弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1大田労働基準監督署長が平成17年4月7日付けで原告に対してした労
働者災害補償保険法に基づく療養補償給付を支給しない旨の処分(ただ
し,平成20年4月30日付けの裁決によって一部取り消された後のも
の)を取り消す。
2大田労働基準監督署長が平成19年1月26日付けで原告に対してした
労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付を支給しない旨の処分のう
ち,平成16年11月6日以降の期間に係る部分を取り消す。
3訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨
第2事案の概要
1原告は,大田労働基準監督署長(以下「大田労基署長」という。)に対し,
原告が「腰痛症,腰部打撲」,「腰椎椎間板ヘルニア」の傷病を負ったとし
て,労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づき,療養
補償給付及び休業補償給付を請求した。大田労基署長は,療養補償給付請求
については,平成17年4月7日付けで支給しない旨の処分をし(後の労働
保険審査会の裁決により,平成16年10月8日から同年11月5日までの
期間に係る部分が取り消された。以下,一部取消後のものを「本件第1処
分」という。),また,休業補償給付請求については,平成19年1月26
日付けで支給しない旨の処分をした(大田労基署長は,上記の労働保険審査
会の裁決を踏まえて,平成20年8月15日付けで,平成16年10月8日
から同年11月5日までの期間の休業補償給付を支給する旨の決定をした。
乙30。以下,上記不支給処分のうち同年11月6日以降の期間に係る部分
を「本件第2処分」といい,本件第1処分と併せて「本件各処分」とい
う。)。
本件は,原告が本件各処分を不服として取消しを求めた訴訟について,併合
して審理された事案である。
2前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に
認められる事実)
(1)当事者
原告(昭和▲年▲月▲日生)は,平成3年4月1日,日本エアシステム株
式会社(平成16年4月1日に商号変更により「株式会社日本航空ジャパ
ン」となり,平成18年10月2日に合併により株式会社日本航空インタ
ーナショナルとなった。以下,商号変更,合併の前後を問わず「会社」と
いう。)に運航乗務員として採用され,平成8年2月21日付けで副操縦
士の発令を受け,以降,副操縦士として航空機に乗務する乗務員として勤
務してきた。
(2)脱出退避誘導訓練施設と訓練内容等
平成16年10月6日,原告は,東京都大田区<以下略>において実施さ
れた脱出退避誘導訓練(以下「本件脱出訓練」という。)に業務として参
加した。原告が参加した本件脱出訓練の施設及び実施内容等は以下のとお
りである。
ア脱出用スライド訓練
脱出用スライド訓練は,同日午前11時30分ころに実施された。
(ア)脱出用スライド訓練(以下「本件スライド訓練」といい,これに用
いる脱出用スライドを単に「スライド」という。)は,航空機脱出扉
からスライドを滑り降りる訓練であり,具体的には,スライド上部
(航空機脱出扉に接する部分)から前方にジャンプしてスライドに尻
を下ろし,その後,両足を前に伸ばし,背中と足は90度の角度で,
両手を両足と平行に前方に出しながら滑降するものである
(イ)本件スライド訓練では航空機ボーイング777に使用されている退
避器具と同一のものが使用されており,訓練設備として設置されてい
る状態での実測値は,床面から脱出扉までの高さ4.95メートル,
幅3.16メートル,脱出扉からスライド先端の床面設置部分までの
水平距離が8.4メートルであり,上記実測値に基づく計算値ではス
ライド斜面は角度30.5度,全長9.75メートルとなる。
(ウ)スライド先端の床面近くには,幅約0.5メートル,長さ約1.8
メートルにわたり波状の摩擦の大きい生地(左右に走る小さな突起状
のもの)が貼り付けられており,滑り落ちるスピードに対する制御装
置として機能する。滑降してくる者は,臀部がこれに引っ掛かること
によって上体が腰を中心として前回りし,前のめりした状態で自然に
立ち上がり,速やかな脱出が可能となる構造である。
(エ)本件スライド訓練は一人当たり1回滑るものであり,その時間は1
秒程度である。
イ脱出用ラフト訓練
脱出用ラフト訓練は,同日午後3時30分ころに実施された。
(ア)脱出用ラフト訓練(以下「本件ラフト訓練」といい,これに用いる
脱出用ラフトを単に「ラフト」という。)は,航空機脱出扉から水面
に浮かべたラフト上に乗り込む訓練である。
(イ)本件ラフト訓練では航空機A300-600に使用されている退避
器具と同一のものが使用されており,訓練設備として設置されている
状態での実測値は,幅2.9メートル,長さ8.0メートル,床面の
厚さ0.4メートルである。
(ウ)本件ラフト訓練は,波のないプールにラフトを浮かべ,脱出扉床面
端部にある取付器具とラフトの先端部分の器具とを丈夫な紐で約10
か所固定した状態で行われた。
(エ)なお,本件ラフト訓練において,原告は,ラフトへの移乗訓練では
なく,ラフト上で航空機脱出扉からラフト上に乗り込む人の脱出援助
者として同訓練に従事したものである。
(甲4,6ないし8,13,15)
(3)原告の受傷
原告は,本件脱出訓練に業務として参加した際に受傷し,平成16年10
月8日,P1医院のP2医師により,傷病名「腰痛症及び腰部打撲」の診
断を受けた。(甲87,乙7)
(4)原告の診療経過
アP1医院
原告は,上記(3)のとおり,P2医師の診察を受けて腰痛症,腰部打撲
と診断され,同日を含めて同年10月中に11日間通院した後,同年1
1月1日,同月2日,同月5日に通院し,保存治療等を受けた。
イP3病院
(ア)原告は,同年11月8日,P2医師から紹介されたP3病院のP4
医師(以下「P4」又は「P4医師」という。)による診察を受け,
腰椎椎間板ヘルニアと診断された。
(イ)原告は,同月17日,同月19日にも受診した後,同年12月3日
から同月18日までの16日間入院して保存治療,理学療法を受けた。
原告は,その後,継続して受診(理学療法を含む。)したが,平成1
7年2月15日から同年3月5日まで再度入院し,入院期間中の同年
2月17日に椎間板ヘルニア摘出手術を受けた。
(ウ)原告は,上記退院後も同病院への通院を継続したが,その後,P4
医師に対してP5病院への紹介状を作成してもらい,同病院での診察
を受けることとなった。
ウP5病院
平成18年5月15日,原告は,P5病院のP6医師の診察を受け,同
医師により腰椎椎間板症との診断を受けた。その後通院を継続し,平成
19年1月12日から同年2月16日まで36日間入院した後,同年3
月23日,同年4月23日,同年6月22日,同年7月20日,平成2
0年1月11日に通院している。
(乙7ないし9,31)
(5)原告の休業状況
原告は,平成16年10月9日から今日に至るまで就業を再開せず,休業
状態にある。(原告本人)
(6)本件訴訟に至る経緯
ア第1事件
(ア)原告は,平成16年11月24日,大田労基署長に対し,上記の腰
痛症及び腰椎椎間板ヘルニアが業務上の事由によるものであるとして,
労災保険法に基づき,療養補償給付の支給請求をしたが,大田労基署
長は,平成17年4月7日,原告に対し,原告の傷病は業務に起因す
る負傷とは認められないとして,同給付の支給をしない旨の処分をし
た。
(イ)原告は,同年4月27日,これを不服として,東京労働者災害補償
保険審査官に対して審査請求をしたが,同審査官は,同年11月8日,
審査請求を棄却した。
(ウ)原告は,平成17年12月2日,労働保険審査会に対して再審査請
求をしたが,同審査会は,平成20年4月30日,原処分のうち,平
成16年10月8日から同年11月5日までに係る部分を取り消し,
その余の再審査請求を棄却する旨の裁決をした。
(エ)原告は,平成20年10月27日,本件第1処分の取消しを求めて,
第1事件に係る訴訟を提起した。
イ第2事件
(ア)原告は,大田労基署長に対し,上記の腰痛症及び腰椎椎間板ヘルニ
アが業務上の事由によるものであるとして,①平成18年9月21日
付けで,傷病名を「腰痛症,腰部打撲」,療養のために労働できなか
った期間を平成16年10月6日から同年11月5日までとして,②
平成18年10月20日付けで,傷病名を「腰椎椎間板ヘルニア」,
療養のために労働できなかった期間を平成16年11月6日から平成
18年8月31日までとして,労災保険法に基づき,それぞれ休業補
償給付の支給請求をしたが,大田労基署長は,平成19年1月26日,
原告に対し,原告の傷病は業務に起因する負傷とは認められないとし
て,いずれの請求についても支給しない旨の処分をした。
(イ)原告は,同年3月7日,これを不服として,東京労働者災害補償保
険審査官に対して審査請求をしたが,同審査官は,平成20年2月1
2日,審査請求を棄却した。
(ウ)原告は,同年3月26日,労働保険審査会に対して再審査請求をし
たところ,同年8月15日,大田労基署長は,上記ア(ウ)を踏まえて,
原処分を一部取り消し,原告に対し,平成16年10月8日から同年
11月5日までの間の休業補償給付を支給する旨の決定をした。
(エ)そして,同審査会は,平成21年2月25日,「原処分のうち,平
成16年10月8日から同年11月5日までに係る部分を却下し,そ
の余の再審査請求はこれを棄却する」旨の裁決をした。
(オ)原告は,平成21年7月31日,本件第2処分の取消しを求めて,
第2事件に係る訴訟を提起した。
ウ第1事件及び第2事件は,平成21年12月22日,当裁判所により,
併合して審理されることとなった。
3争点
本件の争点は,平成16年11月6日以降にされた原告の療養及び療養によ
る休業が業務上の事由によって生じた疾病によるものか否かである。
4争点に対する当事者の主張
(1)原告の主張
ア労災事故の発生
原告は,本件脱出訓練の業務の遂行において,以下の労災事故に遭遇し
た(以下「本件災害」という。)。
(ア)平成16年10月6日,原告は,本件脱出訓練に業務として参加し,
本件スライド訓練及び本件ラフト訓練に臨んだ。
(イ)同日午前11時30分ころ,原告は,スライド上部(航空機脱出扉
に接する部分)から前方にジャンプしてスライドに尻を下ろし,その
後,両足を前に伸ばし,背中と足は90度の角度で,両手を両足と平
行に前方に出しながら滑降した。その途中,原告は体勢を崩して背中
が後方に倒れそうになり,背中がスライドに着かないように腹筋を使
って持ちこたえていたが,体勢を立て直す間もなく,勢いがついた状
態でスライド先端部に達し,そこから進行方向前方に身体を投げ出さ
れる状態となった。原告は,スライド先端部から起き上がった際,転
倒しないようにとっさに踏ん張って立位を保持したが,一連の不自然
な体勢により腰を捻ってしまった。
(ウ)その後,原告は,時間の経過とともに若干腰部の痛みが引いたこと,
緊急対策定期訓練の完遂は運航乗務員のライセンス維持のために不可
欠であることから,訓練を中断せず,同日午後3時30分ころから本
件ラフト訓練に参加した。
(エ)原告は,脱出扉に接する場所で脱出援助者に指名されたが,脱出援
助者の役割を担うのは初めてであった。原告は,約5分間,旅客役の
乗務員が航空機からラフトに移乗するのを手伝いながら水上にあって
不安定なラフトに片膝立ちでバランスをとる姿勢を続けた。原告は,
時々バランスが崩れそうになったので,その都度足を踏ん張るなどし
たが,その際,腰全体に強い痛みを感じたものの,最後まで訓練に参
加した。
(オ)原告は,本件脱出訓練後,帰宅の途上,歩行中に腰部の痛みが一層
酷くなり,更には右臀部から右下肢大腿部外側にかけてしびれも感じ
るようになった。
(カ)原告が本件ラフト訓練において脱出援助者を行ったのは初めてであ
った。また,これまでの脱出訓練の実地訓練において,腰部の痛み等
の異常を感じたことはなかった。
(キ)原告は,本件スライド訓練の際,通常動作と異なる動作によって腰
部に急激な力の作用が突発的な出来事として生じ,その後の本件ラフ
ト訓練での脱出援助作業で更に腰部に負荷を受け続けた。
イ治療経過
(ア)P1医院
原告は,帰宅後も腰部の痛みが消えず,同月7日は自宅で安静に過ご
し,同月8日,自宅近くのP1医院でP2医師により「腰痛症,腰部
打撲」と診断されたが,腰椎エックス線検査によれば腰椎変異,腰椎
損傷は見当たらなかった。原告は,同日以降,同年11月5日まで,
同医院に通院し,腰部固定術,温熱療法,レーザ,タンパ,インフリ
ーS,インテバン,モーラステープ等の治療や処方箋交付を受け,こ
れに従って薬を服用した。
(イ)P3病院
a原告は,通院開始1か月が経過しても腰痛が改善せず,左下肢にも
しびれが生じるようになったため,会社産業医から,MRIによる
診断を受けるよう指示され,P2医師の紹介で,同年11月8日,
P3病院に転院して診察を受け,「腰椎椎間板ヘルニア」と診断さ
れた。
b同年11月17日のMRI検査によれば,第4,第5腰椎正中部の
腰椎椎間板のみ後方へ中程度に突出し,同椎間板に髄核が繊維輪に
圧迫を加えた結果繊維輪が変形して突出して,脊髄の神経を圧迫す
る膨隆型ヘルニアが認められた。その後,原告は,同病院で服薬を
中心とした治療を継続していたが,腰痛及び両下肢のしびれが酷く
なり,立っていることも座っていることもできない状態となったこ
とから,同年12月3日から同月18日まで同病院に緊急入院し,
腰椎牽引,腰椎椎間板内ステロイド注入,神経根ブロック注射等の
治療を受けた。これにより,原告の腰部の痛みはやや改善したが,
なお座位を保持することが困難であり,右臀部痛や左右下肢痛やし
びれが残った。
c原告は,退院後しばらく療養を続けたが,症状が軽快しないため,
平成17年2月15日,P3病院に再入院し,同病院のP4医師の
執刀により,同月17日,椎間板ヘルニアの摘出手術(第4,第5
腰椎Love法)を受けた。
d手術後,原告は,同年3月5日に同病院を退院したが,手術により,
膨隆型ヘルニアは消失し,腰部の痛みと右下肢のしびれも一時消失
したが,リハビリで運動量が増えたときには痛みやしびれが強くな
る傾向が続き,自らの生活のために家事をすべて行わなければなら
ないことでその傾向は顕著になった。同年4月19日のカルテには,
痛みが軽減して痛み止めを飲まないでも大丈夫との記載があるが,
このような状態は長く続かず,痛みがあっても散歩を続けるように
との指示に従って毎日散歩を続け,徐々に歩く量を増やした結果,
痛みが徐々に強くなり,従来程ではないものの腰部の痛みが再発し,
また,左膝下にしびれを感じるようになった。
(ウ)P5病院
原告は,平成19年1月12日,P5病院に入院して,第4,第5腰
椎の椎間板を除去し,そこに骨盤の骨を移植する手術を受け,同病院
を同年2月16日に退院した。
(エ)その後の治療
P5病院での手術直後は,腰痛等の症状はいったんはかなり改善した。
しかし,手術後の約3か月間は症状が不安定となる期間であり,手術
後のリハビリテーション等で運動量が増えるに従い痛みやしびれが強
くなることがあったが,このような不安定な経過をたどりながらも,
痛みやしびれなどは徐々に振れが小さくなり安定すると同時に改善す
る傾向にあった。手術の約半年後の平成19年7月10日より,原告
は,自宅近くのペインクリニックで診療,治療を受け始め,その後は
腰痛等の症状は徐々にではあるが,更なる改善傾向を示しつつある。
ウまとめ
以上のとおり,本件脱出訓練の業務により原告の腰部に加わった外力の
大きさ,同訓練以前に健康面には何の問題もなかった原告が同訓練の業
務後腰椎椎間板ヘルニアを発症したこと及び主治医の判断によれば,原
告の同訓練業務と原告の腰椎椎間板ヘルニアとの間には相当因果関係が
存在することは明らかであり,また,原告の急性症状は,治療により今
日に至るまで改善傾向にあることも明らかであるから,原告の今日に至
るまでの療養及び療養のための休業は,すべて業務と相当因果関係のあ
るものとして,保険給付の対象とすべきである。
エ被告の主張に対する反論
(ア)後記(2)アは否認する
原告の第4,第5腰椎椎間板の高位正中の膨隆は肯定されているとこ
ろ,P4医師は多少程度ではあっても,少し後方に膨隆していること
から何らかの圧迫があった可能性を述べており,P4医師の第1回目
の手術はヘルニアの摘出により神経根に対する機械的圧迫因子を除去
すると同時に腰椎椎間板の髄核の除去を通して髄核内にある炎症誘発
物質の除去を目的として行われたのである。
(イ)後記(2)イ(ア)は否認する。
平成16年10月25日における原告の症状は,しびれが消失したの
ではなく,しびれが軽減したにすぎない。P3病院における同月末に
係る原告の症状の記載について,突如の増悪という趣旨の記載は存在
しない。
(ウ)後記(2)イ(イ)は否認する。
平成16年11月8日のP3病院初診時に行われた仙骨ブロック注射
は3日間しか効果がなく,それ以降,原告の両下肢しびれの症状は元
に戻ったのである。原告はP4医師から痛み止めを飲むように指示さ
れ,非ステロイド性の消炎・鎮痛剤のロルカムを胃炎,潰瘍の治療薬
であるセルベックスと一緒に処方されている。原告の症状は突然の増
悪ではなく,治療に至る経過の中で症状が一時的に悪化したにすぎな
い。
(エ)後記(2)イ(ウ)は否認ないし争う。
(2)被告の主張
ア腰椎椎間板ヘルニアの不存在
原告は,本件災害により,第4,第5腰椎椎間板の正中に膨隆型椎間板
ヘルニアを発症し,これにより腰痛等が発症したとして,発症後,今日
に至るまでの療養及び休業はすべて本件災害と相当因果関係がある旨主
張する。
腰椎椎間板ヘルニアは,変性し突出した椎間板組織(ヘルニア)が神経
根を機械的に圧迫して腰・下肢痛を引き起こす病態であり,MRI上ヘ
ルニアが認められても症状が全くない無症候性のヘルニアの割合は高い。
したがって,臨床的には,MRI上,椎間板の膨隆があるからといって,
即,椎間板ヘルニアと診断されるわけではなく,膨隆が現実に神経根を
圧迫して症状の原因となっていることが他の所見と併せて確認されて,
初めて,椎間板ヘルニアと診断され得るものである。
しかるに,本件では,第4,第5腰椎椎間板の膨隆は,第5腰椎神経根
を圧迫しておらず,原告の症状は,同神経根の障害を原因とするもので
はない。
本件災害によって受けた腰部の負荷は軽度であったのであり,本件災害
によって原告に発症した症状は,腰椎捻挫や腰部挫傷と呼ばれる範囲の
非器質的な急性腰痛の一種であり,椎間板ヘルニアを発症していなかっ
たと認められる。
イ業務起因性の不存在
(ア)P3病院の初診までの身体状態を踏まえた主張
原告の症状の原因疾患は,発症当初については,急性の非器質的腰痛,
平成16年10月末の症状増悪以降については,椎間板の加齢性変性
を基盤に,心理的・社会的要因が加わって生じた心因性疾患と認めら
れ,本件災害と相当因果関係の認められる症状は,平成16年10月
末に症状が増悪する以前の急性症状の範囲に限られるというべきであ
る。
原告の症状は,本件災害自体の軽度の事象を原因に発症したもので,
発症当日から,腰痛,下肢症状ともに軽度であり,通院加療で改善し
たが,10月末になって突如症状が増悪したという経過が認められる。
P1医院通院中に症状がいったん改善した事実,その後,10月末に
症状が増悪した事実が認められるのである。
よって,原告の上記主張は理由がない。
(イ)P3病院受診後,第1回入院時までの身体状態を踏まえた主張
P3病院初診時の原告の主訴は腰痛,両下肢しびれであり,しびれは
保存的療法により第2回診察時(同年11月19日)までに軽快し,
腰痛も「軽度」であったのに,同年11月26日ころから12月3日
までの間に悪化したと認められるところ,受傷後2か月経過したこの
ころに至って突如,発症以来最も重い状態(「立位,坐位が困難とな
る」等の症状)にまで増悪することは外傷の経過として一般的ではな
い。症状の推移が,軽快→突然の増悪→軽快→突然の増悪,と外傷の
経過としては一般的ではない経過をたどっており,医学的には,この
時期,外傷以外の,他の症状発症要因があったことを強く疑わせるの
である。
よって,この時期の原告の症状は,本件災害と相当因果関係のある症
状であるとはいえない。
(ウ)まとめ
a原告は本件災害により急性腰痛を発症したものの,しだいに軽快し
た。しかし,平成16年10月末,症状は突然増悪し,受傷後2か
月が経過した11月下旬から12月初旬にかけて,更に増悪するに
至った。こうした臨床経過は外傷による急性腰痛としては理解困難
であり,この時期に別の腰痛発症原因(心理的・社会的要因)があ
った可能性がある。このことは,P3病院での手術によりいったん
は症状が劇的に改善し,平成17年4月19日の診察時には痛み止
めを飲まなくても大丈夫なところまで改善し,5月31日症状固定,
6月には職場復帰可能とのP4医師の見通しどおりの順調な経過を
見せていたにもかかわらず,平成17年5月連休中に突如症状が増
悪するに至っているが,この増悪の直接の原因となるような医学的
疾患は見当たらないことからも裏付けられる。
bそして,これは,第1回目の手術以降,第2回目の手術までの間の
症状の原因,第2回目の手術以降の症状の原因についても同様であ
る。
c平成16年10月末以降の症状の原因は,本件災害以前から原告の
第4,第5腰椎椎間板に存した加齢性の変性という素因を基盤に,
心理的・社会的要因が加わって生じた心因性の疾患である。
よって,原告の症状が本件災害との間で相当因果関係が認められな
いことは明らかである。
第3当裁判所の判断
1業務起因性について
(1)労災保険法上の保険給付は,労働者が業務上負傷し,又は疾病(以下
「傷病」という。)にかかった場合等に支給され(労災保険法7条1項1
号),療養補償給付はその療養の給付とされ,休業補償給付は「療養中
の」労働者の生活補償を目的とするものである(労災保険法13条,14
条)。
(2)また,労災保険法に基づく業務災害に関する保険給付は,労働基準法
(以下「労基法」という。)75条から77条,79条及び80条に規定
する災害補償の事由が生じた場合に支給することとされているところ,
(労災保険法12条の8第2項),労基法においても,災害補償としての
療養補償の支給要件としては,業務上傷病を負ったことを要するとされ,
また,休業補償の支給要件としては,業務上の傷病のため療養しているこ
と,その療養のため労働することができないこと,労働することができな
いため賃金を受けていないこと,以上の条件のすべてを備えていることを
要するとされている(労基法75条,76条)。
このように,療養補償給付及び休業補償給付の支給要件の一つとして,労
働者が業務上の傷病を負ったこと,つまり,当該傷病の業務起因性が必要
とされている。
(3)そして,業務起因性が肯定されるためには,業務と傷病との間に条件関
係が存在するのみならず,当該業務と当該傷病の間に法的にみて労災補償
を認めるのを相当とする関係,すなわち,相当因果関係があることを要す
るところ,労災保険制度は,労基法の定める使用者の災害補償責任の担保
のための制度であり,災害補償責任が無過失責任とされる法的根拠が「危
険責任の法理」に求められることからすると,その責任を認める前提であ
る業務起因性を肯定するためには,当該傷病が当該業務に内在ないし通常
随伴する危険の現実化と認められる関係が存在することが必要である。す
なわち,業務起因性が認められるためには,当該業務と疾病との間に条件
関係があることを前提としつつ,更に相当因果関係,すなわち,当該業務
に危険が内在していると認められること(危険性の要件),及び,当該傷
病が,当該業務に内在する危険の現実化として発症したと認められること
(現実化の要件)が必要である。
(4)業務災害に関する保険給付は,一定の事由が生じた場合に請求権を有す
る者の請求に基づいて補償が行われる制度であり,これらの給付を受けよ
うとする者が自己に受給資格があることを証明する責任があるというべき
であるから,業務の起因性の立証責任は保険給付に係る不支給決定を争う
原告にあると解するのが相当である。
2認定事実
前記前提事実並びに証拠(P4証人,原告本人のほか,認定事実の末尾に証
拠を摘示)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)原告の受傷状況
ア平成16年10月6日,原告は,本件脱出訓練に業務として従事し,同
日午前11時30分ころ,本件スライド訓練に参加し,予め指定された
脱出用姿勢,すなわち,両足を前に伸ばし,身体は足と直角とし,両手
は足と平行に前に伸ばす姿勢でスライドに乗った。
イしかし,滑り降りる際の勢いにより上体が後ろに倒れそうになったため,
体勢を整えようとしたが修正することができず,そのまま勢いがついた
状態で着地して立ち上がった。原告は,本件スライドから離れた際,多
少バランスが崩れたため腰を捻った。その際の腰部の痛みは少しあった
が,その後,薄らいでいった。
ウそこで,同日午後3時30分ころ,原告は,本件ラフト訓練に参加した
ところ,脱出援助者の役割を担うこととなったため,水面に浮いて不安
定な状態にあるラフト上で片膝立ちで足を踏ん張ってバランスをとる姿
勢を数分間とらざるを得なかった。原告は,本件ラフト訓練時には腰痛
はあまり感じなかったが,しだいに痛みが出てきたのを覚えた。
(甲6ないし8,10)
(2)負傷後の治療経過
アP1医院
(ア)原告は,本件脱出訓練後,腰痛が治まらないため,同年10月8日,
P2医師の診察を受けて「腰痛症,腰部打撲」と診断された。原告は,
同月13日以降も,同日を含めて同月30日までの間に10日通院し,
更に同年11月1日,同月2日,同月5日にも通院して,保存治療及
びリハビリを受けた。
(イ)原告は,P1医院への通院を重ねる過程で,原告の腰痛はしだいに
和らいできたが,なお解消されるには至らず,同年10月末ころに再
び痛みの度合いが増すのを感じたため,同年11月以降も上記のとお
り通院を継続した。
(ウ)しかし,原告は,腰部から右下肢にかけての疼痛やしびれ感が続く
ことから,整形外科専門医の受診を希望し,また,会社からのMRI
検査診断の要請を受けていたことから,P2医師によりP3病院を紹
介され,同病院に転院した。
イP3病院
(ア)原告は,同年11月8日,P3病院のP4医師の診察を受けたが,
その際,原告は,問診において,自らの症状について,現在腰痛及び
両下肢のしびれがあること,訓練中に腰痛があり,右下肢から左下肢
へとしびれが生じてきたこと,P1医院の治療により腰痛等が改善し
つつあったが10日前(10月末ころ)から再び痛みが増してきたこ
と等を述べたため,P4医師は,原告に対し,腰部等を触診等した後,
腰椎に対するレントゲン撮影等を実施し,腰部に仙骨ブロックを施し,
同月17日には腰椎に対するMRI検査を施行した。
(イ)同月19日,P4医師は,原告に対するMRI検査の結果を踏まえ
て原告の傷病名を腰椎椎間板ヘルニアと診断した。
原告は,同日の診察において,P4医師の問診に対し,しびれ感が低
下していて症状が軽快していること等を述べたため,P4医師は,原
告の症状が軽減しているとの判断に基づき,内服薬であるメチコバー
ル(ビタミン12。末梢性神経障害対応),ロルカム(鎮痛剤)及びセ
ルベックス(胃薬)を処方し,外用薬として湿布を処方した。
(ウ)しかるに,同年12月3日,原告は,1週間前(同年11月26日
ころ)から立位と座位が辛くなり,体動がほとんど困難となったとし
てP3病院を受診し,緊急入院することとなった。
(エ)同病院に入院期間中,原告は,神経根ブロック等の保存治療や,腰
部ホットパック等の理学療法を受け,症状が緩解したことから同月1
8日に退院し,その後,同月21日,同月28日,平成17年1月4
日に継続して理学療法を受けた。
(オ)同月8日,原告は,P4医師の問診に対して,全体的に痛みが低下
し,しびれ感の範囲が狭まってきた旨述べたが,P4医師は,触診等
の検査後,第5腰椎部に神経根ブロックを施し,湿布薬等を処方し,
同月18日にも同部位に神経根ブロックを施した。
この間,原告は,同月11日,同月24日,同月31日,同年2月1
日及び同月9日に継続して理学療法を受けていたところ,同月1日,
原告は,P4医師の診察を受けた際,P4医師に対し,神経根ブロッ
クでは下肢しびれ感がとれず,同しびれ感と冷えが悪化している旨訴
えたことから,P4医師は,保存療法では原告の腰痛や下肢しびれ感
が快癒させることができず,手術する方法を選択せざるを得ないと判
断した。
(カ)原告は,同月15日に入院し,同月17日に手術が実施された後,
同月21日から理学療法が再開されたが,原告は,右腰から大腿にか
けて少し違和感があるものの座位,臥位ともに楽になった旨述べてお
り,また,同月17日以降におけるP4医師等の診察時においても,
下肢しびれ感等が解消された等症状が緩解していることを述べていた。
その後,原告は,違和感等を訴えたり,調子が良好であったりする状
況が見られたが,同年3月3日の診察時において,原告の腰痛及びし
びれ感が術前の2,3割に低下した旨述べる等し,原告の症状が緩解
傾向にあることが確認されたため,同月5日に退院した。
(キ)原告は,その後の同月18日に同病院を受診し,P4医師に左かか
との冷えがきついと述べたほかは特に異常を訴えておらず,同医師か
らメチコバールの処方を受けたにとどまっている。また,同月25日
にも同病院を受診したが,特に異常を訴えていた様子はなく,同年4
月19日には,痛みが低下したので,鎮痛剤等を服用しなくても大丈
夫である旨述べ,同年5月2日及び同月16日の受診時においても,
特に異常を訴えた形跡は存在しない。
(ク)ところが,同年6月3日,原告は,同病院を受診し,5月の連休か
ら右下肢がしびれてピリピリしていた旨訴え,また,左下肢の痛み,
腰痛を訴え,同日以降,概ね毎月2日の割合で同病院での通院を継続
した。
ウP5病院
原告は,P3病院での通院を継続したものの,症状が強くなったり緩解
したりする状況に変わりなかったため,セカンドオピニオンを得る目的
でP5病院に受診することとし,P4医師に診療情報提供書を作成して
もらい,前記第2の2(4)ウのとおり治療を受けることとなった。
(甲4,88,96,乙7ないし9,31)
(3)原告の既往症の存在
原告の主治医であったP4医師は,原告の腰椎に対するMRI検査の結果
を踏まえ,本件脱出訓練当時,既に,原告の第4,第5腰椎の高位のみ変
性が中等度に進行しており,基盤的には,その状態は加齢変化によるもの
であると診断している。(乙8)
3検討
(1)本件脱出訓練による原告の受傷の事実
上記2(1)の認定事実によれば,原告は,本件スライド訓練では,本来の
姿勢を崩した状態を修正しようとしている最中,勢いがついたまま本件ス
ライドから離れてバランスを崩した状態で立ち上がらざるを得なかったの
であり,また,本件ラフト訓練では,水上のために不安定なラフト上で片
膝を着いた状態の姿勢を継続せざるを得なかったことが認められる。これ
らの事実によれば,それら一つ一つの動作は本件脱出訓練としては通常想
定される範囲内のものであり,かつ,それによる衝撃も軽度なものではあ
ったものの,それら一連の動きに照らすと,前者は一時的に不自然な体勢
となり,後者は非日常的で不安定な状況下で腰部に負荷のかかる姿勢を一
定時間維持しなければならなかったことが認められ,そうすると,原告の
腰部に係る負傷は,本件脱出訓練業務に従事した際のこれらの身体の動き
が,元々,原告の腰部に存在した第4,第5腰椎腰椎部の加齢性,経年性
による椎間板の変性状態に対して作用し,負荷がかかった結果発生したも
のと推認されるから,原告がP1医院に受診した当時に原告が罹患してい
た腰痛は,業務に起因したものと認めるのが相当である。
(2)原告の療養及び療養による休業と本件災害との相当因果関係について
ア本件各処分は,本件災害と相当因果関係の認められる原告の療養及び休
業の範囲について,平成16年11月5日までの分に限定したものであ
る。
イしかし,上記2(2)の認定事実によれば,原告は,本件脱出訓練におけ
る受傷後,腰痛が治まらなかったため,平成16年10月8日,P1医
院に受診し,P2医師により腰痛症,腰部打撲と診断されたこと,その
後,同年11月5日までの1か月足らずの期間中に13日通院して保存
治療及びリハビリを受けたこと,この間,腰痛が一時的に和らぐことは
あったものの,一進一退の状態で推移していたこと,原告は腰から右大
腿部にかけてのしびれ感や疼痛が依然継続していたこと,そのため,M
RI検査を受けて整形外科専門医の診察を受ける必要からP3病院を紹
介されたこと,原告は,同月8日,P2医師の紹介に基づいてP3病院
のP4医師の診察を受けたこと,原告はP4医師に対して腰痛及び両下
肢のしびれ等を述べており,これらはP1医院での原告の罹患した症状
と同じ内容であること,P4医師は問診結果及び触診結果等を踏まえて
仙骨ブロックを施し,同月17日にはMRI検査を実施していること,
同月19日には,原告は,症状が軽快していることを踏まえて,P4医
師により,仙骨ブロックではなく,鎮痛剤等の内服薬と湿布を処方され
ていること,以上の事実が認められ,これらの事実(P1医院への通院
状況,P3病院に受診した経緯や同病院における診察結果等)を踏まえ
ると,平成16年11月8日にP3病院を受診した後の治療(療養)及
びそれに伴う原告の休業についても,同月5日以前のそれらと同様,本
件災害と相当因果関係が認められるものが存在すると判断するのが相当
である。
ウそうすると,本件災害と相当因果関係の認められる原告の療養及び休業
について,平成16年11月5日までのものに限ることを前提としてさ
れた本件各処分には理由がないといわなければならない。
エこれに対し,被告は,原告の症状が改善していたにもかかわらず,平成
16年10月末に突如増悪したことをもって,それ以降における原告の
症状と本件災害との相当因果関係が認められない旨主張し,P3病院の
診療記録にもそれに沿う記載(「P1医院での加療により改善したが1
0日前から痛みが上昇した」趣旨の記載。P3病院初診時の問診での原
告の回答である。乙8)がある。
しかし,P1医院の診療記録(乙7)上,原告の症状が緩解しているこ
とを窺わせる明確な記載は見当たらず,原告が保存治療及びリハビリ目
的で頻繁に同医院に通院していたこと,また,P4医師の原告に対する
問診での具体的なやりとり(P4医師が「改善」と記載した根拠事実)
についてP4医師の記憶が明確でないことからすると,原告の症状が同
年10月末に突然緩解から増悪に転じたと認めることはできない。
よって,被告の上記主張は採用することはできない。
オまとめ
(ア)以上によれば,本件災害と相当因果関係の認められる原告の療養及
び療養による休業の範囲については,平成16年11月5日以前のも
のに限られるべきではなく,同月6日以降の原告の療養及び療養によ
る休業についても,本件災害との間に相当因果関係が認められるもの
が存在するといわなければならない。
(イ)なお,原告は,平成16年11月6日以降,現在に至るまでの原告
の療養及び療養のための休業については,すべて本件災害と相当因果
関係が認められる旨主張する。しかし,①P3病院における治療経過
だけを取り出してみても,平成16年11月19日に症状が軽快して
いたのに,その2週間後の同年12月3日には体動がほとんど困難に
なるほどの重い症状を呈するに至った経過が不明であること(その1
週間前(同年11月26日ころ)に急変したというのに同年12月3
日まで受診していないのは不自然である。),P3病院で手術を受け
て平成17年3月5日に退院した後,術後観察も1か月に2回程度の
少ない頻度であり,かつ,原告が特に異常を訴えた形跡がなく,処方
薬の内容にも特段変化が見られず,かえって,同年4月19日に症状
が軽快する様子が窺えるところ,原告は,同年6月3日になって突然
異常を訴え,しかも,その症状の急変がそれから約1か月遡る5月の
連休中にあったと述べており,その診療記録の記載内容と原告の申告
内容に重大な齟齬があることからすると,本件災害とは無関係な何ら
かの事象の発生により,原告の症状が急激に変化した疑いが残る。ま
た,②本件災害が軽度の衝撃で発生していること,上記の既往症を有
する原告が日常ウォーキングや重厚なサイクリング(真夏の炎天下で
も1日100キロメートルを走行していたと陳述する。甲97)をし
ていたこと(これらの運動,ことに後者が腰部等に相当な負荷をかけ
ることは明らかである。)からすると,原告は本件災害前に既に腰痛
等の具体的な症状を罹患していた可能性があること(本件災害発生前
における医療機関(接骨院等を含む。)の受診事実や診療状況,身体
状態等が不明である。健康保険の利用履歴等を基に調査する必要があ
る。),さらに,③本件災害が発生した平成16年10月6日から現
在まで既にかなりの年月が経過しているところ,このような長期間に
わたって,療養のみならず,療養のために完全な休業をしなければな
らない必要性が果たしてあったのかどうか,原告の治療経過や日常生
活状況に照らしてなお不明であること,等が指摘されるのである。
原告は,原告の療養及び療養による休業の必要性はもとより,それら
と本件災害との相当因果関係について主張立証責任を負担するもので
あるところ,かかる主張立証が尽くされたとはいい難く,原告の上記
主張を採用することは到底困難である。
4結論
以上によれば,平成16年11月6日以降の原告の療養及び療養による休業
についても本件災害との間に相当因果関係が認められるものが存在するとこ
ろ,この業務起因性を否定して行った本件各処分は違法であり,取消しを免
れない。
よって,本訴請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとお
り判決する。
東京地方裁判所民事第19部
裁判官渡邉和義

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