弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 本件抗告の趣意は、憲法一三条違反を主張するが、その実質において単なる法令
違反の主張であって、刑訴法四三三条の抗告理由に当たらない。
 所論にかんがみ職権をもって判断すると、原決定の認定によれば、本件において
は裁判官の発付した捜索差押許可状に基づき、司法警察員が申立人方居室において
捜索差押をするに際して、右許可状記載の「差し押えるべき物」に該当しない印鑑、
ポケット・ティッシュペーパー、電動ひげそり機、洋服ダンス内の背広について写
真を撮影したというのであるが、右の写真撮影は、それ自体としては検証としての
性質を有すると解されるから、刑訴法四三〇条二項の準抗告の対象となる「押収に
関する処分」には当たらないというべきである。したがって、その撮影によって得
られたネガ及び写真の廃棄又は申立人への引渡を求める準抗告を申し立てることは
不適法であるとするのが相当であるから、これと同旨の原判断は正当である。
 よって、刑訴法四三四条、四二六条一項により、裁判官藤島昭の補足意見がある
ほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
裁判官藤島昭の補足意見は、次のとおりである。
 一 検証とは、視覚、聴覚等五感の働きによって物、場所、人等の存在、形状、
作用等を認識する作用であり、検証に際して行われる写真撮影は、検証の結果をフ
ィルムに収録する行為といえよう。このような行為を捜査機関が行う場合には原則
として令状を必要とする(刑訴法二一八条一項)。したがって、人の住居に立ち入
って捜索差押許可状を執行するに際し、あわせてその現場において写真撮影を行う
ためには、原則として検証許可状が必要となる。
 しかし、検証許可状を請求することなく、捜索差押手続の適法性を担保するため
その執行状況を写真に撮影し、あるいは、差押物件の証拠価値を保存するため発見
された場所、状態においてその物を写真に撮影することが、捜査の実務上一般的に
行われている。このような撮影もまた検証と解されるべきものであるが、捜索差押
に付随するため、捜索差押許可状により許容されている行為であると考えられる。
 二 これに対して、本件のように、捜索差押許可状に明記されている物件以外の
物を撮影した場合には、捜索差押手続に付随した検証行為とはいえないので、本来
は検証許可状を必要とするものであり、その令状なしに写真撮影したことは違法な
検証行為といわざるを得ないが、検証について刑訴法四三〇条の準抗告の規定の適
用がないことは条文上明らかであって、この点に関する準抗告は現行刑訴法上認め
られていないものと解するほかない。
 三 もっとも、物の外形のみの写真撮影に止まらず、例えば、捜索差押が行われ
ている現場で捜索差押許可状に明記された物件以外の日記帳の内容を逐一撮影し、
収賄先献金先等を記載したメモを撮影するなど、捜査の帰すうに重大な影響を及ぼ
す可能性のある、あるいは重大事件の捜査の端緒となるような文書の内容等につい
て、検証許可状なくして写真撮影が行われたような場合を考えると、検証には刑訴
法四三〇条の準抗告の規定の適用がないということでこのような行為を容認してし
まうことは、適正な刑事手続を確保するという観点から問題があるように思われる。
 すなわち、このような場合、実質的にみれば、捜査機関が日記帳又はメモを差し
押さえてその内容を自由に検討できる状態に置いているのと同じであるから、写真
撮影という手段によって実質的に日記帳又はメモが差し押さえられたものと観念し、
これを「押収に関する処分」として刑訴法四三〇条の準抗告の対象とし、同法四二
六条二項によりネガ及び写真の廃棄又は引渡を命ずることができるとする考え方も
あり得よう。
 四 しかしながら、本件の写真撮影は、印鑑等四点の物の外形のみを撮影したも
のであって、右のような実質上の押収があったか否かを議論するまでもない事案で
あるから、刑訴法四三〇条の準抗告の対象とならないとした原決定の結論は相当で
ある。
  平成二年六月二七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    中   島   敏 次 郎
            裁判官    藤   島       昭
            裁判官    香   川   保   一
            裁判官    奥   野   久   之

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