支援することを約し、その支援の方法として、爆弾製造の原料である塩素
酸ナトリウム、起爆剤等に使用すべき硫黄を継続的に入手して補給することを約
し、現にこれを補給した一連の行為(原判示第一三の一ないし七)をもつて、正犯
らの爆発物使用の各実行行為を援助する行為としていることは原判文にてらし明ら
かであり、右一連の行為が有形的ないし無形的幇助行為にあたると認められること
は後に詳述するとおりであるから、これを「B8」の思想に向けられた単なる支持
表明にすぎないとする所論は、到底採用することができない。
 もつとも、被告人A7が「B8」を読んで共鳴し、東アジア反日武装戦線「B
7」に志願する旨A1らに連絡した後においても、右A1らは「B7」グループの
企図していたいわゆるB14作戦(原判示第四のB5B6特別列車爆破共謀・殺人
予備事件参照)を同被告人に明らかにしていないし、「B7」グループの実行した
他の爆破事件についても同被告人を事前の相談に加えていないことは所論の指摘す
るとおりであるが、これは、当審公判廷におけるA1の「B14作戦を(被告人A
7に)告げなかつたのは、A6と異なつて一緒にやらないし、具体的なことは多く
知らない方がよいと思つたからで、(被告人A7を)信用していないからではな
い」旨の供述によつても明らかなように、「B7」グループの一員であつても、直
接実行行為に加担しない者に対しては犯行の発覚防止、組織防衛などのため、具体
的行動計画についてはこれを秘す方針であつたこと(「B8」七頁参照)と同被告
人が当時学業のため遠隔地にいたことによるものと認められるので、前記結論を左
右するに足るものとは考えられない。
 以上、要するに、被告人A7の原判示第一三の一ないし七の事実を幇助行為と認
定した原判決に所論のような事実誤認ないし法令適用の誤りは存しないから、結
局、論旨は理由がない。
 (三) 「被告人が交付したクサトールのうち約五〇〇グラムがB2本社B3爆
破事件に使用された爆弾の爆薬に費消されたとの認定について」(控訴趣意第二の
三の(三))
 所論は、要するに、原判決は、被告人A7が三回にわたりA1らに交付したクサ
トールのうち約五〇〇グラムがB2本社B3爆破事件(原判示第九の一の事実)の
爆弾の爆薬に費消されたとの事実を認定しているが、右推認の過程には重大な誤り
があるというのであり、その理由として、「1」原判決は、A1の居室から押収さ
れたクサトールーキログラム入り二二袋のうち、いずれも有効期限が昭和五二年一
〇月となつている未使用分一九袋と開披ずみの一袋(中身が約半分に減少している
もの)の合計二〇袋が、同被告人において昭和四九年八月五日一関市内のF11商
店から購入した一キログラム入り二〇袋のクサトールにあたると認定しているけれ
ども、A4の検察官調書添付の「在庫一欄」によれば、B1爆破事件以降のクサト
ールの在庫は、有効期限昭和五二年一〇月のものは計三六キログラムあつたことに
なるから、これに同被告人のA1らに交付したクサトール合計三〇キログラムがす
べて含まれているとしても、右有効期限のものは他に六キログラム存在していたこ
とになり、しかも、その所在が明らかでないから、前記開放されている一キログラ
ム入りクサトール一袋を直ちに同被告人の交付したものと断定するには疑問がある
こと、「2」また、原判決は、昭和四九年八月以降「B7」グループが製造した爆
弾は、B1、B33B34、B2本社B3爆破事件に使用した四個の爆弾のみであ
り、その他には実験用の爆弾を製造したことも、クサトールを爆薬以外の用途に費
消したこともないと認められるとし、更に、前記「在庫一欄」の末尾に当時保管し
ていたクサトールの中からB2本社B3の爆破に使つた爆弾を作る際に一四〇〇グ
ラムを費消した旨のメモ書きがあることから、前記費消されたものと推認した約五
〇〇グラムのクサトールはB2本社B3の爆破に使つた爆弾の爆薬に費消されたと
認定しているけれども、クサトールはモデルガンを改造した拳銃の手製実包用の火
薬を作るための燃焼実験等にも使われているので、前記五〇〇グラムのクサトール
を原判示のように断定はできないことの二点を挙げている。
 そこで、検討してみると、「B7」グループにおいてクサトール等の保管を担当
し、その在庫状況を記録していたA4の検察官に対する昭和五〇年六月一六日付供
述調書謄本添付の「在庫一欄」によれば、B1爆破事件以降のクサトールの在庫
は、有効期限が昭和五二年一〇月のもの三六キログラム、同五一年一〇月のもの一
キログラム、同四九年一〇月のもの一キログラムの合計三八キログラムとなつてお
り、他方、A1の居室(東京都荒川区rs丁目t番u号v荘w階)から昭和五〇年
五月一九日押収されたクサトールは、五キログラム入り五袋(有効期限が昭和五三
年一〇月のもの二袋、同五二年一〇月のもの二袋、有効期限が判読できないもの一
袋)及び一キログラム入り二二袋(有効期限が昭和五二年一〇月のもの二〇袋のう
ち一袋は開封されており、その残量は約〇・六キログラムであり、他の二袋は、有
効期限が同五一年一〇月のもの一袋と判読できないもの一袋である。)であるか
ら、合計約四六・六キログラムであることも関係証拠により明らかである。ところ
で、A1の居室から押収された右五キログラム入りクサトール五袋のうち、有効期
限が昭和五三年一〇月のもの二袋については、前記「在庫一欄」に記載がない(被
告人A7の仙台市内のn荘の居室から押収されたクサトール五キログラム入り二袋
の有効期限がいずれも昭和五三年一〇月であることから、A1の居室から押収され
た有効期限が昭和五三年一〇月のクサトール五キログラム入り二袋は、同被告人に
おいて昭和五〇年四月に右A1らに交付したもので「在庫一欄」に未記載のものと
認められる。)から、これを除くと、クサトールの合計は約三六・六キログラムに
なるが、この約三六・六キログラムにB2本社B3爆破事件の爆弾の爆薬に費消さ
れた一・四キログラムを足すと、約三八キログラムになり、「在庫一欄」記載のク
サトールの合計三八キログラムとほぼ符合することになる(なお、A1の居室から
押収されたクサトールのうち、有効期限が判読できない五キログラム入り一袋につ
いては昭和五二年一〇月を有効期限とするもの、同じく判読できない一キログラム
入り一袋については昭和四九年一〇月を有効期限とするものとあてはめて考える
と、「在庫一欄」の記載とよく照応することがわかる。)。
 したがつて、「在庫一欄」に記載のクサトールはB2本社B3爆破事件に使われ
た爆弾の爆薬に費消された一・四キログラムを除き減少していないことになるか
ら、弁護人の「在庫一欄」などを根拠に有効期限が昭和五二年一〇月のクサトール
のうち六キログラムがどこかに消え失せたとの主張は、全く根拠がないといわなけ
ればならない。
 次に、関係証拠によれば、「1」昭和四九年八月以降「B7」グループが製造し
た爆弾は、B1、B33B34各爆破事件の二件に使用した合計三個の爆弾とB2
本社B3爆破事件に使用した一個の爆弾のみであり、その他には実験用の爆弾を製
造したことも、また、クサトールを除草剤として使つたり、他に処分した形跡もな
いこと(弁護人の主張する実包用の火薬を作るための燃焼実験に使われた薬品その
他についても、クサトールと同様の除草剤であるデゾレートが前記「在庫一欄」に
よると合計一九・八キログラムであるのに、A1の居室から押収されたデゾレート
は五キログラム入り二袋合計一〇キログラムであつたことからみて、右実包などに
使われた薬品はデゾレートであつたと推認するのが相当である。)、「2」B1爆
破事件以降のクサトールの在庫状況を記録した前記「在庫一欄」の下部に「「1」
―1400」とあるのは、当時「B7」グループにおいて保管していたクサトール
の中からB2本社B3爆破事件に使用した爆弾の爆薬を作る際に、有効期限が昭和
五二年一〇月のクサトール一四〇〇グラムを費消したということをA4がメモした
ものであること(「1」―1400」とある「1」は、「在庫一欄」の上部の
「「1」S・52・10」を意味することは、「在庫一欄」全体の記載からみて明
らかである。)、「3」前記「在庫一欄」に記載のクサトールの合計三八キログラ
ムから右の一四〇〇グラムを引くと三六・六キログラムになり、A1の居室から押
収されたクサトールの合計約三六・六キログラム(「在庫一欄」に未記載のクサト
ール五キログラム入り二袋を除く)とほぼ符号することがそれぞれ認められるか
ら、右「1」ないし「3」の事実を総合すると、A1の居室から押収された開披ず
みの一キログラム入り一袋はB2本社B3爆破事件に使用する爆弾を作る際に用い
られたものと認められる旨の原判決の説示は、相当として是認することができる
(A1の昭和五〇年六月二六日付検察官調書一二項参照)。したがつて、右一キロ
グラム入りクサトール一袋の中の減量分に相当する約〇・四キログラムのクサトー
ルは、右A1らが右爆弾の爆薬の製造に費消したことは明らかであるから、この点
に関する所論は採用できない。
 もつとも、このように考えると、A1の居室から押収されたクサトールのうち有
効期限が昭和五二年一〇月のものは、五キログラム入り二袋及び一キログラム入り
二〇袋(うち一袋は開封されており、残量は約〇・六キログラムである。)であ
り、前記B2本社B3爆破事件の爆弾に使用されたクサトールは一・四キログラム
であるから、なお、有効期限が昭和五二年一〇月のクサトール一キログラム入り一
袋が他に存在し、右爆破事件の爆弾製造に用いられたことになる(A1の昭和五〇
年六月二六日付検察官調書一二項参照)。
 そこで、A1の居室から押収されたクサトールーキログラム入り二二袋のうち、
いずれも有効期限が昭和五二年一〇月となつている未使用分一九袋と開披ずみの一
袋(残量は約〇・六キログラムである。)の合計二〇袋が、原判決の認定するよう
に、被告人A7において三回にわたり右A1らに交付した一キログラム入りクサト
ール二〇袋に該当するかどうかについて検討する。
 関係証拠によれば、「1」被告人A7がA1らにクサトールを交付した時期は、
昭和四九年八月二〇日ころから同五〇年四月一九日ころまでの間で、五キログラム
入り二袋及び一キログラム入り二〇袋の合計三〇キログラムであること、「2」右
一キログラム入りクサトール二〇袋は、同被告人が昭和四九年八月五日岩手県一関
市内の農薬店で「B36」の偽名を用いて一括購入したもので、これを同年八月二
〇日ころと同年一一月九日ころと同五〇年一月一一日ころの三回に分けて右A1ら
に交付したものであること、「3」右五キログラム入りクサトール二袋は、同被告
人が昭和四九年八月五日岩手県一関市内の農薬店で「B37」の偽名を用いて一括
購入した四袋のうちの二袋で、右四袋は、いずれも有効期限が昭和五三年一〇月と
認められるところからみて、前記一キログラム入りクサトール二〇袋についても、
特段の事情の認められないかぎり、その有効期限は同一の表示のものと推認できる
こと、「4」同被告人がA1らに最初にクサトールを交付した昭和四九年八月二〇
日ころには、既に、B1、B33B34各爆破事件に使用した合計三個の爆弾は
「B7」グループにおいて製造されていたこと、「5」「B7」グループの行つた
一連の企業等爆破事件に使用した塩素酸ナトリウムの購入、準備関係について説明
したA1の昭和五〇年六月二三日付検察官調書には、昭和四九年以降同人にクサト
ールを渡した者として被告人A7についての供述が存するのみであることがそれぞ
れ認められ、右「1」ないし「5」の事実を総合すると、A1の居室から押収され
た有効期限が昭和五二年一〇月のクサトール―キログラム入り二〇袋のうちの少な
くとも一九袋については、被告人A7が一関市内の農薬店で一括購入した三回に分
けて右A1らに交付した一キログラム入りクサトール二〇袋の分が含まれているも
のと推認するのが相当であり、記録を調べても、右認定の妨げとなる事実は認めら
れない。
 そうだとすれば、A1の居室から押収されたクサトールーキログラム入り二二袋
のうち、いずれも有効期限が昭和五二年一〇月となつている未使用分一九袋と開披
ずみの一袋(残量は約〇・六キログラムである。)については、(イ)右のクサト
ール合計二〇袋を、被告人A7が三回にわたり右A1らに交付した本件のクサトー
ルに該当すると認めるか、あるいは(ロ)前述の「有効期限が昭和五二年一〇月の
もの一キログラムが他に存在し、B2本社B3爆破事件の爆弾製造に用いられたこ
とになる」とされた一キログラム入り一袋に、前記二〇袋のうちの未使用分一九袋
を加えた合計二〇袋を本件のクサトールに該当すると認めるか、あるいはまた
(ハ)前記「有効期限が昭和五二年一〇月のもの一キログラムが他に存在し、B2
本社B3爆破事件の爆弾製造に用いられたことになる」とされたクサトール一キロ
グラム入り一袋に、前記二〇袋のうちの未使用分一八袋と開披ずみの一袋を加えた
合計二〇袋を本件クサトールに該当すると認めるか、いずれにしても、右(イ)な
いし(ハ)の場合の一つに該当することは動かしがたいところと言わなければなら
ない。
 したがつて、原判決が、A1の居室から押収されたクサトール一キログラム入り
二二袋のうち、いずれも有効期限が昭和五二年一〇月となつている未使用分の一九
袋と開披ずみの一袋(中身が約半分に減少しているもの)の合計二〇袋のクサトー
ルは、被告人A7が昭和四九年八月五日一関市内のF11商店から購入した一キロ
グラム入り二〇袋のクサトールであると認められる旨説示している点は、疑いを容
れる余地があるといわなければならないが、同被告人において三回にわたり正犯の
右A1らに交付した本件のクサトールのうちの一部(一、四〇〇グラム又は一、〇
〇〇グラム、少なくとも四〇〇グラム)がB2本社B3爆破事件に使用された爆弾
の爆薬に費消された事実は動かしがたいことは前述したところから明らかであるか
ら、結局、この点に関する原判決の認定に誤りはないことになる。それゆえ、論旨
は理由がない。
 (四) 「無形的幇助行為の認定について」(控訴趣意第二の三の(四))
 所論は、要するに、被告人A7について無形的輔助犯が成立するとした原判決の
判断は、その前提たる事実を誤認し、精神的幇助行為の成立要件についての解釈を
誤つたものである、というのである。そこで、所論にかんがみ、以下の二点につい
て順次検討する。
 まず、所論は、原判決は、被告人A7が爆弾(爆薬)製造の原料を補給した行為
はB1、B33B34各爆破事件の正犯の実行行為を精神的に援助したものとして
無形的幇助に該当すると解しているが、クサトールは正犯らにおいて特別な障害も
困難もなしに入手しており、同被告人の補給に頼らざるをえない性質のものではな
く、かつ、正犯らにおいて同被告人の行動を支配しうる立場にもなかつたのである
から、同被告人によるクサトール、硫黄等の補給行為は「正犯らに爆弾の製造、使
用について安堵感を与え、暗に実行を奨励、助長し、その犯意を強固ならしめる」
ものでないことはもちろん、「正犯が向後連続的に行なう爆破闘争の回数及びこれ
に用いる爆弾の大きさ、個数を決定する場合の大きな要因となる」ものでもなかつ
た、と主張する。
 しかしながら、関係証拠によれば、除草剤クサトールは、塩素酸ナトリウムを含
有し、爆弾(爆薬)製造の原料として欠くことができず、しかも都会地では一般に
入手困難なものであつたことは明らかであり、現に、A1の昭和五〇年六月二三日
付検察官調書には「昭和四八年三月か四月ごろ日本橋の薬問屋に除草剤を買いに行
き、五軒ぐらい回つたが除草剤は少なく、しかも身分証明書の提示を求められた
り、印鑑を要求されたりして、簡単には買えませんでした。(中略)この時の経験
で東京では除草剤が簡単に手に入らないことが分り、私達は地方で除草剤の買える
所はないか探しました。」旨の供述があり、A2の昭和五〇年六月一二日付検察官
調書によつても、除草剤の購入が次第に困難となり、そのため東北地方は農家が多
く入手しやすいことから、被告人A7にクサトールの購入を依頼したことが認めら
れる。
 もつとも、「B8」の一五頁には、除草剤は現在最も入手が簡単な材料である旨
の記載があることは所論の指摘するとおりであるが、同書の同じ個所に「季節(五
月~八月)と地域(農業)を選べば、一応使用目的等を聞かれるにしても、入手す
ることは難かしいことではない。」との記載があることをあわせ考えると、必ずし
も前記認定を左右するに足るものとは認められない。
 ところで、関係証拠によれば、正犯のA1らが実行したB1、B33B34各爆
破事件で使用された爆弾は、いずれも被告人A7が本件クサトール及び硫黄を右A
1らに交付する以前の昭和四九年八月一〇日ころB5B6特別列車爆破共謀・殺人
予備事件(原判示第四の事実)に使用する爆弾として製造されたものであることが
認められるから、同被告人が正犯の右A1らに交付した本件クサトール及び硫黄が
B1、B33B34各爆破事件に使用された爆弾の爆薬に費消されていないことは
明らかである。
 したがつて、被告人A7について輔助犯の成立が認められるとするためには、同
被告人の本件クサトール及び硫黄の補給行為によつて正犯の右A1らの爆弾使用の
実行(B1、B33B34各爆破事件)の意思が強化されたなどの事実の存するこ
とを要するものと解すべきところ、A2の「除草剤等の薬品は爆破作戦をたててか
ら集めるというのではなく、普段から入手を心掛け、当分の間作戦に困らないよう
に蓄積していた」旨の供述によつても明らかなように(同人の昭和五〇年六月二三
日付〔乙二の29〕検察官調書三項参照)、A1ら「B7」グループが企図してい
た一連の企業爆破闘争を行うにはクサトール等の爆薬製造の原料が備蓄されるか、
継続して補給されることが必要であり、同被告人によつて一般に入手困難な塩素酸
ナトリウムを含有するクサトール及び硫黄が入手され、継続的に補給されること
は、正犯の右A1らが現に備蓄保管していたクサトール及び硫黄を必要に応じ、い
つでも爆弾製造に費消し、製造した爆弾をいつでも使用することを可能にすること
であるから、これはとりもなおさず、右A1らに「爆弾の製造、使用をしやすく
し、その使用の意思を強固ならしめた」ことにほかならない。この点について、原
判決が「クサトール等の補給状況如何は、正犯らが、向後連続的に行なう爆破闘争
の回数及びこれに用いる爆弾の大きさ、個数を決定する場合、大きな要因となるこ
とは明らかである」とし、更に、「被告人A7が正犯の右A1らの組織する東アジ
ア反日武装戦線『B7』に加入して右A1らの行なう企業爆破闘争支援を約し、そ
の支援の方法として、爆弾製造の材料として用いるべき塩素酸ナトリウム・起爆剤
等として用いるべき硫黄等を向後継続的に入手して補給することを約し、現にこれ
を補給した一連の行為は、一体として正犯らが連続した爆弾使用攻撃の実行行為を
なすにあたり、その爆弾を使用し易くしその使用の意思を強固ならしめたものと推
認できる」旨判示しているのも、被告人A7の本件クサトール及び硫黄の「補給行
為」と正犯のA1らによるB1、B33B34各爆破事件の「爆発物の使用」との
因果関係を認め、精神的幇助行為が成立するとしたものであることは明らかであ
り、原判決の右説示部分に所論のような誤りは認められないから、結局所論は採用
することができない。
 次に、所論は、原判決は、被告人A7が昭和四九年八月五日ころクサトール四〇
キログラムを入手して、その旨をA1に電話連絡した事実を認定し、これをB1爆
破事件についての無形的輔助犯が成立するための重要なポイントとしているが、か
りに、電話連絡がなされた事実があつたとしても、当時右A1らにおいてこれを意
に介するような状態になかつたことが明らかであるから、同被告人の電話連絡が
「爆弾の大きさや個数を決定するについて役立つた」と判示する点は誤りである、
と主張する。
 しかしながら、関係証拠によれば、被告人A7は、昭和四九年八月五日岩手県一
関市内の農薬店でクサトール五キログラム入り四袋及び一キログラム入り二〇袋の
合計四〇キログラムを購入したこと、及びその後同被告人がA1に電話連絡した
際、クサトール四〇キログラムを入手した旨の報告をしていることが認められ(現
に、同被告人は当審公判廷で「昭和四九年八月五日クサトールを購入してから二、
三日経つたころ、A1に電話した際、クサトールを購入したことを伝え、同人に喜
んでもらいたいという気持があつた」旨を供述している。)、この点についての原
判決の説示部分をみると、「被告人A7が昭和四九年八月五日ころクサトール四〇
キログラムを入手して、そのころその旨A1に電話連絡し、同月二〇日ころ右A1
らにクサトール六キログラムを補給したことは、正犯の右A1らのB1に対する爆
弾攻撃に用いる爆弾の大きさ及び個数を決定するに役立ち、右爆弾を使用し易く
し、右使用の犯意を強固ならしめたと推認できる」旨判示しているので、その当否
について検討する。
 関係証拠によれば、A1ら「B7」グループがB1爆破事件及びB33B34爆
破事件に使用した合計三個の爆弾は、右A1らが昭和四九年八月一〇日ころ、当初
はB5B6特別列車爆破共謀・殺人予備事件(原判示第四の事実)の爆弾として、
既に入手して保管中のクサトールなどの塩素酸ナトリウム合計約四三キログラムを
使用して製造したものであるところ、右A1らにおいて右三個の爆弾を製造できた
のは、既に被告人A7がクサトールを継続的に入手して補給する約束をしていたこ
と及び同被告人がこの約束に基づき同年八月五日クサトール四〇キログラムを現実
に入手してその旨右A1に電話で連絡していたため、在庫のクサトールなどを大量
に費消しても、後日同被告人からクサトールが補給されることが判明していたこと
によるものと認められるので、この点に関する原判決の説示部分に所論のような誤
りは存しない。もつとも、本件缶体としてのペール缶は、A1、A2の両名が昭和
四九年八月五日購入していたものであることは所論の指摘するとおりであるが、右
の事実は必ずしも本件爆弾の製造に関する前記認定の妨げになるものとは考えられ
ない。
 以上、要するに、被告人A7について無形的幇助犯が成立するとした原判決の判
断に所論のような事実誤認ないし法令解釈の誤りは存しないから、論旨は理由がな
い。
 (五) 「資金供与行為が本件各爆破事件についての幇助行為に該当するとの認
定について」(控訴趣意第二の三の(五))
 所論は、要するに、被告人A7が三回にわたり現金を供与した行為は、もともと
爆発物取締罰則一条の幇助たりえないものであり、その金額も「B7」グループの
経営を支えるに足るものではなく、しかも、同被告人の場合には全くの任意の拠金
であつて、供与した金員の一部が爆発物製造の原料、器材購入費などに費消された
事実も認められないのであるから、これを同罰則一条の幇助行為に該当するとした
原判決には、事実誤認ないし法令適用の誤りがある、というのである。
 しかしながら、関係証拠によれば、被告人A7が三回にわたり供与した現金は、
いずれも「B7」グループの企業爆破闘争の資金として、他のメンバーが拠出した
現金とともにプールされ、財政担当の正犯者A4のもとで保管されて、右闘争に用
いる爆弾の製造に必要な原材料、機械、器具等の購入資金などに充てられていたこ
と、同被告人は「B7」グループの一員ではあつたが、学生であり職についていな
いことから、他のメンバーが「B7」グループの活動資金を分担して定期的に拠金
(グループの間では税金と呼ばれていたもの)していたのと異なり、経済的余裕が
あつたときに拠金したものではあるが、いずれも「B7」グループの闘争資金に充
てられることは知つていたことが認められるから、同被告人の本件現金の供与行為
も、正犯のA1らの爆発物使用の本件各実行行為を間接的に援助する行為として、
幇助行為に該当することは明らかである。
 したがつて、右の点に関する原判決の判断は正当であつて、所論のような事実誤
認ないし法令適用の誤りは存しない。論旨は理由がない。
 4 「原判決の被告人に対する刑の量定は不当である」との主張について(控訴
趣意第二の四)
 所論は、要するに、原判決の被告人A7に対する量刑は、未決勾留日数の算入の
点も含めて不当に重い、というのである。
 そこで、考察してみるのに、被告人A7が幇助した正犯らの犯行は、B1爆破事
件(原判示第五の事実)、B33B34爆破事件(原判示第六の事実)及びB2本
社B3爆破事件(原判示第九の一の事実)の三件の爆発物使用罪にあたる犯行であ
るが、これら正犯の犯行が、いずれも、その動機、目的において酌量の余地がな
く、犯行の態様も極めて組織的、計画的で、その結果も重大であり、社会に与えた
影響も甚大であることについては、既に被告人A1、同A2の量刑不当の控訴趣意
に対する判断において詳述したとおりであるから、ここでは、被告人A7の幇助行
為を中心に、所論にかんがみ、記録及び証拠物を精査し、当審における事実取調べ
の結果をも参酌して、同被告人を懲役八年(未決勾留日数七〇〇日算入)に処した
原判決の量刑の当否を検討することとする。
 まず、原判決は、被告人A7の量刑上考慮すべき情状として、その「量刑の事
情」欄五の2において、「被告人A7は、経歴及び本件各犯行に至る経緯の項に判
示のような経過で、東アジア反日武装戦線『B7』を呼称し爆弾を武器とする反日
武装闘争を提唱する正犯A1らの考え方及び戦術に共鳴して、右ゲリラ組織『B
7』に加わり、同人らの爆弾の製造・使用目的が海外進出企業を含む新旧帝国主義
者とされるものに対する継続的な爆弾攻撃であることを熟知しながら、判示第一三
のとおり、その支援を約し、爆弾の爆薬材料となるクサトール、起爆剤等に用いる
硫黄等の継続的補給を約し、現実にこれらを提供し、爆弾闘争の資金も供与して正
犯らの犯行を幇助して、その実行に大きく寄与したものであるが、とくに同被告人
は、『B7』に積極的に参加してその爆弾闘争支援を約し、重要な幇助行為に及ん
だものである」ことを挙げ、「組織外の者がたまたまやむなく幇助行為をした場合
とは異なつて、その犯情は極めて悪質であり、その刑責は幇助とはいえ重大であ
る」と判示している。
 関係証拠によれば、被告人A7が、右「B7」グループに加盟し、正犯の本件爆
弾の製造、使用に加担した経緯及びその経過については、原判決の判示するとおり
であるが、特に、同被告人は、右「B7」の一員として、「B7」が反日武装闘争
の一環として継続的に敢行する企業爆破闘争を積極的に支援するため、この爆破攻
撃に用いる手製爆弾の製造原料として都会地では入手困難なクサトール・硫黄など
を地元で入手して継続的に補給することをA1に申し出て、本件一連のクサトール
等の交付行為に及んだものであること、同被告人が提供した本件クサトールは、正
犯らが製造しようとする手製爆弾の爆薬原料として不可欠で、しかも大量に必要と
する薬剤であつたし、現にその一部がB2本社B3爆破事件の爆弾に用いられてお
り、また、硫黄もいわゆる白色火薬の組成分として必要であり、殊に起爆装置とし
て用いる手製雷管の製造には不可欠の薬剤であつたこと、同被告人が供与した本件
闘争資金は、右「B7」の財政担当のA4のもとで、他のメンバーの拠出した資金
と一緒にプールされ、順次爆弾製造に必要な材料、器具等の購入費等に充てられた
ことなども、原判決の指摘するとおりであるから、同被告人が本件で果たした役割
は極めて重要であつて、その責任は重いといわざるをえない。
 しかも、被告人A7は、本件幇助行為のほか、自ら爆弾製造に必要な材料、器具
等を買い求めて、仙台市内のn荘の自室で時限式手製爆弾の製造を試みたり、ま
た、クサトールを持つて上京した際には、A1らと会合して爆破予定の企業の一部
について聞知したり、「B7」グループのメンバーとともに富士山ろくへ赴いて手
製銃で射撃実験を行つたり、更に、自らも爆破対象企業を想定してB10ビルの下
見を行つたりしたことなどをあわせ考えると、原判決が「幇助犯とはいえ、その犯
情の悪質さは明らかである」と判示するところも十分これを是認することができ
る。
 なお、原判決は、被告人A7が、B1爆破事件後、それが「B7」グループの犯
行であることを知らされながら、その多数の死傷者を発生させた重大な結果と社会
の受けた強烈な衝撃を十分承知したうえで、依然幇助行為を継続したこと(原判示
第一三の五ないし七の行為参照)を挙げて、「その犯情は輔助犯としては極めて悪
質というべきである」と判示しているので、この点について検討する。
 関係証拠によれば、被告人A7は、B1爆破事件後、それが「B7」グループに
よる犯行であることをA2から知らされた際、いわゆる新旧帝国主義者に対する爆
弾闘争に関係のない人達を死なせ、傷つけたことは正しいことではないと考えてい
たが、その後「B7」グループの発表した声明文で右爆破事件の結果を正当化して
いるのを読んで非常なシヨツクを受けたこと、同被告人は、右B1爆破事件による
闘争についての総括が十分でなかつたと考えながらも、右の闘争を直接担つていな
い者として批判する資格がないように思い、そのまま闘争を続けてしまつたことな
どの事情が認められるが、他面、同被告人は、右B1爆破事件後も、原判示のよう
に幇助行為(判示第一三の五ないし七参照)を継続し、昭和五〇年四月一九日ころ
上京した際には、「B7」の構成員であるA6が借りたアパートの一室を作りなお
し、手製雷管などを製造する武器工場にするための手伝いをしていること、同年五
月上旬に上京した際にも、右A6のアパートの地下工場で雷管の外枠作りをしてい
ることなどの事実も証拠上明らかであるから、原判決が「多数の死傷者を出したB
1事件後、その『B7』の犯行であることを知らされながら、依然幇助行為を継続
したことこそその刑責に大きな影響があるというべきである」とし、「その犯情は
幇助犯としては極めて悪質というべきである」と判示する点には、かくべつ誤りが
あるとは考えられない。
 更に、原判決は、本件犯行後の情状として、その「量刑の事情」欄の五の5にお
いて、「被告人A7は捜査段階では自白し、一見反省の態度も窺えるかのごとくで
あつたが、その当時すら、検察官調書に明らかなように、本件の反日武装闘争を正
しいものとし、この闘争を受け継ぐ者らのため真相を明らかにする必要ありとして
自白したものであつて、爆弾闘争の誤りを反省したものでないことは、公判廷での
爆弾闘争の正義性・正当性の主張の強弁や、再三出廷を拒否し、訴訟指揮に従わず
何回も退廷させられたり、制裁を科せられるなど激しい法廷闘争を続けてきた同被
告人の言動がこれを裏書きしていること、及び同被告人は、公判廷において、反日
武装闘争の正当性を主張し、さらに、いまだに過激な爆弾による反日武装闘争を呼
号する東アジア反日武装戦線のゲリラ組織から離脱せず、被害者らに対する謝罪も
なく、他方、逮捕された当時通学していたF10に復学して看護婦になりたいとし
て強く保釈を求めた点に窺えるように極めて自己中心的な性格をあらわにして」い
ることを挙げて、「反省の情は全く認められず、再犯のおそれも極めて大であり、
その更生は甚だ困難と考えられる」と判示している。
 関係証拠によれば、被告人A7は、捜査段階でも反日武装闘争は正しいと信じ
て、この闘争を受け継いでいく人達のためにも真相を明らかにする必要があると考
えて自白したことが認められ(同被告人の昭和五〇年五年二五日付検察官調書参
照)、また、同被告人は原審公判廷において、他の被告人らと同調して、再三出廷
を拒否し、裁判長の訴訟指揮に従わず再三退廷させられたり、監置の制裁を科せら
れるなど、激しい法廷闘争を続けてきたものであることも、記録に徴し明らかであ
り、更に、同被告人は、当審公判廷で「A1らが、これまでの闘いの中で訴えてき
たB6の戦争責任の問題とか、日帝の海外侵略の問題とか、日帝本国人の侵略性と
か反革命性とか、一言で言うと『反日思想』をできるだけ広く多くの人たちに訴え
ていきたいと思つている」と述べていることからもうかがえるように、同被告人は
今なお、極めて過激で危険な反日武装闘争の革命思想を堅持していることからみ
て、同被告人に反省、悔悟の情は認められず、同被告人の「B1爆破事件により死
傷者を出したことに対しての自己批判とか心の痛みだけは受け継いでもらいたくな
い」旨の供述を考慮してみても、原判決が「再犯のおそれも極めて大であり、その
更生は甚だ困難と考えられる」と判示した点に誤りはなく、相当として是認するこ
とができる。
 以上要するに、本件の正犯である被告人A1らが実行したB1爆破事件(原判示
第五の事実)、B33B34爆破事件(原判示第六の事実)及びB2本社B3爆破
事件(原判示第九の一の事実)の三件の爆発物使用罪にあたる犯行の重大性、兇悪
性と被告人A7が都市ゲリラグループの東アジア反日武装戦線「B7」の一員とし
て関与した本件輔助行為の重要性、それに加えて同被告人の反省の情の欠如、再犯
の可能性などをあわせ考えると、同被告人について酌むべき諸般の情状、特に、同
被告人が正犯らに交付したクサトールは、B1、B33B34各爆破事件に使用さ
れた爆弾の爆薬に費消されていないこと、多数の死傷者を出したB1爆破事件につ
いては事前に具体的に知らされていないこと、前科、前歴がないことなど所論指摘
の諸事情を斟酌してみても、同被告人に対し懲役八年を言い渡した原判決の量刑は
やむをえないところであつて、重きに失し不当であるとは考えられない。
 また、本件審理の経過の状況、特に、原審の審理が長引いたのは、被告人A7ら
の出廷拒否や裁判長の訴訟指揮権、法廷警察権に従わないことによる審理遅延や同
被告人らと同調して裁判所の在廷命令に反し無断退廷した弁護人らの行動、弁護人
らの辞任等に大きく起因していることなどを勘案すると、原判決の未決勾留日数算
入の点についても所論のような不当なかどは認められない。結局、量刑不当の論旨
は理由がない。
 第二 被告人本人の控訴趣意について
 一 被告人A1、同A3、同A7の控訴趣意
 1 「闘いの正当性」との主張について(控訴趣意第一篇の一ないし五)
 所論は、本件各爆破事件における被告人らの反日武装闘争の意義と正当性を主張
し、被告人らの本件各行為を正当とする事由について種々述べているけれども、所
論の挙げる事由が本件各行為において犯罪成立要件である構成要件該当性、違法
性、責任性のいずれをも阻却するものでないことは、原判決が「本件各事件に正当
性があるとの被告人ら・弁護人らの主張並びにこれに対する当裁判所の判断」の項
で説示しているとおりであり、また、右の事由が量刑上被告人らの罪責を軽減する
理由となりえないことについても、弁護人の控訴趣意に対する判断一の4及び二の
4において詳述したとおりであるから、結局論旨は理由がない。
 2 「B1殺意デツチ上げ批判」との主張について(控訴趣意第二篇の一、二)
 所論は、要するに、B1爆破事件につき、被告人A1らに殺意はなかつたのに、
同被告人らに殺意があつたと認定した原判決には重大な事実誤認がある、というの
であり、その理由として、同被告人らは本件爆弾の威力を十分認識しておらず、ま
た、爆弾に関する知識も十分でなかつたこと、「B8」の技術篇に記述された内容
は初歩的なものであるから、「B8」の執筆をもつて同被告人らが爆弾についての
高度な知識を有していたものとはいえないこと、「B8」や「B7通信」第一号の
各記述内容、被告人A1の原審における最終陳述等は同被告人らの殺意を推認する
根拠とはなりえないことなどを挙げている。
 しかしながら、B1爆破事件(原判示第五の事実)において、被告人A1らにつ
いて、被害者C1を除くその余の被害者に対する殺意を認めるに十分である旨の原
判決の説示が相当として是認できることは、弁護人の控訴趣意に対する判断一の1
の(一)(二)において詳述したとおりであるから、この点に関する論旨は理由が
ない。
 3 「B2本社B3爆破における殺意デツチ上げ批判」との主張について(控訴
趣意第二篇の五及び六の(二))
 所論は、要するに、B2本社B3爆破事件につき、被告人A1に殺意はなかつた
のに、同被告人に殺意があつたと認定した原判決には重大な事実誤認がある、とい
うのである。
 しかしながら、B2本社B3爆破事件(原判示第九の一の事実)につき被告人A
1に殺意があつたと認定した原判決に所論のような誤りが存しないことについて
は、弁護人の控訴趣意に対する判断一の1の(四)において詳述したとおりである
から、この点に関する論旨は理由がない。
 4 「B2関係『殺意』デツチ上げ批判」との主張について(控訴趣意第二篇の
六の(一)(三))
 所論は、要するに、B2B4作業所爆破事件につき、被告人A3に殺意はなかつ
たのに、同被告人に殺意があつたと認定した原判決には重大な事実誤認がある、と
いうのである。
 しかしながら、B2B4作業所爆破事件(原判示第一一の事実)において、被告
人A3に殺意があつたものと認められる旨の原判決の説示が相当として是認できる
ことは、弁護人の控訴趣意に対する判断一の1の(五)において詳述したとおりで
あるから、この点に関する論旨は理由がない。
 5 「『量刑の事情』批判」との主張について(控訴趣意第二篇の三)
 所論は、要するに、原判決が、被告人らの提唱する反日武装闘争の意義とその量
刑事情としてもつ意味を正しく理解することなく、また、刑罰としての死刑が憲法
三六条に違反するものであるのにこれを合憲として、被告人A1らに対し死刑を言
い渡したのは、歴史の流れに逆行する不当に重い刑の量定である、というのであ
る。
 しかしながら、刑罰としての死刑が憲法三六条に違反するものでないことは、弁
護人の控訴趣意に対する判断一の2の(一)において説示したとおりであり、ま
た、被告人らに対する原判決の量刑が重きに失し不当なものとはいえないことも、
弁護人の控訴趣意に対する判断一の4において詳述したとおりであるから、結局、
論旨は理由がない。
 6 「A7に対する『幇助罪』デツチ上げ批判」との主張について(控訴趣意第
二篇の四及び七の(一)ないし(三))
 所論は、要するに、被告人A7は、東アジア反日武装戦線「B7」の一員ではな
く、A1らにクサトールや硫黄を交付したり、資金を供与したことも、右A1らの
爆発物使用の幇助行為とはなりえないものであるのに、同被告人のクサトール、硫
黄等の補給及び資金の供与等をもつて、爆発物取締罰則一条の幇助にあたるとした
原判決には重大な事実誤認ないし法令の解釈適用の誤りがある、というのである。
 しかしながら、被告人A7は、正犯のA1らが結成した東アジア反日武装戦線
「B7」に加盟し、その一員として、右A1らが行う一連の企業爆破闘争を支援す
ることを約し、その支援の方法として、爆弾製造の原判として使用されるクサトー
ル等を今後継続的に入手して補給することを約束したうえ、順次クサトール、硫黄
を右A1らに交付し、かつ、爆弾使用闘争の資金として現金を供与し、これら一連
の行為が一体となつて、正犯の右A1らの本件各犯行を容易ならしめたものと認め
られることについては、弁護人の控訴趣意に対する判断二の2の(一)(二)及び
3の(二)ないし(五)において詳述したとおりであるから、原判決に所論のよう
な事実誤認ないし法令の解釈適用の誤りは存しない。結局、この点に関する論旨は
理由がない。
 二 被告人A2の控訴趣意
 所論は、要するに、B1爆破事件につき、被告人A2に殺意はなかつたのに、同
被告人に殺意があつたと認定した原判決には重大な事実誤認がある、というのであ
り、その論拠として、「1」同被告人は本件爆弾の威力を十分には認識していなか
つたこと、「2」本件爆弾の爆発により高層ビルの窓ガラスが破損して道路側へ大
量に落下することは同被告人において予測できなかつたこと、「3」同被告人は、
事前に予告電話をして避難するよう警告する方法で死傷者の発生を回避できると考
えていたこと、「4」本件爆弾の表面に危険物である旨の警告表示をしたのは、爆
弾の発見を容易にし、退避を確実にするためのものであつたこと、「5」「B8」
や「声明文」の記述等は同被告人の殺意を示す証拠とはなりえないこと、などの諸
点を挙げている。
 しかしながら、B1爆破事件(原判示第五の事実)において、被告人A2らにつ
いて、被害者C1を除くその余の被害者に対する殺意を認めるに十分である旨の原
料決の説示が相当として是認できることは、弁護人の控訴趣意に対する判断一の1
の(一)(二)において詳述したとおりであるから、この点に関する論旨は理由が
ない(なお、A5の検察官に対する供述調書謄本に証拠能力を認めた原審の措置に
所論のような違法は認められない。)。
 よつて刑訴法三九六条により本件各控訴を棄却し、被告人A3、同A7に対し、
刑法二一条を適用して当審における未決勾留日数中各五〇〇日を原判決の各本刑に
それぞれ算入し、当審における訴訟費用は刑訴法一八一条一項但書を適用して被告
人らに負担させないこととし、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 内藤丈夫 裁判官 三好清一 裁判官 石田恒良)

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