弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人定塚道雄及び同橋本基一の上告趣意について。
 憲法三七条二項前段は、裁判所が書類の供述者又は作成者を公判期日に喚問し、
現実にこれを審問する機会を被告人に与えなければその書類を証拠とすることが絶
対にできないとする趣旨でないこと、そして又刑訴応急措置法一二条が憲法同条項
に違反するものでないことは、既に当裁判所の判例とするところである(昭和二三
年(れ)一六七号同二三年七月一九日言渡、同二三年(れ)二九四号同年七月二九
日言渡、及び同二三年(れ)八三三号同二四年五月一八日言渡各大法廷判決参照)。
それ故当該書類の供述者又は作成者に対する尋問請求のなかつた本件において原判
決が所論の判示第一の(ハ)(ニ)の各書類を証拠として採用したことには所論の
ような憲法違反はない。
 次ぎに、共同被告人が共同審理を受けたときには、共同被告人は相互に反対尋問
の機会を与えられているのであるから他の共同被告人との関係において憲法三七条
を理由として、その供述調書の証拠能力を否定すべきものでないことは、当裁判所
の判例に徴し明らかである(昭和二四年(れ)四〇九号同二五年七月一九日大法廷
判決、昭和二三年(れ)八三三号同二四年五月一八日大法廷判決及び昭和二六年(
れ)一三三号同年六月二九日第二小法廷判決なお前掲各判決参照)。それ故原判決
が所論の判示第一の(ロ)(ホ)、判示第二の(ロ)及び判示第三の(ロ)の各聴
取書を証拠としたことに所論のような憲法違反はない。
 更に憲法三八条一項は、威力その他特別の手段を用いて供述する意思のない被告
人に供述を余儀なくすることを禁ずる趣旨であることは、当裁判所の判例(昭和二
三年(れ)一〇一〇号同二四年二月九日大法廷判決参照)とするところである。そ
して本件被告人の公判廷における供述及び検事に対する供述が強要されたものと認
むべき証跡は記録上存在しないのであるから、原判決が右の各証拠を採用したこと
が憲法同条項に違反するものでないことは明らかである。所論は独自の見解に基く
ものでとうてい採用できない。なお被告人に対する検事の聴取書を証拠としたこと
が憲法三七条に違反するものでないことは上に説明したところによりおのずから明
らかである。
 被告人Bの弁護人遊田多聞の上告趣意について。
 論旨は証拠の取捨判断又は事実認定の非難に帰し、上告適法の理由とならない。
 被告人Bの上告趣意補充書と題する書面は、上告趣意書提出期間を遙かに経過し
た後に提出されたものであるから、これに対する判断を示さない。
 また記録を精査しても、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて刑訴施行法三条の二刑訴法四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
  昭和二八年三月一七日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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